説明

支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸の混成化効率又は特異度を増加させるための方法、組成物、及びキット

【課題】支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるための方法、組成物、及びキットを提供する。
【解決手段】支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸の混成化反応において、核酸加水分解酵素(nuclease)を用いて標的核酸を断片化して標的核酸の大きさを減少させる、又は、PNAプローブとミスマッチ(mismatch)される標的核酸を選別的に分解する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体に固定された(immobilized)ペプチド核酸(peptide nucleic acid, PNA)プローブの標的核酸との混成化効率又は特異度を増加させる技術に関するものであって、より詳しくは支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸の混成化反応において核酸加水分解酵素(nuclease)を用いて標的核酸を断片化(fragmentation)して標的核酸の大きさを減少させたり、PNAプローブとミスマッチ(mismatch)される標的核酸を選別的に分解して、PNAプローブの混成化効率又は特異度を増加させる方法、組成物、及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子発現の差異、一塩基変異多型(SNPs;single nucleotide polymorphisms)、突然変異、及び病原性バクテリアやウイルスなどの疾病に連関された遺伝情報が明らかになっている。このような遺伝情報の差異や変異によって個体間の差異が現われ、遺伝性疾患の発病如何及び疾病に対する感受性が決定される。よく使われる変異や遺伝子発現分析方法には、DNA序列分析、RFLP(restriction fragment length polymorphism)、対立形質特異的PCR(allele specific polymerase chain reaction)、サザンブロット(southern blot)又はノーザンブロット(northern blot)の方法がある(文献[Present and future of rapid and/or high throughput methods for nucleic acid testing, Gyorgy csako, 2005, Clinica Chimica Acta 1-25])。しかし、これらの方法はたくさんの時間と努力、費用、及び熟練された技術などを必要とし、一度に一つの遺伝子や変異分析のみができ、煩わしいゲル電気泳動分析を必然的に伴うという限界がある。
【0003】
従って、既存の遺伝子分析方法の短所を克服することができる新しい分析システムとしてDNAチップ(chip)又はDNAマイクロアレイ技術が頭をもたげた(文献[Single nucleotide polymorphism discrimination assisted by improved base stacking hybridization using oligonucleotide microarrays, Wang D et al., 2003, Biotechniques, 35(2), 300-306])。DNAチップは固体表面上に既知の遺伝情報に基づいて設計されたDNAプローブを高密で固定させたチップであって、チップ上において分析しようとする標的核酸との混成化反応を蛍光を用いて検出する方法である。DNAチップを用いれば1回の実験で多様な遺伝情報が分析できるため疾病診断に最も有用である(文献[Development and evaluation of a highly sensitive human papillomavirus genotyping DNA chip, Kim K et al., 2006, Gynecologic Oncology 100, 38-43])。このようなDNAチップは現在までの技術水準で最も効率的な分析及び診断方法として知られているが、相変わらず下記のような技術的問題点を抱えている。
【0004】
先ず、DNAプローブが生物学的(核酸加水分解酵素など)及び化学的(酸、塩基など)安定性が低くてDNAチップの製品の安定性が低い。
【0005】
第2に、SNPや突然変異などの一つの塩基序列の差異を正確に区別し難い場合が多い。
【0006】
第3に、オリゴヌクレオチドプローブ(oligonucleotide probe)から製作されたチップの混成化反応において標的核酸の長さに制限がある。
【0007】
DNAチップでのように支持体に固定されたプローブを使用する場合、標的核酸の大きさが大きいほどプローブへの接近が難しくなって混成化反応効率が落ちるため、あまり長くない標的核酸を混成化反応に適用しなければならない。標的核酸の長さが200の塩基対(bp)以上になれば混成化効率が急速に減少し特異信号が減少して背景信号との区別が容易でなく、400bp超過の標的核酸は特異信号が殆ど発生しなくて分析が不可能である(文献[Optimization of fragmentation conditions for microarray analysis of viral RNA, Martin et al., 2005, Analytical biochemistry, 347, 316-323]及び[Correlation between microarray DNA hybridization efficiency and the position of short capture probe on the target nucleic acid, Regis et al., 2005, Bio Techniques, 39, 89-96])。前記した問題点を解決するために標的が散在している場合、それぞれの短い断片で増幅させる方法、長く増幅させた後に制限酵素で断片化する方法、及び遺伝体の増幅後に再びそれぞれの特異的プライマーで小さく増幅する方法などが使われてきた(文献[Toward genome-wide SNP genotyping, Ann-Christine Syvanen, 2005, Nature genetics, 37, S5-S10]及び[Assessing Genetic Variation: Genotyping Single Nucleotide Polymorphism, Ann-Christine Syvanen, Nature, 2001, 2, 930-942])。しかし、このような方法は標的核酸を混成化反応のできる小さい断片で製作することにおいて、たくさんの時間と高度の努力、及び費用が消耗される煩わしくて非効率的な方法である。なお、反応しない残余の標的核酸の反応によって非特異信号が増加する可能性も排除することはできない。
【0008】
また、DNA自体の不安定性を解決するためには、多様なDNA類似体(analogues)が開発されており、その中でPNA(peptide nucleic acids)は1991年ニエルソン(Nielson)によって開発された(文献[Peptide nucleic acid, PNA, sequence-selective recognition of DNA by strand displacement with a thymine-substituted polyamide, P.E. Neilson et al., 1991, Science, 254, 1497-1500])。図1に示したように、PNAはDNAのホスホジエステル(phosphodiester)結合がペプチド結合(peptide bond)に取り替えられており、DNAのようなアデニン、チミン、グアニンとシトシンを有していて塩基特異的にDNAやRNAと混成化反応を起し得る。特に、負電荷を帯びるリン酸結合の骨格のために互いに電気的に反発する天然核酸とは違ってペプチド結合からなる骨格は電荷を帯びないから混成化反応においてPNAはDNAより天然核酸に最も強く結合し、この結合は塩濃度(salt concentration)に影響を及ぼされない。なお、PNAは核酸加水分解酵素、蛋白質分解酵素のような生分解酵素に分解されないためにDNAやRNAより安定性が非常に高い。このように天然核酸を相補的に認識することができ、混成化結合力と安定性に優れるPNAは遺伝子分析又は診断などに用いられる(文献[PNA for rapid microbiology, Stender H et al., 2002, Journal of Microbiological Methods, 48, 1-17]、[Peptide nucleic acids on microarrays and other biosensors, Brandt O et al., 2004, Trends in Biotechnology, 22, 617-622]、及び[Detection of target DNA using fluorescent cationic polymer and peptide nucleic acid probes on solid support, Frdric R Raymond et al., 2005, BMC technology, 5, 1-5])。
【0009】
PNAの生物学的安定性を用いた研究としては、例えば蛍光標識されたPNAプローブを標的核酸と反応させ、PNAとDNAの混成化反応がなされるとDNAのアニオンにカチオンのポリマーが結合され、PNAとDNAとの間にミスマッチされた部分が存在すれば核酸加水分解酵素のS1ヌクレアーゼによってミスマッチされた部分が除去されてFRET(Fluorescence resonance energy transfer)でSNPを区別する方法が報告されている(文献[SNP detection using peptide nucleic acid probes and conjugated polymers: Applications in neurodegenerative disease identification, Brent S et al., 2005, Proceedings of the National Academy of Sciences 102, 34-39])。また、マイクロチューブ内において一つ又は二つのPNAプローブと標的核酸の混成化反応の後、核酸加水分解酵素で処理してPNAプローブと塩基序列がミスマッチされた標的核酸を除去する方法を通じてPNAプローブと完全に混成化されたものに蛍光物質を取り付けて肉眼又は質量分析器で確認する方法が報告された(文献[Detection of single nucleotide polymorphisms by the combination of nuclease S1 and PNA. Sheng Ye et al., 2002, Nucleic acid research No. 2, 235-236]、及び[PNA of one base differentiating protection of DNA from nuclease and its use for SNP detection. Makoto K et al., 2002, Journal of American Chemical Society 2003 125, 3758-3762])。しかし、前記方法では全てPNAプローブを均質の(homogeneous)溶液状態において混成化させるため、標的核酸の大きさに関わらず混成化反応が生じる。この方法はただ混成化反応の後に核酸加水分解酵素を添加することによって標的核酸とPNAプローブのミスマッチの部分を除去して特異度を増加させたものである。なお、この方法では1回に一つ又は二つのPNAプローブを使用して1回に一つの遺伝子変異を分析したため、長さが長い標的核酸を使用していなかった。
【0010】
一方、韓国登録特許第436554号(2004. 6. 8.登録)は既存のDNAチップに核酸加水分解酵素を適用して混成化された核酸の検出感度を増加させる方法を開示したことがある。この方法は核酸加水分解酵素を用いて固定化されたDNAプローブのうち混成化していない単一本のDNAプローブを除去することであって、具体的には、二重本のDNAの末端は認識できず、単一本のDNAの3′−末端のみを認識し、特に単一本の3′−末端がOH基を有する状態で存在すべきであればDNAを加水分解する特性を有するエキソヌクレアーゼI(Exonuclease I)を用いてDNAの5′−末端が基板に固定され、3′−末端のOH基が露出された非混成化されたDNAプローブを除去する方法である。従って、この方法は核酸加水分解酵素を加えて標的核酸を断片化したり選別的に分解することとは全く合い異なるものである。この方法は背景信号による非特異信号を減少させることはできるが、一つの塩基が不一致になって生じる非特異信号を減少させることはできないため、SNPや突然変異の検出には使い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは前記のような従来技術の問題点を解決するために、核酸加水分解酵素に安定なPNAをプローブで用いて、支持体に固定されたPNAプローブは分解されずにPNAプローブと混成化されない標的核酸の部分を核酸加水分解酵素を用いて除去することにより、既存のDNAチップより高い信頼度と特異度で一塩基変異多型(SNP)が検出できることを確認した。また、多様な長さの標的核酸とPNAプローブの混成化反応に核酸加水分解酵素を添加すれば、大きさが大きい標的核酸の場合にも混成化効率が高くなって複雑な増幅方法及び前処理過程を経なくてもチップに適用できるのみならず、強い特異信号と優れる特異度で希望する部位の変異を選別することができることを確認し、本発明を完成することに至った。
【0012】
従って、本発明の目的は支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸との間の混成化効率又は特異度を増加させるための方法を提供することである。本発明による方法は多様な大きさの標的核酸に対して突然変異、SNP、遺伝型、遺伝子発現、スプライス−変異体又は後生学的(epigenetic)分析、又は再序列(resequencing)分析などに広く適用することができる。
【0013】
本発明のもう一つの目的は支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるための組成物を提供するためである。
【0014】
本発明のまたもう一つの目的は支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるためのキットを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸の混成化反応において核酸加水分解酵素を用いて標的核酸を断片化して標的核酸の大きさを減少させる、又は、PNAプローブとミスマッチされる標的核酸を選別的に分解する段階を含む、支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させる方法に関するものである。
【0016】
また、本発明は、活性成分として核酸加水分解酵素を含む、支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるための組成物に関するものである。
【0017】
また、本発明は
i)支持体に固定された複数のPNAプローブ、及び
ii)核酸加水分解酵素;
とを含む、核酸検出用キットに関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】DNAとPNAの基本構造の差異を示す図面である。
【図2】本発明の一例によるPNAオリゴチップ上において核酸加水分解酵素を用いて混成化特異度を増加させる原理を示す図面である。
【図3】本発明の一例によるPNAオリゴチップ上において核酸加水分解酵素を用いて長さが長い標的核酸の混成化効率を増加させる原理を示す図面である。
【図4】本発明から使われる各サイズ別標的核酸(E. coli 16S rDNA)の塩基序列、及びプローブ及びプライマーの位置を示す図面である。
【図5】各サイズ別標的核酸(E. coli 16S rDNA)を増幅した後、1.5%アガロースゲル上において電気泳動した結果を示す図面である。
【図6】PNAオリゴチップ上において蛍光イメージのスポット配置図である。
【図7】標的核酸(E. coli 16S rDNA)を末端標識(end label)、ビオチン−dCTP標識、及びビオチン−dCTP標識及び核酸加水分解酵素の処理時、PNAオリゴチップの混成化結果を示す蛍光イメージ及び定量分析データを示す図面(130bp)である。
【図8】標的核酸(E. coli 16S rDNA)を末端標識(end label)、ビオチン−dCTP標識、及びビオチン−dCTP標識及び核酸加水分解酵素の処理時、PNAオリゴチップの混成化結果を示す蛍光イメージ及び定量分析データを示す図面(:280bp)である。
【図9】標的核酸(E. coli 16S rDNA)を末端標識(end label)、ビオチン−dCTP標識、及びビオチン−dCTP標識及び核酸加水分解酵素の処理時、PNAオリゴチップの混成化結果を示す蛍光イメージ及び定量分析データを示す図面(:450bp)である。
【図10】標的核酸(E. coli 16S rDNA)を末端標識(end label)、ビオチン−dCTP標識、及びビオチン−dCTP標識及び核酸加水分解酵素の処理時、PNAオリゴチップの混成化結果を示す蛍光イメージ及び定量分析データを示す図面(759bp)である。
【図11】標的核酸(E. coli 16S rDNA)を末端標識(end label)、ビオチン−dCTP標識、及びビオチン−dCTP標識及び核酸加水分解酵素の処理時、PNAオリゴチップの混成化結果を示す蛍光イメージ及び定量分析データを示す図面(1000bp)である。
【図12】核酸加水分解酵素の非添加及び添加時、末端標識された標的核酸(E. coli 16S rDNA、130bp及び450bp)の検出信号を定量分析した結果を示す図面である。
【図13】核酸加水分解酵素の非添加及び添加時、ビオチン−dCTP標識された標的核酸(HBVラミブジン耐性遺伝子)の検出信号を定量分析した結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は支持体に固定されたPNAプローブの標的核酸との混成化反応効率又は特異度を向上させ、塩基序列が一致しない標的核酸の非特異的結合を減少させる技術に関するものである。本発明では、支持体に固定させたPNAプローブを使用する場合、多様な長さの標的核酸に対してPNAプローブと混成化されない標的核酸の単一本の領域とPNAプローブと完璧に相補的でなくて標的核酸でPNAプローブとミスマッチされた部分を核酸加水分解酵素で加水分解する方法を使用する。混成化反応と同時に核酸加水分解酵素を加えることもでき、混成化反応が完了された後に核酸加水分解酵素を加えることもできる。つまり、標的核酸をPNAプローブと混成化反応させる同時に核酸加水分解酵素を加えると標的核酸の長さが短くなって混成化効率が高くなる。また、標的核酸のうちPNAプローブと混成化された領域以外の部分は加水分解されて特異度が増加される。その結果、既存の方法では適用できなかった長さが長い標的核酸に含まれた多数の一塩基変異多型と突然変異を検出することができるようになる。混成化効率の増加なく特異度を増加させる効果のみを得るためであれば標的核酸の混成化反応後に核酸加水分解酵素を加えることもできる。標的核酸の混成化反応後に核酸加水分解酵素を加える場合には、標的核酸の長さがあまりにも長ければ混成化効率が減少するので、この場合、標的核酸の長さは400bp以下、例えば20乃至400bpであるのが望ましい。
【0021】
本発明では、標的核酸と核酸加水分解酵素の反応をPNAプローブが固定されているPNAチップに適用しようと、序列番号10乃至15のPNAオリゴマーをガラススライド表面に固定してPNAチップを製作し、核酸加水分解酵素を添加してその特性を調べた。序列番号10のPNAオリゴマーはE.coliの16SrDNAの標的核酸と完全に結合できるプローブであり、序列番号11乃至13のPNAオリゴマーは序列番号10と一つの塩基が異なって設計されたプローブである。序列番号14のPNAオリゴマーはB型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus、HBV)のラミブジン耐性(lamivudine resistant)遺伝子の標的核酸と完全に結合できるプローブ(180w)であり、序列番号15は序列番号14と一つの塩基が異なって設計されたプローブ(180t)である。序列番号14と15は既存のチップで非特異信号が非常に強くて標的核酸を特異的に検出することができなかった序列である。
【0022】
【表1】

【0023】
エポキシ(epoxy)作用基が露出されたガラススライドに前記PNAオリゴマーを固定してPNAチップを製作した。
【0024】
本発明では、核酸加水分解酵素の作用を究明するために、下記のように標的核酸を使用した。
【0025】
1)既存のDNAチップで分析が難しい長さの標的核酸も分析ができるかを調査するために、E.coliの16S rDNAを130、280、450、759、1000bpで五つの長さの標的核酸を増幅させて使用した。
【0026】
2)点突然変異(mutation)の分別力を調査するために一つの塩基序列が相異なるラミブジン耐性HBV突然変異型と野生型の標的核酸を増幅して使用した。
【0027】
本発明では、チップの混成化反応に使用する標的核酸を
1)プライマー(下記表2参照)の5′末端を検出可能な標識物質として標識して増幅させた後、核酸加水分解酵素の添加又は非添加の下において混成化反応を行い検出する方法、
2)重合酵素連鎖反応(PCR)時、検出可能な標識物質として標識されたdNTPを添加して増幅反応中に標識されるようにした後、核酸加水分解酵素の非添加の下において混成化反応を行い検出する方法、及び
3)PCR時に検出可能な標識物質として標識されたdNTPを添加して増幅反応中に標識されるようにした後、核酸加水分解酵素の添加の下において混成化反応を行い検出する方法、
を用いて、支持体に固定されたPNAプローブの混成化の特異信号と信号分離能を比較した。
【0028】
前記1)乃至3)の方法は大きく
a)標的DNAを製造する段階
b)プローブPNAと標的DNAの混成化反応を行う段階
c)混成化反応後に残余反応物を除去するために洗滌する段階
d)PNA/DNAハイブリッド形成による信号を検出する段階
とを含む。
【0029】
混成化を蛍光検出法によって検出しようとする場合には、段階a)からプライマーを末端標識すること(方法1)は核酸加水分解酵素の処理時に加水分解されて蛍光物質の発色如何を確認し難いから望ましくなく(図7乃至12参照)、PCRに使用するdNTP(即ち、dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、例えばdCTPに蛍光物質を直接に取り付けたりビオチンのように蛍光物質と反応できる物質を取り付けるのが望ましい(方法3)。使用可能な標識物質には特別な制限はない。例えばビオチン、ローダミン、シアニン(Cyanine)3、シアニン5、ピレン(pyrene)、シアニン2、緑色蛍光蛋白質(GFP; Green Fluorescent Protein)、カルセイン(Calcein)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)アレクサ(Alexa)488、6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM)、2′,4′,5′,7′−テトラクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン(HEX)、2′,7′−ジクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)、フルオレセインクロロトリアジニル(Fluorescein Chlorotriazinyl)、フルオレセイン、オレゴングリーン(Oregon Green)、マグネシウムグリーン(Magnesium Green)、カルシウムグリーン(Calcium Green)、6−カルボキシ−4′,5′−ジクロロ−2′,7′−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、テトラメチルローダミン(Tetramethylrhodamine)、テトラメチル−ローダミンイソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、ローダミンファロイジン(Rhodamine Phalloidin)、ピロニンY(Pyronin Y)、リサミン(Lissamine)、ROX(X-rhodamine)、カルシウムクリムソン(Calcium Crimson)、テキサスレッド(Texas Red)、ナイルレッド(Nile Red)、及びチアジカルボシアニン(Thiadicarbocyanine)などを使用することができる。
【0030】
蛍光検出法以外の他の方法(下記段階d)に対する記載参照)によって混成化を検出しようとする場合には、このような標識過程は省略することができる。本発明で使用できる標的核酸の増幅方法には特別な制限はない。例えば、分岐DNA(bDNA; branched DNA)増幅、ハイブリッドキャプチャー(Hybrid capture)、リガーゼ連鎖反応(LCR; ligase chain reaction)、重合酵素連鎖反応(PCR)、核酸序列基礎増幅(NASBA; nucleic acid sequence based amplification)、逆転写−重合酵素連鎖反応(RT-PCR; reverse transcription-PCR)、鎖置換増幅(SDA; stand displacement amplification)、転写−媒介増幅(TMA; transcription mediated amplification)、及びローリングサークル増幅(RCA; rolling circle amplification)などの方法を使用することができる。
【0031】
段階b)は一般的な混成化反応であって、混成化緩衝液に核酸加水分解酵素を添加すれば長さが長い(例えば、200〜20,000bp、特に200〜5,000bpの長さ)標的核酸の場合、核酸加水分解酵素によって標的核酸が切り離れてプローブに接近が容易になって混成化効率を増加させる(図3参照)。
【0032】
段階c)は一般的な洗滌方法と同一な方法で行うところ、段階c)で核酸加水分解酵素を添加する場合、混成化反応の特異度を増加させる作用を示す(図2参照)。具体的には、確かに相補的な序列を有する標的核酸はPNAプローブと完全な二重本を形成することに比べて、塩基序列の一つが不一致である標的核酸は相補的な序列部分のみで混成化されて二重本を形成し、塩基が相補的でない部分では単一本で存在する部分的混成化の状態にある。ここで、単一本に特異的なDNA分解酵素を処理すれば完全に混成化された二重本の部分は分解されず、不完全に混成化された標的核酸は加水分解されて完全に混成化された標的核酸のみを選別することができるようになる。DNAが固定されたDNAチップはDNAプローブ自体が核酸加水分解酵素によって分解できるからこの方法を使用するには難しい。従って、本発明では核酸加水分解酵素に安定したPNAを用いて、図1から示されたようにPNAの核酸加水分解酵素に最も安定した性質はPNAとDNAとが完全に結合した部位は核酸加水分解酵素が認知できなくて強い結合をそのまま保持する反面、一つの塩基序列がミスマッチされているPNAとDNAとの結合は不安定な結合であるため、核酸加水分解酵素によって標的DNAが分解するようになる。その結果、PNAチップにはPNAとDNAとが完全に相補的に結合されている部分のみが残っている。
【0033】
本発明で使用可能な核酸加水分解酵素には特別な制限があるのではなく、DNase1、エキソヌクレアーゼ(exonuclease)及びエンドヌクレアーゼ(endo- nuclease)を単独又は混合して使用することができる。エキソヌクレアーゼやエンドヌクレアーゼの具体的な例としてはエキソヌクレアーゼ1(exonuclease 1)、S1ヌクレアーゼ(S1 nuclease)、マングビーンヌクレアーゼ(Mung bean nuclease)、リボヌクレアーゼA(ribonuclease A)、リボヌクレアーゼT1(ribonuclease T1)又はヌクレアーゼP1(nuclease P1)、などが挙げられる。核酸の特定塩基序列を切る制限酵素もこのような目的で使用することができる。特に、S1ヌクレアーゼは多様に用いられている核酸加水分解酵素であって、単一本の核酸と切れ目(nick)が形成された二重本の核酸を分解し、ループ(loop)やギャップ(gap)が形成されたヘテロ2本鎖核酸(heteroduplex DNA)も分解することができる(文献[Purifacation and Properties of S1 Nuclease from Aspergillus, Vogt VM, 1980, Methods in Enzymology, 65, 248-255])。このような特性を用いて一つの塩基がミスマッチされて切れ目を形成している標的核酸を除去して、一つの塩基差異の変異も正確に区別することができるようになる。
【0034】
段階d)は一般的な混成化検出方法を用いて行われるところ、蛍光検出法、電気的方法、電気化学的方法、質量変化を用いた検出法、電荷量変化を用いた検出法、又は光学的性質の差異を用いた検出法を用いることができる(文献[DNA biosensors based on Peptide Nucleic Acid (PNA) recognition layers, Wang J, 1998,Biosensors and Bioelectronics, 13, 757-762]、[Labelfree fully electronic nucleic acid detection system based on a field-effect transistor device, Uslu F et al., 2004, Biosensors and Bioelectronics, 19, 17231731]、[Direct ultrasensitive electrical detection of DNA and DNA sequence variations using nanowire nanosensors, Hahm J and Lieber CM, 2004, Nano Letters, 4, 51-54]、[Impedance-based detection of DNA sequences using a silicon transducer with PNA as the probe layer, A. Macanovic et al. 2004, Nucleic Acids Research, 32, e20]、[S. Manalis and T. Burg,US Patent 7,282,329 "Suspended microchannel detectors"]、及び[P. Warthoe and S. Iben, US Patent Application Publication 2004/0072208 A1 "Surface acoustic wave sensors and method for detecting target analytes"])。
【0035】
本発明による方法(例:前記方法3)を用いると、区別が容易でなかった一つの塩基差異も正確に区別することができるようになって、診断用チップで偽陰性及び偽陽性の結果を減らすことができて信頼度が大きく高められる。また、既存のオリゴチップで使用に限られていたサイズが大きい標的核酸を用いることができるようになって、多様なサイズの標的核酸を限られずに使用することができる。なお、標的核酸を様々な検出標識で標識して使用することができて、核酸の混成化によって単一本と二重本とを区別する全ての方法に適用できる。
【0036】
活性成分として核酸加水分解酵素を含む本発明の組成物は支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるために使用することができる。
【0037】
支持体に固定された複数のPNAプローブと核酸加水分解酵素を含む本発明の核酸検出用キットは標的核酸に含まれた複数のSNPと突然変異を検出することに使用することができる。本発明のキットは3つ以上のPNAプローブが含まれる。全体ゲノムのSNPと突然変異を検出するためのキットには数万又は数十万個のPNAプローブが含まれる。
【0038】
実施例
【0039】
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、これは本発明がよくわかるようにするためであって、本発明の範囲はいずれにも限られるものではない。
【0040】
製造例1:標的核酸製造のためのプライマーの合成
【0041】
本発明による標的核酸の製造のために、先ずPCRに使用するためのプライマーを合成した。プライマー序列は表2に示したように5つのサイズが異なるE. coliの16S rDNAの遺伝子部位から選んだ。また、表3から示されたように、B型肝炎ウイルスのラミブジン耐性遺伝子に反応できる部位から選んだ。PCRに使用するためのプライマーはビオチンが付着されないプライマーと5′末端にビオチンが付着されているプライマーの2種類をバイオニア(Bioneer、韓国)に依頼して合成した。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
製造例2:ビオチン化プライマーを用いたPCRによる標的核酸の製造
【0045】
鋳型DNAとしては韓国遺伝子銀行(Korean Collection for Type Culture)から分譲されたE. coli KCTC 1112から抽出したDNAを使用した。次のような条件でPCRを行ってDNAを増幅させた。
【0046】
鋳型DNA溶液(50ng/μl)2μl、表2に示された5つのビオチン化センスプライマー(20pmol/μl)1μl、及びビオチン化アンチセンスプライマー(20pmol/μl)1μl、dNTP(25mM)3μl、10×Taq緩衝液(MgCl含)5μl、0.2%BSA(bovine serum albumin)5μl、Taq(5U/μl、Solgent、韓国)0.2μl、蒸留水36.8μlの組成で94℃で5分間処理した後、94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を30回繰り返してから72℃で5分間さらに反応させた。
【0047】
反応が終わったPCR産物(130bp、280bp、450bp、759bp、1000bp)5μlにゲルローディング緩衝液(サンバイオ、韓国)1μlを入れ、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動した後、1μg/mlエチジウムブロマイド(EtBr)で染色してからUVトランスイルミネート(UV-transilluminator)で産物を確認した。各サイズ別の標的核酸の塩基序列及びプローブとプライマーの位置を図4に示し、電気泳動した結果を図5に示した。
【0048】
製造3:ビオチン−dCTPを用いたPCRによる標的核酸の製造
【0049】
鋳型DNAとしては韓国遺伝子銀行から分譲されたE.coli KCTC 1112から抽出したDNAを使用した。次のような条件でPCRを行ってDNAを増幅させた。
【0050】
鋳型DNA溶液(50ng/μl)2μl、表2に示された5つのセンスプライマー(20pmol/μl)1μl、及びアンチセンスプライマー(20pmol/μl)1μl、dNTP(2.5mM)2.45μl、11−ビオチン−dCTP(1mM)4μl、10×Taq緩衝液(MgCl含)5μl、0.2%BSA5μl、Taq(5U/μl、Solgent)0.2μl、蒸留水32.8μlの組成で94℃で5分間処理した後、94℃で1分、55℃で1分、72℃で1分を30回繰り返してから72℃で5分間さらに反応させた。
【0051】
反応が終わったPCR産物(130bp、280bp、450bp、759bp、1000bp)5μlにゲルローディング緩衝液(サンバイオ、韓国)1μlを入れ、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動した後、1μg/mlエチジウムブロマイド(EtBr)で染色してからUVトランスイルミネート(UV-transilluminator)で産物を確認した。各サイズ別の標的核酸の塩基序列及びプローブとプライマーの位置を図4に示し、電気泳動した結果を図5に示した。
【0052】
製造例:PNAチップの製作
【0053】
前記表1から示された序列番号10乃至13の精製されたPNAオリゴマーをPANArrayTMスポット緩衝液(パナジン、韓国)に50mMで希釈してエポキシ基がコーティングされたガラス板にピン方式でスポットし、75%湿度が保持される常温で4時間定置した。以後、ジメチルホルムアミド(DMF)に入れて15分間超音波洗浄し、0.1Mの無水コハク酸を添加したDMFに入れて40℃で2時間反応させ、残余アミン基を除去した。DMFで15分間洗滌し、3次蒸留水で15分間超音波洗滌した。以後、0.1Mエタノールアミンが入っている100mMトリス緩衝液(Tris-HCl)を入れて40℃で2時間反応して固体表面の残余エポキシ基を不活性化した。3次蒸留水を用いて5分間洗浄した後に乾燥した。
【0054】
比較例1:ビオチン標識プライマーを用いて増幅された標的核酸の混成化反応
【0055】
末端にビオチンが結合されたPCR産物をPANArrayTM混成化緩衝液(パナジン、韓国)100μlに5μl添加して使用し、この際蛍光反応を起すためにストレプトアビジン−Cy5を添加した。ガラススライドに100μlの混成化緩衝液を付与し、40℃で2時間反応させた。反応後にPANArrayTM洗滌緩衝液(パナジン、韓国)で常温で5分間2回洗滌し乾燥した(核酸加水分解酵素非添加群)。核酸加水分解酵素の添加群の場合、乾燥されたスライドに反応緩衝液100μl中、S1ヌクレアーゼ0.5μl(1U/μl)(Amersham Biosciences、米国)を付与し、37℃で1時間反応させた後、前記洗滌及び乾燥過程を繰り返した。蛍光スキャナー(Genepix 4000B、Exon、米国)を用いてスライドのイメージを分析した。その結果を図7乃至図12に示した。
【0056】
図7乃至図11に示したように、130bpの標的核酸では良好な特異信号サイズ及び特異信号と非特異信号の分離能(perfect match/mismatch ratio、 P/M比)を示したが、280bp、450bp、759bp、1000bpで標的核酸のサイズが大きくなることにつれて特異信号が減少することが見られた。特に、1000bpの標的核酸では非常に低い特異信号が発生されて特異信号と非特異信号の区別が難しかった(P/M比が2未満)。
【0057】
また、図12に示したように、核酸加水分解酵素を添加した場合、標的核酸の残余部分が除去されるため、信号が全く発生しなかった。前記結果からチップで核酸加水分解酵素が標的核酸を加水分解することを確認することができた。
【0058】
比較例2:ビオチン−dCTPを用いて増幅された標的核酸の混成化反応
【0059】
ビオチン−dCTPが結合されたPCR産物をPANArrayTM混成化緩衝液(パナジン、韓国)100μlに5μl添加して使用した。スライドに100μlの混成化緩衝液を付与し、40℃で2時間反応させた。反応後にPANArrayTM洗滌緩衝液(パナジン、韓国)で常温で5分間2回洗滌し乾燥した。乾燥されたスライドに蛍光反応を起すために混成化緩衝液100μlとストレプトアビジン−Cy5を混合して使用した。スライドに100μlの混成化混合液を満たして、40℃で30分間反応させた。反応後にPANArrayTM洗滌緩衝液(パナジン、韓国)で常温で5分間2回洗滌し乾燥した。蛍光スキャナー(Genepix 4000B、Exon、米国)を用いてガラススライドのイメージを分析した。その結果を図7乃至図11に示した。
【0060】
図7乃至図11に示したように、わりとサイズが小さい130bp乃至450bpの標的核酸の場合は核酸加水分解を添加しない場合にも比較的高い特異信号を得ることができるが、特異信号と非特異信号の分離能は多少劣り、サイズが大きい759bp乃至1000bpの標的核酸の場合は特異信号が減少し、特異信号と非特異信号との分離能が著しく劣ることが確認できた(1000bp標的核酸の場合、P/M比が2.3乃至3.5)。
【0061】
実施例1:ビオチン−dCTPを用いて増幅された標的核酸の混成化反応及び核酸加水分解酵素の処理
【0062】
ビオチン−dCTPが結合されたPCR産物をPANArrayTM混成化緩衝液(パナジン、韓国)100μlに5μl添加して使用した。スライドに100μlの混成化緩衝液を付与し、40℃で2時間反応させた。反応後にPANArrayTM洗滌緩衝液(パナジン、韓国)で常温で5分間2回洗滌し乾燥した。乾燥されたスライドに反応緩衝液100μl中、S1ヌクレアーゼ(Amersham Biosciences、米国)0.5μl(1U/μl)を添加して付与し、37℃で1時間反応させた。反応後、前記洗滌及び乾燥過程を繰り返した。乾燥されたスライドに蛍光反応を起すために混成化緩衝液100μlとストレプトアビジン−Cy5を混合して使用した。スライドに100μlの混成化混合液を満たして、40℃で30分間反応させた。反応後にPANArrayTM洗滌緩衝液(パナジン、韓国)で常温で5分間2回洗滌し乾燥した。蛍光スキャナー(Genepix 4000B、Exon、米国)を用いてガラススライドのイメージを分析した。その結果を図7乃至図11に示した。
【0063】
図7乃至図11に示したように、核酸加水分解酵素で処理した場合、標的核酸のサイズに大きく影響を及ぼさなく、759bpまでは130bpと比べて全く差異がないくらい信号強度50000乃至60000の高い特異信号を示し、特異信号と非特異信号の分離能を示すP/M比が8.3乃至11で末端標識された標的核酸を用いた比較例1に比べて約10倍高い結果を示した。また、サイズが大きい759bp乃至1000bpの標的核酸の場合は核酸加水分解酵素を添加した本発明の方法が核酸加水分解酵素を添加しない方法より特異信号がさらに大きく、特異信号と非特異信号との分離能も3倍以上大きいことを確認することができた。
【0064】
比較例3及び実施例2:B型肝炎ウイルスPNAチップにおける混成化反応
【0065】
本実施例では、既存の方法では特異信号と非特異信号とを区分することが難しかった180tプローブに対する本発明の効果を調べようとした。
【0066】
製造例1から製造された表3のプライマー(Hbv−F及びHbv−R)と鋳型DNAとしてジンイン(Genine、韓国)から入手したHBV DNAを使用して、製造例3と実質的に同一な方法で標的DNAを増幅させ、表1に示したHBVプローブ(序列番号14及び15)を用いて製造例4と実質的に同一な方法でPNAチップを製作した後、比較例2及び実施例1と実質的に同一な反応で混成化反応、又は混成化反応及び核酸加水分解酵素の処理を行い、その結果を図13に示した。
【0067】
核酸加水分解酵素を添加しない場合には特異信号のサイズと非特異信号のサイズが殆ど同じでPNAチップでHBV野生型と突然変異型を区分することができなかったが、核酸加水分解酵素を処理した場合は非特異信号が大きく減少してHBV野生型と突然変異型を区分することができた(P/M比=2.5)。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によると、支持体に固定したPNAプローブを使用する場合、標的核酸の混成化反応と同時に又は混成化反応後に核酸加水分解酵素を処理して非混成化された標的核酸を選別的に除去することにより、混成化反応の敏感度及び特異度を増加させて一つの塩基ミスマッチ(single mismatch)を容易に区別することができる。また、標的核酸の混成化反応時に核酸加水分解酵素を処理することによって、サイズが大きい標的核酸の混成化反応の効率を増加させて複雑な増幅方法及び前処理過程を経なくても長さが長い標的核酸の分析が可能であり、長い標的核酸に含まれた多数個のSNPや多数の突然変異を一度の標的核酸増幅で検出することができる。従って、多疾病に関与する遺伝子や突然変異を短時間内に優秀な敏感度及び特異度で検出することができ、区別が難しかったSNPを優秀な敏感度及び特異度で検出して多様な遺伝子を幅広く診断するに有用に使用することができる。
【序列目録のプレテキスト】
【0069】
序列番号1はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC1、EC2、及びEC3センスプライマーの塩基序列である。
序列番号2はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC1アンチセンスプライマーの塩基序列である。
序列番号3はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC2アンチセンスプライマーの塩基序列である。
序列番号4はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC3及びEC4アンチセンスプライマーの塩基序列である。
序列番号5はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC4センスプライマーの塩基序列である。
序列番号6はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC5センスプライマーの塩基序列である。
序列番号7はE. coliの16S rDNAの標的核酸を増幅するためのEC5アンチセンスプライマーの塩基序列である。
序列番号8はHBVのラミブジン耐性遺伝子の標的核酸を増幅するためのHbv-Fプライマーの塩基序列である。
序列番号9はHBVのラミブジン耐性遺伝子の標的核酸を増幅するためのHbv-Rプライマーの塩基序列である。
序列番号10はE. coliの16S rDNAの標的核酸と完全に結合することができるPNAプローブの塩基序列である。
序列番号11乃至13は序列番号10と一つの塩基が異なって設計されたPNAプローブの塩基序列である。
序列番号14はHBVのラミブジン耐性遺伝子の標的核酸と完全に結合することができるPNAプローブ(180w)の塩基序列である。
序列番号15は序列番号14と一つの塩基が異なって設計されたPNAプローブ(180t)の塩基序列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸の混成化反応において、標的核酸を断片化して標的核酸の大きさを減少させる、又は、PNAプローブとミスマッチ(mismatch)される標的核酸のみを選別的に分解する段階を含む、支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させる方法。
【請求項2】
標的核酸を断片化する又は分解するために核酸加水分解酵素(nuclease)を添加する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混成化反応の後、核酸加水分解酵素を添加する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
標的核酸の大きさが20bp乃至400bpである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
混成化反応と同時に核酸加水分解酵素を添加する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
標的核酸の大きさが200bp乃至20,000bpである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
標的核酸の大きさが200bp乃至5,000bpである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
標的核酸のPNAプローブと結合する部分が検出可能な標識で標識されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
検出できる標識がビオチン、ローダミン、シアニン3、シアニン5、ピレン、シアニン2、緑色蛍光蛋白質(GFP)、カルセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、アレクサ488、6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM)、2′,4′,5′,7′−テトラクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン(HEX)、2′,7′−ジクロロ−6−カルボキシ−4,7−ジクロロフルオレセイン(TET)、フルオレセインクロロトリアジニル、フルオレセイン、オレゴングリーン、マグネシウムグリーン、カルシウムグリーン、6−カルボキシ−4′,5′−ジクロロ−2′,7′−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、テトラメチルローダミン、テトラメチル−ローダミンイソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、ローダミン ファロイジン、ピロニンY、リサミン、X−ローダミン(ROX)、カルシウムクリムソン、テキサスレッド、ナイルレッド、及びチアジカルボシアニンから構成された群から選ばれるものである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
標的核酸が分岐DNA(bDNA)増幅、ハイブリッドキャプチャー、リガーゼ連鎖反応(LCR)、重合酵素連鎖反応(PCR)、核酸序列基礎増幅(NASBA)、逆転写−重合酵素連鎖反応(RT−PCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写−媒介増幅(TMA)、及びローリングサークル増幅(RCA)から構成された群から選ばれる方法によって増幅されたものである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
核酸加水分解酵素は、DNase1、エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼ、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項2に記載の方法。
【請求項12】
核酸加水分解酵素は、エキソヌクレアーゼ1、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼT1、リボヌクレアーゼP1、制限酵素、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項11に記載の方法。
【請求項13】
突然変異、一塩基変異多型(SNP)、遺伝型、遺伝子発現、スプライス−変異体又は後生学的(epigenetic)分析、又は再序列(resequencing)分析に使われる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
混成化を蛍光検出法、電気的方法、電気化学的方法、質量変化を用いた検出法、電荷量変化を用いた検出法、又は光学的性質の差異を用いた検出法によって検出する請求項1に記載の方法。
【請求項15】
活性成分として核酸加水分解酵素を含む、支持体に固定されたPNAプローブと標的核酸間の混成化効率又は特異度を増加させるための組成物。
【請求項16】
核酸加水分解酵素はDNase1、エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼ、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
核酸加水分解酵素はエキソヌクレアーゼ1、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼT1、ヌクレアーゼP1、制限酵素、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
支持体に固定された複数のPNAプローブ、及び、核酸加水分解酵素を含む核酸検出用キット。
【請求項19】
核酸加水分解酵素は、DNase1、エキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼ、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項18に記載のキット。
【請求項20】
核酸加水分解酵素は、エキソヌクレアーゼ1、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼA、リボヌクレアーゼT1、リボヌクレアーゼP1、制限酵素、及びこれらの混合物から構成された群から選ばれるものである請求項19に記載のキット。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−520747(P2010−520747A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550593(P2009−550593)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001068
【国際公開番号】WO2008/103015
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(310007128)パナジェン インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】PANAGENE INC.
【住所又は居所原語表記】Ssangyong Technology Research Center, 100, Sinseong−dong, Yuseong−gu, Daejeon 305−804 Republic of Korea
【Fターム(参考)】