説明

支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法及び支援用浮体を用いた浮体の設置方法

【課題】緊張係留浮体システムの浮体の復原力を増加できて、この浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業等を行う場合に、十分に支援できる支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法、及び、支援用浮体を用いた浮体の設置方法を提供する。
【解決手段】上部構造物を支持するための浮体12と、複数本の緊張係留索13と、固定用沈底部材14とを備え、前記浮体12が中央柱状体12aと水没浮力体12bと水面上連結体12cと水面上係留部12dを有して構成された緊張係留浮体システムにおける、前記浮体12の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業等を支援するための支援用浮体20を、自重以上の浮力と鉛直方向からの傾斜に対する復原力とを持つと共に、前記浮体12の一部に一時的に係合され、前記作業後に分離されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置等の台座として使用される緊張係留浮体を緊張係留した緊張係留浮体システムの浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業の少なくとも一つの作業を支援できる支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法及び支援用浮体を用いた浮体の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電に関して、海岸の大陸棚の比較的水深の大きい水域に、緊張係留浮体(TLP:テンション・レグ・プラットホーム)を設けて、この緊張係留浮体に風力発電装置等の機器を搭載する提案がなされ始めている。例えば、図36に示すように、この風力発電装置の台座11を搭載する浮体12は、この浮体12に取り付けられた1本又は複数本(図36では4本)のテンドンと呼ばれる緊張係留索13で海底や湖底や川底等の水底2に設けられたアンカー等の固定用沈底部材14に係留されている。
【0003】
風力発電装置に限らず、一般的に、図36に示すような緊張係留浮体1Xの設置は、浮体12のバラストタンクにバラスト水を注入したり、バラストを積んだりして、浮体12の喫水を設置状態の時よりも深くして沈めた状態で、予め設定水域に設置された固定用沈底部材14の上に移動する。移動後、緊張係留索13の上端を浮体12の上側係留部15cに接合し、緊張係留索13の下端を固定用沈底部材14の下側係留部14cに接合する。
【0004】
接合後、上部構造物11を搭載している浮体12の傾斜に注意しながら、バラスト水を排出したり、バラストを取り除いたりして、浮体12の浮力を予め設定された浮力とする。更に、緊張係留索13の長さを変更して上部構造物11の傾斜と各々の緊張係留索13の張力T1〜T4の大きさを調整する。この設置では、緊張係留浮体1Xが波浪中においても上下動揺や横傾斜や縦傾斜をしないように、また、水平方向に移動可能な範囲も許容範囲に入るように、緊張係留索13に予め設定した初期張力T1〜T4を付与して係留する(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また、上部構造物の搭載に広い面積を必要としない、風力発電装置を搭載するような場合には、図37に示すような、水面を貫通する柱状体(センターコラム)12aと、この柱状体12aの下部に接続する水没浮力体(ポンツーン)12bとを有する浮体12に、複数本の緊張係留索13の上端側を固定し、この緊張係留索13の下端側を水底2に設置された固定用沈底部材14の下側係留部14cに連結して、緊張係留索13に張力を作用させて緊張係留浮体1Yを位置保持することが提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0006】
水面を貫通する柱状体12aと、この柱状体12aに接続する水没浮力体12bとを有する浮体12で構成される「ミニ・テンション・レグ・プラットホーム(ミニTLP)」と呼ばれる緊張係留浮体1Yでは、緊張係留索13は水深Dの水没浮力体12bの上側係留部15cに係留されている。この緊張係留浮体1Yは、設置後は、水面を貫通する部分は柱状体12aのみとなるので、潮位変動や波による水面の上下による緊張係留索13の張力への影響が少なくなる。
【0007】
しかしながら、この図36に示すような緊張係留浮体1Xでは、緊張係留索13の上端を固定するための浮体12の下部部分12bや台座11を支持する柱状体(コラム)12a等の没水部分が非常に大きい。また、図37に示すような緊張係留浮体1Yでは、緊張係留索13の上端を固定するための浮体12の下部の水没浮力体12bや柱状体12a等の没水部分が非常に大きい。そのため、没水面積が大きい上に、広い範囲に広がっているので、この没水面積における耐水性の塗装面が広くなり、塗装作業量や塗料が多くなるという問題や、緊張係留後の経年変化に対するメンテナンス面積が広くなり、保守管理のための作業量が多くなるという問題がある。また、没水面積が大きいので、鋼材重量も増える可能性が高い。
【0008】
また、従来技術の「ミニTLP」では、緊張係留索13の上側係留部15cが水中にあるため、緊張係留索13の取り付け作業や張力調整作業及び保守点検作業等が水中での作業となる。そのため、作業性が悪く作業時間が長くなるので、これらの作業におけるコストが嵩む。また、設置後に下側係留部が地震等より不等沈下した場合に、この不等沈下に対して緊張係留索13の長さを調整する必要が生じるが、この場合にも上側係留部15cが没水しているので、水中での作業が必要になるという問題がある。
【0009】
この問題を解決するために、上部構造物を支持するための浮体と、この浮体を係留するための複数本の緊張係留索と、この緊張係留索を水底に固定するための固定用沈底部材とを備えて構成される緊張係留浮体システムにおいて、浮体を、上部構造物を水面より上に支持するための中央柱状体と、この中央柱状体の下部に設けられた水没浮力体と、中央柱状体から周囲方向に放射状に延びて配置される水面上連結体と、この水面上連結体の端部に配置され、緊張係留索の上側端部が固定される水面上係留部を有して構成することが考えられている。
【0010】
この緊張係留浮体システムでは、水面上連結体の表面積の全部又は半分以上が静水時に水面より上にあり、また、水面上係留部が静水時に水面より上にあるように構成する。
【0011】
この緊張係留浮体システムによれば、水没浮力体を、復原力を考慮しない単に浮力発生のための浮力体とすることができ、水没面積を小さくすることができる。また、水面上係留部と、この水面上係留部と中央柱状体とを連結する水面上連結体の全部又は一部を、水面上に配置するように構成することで、没水部分を非常に小さくすることができる。
【0012】
これにより、この没水部分における耐水性、耐蝕性を有する特殊な塗料を塗装する面を小さくすることができ、特殊な塗料の量や塗装作業量を少なくできる。また、水中作業が必要となる面積が狭くなるので、緊張係留後の保守管理のための作業量が少なくなる。
【0013】
また、水面上係留部が、静水時において、水面より上にあって水没しないように構成することにより、緊張係留索の上側端部を固定する上側係留部を水面上に維持できるため、緊張係留索の取り付け作業や張力調整作業及び保守点検作業等を水中作業ではなく、作業性が良く、作業時間も短縮できる空中での作業とすることができ、作業コストを低減できる。また、浮体の設置後に下側係留部が地震等より不等沈下した場合における緊張係留索の長さを調整する際にも、水中での作業が不要になり、効率よく調整作業を行うことができる。
【0014】
また、例えば、水没浮力体の上部を円錐台形状に、中間部を円柱形状に、下部を逆円錐台形状に形成する等して、波による影響を受け難い形状に容易にすることができる。
【0015】
しかしながら、この緊張係留浮体システムでは、浮体の曳航時や設置時等の緊張係留索が取り付けられていない状態では、水面を貫通する部分が中央柱状体しかないため、浮体の鉛直方向からの傾斜に対する静的復原力が著しく小さく、緊張係留浮体の安定性能が非常に悪いという問題がある。そのため、曳航時及び設置時には緊張係留浮体の姿勢を保持するために、洋上クレーンの使用が不可欠となる。
【0016】
この場合に、風力発電装置を搭載するような「ミニTLP」でも、発電容量が大きなものでは重量で千トンを越えるものもあるので、使用するクレーンは、大型洋上クレーンとならざるを得ない。この大型洋上クレーンは、市場での保有隻数が少ない上に、曳航時から設置完了時まで必要になるため、大型洋上クレーンの使用期間が長くなる。そのため、曳航及び設置工事の日程調整が難しい上に、コストが嵩むという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平1−145292号公報
【特許文献2】特開平4−197887号公報
【特許文献3】実開昭64−2692号公報
【特許文献4】特開2005−69025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、緊張係留浮体システムの浮体の鉛直方向の傾斜に対する復原力を増加できて、この浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業の少なくとも一つの作業を行う場合に、これらの作業を十分に支援できる支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法、及び、支援用浮体を用いた浮体の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するための支援用浮体は、上部構造物を支持するための浮体と、この浮体を係留するための複数本の緊張係留索と、この緊張係留索を水底に固定するための固定用沈底部材とを備えて構成され、前記浮体を、前記上部構造物を水面より上に支持するための中央柱状体と、この中央柱状体の下部に設けられた水没浮力体と、前記中央柱状体から周囲方向に放射状に延びて配置される水面上連結体と、この水面上連結体の端部に配置され、前記緊張係留索の上側端部が固定される水面上係留部を有して構成された緊張係留浮体システムにおける、前記浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業の少なくとも一つの作業を支援するための支援用浮体であって、自重以上の浮力と鉛直方向からの傾斜に対する復原力とを持つと共に、前記浮体の前記中央柱状体と前記水没浮力体の少なくとも一方の構造体に一時的に係合され、前記作業後に分離されるように構成される。
【0020】
この構成によれば、支援用浮体が自重以上の浮力を持つことにより、曳航時に浮体及び固定用沈底部材を浮かせる浮力の一部とすることができ、また、支援用浮体を前記構造体から取り外す時の作業が行い易くなる。また、鉛直方向からの傾斜に対する復原力を持たせることは、支援用浮体の水面貫通部分の面積をある程度広くして水位変動による浮力変化を生じるように構成することで容易に実現できる。この水面貫通部分は中央柱状体の中心から遠い方が浮体の傾斜を抑制する復原力への寄与が大きい。また、この支援用浮体は、曳航と設置等の作業時における浮力調整の役割を持たせるために、バラストタンクを備えて浮力調整できるように構成することが好ましい。
【0021】
この支援用浮体によれば、浮体を構成する中央柱状体と水没浮力体の少なくとも一方の構造体に一時的に係合される。この自重以上の浮力と復原力とを持つ支援用浮体により、浮体の傾斜を抑制でき復原力を確保できるので、浮体の姿勢を安定化できる。言い換えれば、この支援用浮体により、浮体のヒール(横傾斜)、トリム(縦傾斜)を抑制することができる。
【0022】
従って、この支援用浮体により、鉛直方向からの傾斜(言い換えれば、水面に対する傾斜)に関する復原力を著しく高めることができるので、浮体の曳航及び設置等の作業において、浮体の姿勢を安定化でき、転倒を防止できる。その結果、浮体の曳航及び設置等の作業を十分に支援できて、大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。
【0023】
その上、この支援用浮体は緊張係留後には浮体から取り外すので、この緊張係留浮体システムの浮体を多数設置する場合には、この支援用浮体を繰り返し使用できる。その結果、浮体の1基あたりの曳航、設置、保守点検、撤去等の作業の費用を低減することができる。
【0024】
上記の支援用浮体において、少なくとも設置作業時に、前記構造体に対して上下方向に相対的な移動ができるように係合するように構成すると、つまり、この構造体に対して、完全に固定させずに、この構造体に沿って上下方向にスライド可能にして、水面付近に浮かばせる構成とすると、浮体設置後の支援用浮体を取り外す際に、深い水深の水中作業における係合の解除作業を無くすことができる。従って、水面上の作業で、支援用浮体の姿勢を調整して、浮体の設置後の支援用浮体の分離に伴う解体作業、及び、一旦設置した浮体を再度移動させるための支援用浮体の取付け時の再組立て作業を、容易に行えるようになる。
【0025】
上記の支援用浮体において、2つ以上に分割可能で、前記構造体に一時的に係合する際には、一体化され、係合を解除する際には分割されるように構成すると、洋上においても支援用浮体を係合したり、係合を解除したりすることが容易にできるようになる。
【0026】
上記の支援用浮体において、前記浮体の設置後に、前記水面上係留部に上端が固定された前記緊張係留索の間から引き抜き可能な大きさに分割可能であるように構成すると、洋上における支援用浮体の係合作業と係合の解除作業を、緊張係留を行ったままの状態で行うことができるようになる。つまり、係合の解除の時には、分解されて構造体から分離された支援用浮体の一部を、水面上係留部及び緊張係留索の間から外側に引き出すことが、比較的容易にできるようになる。また、逆に、係合時には、分解された支援用浮体の一部を、外側から水面上係留部及び緊張係留索の間を通して、構造体に接近させることができる。
【0027】
上記の支援用浮体において、前記構造体が入り込む凹部を有して構成され、前記作業の支援時には、前記構造体に係合されると共に、前記作業の支援の終了後には、前記構造体から分離されるように構成すると、支援用浮体自体の分解作業や一体化作業が不要になるので、比較的波浪条件の厳しい海象が予期される場合においても、係合作業及び係合の解除作業を容易に行うことができるようになる。
【0028】
この構成によれば、構造体が入り込む凹部を有して支援用浮体が構成されているので、支援用浮体がこの構造体に沿う部分が多くなり、支援用浮体がこの構造体から外れ難くなると共にこの構造体の傾斜を抑制し易くなり、その結果、浮体の復原力をより効率よく増加できる。
【0029】
上記の支援用浮体において、前記浮体のバラスト調整用システム、前記浮体用の電源システム、前記浮体を緊張係留するための緊張係留索の巻取りシステム、該支援用浮体を仮係留するための仮係留システム、該支援用浮体のバラスト調整用システム、該支援用浮体用の電源システムの少なくとも一つ、又は、いくかの組み合わせで構成される作業支援システムを備えて構成すると、浮体及び上部構造には、設置時のみ使用する電力供給源等の付帯装置を搭載せずに済むので、緊張係留浮体システムの全体的なコストを低減できる。
【0030】
また、一時的に使用する一時係留用のウィンチ、緊張係留索(テンドン)巻き取りドラム、浮体に搭載のバラストポンプ等への電源も供給できるようになり、浮体設置時の作業台として機能させることができる。これにより、設置時における作業船等の支援を減少又は不要にできる。
【0031】
つまり、曳航、設置、保守点検、撤去等の作業時のみに浮体側で使用する付帯設備の一部又は全部を、支援用浮体に備えることにより、これらの作業を十分に支援できるようになる。その結果、浮体の付帯設備の一部又は全部を省略することができ、緊張係留浮体システムの全体としてのコストを低減することができる。
【0032】
また、上記の目的を達成するための支援用浮体を用いた浮体の曳航方法は、上記の支援用浮体を前記浮体に係合した状態で、前記浮体を曳航する方法である。この方法によれば、浮体は、半没水型浮体構造などで形成されるため、設置前の状態では、水面に対する傾斜に関して元来不安定な状態となるが、この支援用浮体の係合により、支援用浮体で浮体の構造体を取り囲むことで、全体として復原力を大きくして安定化させることができ、浮体の曳航時の転倒を防止できる。
【0033】
つまり、この曳航方法によれば、浮体の曳航時に、支援用浮体を一時的に浮体に係合した状態で曳航するので、この支援用浮体により浮体の傾斜を抑制でき、復原力を確保できて浮体の姿勢を安定化できる。その結果、浮体の曳航時において、浮体の姿勢を安定化でき、転倒を防止できるので、大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。これにより、浮体の曳航作業を十分に支援することができる。
【0034】
上記の目的と達成するための支援用浮体を用いた浮体の設置方法は、前記緊張係留浮体システムの前記浮体の設置において、上記の支援用浮体を用いる方法である。この方法によれば、支援用浮体の係合により、支援用浮体で浮体の中央柱状体又は水没浮力体の少なくとも一方の構造体を取り囲むことで、全体として復原力を大きくして安定化させることができ、浮体の設置時の転倒を防止できる。これにより、少なくとも設置海域では洋上大型クレーン船等の支援を不要にすることができる。
【0035】
この設置方法によれば、浮体の設置時に一時的に中央柱状体と水没浮力体の少なくとも一方の構造体に係合した状態で設置作業を行うので、この支援用浮体により、浮体の傾斜に対する復原力を確保して浮体の姿勢を安定化した状態で設置作業を行うことができる。その結果、浮体の設置作業時において、浮体の姿勢を安定化し、転倒を防止するための大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。これにより、浮体の設置作業を十分に支援することができる。また、支援用浮体を作業台としても使用できるので、水面上係留部における作業用面積を小さくすることができる。
【0036】
また、上記の支援用浮体を用いた浮体の設置方法において、前記支援用浮体を、前記浮体を仮係留するための仮係留システムを備えて形成し、該仮係留システムで前記浮体の設置に際して、前記浮体の設置水域において、前記仮係留システムにより前記緊張係留索の下端が係留される前記固定用沈底部材を水底まで沈下させて、前記支援用浮体を仮係留した後に、前記緊張係留索による係留を行い、この前記緊張係留索による係留をした後に、前記仮係留を解除すると、比較的容易に浮体を緊張係留することができる。
【0037】
この設置方法によれば、支援用浮体の仮係留は支援用浮体による転倒防止効果の元で行うので、転倒の恐れがなく容易に仮係留することができる。また、支援用浮体側に設けた仮係留システムにより、アンカー等の固定用沈底部材をその重量を支えながら降ろしていくため、固定用沈底部材を水底に降下させるためのウィンチ等の設備が、浮体側や作業船側に不要となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法、及び、支援用浮体を用いた浮体の設置方法によれば、浮体の曳航、設置、保守点検、撤去等の作業時において、一時的に配置される支援用浮体により、浮体の曳航及び設置等の作業を十分に支援できる。
【0039】
特に、曳航、設置、保守点検、撤去等の作業用に、支援用浮体を、浮体の中央柱状体と水没浮力体の少なくとも一方の構造体に一時的に固定することにより、鉛直方向からの傾斜に対する復原力を発生することができる。これにより、浮体の傾斜を抑制して姿勢を安定化でき、転覆の危険性を著しく減少できる。その結果、浮体の曳航及び設置等の作業において、大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができ、コスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る実施の形態の支援用浮体が係合される緊張係留浮体システムの構成を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態における水面上係留部を示した図である。
【図3】水面上係留部の他の構成を示した図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の支援用浮体の形状を示した平面図である。
【図5】図4の支援用浮体の側面図である。
【図6】図4の支援用浮体を示した図4のA−A矢視図である。
【図7】図4の支援用浮体を示した図4のB−B矢視図である。
【図8】図4の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す図9及び図10のE−E断面図である。
【図9】図4の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す図8のC−C矢視図である。
【図10】図4の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す図8のD−D矢視図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す側面図である。
【図12】図11の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す図11のF−F矢視図である。
【図13】図11の支援用浮体を緊張係留浮体システムの浮体に係合した状態を示す図11のG−G矢視図である。
【図14】図11の支援用浮体に拡張甲板を係合した状態を示す側面図である。
【図15】洋上クレーンを使用して、図11の支援用浮体と係合した浮体を固定用沈底部材上に吊り下ろす状態を示した図である。
【図16】洋上クレーンを使用して、図11の支援用浮体と固定用沈底部材に係合した浮体に、上部構造を載置する状態を示した図である。
【図17】図11の支援用浮体と固定用沈底部材を係合した浮体の曳航状態を示した図である。
【図18】図11の支援用浮体から固定用沈底部材を沈める状態を示した図である。
【図19】図11の支援用浮体を仮係留索で固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図20】図11の支援用浮体を仮係留索で固定用沈底部材に係留すると共に、浮体を緊張係留索で固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図21】浮体の緊張係留状態と、浮体から分離された図11の支援用浮体を示した図である。
【図22】本発明に係る第3の実施の形態の支援用浮体の形状を示した、浮体の水面上係留部より上側から下方を見下ろした矢視図である。
【図23】図22の支援用浮体の形状を示した、浮体の水面上係留部より下側から下方を見下ろした矢視図である。
【図24】図22の支援用浮体の嵌合部を浮体から分離する様子を示した、浮体の水面上係留部より上側から下方を見下ろした矢視図である。
【図25】図22の支援用浮体の主要部を浮体から分離する様子を示した、浮体の水面上係留部より上側から下方を見下ろした矢視図である。
【図26】図22の支援用浮体と固定用沈底部材と係合した浮体の曳航状態を示した図である。
【図27】図22の支援用浮体を仮係留索で固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図28】図22の浮体を緊張係留索のみで固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図29】図22の浮体の緊張係留状態と、浮体から分離された支援用浮体を示した図である。
【図30】本発明に係る第4の実施の形態の支援用浮体の形状を示した、浮体の水面上係留部より上側から下方を見下ろした矢視図である。
【図31】図30の支援用浮体の形状を示した、浮体の水面上係留部より下側から下方を見下ろした矢視図である。
【図32】図30の支援用浮体と固定用沈底部材と係合した浮体の曳航状態を示した図である。
【図33】図30の支援用浮体を仮係留索で固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図34】図30の浮体を緊張係留索のみで固定用沈底部材に係留した状態を示した図である。
【図35】図30の浮体の緊張係留状態と、浮体から分離された支援用浮体を示した図である。
【図36】従来技術の緊張係留浮体システムの構成を示した図である。
【図37】従来技術のミニTLPと呼ばれる緊張係留浮体システムの状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明に係る支援用浮体、支援用浮体を用いた浮体の曳航方法、及び、支援用浮体を用いた浮体の設置方法について説明する。ここでは、特に浮体が支持する上部構造物に風力発電装置を搭載した緊張係留浮体システムを例にして説明するが、本発明は風力発電装置に限定されず、上部構造物に、油井掘削装置、その他のプラントや計測装置等を搭載する緊張係留浮体システムにも適用することができる。
【0042】
最初に、本発明に係る実施の形態の支援用浮体が用いられる緊張係留浮体システム1について説明する。この緊張係留浮体システム1は、緊張係留浮体(テンション・レグ・プラットホーム)のためのシステムであり、図1に示すように、風力発電装置10を搭載した上部構造物11と、この上部構造物11を支持するための浮体12と、この浮体12を係留するための複数本(図1では1本ずつ3ヶ所で計3本)のテンドンと呼ばれる緊張係留索13と、この緊張係留索13を海底や湖底や河底などの水底2に固定するための固定用沈底部材14とを備えて構成される。
【0043】
この浮体12は、風力発電装置10及び上部構造物11の重量を浮力で支持して、風力発電装置10及び上部構造物11を水面上の予め設定した高さに維持するものである。この浮体12は、風力発電装置10及び上部構造物11を支持するための円柱や多角柱で形成される中央柱状体12aと、この中央柱状体12aの下部に設けられた水没浮力体12bと、中央柱状体12aから周囲に放射状に延びて配置される水面上連結体12cと、この水面上連結体12cの端部に配置される水面上係留部12dを有して構成される。
【0044】
この中央柱状体12aはセンターコラムと呼ばれ、この中央柱状体12aの下部に水没浮力体12bを設ける。この中央柱状体12aと水没浮力体12bは、例えば、中空構造とし、鋼やプレストレストコンクリート(PC)等で浮力を生じるように構成される。
【0045】
また、水没浮力体12bは、上部構造物を水面上の所定の高さで支持するための主要な浮力を発生する部分であり、波による影響を受け難い形状、例えば、中央柱状体12aよりも大径の円柱形状にして形成したり、上部側の円錐台形状と、中間部の円柱形状と、下部側の逆円錐台形状とで形成したりする。この下部を逆円錐形にしたりすることにより、単に円柱下部を平面で形成する場合よりも波による影響を少なくすることができる。また、この水没浮力体12bは曳航と係留時における浮力変化を発生させるために、必要に応じてバラストタンク、バラストポンプ、バラスト調整装置等が設けられる。
【0046】
そして、水面上連結体12cの一端が中央柱状体12aの上側の部分に接続され、他端が水面上係留部12dに接続される。この水面上連結体12cは、緊張係留後の静水時、即ち、静止水面状態において、表面積の全部又は半分以上が水面3より上にあるように構成されることが好ましい。また、水面上係留部12dも、緊張係留後の静水時において、全部が水面3より上にあって水没しないように構成される。この水面上係留部12dの水面より上方に設けた上側係留部15cに浮体12を緊張係留するための緊張係留索13の上側端部を固定する。
【0047】
この水面上連結体12cは、例えば、鋼材を使用したブレース構造、トラス構造、ラーメン構造などの鉄骨構造とし、十分な強度は有するが、比較的鋼材重量や表面積が小さい構造とする。
【0048】
また、水面上係留部12dを、中央に緊張係留索13が挿通する中空部12hを持つ中空柱状体で構成し、この水面上係留部12dの上部に上側係留部15cを配設し、側面において水面上連結体12cと接続する。なお、この水面上係留部12dの水平断面形状としては、図2に示す円形の他、四角形等の多角形、及び角をアールで丸めた多角形等が考えられる。また、図3に示すように、緊張係留索13のための保護カバー12eを設ける場合もある。
【0049】
この構成によれば、水面上係留部12dを水面3上に設け、緊張係留索13のための保護カバー12e等の一部を除いて水面3を殆ど貫通させていないので、静的復原力は殆ど発生しない。そのため、設置後の緊張係留浮体1における復原力に関しては、緊張係留索13に拠ることになる。図1に示す構成では、上側係留部15を、平面視で中央柱状体12aから離間するように設ける。この離間距離が大きい程、モーメントレバーが大きくなるので、同じ緊張係留索13の小さな張力変化で大きな復原力が得られる。そのため、水面上係留部12dを水面上連結体12cの端部に接続して、中央柱状体12aから大きく離れた位置に水面上係留部12dを設ける。この構成により、浮体12と上部構造物11に作用する転倒モーメントによって生じる緊張係留索13の張力の変化量が少なくなる。
【0050】
緊張係留浮体1を固定用沈底部材14に緊張係留するための緊張係留索(テンドン)13は、鋼製の鎖(チェーン)やケーブルおよびロープ等で形成され、その上端部は水面上係留部12dの上側係留部15cに、その下端部は固定用沈底部材14の下側係留部14cに取り付けられる。緊張係留時には、緊張係留索13の長さを調整して、この緊張係留索13に常時張力(テンション)が加わっている状態にして、浮体12の浮力に抗して、浮体12を水中に引き込む。
【0051】
固定用沈底部材14は、テンプレートとも呼ばれる、スチールやコンクリート等で形成される錘であり、水底2に沈められ自重により固定される重力式のアンカーとして使用される。なお、水底2の地盤に固定されるパイリング(杭)を固定用沈底部材として使用してもよい。図1に示す固定用沈底部材14は、沈錘部14aと連結部14bと下側係留部14cとから形成され、緊張係留索13と上側係留部15cを介して浮体12を予め設定された位置に係留するためのものであり、緊張係留索13の下端部が下側係留部14cに固定される。
【0052】
この緊張係留浮体1の大きさは、例えば、発電量が2MWを想定した場合で、かつ、大陸棚の水深100mから200m程度の所に設置される場合には、図1に示すような、風車10aの回転直径が80m程度で、風車10aの回転軸10bは水面3の上が75m程度となり、浮体12の中央柱状体12aの直径は6m程度で高さは35m程度であり、水没浮力体12bの最大直径は15m程度で、3つの固定用沈底部材14の中心を通る円の直径は60m程度である。
【0053】
この緊張係留浮体システム1では、設置後における浮体1の静的復原力を緊張係留索13で確保して安定性を確保でき、設置時及び設置後において、緊張係留索13の取り付け作業及び長さ調整作業を水面3より上方の水面上係留部で行うことができる。
【0054】
また、この緊張係留浮体システム1によれば、上部構造物11を水面3上の所定の高さで支持するための浮体12の中央柱状体12aの下部部分の水没浮力体12bを、復原力を考慮しない単に浮力発生のための浮力体とすることができるので、波の影響を受け難い形状にすることができる。
【0055】
これにより、没水部分及び没水面積が小さくなるので、没水面積における耐水性の塗装面を小さくすることができ、塗装作業量や塗料を少なくできる。従って、緊張係留後の経年変化に対するメンテナンス面積が狭くなり、保守管理のための作業量が少なくなる。また、没水面積が小さいので、鋼材重量も減少できる。
【0056】
また、この緊張係留浮体システム1では、水面上連結体12cを、静水時において、表面積の全部、又は、半分以上、好ましくは2/3以上が水面3より上にあるように構成することにより、没水面積をゼロ、又は、小さくして、没水面積における耐水性や耐蝕性の特殊な塗料による塗装面を少なくして、塗装作業量や特殊な塗料の量を少なくすることができる。それと共に、緊張係留後の経年変化に対する保守点検時において、水中作業を必要とする面積を少なくしているので、保守管理が容易となる。
【0057】
また、水面上係留部12dを全体が、静水時において、水面3より上にあって水没しないように構成することにより、緊張係留索13の上側係留部15cを水面上に維持できるため、緊張係留索13の取り付け作業、張力調整作業及び保守点検作業等を、水中作業では無く、空中での作業とすることができる。
【0058】
そのため、作業性が良くなり作業時間も短くなるので、これらの作業におけるコストを低減できる。また、設置後に下側係留部14cが地震等より不等沈下した場合に、この不等沈下に対して緊張係留索13の長さを調整する必要が生じるが、この場合にも上側係留部15cが水面3上にあるので、水中作業が不要になり、効率よく調整作業を行うことができる。
【0059】
特に、水面上連結体12cと水面上係留部12dを静水時において、完全に水面3上にあるようにすることにより、水中作業領域を中央柱状体12aと水没浮力体12bに集中させることができるので、水中作業の効率を向上することができる。
【0060】
しかしながら、この図1に示す緊張係留浮体システム1の浮体12は、重心が比較的高い位置にあり、浮力の主要な部分を発生する水没浮力体12bが中央柱状体12aの直下にあり、復原力を考慮していないため、緊張係留していない状況においては不安定な状態となる。
【0061】
そこで、本発明では、浮体12の曳航作業や設置作業や保守点検作業や撤去作業等を支援するために、浮体12の曳航及び設置等の作業で、この浮体12の中央柱状体12a又は水没浮力体12bの少なくとも一方の構造体に一時的に係合され、前記作業後に分離される支援用浮体20、30を有する支援用システムを用いる。なお、ここの説明では、支援用浮体20、30は、中央柱状体12aに係合するものとして説明しているが、水没浮力体12bに係合してもよく、中央柱状体12aと水没浮力体12bの両方に係合してもよい。
【0062】
次に、本発明に掛かる第1及び第2の実施の形態の支援用浮体20、30について図4〜図21を参照しながら説明する。この支援用浮体20、30は、自重以上の浮力と、鉛直方向からの傾斜に対する復原力とを持って形成される。
【0063】
最初に、第1の実施の形態の支援用浮体20について説明する。この支援用浮体20は、図4〜図10に示すように、浮体12の曳航、設置、保守点検、撤去等の作業用に一時的に係合される中央柱状体12aが入り込む凹部21を有して形成されて、浮体12の中央柱状体12aに取り外し可能に係合される。
【0064】
この凹部21は、中央柱状体12aの水平断面形状と、支援用浮体20の分割個数Nとで決まるが、例えば、中央柱状体12aの水平断面が円形の場合は、N分割(図4〜図10ではN=3)の円弧形状に形成されるが、中央柱状体12aの水平断面が四角形等の多角形の場合には、それに係合し易い形状に形成される。
【0065】
この係合は、N個の支援用浮体20を図9及び図10に示すように、結合支援用ウィンチ25で、結合支援索25aを引き絞ることで、支援用浮体20を中央柱状体12aの周囲に引き寄せて、支援用浮体20に設けられたスライディング部材22を中央柱状体12aに当接する。それと共に、支援用浮体20を隣接する支援用浮体20の係合凸部23と係合凹部24とを係合させ、これらの貫通孔に係合ピンを挿入して係合する。これにより、N個の支援用浮体20を一体化する。このスライディング部材22は、例えば、中央柱状体12aと支援用浮体20の相対的な上下運動に伴って回転するような回転体等で形成され、相対上下運動を円滑にする。
【0066】
この支援用浮体20は、中央柱状体12aを囲んで設けられると共に、水面3を貫通する部分に面積を持たせて形成し、この部分の水位変動による浮力変化を生じさせて、浮力と浮体12の鉛直方向からの傾斜に対する復原力を持たせる。
【0067】
この第1の実施の形態の支援用浮体20は、緊張係留浮体システム1の設置場所が、比較的波浪条件の緩い海象用であり、一体化された時には、図8、図9、図10に示すような、浅い喫水のドーナツ型の浮体となり、中央柱状体12aから離れた位置にある水面貫通部分が、浮体の中央柱状体12aとの間に大きなモーメントレバーを持つので、これにより、傾斜に対する復原力が大きくなる。なお、この支援用浮体20は、曳航、設置、保守点検、撤去等の作業時における浮力調整の役割を持たせるために、バラストタンクを備えて浮力調整できるように構成することが好ましい。
【0068】
この支援用浮体20は、浮体12の中央柱状体12aに曳航及び設置等の作業用に一時的に係合されるので、浮体12と共に傾斜する。そのため、支援用浮体20により、浮体12の傾斜に対する復原力を確保できて浮体12の姿勢を安定化できる。言い換えれば、この支援用浮体20により、浮体12のヒール(横傾斜)、トリム(縦傾斜)を抑制することができ、これにより、浮体12の復原力が増強される。
【0069】
この支援用浮体20により、浮体12の水面に対する傾斜に関する復原力を著しく増強することができるので、浮体12の姿勢を安定化させることができ、転倒を防止できる。その結果、浮体12の曳航及び設置等の作業において十分に支援できて、大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。
【0070】
また、支援用浮体20を中央柱状体12aに係合させることにより、支援用浮体20の分解及び取り外し作業に必要な部分を常に水面3近傍に維持することができる。そのため、例えば、浮体12の設置後、即ち、緊張係留後における支援用浮体20の取り外しに際して、作業が困難となるような深い水深における取り外し用の水中作業を無くすことができる。
【0071】
その上、この支援用浮体20は緊張係留後には中央柱状体12aから分離するので、この緊張係留浮体システム1の浮体12を多数設置する場合には、この支援用浮体20を繰り返し使用できる。その結果、浮体12の1基あたりの曳航及び設置等の費用を低減することができる。
【0072】
更に、緊張係留浮体システム1のために、支援用浮体20に作業支援システムを備えて構成する。この作業支援システムは、浮体12のバラスト調整用システム、浮体12用の電源システム、浮体12を緊張係留するための緊張係留索13の巻取りシステム、支援用浮体20を仮係留するための仮係留システム、支援用浮体20のバラスト調整用システム、支援用浮体20用の電源システムの少なくとも一つ、又は、いくかの組み合わせで構成される。
【0073】
浮体12のバラスト調整は、水没浮力体12bの浮力を調整して行う。また、水没浮力体12bの浮力調整システムは、例えば、図示しないが、水没浮力体12bの下部に配置したバラストポンプとバラストタンクとシーチェストと配管と制御弁等を有して構成される。
【0074】
浮体12の喫水を深める必要があるときには、水没浮力体12bにおいて、それぞれのバラストタンクに海水を注入する。また、浮体12の喫水を浅くする必要があったり、緊張係留索13の張力を高めるためにより浮体全体重量を小さくする必要があったりするときには、バラストタンクからバラスト水を排出する。この水没浮力体12bのバラスト量を調整することにより浮体12の喫水と姿勢の調整を行う。
【0075】
また、バラスト調整用システムは、特に図示しないが、バラストポンプとバラストタンクと、海水の取り入れ口であるシーチェストとこれらを連結する配管及び制御弁等から構成される。支援用浮体20の喫水を深める必要があるときには、バラストポンプにより、海水を導入してバラストタンクに注入する。また、支援用浮体20の喫水を浅くする必要があるときにはバラスト水を排出する。これらのバラストタンクのバラスト量の調整により、支援用浮体20自身の沈下量と姿勢の制御を行う。
【0076】
電源システムとしては、緊張係留浮体用と支援用浮体用があるが、特に別に設ける必要もなく共通としてよい。この電源システムは、特に図示しないが、燃料タンク、発電用エンジン、発電装置、配電盤、制御装置、充電装置等を有して構成され、浮体12への給電のための電源、又は、支援用浮体20自身の各装置への給電のための電源として使用する。
【0077】
巻取りシステムは、図4〜図10に示すような、緊張係留索13を巻き取る巻取りドラム26と緊張係留索13の向きを変更するプーリー(図8の15d)を有して構成され、浮体12の曳航時には、固定用沈底部材14の沈錘部14aの下部係留部14cにその先端側が固定された緊張係留索13を巻取りドラム26に巻き取った状態で曳航し、設置水域では、この巻取りドラム26からプーリー15d経由で緊張係留索13を繰り出して、上側係留部15cに緊張係留索13の上端を固定した後、バラスト水を排水して緊張係留する。この緊張係留後のプーリー15dの取り外し支援のために、支援用浮体20に小型クレーン(図示していない)等の吊り揚げ装置を搭載しておくと便利である。
【0078】
また、仮係留システムは、図4〜図10に示すような、仮係留用のウィンチ27と仮係留索28を備えて構成され、設置水域で、浮体12を緊張係留する前に、固定用沈底部材14の沈錘部14aの仮係留部14dに係留索28の先端を固定して仮係留する。この仮係留システムは、水底2に設置する固定用沈底部材14の重量を支えつつ、水底2へと吊りながら降ろして行くことができるように構成する。
【0079】
図4〜図10に示す例では、支援用浮体20の甲板上に、結合支援用ウィンチ25と、緊張係留索巻取りドラム26と、仮係留用のウィンチ27と、仮係留索プーリー支柱27aと、仮係留索28と、固定用沈底部材14にエアを供給して曳航時に浮力を持たせるためのエア供給用のコンプレッサ29とエア供給ライン29aを図示している。
【0080】
この作業支援システムを有する構成によれば、曳航、設置、保守点検、撤去等の作業時のみに浮体側で使用する付帯設備の一部又は全部を、支援用浮体20に備えるので、これらの作業を十分に支援できる。これにより、浮体12の付帯設備の一部又は全部を省略することができ、浮体12の装置全体としてのコストを低減することができる。
【0081】
また、支援用浮体20のスペースを曳航及び設置時等の作業台として機能させることができる。これにより、設置時における作業船等の支援を減少又は不要にできる。また、従来技術では、電源供給等の支援を行っていた作業船を、移動のための曳航のみに限定して使用することができるようになるので、作業船側に作業支援システムが不要となり、使用できる作業船の選択範囲が広がることになる。更に、浮体12を多数設置する場合には、この支援用浮体20を繰り返し使用して、浮体12の1基あたりの曳航及び設置等の作業用の費用を低減することができる。従って、緊張係留浮体システム1の全体としてのコストを低減することができる。
【0082】
次に、第2の実施の形態の支援用浮体30について説明する。この支援用浮体30は、図11〜図14に示すように、U字形状柱状部31と、下部浮力部32と、上甲板部33とを有して形成される。それと共に、浮体12の曳航、設置、保守点検、撤去等の作業用に一時的に係合される中央柱状体12aが入り込む凹部34を有して形成されて、固縛装置35により、中央柱状体12aに取り外し可能に係合される。
【0083】
この係合は、例えば、支援用浮体30を中央柱状体12aに当接し、固縛装置35で係合して行う。固縛装置35の簡単な構成の例としては、例えば、固縛装置35を、取り外し可能なパイプ構造(断面は円に限らない)などで形成し、ボルトや仮溶接等で支援用浮体30に接合する。
【0084】
このU字形状柱状部31は、浮力と水面に対する傾斜を妨げる方向の復原力を有して、水面3に浮かぶように構成する。下部浮力部32は十分な浮力を有すると共に、波の影響を受け難い形状に形成する。上甲板部33は、支援用浮体30が沈んで、甲板部33が水面を貫通するようになった状態では、十分な復原力を発揮できるように形成されると共に、各種の作業用システム(図示しない)も搭載される。この甲板部33により、支援用浮体30は水面3の上に広い水面上の部分を有することになるので、中央柱状体12aへの配置作業や固縛装置35による係合作業が容易となる。
【0085】
また、凹部34は、例えば、中央柱状体12aの水平断面が円形の場合はそれを取り囲むU字型の切り欠きで形成され、中央柱状体12aの水平断面が四角形や多角形に近い場合はそれに係合するような形状を持つ切り欠きで形成される。この凹部34により支援用浮体30が中央柱状体12aに沿う部分が多くなり、各種作業が行い易くなる。
【0086】
この第2の実施の形態の支援用浮体30は、緊張係留浮体システム1の設置場所が、比較的波浪条件の厳しい海象用であり、深い喫水のセンターカラム型の浮体に形成され、中央柱状体12aから離れた位置にある上甲板部33の水面貫通部分により傾斜に対する復原力を容易に大きくできる。
【0087】
なお、第2の実施の形態の支援用浮体30を示す図11〜13には、第1の実施の形態の支援用浮体20で示した作業システム等は省いてあるが、この第2の実施の形態の支援用浮体30においても、第1の実施の形態の支援用浮体20と同様に各種の作業システムを搭載して構成され、第1の実施の形態の支援用浮体20と同様な作用効果を発揮する。
【0088】
図14は、支援用浮体30に、更に拡張甲板36、37を設ける例を示している。この拡張甲板36、37は、上甲板部33を載置させた状態で移動可能になるように構成したものであり、拡張甲板37を岸壁クレーンや洋上クレーン等を用いて折り畳み可能に形成してある。
【0089】
浮体12の曳航時や設置時には、拡張甲板37を広げて、傾斜に対する復原力を大きくして、各種作業を行い易くし、緊張係留が完了した後は、拡張甲板37が緊張係留索13と干渉しないように折り畳み、緊張係留索13の隙間から、支援用浮体30を引き出せるように構成している。
【0090】
次に、上記の構成の支援用浮体20、30を用いた浮体12の曳航方法について説明する。この曳航方法では、第1の実施の形態の支援用浮体20は、図8、図9、図10に示すように、支援用浮体20を浮体12の中央柱状体12aに係合した状態で曳航する。また、第2の実施の形態の支援用浮体30は、図11、図17に示すように、支援用浮体30を浮体12の中央柱状体12aに係合した状態で曳航する。
【0091】
第1の実施の形態の浅喫水の支援用浮体20と浮体12の中央柱状体12aの係合は、ドック内の建造において、固定用沈底部材14の上部に浮体12を組み上げ、仮係留索28と緊張係留索13の下端を取り付ける。支援用浮体20の配置は、ドック内で固定用沈底部材14の上部に必要に応じて架台等を介して浮体12に対して、N個に分割された支援用浮体20をその凹部21に中央柱状体12aが入り込むように配置した後、中央柱状体12aを取り囲んで一体化された支援用浮体20を中央柱状体12aに係合する。その後、ドックに注水し、ドック出しを行う。
【0092】
この状態で、浮体12、支援用浮体20、固定用沈底部材14のバラスト調整をし、曳航状態とする。この曳航状態では、浮体12と支援用浮体20との相対運動を避けたいので、水没浮力体12bの上に支援用浮体20を載置した状態にすることが望ましく、必要に応じて仮ロック部材14e等を用いて、固定用沈底部材14を支援用浮体20に一時的に固定する。
【0093】
また、第2の実施の形態の深喫水の支援用浮体30と浮体12の係合は、ドック内の建造において、浮体12を組み上げ、必要に応じて架台等を介して浮体12に対して、支援用浮体30をその凹部34に中央柱状体12aが入り込むように配置した後、固縛装置35により支援用浮体30を中央柱状体12aに係合する。
【0094】
その後、比較的穏やかな海象でなおかつある程度の水深が確保できる海域まで浮体12及び支援用浮体30並びに風力発電装置10、上部構造物11、固定用沈底部材14等をバージ等で運搬する。次に、図15に示すように、建造された固定用沈底部材14を洋上に配置すると共に、この支援用浮体30が一体化した浮体12を洋上クレーン40のクレーン41の吊下索42で吊り上げて、固定用沈底部材14の上側に載置する。
【0095】
その後、図16に示すように、洋上に配置した浮体12の上に上部構造物11及び風力発電装置10を搭載する。この状態で、浮体12、支援用浮体30、固定用沈底部材14のバラスト調整をし、図17に示す曳航状態とする。この曳航状態では、浮体12と支援用浮体30との相対運動を避けたいので、中央柱状体12aに支援用浮体30を固定した状態にすることが望ましく、必要に応じて、浮体12に支援用浮体30を一時的に固定する。
【0096】
図8、図9、図10及び図17は、浮体12を曳航するときの状態であり、浮体12のバラストタンクにある程度バラスト水を積んで浮上させた状態で、支援用浮体20、又は、30を浮体12に係合している。それと共に、支援用浮体20、又は30の下部に、仮係留索28により固定用沈底部材14を吊り下げている。この固定用沈底部材14にはバラスト水を半分程注入して浮体12の中央柱状体12aが水面3にある状態としている。
【0097】
この状態では、中央柱状体12aが水面3を貫通しているが、それ単独では傾斜に対する復原力への寄与は著しく小さい上に、水面3からの浮体12の重心の高さが大きく不安定で転倒し易いので、支援用浮体20又は30により大きな復原力を発生し、転倒を防止する。この状態で設置水域まで曳船等の作業船50により曳航する。
【0098】
この曳航方法によれば、浮体12の曳航時に、支援用浮体20又は30を係合した状態で曳航するので、この支援用浮体20又は30により浮体12の傾斜を抑制でき、復原力を確保できて浮体12の姿勢を安定化できる。従って、曳航作業を十分に支援でき、大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。
【0099】
次に、上記の構成の支援用浮体20、30を用いた浮体12の設置方法について説明する。この設置作業では、図8、図9、図10及び図17の曳航状態から、図18の係留開始状態にした後に、緊張係留を行って、図21の設置状態にする。なお、図18〜図21においては、第2の実施の形態の支援用浮体30を用いて説明するが、第1の実施の形態の支援用浮体20においても一体化と分離の仕方が異なるだけで同様な設定方法となる。
【0100】
図18は、図17の状態から、固定用沈底部材14への更なるバラスト水の注入により、固定用沈底部材14を水面下に沈下させたものであり、水面上係留部12dの全体が水面3上に出ている状態である。
【0101】
この図18の状態では、図17の状態と比較し、水面3を貫通する部分としては固定用沈底部材14の部分がなくなっており、傾斜に対する復原力への寄与は小さくなっている。この状態では浮体12だけでは不安定で転倒し易いので、図17の固定用沈底部材14の浮上状態から図18の没水状態まで支援用浮体30により大きな復原力を発生し、転倒を防止する。
【0102】
この図18の状態で、吊り下げていた固定用沈底部材14を仮係留索28bで支持しながら、仮係留索28と緊張係留索13を延ばして、図19に示すように、水底2に降ろす。その後、固定用沈底部材14に追加のバラスト水やコンクリート等を注入し、固定用沈底部材14を水底2に固定する。この固定後、固縛装置35を解除して支援用浮体30の上下方向は自由にし、図20に示すように、緊張係留索13の長さと緊張係留浮体1の沈下量を調整し、緊張係留索13の上端側を水面上係留部12dの上側係留部15cに固定し、係留を行う。
【0103】
緊張係留索13による係留ができたら、図20に示すように、水没浮力体12bのバラストタンクのバラスト水を排水し、浮体全体重量を軽くして、浮体12の浮力により緊張係留索13に所定の張力を発生させる。
【0104】
所定の張力を発生させて、浮体12が緊張係留されたら、仮係留索28を緩めて、仮係留部14dから取り外し、仮係留索28を仮係留用ウィンチ27で巻き上げて収納して、支援用浮体30を浮体12から分離する。この支援用浮体30の分離はできるだけ水面上の分離作業が行い易い位置で行うことが好ましい。また、拡張甲板37は折りたたんで小さくする。支援用浮体30を分離し、その後、支援用浮体30を作業船などにより移動させて、中央柱状体12aから支援用浮体30を分離する。この緊張係留索13による緊張係留と、支援用浮体30の分離により、図21に示すような設置状態となる。
【0105】
この設置方法によれば、浮体12の設置時に、支援用浮体20、30を中央柱状体12aに係合した状態で設置作業を行うので、この支援用浮体20、30により浮体12の傾斜を抑制しつつ、復原力を確保して浮体12の姿勢を安定化した状態で設置作業を行うことができる。従って、浮体12の姿勢を安定化し、転倒を防止するための大型洋上クレーンによる支援を不要とすることができる。
【0106】
更に、この設置方法によれば、支援用浮体20、30側に設けた仮係留システムにより、固定用沈底部材14をその重量を支えながら降ろしていくため、浮体12側や作業船側に固定用沈底部材14を水底に降下させるためのウィンチ等の設備が不要となる。
【0107】
従って、上記の緊張係留浮体システム1のための支援用システム及びこの支援用システムを用いた浮体12の曳航方法と設置方法によれば、浮体12を設置水域に曳航する曳航作業においては、復原力を増大させて浮体12の姿勢をより安定化できるとともに、浮体12の洋上設置においては、緊張係留を行う前の固定用沈底部材14の浮上状態から没水状態に移行するときにも、支援用浮体20、30により十分な復原力を付加して、浮体12の転倒を防止できる。
【0108】
また、浮体12の緊張係留索13を固定するための固定用沈底部材14の水底2への沈降作業や緊張係留索13の緊張力調整等の設置作業において、電源システムを稼動させて、仮係留用ウィンチ27、姿勢調整用のバラストポンプ等を作動させる等、作業台として機能させることができる。これらにより、浮体12の曳航時や設置時において、曳航時又は設置作業時の少なくとも一方で一時的に配置される支援用浮体20、30により、浮体12の曳航及び設置作業を支援することができる。
【0109】
その上、この支援用浮体20、30は緊張係留後には緊張係留浮体1から取り外すので、浮体12を多数設置する場合には、この支援用浮体20、30を繰り返し使用できる。その結果、浮体12の1基あたりの曳航及び設置の費用を低減することができる。
【0110】
更に、この支援用浮体20、30は、保守点検作業や浮体12の撤去作業の際にも用いることができ、これらの保守点検作業や撤去作業を支援することができるので、その結果、浮体12の1基あたりの保守点検作業や撤去の費用も低減することができる。
【0111】
最後に、第1及び第2の実施の形態の支援用浮体20、30の変形である第3及第4の実施の形態の支援用浮体20A、30Aについて説明する。
【0112】
第3の実施の形態の支援用浮体20Aは、図22〜図29に示すように、第1の実施の形態の支援用浮体20と同様に、上下方向に対してスライド機構を有している点と、浅喫水型である点は同じであるが、第1の実施の形態の支援用浮体20が3分割であるのに対して、2分割である点が異なる。その他の構成は、第1の実施の形態の支援用浮体20の構成と同じである。
【0113】
また、第2の実施の形態の支援用浮体30との比較では、第2の実施の形態の支援用浮体30が、浮体12の中央柱状体12aに係合する際に固縛装置35を用いるのに対して、第3の実施の形態の支援用浮体20Aでは、主要部20Aaに嵌合部20Abを挿入及び係合することにより、浮体12の中央柱状体12aに係合するように構成されていて、嵌合部20Abの上甲板も作業台として利用できるようになっている点が異なる。また、第2の実施の形態の支援用浮体30が深喫水型であるのに、第3の実施の形態の支援用浮体20Aが浅喫水型である点が異なる。その他の構成は、第2の実施の形態の支援用浮体30の構成と同じである。
【0114】
この支援用浮体20Aの主要部20Aaと嵌合部20Abを、中央柱状体12aから分離するときには、図24に示すように、主要部20Aaから嵌合部20Abを分離して、緊張係留索13の間から引き出す。その後、図25に示すように、主要部20Aを浮体12に対して矢印Rに示すように、相対的に60度程度回転し、その後、中央柱状体12aから主要部20Aaを分離して、緊張係留索13の間から引き出す。
【0115】
第3の実施の形態の支援用浮体20Aの曳航方法も、図26に示すように、第1及び第2の実施の形態の支援用浮体20、30と略同じである。
【0116】
また、設置方法を図27〜図29に示す。図27に示すように、主要部20Aaと嵌合部20Abを一体化した支援用浮体20Aを仮係留索28で固定用沈底部材14に係留した後に、この支援用浮体20Aを仮係留索28で固定用沈底部材14に係留した状態で、浮体12を緊張係留索13で固定用沈底部材14に係留し、その後、浮体12のバラスト調整等により緊張係留索13による緊張係留を完了したら、図28に示すように、浮体12の係留を緊張係留索13のみで係留し、仮係留索28を回収する。
【0117】
その後、図29に示すように、支援用浮体20Aの主要部20Aaから嵌合部20Abを分離して、緊張係留索13の間を通し浮体12から分離する。更に、支援用浮体20Aの主要部20Aaを中央柱状態12aから分離して、緊張係留索13の間を通し浮体12から分離する。このように、第3の実施の形態の支援用浮体20Aの設置方法も、第1及び第2の実施の形態の支援用浮体20、30と略同じである。
【0118】
この第4の実施の形態の支援用浮体30Aは、図30〜図35に示すように、第2の実施の形態と同様に、上下方向に対してスライド機構を有していない点と、深喫水型である点は同じであるが、第2の実施の形態では中央柱状体12aに係合するのに対して、水没浮力体12bに係合する点が異なる。その他の構成は、第2の実施の形態の支援用浮体30の構成と同じである。
【0119】
なお、第1の実施の形態との比較では、第1の実施の形態の支援用浮体20が、浮体12の中央柱状体12aに係合するのに対して、第4の実施の形態の支援用浮体30Aでは、浮体12の水没浮力体12bに係合する点と、第1の実施の形態では3つの支援用浮体20が一体化するのに対して、第4の実施の形態の支援用浮体30Aでは3つの支援用浮体30Aが一体化しない点が異なっている。また、第4の実施の形態の支援用浮体30Aでは、水没浮力体12bに係合し易いように、また、支援用浮体30Aの内径が大きくなって減少する浮力を補うために、支援用浮体30Aの喫水を深く形成している。その他の構成は、第1の実施の形態の支援用浮体20の構成と同じである。
【0120】
第4の実施の形態の支援用浮体30Aの曳航方法も図32に示すように、第1〜第3の実施の形態の支援用浮体20、30、20Aと同じである。
【0121】
また、第4の実施の形態の支援用浮体30Aの設置方法を図33〜図35に示す。図33に示すように、支援用浮体30Aを仮係留索28で固定用沈底部材14に係留した後に、支援用浮体30Aを仮係留索28で固定用沈底部材14に係留した状態で、浮体12を緊張係留索13で固定用沈底部材14に係留し、その後、浮体12のバラスト調整等により緊張係留索13による緊張係留を完了したら、図34に示すように、浮体12の係留を緊張係留索13のみで係留し、仮係留索28を回収する。
【0122】
その後、図35に示すように、支援用浮体30Aを3分割して、緊張係留索13の間を通り浮体12から分離する。このように、第4の実施の形態の支援用浮体30Aの設置方法も、第1〜第3の実施の形態の支援用浮体20、30、20Aと略同じである。
【0123】
この第4の実施の形態の支援用浮体30Aでは、水没浮力体12bに支援用浮体30Aを係合することにより、中央柱状体12aに支援用浮体30Aを嵌め込む必要がなくなり、また、水没浮力体12bに支援用浮体30Aを載せる必要もなくなり、従って、架台等の必要もなくなるので、ドックでの支援用浮体30Aの設置が容易となるという効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の支援用浮体及び支援用浮体を用いた浮体の曳航方法及び支援用浮体を用いた浮体の設置方法は、緊張係留浮体システムの浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業の少なくとも一つの作業を行う場合に、緊張係留浮体の曳航及び設置作業を十分に支援できるので、各種の緊張係留浮体のための、支援用浮体及び支援用浮体を用いた浮体の曳航方法及び支援用浮体を用いた浮体の設置方法として利用できる。
【符号の説明】
【0125】
1、1X、1Y 緊張係留浮体システム
2 水底
3 水面
10 風力発電装置
11 上部構造物
12 浮体
12a 中央柱状体(センターコラム)
12b 水没浮力体
12c 水面上連結体
12d 水面上係留部
13 緊張係留索(テンドン)
14 固定用沈底部材
14c 下側係留部
14d 仮係留部
14e 仮ロック部材
15c 上側係留部
20、20A、30、30A 支援用浮体
20Aa 主要部
20Ab 嵌合部
21、34 凹部
22 スライディング部材
23 係合凸部
24 係合凹部
25 係合支援用ウィンチ
25a 係合支援索
26 巻取りドラム
27 仮係留用のウィンチ
28 仮係留索
31 U字形状柱状部
32 下部浮力部
33 上甲板部
34 凹部
35 固縛装置
36、37 拡張甲板
40 洋上クレーン
50 作業船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物を支持するための浮体と、この浮体を係留するための複数本の緊張係留索と、この緊張係留索を水底に固定するための固定用沈底部材とを備えて構成され、前記浮体を、前記上部構造物を水面より上に支持するための中央柱状体と、この中央柱状体の下部に設けられた水没浮力体と、前記中央柱状体から周囲方向に放射状に延びて配置される水面上連結体と、この水面上連結体の端部に配置され、前記緊張係留索の上側端部が固定される水面上係留部を有して構成された緊張係留浮体システムにおける、前記浮体の曳航作業、設置作業、保守点検作業、撤去作業の少なくとも一つの作業を支援するための支援用浮体であって、自重以上の浮力と鉛直方向からの傾斜に対する復原力とを持つと共に、前記浮体の前記中央柱状体と前記水没浮力体の少なくとも一方の構造体に一時的に係合され、前記作業後に分離されることを特徴とする支援用浮体。
【請求項2】
少なくとも設置作業時に、前記構造体に対して上下方向に相対的な移動ができるように係合することを特徴とする請求項1記載の支援用浮体。
【請求項3】
2つ以上に分割可能で、前記構造体に一時的に係合する際には、一体化され、係合を解除する際には、分割されることを特徴とする請求項1又は2に記載の支援用浮体。
【請求項4】
前記浮体の設置後に、前記水面上係留部に上端が固定された前記緊張係留索の間から引き抜き可能な大きさに分割可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の支援用浮体。
【請求項5】
前記構造体が入り込む凹部を有して構成され、前記作業の支援時には、前記構造体に係合されると共に、前記作業の支援の終了後には、前記構造体から分離されることを特徴とする請求項1、又は2に記載の支援用浮体。
【請求項6】
前記浮体のバラスト調整用システム、前記浮体用の電源システム、前記浮体を緊張係留するための緊張係留索の巻取りシステム、該支援用浮体を仮係留するための仮係留システム、該支援用浮体のバラスト調整用システム、該支援用浮体用の電源システムの少なくとも一つ、又は、いくかの組み合わせで構成される作業支援システムを備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の支援用浮体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の支援用浮体を前記構造体に係合した状態で、前記浮体を曳航することを特徴とする支援用浮体を用いた浮体の曳航方法。
【請求項8】
前記緊張係留浮体システムの前記浮体の設置において、請求項1〜6のいずれか1項に記載の支援用浮体を用いることを特徴とする支援用浮体を用いた浮体の設置方法。
【請求項9】
前記支援用浮体を、前記浮体を仮係留するための仮係留システムを備えて形成し、該仮係留システムで前記浮体の設置に際して、前記浮体の設置水域において、前記仮係留システムにより前記緊張係留索の下端が係留される前記固定用沈底部材を水底まで沈下させて、前記支援用浮体を仮係留した後に、前記緊張係留索による係留を行い、この前記緊張係留索による係留をした後に、前記仮係留を解除することを特徴とする請求項8記載の支援用浮体を用いた浮体の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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