説明

支持体着色手段

本発明は、支持体上に色を発生させるために用いられる触媒系に関する。本発明の手段は、1種以上の不活性化された酸化触媒を含むことを特徴とする。本発明は、有機または無機の支持体を着色させるために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、無機または有機材料、特に、皮膚等の生体材料である支持体を着色させるための手段、産物および方法である。
【背景技術】
【0002】
インクを用いて紙、布地等の支持体に印刷することが知られている。この種の技術は、現在、出願人の会社によって、インクによって供給される三原色(イエロー、シアンおよびマゼンタ)から開始して支持体の着色を行うために用いられている。黒は、黒インクを用いて得られ、白は、支持体自体によって与えられる。着色させられるべき支持体は、プリンターを通して、例えば、シートとして巻き戻され、プリンターは、有利にはコンピュータによって事前に描かれた設計にしたがって、1つのポイント毎に、数ナノリットルのインク滴を分配する。しかしながら、インクを分配するアームは、所望の強度を得るために複数回同じスポットを通り過ぎなければならず、時間を要する。
【0003】
さらに、いくつかの化学インクは、環境への汚染とみなされる。
【0004】
酵素の使用をベースとする技術が報告されている。このために、特許文献1には、酵素ルートによる布地の着色方法が開示されており、該方法は、1種以上の芳香族性またはヘテロ芳香族性の化合物を含む水溶液中に布地を浸漬する工程と、これに続く、浸漬済みの材料を、過酸化水素源とペルオキシダーゼ活性を示す酵素とを有するか、または、前記芳香族またはヘテロ芳香族化合物(単数または複数)に関してオキシダーゼ活性を有する水溶液中に浸漬する工程とを含んでいる。
【特許文献1】欧州特許第1342831号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この方法では、サンプルおよび非常に特定的には酸化触媒の種々の浸漬の間に固定される成分を制御していない。酸化触媒は、吸収によってのみ結合させられ、それ故に、洗浄操作の間に除去され得る。さらに、得られる色は、原色ではない。
【0006】
本発明者らは、これらのインクおよびこれらの酵素を、三原色(その組合せによって、着色物を得ることができる)を発生させることができる光活性化可能な触媒系と置き換えることによってこれらの問題を克服することができることを見出した。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、そのような系、およびそれらの使用に基づいて支持体上に色を発生させる方法であって、色は、望みの時期および望みのスポットにおいてのみ支持体上に表示される方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、支持体が複数回再使用され、最初に発生させられた色以外の色を発生させる得る支持体の着色法に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合の用語「支持体」は、無機または有機の材料、特に、皮膚等の生体材料を意味する。
【0010】
支持体上に色を発生させるために本発明により用いられる触媒系は、1種以上の不活性化された酸化触媒を含むことを特徴とする。
【0011】
ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等のオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ等のヒドロラーゼが特に挙げられるだろう。
【0012】
ペルオキシダーゼ(EC 1.11.1.7)は、物質に対するその非常に低い選択性の点でそれ自体特に有利な酵素として存在する。
【0013】
ラッカーゼ(EC 1.10.3.2)も用いられ得る。ペルオキシダーゼと同様に、それは、同一の基質を用いて酸化的カップリング反応を触媒する。
【0014】
アルカリホスファターゼ(EC 3.1.3.1)および酸ホスファターゼ(EC 3.1.3.2)は完全に特徴付けられるが、それらの基質は、ペルオキシダーゼ、ヘモグロビンまたはラッカーゼの基質より制限され、かつ、より高価である。
【0015】
ヘモグロビン、特に、ウシヘモグロビンは、ペルオキシダーゼ基質を酸化することが可能である:増幅現象を引き起こす時に目標とされるヘモグロビンの橋かけは、ペルオキシダーゼの性能に近づくことを可能にする。
【0016】
有利なことに、これらの触媒のための基質は多数あり、低コストで利用可能である。それらの酸化は、多数の水に不溶性の着色化合物を生じさせる(Conyers and Kidwell(1991),Anal.Biochem.,192,207−211)。
【0017】
他の酸化触媒は、ヘモグロビンを含む。
【0018】
これらの触媒の不活性化は、首尾良く、光解離性基を、特に、それらの活性部位に付与することによって惹起される。
【0019】
適切な基は、「ニトロフェニル」置換基であり、例えば、o−ニトロベンジルまたはニトロフェニル基を含む。
【0020】
例えば、4,5−ジメトキシ−o−ニトロベンジル、o−ニトロベンジル−エチルまたはo−ニトロベンジルが挙げられるだろう。
【0021】
本発明によると、酸化触媒は、芳香族化合物と組み合わせて用いられる色原体基質と会合させられる。
【0022】
用語「色原体基質(chromogenic substrate)」は、触媒と可逆的に作用し、触媒による酸化および芳香族化合物との縮合の後に結果として着色化合物を生じさせることができる化合物を意味すると理解される。
【0023】
一般に、本発明の触媒系は、光活性化されることおよび色を発生させるために十分な酸化活性を取り戻すことが可能な系である。
【0024】
例えば、ConyersおよびKidwell(1991)によって記載された基質(上記に引用)は、in situで沈着を生じさせる青色および赤色の不溶性生成物を迅速に与えるので、三原色(シアン、マゼンタおよびイエロー)を得るのに特に適している。
【0025】
3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(3-methyl-2-benzothiazolinone hydrazone:MBTH)およびフェニレンジアミン誘導体、例えば、ジメチルフェニレンジアミン、ジエチルフェニレンジアミン等が特に挙げられるだろう。
【0026】
酸化された色原体基質と反応し、結果として、着色させられた沈着物を得るために用いられ得る芳香族化合物として、クロロナフトール、ナフタレンジオール、アミノフェノール、カテコール、クロロフェノール、フェノールグアヤコール、または単環、二環または多環式の芳香族化合物のファミリーまたはヘテロ芳香族誘導体のファミリーのいずれかに属する任意の他の分子が挙げられるだろう。
【0027】
本発明は、支持体上に色を発生させる方法であって、光刺激作用下で、前記支持体に含浸している上記に規定された1種以上の不活性化された酸化触媒を再活性化する工程を包含することを特徴とする方法を目標とする。
【0028】
それ故に、本発明の実施を可能にするために、酸化触媒は、一時的に不活性化される。それらの再活性化は、所望のスポットおよび所望の時期に色を発生させることを可能にする。
【0029】
好ましくは、本方法は、
a)支持体に含浸している1種以上の酸化触媒を光可逆的に阻害する段階と、
b)段階a)の結果として得られた状態の一時的に不活性化された1種または複数種の酸化触媒を、着色させられるべき支持体上に固定化する段階であって、該固定化段階は、特に、着色させられるべき支持体を、1種または複数種の不活性化された酸化触媒を含む溶液中に浸漬することによって行われる、段階と、
c)段階b)の結果として得られた状態の含浸支持体を光刺激する段階であって、該段階は、一時的に不活性化された1種または複数種の酸化触媒を再活性化することが可能である、段階と、
d)段階c)の結果として1種または複数種の酸化触媒が固定化された支持体に、1種以上の光原体基質および1種以上の酸化剤を含む溶液を含浸させ、この結果、支持体上における光刺激によって活性化されたスポットに色を発現させることを可能にする段階と
を包含する。
【0030】
段階a)は、有利には、使用される酸化触媒を、上記に規定された光解離性基を含む化合物と反応させることによって行われる。o−ニトロベンジル基を含む化合物は、この点で特に有利である。これは、これらの化合物が共有結合により(特に活性部位内の)アミノ酸、例えば、リジン、アスパラギン、グルタミン、システインユニットと自発的に結合し得るからである。このため、リジンへとの結合のために、有利には、クロロギ酸3,4−ジメトキシ−o−ニトロベンジル等の化合物の使用がなされる。反応は、水性媒体中で行われ得る。カルボキシル基を含むユニット、例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸ユニットとの反応のために、ジアゾエタン誘導体が、ヒドラゾンエタン誘導体から調製される。
【0031】
段階b)は、所望の色強度を得ることを可能にする条件下に溶液中の触媒を支持体に含浸させる工程を包含する。
【0032】
支持体は、例えば、天然繊維、特に、綿から作られたもの、および/または合成繊維、特に、ポリマー材料、例えば、ポリエステルから作られたものから形成された布地である。支持体は、紙であってもよい。
【0033】
触媒溶液は、有利には水溶液であり、HRPについては5〜50μg/ml、Hbについては50〜200μg/ml程度の触媒量を含み、pHの範囲は、約4〜6である。
【0034】
固定化段階b)の前に、着色させられるべき支持体に1種または複数種の酸化触媒を結合することが可能な1種以上の添加剤を含む溶液を、着色させられるべき支持体に含浸させる予備的な段階が有利には行われる。
【0035】
本発明の方法の一実施形態によると、着色させられるべき支持体が合成布地である場合、予備段階である、アルギン酸塩、特にアルギン酸カルシウムによる含浸が行われる:この酸性多糖類の存在は、水溶性カルボジイミド[EDCI:N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド メト−p−トルエンスルホネート]/N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の対によりNHSエステル官能基を与えるカルボキシル官能基の活性化の後に、共有結合による布地上への大量の酸化触媒の固定化を可能にする。
【0036】
予備段階の含浸において、布地表面(1cm)に存在するアルギン酸は、水中で5〜30分にわたり、約2〜4mlで変動する容積でEDC/NHS対(200μg/200μg)によって活性化される。
【0037】
活性化された布地は、前に指定された濃度の酸化触媒の溶液中に浸される。溶液のpHは6〜7に維持される。カップリング時間は、約30〜90分で変動する。
【0038】
本発明の別の好ましい変形によると、着色させられるべき支持体を活性化し、該支持体に1種以上の添加剤を含む溶液を含浸させる予備段階が終結すると、乾燥段階が行われる。乾燥は、有利には、触媒に損傷を与えないように冷条件下に行われる。
【0039】
再活性化に必要な光刺激は、5〜30分にわたり366nmで行われる。
【0040】
段階d)のために、支持体は、1種以上の光原体基質(これは、触媒のための基質である)、1種以上の芳香族化合物および1種以上の酸化剤を含む溶液を含浸させられる。
【0041】
基質の濃度は、1〜4mMで変動し、酸化剤の濃度は、1mMに固定される;基質の対のメンバーのそれぞれの濃度は、約1〜4mMで変動する。この混合物は、pH約4.5〜6の緩衝媒体において、約20〜25℃の温度で、単色または複数色の着色が発現するまで生じさせられる。
【0042】
酸化された基質の芳香族化合物との縮合により結果として、着色させられた化合物が形成され、この化合物は、前駆体(光原体基質)の変換の活性部位にin situで沈着する。
【0043】
光原体物質の存在下に着色させられるべき支持体が無色を維持するために、酸化触媒の活性の完全な阻害を得ることが必要である。
【0044】
用語「完全な阻害」は、約80〜100%、好ましくは約90〜98%で変動する阻害を意味すると理解される。
【0045】
光分解による酸化触媒の再活性化は、それが例え部分的であったとしても、色を発生させる方法の引き金となるのに十分である。
【0046】
用語「部分的な再活性化」は、約10〜30%、好ましくは約20〜25%で変動する再活性化を意味すると理解される。それ故に、照射後の約25%程度の触媒の活性の回復は、色を発生させる方法の引き金となるのに十分である。
【0047】
光刺激作用下に、光解離基は、光分解によって除去されるが、その間、初期のターゲット(酸化触媒)は化学的に損なわれず、かつ、生物学的に活性に保持される。得られた酸化触媒は、部分的に再活性化される。
【0048】
芳香族基質、完全にまたは部分的に再活性化された酸化触媒、酸化剤および芳香族化合物が関与する化学反応が続いて起こり、結果として、着色物が得られる。
【0049】
本発明の方法には、特に、インクを用いる従来の着色法と比較して複数の利点がある。これは、本発明の方法によると、ポイント毎の印刷(point by point printing)によるよりも速い支持体の着色、より良好な解像度(固定化された酸化触媒の寸法に対応する画素サイズ)、ヘッドのインク分配物の遮断に関係する課題解決を得ることができるからである。
【0050】
本発明はまた、前記系が、核医学においてガンマ光子のインビボ発光「ホットスポット」を置くための柔軟性が有る透明な光酵素フィルムである方法を目標とする。皮膚に貼り付けられたフィルム上へのカラー染色の開発は、例えば、外科的治療前に病的細胞生育(例えば、乳癌の前哨節)のポイントを置くことを可能にする。この方法は、都合よく、ガンマシンチグラフィーカメラの使用によって課される制約から解放されることおよび核医学における専門家の型にはまった操作への関与を相当低減させることを可能にする。
【0051】
本発明はまた、上記に規定された方法であって、支持体が、巨大分子、例えば、セロファンからなり、かつ、上記の光酵素系を担持する方法を目標とする。皮膚と接触するフィルム面は、ガンマ光子に対するコリメータとして機能を果たすように溝が彫られる。
【0052】
大きな興味がある本発明のさらに別の形態によると、本発明は、化粧品において皮膚上に色を発生させる方法の適用を目標とする。
【0053】
本発明の他の形態および利点は、下記実施例において明らかになる。実施例は、綿またはポリエステルから作られた支持体上への色の発生を例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
(実施例1:ヘモグロビンの使用)
(1)ヘモグロビンの光可逆的阻害)
ウシヘモグロビン水溶液(32μM)が、種々の濃度の1−(2−ニトロフェニル)エチルジアゾエタン(NPE−diazo)のDMSO溶液により、20℃で1時間にわたり暗所において処理された。DMSOの最終濃度は、5%を超えないようにした。NPE−diazoの濃度は、ヘモグロビンに対して50〜100等量で変動した。カップリング反応は、100mMの酢酸塩緩衝液(pH4.4)の添加(NPE−diazoに対して1等量)によって停止させられた。接触時間は、10〜30分で変動した。反応混合物は、続いて、水に対して、4〜20℃で、1〜16時間、1000容積の水に対して透析された。接合体は、20℃で貯蔵された。
【0055】
ABTS[2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリノン−6−スルホン酸のジアンモニウム塩,1mM]の酸化の阻害の百分率が測定された後に、酢酸ナトリウム緩衝液(50mM,pH5)中、1mMの過酸化水素の存在下での96ウェルミクロ滴定プレート(Costar,Corning Incorporated)を用いた透析が行われた。ヘモグロビン1分子当たりの結合分子数は、質量分析器(エレクトロスプレイ)によって測定された。結果は、表1に列挙される。
【0056】
【表1】

【0057】
NPE−diazoによるヘモグロビンの処理の結果として、酸化活性の強い阻害(90%超)がもたらされた。
【0058】
(2)酸化触媒の光再活性化)
酸化触媒は、種々の接合体(1mg/ml)の酢酸ナトリウム緩衝液溶液(25mM,pH4.4)を照射することにより再活性化された。光分解は、366nmで行われ(100WのUVランプ、7mW/cm、30cmの距離);照射時間は、5〜30分で変動した。この段階は、光分解産物とヘモグロビンとの間で起こりえる交差反応をトラップするために、有利には、5mMの2−エタノールアミンの存在下に行われた。
【0059】
30分にわたり照射した後、ヘモグロビンの脱保護が完結した。
【0060】
酵素活性の回復は、上記のミクロ滴定プレートにおいて、ABTS(1mM)およびH(1mM)の存在下に測定された。
【0061】
30分にわたる照射の後、Hb−50については活性の57%、Hb−75については活性の28%、Hb−100については活性の16%が回復させられた。これらの活性の百分率は、続いて色を発生させる方法の引き金となるのに十分である。
【0062】
(3)着色させられるべき支持体への酵素の結合)
酸化触媒であるウシヘモグロビンは、アルギン酸カルシウムを事前に含浸させられたポリエステル布地と共有結合する。
【0063】
多糖類のカルボキシル官能基は、水中で、EDC/NHS対の存在下に、10〜30分で変動する時間の期間にわたって、活性化された。カルボジイミド/N−ヒドロキシスクシンイミド活性剤の量は、2〜4mlで変動する容積において、布地1cm当たり、各200μgであった。このようにして活性化された布地は、50〜200μg/mlの濃度、pH6で酸化触媒溶液中に漬けられた。インキュベーション時間は、45〜90分で変動した。
【0064】
これらの条件下に、布地は、それ故に、酸化触媒を再活性化するために照射される準備が整い、次いで、ヘモグロビン基質の対(単数または複数)を含む溶液を含浸させられる。
【0065】
(4)光原体基質および酸化剤の対による含浸)
a)DMPDA/4−クロロナフトール対の使用
上記の再活性化された布地は、pH4.5〜6に緩衝され、ジメチルフェニレンジアミン(水で調製された母液,110mM)および4−クロロナフトール(エタノールで調製された母液,110mM)を含む溶液に漬けられた。それらの最終濃度は、1〜4mMで変動した。酸化剤である過酸化水素が添加された;その濃度は、有利には、1mMに固定された。反応は、20〜25℃で青色が発現するまで行われた。
【0066】
b)MBTH/4−クロロナフトール対の使用
上記a)において記載されたように、再活性化された布地は、pH4.5〜6に緩衝され、3−メチルベンゾチアゾリン(MBTH,水で調製された母液,110mM)、4−クロロナフトールおよび酸化剤を含む溶液に漬けられた。種々の構成要素の濃度および操作条件は、a)についてのものと同一である。本例の場合には、赤色が発生させられた。
【0067】
c)MBTH/1,3−ナフタレンジオール対の使用
上記a)において記載されたように、再活性化された布地は、pH4.5〜6に緩衝され、3−メチルベンゾチアゾリン(MBTH)、1,3−ナフタレンジオール(エタノール調製された母液,110mM)および酸化剤を含む溶液に漬けられた。種々の構成要素の濃度および操作条件は、a)についてのものと同一である。本例の場合には、黄色が発現させられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に色を発生させるための触媒系であって、1種以上の不活性化された酸化触媒を含むことを特徴とする触媒系。
【請求項2】
酸化触媒は、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等のオキシダーゼ、およびアルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ等のヒドロラーゼであることを特徴とする請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
酸化触媒はヘモグロビンであることを特徴とする請求項1に記載の触媒系。
【請求項4】
酸化触媒は、光解離性基によって不活性化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の触媒系。
【請求項5】
光解離性基は、o−ニトロベンジル、o−ニトロフェニル基等のニトロフェニル基であることを特徴とする請求項4に記載の触媒系。
【請求項6】
酸化触媒は、光原体基質の対と会合させられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒系。
【請求項7】
前記基質は、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノン(MBTH)およびフェニレンジアミン誘導体、例えば、ジメチル−フェニレンジアミン、ジエチルフェニレンジアミンから選ばれることを特徴とする請求項6に記載の触媒系。
【請求項8】
酸化された光原体基質と反応し、結果として、着色させられた沈着物を生じるように用いられ得る芳香族化合物は、単環、二環または多環式の1種または複数種の芳香族化合物であることを特徴とする請求項6または7に記載の触媒系。
【請求項9】
前記芳香族化合物は、クロロナフトール、ナフタレンジオール、アミノフェノール、カテコール、クロロフェノール、フェノールおよびグアヤコールから選ばれることを特徴とする請求項8に記載の触媒系。
【請求項10】
支持体上に色を発生させる方法であって、光刺激作用の下、前記支持体に含浸している請求項1〜9のいずれか1つに記載された1種以上の不活性化された酸化触媒を再活性化する工程を包含することを特徴とする方法。
【請求項11】
a)支持体に含浸している1種以上の酸化触媒を光可逆的に阻害する段階と、
b)着色させられるべき支持体上に、段階a)の結果として得られた状態の一時的に不活性化された1種または複数種の酸化触媒を固定化する段階であって、該固定化段階は、特に、着色させられるべき支持体を、不活性化された1種または複数種の酸化触媒を含む溶液に浸漬することによって行われる、段階と、
c)段階b)の結果として得られた状態の含浸支持体を光刺激し、該段階は、一時的に不活性化された1種または複数種の酸化触媒を再活性化することを可能とする、段階と、
d)段階c)の結果として1種または複数種の酸化触媒が固定化された支持体に、1種以上の光原体基質および1種以上の酸化剤を含む溶液を含浸させ、それにより、支持体上における光刺激により活性化されたスポットに色を発現すること可能にする段階と
を包含することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
支持体は、天然繊維、特に、綿から作られたもの、および/またはポリマー材料、例えばポリエステルから作られた合成繊維から形成された布地または紙によって形成されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
固定化段階b)の前に、着色させられるべき支持体に1種または複数種の酸化触媒を結合することが可能な1種以上の添加剤を含む溶液を、着色させられるべき支持体に含浸させる予備段階が行われることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
着色させられるべき支持体が合成布地である場合に、アルギニン酸塩、特にアルギン酸カルシウムによる予備含浸段階が行われることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
水溶性カルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミド対を特に使用してカルボン酸官能基を活性化して活性化エステルを与える段階を行うことによる酸化触媒の共有結合段階を包含することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
着色させられるべき支持体に、1種以上の添加剤を含む溶液を含浸する予備段階終結後に、乾燥段階が行われることを特徴とする請求項11〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
系は、柔軟性のある透明な光酵素フィルムであることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
支持体は巨大分子からなり、かつ、光酵素系を担持することを特徴とする請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2007−537368(P2007−537368A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512296(P2007−512296)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001216
【国際公開番号】WO2005/115613
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506381614)
【出願人】(506381625)
【Fターム(参考)】