説明

支持体補強された熱活性可能な接着剤

不織布支持体(T)と、該不織布支持体の両面上に配置される、熱活性可能な接着剤(1、2)からなる二つの層とを含む接着フィルムであって、
該不織布支持体の両面上に浸透させる接着剤(T1、T2)がそれぞれ、接着フィルム複合体における該不織布支持体(T)の繊維間体積の少なくとも10%になるという条件で、該接着フィルム複合体における該不織布支持体(T)の繊維間体積の全体で20%〜92%が該接着剤で浸潤されるように、両方の接着剤(1、2)が該不織布支持体に浸透していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布支持体と、熱活性可能な接着剤からなる二つの層とを含む、特に金属部材を合成樹脂、ガラス又は金属に対して接着させるための接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材を、合成樹脂、ガラス又は金属に対して接着させるのに、慣用的に両面感圧接着テープが使用されている。これによって達成可能な接着力は、多くの場合において様々な下地に対する金属部材の固定及び取り付けに十分である。金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、鋼、特殊鋼並びにクロメート処理を施した鋼が使用される。合成樹脂としては、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン−アジパート(PPA)、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)又はこれら合成樹脂をベースとするブレンドが接着される。
【0003】
しかしながら、とりわけ携帯型の家庭用電化製品(EC)については、絶え間なく要求が高まっている。一方で、これら物品はますます小さく形成されるため、接着面もますます小さくなる。他方、携帯型の機器は比較的広い温度範囲で使用され、更には、機械的負荷、例えば、衝突や落下に耐えなければならないため、接着に対する追加の要求が増えている。
【0004】
これらの必要条件(Vorraussetzungen)は、金属−金属接着、及び合成樹脂に対する金属の接着には非常に問題である。合成樹脂が落下時にエネルギーの一部を吸収する一方で、硬い金属部材は、ほんの僅かなエネルギーしか消散させることができない。それに加えて、ますますより硬質な及び/又はガラス繊維強化された合成樹脂に向かう傾向があり、これは確かにより安定ではあるが、より小さい衝撃吸収能を有し、これはガラスにも当てはまる。これらの場合、接着テープが、加えられたエネルギーのほとんどを吸収しなくてはならない。
【0005】
さらには、とりわけ異なる材料を相互に接着する場合、異なる熱膨張係数が問題である。急速な温度変化の場合、部材間にストレスが生じる場合がある。前述の問題に関するそのような機器の特性を向上させるための可能性の一つが、接着に熱活性可能なフィルムを使用することにある。
【0006】
熱活性可能な接着剤は、基本的に二つのカテゴリーに分けることができる。
a) 熱可塑性で熱活性可能な接着剤、特にフィルム。
b) 反応性で熱活性可能な接着剤、特にフィルム。
【0007】
“熱活性可能な接着剤(hitzeaktivierbare Klebemasse)”(文献では “waermeaktivierbare Klebmasse”とも呼ばれる)とは、熱エネルギーの供給によって、そして任意にではあるが慣習的に圧力を作用させることによって活性化する接着剤を意味する。その施用は、特に溶融物から、又は低温時にフィルム形態で行われ、その際、該フィルムの基材上への固定(粘着)は、加熱時に、そして場合によって加圧下で行われる。
【0008】
冷却時に接着が起こり、その際、特に、二つの系の間に差異がある:熱可塑性で熱活性可能な系(ホットメルト型接着剤)は、冷却時に物理的に固まり(一般に、可逆的である)、他方、熱活性可能なエラストマー/反応性成分系は、化学的に固まる(一般に、不可逆的である)。
【0009】
ここで、反応性成分を熱可塑性で熱活性可能な系に添加することによって、化学的固化も生じさせることができ、これは、物理的な固化に追加して行うこともできる。
【0010】
熱活性可能な接着剤は、しばしばフィルム形態で供給され、これは、室温では非粘着性である(室温では、熱活性可能な接着剤は程度の差はあれ固形の性質なので、これは一般に支持体を含む系としても、支持体を含まない系としても良好に製造可能である。)。これにより、接着剤は、接着前には既に接着箇所の形態に適合させておくことができる(例えば、接着箇所の形態に一致させたフィルムダイカットでの提供による)。熱エネルギーの供給及び場合によって追加的な圧力作用によって、前述のように接着を起こさせる。
【0011】
この用途に従来技術に従って使用されている熱活性可能な接着剤をベースとする接着フィルム系はいくつかの欠点を有する。高い衝撃耐性を達成するために(携帯電話(Mobilfunktelefon)を地面に落とすような場合)、接着するのに比較的柔軟でかつ弾性の熱可塑性プラスチックが使用される。その柔軟性及び弾性のために、これら熱可塑性フィルムは、ダイカット性が比較的悪い。
【0012】
熱可塑性プラスチックのさらなる欠点は、熱接着プロセスにおいて同様に明らかになる。粘性が、熱エネルギーによって著しく減少するため、その接着プロセスの間に、加圧下で可塑化材料が接着部の継ぎ目から絞り出されて望ましくない。これは、大抵、フィルムの肉厚減及び変形を招くことになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology“ von Donatas Satas (van Nostrand, 1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故、良好に施用でき、圧力の影響下での使用時でさえも絞出挙動を全く示さないかまたは僅かにしか示さず、更には接着状態において非常に良好な衝撃吸収性及び機械的応力の均しを保証する−特に熱可塑性の−熱活性可能な接着系に対する要求が存在する。したがって、本発明の課題はそのような系を提供することである。
【0015】
上記の課題は、不織布支持体及びその不織布支持体の両面上に配置された、熱活性可能な接着剤からなる二つの層を含む接着フィルムによって解決され、該接着フィルムは、該不織布支持体の両面上に浸透させる接着剤がそれぞれ、接着フィルム複合体の不織布支持体の繊維間体積の少なくとも10%になるという条件下で、該接着フィルム複合体における不織布支持体の繊維間体積の全体で20%〜92%が接着剤で浸潤される(浸潤度20%〜92%)ように、両方の接着剤が該不織布支持体中に浸透していることを特徴とするものである。
【0016】
不織布支持体の繊維間体積とは、接着フィルム複合体における不織布支持体の全体積(浸潤した領域及び浸潤していない領域)から、不織布繊維の体積を除いた体積である。
【0017】
接着フィルム複合体とは、不織布支持体及び二つの熱活性可能な接着剤層からなる複合体を指し示し、それはすなわち、別途示さない限り接着されていない状態にある(つまり、施用後に、基材全体の圧迫によって接着複合体の厚さも体積も減少している、供与状態にあるということである)。
【0018】
不織布支持体中へ浸潤した接着剤の体積は、本発明によれば、接着フィルムにおけるその不織布支持体の繊維間体積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、そして最大で92%、就中最大80%である。
【0019】
接着剤が浸潤していない不織布支持体の領域の体積は、対応して、接着フィルム複合体における不織布支持体の繊維間体積の8%〜80%、好ましくは20〜60%である。
【0020】
本発明によれば、不織布支持体の面上に浸透する接着剤の体積は、それぞれ、支持体材料の繊維間体積の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%である。支持体表面に対してより多くの接着剤が浸透するほど、接着剤層は支持体上により良好に固着される。
【0021】
図1及び図2に基づいて、本発明の対象の本発明に従う原理を図式的に述べるが、それらに描かれている製品構成部材によって制限されることを意図するものではない。
【0022】
本発明の接着フィルムは、不織布支持体Tと、熱活性可能な接着剤1及び2の二つの層とを含み、それら層が熱活性可能な接着フィルムの表面を形成している。二つの接着剤層1及び2は、不織布支持体T中の支持体表面に浸透し、その結果、支持体Tの接着剤が浸潤した二つの領域T1及びT2がもたらされる(以下で、浸透領域T1及びT2とも称し、T1は、接着剤1が浸潤した支持体領域、そしてT2は接着剤2が浸潤した支持体領域を指し示す)。本発明によれば、浸潤した支持体領域T1とT2との間には接着剤が浸潤していない領域T0が残されているべきである。
【0023】
接着フィルムの外側面上には、支持体材料の外側にある二つの接着剤層1a及び2aが残される。
【0024】
現実には、浸透領域T1と浸潤していない領域T0との間の境界面、並びに浸透領域T2と浸潤していない領域T0との間の境界面には、完全に浸潤された支持体材料から浸潤されていない支持体材料への、程度の差はあれ強い移行部が生じる。その上、その境界面は、平坦ではあるが、その平坦さは完全ではなく、これは、就中、不織布材料の繊維の圧密さの変動のせいである。その境界面の実際の推移は、就中、支持体上への接着剤の施用の仕方、及びその際の条件に依存する。前述の浸透領域に対する百分率の記載は、そのような誤差を含むものと理解されるべきである。
【0025】
本発明によれば、好ましくは、理想的な実施形態として、浸透領域T1及びT2が接着剤で完全に浸潤されていて、かつ、浸潤されていない支持体領域T0が、接着剤で全く浸潤されていなく、そして境界面が非常に好ましくは平坦なプロフィルを有する接着テープが目的とされる。
【0026】
一般に、不織布材料における広範囲に均一な繊維の分布を前提とし得る。さらに、本発明の対象は、不織布支持体、及び該不織布支持体の両面上に配置される熱活性可能な接着剤からなる二つの層を含む接着フィルムであり、その際、両方の接着剤は、該不織布支持体の両面のそれぞれにおいて不織布支持体の厚さの少なくとも10%が浸潤されるという条件で、接着フィルム複合体における不織布支持体の層厚の全体で20〜92%、好ましくは40〜80%が接着剤で浸潤されるように、該不織布支持体中へ浸透されている。
【0027】
ここで、上記の百分率値は、不織布支持体の浸潤された領域と浸潤されていない領域との間の平坦に正規化された(planar−normierte)境界面に関連する。
【0028】
支持体不織布の内部では、支持体不織布の層厚の8%〜80%の厚さ、特に支持体不織布の層厚の20%〜60%の厚さを有する帯状部分は、接着剤で浸潤されないのが好ましい。
【0029】
本発明の好ましい一実施例において、支持体不織布Tの浸潤は対称的に遂行される、すなわち、上面及び下面に対する浸透の深さ(浸透領域T1及びT2)は同じである。そのような実施形態が、図1に図解的にかつ例示的に示されている。
【0030】
例えば、接着剤の施用時に、支持体不織布構造及び/又は方法の仕方により、浸潤の深さに関する差を生じさせることができる。それ故、本発明の更なる有利な実施形態は、異なる厚さの浸透領域(T1、T2)を有する。図2は、本発明のそのような実施形態を図解的に示している。
【0031】
別途示されていないか、又は文脈から明らかでない限り、本発明の接着フィルムに関する全ての記載は上記の両方の実施形態に関係する。接着フィルムという用語は、本明細書の範囲内で、例えば、接着テープのような全ての平坦な形成物、特に、すなわち長手方向及びその長手方向に対する横方向における広がりが、その形成物の厚さよりも明らかに大きいものをも包含する。
【0032】
不織布支持体Tの接着剤が浸潤していない領域T0は、好ましくは、連続した領域からなる、つまり、複数の区切られた体積領域からなるものではない。
【0033】
本発明の熱活性可能な接着剤には、基本的に、熱可塑性の熱活性可能な系も、熱活性可能なエラストマー/反応性成分系も使用できる。しかしながら、本発明の熱活性可能な接着フィルムの意図される使用範囲には、両面が熱可塑性の熱活性可能な系がより良好に適していて、かつ、とりわけより大きな使用範囲を有するため、該系が非常に好ましい。
【0034】
熱可塑性の熱活性可能な接着剤が一方の面上に、そして熱活性可能なエラストマー/反応性成分系接着剤が他方の面上に施された系も実現可能である。
【0035】
不織布支持体の一方の面上の熱活性可能な接着剤1、及び、熱活性可能な接着剤2は、本発明の好ましい一実施形態においては同じであるが、互いに独立して選択することもできる。それ故、不織布支持体の他方の面上の塗膜は、化学的に同一、化学的に類似であることができるが(例えば、同じ化学ベースではあるが、異なる平均分子量及び/又は添加剤)、化学的に異なることもできる(例えば、異なる化学ベース)。
【0036】
熱活性可能な熱可塑性プラスチック
特に好ましくは、本発明の接着フィルムの熱活性可能な接着剤は、熱可塑性ポリマーをベースとする。熱活性可能な接着剤としての用途としては、これらの系は従来技術においてよく知られている。
【0037】
本発明には、原則的に全てのアモルファス熱可塑性プラスチック及び部分結晶性の熱可塑性プラスチックが使用でき、これらは、熱活性下でプラスチック、金属部品、又はガラスに対して金属部品を接着するのに適している。
【0038】
好ましい方法の一つにおいて、少なくとも85℃、及び最高で150℃の軟化点を有する熱可塑性プラスチックが使用される。熱可塑性プラスチックの塗付量は、好ましくは10〜250g/m2、特に好ましくは20〜150g/m2である。この値は、塗布された支持体不織布の面ごとに関するものである。
【0039】
熱活性可能な接着剤のためのベースとして適した熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、熱可塑性ポリウレタン及びポリオレフィン(例えば、ポリエチレン類(市場から入手可能な例:Hostalen(登録商標)、Hostalen Polyethylen GmbH)、ポリプロピレン(市場から入手可能な例:Vestolen P(登録商標)、DSM))であるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
さらに、異なる熱可塑性プラスチック類からなる、特に、上述のポリマー類からなるブレンドも使用できる。
【0041】
更なる実施形態においては、ポリ−α−オレフィンが使用される。Degussa社からは、Vestoplast(商標)の商品名で様々な熱活性可能なポリ−α−オレフィンが市場から入手可能である。
【0042】
最も簡単な別形において、接着剤は熱可塑性成分だけからなる。しかしながら、有利なさらなる発展形は、更なる構成成分の添加によって特徴付けられる。
【0043】
接着技術的特性及び活性化領域を最適化するために、接着力を増大させる樹脂又は反応性樹脂を任意に追加することができる。その樹脂の割合は、熱可塑性プラスチックあるいは熱可塑性ブレンドに基づいて2〜30重量%である。
【0044】
追加される、粘着性付与樹脂としては、例外なく、前述及び文献に記載の全ての粘着樹脂が使用可能である。ピネン樹脂、インデン樹脂及びロジン樹脂、それらの不均化された、水素化された、重合された、エステル化された誘導体及び塩類、脂肪族炭化水素樹脂及び芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂、並びにC5−炭化水素樹脂、C9−炭化水素樹脂並びにその他の炭化水素樹脂がその代表として挙げられる。結果として得られる接着剤の特性を所望どおりに調節するために、これらの、及び更なる樹脂の任意の組み合わせが使用できる。一般に、適当なポリアクリレート類と相溶性(溶解性)の全ての樹脂を使用することができ、特に、全ての脂肪族、芳香族、アルキル芳香族炭化水素樹脂、単一のモノマーをベースとする炭化水素樹脂、水素化炭化水素樹脂、機能性炭化水素樹脂並びに天然樹脂が挙げられる。“Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology“, Donatas Satas (van Nostrand, 1989)(非特許文献1)における知識水準の説明を特に挙げておく。
【0045】
さらに別の実施形態において、熱可塑性プラスチックに反応性樹脂が追加される。特に好ましい群は、エポキシ樹脂を含む。そのエポキシ樹脂の分子量は、100g/モル〜高分子量エポキシ樹脂の最大10,000g/モルまで様々に異なる。
【0046】
エポキシ樹脂には、例えば、ビスフェノールA及びエピクロルヒドリンからの反応生成物、フェノール及びホルムアルデヒドからの反応生成物(ノボラック樹脂)及びエピクロルヒドリン、グリシジルエステル; エピクロルヒドリン及びp−アミノフェノールからの反応生成物が挙げられる。
【0047】
好ましい市場商品例は、例えば、Ciba GeigyのAraldite(商標)6010、CY−281(商標)、ECN(商標)1273、ECN(商標)1280、MY 720、RD−2、Dow ChemicalのDER(商標)331、DER(商標)732、DER(商標)736、DEN(商標)432、DEN(商標)438、DEN(商標)485、Shell ChemicalのEpon(商標)812、825、826、828、830、834、836、871、872、1001、1004、1031等、及び同様にShell ChemicalのHPT(商標)1071、HPT(商標)1079である。
【0048】
商業的な脂肪族系エポキシ樹脂の例は、例えば、ビニルシクロヘキサンジオキシド、例えば、Union Carbide Corp.のERL−4206、ERL−4221、ERL 4201、ERL−4289又はERL−0400である。
【0049】
ノボラック樹脂としては、例えば、Celanese のEpi−Rez(商標)5132、Sumitomo ChemicalのESCN−001、Ciba GeigyのCY−281、Dow ChemicalのDEN(商標) 431、DEN(商標) 438、Quatrex 5010、Nippon KayakuのRE 305S、DaiNipon Ink ChemistryのEpiclon(商標)N673又はShell ChamicalのEpicote(商標) 152が使用できる。
【0050】
それ以外に、反応性樹脂として、メラミン樹脂、例えば、CytecのCymel(商標)327及び323も使用することができる。
【0051】
更には、反応性樹脂として、テルペンフェノール樹脂、例えば、Arizona ChemicalのNIREZ(商標) 2019も使用することができる。
【0052】
他には、反応性樹脂として、フェノール樹脂、例えば、Toto KaseiのYP 50、Union Carbide Corp.のPKHC及びShowa Union Gosei Corp.のBKR 2620も使用することができる。
【0053】
更に、反応性樹脂として、ポリイソシアネート類、例えば、Nippon Polyurethan Ind.のCoronate(商標)L、BayerのDesmodur(商標) N3300又はMondur(商標) 489も使用することができる。
【0054】
それ以外に、充填剤(例えば、繊維、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、チョーク、充実ガラス球体、中空ガラス球体、別の材料からの微小球体、シリカ、シリケート)、顔料、着色料、核形成剤、発泡剤、コンパウンド化剤(Compoundierungsmittel)及び/又は老化防止剤、例えば、一次及び二次酸化防止剤の形態又は光保護剤の形態のものが任意に使用できる。
【0055】
支持体不織布
支持体不織布としては、個々の繊維からなる平坦な形成物が使用される。その際、DIN EN 29092規格に従って定義される不織布の全てが使用可能である。この不織布は、互いにまだ結合されていない、緩いひとまとまりの繊維からなる。その強度は、繊維自体の付着から生じる。強化された不織布と強化されていない不織布も区別される。繊維は、ランダムに分布される。不織布は、繊維材料によって区別できる。繊維材料としては、鉱物性繊維、例えば、ガラス、ミネラルウール又は玄武岩、動物性繊維、例えば、絹又は羊毛、植物性繊維、例えば、木綿、セルロース、化学繊維、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリフェニルスルフィド、ポリアクリルニトリル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アラミド又はポリエステルが使用できる。繊維は、ニードルパンチ又はウォータージェットによって機械的に、バインダーの添加によって化学的に、又は適当な気流中での、加熱ローラー間での、又は蒸気流中での軟化によっても熱的に固定することができる。
【0056】
繊維材料の選択は、温度耐性に従って行う。それ故、ポリマーベースの繊維には、熱可塑性の熱活性可能なフィルムの軟化点を、好ましくは少なくとも20℃、特に好ましくは少なくとも40℃超える軟化点のポリマーが選択される。
【0057】
本発明の好ましい設計の一つにおいては、セルロースをベースとする不織布が使用される。この不織布の単位面積当たりの重量は、好ましくは4〜100g/m2、特に好ましくは10〜70g/m2である。そのような不織布は、例えば、市場においてGlatfelter社のものが入手可能である。本発明に従って使用される不織布の厚さは、接着フィルム複合体中へ埋め込まれる前、つまり、自由状態の形態において、好ましくは20〜10μm、最も好ましくは30〜60μmである。
【0058】
熱活性可能な接着剤での施用及び含浸時に、とりわけ、全体を圧迫することによって不織布支持体の厚さが薄くなるので、その結果、接着フィルム複合体中での不織布支持体の厚さは、自由状態の不織布支持体の厚さよりも一般に薄い。
【0059】
方法
熱可塑性フィルムのコーティングは、好ましくはその溶融物から遂行される。熱可塑性ポリマー、任意に追加される樹脂及び/又はその他の充填剤を確実に均質に混合するために、事前に個別のコンパウンド化を実施することができる。この混合は、例えば、二軸スクリュー押出機又は混練機中で遂行できる。単一の(混合されていない)熱可塑性プラスチックあるいは事前にコンパウンド化した混合物のコーティングのためには、一般に一軸スクリュー押出機で十分である。ここで、押出物は、段階的に押し出し温度まで加熱される、つまり、加熱プロセスによって可塑化される。温度は、使用する熱可塑性プラスチックのメルトフローインデックス(MFI)又はメルトボリュームレート(MVR)を考慮して選択される。
【0060】
コーティングでは、一般に、接触法と非接触法とは区別される。二つの方法は、原則的に本発明に従って遂行可能である。押出コーティングには、好ましくは押出ダイ(シートダイ)が使用され、そこでフィルム形成が行われる。このプロセスは、コーティングダイ内部のダイ設計による影響を受ける。使用される押出ダイは、特に、以下の三つのカテゴリーのうちの一つに由来することができる:Tダイ、フィッシュテールダイ及びコートハンガーダイ。個々の型は、それらの流路の形状によって区別される。押出ダイのこれらの形状により、溶融接着剤内部の配向を生じさせることができる。二層又は多層の熱可塑性で熱活性可能な接着剤を製造すべき場合には、共押出ダイも使用できる。
【0061】
ダイから吐出後、好ましい方法のやり方では、一時的な支持体、例えばシリコーン処理された剥離紙上にコーティングが施される。そのコーティングの間、熱可塑性の熱活性可能な接着剤は延伸させることができる。その際の延伸の程度は、就中、膜厚に対するダイギャップの比率によって定まる。コーティングすべき支持体材料上の溶融接着膜の層厚がダイギャップよりも小さいときには、常に延伸が生じる。
【0062】
一時的な支持体上における固着を向上させるために、熱活性可能なフィルムを静電的に施用することが必要とされる場合がある。次の工程において、支持体不織布を、熱活性可能な接着剤に積層する。このプロセスは加熱下で行われる。そのために、積層の前に熱活性可能なフィルムを熱することが必要な場合がある。これは、例えば、IR照射又は加熱ロールによって行うことができる。好ましい方法のやり方の一つでは、熱活性可能な接着剤の積層温度は、その熱活性可能な接着剤の軟化温度の範囲又はそれを越える温度にある。温度並びに積層圧の選択によって、支持体不織布中への浸透の深さを変化させることができる。
【0063】
第二の工程では、反対側の面上へのコーティングが行われる。このためには、第一の工程のコーティングに類似させて行うことができ、その際、剥離紙、熱活性可能な接着剤及び支持体不織布からなる第一のコーティングは、加熱下に第二のコーティング上に積層される。代替的に、熱活性可能な接着剤の第二のコーティングは、第一のコーティングの支持体不織布の別の面上に直接行うこともできる。その場合もまた、支持体不織布における浸透の深さは、温度及び積層圧によって変化させることができる。その際、第一の積層で使用されたのと同じ規則が該当する。
【0064】
熱可塑性の熱活性可能なフィルムは、別の実施形態においては、一つの一時的な支持体材料だけでなく、二つの一時的な支持体材料も具備させることができる。この両面剥離ライナーの形態は、ダイカット製品(Stanzlingen)の製造に有利であることができる。
【0065】
接着
金属
接着される金属部材は、一般的に、よく知られた金属及び金属合金の全てから製造できる。好ましくは、例えば、アルミニウム、特殊鋼、鋼、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、真鍮、銅、チタン、鉄含有金属及びオーステナイト合金などの金属を使用できる。いかなる種類の添加及び合金化も同様に一般に行われている。それに加えて、部材を異なる金属から多層的に構成することができる。
【0066】
光学的な理由から、及び表面特性及び表面品質を向上させるため、金属部材に対して表面改質がたびたび行われる。それ故、例えば、ブラシがけしたアルミニウム部材、及び特殊鋼部材がたびたび使用される。アルミニウム及びマグネシウムについては、しばしば着色プロセスと組み合わされる陽極酸化が一般に行われる。
【0067】
金属処理には、クロメート化以外に、例えば、不動態化用の金又は銀でのコーティングも使用される。
【0068】
更に、保護塗料及び/又は着色塗料でのいかなる種類のコーティング、並びに物理的気相堆積法(PVD)又は化学気相堆積法(CVD)を使って設けられた表面塗工も、慣用である。
【0069】
金属部品は、様々な形状及び大きさを取ることができ、そして平坦に又は三次元的に形成することができる。更に、その機能も非常に様々であることができ、そして装飾要素から、強化支持体、枠構造部材、カバー類等にまでにわたることができる。
【0070】
本発明接着フィルムは、前述の金属部品を接着するのに際立って適している。
【0071】
プラスチック部品
家庭用電子製品(EC)のためのプラスチック部品は、射出成形で加工できるプラスチックをベースとしている場合がほとんどである。それ故、この一群は、例えば、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ABS/PC−ブレンド、PMMA、ポリアミド、ガラス繊維強化ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニレン、セルロースアセテート、シクロオレフィンコポリマー、液晶ポリマー(LCP)、ポリラクチド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリルメチルイミド、ポリメチルペンテン、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−アクリルニトリルコポリマー、ポリアクリレート又はポリメタクリレート、ポリオキシメチレン、アクリルエステル−スチレン−アクリルニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン又はポリエステル[例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)]を包含する。
【0072】
構成部材は、家庭用電化製品の構成部品又は筐体を製造するのに要求される、いずれの任意の形態をとることができる。最も簡単な形態では、それらは平坦である。しかしながら、更には、3次元の構成部材も非常に慣用的なものでる。構成部材は、例えば、筐体、窓部又は強化要素等のような様々な機能を取ることもできる。
【0073】
本発明の接着フィルムは、同様に、前述のようなプラスチック部品の接着に際立って適している。
【0074】
ガラス
窓及びディスプレイ用途には、強化されたガラスが使用される。これは、例として、鉱物ガラス、石英ガラス又はサファイアガラスから製造できる。様々な改質によって、ガラスの光学的特性並びに物理的特性に的確な影響を及ぼすことができる。装飾的な理由から、例えば、曇りガラス又は着色ガラスが使用される。
【0075】
例えば、吹付け塗装を使うか又は気相堆積法によって塗工できる表面コーティング又は表面塗装により、同様に、光学的外観に的確に影響を及ぼすことができる。それに加えて、反射防止層、スクラッチ防止コーティング及びその他機能性表面コーティングが一般的である。
【0076】
ガラスは、その最も簡単な形態において板ガラスのように平坦であるが、三次元の窓又は構成部材に成形することもできる。
【0077】
本発明の接着フィルムは、更に、前述のようなガラスを接着するのに際立って適している。
【0078】
プロセス−前積層化
家庭用電子製品における用途のために、熱活性可能なフィルムを通常ダイカットするために更に加工する。これは、レーザーカット法により、又はフラットベッド式ダイカット、又は回転式ダイカットのいずれかによって製造される。ダイカットのために存在する製造方法として、更に別の多くの方法が当業者に知られている。
【0079】
ダイカットは、通常、金属部品の寸法を有するが、接着プロセスの間の僅かな搾出プロセスを許容するために、いくぶん小さくすることもできる。更に、構築上の理由から、全面的なダイカットの使用が必要な場合がある。
【0080】
最も簡単な場合、熱活性可能なフィルムのダイカットは、一時的な支持体を用いることなく、例えばピンセットを使って金属部品上又は一緒に組み立てられる構成部品の間に配置される。
【0081】
更なる一形態において、熱活性可能な接着テープダイカットは、金属上への配置後に熱源で処理され、それによって、ダイカットの金属に対する粘着力が高められる。最も簡単な場合、熱源としてIR照射器、アイロン又はホットプレートを使用することができる。このプロセスは、接着フィルムが道具又は熱源に付着するのを阻止するために、ダイカットがなおも一時的な支持材料を備えていると有利である。
【0082】
その上更に別の通常の形態では、金属部品が熱活性可能な接着テープのダイカット上に配置される。この配置は開放面に対して行われる。裏面上には一時的な支持材料がまだある。その後、熱源による熱エネルギー(熱)が、金属を介して熱可塑性の熱活性可能な接着テープ中へ導入される。それにより、その接着テープは粘着性になり、そして金属に対して剥離ライナーに対するよりも強く付着する。これは金属を介して加熱される。
【0083】
本発明によれば有利なことに、前積層の間に、熱活性可能なフィルムに導入される熱量は計量され、そしてこの熱量は、フィルムが金属部品に対して確実に付着することを保証するために、必要とされる温度を最大で25℃だけ超えるべきである。
【0084】
熱の導入のために、好ましい設計においてホットプレスが使用される。この際、ホットプレスのラムは、例えば、アルミニウム、真鍮又はブロンズから製造され、そしてその形態を一般に、金属部品の輪郭又はダイカットの寸法に適合させる。構成部品における局所的な熱損傷を阻止するために、ラムに部分的な空所部を更に設けることができる。
【0085】
圧力及び温度はできる限り均一に導入され、その際、好ましくは全てのパラメーター(圧力、温度、時間)が、使用される材料(金属の種類、金属の厚さ、熱可塑性の熱活性可能なフィルムの種類など)に依存して調節される。
【0086】
ダイカットを金属部品上へ正確に位置決めするのを保証するために、一般に、接着される構成部材の輪郭に適合させた型部材が使用され、それによりずれが阻止される。その型部材中のガイドピン及び対応する熱活性可能なフィルムの一時的な支持材料中のガイドホールによって、ダイカットと金属部品との間の正確な位置決めを確実なものとすることができる。別の位置決め法も同様に実現できる。
【0087】
熱活性化後、金属部品を、その上に積層された熱活性可能なフィルムと一緒に型部材から取り除く。全工程を自動工程に移行させることもできる。
【0088】
接着工程(ボンディング工程)
金属部品とプラスチック部材、ガラス部材又は金属部材との間の接着工程を、次の工程段階1〜5によって詳細に説明する。
1) 型部材上へのプラスチック部材、ガラス部材又は金属部材の固定
2) プラスチック部材、ガラス部材又は金属部材上での、(一時的な支持体のない)熱活性可能なフィルムを有する接着される金属部材の位置決め
3) ホットプレスラムによる圧力及び温度の付与
4) 任意の再冷却段階
5) 接着された部材の型部材からの除去
【0089】
本発明は、金属部材とプラスチック部材との接着、金属部材とガラスとの接着、及び金属部材と別の金属部材との接着を含み、その際、該金属は、同一の又は異なる化学組成を有することができる。
【0090】
プラスチック部材、ガラス部材又は金属部材を収容するのに用いられる型部材は、特に耐熱性材料からなる。これは例えば金属である。しかしながら、良好な硬度を有し、かつ、変形しにくい、例えば、フッ素化ポリマー又は熱硬化性プラスチックのようなプラスチックも使用できる。
【0091】
工程段階3において、圧力及び温度が付与される。これは、良好な熱伝導性を有する材料からなる加熱ラムによって行われる。慣用的な材料は、例えば、銅、真鍮、ブロンズ又はアルミニウムである。しかしながら、別の金属又は合金も使用できる。更に、ホットプレスラムは、好ましくは、金属部品の上面の形状を取るべきである。他方では、この形状は2次元又は3次元の種であることができる。圧力は、通常は、空気圧シリンダーによって導入される。しかしながら、絶対に空気圧を介して行わなければならないわけではない。例えばスピンドルを介した、例えば、油圧式加圧装置又は電気機械的アクチュエーターも可能である。更には、例えば、直列接続(Reihenschaltung)又は回転原理によってプロセススループットを高めるために、圧力及び温度の数回の導入も有利であることができる。ホットプレスラムは、この場合、全て同じ温度及び/又は同じ圧力で稼働させる必要はない。それ以外に、ラムの接触時間を様々に選択できる。
【0092】
本発明の範囲内で、熱可塑性の熱活性可能なフィルムは、工程段階3において低減された搾出挙動(Ausquetschverhalten)を有する。この搾出挙動は、同一のプロセスパラメーター(温度、圧力、時間)の場合に、同じ構成及び同じ寸法の熱活性可能な接着フィルムであるが、完全に浸潤させた不織布と比べて、少なくとも約10%、好ましくは約20%減少される。
【0093】
本発明によって仕上げたダイカットは、予測できないほどのこのような最適化された挙動を有する。
【0094】
減少された搾出挙動によってダイカットは接着の間より良好な形状安定性を示し、光学的な理由から、本来の接着継ぎ目外の望ましくない接着剤残留物が許容できないため、このことは、特に、例えば装飾要素のような、目に見える部材の接着時に有利である。それに加えて、低い搾出傾向を有する熱接着フィルムの場合、意図しない材料の流出についての僅かな余地だけを考慮すればいいことから、より大きなダイカット形状(特にダイ面積)を選択できる。同じ理由から、これらの系の場合、同様に意図しない接着剤の流出物を受けるのに利用される、ダイカット内の中断又は継ぎ目自体上の構成上の解決策をしばしば不要にできる。
【0095】
熱可塑性の熱活性可能なフィルムの搾出挙動は、搾出試験によって定義される(実験セクションを参照)。ここで、搾出率は標準条件下で測定される。
【0096】
再冷却工程(工程段階4)は任意の工程段階であり、そして接着性能を最適化するのに用いられる。その上、それは、より簡単な手動による部材の除去を可能にする。再冷却のために、一般に、金属プレスラム(metallischer Pressstempel)が使用され、その形態は熱プレスラムに類似するが、加熱要素を含まずに室温で作用する。非常に稀な場合においては、空気流を用いて冷却すべき部材から熱を取り除く積極的に冷却されたプレスラム又は冷却システムも使用される。
【0097】
それから、最後の工程段階において、接着された構成部材が型部材から除去される。
【0098】
前積層及びボンディングのためのホットプレスラムは、構成部材の温度安定性並びに熱可塑性の熱活性可能なフィルムの活性化温度又は溶融温度に依存して、好ましくは、60℃〜300℃の温度範囲内で操作される。工程時間は、通常は、プレスラム工程毎に、2.5秒〜15秒に達する。更に、該工程は圧力を変えて行う必要がある場合もある。非常に高い圧力によって、本発明による特性にもかかわらず、熱可塑性の熱活性可能なフィルムが搾出する虞がある。適当な圧力は、接着面に基づいて算出して、1.5〜10バールに達する。この場合、材料の安定性並びに熱活性可能なフィルムの流動挙動は、選択する圧力に対して大きな影響を及ぼす。
【0099】
実験による検証
試験方法:
粘着力A)
粘着力は動的せん断試験で測定する。この測定法の原理は、図3a及び図3b中に描かれている。本発明の熱可塑性の熱活性可能なフィルム(HAF)(厚さ:150μm)を使って、アルミニウム板(Al)(厚さ:1.5mm、幅2cm)をポリカーボネート板(PC)(厚さ:3mm、幅2cm)と接合する。接着面積は2cmである。
【0100】
第一の段階において、熱活性可能なフィルムを、120℃の高温のホットプレート(H)を使ってアルミニウム上に積層する。引き続いて剥離フィルムを剥がす。試験片の接着は、ホットプレスで行い、その際、Al側を介して加熱する(図3a)。熱活性化は150℃の高温のホットプレスラム(S)を用いて5バールの圧力及び5秒のプレス時間で行う。熱接着後、接着体の品質(気泡の発生)は、透明なポリカーボネート(PC)を介して判定することができる(図3a参照)。試験を行うために、試験片(Al、HAF及びPCからなる複合体)を、10mm/分の試験速度の引張試験機(Zugpruefmaschine)で相互に引き離して引きちぎる(図3b参照)。生じる力(F)を測定する。結果は、N/mmで与えられ、そして試験片(AlとPC)を相互に引き離すのに測定された接着面に関連する最大力Fを表す。測定は、23℃及び50%相対空気湿度で遂行される。
【0101】
搾出挙動B)
熱可塑性の熱活性可能なフィルムは、29.5mmの直径を有する円形のダイカットとして打ち抜きされる。フィルムは、上面も下面もシリコーン処理されたグラシンライナーで被覆される。
【0102】
引き続いて、このダイカットをホットプレスに投入し、そして75N/cm圧及び150℃(ホットプレスの温度、両面を加熱)で10秒間作用させる。圧力及び温度を導入することによって、熱活性可能なフィルムが搾出して円形状に表面積を増加させる。搾出率は、以下の式に従う定義により算出できる。
【0103】
【数1】

【0104】
OR=搾出率(%)
Areaafter=プレス後の熱可塑性プラスチックの面積
Areainitial=プレス前の熱可塑性プラスチックの面積
【0105】
落下試験C)
最初に、試験片を測定方法A(粘着強度)と同じ方法で製造する(図3aも参照)。
【0106】
引き続いて、落下試験を行う(図4)。ポリカーボネート板(PC)に50gの重さのおもり(G)を固定する。それから、複合体全体を様々な高さ(h)から鋼板(Fe)上に落下させる[落下高さの基準:接着複合体(Al、HAF、PC)及びおもり(G)からなる落下体の重心]。
【0107】
熱活性可能なフィルムを用いた接着体がまだ衝撃を吸収でき、そしてアルミニウム板(Al)、熱活性可能なフィルム(HAF)及びポリカーボネート板(PC)からなる接着複合体が離ればなれに落下しない落下高さ(h)を測定する。試験を様々な温度で行う。
【0108】
検査する試料
二つの異なる熱活性可能な接着剤(HA剤)をベースとする熱活性可能なフィルムを検査した。
HA剤1: 47重量%テレフタル酸、12重量%イソフタル酸、9.5重量%1,4ブタンジオール、31.5重量%ヘキサンジオールをベースとする熱可塑性飽和線状コポリエステル
融点100℃(DIN 53765);ガラス転移温度10.0℃(DIN 53765)、粘度240000cP(160℃(DIN ISO 1133))、メルトフロー40.0g/120分(160℃(DIN ISO 1133))(例えば、Degussa社から商品名DYNAPOL(登録商標) S 1227で市場的に入手可能)
【0109】
HA剤2: 10.5重量%アジピン酸、50重量%テレフタル酸、13重量%1,4−ブタンジオール、26.5重量%ヘキサンジオールをベースとする熱可塑性コポリエステル;
融点109℃(DSC、平均値);ガラス転移温度−2℃(DSC、平均値)、粘度650000cP(160℃(DIN ISO 1133))、メルトフロー16.0g/10分(160℃(DIN ISO 1133))(例えば、EMS Griltech社から商品表示Griltex(登録商標) D 1442Eで商業的に入手可能)
【0110】
参照例1)
140℃のホットプレスにおいて、HA剤1をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で150μmにプレスした。このコポリエステルの融点範囲は86℃〜109℃である。
【0111】
参照例2)
ホットプレスにおいて、HA剤1をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面上に150℃でプレスした。この両面接着テープの層厚は、グラシン剥離紙を除いて150μmであった。このコポリエステルの融点範囲は86℃〜109℃である。
【0112】
例1)
ホットプレスにおいて、HA剤1をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で140℃で65μmにプレスした。このコポリエステルの融点範囲は86〜109℃である。それから、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面に、この65μm厚のDynapol(商標) S1227を塗工した。不織布中への浸透深さは、熱間圧延ラミネーター(Heizrollenlaminator)によって制御した。そのように、この例は130℃でかつ2m/分の速度で積層された。浸透深さを両面からREM撮影によって測定した。その際、ホットメルト接着剤が浸潤していない支持体不織布の平均層厚を測定した。この値を、(接着されていない)接着フィルム複合体における支持体不織布の層厚で除し、そしてパーセントで表す。平均浸潤度は、測定した浸潤していない領域のパーセント値を100%から差し引くことで得られる。この例において、56%の平均浸潤度が測定された。
【0113】
例2)
ホットプレスにおいて、HA剤1をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で140℃で65μmにプレスした。コポリエステルの融点範囲は86〜109℃である。それから、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面に、この65μm厚のDynapol(商標) S1227を塗工した。不織布中への浸透深さは、熱間圧延ラミネーター(Heizrollenlaminator)によって制御した。そのように、この例は130℃でかつ0.5m/分の速度で積層された。例1の測定方法と同様にして、75%の平均浸潤度が測定された。
【0114】
参照例R3)
ホットプレスにおいて、HA剤2をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で140℃で150μmにプレスした。このポリマーの融点範囲は93℃〜121℃である。
【0115】
参照例R4)
ホットプレスにおいて、HA剤2をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面上に150℃でプレスした。この両面接着テープの層厚は、グラシン剥離紙を除いて150μmであった。このコポリエステルの融点範囲は93℃〜121℃である。REM撮影を使って100%の平均浸潤度が測定された、つまり、この試料は、ホットメルト接着剤で100%まで浸潤された。
【0116】
例3)
ホットプレスにおいて、HA剤2をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で150℃で65μmにプレスした。このコポリエステルの融点範囲は93〜121℃である。それから、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面に、その65μm厚のGrilltex(商標) 1442 Eを塗工した。不織布中への浸透深さは、熱間圧延ラミネーターによって制御した。そのように、この例は135℃でかつ2m/分の速度で積層された。例1の測定方法と同様にして、65%の平均浸潤度が測定された。
【0117】
例4)
ホットプレスにおいて、HA剤2をシリコーン処理されたグラシン剥離紙二層の間で150℃で65μmにプレスした。このコポリエステルの融点範囲は93〜121℃である。それから、13g/m2不織布(Glatfelter社のセルロースベースのティーバッグ不織布)の両面に、その65μm厚のGrilltex(商標) 1442 Eを塗工した。例1の測定方法と同様にして、80%の平均浸潤度が測定された。
【0118】
結果
例1、2、3及び4は、本発明による構成を有する熱活性可能なフィルムの例である。
【0119】
参照例R1及び参照例R2は、例1及び2で使用された熱可塑性プラスチックを用いた熱活性可能な接着フィルムの典型的な形態であり、そして同じ層厚を有する。参照例R1は、支持体不織布を有していない。参照例R2においては、例1及び2と同じ支持体不織布が使用されているが、完全に浸潤されている。
【0120】
参照例R3及び参照例R4は、例3及び4で使用された熱可塑性プラスチックを用いた熱活性可能な接着フィルムの典型的な形態であり、そして同じ層厚を有する。参照例R3は支持体不織布を有していない。参照例R4においては、例3及び4と同じ支持体不織布が使用されているが、完全に浸潤されている。
【0121】
最初に、全ての例について粘着強度を測定した。これは、試験方法Aに従って行った。結果を表1に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1における結果は、本発明による例が、特に、熱可塑性プラスチックが参照例と同じ化学組成を有している場合に参照例と似たような粘着強度を有することを証明している。
【0124】
別の試験において、全ての例について搾出挙動を測定した。これは、試験方法Bに従って行った。結果を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
表2から、本発明の構成により、支持体不織布のない参照例に比べて、搾出挙動が明らかに向上されていることがわかる。
【0127】
接着後、例を落下試験に供した。結果を表3に示す。それぞれの落下高さはcmで与えられる。
【0128】
【表3】

【0129】
表3から、本発明による例1〜4が、−20℃及び室温(23℃)において参照例R1〜R4に比べて明らかに良好な感衝撃性を有することがわかる。これは、見方を変えると、より高い落下高さが可能であることを反映している。さらに、支持体不織布が完全に浸潤された参照例に比べて、明らかに向上されていることが確認できる。
【0130】
上記の実験による検証によって、本発明による例1〜4が非常に高い粘着強度を可能にし、支持体を有さない熱可塑性の熱活性可能なフィルムに比べてより低い搾出挙動を有し、さらに、室温でも−20℃でもより良好な耐衝撃性を有することが示された。更に、気候サイクル試験において、不織布強化によって、基体の異なる熱膨張係数による機械応力がより良好に相殺されるため、不織布強化を施さない場合と比較してより高い粘着強度が測定される。
【0131】
本発明の熱活性可能な接着テープは、本発明の目的とする課題を解決するのに際立って適しており、かつ従来技術のものよりも非常に優れていることを示すことができた。熱活性可能な接着フィルム内部の“空気クッション(接着剤が浸潤していない領域)”は、搾出挙動の低減及び衝撃吸収性能の向上を実現させる。
【図1】

【図2】

【図3a】

【図3b】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布支持体と、該不織布支持体の両面上に配置された、熱活性可能な接着剤からなる二つの層とを含む接着フィルムであって、
該不織布支持体の両面上に浸透させる接着剤がそれぞれ、接着フィルム複合体における不織布支持体の繊維間体積の少なくとも10%になるという条件で、該接着フィルム複合体における不織布支持体の繊維間体積の全体で20%〜92%が接着剤で浸潤されるように、両方の接着剤が該不織布支持体中へ浸透していることを特徴とする、接着フィルム。
【請求項2】
前記接着フィルムにおいて、前記不織布支持体の繊維間体積の全体で40%〜80%が前記接着剤で浸潤されていることを特徴とする、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記不織布支持体の両面に対して浸透する接着剤がそれぞれ、前記複合体における前記不織布支持体の繊維間体積の少なくとも20%になることを特徴とする、請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記不織布支持体の両面上の前記接着剤が同じであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記不織布支持体の両面に対して浸透する接着剤がそれぞれ、前記複合体における前記不織布支持体の繊維間体積の同じ割合を占めることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着フィルム。
【請求項6】
不織布支持体と、該不織布支持体の両面上に配置された、熱活性可能な接着剤からなる二つの層とを含む接着フィルムであって、
該不織布支持体の両面上でそれぞれ不織布支持体厚の少なくとも10%が浸潤されるという条件下で、該不織布支持体の層厚の全体で20%〜92%が接着剤で浸潤されるように、両方の接着剤が該不織布支持体中に浸透していることを特徴とする、接着フィルム。
【請求項7】
前記不織布支持体の層厚の全体で40%〜80%、好ましくは50%〜75%が前記接着剤で浸潤されていることを特徴とする、請求項5に記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記熱活性可能な接着剤が、一つ又は複数の熱可塑性ポリマーをベースとするものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の接着フィルム。
【請求項9】
前記1〜8のいずれか一つに記載の熱活性可能な接着フィルムの、金属を、プラスチック、ガラス又は金属に接着するための使用。
【請求項10】
電子機器、特に、通信用電子機器及び/又は電子娯楽機器の分野において部材を接着するための請求項9に記載の使用。

【公表番号】特表2012−516365(P2012−516365A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546762(P2011−546762)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050497
【国際公開番号】WO2010/086244
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(509120403)テーザ・ソシエタス・ヨーロピア (118)
【Fターム(参考)】