説明

改善されたイソ−選択性を持つヒドロホルミル化法

α−オレフィンのヒドロホルミル化法において、α−オレフィンが、ロジウム前駆体および配位子混合物に基づく触媒錯体の存在下で、一酸化炭素、または一酸化炭素および水素および/または還元剤と反応される。その配位子混合物は、少なくとも1重量%のトリフェニルホスフィンおよび少なくとも5重量%のジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリス−(o−トリル)ホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィンまたは(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の異なる配位子(ligand:リガンド)とロジウム前駆体に基づく(based on:をベースとする)ロジウム触媒錯体の存在下におけるα−オレフィンのヒドロホルミル化法に関する。特に本発明は、主炭素鎖に3以上の炭素原子を有するα−オレフィンのヒドロホルミル化法であって、この方法が改善されたイソ−選択性(iso-selectivity:アイソ−選択性)を示す方法に関する。別の特徴(側面)では、本発明は、ロジウム前駆体および2種類の配位子に基づく(をベースとする)触媒錯体、および、α−オレフィンのヒドロホルミル化法における前記触媒錯体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロホルミル化は、下記スキーム1で例示されるように、オレフィン基質と、一酸化炭素および水素および/または還元剤を反応させて、元のオレフィン性(olefinic)反応剤よりも1つ炭素原子の多いアルデヒドを形成するのに適用される一般的用語である。
【0003】
【化1】

【0004】
だたし、Rは、例えばカルボキシル、ヒドロキシルおよび/またはエステル基のような官能基を任意選択的に(オプションとして)含むヒドロカルビル(hydrocarbyl)残基である。
【0005】
ヒドロホルミル化法(プロセス:process)について最も重要な産業的応用の1つは、いわゆるオキソ法であり、これは遷移金属触媒錯体の存在下でのオレフィンのヒドロホルミル化である。得られるアルデヒドは、例えば、水素化(水素添加)され、いわゆるオキソアルコールを与えることができ、長鎖生成物はスルホネートに変換され、洗剤として使用される。このオキソ法は、ルール・セミー(Ruhr Chemie)のレーレン(Roelen)およびその共同研究者らによって1938年に発見された。最初の触媒であり、大規模にまだ使用されているものは、[HCo(CO)]から形成されるコバルトカルボニル錯体であった。この方法は、120〜175℃の温度、数百気圧の圧力で行われる。高圧力は、可溶性金属カルボニル錯体の形態にコバルトを維持するのに必要である。ホスフィン配位子を有するコバルト錯体の使用により、改善された選択性を持った方法になる。ヒドロホルミル化の技術における重要な進歩は、ウイルキンソン(Wilkindon)水素化で使用されるものと同様であるが、H、COおよびオレフィン性配位子、およびトリフェニルホスフィンを組み込んでいる、ロジウムのホスフィン錯体が、コバルト錯体よりも7倍高い触媒活性を有していることを発見したことにより成し遂げられた。更に、このロジウム錯体は、低圧、典型的には1.5MPa(15気圧)において、約90℃の反応温度で使用するのに十分安定である。固体支持体に結合されたロジウムホスフィン錯体について、広範囲な研究がなされたが、生じた錯体は反応混合物にロジウムが侵出するので十分に安定ではなかった。工学的問題(engineering problem)に対して成功を収めた解決策は、2相液−液プロセスの適用によりもたらされた。ヒドロホルミル化およびオキソ法は、例えば、カーク−オスマー(Kirk-Othmer)のEncyclopedia of Chemical Technology, 4th ed, vol. 17, chapter "Oxo Process"(化学技術の百科事典、第4版、第17巻、「オキソ法」の章)(非特許文献1)、および、Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds - A Comprehensive Handbook in Two Volumes, chapter 2.1.1. pages 29-102, "Hydroformulation (Oxo Synthesis, Roelen Reaction)"(有機金属化合物を用いた応用均一触媒−2容量の総合便覧、第2.1.1.章、29〜102頁、ヒドロホーミュレーション(Hydroformulation)(オキソ法、レーレン反応)(非特許文献2)に更に開示され、議論されている。
【0006】
オレフィン鎖が2より多い(越える)炭素原子を含む場合、ヒドロホルミル化は、線状(linear:直鎖)アルデヒドおよび分岐(branched)アルデヒドの混合物を生じ、ヒドロホルミル化反応における重要な問題(key issue)は、ノルマル(normal)対分岐(イソ)生成物の比をどのように制御するかである。線状オレフィンの場合、ノルマル生成物が通常望まれるものであるが、官能性(functional)または非対称ヒドロホルミル化では、最終用途が所望の生成物の形態を決定する。分岐(イソ−型(iso-form))ヒドロホルミル化化合物は、例えば立体的に混み合ったポリオールのような、精密化学製品(ファインケミカルズ)および特殊化学製品に対する出発物質として特に重要である。一般に、使用される反応条件および特定の触媒系がヒドロホルミル化生成物の化学構造と生成物の分布に大きく影響する。70年代末期に、タナカ(Tanaka)ら(Tanaka, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 50 (1979) 9. 2351-2357)(非特許文献3)は、ヒドロホルミル化における生成物の選択性について、RhCl(CO)触媒と組み合わせた短かいメチレン鎖でつながれたジホスフィンの影響を研究した。トリフェニルホスフィン配位子の使用は、水素化を抑え、異性体含有量を増加させたが、分岐(イソ)対ノルマル比(i/n−比)は、まだ意に満たないほど低かった。
【0007】
タナカが彼の仕事を発表してから、種々の位置選択的ヒドロホルミル化法が示唆されている。国際公開93/14057号(WO93/14057)(特許文献1)は、ロジウム錯体と二座ホスフィン配位子を含む可溶性触媒の存在下で、オレフィンが一酸化炭素と反応する方法を開示している。反応剤として不飽和オレフィンを使用すると、分岐アルデヒドエステル(branched aldehydic ester)が、良好な収量および高い選択性で生じる。米国特許第5,364,970号(特許文献2)は、不飽和カルボニル化合物のヒドロホルミル化で所望のα−ホルミル異性体の選択性および反応率を増加させるために、無機ロジウム前駆体と、種々のリン、ヒ素またはアンチモン原子を含有する配位子をベースとする触媒系を用いることを示唆している。N.ロサス(N. Rosas)らのRevista Latino Amer. Quim., 8, 121-122 (1977)(非特許文献4)は、一般式Rh(CO)ClL(式中、Lはトリアリールホスフィン(triarylphosphine)、トリフェニル、トリ−p−メチルフェニル、トリ−o−メチルフェニル、トリ−p−メチルオキシフェニルまたはトリ−o−メチルオキシフェニルである)の、いくつかの塩素を含有するロジウム誘導体を用いる、エチレンの触媒ヒドロホルミル化を開示している。米国特許第4,945,185号(特許文献3)は、酸含有ロジウム触媒上で反応することにより、アルデヒド、またはケトンおよびアルデヒドの混合物を製造するためのヒドロホルミル化法を教示している。前記の酸含有ロジウム触媒は、トリオルガノホスフィン(triorganophosphine)と錯形成したロジウムよりなる触媒量の触媒錯体および電子吸引基でパラ位が置換されたフェニル基を有するカルボン酸を含む反応混合物を形成することによって得られる。
【0008】
【特許文献1】国際公開93/14057号
【特許文献2】米国特許第5,364,970号
【特許文献3】米国特許第4,945,185号
【非特許文献1】Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4th ed, vol. 17, chapter "Oxo Process"
【非特許文献2】Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds - A Comprehensive Handbook in Two Volumes, chapter 2.1.1. pages 29-102, "Hydroformulation (Oxo Synthesis, Roelen Reaction)"
【非特許文献3】Tanaka, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 50 (1979) 9. 2351-2357
【非特許文献4】N. RosasらRevista Latino Amer. Quim., 8, 121-122 (1977)
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
従来の努力にもかかわらず、触媒活性、および、例えば、イソ−選択性として表される位置および化学選択性(regio and chemoselectivity)を更に改善する必要性がまだ存在する。驚くことに、α−オレフィンの水素化において、同様かまたはいっそう改善されたα−オレフィン変換率(conversion:転化率)を持つ、実質的に改善されたイソ−選択性が、2種類の異なる配位子および少なくとも1種のロジウム前駆体の組み合わせに基づく(をベースとする)触媒錯体を用いることによって得られることが新たに見いだされた。2種類の配位子の混合物を利用する本発明の方法では、例えば、もっとも好ましいα−オレフィンであるプロペンのヒドロホルミル化で得られるイソ−ブチルアルデヒドとn−ブチルアルデヒドとの間の比のようなi/n比は、例えば1:1および1:6のi/n比の範囲内で容易に制御することができる。従って、本発明は、α−オレフィン、例えばその主炭素鎖に2または、好ましくは3以上の炭素原子を有するα−オレフィンのヒドロホルミル化法、例えば連続法(process:プロセス)、に関し、このヒドロホルミル化は、少なくとも1種のロジウム前駆体と、2種類の異なる配位子の混合物とに基づく(をベースとする)触媒錯体の存在下で行われる。本発明の方法は、従来のヒドロホルミル化法および/または触媒錯体のような触媒からは決して予測できない程度までイソ選択性を実質的に改善する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の種々の実施形態において、好ましいα−オレフィンは、エチレン、プロペン、ブテンル類(butenes)、ペンテン類(pentenes)およびヘキセン類(hexenes)、またはこれらの混合物もしくはこれらとの混合物よりなる群から適切に選択される。オレフィン性供給原料は、1または数種の上に列記したα−オレフィンを含むことができる。エチレンの場合、ノルマルアルデヒド(プロピオンアルデヒド)のみが可能であり、従って、典型的には、これは、上に列記した少なくとも1種のその他のα−オレフィンとの共供給原料(co-feed)としてのみ使用される。
【0011】
前記触媒錯体は、少なくとも1重量%のトリフェニルホスフィンおよび少なくとも5重量%、例えば10重量%、のジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリス−(o−トリル)ホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィンまたは(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィンを含む配位子混合物と、少なくとも1種のロジウム前駆体に基づく(をベースとする)。上述の前記配位子の構造は、最後に追加した式I−Vによって示すことができる。
【0012】
本発明によるヒドロホルミル化で使用される触媒錯体は、ロジウム化合物と前記配位子混合物を反応し、適切な反応条件で反応性錯体を形成することによって、適切に調製される。ロジウムの濃度は、所望の触媒特性および応用例に実質的に依存して変化しうる。しかし、好ましいロジウムの濃度は、得られた反応混合物の重量の20〜1000、例えば50〜500、ppmであり、好ましい配位子濃度は反応混合物の1〜15重量%である。
【0013】
使用されるロジウム前駆体は、例えばハロゲン化物(halogenide)、硝酸塩(nitrate:ナイトレート)、カルボニル化合物、スルフェート(sulfate)、酢酸塩(acetate:アセテート)、ジカルボニルアセチルアセトネート(dicarbonyl acetylacetonate)のようなロジウム塩または有機金属化合物のいずれかである。適切な前駆体の具体例には、硝酸ロジウム(III)(rhodium(III) nitrate)、酢酸ロジウム(I)(rhodium(I) acetate)、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)(acetylacetonatedicarbonyl rhodium(I))、ジ(ロジウム)テトラカルボニルジクロリド(di(rhodium)tetracarbonyl dichloride)、ドデカンカルボニルテトラロジウム(dodecancarbonyltetrarhodium)およびヘキサデカンカルボニルヘキサロジウム(hexadecancarbonylhexarhodium)が含まれる。
【0014】
前記ヒドロホルミル化は、原則的に、それ自体公知の方法によって行うことができる。従って、α−オレフィンを、前記触媒錯体の存在下で、一酸化炭素、または一酸化炭素および水素および/または還元剤を含む合成ガスと反応させる。α−オレフィンと反応させる前記合成ガスは、本発明の好ましい実施形態では、水素および一酸化炭素を、例えば、0.1:2.5、例えば0.8:1.2、1.0:1.1または1:1のような、水素対一酸化炭素のモル比で含む。
【0015】
本発明のヒドロホルミル化法は、好ましくは、非常に穏和な条件で行われる。好ましい温度範囲は、30〜200℃、例えば50〜130℃または80〜120℃であり、好ましい反応圧力は、1〜150bar、例えば5〜50または10〜30barである。
【0016】
本発明の方法は、そのもっとも好ましい実施形態では、80〜120℃の温度、10〜30barの圧力、0.1:2.5の水素対一酸化炭素のモル比、反応混合物の1〜15重量%の配位子濃度、および、反応混合物の重量の20〜1000、例えば50〜500、ppmのロジウム濃度で実施される、プロペンのヒドロホルミル化である。
【0017】
別の特徴(側面)では、本発明は、上で開示した触媒錯体であって、少なくとも1種のロジウム前駆体、および、少なくとも1重量%のトリフェニルホスフィンおよび少なくとも5重量%、例えば10重量%、のジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリス−(o−トリル)ホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィンまたは(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィンを含む配位子混合物に基づく(をベースとする)触媒的に(catalytically)活性な錯体であるものに関する。前記ロジウム前駆体は、好ましくは、例えば硝酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(I)、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)、ジ(ロジウム)テトラカルボニルジクロリド、ドデカンカルボニルテトラロジウムまたはヘキサデカンカルボニルヘキサロジウムのような、ハロゲン化物、硝酸塩(ナイトレート)、カルボニル化合物、スルフェート(sulfate)、酢酸塩(アセテート)またはジカルボニル−アセチルアセトネートである。前記触媒錯体は、主に、α−オレフィンのヒドロホルミル化用であり、好ましくは、そのようなヒドロホルミル化の間に、その場で(in situ)形成される。
【0018】
さらに別の特徴(側面)では、本発明は、α−オレフィン、例えばエチレン、プロペン、ブテン、ペンテンまたはヘキセン、またはこれらの混合物またはこれらとの混合物のヒドロホルミル化における、前記触媒錯体の使用に関する。エチレンは、典型的には、上に列記した少なくとも1種のその他のα−オレフィンとの共供給原料に使用される。前記ヒドロホルミル化は、好ましくは、反応混合物の1〜15重量%の配位子濃度、および得られた反応混合物の重量の20〜1000ppmのロジウム濃度で実施される。
【0019】
更に詳述することなく、先の説明を用いて、当業者はその限度いっぱいまで本発明を利用することができると考えられる。以下の例1〜4および6〜7は、本発明の実施形態によるヒドロホルミル化に関する。例5および8は、本発明の範囲外の単一配位子のヒドロホルミル化の比較例である。表1および2は、例1〜8で得られた生成物のGC分析により得られた結果を示す。例1〜8で示される全ての部は、重量部である。
【0020】
例1
39.08部の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ−イソ−ブチレート(Nx795(商標)ペルストルプ オキソ AB(Perstorp Oxo AB)、スウェーデン)、1.01部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)、4.13部の配位子、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(CP)および8.04部のNx795に溶解した0.033部のロジウム前駆体、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)を、ステンレス鋼オートクレーブに充填した。系から酸素を除去するために、反応容器を撹拌下に、3分間窒素でフラッシュ(flush)した。1.5部のプロペンを反応容器に充填し、ゼロ時のサンプル(zero sample)を採取した。すぐに(次に)撹拌と加熱を開始した。100℃の反応温度に達したとき、合成ガス、1:1のモル比のHおよびCO、の充填を開始した。系の総圧力は11barであった。サンプルを反応の3時間後に採取し、ブチルアルデヒド類(butyric aldehydes)へのプロペンの変換率と、イソ−ブチルアルデヒドへの選択性(イソ−選択性)についてGCで分析した。その結果を表1に示した。
【0021】
例2
4.13部の配位子、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(CP)に代えて、4.73部の配位子、トリス−(o−トリル)ホスフィン(TOTP)を充填したことを相違点として、例1を繰り返した。反応の3時間後の、ブチルアルデヒド類へのプロペンの変換率と、イソ−ブチルアルデヒドへの選択性(イソ−選択性)を表1に示した。
【0022】
例3
4.13部の配位子、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(CP)に代えて、4.37部の配位子、(2−メチルフェニル)−ジフェニルホスフィン(MeP)を充填したことを相違点として、例1を繰り返した。反応の3時間後の、ブチルアルデヒド類へのプロペンの変換率と、イソ−ブチルアルデヒドへの選択性(イソ−選択性)を表1に示した。
【0023】
例4
1.01部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)および4.13部の配位子、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(CP)に代えて、1.72部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)、0.5部の配位子、トリス−(p−トリル)ホスフィン(TPTP)を充填したことを相違点として例1を繰り返した。反応の3時間後の、ブチルアルデヒド類へのプロペンの変換率と、イソ−ブチルアルデヒドへの選択性(イソ−選択性)を表1に示した。
【0024】
例5(比較例)
43.61部の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ−イソ−ブチレート(Nx795(商標)ペルストルプ オキソ AB、スウェーデン)、2.37部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)および4.02部のNx795に溶解した0.013部のアセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)を、ステンレス鋼オートクレーブに充填した。系から酸素を除去するために、反応容器を撹拌下に、3分間窒素でフラッシュした。1.6部のプロペンを反応容器に充填し、ゼロ時のサンプルを採取した。すぐに(次に)撹拌および加熱を開始した。100℃の反応温度に達したとき、合成ガス、1:1のモル比のHおよびCO、の充填を開始した。系の総圧力は11barであった。サンプルを反応の3時間後に採取し、ブチルアルデヒド類へのプロペンの変換率と、イソ−ブチルアルデヒドへの選択性(イソ−選択性)についてGCで分析した。その結果を表1に示した。
【0025】
例6
82.25部の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ−イソ−ブチレート(Nx795(商標)ペルストルプ オキソ AB、スウェーデン)、12.19部のn−ブチルアルデヒド、4.0部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)、1.5部の配位子、トリス−(p−トリル)ホスフィン(TPTP)、および0.0627部のロジウム前駆体、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)を、連続反応容器系(system:システム)に充填した。すぐに(次に)、触媒溶液を(ピストンポンプの助けを借りて)この系に循環し、反応容器の温度が60〜70℃になったとき、プロペン、合成ガス(H/CO=1/1モル/モル)および窒素の供給を開始した。反応容器に4枚羽根のタービンおよびバッフル(baffles)を取り付けた。反応容器を96℃および15barで操作し、撹拌速度は650rpmであった。反応容器から触媒溶液、生成物およびガス類(gases)をフラッシュ容器(flash vessel)に移動させ、生成物および触媒溶液から未反応のガス類を分離した。このフラッシュ容器は20℃で操作した。生成物を、120℃で操作する分離反応容器中で触媒溶液から分離した。触媒溶液をピストンポンプの助けを借りて反応容器に再循環した。生成物の容器を毎日空にし、生成物の量を秤量し、GCで分析した。フラッシュ容器の頂部からガスサンプルを毎平日取り、GCで分析した。その結果を表2に示す。
【0026】
例7
4.0部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)および1.5部の配位子、トリス−(p−トリル)ホスフィン(TPTP)に代えて、2.0部の配位子、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(CP)、5.39部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)を充填したことを相違点として、例6を繰り返した。その結果を表2に示した。
【0027】
例8(比較例)
71.97部の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノ−イソ−ブチレート(Nx795(商標)ペルストルプ オキソ AB、スウェーデン)、15.36部のn−ブチルアルデヒド、12.61部の配位子、トリフェニルホスフィン(TPP)、および0.0627部のロジウム前駆体、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)を、連続反応容器系(システム)に充填した。触媒溶液を(ピストンポンプの助けを借りて)この系に循環させ、反応容器の温度が60〜70℃になったとき、プロペン、合成ガス(H/CO=1/1モル/モル)および窒素の供給を開始した。反応容器のセットアップ、反応条件およびサンプリングは、例6および7の通りであった。その結果を表2に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【化2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−オレフィンが、ロジウム前駆体および配位子系に基づく触媒錯体の存在下で、一酸化炭素、または一酸化炭素および水素および/または還元剤と反応される、α−オレフィンのヒドロホルミル化法であって、
前記触媒錯体は、少なくとも1種のロジウム前駆体、および、少なくとも1重量%のトリフェニルホスフィンおよび少なくとも5重量%のジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリス−(o−トリル)ホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィンまたは(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィンを含む配位子混合物に基づくものであること
を特徴とする、ヒドロホルミル化法。
【請求項2】
前記α−オレフィンが、エチレン、プロペン、ブテン、ペンテンまたはヘキセン、またはこれらの混合物またはこれらとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記α−オレフィンが、プロペンおよびエチレンの混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記α−オレフィンがプロペンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロホルミル化が、反応混合物の1〜15重量%の配位子濃度で行われることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ヒドロホルミル化が、得られた反応混合物の重量の20〜1000、例えば50〜550、ppmのロジウム濃度で行われることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ロジウム前駆体が、ハロゲン化物、硝酸塩(ナイトレート)、カルボニル化合物、スルフェート、酢酸塩(アセテート)またはジカルボニルアセチルアセトネートであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ロジウム前駆体が、硝酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(I)、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)、ジ(ロジウム)テトラカルボニルジクロリド、ドデカンカルボニルテトラロジウムまたはヘキサデカンカルボニルヘキサロジウムであることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記触媒錯体が、前記ヒドロホルミル化においてその場で形成されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロホルミル化が、30〜200℃、例えば50〜130℃または80〜120℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ヒドロホルミル化が、1〜150bar、例えば5〜50または10〜30barの圧力で行われることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記α−オレフィンが、水素および一酸化炭素を、0.1:2.5、例えば、0.8:1.2、1.0:1.1または1:1の水素対一酸化炭素のモル比で含む合成ガスと反応されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドロホルミル化が、80〜120℃の温度、10〜30barの圧力、0.1:2.5の水素対一酸化炭素のモル比、反応混合物の1〜15重量%の配位子濃度および得られた反応混合物の重量の20〜1000ppmのロジウム濃度で行われる、プロペンのヒドロホルミル化であることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロホルミル化が連続法で行われることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1種のロジウム前駆体、および、少なくとも1重量%のトリフェニルホスフィンおよび少なくとも5重量%のジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリス−(o−トリル)ホスフィン、トリス−(p−トリル)ホスフィンまたは(2−メチルフェニル)ジフェニルホスフィンを含む配位子混合物に基づくことを特徴とする触媒錯体。
【請求項16】
前記ロジウム前駆体が、ハロゲン化物、硝酸塩(ナイトレート)、カルボニル化合物、スルフェート、酢酸塩(アセテート)またはジカルボニルアセチルアセトネートであることを特徴とする、請求項15に記載の触媒錯体。
【請求項17】
前記ロジウム前駆体が、硝酸ロジウム(III)、酢酸ロジウム(I)、アセチルアセトネートジカルボニルロジウム(I)、ジ(ロジウム)テトラカルボニルジクロリド、ドデカンカルボニルテトラロジウムまたはヘキサデカンカルボニルヘキサロジウムであることを特徴とする、請求項15または16に記載の触媒錯体。
【請求項18】
前記触媒錯体が、α−オレフィンのヒドロホルミル化において存在することを特徴とする、請求項15乃至17のいずれかに記載の触媒錯体。
【請求項19】
前記触媒錯体が、前記ヒドロホルミル化において、その場で形成されることを特徴とする、請求項18に記載に触媒錯体。
【請求項20】
α−オレフィンのヒドロホルミル化における請求項15乃至17のいずれかに記載の触媒錯体の使用。
【請求項21】
前記α−オレフィンが、エチレン、プロペン、ブテン、ペンテンまたはヘキセン、またはこれらの混合物またはこれらとの混合物であることを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記ヒドロホルミル化が、反応混合物の1〜15重量%の配位子濃度で行われることを特徴とする、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記ヒドロホルミル化が、得られた反応混合物の重量の20〜1000、例えば50〜550、ppmのロジウム濃度で行われることを特徴とする、請求項20乃至22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記触媒錯体が、前記ヒドロホルミル化においてその場で形成されることを特徴とする、請求項20乃至23のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2008−533138(P2008−533138A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501841(P2008−501841)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000329
【国際公開番号】WO2006/098685
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(502456286)ペルストルプ スペシヤルテイ ケミカルズ アーベー (12)
【氏名又は名称原語表記】Perstorp Specialty Chemicals AB
【住所又は居所原語表記】S−284 80 Perstorp, Sweden
【Fターム(参考)】