説明

支持構造物に沿っての、ベルト形状の引張要素のための固着装置

【解決手段】 支持構造物、特にコンクリート支持構造物に沿っての、緊張されたベルト形状の引張要素のための固着装置であって、その際、この引張要素が、この支持構造物に固定された基板と、この基板に対して締付け可能な締付け板との間に収容されており、且つ、粘着および締付けによって固定されている様式の、上記固着装置の場合、締付け板14、15が、基板3、6に、引張要素1の引張方向において形状一体的に支持されている。締付け板14、15は、引張要素1の両側で、それぞれ1つの下方へと突き出している保持突起部20を有しており、この保持突起部が、それぞれに、基板3もしくは6の保持切欠き部21内に係合しており、または、両方の側面に、それぞれ1つの保持突出部22を有しており、この保持突出部が、それぞれに、基板3、6と結合されたストッパー23に支持されている。ストッパー23、25は、基板3、6の上側面に、締付け板14、15の端面の両側に、及び/またはこの端面の領域内において溶接された突き押し凸部である。締付け板14、15は、引張要素1の引張方向に作用する、取外し可能に取付けられている位置決め装置26を用いて、この締付け板の位置において、形状一体的な支持の状態で基板3、6に固定可能である。位置決め装置26は、締付け板14、15と基板3、6と結合されている架橋体28との間に作用している、ねじ山ロッド27である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造物、特にコンクリート支持構造物に沿っての、緊張されたベルト形状の引張要素のための固着装置であって、その際、この引張要素が、この支持構造物に固定された基板と、この基板に対して締付け可能な締付け板との間に収容されており、且つ、粘着および締付けによって固定されている様式の、上記固着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄筋コンクリート、プレストレスコンクリート、または鉄骨から成る、支持構造物の耐荷重能力の向上(鍛錬(Ertuechtigung))のため、または、当初の耐荷重能力の復旧(健全化(Sanierung))のために、後から追加して、この支持構造物表面に、予緊張されたベルト形状の引張要素を装着することは公知である。引張要素として、例えば、混合された炭素繊維を有する、薄板状の合成物質ベルトが使用される。固着のために、例えば、鋼材から成る基板が、コンクリート表面の窪み部内においてプラグ(Duebel)で接合され、及び/または、粘着によって固定される。
【0003】
必要な予緊張を、ベルト形状の引張要素に対して、この引張要素の永続的な固着の前に付与するために、この引張要素は、この引張要素の一方の端部(固定側)において、支持構造物と結合された基板と締付け板との間で、粘着および締付けによって固着され、その際に場合によっては、最終的な固着が粘着および締付けを用いて行なわれる前に、先ず第一に、一時的な締付けが、例えば締付けブラケットを用いて行われる。この引張要素の他方の端部(緊張側)において、この引張要素は、一時的な緊張留め金内において締付けられ、この緊張留め金が、緊張装置を用いて、そこで引張要素に装着された基板に対して移動され、このことによって、この引張要素が緊張される(ドイツ連邦共和国特許出願公開第198 49 605号明細書(特許文献1))。次いで、この緊張要素は、一時的な締付け留め金が取り外される前に、同様に緊張側においても、基板と締付け板との間で、粘着および締付けによって固定される。
【0004】
緊張力は、引張要素の下側における粘着部を介して、基板内へと、および従って支持構造物内へと導入される。この引張要素の表面と粘着された締付け板は、基本的に十分に高い締付け力の付与によって、この引張要素から基板内への力の導入を保障する役目を果たす。伝達可能な緊張力は、従って、基本的に、引張要素と基板との間の粘着剤層内における可能な限り大きなせん断応力によって限定されている。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第198 49 605号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、冒頭に記載した様式の固着装置を、付与され得る緊張力の基本的な向上を可能とするように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明により、締付け板が、基板に、引張要素の引張方向において形状一体的に支持されていることによって解決される。従って、付加的に、この引張要素の下側面における粘着結合のために、同様に上側面における粘着結合も、全面的にこの引張要素の固着のために利用される。専ら基板と引張要素との間だけの、公知の力伝達する結合とは対照的に、本発明による解決策でもって、二断面的な(zweischnittige)結合が達成される。何故ならば、この引張要素と基板との間の粘着面と同様に、この引張要素と締付け板との間の粘着面も、力伝達のために使用されるからである。両方の粘着面内における不変のせん断応力の場合、従って、伝達可能な緊張力は増大される。伝達された緊張力を維持する場合、これら粘着面内におけるせん断応力は、単一の(einfachen)結合に比して低減される。
【発明の効果】
【0007】
発明の思想の更なる構成において、基板における締付け板の形状一体的な支持は、有利には、この締付け板が、引張要素の両側でそれぞれ1つの下方へと突き出している保持突起部を有しており、この保持突起部が、それぞれに、基板の保持切欠き部内に係合していることによって行われる。この場合、付加的な所要スペースは、極めて僅かである。
【0008】
他の有利な本発明の実施形態に従って、締付け板は、両方の側面に、それぞれ1つの保持突出部を有しており、この保持突出部が、それぞれに、基板と結合されたストッパーに支持されている。上記の代わりに、この締付け板は、同様にこの締付け板の引張側の端面でもって、2つの、基板と結合されたストッパーに支持されていることも可能である。
この場合、互いに係合状態になる面は、良好に外から取り扱い可能であり、且つ、従って、比較的に大きな手間暇無しに、必要な精度でもって加工され得る。
【0009】
発明の思想の更に有利な実施形態は、更に別の従属請求項の対象である。
【0010】
次に、本発明を、図において図示されている実施例を使って、詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ベルト形状の引張要素1、例えば炭素繊維強化された合成物質シートは、支持構造物2、例えばコンクリート支持構造物の表面に装着するためのものである。この支持構造物2における固定の前に、この引張要素1は予緊張されねばならない。
【0012】
図1および2内において図示されているように、引張要素1は、この引張要素の一方の端部1a(固定側)において、基板3に固着されており、この基板が、粘着剤層4、およびプラグ5を介して、支持構造物2に固定されている。同じやり方で、この緊張要素1の他方の端部1bは、完成された状態において、緊張側で、基板6に固着されており、この基板が、支持構造物2に、粘着剤層7およびプラグ8を用いて固着されている。
【0013】
引張要素1に対する予緊張を付与するために、固定側で、解離可能に基板3に装着された締付けブラケット9が、締付けセット10でもって、引張要素1をグリップしている。緊張側で、締付けセット11が引張要素1をグリップしており、この締付けセットは、緊張装置12の一部を形成し、この緊張装置の緊張トラバース材13が、解離可能に、基板6に装着されている。この引張要素が支持構造物2の表面、および基板3および6に沿って粘着によって固定される前に、この緊張トラバース材13から離れる、緊張駆動装置(図示されていない)を用いてのこの締付けセット11の位置移動によって、この引張要素1は予緊張される。
【0014】
それぞれの基板3、6の上に、締付け板14、もしくは15が設けられている。引張要素1と、基板3、6、並びに締付け板14、15との間に、それぞれ1つの粘着剤層が載置されている。
【0015】
両方の締付け板14、15は、それぞれに、上側に位置している締付けブラケット16、もしくは17を介して、側方のねじ18、もしくは19を用いて、引張要素1、および、基板3もしくは6に対して押圧されている。
【0016】
両方の締付け板14、15は、引張要素1の引張り方向において、形状一体的に、それぞれに所属して設けられた基板3、もしくは6に支持されている。この目的で、図1および2による実施例の場合、これら両方の締付け板14、15は、この引張要素1の両側で、それぞれ1つの下方へと突き出している保持突起部20を有しており、この保持突起部が、それぞれに、基板3、もしくは6の保持切欠き部21内に係合し、且つ、引張方向に、この切欠き部21の側壁において支持されている。
【0017】
引張要素1から支持構造物2内へと導出されるべき緊張力は、従って、それぞれの粘着剤層のせん断応力によって、一方では直接的に基板3および6内へと、および、他方では締付け板14、15、およびこれら締付け板の保持突起部を介してこれら基板3および6へと伝達される。このようにして、支持構造物2との、この引張要素1の端部1a、および1bの、それぞれ1つの二断面的な結合は達成される。
【0018】
図3および4に図示された実施例(この実施例によって、ただ緊張側だけが示されている)の場合、締付け板15は、両方の側面に、それぞれ1つの保持突出部22を有しており、この保持突出部が、それぞれに、基板6と結合されたストッパー23に支持されている。図示された実施例の場合、これらストッパー23は、この基板6の上側面に、締付け板15の両側に溶接された突き押し凸部である。それに対して変更された実施例は、図5において図示されている。この場合、この締付け板15は、この締付け板の引張側の端面24でもって、2つの、基板6と結合されたストッパー25に支持されており、これらストッパーが、この基板6の上側面に溶接されている。
【0019】
図5による実施例を出発点として、締付け板15が、引張要素1の引張方向に作用する位置決め装置26を用いて、この締付け板の位置において、形状一体的な支持の状態で基板6に固定可能であることが、図6に図示されている。これに伴って、締付け板15が、既に緊張力伝達の開始時に、形状一体的な当接状態においてストッパー25に沿って存在していることは達成される。基板6、および締付け板15でもってのこの引張要素1の粘着結合は、従って、同じ程度に、力伝達に関与する。
【0020】
図6に図示された実施例の場合、位置決め装置26は、締付け板15と基板6と結合されている架橋体28との間に作用している、ねじ山ロッド27を有している。この架橋体28は、例えば、穿孔を有する簡単な平鉄材であり、この穿孔を通って、このねじ山ロッド27が延在しており、このねじ山ロッドが、締付け板15の端面側の端部におけるねじ山穿孔内において、ねじ込みされており、且つ、この架橋体28の外側で、ナット29を有している。この架橋体28は、ストッパー25の背面側に接触している。ナット29の締付けによって、この締付け板15は、これらストッパー25に当接される。位置決め装置26は、取外し可能である。
【0021】
上記の代わりに、位置決め装置が、同様に少なくとも1つの、基板6と締付け板15との間に作用する(図示されていない)くさびを有していることも可能である。位置決め装置として、取外し可能なしゃこ万力、またはその種の他の物を使用することは、同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】平面図における、ベルト形状の引張要素の固着装置の図であり、その際、この引張要素1の両方の端部が図示されている。
【図2】図1における線II−IIに沿っての断面図である。
【図3】ベルト形状の引張要素の緊張側に関して図示された状態における、図1に相応する平面図における、固着装置の変更された実施例の図である。
【図4】図3における、線IV−IVに沿っての断面図である。
【図5】図3に相応する平面図における、固着装置の更に変更された実施例の図である。
【図6】締付け板のための、付加的な位置決め装置を有する、図5による固着装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造物、特にコンクリート支持構造物に沿っての、緊張されたベルト形状の引張要素のための固着装置であって、その際、この引張要素が、この支持構造物に固定された基板と、この基板に対して締付け可能な締付け板との間に収容されており、且つ、粘着および締付けによって固定されている様式の、上記固着装置において、
締付け板(14、15)が、基板(3、6)に、引張要素(1)の引張方向において形状一体的に支持されていることを特徴とする固着装置。
【請求項2】
締付け板(14、15)は、引張要素(1)の両側で、それぞれ1つの下方へと突き出している保持突起部(20)を有しており、この保持突起部が、それぞれに、基板(3)もしくは(6)の保持切欠き部(21)内に係合していることを特徴とする請求項1に記載の固着装置。
【請求項3】
締付け板(14、15)は、両方の側面に、それぞれ1つの保持突出部(22)を有しており、この保持突出部が、それぞれに、基板(3、6)と結合されたストッパー(23)に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の固着装置。
【請求項4】
締付け板(14、15)は、この締付け板の引張側の端面(24)でもって、2つの、基板(3、6)と結合されたストッパー(25)に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の固着装置。
【請求項5】
ストッパー(23、25)は、基板(3、6)の上側面に、締付け板(14、15)の端面の両側に、及び/またはこの端面の領域内において溶接された突き押し凸部であることを特徴とする請求項3または4に記載の固着装置。
【請求項6】
締付け板(14、15)は、引張要素(1)の引張方向に作用する位置決め装置(26)を用いて、この締付け板の位置において、形状一体的な支持の状態で基板(3、6)に固定可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の固着装置。
【請求項7】
位置決め装置(26)は、取外し可能に取付けられていることを特徴とする請求項6に記載の固着装置。
【請求項8】
位置決め装置(26)は、締付け板(14、15)と基板(3、6)と結合されている架橋体(28)との間に作用している、ねじ山ロッド(27)であることを特徴とする請求項6に記載の固着装置。
【請求項9】
位置決め装置は、少なくとも1つの、基板(3、6)と締付け板(14、15)との間に作用するくさびを有していることを特徴とする請求項6に記載の固着装置。
【請求項10】
位置決め装置は、取外し可能なしゃこ万力であることを特徴とする請求項6に記載の固着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505236(P2007−505236A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525101(P2006−525101)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009766
【国際公開番号】WO2005/026471
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500129915)レオンハルト・アンドレー・ウント・パルトナー・ベラーテンデ・インジェニエーレ・ファウベーイー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (2)
【Fターム(参考)】