説明

支柱用基礎構造

【課題】 施工が容易で、掘削面積を抑え得る支柱用基礎構造の提供。
【解決手段】 地盤2中に埋められる支柱3の地盤下部分30に設けられる基礎構造1であって、地盤下部分30に、連続した管体4を湾曲させ且つ接触するよう巻き、管体4の内部に地盤下部分30補強用のコンクリート7を充填してなる構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の支柱の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱等の支柱を立設する地盤(土質)が軟弱で、支柱の根入れ深さを規定値まで確保できない場合には、コンクリートの基礎構造(根巻)によって、地盤下の基礎の安全率および支柱の地盤下部分の強度を確保している(例えば特許文献1参照)。基礎構造は、コンクリートの打設を行い得るよう充分広く地盤を掘削し、掘削した部分に型枠を設置して、型枠で囲繞される型枠内に支柱の地盤下部分を挿入するようにしておき、型枠内にコンクリートを打設することで施工される。そしてコンクリートの養生期間を経て、型枠がはずされ、地盤が埋め戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−158049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の基礎構造では、コンクリートの打設を行い得るよう充分広く地盤を掘削する作業、コンクリートを打設する作業、型枠の撤去作業を必要とする。これは作業者にとって大きな負担となる。また広い面積での掘削を制限される場所もあって、このような場合では、コンクリートの打設を行い得るよう充分広く地盤を掘削することはできなかった。
【0005】
そこで本発明は上記問題に鑑み、施工が容易で、掘削面積を抑え得る支柱用基礎構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地盤中に埋められる支柱の地盤下部分に設けられる基礎構造であって、前記地盤下部分に、連続した管体を湾曲させ且つ接触するよう巻き、該管体の内部に地盤下部分補強用の充填物を充填してなることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、管体を支柱の地盤下部分に接触させるよう地盤下部分に巻いているので、支柱の地盤下部分を地盤に埋め込む際の地盤の掘削範囲が、地盤下部分の径と管体の径を合わせた大きさに応じた範囲で済むから、掘削面積、掘削量、埋め戻し量ともに小さくて済み、施工が楽である。また、地盤下部分補強用の充填物は管体内に充填されているから、充填物の養生期間を待つことなく、地盤の埋め戻しができ、したがってその分だけ施工期間を短縮させられる。
【0008】
本発明の支柱用基礎構造では、管体に下側端部が開放された小径管体が挿入され、前記管体および小径管体に充填物であるコンクリートが充填されていることを特徴としている。
【0009】
上記構成の支柱用基礎構造では、小径管体からコンクリートを注入して管体の底部側から上方に向けて順次コンクリートを充填させることができる。小径管体からコンクリートを注入して管体の底部側から上方に向けて順次コンクリートを充填させることで、管体内の空気をコンクリートにより上方に排除して、コンクリートの充填が円滑に行われる。
【0010】
本発明の支柱用基礎構造では、管体の内部に杆状の形状記憶合金が挿通されていることを特徴としている。
この構成では、形状記憶合金の保形性によって、管体が地盤下部分から離れるのが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の支柱用基礎構造によれば、管体を支柱の地盤下部分に接触させるよう地盤下部分に巻いているので、支柱の地盤下部分を地盤に埋め込む際の地盤の掘削範囲が、地盤下部分の径と管体の径を合わせた大きさに応じた範囲で済むから、掘削面積、掘削量、埋め戻し量ともに小さくて済み、施工が楽であり、施工範囲を制限された場所にも支柱を立設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す基礎構造の全体図
【図2】同じく管体の長手方向に沿う断面図
【図3】同じく管体の径方向に沿う断面図
【図4】同じく保持手段の取付図
【図5】同じくコンクリート注入の際の原理図
【図6】本発明の第二の実施形態を示す基礎構造の全体図
【図7】同じく管体の内部構造を省略した図6におけるA−A線矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る支柱(電柱)用の基礎構造を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の第一の実施形態を示す基礎構造の全体図、図2は管体の長手方向に沿う断面図、図3は管体の径方向に沿う断面図、図4は保持手段の取付図、図5はコンクリート注入の際の原理図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る基礎構造1は、地盤2中に埋められる、円柱状の支柱3の地盤下部分30に設けられて、これを地盤に対して支持するものである。図2および図3に示すように、基礎構造1は、管体4と、管体4に内装される小径管体5と、管体4に内装される杆状の形状記憶体(形状記憶合金)6と、小径管体5内および管体4内に注入された補強用の充填物であるコンクリート7と、図4に示すように、管体4を地盤下部分30に対して保持する保持手段8とから構成されている。
【0015】
管体4および小径管体5は、フレキシブル管である。管体4は消防用ホースなどの材質・構成のものが好適に用いされる。図5に示すように、管体4の一端は開口4aとされ、他端には閉塞板4bが形成されて閉じられている。管体4の直径は、設置する支柱3(地盤下部分30)の直径、地盤下部分30の埋込量、地盤2の軟弱度等の要因によって適宜選択することが好ましい。この実施形態では管体4の直径は15cm程度に形成されている。
小径管体5の長さ方向途中部分には、長さ方向所定間隔置きおよび周方向所定間隔置きに空気抜き孔5aが形成されている(図3参照)。小径管体5の一端および他端は開口5b,5cとされている。小径管体5の直径は7cm程度に設定されている。その材質は特に問わないが、可撓性に富んで引張強度の高いものが好ましい。
【0016】
管体4は、地盤下部分30の上下方向に沿うよう湾曲し且つ地盤下部分30に接触(部分的に接触)するよう設けられている。具体的には、管体4は地盤下部分30の上端部から下端部に亘って、地盤下部分30に螺旋状に巻付けられている。管体4の上端部40は地盤表面20から突出するよう設けられる。管体4の螺旋ピッチは任意であるが、この場合、50cm間隔に設定されており、後に詳述する保持手段8に、螺旋ピッチとなるように、保持されている。
【0017】
小径管体5と形状記憶体6とは、互いに螺旋状の形態で管体4内に挿通されている。小径管体5と形状記憶体6との螺旋ピッチは任意であるが、この場合、小径管体5の螺旋ピッチは、形状記憶体6の螺旋ピッチに比べて大きく設定されている。
【0018】
保持手段8は、地盤下部分30の高さ方向途中に装着されるもので、耐腐食性の金属製で薄肉の締結バンド80と、締結バンド80に設けられたフック部81とを有する。締結バンド80は、地盤下部分30の高さ方向途中に巻かれて締められることで、地盤下部分30に固定されている。フック部81は塑性変形可能な金属線から形成されている。このような保持手段8は、地盤下部分30の高さ方向途中に、高さ方向所定間隔ごとに設置され、フック部81には管体4の途中部分が掛けられて、フック部81を塑性変形させて管体4の途中部分を締付けることで固定している。
【0019】
上記構成の基礎構造1の施工手順を説明する。まず、支柱3の地盤下部分30を地盤下に埋設するために、地盤2を掘削する。この場合、オーガ掘削工法によって、不図示のオーガを用いて掘削穴21(図1の仮想線で示す)を垂直方向に掘削する。掘削穴21の直径は、地盤下部分30の直径に管体4の直径の2倍を加え、さらに埋戻しに必要な広さを加えた大きさとする。
【0020】
一方で、支柱3の地盤下部分30となる領域に、所定のピッチごと(現場に応じた補強の程度)に保持手段8を取付け、地盤下部分30となる領域に、予め、螺旋状に形成された小径管体5および形状記憶体6が内装された管体4を螺旋状に巻いて、管体4を保持手段8のフック部81で固定することで、地盤下部分30と管体4とを一体化させておく。
【0021】
続いてクレーン等を用いて支柱3を吊り、支柱3を降ろして掘削穴21に地盤下部分30を挿入する。このとき、掘削穴21の直径は、地盤下部分30の直径に管体4の直径の2倍を加え、さらに埋戻しに必要な広さを加えた大きさであるから、地盤下部分30に管体4を巻付けていたとしても、地盤下部分30を掘削穴21に円滑に挿入することができる。
【0022】
続いて、コンプレッサを用いて、小径管体5の上端部の開口5bから、小径管体5にコンクリート7を圧搾注入する作業を行う。この場合、コンクリートは早強性のものが好ましい。管体4の上端部は開口4aとして開放され、小径管体5の途中には空気抜き孔5aが形成され、小径管体5の下端部は開口5cとして開放されている。このため、コンプレッサを用いてコンクリート7を圧搾注入すると、小径管体5内の空気は空気抜き孔5aから管体4内に押し出されるとともに、開口5cから管体4内に押し出される。このため、小径管体5は螺旋状の形態であったとしても、特別に吐出力の大きなコンプレッサを用いなくても、コンクリート7を円滑に小径管体5内に注入することができる。
【0023】
上記のように、小径管体5内に順次コンクリート7が注入されて充填されると、コンクリート7は開口5cから管体4内に吐出される。そして、開口5cは管体4内の下端部側に配置されているから、コンクリート7は管体4内の空気を押上げながら、管体4内の下部側から順次上部側へ向けて充填される。このような作業を、コンクリート7が管体4内の全ての領域に充填されるまで継続する。このようにすることにより、管体4および小径管体5の双方にコンクリート7が充填され、しかも管体4の内部には形状記憶体6が埋設された状態にある、補強性の高い基礎構造1が構築される。
【0024】
特に形状記憶体6は管体4内に螺旋状に配置されているから、管体4内に直線状に挿通されている場合に比べて、コンクリート7との接触面積が多く確保されている。このため、硬化したコンクリート7と形状記憶体6とが強固に一体化される。そして、管体4は保持手段8を介して地盤下部分30と一体化されており、形状記憶体6の保形性により、管体4が全体として地盤下部分30から離れるのを抑制する。この構成においても、補強性の高い基礎構造1が構築される。
【0025】
管体4へのコンクリート7の充填が終えたら、地盤2を埋戻し、締固める。このとき、地盤表面20から飛び出ている、管体4の余計部分は、地盤中に埋め込んでもよい。
【0026】
上記構成の基礎構造1によれば、その施工作業の全てを地盤上で行うことが可能である。このため地盤2を掘削して形成する掘削穴21の直径は、地盤下部分30の直径に管体4の直径の2倍を加え、さらに埋戻しに必要な広さを加えた大きさでよく、円錐台形状や角錐台形状の広い範囲での形成が不要となり、また型枠の設置や取外し作業がなくなって、施工が楽になる。
【0027】
上記構成の基礎構造1では、コンクリート7は、管体4内に充填されているのみで、掘削穴21の周辺部の地盤との接触がない。このため、支柱3の撤去時には、基礎構造1を地盤2から抜いてもコンクリート7が地盤2中に残ることがない。
【0028】
次に、本発明の第二の実施形態を図6および図7に基づいて説明する。図6は第二の実施形態を示す構造図、図7は図6のA−A線矢視断面図であり、管体4の内部構造は省略してある。第二の実施形態の基礎構造1が第一の実施形態の基礎構造1と異なる部分は、管体4の配置形態である。
【0029】
第二の実施形態では、管体4を、上湾曲部43および下湾曲部44と、上湾曲部43および下湾曲部44を介して上下方向に沿う直線部45とから構成している。直線部45の周方向ピッチは等間隔に設定されている。そして、地盤下部分30に対して上下方向で蛇行させ、且つ地盤下部分30の周方向に沿うよう配置している。
【0030】
管体4は、地盤表面20から突出した一端部(先端部)4cと地盤2に埋設された他端部(周端部)4dとを有し、管体4を一端部4c側から他端部4d側へ順に地盤下部分30に沿わせて、最後の直線部45において、閉塞板4b(図5参照)が下方にあるようになっている。
【0031】
管体4をその上湾曲部43および下湾曲部44のうち、少なくとも上湾曲部43で保持する、不図示の保持手段が設けられている。保持手段は第一の実施形態で示したように、締結バンドと、締結バンドに設けられた複数のフック部とを有する。この場合、フック部は、周方向に等しいピッチで複数個(上湾曲部43の数)設けられている。管体4の内部構造は第一の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0032】
第二の実施形態における基礎構造1では、管体4を地盤下部分30に対して上下方向で蛇行させ、且つ地盤下部分30の周方向に沿うよう配置する点で、第一の実施形態と施工方法が異なる。第二の実施形態の基礎構造1では、管体4を、上湾曲部43および下湾曲部44と、上湾曲部43および下湾曲部44を介して上下方向に沿う直線部45とから構成している。この構成では、管体4内の一端部4c側の小径管体5の開口5bからコンクリート7を注入すると、管体4を上下に連続するよう配置している分だけ、高揚程のコンプレッサが必要となる。しかしながら、コンクリート7を注入した後は、第一の実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0033】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その他、各部の具体的構成についても本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、上記各実施形態では、充填物としてコンクリートを用いたが、コンクリート以外でも、必要相当の強度を有する樹脂であってもよい。形状記憶体6は杆状のものを螺旋状に形成したが、螺旋状とせず、杆状のものを管体4の湾曲に沿わせる(合致させる)ようにして、管体4の内部に挿通してもよい。さらに、管体4を形成する材料(例えば表面の布地)に金属メッシュなどを織り込むことにより、管体4をアース部品として兼用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1…基礎構造、2…地盤、3…支柱、4…管体、5…小径管体、6…形状記憶体、7…コンクリート、8…保持手段、20…地盤表面、21…掘削穴、30…地盤下部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に埋められる支柱の地盤下部分に設けられる基礎構造であって、前記地盤下部分に、連続した管体を湾曲させ且つ接触するよう巻き、該管体の内部に地盤下部分補強用の充填物を充填してなることを特徴とする支柱用基礎構造。
【請求項2】
管体に下側端部が開放された小径管体が挿入され、前記管体および小径管体に充填物であるコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項1記載の支柱用基礎構造。
【請求項3】
管体の内部に杆状の形状記憶合金が挿通されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の支柱用基礎構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−111824(P2011−111824A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270205(P2009−270205)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】