説明

改善されたスキンケアのためのコラーゲン剤形

コラーゲンをヒト対象に投与するための組成物および方法を開発した。本発明のコラーゲン含有脂質小胞は、コラーゲンの化学的および物理的な不安定性に関連する問題と非ヒトコラーゲンに対する免疫反応とを解消するヒトコラーゲンの送達系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2007年12月26日付で出願された米国仮特許出願第61/016,739号;および2008年2月12日付で出願された同第61/027,864号の恩典を主張するものであり、両者は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
皮膚はヒト身体の中で最大の器官であり、2つの主要な層、つまり表皮および真皮から本質的になる。表皮は最外層であり、特に、細胞および組織からの水分喪失を制御する。真皮は表皮下の層であり、血管、リンパ管、毛包および汗腺を含む。真皮の下が下皮である。下皮は外皮系の一部であると考えられるが、皮膚の層であるとは一般的に考えられていない。下皮は脂肪の貯蔵に主に使われる。
【0003】
最も外側の表皮は、下層の基底膜を有する重層扁平上皮で構成されている。これは血管を含んでおらず、真皮からの拡散によって栄養を受けている。表皮を構成する主な細胞種は角化細胞であり、メラニン細胞およびランゲルハンス細胞も存在している。表皮は以下の層にさらに細分することができる(最外層から始めて): 角質層、透明層、顆粒層、有棘層、基底層。細胞は最内層で有糸分裂を通じて形成される。細胞は分化しかつケラチンで満たされながら、上層に移動し、形状および組成を変化させる。それらは皮膚角質層に最終的に到達し、剥がれ落ちるようになる。この過程は角質化と呼ばれており、約30日以内で行われる。
【0004】
真皮は大部分がタンパク質コラーゲンからなり、これは、血管および細胞増殖のための骨格となる架橋線維のネットワークを形成する。コラーゲンは、真皮の主成分であるので、皮膚の支持構造物として働く。コラーゲンの健全性および安定性は、皮膚の外形、しわ(wrinkle)およびすじ(line)を判定する上で重要な要素である。
【0005】
ヒトでも動物でも共に見出される天然の線維性タンパク質であるコラーゲンは、皮膚でのその役割に加えて、構造的支持を骨、腱、靱帯、および血管にもたらす。コラーゲンは体内で最も豊富なタンパク質である。
【0006】
いくつかの主要な種類のコラーゲンが存在しており、このことは、コラーゲンが全身で示す構造的特性および機能的特性の多様さを引き起こす。年齢および損傷により、個体中のコラーゲンは弱体化し始め、その弾力性を失う。皮膚では、この過程がしわの出現を最終的にもたらす。
【0007】
コラーゲン線維の基本構造単位はトロポコラーゲンである。これは、およそ1000アミノ酸残基の、3本の絡み合うペプチド鎖の三重らせんからなる。このペプチド鎖の基本ポリペプチド単位は3アミノ酸の繰り返し配列であり、その中で3つ目の残基ごとにグリシンがあり、その他2つがプロリンとハイドロプロリンを繰り返す。グリシン残基が3残基ごとに存在することは、コラーゲン線維の安定化機能に重要である。なぜなら、その小さな側鎖が3本のらせんの密ならせん化を可能にし、強力な安定化構造をもたらすからである。
【0008】
若い皮膚では、コラーゲンは無傷でかつ弾性なままであるが、しかし、皮膚が老化するにつれて、支持構造が弱体化し、皮膚が弾力性を失い、コラーゲン支持体が、例えば、表情の慢性的ストレスから次第に弱まる。これがすじおよびしわを皮膚において生じさせる。
【0009】
コラーゲン補充療法は、コラーゲンの分解または喪失と関連する状態を処置するために使用することができる。例えば、皮膚のしわは、高度に精製されたコラーゲンを真皮の中に注射することで処置することができる。コラーゲンの注射は同様に、瘢痕組織を軟化するために、および厚い唇を作出するために使用されている。
【0010】
現行のコラーゲン補充療法の中にはコラーゲン注射があり、この場合には欠損組織を置き換えるために精製された動物コラーゲンが使用される。Zyderm(登録商標)およびZyplast(登録商標)は、真皮の中に注射されるウシコラーゲンインプラントである。そこで、それらはヒトコラーゲン骨格に組み入れられ、皮膚の天然コラーゲンを再び満たし、それによって支持構造および皮膚の外形を回復する。この注射療法は、自然な皮膚外観を強めかつ高めて、顔のすじおよび傷を伸ばす。
【0011】
コラーゲンの注射を伴う手順には、危険がないわけではない。例えば、ウシコラーゲン注射は、赤み、腫れ、硬さ、痒みおよび、稀な事例では、膿瘍形成のようなアレルギー反応を引き起こすことがある。さらに悪いことには、医師の中には関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎(DM)、および多発性筋炎(PM)のような結合組織疾患の、これらの障害の前歴がない患者でのコラーゲン注射後の発現を報告する者もいる。
【0012】
同様に、注射過程はそれ自体がある種の難題をもたらす。例えば、コラーゲン(および/またはヒアルロン酸)を注射する実践者は、所望の美容的効果をもたらしうる、針からのおよび真皮中の的確な位置への高粘度コラーゲンの流速制御を強いるのに十分な内向きの力をプランジャーに与えながら、特定の注射部位での針の深さ、方向および位置を制御しなければならない。真皮内の適切な深さでの針先の位置決めも、実践者には困難である。針の先を適切な注射深度に合わせるため、実践者は皮膚の表面(表皮)に対して針を内向きにおよび外向きに動かすことができる。しかしながら、針が真皮内に入り込んだ程度を実践者が容易に判定できる、注射器本体の末端以外の、視覚的な基準点がない。したがって、針先が対象とする用途に対し、あまりに深く、またはあまりに浅く配置されることがある。当然のことながら、コラーゲンを注射する者(実践者)は、指、手および腕の制御が良好で、安定していなければならず、美容的コラーゲン注射の効果的な供給者であるには優れた目と手の連動も持ち合わせなければならない。これらの資質は、個人に必ずしも存在するわけでなく、このことが患者に対するコラーゲン療法の利用性を制限している。
【0013】
コラーゲンは注射に加えて、局所塗布により皮膚に送達することができる。残念ながら、そのような局所のコラーゲン療法は、従来型のコラーゲンが真皮に浸透するように思われないので、決して有効ではないことが分かっている。上述のように、皮膚は多層からなり、その機能およびその化学的構成という点で極めて複雑である。医薬および他の物質の経皮的(皮膚を通じた)な塗布では、さまざまな配合難をもたらす。所望の物質を皮膚内の層に送達する能力は、さらに困難ではないにせよ、等しく困難である。
【0014】
皮膚への、または皮膚内への物質のさまざまな送達手段が、提案されている。
【0015】
米国特許第5,354,564号(特許文献1)は、シリコーン粒子であって、約400ナノメートル(nm)未満の粒径を達成するのに十分な量でその表面に表面改質剤が吸着されている該粒子の水分散液を含むパーソナルケア製品を開示している。
【0016】
米国特許第5,660,839号(特許文献2)は、脂肪性物質を含有する美容的および/または皮膚科学的組成物の中に、これらの脂肪性物質による粘着性の感触および/またはべとべとする感触を顕著に低減するまたは除去するため、変形可能な中空粒子を組み入れることを開示している。
【0017】
米国特許第5,667,800号(特許文献3)は、身体への局所塗布のため、少なくとも1つの脂質および好ましくは同様に少なくとも1つの乳化剤を含む、固体類脂質ナノ粒子の水性懸濁液を開示している。
【0018】
米国特許第5,780,060号(特許文献4)は、架橋された植物ポリフェノールの壁を有するマイクロカプセル、およびそれらを含有する組成物を開示している。このマイクロカプセルは、植物ポリフェノール、特にフラボノイドの界面架橋によって得られる。
【0019】
米国特許第5,851,517号(特許文献5)および同第5,945,095号(特許文献6)は、非水性媒体中の重合体粒子の分散液を含む組成物を開示している。表面安定型の重合体粒子の分散液は、非水性媒体中で、美容的、衛生的または薬学的な組成物中で使用することができる。この分散液は、具体的には、非水性媒体中に安定分散された重合体のナノ粒子の形態でありうる。
【0020】
米国特許第5,759,526号(特許文献7)および同第5,919,487号(特許文献8)は、シリコーン界面活性剤に基づく薄膜相でコーティングされたナノ粒子、およびそれらを含有する組成物を開示している。シリコーン界面活性剤から得られる薄膜コーティングを備えたナノ粒子、および具体的にはナノカプセルを、皮膚、粘膜、爪、頭皮および/または毛髪の処置のため、組成物、具体的には局所組成物で使用することができる。
【0021】
米国特許第5,188,837号(特許文献9)は、微懸濁液系およびその調製の方法を開示している。この微懸濁液は、リン脂質の層が表面に埋め込まれた、固体の、水不溶性微粒子である脂質球体を含有する。脂質球体の芯は、送達される固体物質、またはろう状物質などの不活性な固体媒体に分散された、送達される物質である。
【0022】
米国特許第4,919,841号(特許文献10)は、溶融されたろう状物質に活性材料を分散させる段階; 4分を超えない間に界面活性剤水溶液中で活性材料/ろう状物質の分散物を乳化させる段階; このカプセルを冷却によって急冷する段階; および固化したカプセルを回収する段階により、カプセル封入された活性粒子を調製する方法を開示している。活性材料の例は香料である。
【0023】
これらの方法の各々が、コラーゲンおよび/またはヒアルロン酸の送達に対して特に、不利な点を有する。
【0024】
リポソームは、例えば、多量の水を封入する小胞状の脂質膜構造体である。リポソームの存在は長年にわたって知られている。1900年代初頭、単離されたレシチン(ホスファチジルコリン)、セファリン(ホスファチジルエタノールアミン/ホスファチジルセリン)、フレノシン(ガラクトシルセラミド)、およびケラシン(グルコシルセラミド)を研究していた研究者らは、これらの分子の全てが水中で膨潤して、水により分離された脂質二分子層からなる、水和した多重薄膜層を形成しうることを見出した。同様に、水中に分散されたイオン性脂質および非イオン性脂質の混合物は、脂質分子が並んで位置し、均質な混合相を形成している安定な「エマルジョン」を形成することが分かっている。これらのエマルジョンは、今で言う多重薄膜リポソームの等価物であった。
【0025】
物理的および化学的研究から、両親媒性物質が水の存在下においてある種の好ましい配列を形成することが示されている。ミセル、単分子層および二分子層を含むこれらの配列の形成は、イオン形成性でもまたはそうでなくてもよい、極性頭部基が水と結び付く必要性、および無極性の疎水性尾部が水から排除される必要性によって推進される。正確にどの種類の構造が想定されるかは、両親媒性物質の性質、その濃度、他の両親媒性物質の存在、温度、ならびに水相中の塩および他の溶質の存在に依る。
【0026】
最近まで、リポソーム技術は、リン脂質、主にホスファチジルコリンでできた小胞とほぼ関係しており、これらは引き続き大部分の刊行物および特許の焦点である。しかしながら、リン脂質はある種の薬学的用途に適しているものの、リン脂質リポソーム技術は深刻な問題を抱えている、例えば、リン脂質はインビボにおいて素早く代謝回転し、貯蔵には適していない。同様に、それらは不安定であり、精製または合成するには高価であり、リン脂質リポソームの製造は困難であり、スケールアップするには費用がかかる。
【0027】
リポソームは当技術分野において周知であるが、スキンケア配合物の中でコラーゲンおよび/またはヒアルロン酸を効率的に送達するためのその使用に関する報告はこれまでにない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第5,354,564号
【特許文献2】米国特許第5,660,839号
【特許文献3】米国特許第5,667,800号
【特許文献4】米国特許第5,780,060号
【特許文献5】米国特許第5,851,517号
【特許文献6】米国特許第5,945,095号
【特許文献7】米国特許第5,759,526号
【特許文献8】米国特許第5,919,487号
【特許文献9】米国特許第5,188,837号
【特許文献10】米国特許第4,919,841号
【発明の概要】
【0029】
発明の簡単な概要
本発明は新規かつ有利なスキンケア組成物に関する。好ましい態様において、本発明は、皮膚にコラーゲンタンパク質を送達するための有利な配合物を提供する。特定の態様において、本発明の配合物は顔面皮膚にコラーゲンタンパク質を効率的に送達するために使用される。
【0030】
本発明は、コラーゲンタンパク質が容易にかつ効率的に顔面皮膚の中に送達されて、皮膚の健康および外観を改善することのできる、有利なスキンケア配合物を提供する。本発明によれば、コラーゲンタンパク質は食塩水中のコラーゲンタンパク質と同様な簡単な配合物の状態で投与できる。しかしながら、好ましい態様において、配合物はさらに一つまたは複数の乳化剤および/または浸透増強剤を含む。これらの付加的な剤は、配合物の特徴を改善して、例えば相分離などを防ぐことができる。これらの剤は効率性および堅実性一貫性という点で剤の皮膚の中への移動もまた改善できる。
【0031】
一つの態様において、本発明は、安全でかつ有効な量の一つまたは複数のコラーゲン断片および/またはそれらのバリアントを有するスキンケア組成物を提供し、ここでその配合物は、コラーゲンタンパク質が表皮を通過することを容易にし、したがって皮膚の真皮に送達されるのを容易にする。さらなる態様において、コラーゲンタンパク質はさらに、表皮に送達されうる。したがって、本発明は、コラーゲンタンパク質を皮膚内の適切な位置に効率的に送達することにより、皮膚の状態(皮膚の外観および/または感触を含む)を調節するおよび/または改善する上で有用である。
【0032】
本明細書において特に例示する態様において、本発明は、特定の8.5 Kdのコラーゲン断片を皮膚の中に投与するための配合物を提供する。さらなる態様は、皮膚充填剤として働くことに加えて有用な生物学的活性を提供する、生理活性コラーゲンタンパク質の使用に関する。
【0033】
加えて、本明細書に記載するような特定のコラーゲンタンパク質の使用は、アレルギーまたは自己免疫反応のような望ましくない副作用を回避するのに有利である。
【0034】
本発明は同様に、皮膚の状態を調節するおよび/または改善するためにそのような組成物を使用する方法に関する。本発明の方法は全体として、処置を必要とする患者の皮膚(表皮)に組成物を局所的に塗布する段階を含み、その中で治療的に有効な量のそのような組成物が塗布される。好ましい態様において、組成物は顔面に塗布される。
【0035】
好都合なことには、本発明は皮膚の老化に対抗するための組成物および方法を提供し、その中で皮膚の老化との戦いには、例えば、皮膚の潤い作用、しわ、細かいすじ、および望ましくない皮膚のきめの他の形態の外観を処置することが含まれうる。コラーゲンタンパク質を皮膚の真皮層および/または表皮層の中に与えることで、皮膚の形態、強度、および機能が増強される。
【0036】
ある種の態様において、本発明の組成物は、コラーゲンタンパク質に加えて、皮膚の老化、しわ形成、ならびに/または内因的条件(老化、閉経、アクネなどのような)および外因的条件(環境汚染、風、暑さ、低湿度、強力な(harsh)界面活性剤などのような)に伴う典型的な他の組織学的変化を、遅延する、最小限にする、または除去するのに有用である剤を含有する脂質小胞の分散物を含む。
【0037】
本発明の例示的な態様において、ヒトコラーゲン断片を組み入れた非リン脂質パウシラメラー(paucilamellar)の脂質小胞が、ヒト対象の皮膚にコラーゲンタンパク質を送達するのに使用される。非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞は、このような小胞が安定であり、製造するのに安価であり、またコラーゲンタンパク質を保持するための大きな空洞サイズを特徴とするので、本発明で用いるのに特に有利である。別の態様において、シクロデキストリンが、皮膚の真皮層に活性薬剤を送達するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
配列の詳細な説明
SEQ ID NO:1は、本発明において有用なコラーゲンタンパク質である。
SEQ ID NO:2は、本発明において有用なコラーゲンタンパク質である。
【0039】
詳細な説明
本発明は皮膚の状態を改善するために、皮膚の中に治療的に有効な量のコラーゲンタンパク質を局所投与するための材料および方法に向けられる関する。
【0040】
本発明は、一つまたは複数のコラーゲンタンパク質が容易にかつ効率的に顔面皮膚の中に送達されて、皮膚の健康および外観を改善することのできる、有利なスキンケア配合物を提供する。本発明によれば、コラーゲンタンパク質は食塩水中のコラーゲンを含む配合物の状態で投与できる。好ましい態様において、配合物はさらに一つまたは複数の乳化剤および/または浸透増強剤を含む。これらの付加的な剤は、配合物の特徴を改善して、例えば相分離などを防ぐことができる。これらの剤は効率性および堅実性一貫性という点で剤の皮膚への移動もまた改善できる。
【0041】
好ましい態様において、本発明は、少なくともコラーゲンタンパク質(および、任意で他のスキンケア剤)を含有する脂質小胞の分散物を含む組成物、ならびにこのような組成物を使用する方法を提供し、該脂質小胞は、配合物の安定性を向上させ、かつ/または、小胞内容物の表皮を通した浸透および皮膚真皮層への分散を容易にする。
【0042】
好ましくは、コラーゲンタンパク質は10 Kd未満である。本明細書において特に例示する態様において、本発明にしたがって投与されるコラーゲンタンパク質は、コラーゲンの約8.5 Kdの断片である。この断片は、例えば、以下のアミノ酸配列の一つを有していてもよい。

【0043】
好ましくは、本発明にしたがって使用されるコラーゲンタンパク質は、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2のいずれかと少なくとも85%同一、好ましくは少なくとも90%同一、および、最も好ましくは少なくとも95%同一である部分(少なくとも10アミノ酸、好ましくは少なくとも25アミノ酸、およびより好ましくは少なくとも50アミノ酸、およびさらにより好ましくは75アミノ酸、90アミノ酸、または配列全体を有する)を含む。
【0044】
本発明のさらなる態様において、投与されるコラーゲンタンパク質はα2β1インテグリンに対するリガンドである生理活性三重らせんコラーゲンタンパク質である。このタンパク質の投与は線維芽細胞付着、治癒を促進するために使用でき、ならびに、一部のMMP(これは酵素的に損傷したコラーゲンを除去する)、コラーゲン産生、およびフィブロネクチンをアップレギュレートできる。好都合なことには、このタンパク質は低い濃度であってさえも、生物学的に活性である。
【0045】
皮膚状態の改善は、多くの場合、身体内部および/または外部の要因により誘導されうるかまたは引き起こされうる状態に起因することが望ましい。例としては環境被害、喫煙、放射線被爆(紫外線放射を含む)、加齢による老化、閉経状態(例えば、閉経後の皮膚変化)、ストレス、疾患などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0046】
本発明は、皮膚の視覚的および/または触覚的特徴を、治療的におよび/または予防的に改善するのに有用である。例えば、1つの態様において、すじおよび/またはしわの長さ、深さ、および/またはその他の寸法が低減され、潤いが得られる。
【0047】
「皮膚状態を改善する」とは、皮膚状態を、予防的に阻止することまたは治療的に処置することを含み、以下の利益: 皮膚肥厚、皮膚弾力性の喪失の阻止、およびすじまたはしわの減少の1つまたは複数を伴うことができる。
【0048】
以下は本発明に関するさらなる定義である。他に規定のない限り、本明細書において使用される全ての専門用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0049】
本明細書において用いられる「表皮」または「表皮(の)」という用語は、皮膚の最外層を指す。
【0050】
本明細書において用いられる「局所塗布」という用語は、本発明の組成物を表皮組織の表面に塗布または散布することを意図する。
【0051】
本明細書において用いられる「皮膚科学的に許容される」という用語は、そのように記述されている組成物またはその成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などなしに哺乳類の表皮組織と接触させて用いるのに適していることを意味する。
【0052】
本明細書において用いられる「治療的に有効な量」という用語は、良い利益、好ましくは、良い皮膚外観および/または皮膚感触を誘導するのに十分な化合物(コラーゲンタンパク質のような)または組成物の量を指す。本発明によれば、治療的に有効な量は、皮膚を調節するおよび/または改善する、単独かまたは他の剤との併用でのコラーゲンの量であるが、その量は、当業者の正しい判断の範囲内で深刻な副作用を回避するほど、すなわち、妥当なリスク対効果比を供与するほど十分に少ない。
【0053】
本明細書において用いられる「たるみ」という用語は、皮膚の構造および/もしくは機能の喪失、損傷、変性、ならびに/または異常の結果として生じる皮膚の弛緩、緩みなどの皮膚の状態を意味する。
【0054】
本明細書において用いられる「平滑化」および「柔軟化」という用語は、表皮組織の表面を、その感触が改善されるように変えることを指す。
【0055】
「皮膚老化の兆候」は、外部からの全ての視覚的におよび触覚的に認知できる徴候ならびに皮膚老化によるその他任意の微視的または巨視的な影響を含むが、これらに限定されることはない。このような兆候は、内因的要因または外因的要因、例えば、加齢による老化および/または環境被害により誘導されうるかまたは引き起こされうる。これらの兆候は、以下に限定されることはないが、しわおよび粗くて深いしわ、皮膚のすじ、ひび割れ、打撲傷、大きな孔(例えば、汗腺管、脂腺もしくは毛包のような付属器構造に関連する)、または凹凸もしくはざらつきのような組織的不連続の発生、皮膚弾性の喪失、たるみ(目尻および顎の腫れを含む)、皮膚の堅さの喪失、皮膚の張りの喪失、皮膚の変形反動の喪失、変色(目の下のくまを含む)、できもの、血色の悪さ、しみおよびそばかすのような色素沈着過剰皮膚領域、角化症、異常分化、過角化症、弾性線維症、コラーゲン分解、ならびに角質層、真皮、表皮、皮膚血管系(例えば、毛細血管拡張症またはクモ状血管腫)、および下層組織、特に皮膚近位の組織における他の組織学的変化を含む過程から生じうる。
【0056】
本明細書において用いられる「剪断混合」とは、脂質を水和しかつ脂質小胞を形成するのに十分な混合をもたらす乱流または剪断条件下での、水相との親油相の混合を意味する。
【0057】
用語「分散する」および「分散」とは、溶解、または、流動相をもたらすために懸濁液もしくはコロイドを形成することを意味する。
【0058】
本明細書において用いられる「核酸」または「核酸分子」は、RNA (リボ核酸)およびDNA (デオキシリボ核酸)のような、2つまたはそれ以上のヌクレオチドの鎖を意味する。「組換え」核酸分子は、配列の2つの別の分離セグメントの人為的組合せにより、例えば、化学的合成によるか、または遺伝子工学技術による単離された核酸セグメントの操作により作出されるものである。
【0059】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、長さまたは翻訳後修飾、例えば、グリコシル化またはリン酸化にかかわらず、アミノ酸の任意のペプチド連結鎖を意味するよう同義的に使用される。「精製(された)」ポリペプチドは、該ポリペプチドが天然の細胞または生物中の他のポリペプチドから実質的に分離されているかまたは単離されている(例えば、90、95、98、99、100%夾雑物のない)ものである。
【0060】
核酸またはポリペプチドを指す場合、「天然の」という用語は、天然に存在する核酸またはポリペプチドを指す。
【0061】
コラーゲンタンパク質の皮層分散を可能にする本発明の組成物は、皮膚外観および/または皮膚感触の改善を含めて、皮膚の改善に有用である。例えば、本発明の組成物は、皮膚への該組成物の塗布後に皮膚外観の視覚的改善をもたらすことで、皮膚状態の外観を改善するのに有用である。
【0062】
好都合なことには、本発明の組成物は、安定性、長期保存、顕著な皮膚刺激がないこと、および良好な美的特徴(good aesthetics)を含めて、さらなる望ましい特性を持ちうる。ある種の態様において、そのようなさらなる利益を達成するため、本発明の組成物は、コラーゲンタンパク質に加えて、組成物の安定性を促進する、皮膚刺激を低減する、および/または組成物の美感を増強する薬剤をさらに含む。
【0063】
良好な美的特徴の例としては、(i) 軽くてべとべとしない、(ii) 皮膚上で絹のように滑らかな感触の有る、(iii) 容易に拡散する、および/または(iv) 素早く吸収される、豊潤なクリームおよびローションのような、組成物が挙げられる。良好な美的特徴の他の例としては、消費者が許容可能な外観を有し(すなわち、不快な臭気または変色がない)、かつ良好な皮膚感触をもたらす組成物が挙げられる。
【0064】
本明細書において用いられる「含む」の言及は、「からなる」および「本質的にからなる」という別のシナリオをさらに意図する。また、本発明者らは特に本明細書に示す様々な成分の部分集合のみを有する組成物も意図する。一つの態様において、組成物は皮膚美白剤を含まない。
【0065】
本明細書において記述されるものに類似のまたは等価な方法および材料を本発明の実践または試験で使用できるが、適当な方法および材料を以下に記述する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書によって統制されると考えられる。さらに、以下に論じられる特定の態様は一例にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0066】
コラーゲン
本発明の組成物は、1つもしくは複数の精製された、合成の、もしくは組換えのコラーゲンタンパク質を含み得る。
【0067】
コラーゲン材料に対する免疫反応を阻止するため、処置される対象がヒトである場合には、本発明の組成物および方法での、合成または組換えのヒトコラーゲンの使用が好ましい。
【0068】
コラーゲン誘導体はいくつかの点で天然コラーゲンと異なってもよい。コラーゲン誘導体は、天然コラーゲンとは違った形で非グリコシル化またはグリコシル化されてもよい。望ましいグリコシル化パターンは、直接的な化学修飾ならびに酵素により触媒されるグリコシル化および脱グリコシル化反応を含めて、さまざまな方法によって作出することができる。望ましいグリコシル化パターンは、コラーゲンに見られる天然のグリコシル化パターンを作出するのに必要な酵素を阻害するかまたは欠失させることによって作出することもできる。
【0069】
コラーゲン誘導体は、天然コラーゲンでの対応するアミノ酸残基位置と比べて、1つまたは複数のアミノ酸残基の相違を含んでもよい。そのようなアミノ酸残基置換を含むコラーゲンバリアントは、遺伝子操作技術を含むさまざまな方法により、およびインビトロでのペプチド合成により産生することができる。さらなるコラーゲンバリアントは、リジンヒドロキシラーゼ、および/またはプロリンヒドロキシラーゼの発現の変化により、所与の分子中に存在するヒドロキシリジンおよび/またはヒドロキシプロリンの量を変化させることで産生することができ、その場合に該ヒドロキシラーゼ遺伝子(組換えまたはそうでない)は組換えコラーゲン、またはその誘導体の発現用の宿主細胞中で同じく発現される。
【0070】
組換えDNA技術によりI〜III型コラーゲンタンパク質を産生する方法に関する記述は、とりわけ、米国特許第5,405,757号; 同第5,593,859号; 同第6,617,431号; 同第6,428,978号; PCT公開特許出願WO 93/07889およびWO94/16570、ならびに関連した特許および出願の中で見出すことができる。
【0071】
本発明における使用のためのコラーゲンは、ヒト繊維芽細胞において発現し、該細胞から精製される組換えコラーゲンであり得る。この方法においてコラーゲンを培養するのに使用される線維芽細胞は、公知の病原体がないかスクリーニングされ、得られるコラーゲン材料は夾雑物がないか試験される。コラーゲンが細胞から単離されたら、安全性を高めるため、ウイルス不活性化に供される。ヒト線維芽細胞において組換え遺伝子を発現する方法は、当技術分野において周知である。
【0072】
本発明に従って使用されうる2種のさらなるコラーゲン材料は、FG-5017およびFG-5016 (FibroGen, South San Francisco, CA)である。FG-5017は、安全性および有効性のため、注入可能なゲルとして配合された組換えヒトIII型コラーゲンで作られている。FG-5016は、さまざまな医薬医療機器の用途における動物由来のコラーゲンに取って代わるよう開発された組換えヒトIII型コラーゲン(rhCIII)である。FG-5016は高度に精製されかつ十分に特徴付けられた生体材料であり、これは動物成分を含まない酵母発現系において組換え手順により産生される。この手順は、コラーゲンをコードする遺伝子および熱的に安定な、三重らせんコラーゲンの形成を可能にするプロリル4-ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子の発現を伴う。
【0073】
酵母細胞において組換え遺伝子を発現する方法は、当技術分野において周知であり、Romanos et al., Yeast 8:423-488, 1992; Cohen et al., Nature 366: 698-701, 1993; およびA. Wiseman, Genetically Engineered Proteins and Enzymes From Yeast: Production Control, 1991, Ellis Norwood Press, New Yorkを含む多くの参考文献に記述されている。酵母細胞において三重らせんコラーゲンを産生する方法は、米国特許第6,451,557号に記述されている。酵母細胞において産生された三重らせんタンパク質産物は、標準的なクロマトグラフィーおよび沈殿技術を含む当技術分野において周知の技術により細胞から精製することができる(例えば、Miller and Rhodes, Meth Enzymol, 82:33-64, 1982; およびR.L. Trelstad, Native Collagen Fractionation, In: Immunochemistry of the Extracellular Matrix, vol. 1, H. Furthmayr, ed., CRC Press, Boca Raton, FL, 1982, p. 31-41を参照のこと)。
【0074】
コラーゲン供給源にかかわらず、本発明で用いるのに好ましいコラーゲンおよびコラーゲン誘導体は、本発明の脂質小胞に収まるようサイズ調整される、例えば、約800 nm未満のものである。コラーゲン原線維はサイズが20〜150 nmであるので、線維(これは1000〜50,000 nmである)ではなく原線維が好ましい。コラーゲンを原線維形態で維持するため、原線維を含有する溶液のpHおよび/またはイオン強度を適切に操作することができる。プロテアーゼを用いた酵素的分解を含めて、コラーゲンサイズを低減するいくつかの方法が存在している。コラーゲンは機械的に分解することもできる。例えば、コラーゲンを乾燥後に機械的に処理して、サイズが800 nm未満の細粒を作出することができる。さらに、コラーゲン含有溶液の徹底的な加水分解を使って、線維形成を阻止してもよい。
【0075】
ヒアルロン酸
ヒアルロン酸(HA)もまた、本発明の配合物に含有され得る。HAは自然界全体に存在しており、グルクロン酸およびN-アセチルグルコサミンの繰り返された二糖類単位の組合せである。それは多イオン性(polyionic)であり、軸方向の疎水性部分および中央の親水性部分を有する。ヒアルロン酸はヒアルロニダーゼに極めて感受性であり、それ故に、体内で短い半減期を有する。ヒアルロン酸を長期にわたる十分な持続可能性を有するしわ充填品とするために、それを架橋することができる。
【0076】
ホルムアルデヒド、エポキシド、ポリアジリジル化合物、ジビニルスルホンなどを含め、多数の物質を用いてヒアルロン酸を架橋することができる。1つの架橋剤はジビニルスルホンである。この物質はアルカリ性水溶液中でヒアルロン酸と容易に反応し、それによって架橋HAゲルをもたらす。これらのゲルは水中で膨潤する。膨潤比はゲルの架橋度に依存する。架橋度はHAの分子量、反応混合物中のその濃度、アルカリ濃度および重合体/DVS比を含むさまざまな要因を変化させることで、制御することができる。これらのゲルの膨潤比は20から8000まで、および反応パラメータに応じて、それ以上とすることができる。
【0077】
さらにより好ましい架橋剤は1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)である。
【0078】
架橋HAゲルの膨潤比は、同じ反応条件の下で得られる他の多糖類の架橋ゲルの膨潤比よりも実質的に大きい。これは恐らく、HAに特有の性質(他の多糖類と比較して)およびその水溶液によって説明することができる。水中で、大きなHA分子は非常に柔軟な、長いランダムコイルを形成し、溶液中で多くの量を占める。
【0079】
高度に膨潤した架橋ゲルを与えるHAに特有の性質を用いて、他の親水性重合体とHAの混合物とでできた架橋ゲルの特性の改変をもたらすことができる。これらの重合体はヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、グリコサミノグリカンのような、合成および天然の他の多糖類、コラーゲン、エラスチン、アルブミン、グロブリンなどのような、さまざまな種類のタンパク質および糖タンパク質、硫酸化タンパク質、ポリビニルアルコールおよびその共重合体、ポリ-(ヒドロキシエチル)メタクリラートの共重合体などのような、合成水溶性重合体を含む。水溶液またはアルカリ性水溶液に可溶で、かつDVS、すなわち、ヒドロキシル、アミノまたはスルフヒドリル基と反応できる基を含んだ任意の重合体を用いて、高度に膨潤したHA架橋混合ゲルを得ることができる。
【0080】
架橋ヒアルロン酸または混合ヒアルロン酸および他の重合体のゲルを得る好都合な別な方法は、乾燥重合体調製物を、すなわち、薄膜の形態で、架橋剤と共に処理すること、および所望の媒体中での該生成物のその後の膨潤を含む。
【0081】
1つの態様において、500,000 Da未満の直線状HAを使用することができる。
【0082】
本明細書において記述される場合、HAの投与は皮膚の状態を有利に改善するために使用されうる。同様に、その分子構造のため、HAはさらなる活性薬剤(薬物)を封入かつ送達するために使用されうる。薬物をHAゲルと組み合わせるいくつかの方法があり、したがって、得られうるいくつかの種類の生成物がある。これらの方法の1つは、HAゲルを薬物の溶液に入れる際に薬物をそのゲルの中に拡散させることを含む。この方法により得られる生成物は、薬物物質が均一に分散されたゲルである。
【0083】
同じ種類の生成物は、ヒアルロン酸ゲルを脱水し、これを薬物溶液中で再膨潤することにより得ることができる。ゲルを脱水するため、水混和性有機溶媒を使用することができ、またあるいは、乾燥によってゲルから水を除去することができる。好ましい溶媒はエタノールおよびイソプロパノール、ならびにアセトンのようなケトンであるが、その他の溶媒を使用することもできる。
【0084】
この種類の生成物を得るために、さらに別の方法を使用することができる。この方法は、比較的高濃度のヒアルロン酸溶液中で予め行われる架橋反応から得られる高濃度のヒアルロン酸ゲルを、薬物物質の溶液中で膨潤させることを含む。
【0085】
これらの3つの方法は全て、本質的に同一である生成物をもたらすが、任意の特定の生成物に向けた他の方法のいずれかと比べて、これらの方法の各々がある種の利点を有するので、方法の選択は薬物の性質、系内での薬物の望ましい濃度、送達速度などのようなパラメータを考慮した上で行われるべきである。
【0086】
本発明による別の種類の薬物送達系は、薬物がヒアルロン酸の高分子および/またはゲルを生ずる他の重合体に共有結合されたものである。これらの系は上記のものよりも実質的に遅い送達速度によって特徴付けられる。これらの系からの薬物の送達は、ゲルが生体内で分解される時に起こる。分解過程は通常、拡散よりも遅い。分解過程の速度は、ゲル中の架橋の密度を調整することを含む、いくつかの手段により、またはヒアルロン酸よりも容易に体内で分解されうる重合体、例えば、タンパク質とヒアルロン酸を共架橋結合させることにより、制御することができる。混合ゲル中のそのような重合体成分の濃度を変えることで、その分解速度および、したがって、薬物送達速度を好都合に制御することができる。
【0087】
この種類の生成物に向けた薬物送達の別の可能性は、生理的環境において制御可能な加水分解速度を有するゲルを生ずる重合体分子との薬物の付着のためのそのような化学結合の使用によって生じる。
【0088】
この種類の生成物を得るため、架橋剤と反応できる薬物物質を使用することができる。この生成物を得るために、さらに別の方法を使用することができる。この方法は、薬物物質を多数の化学反応によって付着できる、ヒアルロン酸と共架橋結合されている重合体の反応基またはヒアルロン酸の反応性ヒドロキシル基を用いて、架橋ゲルをその形成後に化学的に修飾することを含む。あるいは、さらなる反応基を、ヒアルロン酸の高分子または共架橋結合された重合体に影響を及ぼす架橋ゲルの化学的処理によって導入してもよく、薬物をこれらの新たに形成された反応基に共有結合してもよい。
【0089】
活性薬剤は、美容的な、皮膚科学的な、および薬学的な活性薬剤でありうる。適当な活性薬剤は、セラミド; ビタミン; 酸化防止剤; フリーラジカル消去剤; 保湿剤; 抗脂漏剤(anti-seborrhoeic agents); 抗UV剤; 角質溶解剤; 抗炎症剤; 色素調節剤(melanoregulators); 脂質調節剤(liporegulators); 老化防止剤; 抗菌剤; 脱毛に対抗するための薬剤; 血管保護剤; 抗真菌剤; 皮膚コンディショニング剤; 免疫調節剤; 栄養素および精油; レチノイド; 麻酔剤; 保存剤; 消毒剤; 皮膚軟化剤; 滑沢剤; 湿潤剤; 顔料; 染料; αヒドロキシ酸、およびβヒドロキシ酸のような、ヒドロキシ酸; エラスチン; 加水分解物; 上皮増殖因子; 大豆サポニン; ならびにムコ多糖を含むが、これらに限定されることはない。
【0090】
いくつかの形態のヒアルロン酸は、この酸を他の天然酸または化合物と架橋結合させて、皮膚状態を改善するゲルを形成することにより開発されている。
【0091】
現在では、いくつかの市販の調製物が利用可能である。これらには、ケイトウから抽出され、かつGenzyme Companyから販売されているHylaform(登録商標)、およびストレプトコッカス・エキ(Streptococcus equi)種を用いた細菌発酵過程により産生され、かつBDDEと架橋されているRestylane(登録商標)が含まれる。これらの2種の組成物は、ヒアルロン酸の粒子が大なり小なり架橋され、かついっそう流動性のまたは場合により非架橋性の調製物に懸濁された、二相性の注射用物質であるという共通の特徴を有する。
【0092】
ヒアルロン酸の単相性ゲル調製物が、Juvederm(登録商標)、Hydra FilleおよびEsthelis(登録商標)のような他の生成物に含まれている。Restylane(登録商標)と同様に、これらの各々がBDDEを用いて生成されているが、単相性ゲルをもたらすその過程は異なる。
【0093】
1つの態様において、架橋ヒアルロン酸は単相性組成物として生成される。天然ヒアルロン酸のとげ状突起(spine)を線状にした後に、BDDEの添加によって架橋結合を開始する。動的な架橋結合により、巨視的に均一な外観を有し、かつ微視的に不均質な外観を有する生成物が得られるようになる。この技術により、いわゆる、粘着性高密度マトリックス(Cohesive Polydensified Matrix)が得られるようになる。
【0094】
このゲルは、2分間水1 mlの存在下に置かれると、粘着性のままとなり、これは「微粒子」成分がすぐに現れる二相性生成物には当てはまらない。この生成物は商品名Esthe'lis(登録商標)で利用可能である。
【0095】
Esthe'lis(登録商標)は、粘-弾性特性によって、組織内でうまく形を変える物質とされ、非常に穏やかなマッサージで正しく位置付けられる。これは「注入コード(implanted cord)」の感覚を残さず、持ち上げ効果を有するということさえもできる。
【0096】
本発明のある態様において、ヒアルロン酸を患者の皮膚に投与するため、ヒアルロン酸は脂質小胞の中に組み入れられる。好都合なことには、この生成物は、本発明により使用される場合、例えば目の処置の間に目尻のしわを消滅させると共に、処置領域での潤い作用を有しうる。鼻唇溝は頬の処置領域上に存在する。
【0097】
コラーゲンを含有する脂質小胞
ある態様において、本発明は、ヒトコラーゲン(および/もしくはその断片)またはコラーゲン誘導体を組み入れた脂質小胞を含む組成物を提供する。活性薬剤を含有する小胞は、活性薬剤を対象に投与するのに有用である。乳化剤として作用するために、および/またはコラーゲンおよび/またはヒアルロン酸を封入するために、ならびにヒト対象の皮膚に投与するために適した任意の脂質小胞を使用することができる。
【0098】
本発明の小胞は、空洞周囲の1つまたは複数の脂質二分子膜を有する小胞である。本発明で用いられる脂質小胞は、典型的には、サイズが約50〜約950 nm (例えば、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、950 nm)の範囲にある。脂質小胞を作出および使用する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,917,951号および同第5,013,497号; Walde P. and Ichikawa S., Biomol Eng., 18:143-177, 2001; Hunter D.G. and Frisken B.J., Biophys J., 74:2996-3002, 1998; およびCevc G., Adv Drug Deliv Rev, 56:675-711, 2004に記述されている。
【0099】
脂質小胞の中に封入される、またはこれと結び付いたコラーゲンは、任意の適当な形態、例えば、I型コラーゲン、III型コラーゲンの調製物、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンの混合物、コラーゲン誘導体、またはそれらの組合せとすることができる。
【0100】
ヒアルロン酸は上記のようであってもよい。小胞は、コラーゲンだけを含んでもよく、またはコラーゲンとHAまたは他の活性薬剤との組み合わせでもよい。したがって、本発明の組成物は、ただ1つの活性薬剤、または複数の活性薬剤を含有する小胞を含んでもよい。
【0101】
本発明の脂質小胞は、非リン脂質界面活性剤を含むことができる。それらは同様に、電荷生成剤(charge-producing agent)および標的化分子を含むことができる。すなわち、非リン脂質「膜模倣性の」両親媒性物質でできた小胞は、本発明において有用である。疎水性尾部に付着された親水性頭部基を有する分子が存在しており、その中には長鎖脂肪酸、長鎖アルコールおよび誘導体、長鎖アミノおよびグリセロ脂質がある。この二分子層では、脂肪酸が膜の内部に向いており、極性頭部基が外部に向いている。膜の片面の極性基は小胞の内部に向いており、もう片面のものは外部環境に向いている。小胞がその製造の間に生ずる際に、水に添加されている任意の水溶性分子は球体内部の水性空間の中に組み入れられるのに対し、小胞形成の間に添加される任意の脂溶性分子は小胞の芯に組み入れられる。
【0102】
多くの生体適合性の、単一の尾部を有する両親媒性物質から形成されうるパウシラメラー小胞は、本発明で用いるのに好ましい。このようなパウシラメラー脂質小胞には、関心対象の化学的実体(すなわち、コラーゲンおよび/またはHA)が封入されている大きな不定形の芯を取り囲んだ1つまたはいくつかの脂質二分子膜を有する非リン脂質小胞が含まれる。
【0103】
非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞は、商品名Novasome(登録商標) (IGI Inc., Buena, NJ)で販売されている。いくつかのNovasome(登録商標)配合物が存在している(例えば、Novasome(登録商標) A、Novasome(登録商標) D)、Novasome(登録商標)デイクリーム(Day Cream))。
【0104】
Novasome(登録商標)小胞は配合を補助するため、作用部位への送達を増大するため、および配合物中の化学成分を安定化するため、化学成分を封入するのに有用である。これらの脂質小胞は、通常、各特定の目的のために個別に選択される多種多様な膜構成成分に応じて、サイズが約200〜700ナノメートルである。それらのサイズ分布は均一であり、封入効率は脂質カーゴの場合ほぼ100%、および水性材料の場合85%でありうる。微粉化された不溶性の粒子(例えば、不溶性の医薬)を封入することもできる。
【0105】
Novasome(登録商標)小胞は本質的に安定であり、2〜13に及ぶpHレベルならびに液体窒素ほども低くから水の沸点を超えるまでの温度範囲で安定であるように調整することができる。それらは、アルコール、エーテル、エステル、ガソリン、ディーゼルおよびその他の燃料を含む溶媒に安定でありうる。それらは、揮発性および脆性のエーテル、エステル、アルデヒドなどを含有する香料および風味を封入することができる。これらの小胞は熱、光、pH変化、酵素分解、乾燥性の膜透過拡散(drying transmembrane diffusion)などを含め、さまざまな物理的および化学的な環境の下でそのカーゴを放出することができる。
【0106】
Novasome(登録商標)配合物を作出および投与するプロトコルは、例えば、米国特許第4,855,090号; 同第4,911,928号; 同第5,474,848号; 同第5,628,936号; 同第6,387,373号; Holick et al., British Journal of Dermatology 149: 1365-2133, 2003; Gupta et al., Vaccine 14:219-225, 1996; およびWallach DFH and Philippot J., New Type of Lipid Vesicle: Novasome(商標) In: Liposome Technology, 2nd ed., Gregorriadis G., CRC Press, Boca Raton, FL, 1982, pp. 141-151; Niemiec et al., Pharmaceutical Research 12:1184-1188, 1995; およびAlfieri DR, Cosmetic Dermatology 10:42-52, 1997に記述されている。
【0107】
1つの態様において、リポソームは「デイクリーム」に使用されるものである。
【0108】
本発明のある種の態様において、脂質小胞(例えば、非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞)は、親水性または両親媒性のいずれかの、標的化分子を含んでもよく、これを用いて、特定の生体位置での小胞内部からのHA、コラーゲンまたはコラーゲン誘導体の放出を可能とするように小胞を特定の標的に向けることができる。親水性の標的化分子が使用される場合、それらは界面活性剤のポリオキシエチレン部分のOH残基に直接的にもしくはスペーサーを介してカップリングされてもよく、またはそれらは当技術分野における技術を用いて、パルミチン酸、長鎖アミン、もしくはホスファチジルエタノールアミンのような分子にカップリングされてもよい。スペーサーが使用される場合、標的化分子は二分子膜の親水性芯の中に、これらの化合物のアシル鎖を介して互いに組み合わされてもよい。好ましい親水性の標的化分子は、モノクローナル抗体、その他の免疫グロブリン、レクチン、およびペプチドホルモンを含む。
【0109】
親水性の標的化分子に加えて、両親媒性の標的化分子を使用することも可能である。両親媒性の標的化分子は、通常、界面活性剤分子に化学的にカップリングされるのではなく、むしろ脂質小胞の二分子層薄膜を構成する分子の親油性または疎水性部分と相互作用する。好ましい両親媒性の標的化分子は、中性糖脂質、ガラクトセレブロシド(例えば、肝ガラクトシル受容体の場合)、またはガングリオシドのような荷電糖脂質である。
【0110】
いくつかの態様において、電荷生成材料(charge-producing material)、ならびにコレステロールもしくはヒドロコルチゾンのようなステロイドまたはそれらの類似体および誘導体が、脂質小胞(例えば、パウシラメラーの脂質小胞)の形成に使用される。好ましい電荷生成材料は、リン酸ジセチル、硫酸セチル、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、オレイン酸、パルミチン酸、またはそれらの混合物のような負電荷生成(negative charge-producing)材料を含む。正味の正電荷を小胞に与えるため、長鎖アミン、例えば、ステアリルアミンもしくはオレイルアミン、長鎖ピリジニウム化合物、例えば、塩化セチルピリジニウム、第四級アンモニウム化合物、またはこれらの混合物を使用することができる。正電荷生成(positive charge- producing)材料の別の例は、強力な殺菌剤の臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムである。
【0111】
脂質小胞の調製
本発明により使用される脂質小胞は、当技術分野において公知の多種多様な脂質小胞のいずれかでありえ、多数の生成方法のいずれかによって作出することができる。脂質小胞を形成するための材料および手順は、当業者に周知である。一般に、脂質または親油性物質を有機溶媒に溶解する。回転蒸発による真空下のような、溶媒が除去される時に、脂質残留物が容器の壁に薄層を形成する。通常、電解質または親水性の生物剤材料を含有する水溶液を、その後、薄層に添加する。大きな多重膜小胞が撹拌によって生成される。もっと小さな多重膜小胞が望ましい場合、より大きな小胞を超音波処理、その後の、段階的に減少する孔隙径を有するフィルタを通した濾過に供するか、または他の形態の機械的剪断により縮小する。脂質小胞は単層小胞の形態をとることもでき、これは多重膜小胞のさらに徹底的な超音波処理により調製され、水溶液を取り囲んだ単一球形の脂質二分子層からなる。上述した全ての脂質小胞およびその調製方法の包括的な総説は「Liposome Technology」, G. Gregoriadis (編), CRC Press Inc., Boca Raton, Fla., Vol. I, II & III (1984)に記述されている。脂質小胞を調製する方法の場合、同様に米国特許第4,485,054号、同第4,761,288号、同第5,013,497号、同第5,653,996号、および同第6,855,296号を参照されたい。
【0112】
非リン脂質界面活性剤材料で作られ、かつ水性のコラーゲンおよび/またはHA材料を含有した非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞を調製するため、当技術分野において公知の任意の適当な方法を使用することができる。非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞を調製する方法は、通常、界面活性剤材料を含むいくつかの親油性成分を組み合わせることにより親油性相を最初に形成する段階、その後、この混合物を加熱および混和する段階を含む。適当な界面活性剤材料の例としては、ポリオキシエチレン(2)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、モノステアリン酸グリセリル、およびポリオキシエチレン(9)ステアリン酸グリセリルが挙げられるが、これらに限定されることはない。得られた親油性相を次に、剪断混合条件下で、水性緩衝液および水溶性コラーゲン配合物を有する水相と混和して、パウシラメラーの脂質小胞を形成する。この方法では、親油性相を流動性とするために親油性相の温度を上昇させ、その後、両相が脂質であるような温度で親油性相と水相との間の剪断混合を行う。多くの場合、両相に対し同じ温度を使用することが望ましいので、これは必ずしも必要ではない。当業者に公知の他の任意の方法を使用することもできる。本発明のパウシラメラーの脂質小胞を作出するのに好ましい方法は、米国特許第4,911,928号に記述されている。
【0113】
パウシラメラーの脂質小胞の中に油性コラーゲンまたはコラーゲン含有配合物を封入するため、油性相を形成する油またはろう状物質の中にコラーゲンまたはコラーゲン含有配合物を分散させる。油またはろう状物質は、油、ろう状物質、天然かつ合成のトリグリセリド、アシルエステル、および石油派生物、ならびにそれらの類似体および誘導体からなる群より選択される、水に非混和性の油性溶液である。油分散性の材料を含有する油性相を脂質相と混合し、合わせた油-脂質相を剪断混合条件下で水相と混和する。封入過程に有用な界面活性剤は、水性芯を有するパウシラメラーの脂質小胞を作出するのに使われるものと同じである。
【0114】
パウシラメラーの脂質小胞は、剪断混合のため十分に高い剪断を備える種々の装置により作出することができる。MicroFluidics Corp. (Newton, MA)により製造されているような、「French」型のプレス機Microfluidizer(登録商標)、または十分に高い剪断力および加熱された、半粘性の脂質を処理する能力を備えた他の装置を含め、多くのそのような装置が市場で入手可能である。非常に高い剪断装置が使用される場合、粉状脂質を加圧下、その通常の融点より低い温度で微乳化しても、本発明のコラーゲン含有パウシラメラーの脂質小胞を形成したままとすることが可能でありうる。
【0115】
本発明のパウシラメラーの脂質小胞を作出するのに特に有用な装置は、Micro Vesicular Systems, Inc., (Vineland, NJ)によって開発されており、米国特許第4,895,452号にさらに記述されている。手短に言えば、この装置は、少なくとも1つの接線方向に位置している入口オリフィスを備えた、実質的に円筒形の混合チャンバーを有する。脂質芯のパウシラメラーの脂質小胞が形成される場合、油相と混合された、親油性相の貯留層に、1つまたは複数のオリフィスがつながり、その他のオリフィスの少なくとも1つが水相の貯留層に取り付けられている。これらの異なる相はポンプ、例えば、容積移送式ポンプを通して円筒形のチャンバーの中に追い込まれ、チャンバー内で乱流を生じるように交差する。パウシラメラーの脂質小胞が迅速に、例えば、1秒未満で生じ、軸方向に位置している放出オリフィスを通してチャンバーから取り出される。4つの接線方向に位置している入口オリフィスが存在し、脂質相および水相が容積移送式ポンプを通して、貯留層から交互のオリフィスに引き込まれることが好ましい。接線方向のオリフィスを経て流動流は、各入口または注入オリフィスから放出オリフィスに、らせん流路中で導かれる。この流路は、液体流の交差によって混合領域を作出するよう入口または注入オリフィスの方向または配置により制御される。ポンプ速度、ならびにオリフィスおよびフィードラインの直径は、脂質小胞の形成に適した剪断混合を達成するように選択される。ほとんどの環境において、乱流は十分な混合を与えるように選択される。
【0116】
パウシラメラーの脂質小胞を形成するためにどんな装置が使用されたとしても、適切な剪断混合が達成される場合、それらの小胞は、脂質二分子層の間に水層が散りばめられた複数の脂質二分子層で取り囲まれた大きな、構造化されていない、不定形の中心を伴う構造を有する。約4つの脂質二分子層が標準であるが、2〜8つのものが可能である。不定形の中心を水性材料、例えば、緩衝液および封入される任意の水性材料で完全に満たしてもよく、または油性材料で部分的にもしくは完全に満たし、脂質中心のパウシラメラーの脂質小胞を形成してもよい。水性中心が使用される場合、パウシラメラーの脂質小胞は、通常、直径が約0.5〜2 μに及ぶはずであり、その一方で油性中心が使用される場合、そのサイズは、使用される油の量に応じて、約15〜20 μまで増大しうる。
【0117】
担体としてのシクロデキストリンの使用
さらに、シクロデキストリンは皮膚の真皮へのコラーゲンおよび/またはHA担体系の別の選択肢である。シクロデキストリンは、1,4グリコシド結合により連結された6、7、または8 D-グルコピラノース残基の複合糖質である。3つの形態がD-グルコピラノース残基の数によって決まり、α形態は6残基を有し、β形態は7残基を有し、およびγ形態は8残基を有する。α構造は、内部の疎水性空洞および親水性の外面を有する環状環を形成する。各シクロデキストリンは、化合物を疎水性空洞に適合させ、包接複合体を形成させることによりゲスト化合物と結び付く。このように、望ましい量の材料を標的位置に送達する送達系としてシクロデキストリンを使用することができる。
【0118】
1つの態様において、ヒドロキシプロピルβシクロデキストリンを使用することができる。シクロデキストリンは、包接複合体の形成を通じて結び付いたゲスト化合物の物理的、化学的、および生物学的な特性を変化させる能力を有するので、それらが使用される。この複合体は、ゲスト化合物の溶解性、安定性、および生体利用性を増強し、その結果、制御送達系において材料を分離および使用することができる。α-シクロデキストリンとのコラーゲンの包接複合体の形成により、真皮を標的とした送達系が可能とされる。
【0119】
α-シクロデキストリンの単離および精製のための主要な方法では、その複合体形成能を巧みに利用する。反応の完了時に、1-デカノールを反応混合物に添加して、不溶性の1:1のα-シクロデキストリン:1-デカノール包接複合体を形成させる。この複合体を水と連続的に混合し、遠心分離により反応混合物から分離する。回収された複合体を水に再懸濁し、加熱により溶解する。その後の冷却によって、複合体の再沈殿を引き起こす。この沈殿物を遠心分離により回収し、1-デカノールを蒸気蒸留によって除去する。冷却により、α-シクロデキストリンを溶液から結晶化する。この結晶を濾過により除去し、乾燥させ、含水率11%未満の白色の結晶性粉末を得る。乾燥ベースでの純度は少なくとも98%である。
【0120】
皮膚科学的に許容される担体
本発明の局所組成物は、小胞に含有されるコラーゲンおよび/またはHAに加えて、皮膚科学的に許容される担体をさらに含むことができる。担体の安全でかつ有効な量は、通常、組成物の約50%〜約99.99%、好ましくは約80%〜約99.9%、より好ましくは約90%〜約98%、およびさらにより好ましくは約90%〜約95%である。
【0121】
担体は多種多様な形態であってもよい。例えば、水中油型、油中水型、水中油中水型、およびシリコーン中水中油型エマルジョンを含むが、これらに限定されない、エマルジョン担体が本明細書において有用である。
【0122】
本発明によるエマルジョンには、上記の溶液および脂質または油が含有されうる。脂質および油は、動物、植物、または石油から得てもよく、天然または合成(すなわち、人造)であってもよい。好ましいエマルジョンは同様に、グリセリンのような、保湿剤を含有する。エマルジョンは担体の重量に基づいて、約0.01%〜約10%、より好ましくは約0.1%〜約5%の乳化剤をさらに含有することが好ましいと考えられる。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性であってよい。適当な乳化剤は、例えば、1973年8月28日付で発行された、Dickertらの米国特許第3,755,560号; 1983年12月20日付で発行された、Dixonらの米国特許第4,421,769号; およびMcCutcheon's Detergents and Emulsifiers, North American Ed., pages 317-324 (1986)に開示されている。
【0123】
エマルジョンは、表皮組織への適用時に泡立ちを最小限にするよう消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、高分子量シリコーン、およびそのような用途で当技術分野において周知の他の材料を含む。
【0124】
適当なエマルジョンは、所望の製品形態に応じて、広範な粘度を有してもよい。好ましい例示的な低粘度のエマルジョンは、約50センチストークまたはそれ以下、より好ましくは約10センチストークまたはそれ以下、さらにより好ましくは約5センチストークまたはそれ以下の粘度を有する。
【0125】
シリコーン中水型エマルジョンは、連続シリコーン相および分散水相を含有することができる。連続シリコーン相は、後述の不連続水相を含有するかまたは包囲する外部相として存在する。連続シリコーン相は、1つまたは複数の非シリコーン油を含有してもよい。連続シリコーン相で用いるのに適した非シリコーン油の例は、油中水型エマルジョンの形態の局所パーソナルケア製品で化学分野において周知のもの、例えば、鉱油、植物油、合成油、半合成油などである。
【0126】
エマルジョン技術において、「分散相」という用語は当業者に周知の用語であり、これはその相が、連続相に懸濁され、かつ取り囲まれた小粒子または小滴として存在することを意味する。分散相は内部相または不連続相としても公知である。分散水相は、上述の連続シリコーン相に懸濁され、かつ取り囲まれた水性の小粒子または小滴の分散系である。
【0127】
水相は水、または水および1つもしくは複数の水溶性もしくは水分散性成分の組合せでありうる。そのような成分の非限定的な例としては、増粘剤、酸、塩基、塩、キレート剤(chelants)、ゴム、水溶性または分散性アルコールおよびポリオール、緩衝液、保存剤、日焼け止め剤、着色剤などが挙げられる。
【0128】
シリコーン中水型エマルジョンは、乳化剤を含有することができる。1つの態様において、組成物はその重量の約0.1%〜約10%の乳化剤、より好ましくは約0.5%〜約7.5%の乳化剤、さらにより好ましくは約1%〜約5%の乳化剤を含有する。乳化剤は、水相を連続シリコーン相の中で分散および懸濁するのに役立つ。
【0129】
その他の局所担体は、連続水相およびその中に分散された疎水性の、不水溶性相(「油相」)を有する水中油型エマルジョンを含む。適当な水中油型のエマルジョン担体の例は、1991年12月17日付で発行された、Turner, D. J.らの米国特許第5,073,371号、および1991年12月17日付で発行された、Turner, D. J.らの米国特許第5,073,372号に記述されている。
【0130】
水中油型エマルジョンは、液晶ゲルネットワーク構造の形成を補助する構造化剤(structuring agent)を含有することができる。構造化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、平均で約1〜約21のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均で約1〜約5のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、およびそれらの混合物を含む。
【0131】
ある種の態様において、水中油型エマルジョンは、疎水性材料を水相中で分散できる少なくとも1つの親水性界面活性剤を含有する(局所担体の重量パーセント)。この界面活性剤は、最小限で、水中において分散するのに十分に親水性でなければならない。本明細書において有用な非イオン性界面活性剤の中には、糖またはでんぷん重合体との長鎖アルコール、例えばC8〜30アルコールの縮合生成物として広く定義されうるもの、すなわち、グリコシドがある。
【0132】
本明細書において有用な他の適当な界面活性剤は、当技術分野において公知であるような多岐にわたる陽イオンの、陰イオンの、双性イオンの、および両性の界面活性剤を含む。例えば、Allured Publishing Corporationが刊行している、McCutcheon's, Detergents and Emulsifiers, North American Edition (1986); 1991年4月30日付で発行された、Ciottiらの米国特許第5,011,681号; 1983年12月20日付で発行された、Dixonらの米国特許第4,421,769号; および1973年8月28日付で発行された、Dickertらの米国特許第3,755,560号を参照されたく、これら4つの参考文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において有用な親水性界面活性剤は、単一の界面活性剤、または適当な界面活性剤の任意の組合せを含有することができる。選択される的確な界面活性剤は、組成物のpHおよび存在する他の成分に依ると考えられる。
【0133】
本明細書において同様に有用なのは、ジアルキル第四級アンモニウム化合物のような、陽イオン界面活性剤であり、これらの例は米国特許第5,151,209号; 同第5,151,210号; 同第5,120,532号; 同第4,387,090号; 同第3,155,591号; 同第3,929,678号; 同第3,959,461号; McCutcheon's, Detergents & Emulsifiers, (North American edition 1979) M.C. Publishing Co.; およびSchwartz, et al., Surface Active Agents, Their Chemistry and Technology, New York: Interscience Publishers, 1949に記述されており、これらの記述は参照により本明細書に組み入れられる。
【0134】
多種多様な陰イオン界面活性剤も本明細書において有用である。例えば、1975年12月30日付で発行された、Laughlinらの米国特許第3,929,678号を参照されたく、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。陰イオン界面活性剤の非限定的な例としては、イセチオン酸アルコイル、ならびにアルキルおよびアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。
【0135】
両性および双性イオンの界面活性剤の例は、脂肪族第二級および第三級アミンの誘導体として広く記述されているものであり、その中で脂肪族基が直鎖または分枝鎖であってよく、およびその中で脂肪族置換基の1つが約8〜約22個の炭素原子(好ましくはC8〜C18)を含有し、かつ1つが陰イオン性の水溶性基、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、またはホスホン酸基を含有する。
【0136】
ローションおよびクリームを含むがこれらに限定されない、本発明の局所組成物は、皮膚科学的に許容される皮膚軟化剤を含有することができる。そのような組成物は約1%〜約50%の皮膚軟化剤を含有することが好ましい。本明細書において用いられる「皮膚軟化剤」は、乾燥の阻止または軽減に、および皮膚の保護に有用な材料を指す。多岐にわたる適当な皮膚軟化剤が公知であり、本明細書において使用されうる。参照により本明細書に組み入れられるSagarin, Cosmetics, Science and Technology, 2nd Edition, Vol. 1, pp. 32-43 (1972)には、皮膚軟化剤として適当な材料の多数の例が含まれている。好ましい皮膚軟化剤はグリセリンである。グリセリンは、0.001%または約0.001%〜30%または約30%、より好ましくは0.01%または約0.01%〜20%または約20%、さらにより好ましくは0.1%または約0.1%〜10%または約10%、例えば、5%の量で使用されることが好ましい。
【0137】
クリームは、より高いレベルの皮膚軟化剤、またはより高いレベルの増粘剤により、ローションよりも一般に粘稠である。
【0138】
本発明の軟膏は、動物油もしくは植物油または半固体炭化水素(油性の)の単純な担体基剤; 水を吸収してエマルジョンを形成する吸水軟膏基剤; または水溶性の担体、例えば、水溶液の担体を含有してもよい。軟膏は、参照により本明細書に組み入れられるSagarin, Cosmetics, Science and Technology, 2nd Edition, Vol. 1, pp. 72-73 (1972)に記述されているような、増粘化剤、および/または皮膚軟化剤をさらに含有してもよい。例えば、軟膏は、約2%〜約10%の皮膚軟化剤; 約0.1%〜約2%の増粘化剤; および上記の量の小胞-コラーゲンを含有してもよい。
【0139】
さらなるスキンケア剤
本発明の組成物は、コラーゲンおよび任意でHAに加えて、1つまたは複数のさらなるスキンケア剤を含有することができ、以下に列挙される剤は、特に記述のない限り水を含まない。
【0140】
さらなる剤は表皮組織への適用に適しているべきであり、すなわち、組成物に組み入れられる場合、それらは過度の毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応などなしにヒト表皮組織と接触させて用いるのに適している。CTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Second Edition (1992)にはスキンケア業界で一般に使用される多種多様な限定されない化粧品および医薬品成分が記述されており、それらは本発明の組成物で用いるのに適している。
【0141】
そのような成分の部類の例としては、研磨剤、吸収剤、例えば、香料、顔料、着色料/着色剤、精油、皮膚感覚剤(skin sensate)、収れん剤など(例えば、丁子油、メントール、カンファー、ユーカリ油、オイゲノール、メンチルラクテート(menthyl lactate)、ウィッチヘーゼル留出物)の美的構成成分(aesthetic component)、抗アクネ剤、固化防止剤、消泡剤、抗微生物剤(例えば、ヨードプロピルブチルカルバマート)、酸化防止剤、結合剤、生物学的添加物、緩衝剤、充填剤、キレート剤、化学的添加物、着色剤、化粧用収れん剤、化粧用殺生物剤、変性剤、薬用収れん剤、外用鎮痛剤、薄層形成剤または薄層形成材、例えば、組成物の薄層形成性および実質性を補助するための重合体(例えば、エイコセンおよびビニルピロリドンの共重合体)、乳白剤、pH調整剤、噴射剤、還元剤、金属イオン封鎖剤、皮膚脱色剤および皮膚美白剤(例えば、ヒドロキノン、コウジ酸、アスコルビン酸、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルグルコサミン)、皮膚コンディショニング剤(例えば、混合性および閉塞性のものを含む湿潤剤)、皮膚鎮静剤(skin soothing agent)および/または治療剤(例えば、パンテノールおよび誘導体(例えば、エチルパンテノール)、アロエベラ、パントテン酸およびその誘導体、アラントイン、ビサボロール、およびグリチルリチン酸二カリウム)、皮膚処置剤、増粘剤、ならびにビタミンおよびその誘導体が挙げられる。
【0142】
しかしながら、本発明のいずれの態様においても、本明細書において有用な剤は、それらがもたらす利益により、または想定されるそれらの作用機序により分類することができる。しかしながら、本明細書において用いられるさらなる剤が、場合によって、複数の利益をもたらすか、または複数の作用機序を介して機能することができることを理解するべきである。したがって、本明細書における分類は、便宜のため行われており、剤をその特定の用途または列挙した用途に限定することを意図するものではない。
【0143】
落屑剤
本発明の組成物に、安全でかつ有効な量の、より好ましくは組成物の約0.1重量%〜約10重量%、さらにより好ましくは約0.2重量%〜約5重量%、同様に好ましくは約0.5重量%〜約4重量%の落屑剤を添加することができる。落屑剤は本発明の皮膚外観の利益を向上させる。例えば、落屑剤は皮膚のきめ(例えば、滑らかさ)を改善する傾向がある。本明細書において用いるのに適した落屑系の1つは、スルフヒドリル化合物および双性イオン界面活性剤を含有し、参照により本明細書に組み入れられるBissettの米国特許第5,681,852号に記述されている。本明細書において用いるのに適した別の落屑系は、サリチル酸および双性イオン界面活性剤を含有し、参照により本明細書に組み入れられるBissettの米国特許第5,652,228号に記述されている。これらの出願に記述されているような双性イオン界面活性剤も本明細書における落屑剤として有用であり、セチルベタインが特に好ましい。
【0144】
抗アクネ剤
本発明の組成物は、安全でかつ有効な量の抗アクネ剤の1つまたは複数を含有することができる。有用な抗アクネ剤の例としては、レゾルシノール、硫黄、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、亜鉛などが挙げられる。適当な抗アクネ剤のさらなる例は、1997年3月4日付で発行された、McAteeらの米国特許第5,607,980号にさらに詳細に記述されている。
【0145】
抗しわ剤/抗萎縮剤
本発明の組成物は、安全でかつ有効な量の、抗しわ剤または抗萎縮剤の1つもしくは複数をさらに含有することができる。本発明の組成物で用いるのに適した例示的な抗しわ剤/抗萎縮剤は、硫黄含有のDおよびLアミノ酸ならびにそれらの誘導体および塩、特にN-アセチル誘導体を含み、その好ましい例は、N-アセチル-L-システイン; チオール、例えばエタンチオール; ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸のようなα-ヒドロキシ酸またはサルチル酸およびオクタノイル誘導体などのサルチル酸誘導体のようなβ-ヒドロキシ酸)、フィチン酸、リポ酸; リゾホスファチジン酸、皮膚剥離剤(例えば、フェノールなど)、ビタミンB3化合物、レチノイド、ならびにヒアルロン酸であり、これらはとりわけ表皮組織の状態、例えば、皮膚の状態を調節する上で、本発明の表皮組織外観の利益を向上させる。
【0146】
ビタミンB3化合物
本発明の組成物は、安全でかつ有効な量のビタミンB3化合物を含有することができる。ビタミンB3化合物は、1997年4月11日付で出願された米国特許出願第08/834,010号(1997年10月30日付で公開された国際公開WO 97/39733 A1に対応する)に記述されているように、皮膚の状態を調節するのに特に有用である。適当なビタミンB3化合物の例は、当技術分野において周知であり、いくつかの供給元、例えば、Sigma Chemical Company (St. Louis, Mo.); ICN Biomedicals, Inc. (Irvin, Calif.)およびAldrich Chemical Company (Milwaukee, Wis.)から市販されている。ビタミン化合物は、実質的に純粋な材料として、または天然(例えば、植物)供給源から適当な物理的単離および/もしくは化学的単離により得られる抽出物として含まれてもよい。
【0147】
レチノイド
本発明の組成物は同様に、レチノイドを含有することができる。本明細書において用いられる「レチノイド」は、ビタミンAの全ての天然および/もしくは合成類似体、または皮膚でのビタミンAの生物学的活性を保有するレチノール様化合物、ならびにこれらの化合物の幾何異性体および立体異性体を含む。レチノイドは、好ましくはレチノール、レチノールエステル(例えば、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニルを含む、レチノールのC2〜C22アルキルエステル)、レチナール、ならびに/またはレチノイン酸(全トランスレチノイン酸および/もしくは13-シス-レチノイン酸を含む)、より好ましくはレチノイン酸以外のレチノイドである。これらの化合物は当技術分野において周知であり、いくつかの供給元、例えば、Sigma Chemical Company (St. Louis, Mo.)、およびBoerhinger Mannheim (Indianapolis, Ind.)から市販されている。本明細書において有用なその他のレチノイドは、1987年6月30日付で発行されたParishらの米国特許第4,677,120号; 1989年12月5日付で発行されたParishらの米国特許第4,885,311号; 1991年9月17日付で発行されたPurcellらの米国特許第5,049,584号; 1992年6月23日付で発行されたPurcellらの米国特許第5,124,356号; および1992年9月22日付で発行されたPurcellらの米国再発行特許第34,075号に記述されている。その他の適当なレチノイドは、レチノイン酸トコフェリル[レチノイン酸(トランス-またはシス-)のトコフェロールエステル、アダパレン{6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸}、およびタザロテン(6-[2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)-エチニル]ニコチン酸エチル)である。好ましいレチノイドは、レチノール、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、レチナールおよびそれらの組合せである。
【0148】
ヒドロキシ酸
本発明の組成物は、安全でかつ有効な量のヒドロキシ酸を含有することができる。本発明の組成物で用いるのに好ましいヒドロキシ酸は、サリチル酸およびサリチル酸誘導体を含む。
【0149】
抗酸化剤/ラジカル捕捉剤
本発明の組成物は、安全でかつ有効な量の抗酸化剤/ラジカル捕捉剤を含むことができる。抗酸化剤/ラジカル捕捉剤は、角質層でのさらに高い剥離、またはきめの変化を引き起こしうるUV照射からの防御、および皮膚損傷を引き起こしうる他の環境要因からの防御をもたらすのに特に有用である。
【0150】
安全でかつ有効な量の抗酸化剤/ラジカル捕捉剤を、本発明の組成物に、組成物の好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%添加することができる。
【0151】
アスコルビン酸(ビタミンC)およびその塩、脂肪酸のアスコルビルエステル、アスコルビン酸誘導体(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビルナトリウム、ソルビン酸アスコルビル(ascorbyl sorbate))、トコフェロール(ビタミンE)、ソルビン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールの他のエステル、ブチル化ヒドロキシ安息香酸およびその塩、6-ヒドロキシ-2,5,7,8-テトラメチルクロマン-2-カルボン酸(商品名Trolox(商標登録)で市販されている)、没食子酸およびそのアルキルエステル、特に没食子酸プロピル、尿酸ならびにその塩およびアルキルエステル、ソルビン酸およびその塩、リポ酸、アミン(例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、アミノ-グアニジン)、スルフヒドリル化合物(例えばグルタチオン)、ジヒドロキシフマル酸およびその塩、リシンピドレート(lycine pidolate)、アルギニンピロレート(arginine pilolate)、ノルジヒドログアイアレチン酸、バイオフラボノイド、クルクミン、リジン、メチオニン、プロリン、スーパーオキシドジスムターゼ、シリマリン、茶抽出物、ブドウの皮/種の抽出物、メラニン、ならびにローズマリー抽出物のような抗酸化剤/ラジカル捕捉剤を使用することができる。好ましい抗酸化剤/ラジカル捕捉剤は、ソルビン酸トコフェロールおよびトコフェロールの他のエステル、より好ましくはソルビン酸トコフェロールから選択される。例えば、局所組成物におけるおよび本発明に適用できるソルビン酸トコフェロールの使用は、1989年7月11日付で発行されたDonald L. Bissett, Rodney D. BushおよびRanjit Chatterjeeの米国特許第4,847,071号に記述されている。
【0152】
キレーター
本発明の組成物は同様に、安全でかつ有効な量のキレーターまたはキレート剤を含有することができる。本明細書において用いられる「キレーター」または「キレート剤」は、金属イオンが容易に化学反応に関与できないか、または化学反応を触媒できないように、錯体を形成させることで系から金属イオンを除去できる活性薬剤を意味する。キレート剤の含有は、過剰な剥離または皮膚のきめの変化の一因となりうるUV照射からの防御、および皮膚損傷を引き起こしうる他の環境要因からの防御をもたらすのに特に有用である。
【0153】
安全でかつ有効な量のキレート剤を、本発明の組成物に、組成物の好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約1%〜約5%添加することができる。本明細書において有用である例示的なキレーターは、1996年1月30日付で発行されたBissettらの米国特許第5,487,884号; 1995年10月31日付で公開されたBushらの国際公開公報第91/16035号; および1995年10月31日付で公開されたBushらの国際公開公報第91/16034号に開示されている。本発明の組成物に有用な好ましいキレーターは、フリルジオキシム、フリルモノキシム、およびその誘導体である。
【0154】
フラボノイド
本発明の組成物は任意でフラボノイド化合物を含有してもよい。フラボノイドは米国特許第5,686,082号および同第5,686,367号に広く開示されており、これらは共に参照により本明細書に組み入れられる。本発明で用いるのに適したフラボノイドは、非置換フラバノン、一置換フラバノンおよびそれらの混合物から選択されるフラバノン; 非置換カルコン、一置換カルコン、二置換カルコン、三置換カルコンおよびそれらの混合物から選択されるカルコン; 非置換フラボン、一置換フラボン、二置換フラボンおよびそれらの混合物から選択されるフラボン; 1つまたは複数のイソフラボン; 非置換クマリン、一置換クマリン、二置換クマリンおよびそれらの混合物から選択されるクマリン; 非置換クロモン、一置換クロモン、二置換クロモンおよびそれらの混合物から選択されるクロモン; 1つまたは複数のジクマロール; 1つまたは複数のクロマノン; 1つまたは複数のクロマノール; それらの異性体(例えば、シス/トランス異性体); ならびにそれらの混合物である。本明細書において用いられる用語「置換」とは、フラボノイドの1つまたは複数の水素原子が、ヒドロキシル、C1〜C8アルキル、C1〜C4アルコキシ、O-グリコシドなどまたはこれらの置換基の混合基と独立して置き換えられているフラボノイドを意味する。
【0155】
適切なフラボノイドの例としては、非置換フラバノン、モノ-ヒドロキシフラバノン(例えば、2'-ヒドロキシフラバノン、6-ヒドロキシフラバノン、7-ヒドロキシフラバノンなど)、モノ-アルコキシフラバノン(例えば、5-メトキシフラバノン、6-メトキシフラバノン、7-メトキシフラバノン、4'-メトキシフラバノンなど)、非置換カルコン(特に非置換トランス-カルコン)、モノ-ヒドロキシカルコン(例えば、2'-ヒドロキシカルコン、4'-ヒドロキシカルコンなど)、ジ-ヒドロキシカルコン(例えば、2',4-ジヒドロキシカルコン、2',4'-ジヒドロキシカルコン、2,2'-ジヒドロキシカルコン、2',3-ジヒドロキシカルコン、2',5'-ジヒドロキシカルコンなど)、およびトリ-ヒドロキシカルコン(例えば、2',3',4'-トリヒドロキシカルコン、4,2',4'-トリヒドロキシカルコン、2,2',4'-トリヒドロキシカルコンなど)、非置換フラボン、7,2'-ジヒドロキシフラボン、3',4'-ジヒドロキシナフトフラボン、4'-ヒドロキシフラボン、5,6-ベンゾフラボン、および7,8-ベンゾフラボン、非置換イソフラボン、ダイゼイン(7,4'-ジヒドロキシイソフラボン)、5,7-ジヒドロキシ-4'-メトキシイソフラボン、大豆イソフラボン(大豆から抽出した混合物)、非置換クマリン、4-ヒドロキシクマリン、7-ヒドロキシクマリン、6-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、非置換クロモン、3-ホルミルクロモン、3-ホルミル-6-イソプロピルクロモン、非置換ジクマロール、非置換クロマノン、非置換クロマノール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0156】
本明細書において用いるのに好ましいのは、非置換フラバノン、メトキシフラバノン、非置換カルコン、2',4-ジヒドロキシカルコン、およびこれらの混合物である。より好ましいのは、非置換フラバノン、非置換カルコン(特にトランス異性体)、およびこれらの混合物である。
【0157】
それらは合成材料であってもまた天然供給源(例えば、植物)由来の抽出物として得られてもよい。天然に供給される材料はさらに誘導体化されてもよい(例えば、天然供給源からの抽出後に調製されるエステルまたはエーテル誘導体)。本明細書において有用なフラボノイド化合物はいくつかの供給元、例えば、Indofine Chemical Company, Inc. (Somerville, N.J.)、Steraloids, Inc. (Wilton, N.H.)、およびAldrich Chemical Company, Inc. (Milwaukee, Wis.)から市販されている。
【0158】
抗炎症剤
安全でかつ有効な量の抗炎症剤を、本発明の組成物に、組成物の好ましくは約0.1%〜約10%、より好ましくは約0.5%〜約5%添加することができる。抗炎症剤は本発明の皮膚外観の利益を向上させ、例えば、そのような薬剤はより均一でかつ許容可能な皮膚の色調または色に寄与する。組成物に使用される抗炎症剤の的確な量は、そのような薬剤の効力が大きく異なるので、利用される特定の抗炎症剤に依ると考えられる。
【0159】
コルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロン、α-メチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デゾキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、二酢酸ジフロラゾン、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクロロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルオロゾン、フルラドレノロン、フルドロコルチゾン、二酢酸ジフルロゾン、フルラドレノロンアセトニド、メドリゾン、アムシナフェル、アムシナフィド、ベータメサゾンおよびそのエステル類、クロロプレドニゾン、酢酸クロロプレドニゾン、クロコルテロン、クレシノロン、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニソロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、シクロペンチルプロピオン酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタマート、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ならびにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない、ステロイド系抗炎症剤を使用することができる。用いるのに好ましいステロイド系抗炎症剤はヒドロコルチゾンである。
【0160】
組成物に有用な第二の部類の抗炎症剤は、非ステロイド系抗炎症剤を含む。この群に包含されるさまざまな化合物は当業者に周知である。非ステロイド系抗炎症剤の化学構造、合成、副作用などの詳細な開示については、Anti-inflammatory and Anti-Rheumatic Drugs, K. D. Rainsford, Vol. I-III, CRC Press, Boca Raton, (1985)、およびAnti-inflammatory Agents, Chemistry and Pharmacology, 1, R. A. Scherrer, et al., Academic Press, New York (1974)を含めて、標準的なテキストを参照することができる。
【0161】
本発明の組成物に有用な具体的な非ステロイド系抗炎症剤は、以下を含むが、これらに限定されることはない:
1) ピロキシカム、イソキシカム、テノキシカム、スドキシカム、およびCP-14,304のような、オキシカム;
2) アスピリン、ジサルシド、ベノリラート、トリリサート、サファプリン、ソルプリン、ジフルニサル、およびフェンドサルのような、サリチラート;
3) ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イソキセパック、フロフェナク、チオピナック、ジドメタシン、アセマタシン、フェンチアザク、ゾメピラック、クリンダナク、オキセピナク、フェルビナク、およびケトロラックのような、酢酸誘導体;
4) メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸のような、フェナマート;
5) イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、およびチアプロフェニックのような、プロピオン酸誘導体; ならびに
6) フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェプラゾン、アザプロパゾン、およびトリメタゾンのような、ピラゾール。
【0162】
これらの非ステロイド系抗炎症剤の混合物、ならびにこれらの薬剤の皮膚科学的に許容される塩およびエステルも利用することができる。例えば、フルフェナム酸誘導体であるエトフェナマートは、局所適用に特に有用である。非ステロイド系抗炎症剤のうち、イブプロフェン、ナプロキセン、フルフェナム酸、エトフェナマート、アスピリン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカムおよびフェルビナクが好ましく、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、エトフェナマート、アスピリンおよびフルフェナム酸がより好ましい。
【0163】
最後に、いわゆる「天然の」抗炎症剤が本発明の方法において有用である。そのような薬剤は、天然供給源(例えば、植物、真菌、微生物の副産物)からの適当な物理的単離および/もしくは化学的単離により抽出物として適切に得られてもよく、または合成により調製されてもよい。例えば、カンデリラろう、ビサボロール(例えば、αビサボロール)、アロエベラ、植物ステロール(例えば、フィトステロール)、マンジスタ(Manjistha) (ルビア(Rubia)属、特にルビアコルディフォリア(Rubia Cordifolia)属の植物から抽出された)、およびグッガル(コンミフォラ(Commiphora)属、特にコンミフォラ ムクル(Commiphora Mukul)属の植物から抽出された)、コーラの木抽出物、カモミール、アカツメクサ抽出物、ならびにヤギ類のサンゴ(sea whip)抽出物を使用することができる。
【0164】
本明細書において有用なさらなる抗炎症剤はグリチルレチン酸、グリチルリジン酸およびその誘導体(例えば、塩およびエステル)を含め、カンゾウ(Licorice) (植物属/種名グリシリザ グラブラ(Glycyrrhiza glabra))科の化合物を含む。上記の化合物の適当な塩は、金属塩およびアンモニウム塩を含む。適当なエステルは、酸のC2〜C24、好ましくはC10〜C24、より好ましくはC16〜C24飽和または不飽和エステルを含む。上記の具体例としては、油溶性カンゾウ抽出物、グリチルリジン酸およびグリチルレチン酸それ自体、グリチルリジン酸一アンモニウム、グリチルリジン酸一カリウム、グリチルリジン酸二カリウム、1-β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、および3-ステアリルオキシ-グリチルレチン酸、および3-スクシニルオキシ-β-グリチルレチン酸二ナトリウムが挙げられる。グリチルレチン酸ステアリルが好ましい。
【0165】
抗セルライト剤
本発明の組成物は同様に、安全でかつ有効な量の抗セルライト剤を含有することができる。適当な薬剤は、キサンチン化合物(例えば、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、およびアミノフィリン)を含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0166】
局所麻酔剤
本発明の組成物は、同様に、安全でかつ有効な量の局所麻酔剤を含有することができる。局所麻酔薬の例としては、ベンゾカイン、リドカイン、ブピバカイン、クロルプロカイン、ジブカイン、エチドカイン、メピバカイン、テトラカイン、ジクロニン、ヘキシルカイン、プロカイン、コカイン、ケタミン、プラモキシン、フェノール、およびその薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0167】
日焼け剤
本発明の組成物は日焼け剤を含有することができる。日焼け剤が存在する場合には、組成物は人工日焼け剤としてジヒドロキシアセトンを、組成物の約0.1重量%〜約20重量%、より好ましくは約2重量%〜約7重量%、およびさらにより好ましくは約3重量%〜約6重量%含有することが好ましい。
【0168】
皮膚美白剤
本発明の組成物は皮膚美白剤を含有することができる。使用される場合、該組成物は皮膚美白剤を、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約5重量%、同様に好ましくは約0.5重量%〜約2重量%含有することが好ましい。適当な皮膚美白剤はコウジ酸、アルブチン、アスコルビン酸およびその誘導体(例えば、リン酸アスコルビルマグネシウムまたはリン酸アスコルビルナトリウム)、および抽出物(例えば、桑の実抽出物、胎盤抽出物)を含めて、当技術分野において公知のものを含む。本明細書において用いるのに適した皮膚美白剤は同様に、1995年6月12日付で出願されたPCT出願番号U.S. 95/07432に対応する、Hillebrandの名の下に出願されたPCT公開番号95/34280; および1995年9月8日付で公開されたPCT公開番号95/23780に対応する、Kvalnes, Mitchell A. DeLong, Barton J. Bradbury, Curtis B. Motley, and John D. Carterの名の下に出願された同時係属中の米国特許出願第08/390,152号に記述されているものを含む。
【0169】
皮膚鎮静剤および皮膚治療剤
本発明の組成物は皮膚鎮静剤または皮膚治療剤を含むことができる。本明細書において用いるのに適した皮膚鎮静剤または皮膚治療剤は、パンテノール酸(panthenoic acid)誘導体(パンテノール、デクスパンテノール、エチルパンテノールを含む)、アロエベラ、アラントイン、ビサボロール、およびグリチルリジン酸二カリウムを含む。安全でかつ有効な量の皮膚鎮静剤または皮膚治療剤を、本発明の組成物に、形成される組成物の、好ましくは約0.1重量%〜約30重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約20重量%、さらにより好ましくは約0.5重量%〜約10重量%、添加することができる。
【0170】
抗微生物剤および抗真菌剤
本発明の組成物は抗微生物剤または抗真菌剤を含有することができる。そのような薬剤は微生物を破壊し、微生物の発生を阻止することができるか、または微生物の病原作用を阻止することができる。安全でかつ有効な量の抗微生物剤または抗真菌剤を、好ましくは約0.001%〜約10%、より好ましくは約0.01%〜約5%、およびさらにより好ましくは約0.05%〜約2%、本発明の組成物に添加することができる。
【0171】
抗微生物剤および抗真菌剤の例としては、B-ラクタム薬、キノロン薬、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'-トリクロロバニリド、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フェノキシイソプロパノール、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、イセチオン酸ヘキサミジン、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール、塩酸テトラサイクリン、エリスロマイシン、亜鉛エリスロマイシン、エリスロマイシンエストラート、ステアリン酸エリスロマイシン、硫酸アミカシン、塩酸ドキシサイクリン、硫酸カプレオマイシン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩酸クロルテトラサイクリン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸クリンダマイシン、塩酸エタンブトール、塩酸メトロニダゾール、塩酸ペンタミジン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸カナマイシン、塩酸リネオマイシン、塩酸メタサイクリン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、塩酸ミノサイクリン、硫酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、硫酸パロモマイシン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸ミコナゾール、ケタコナゾール、塩酸アマンファジン、硫酸アマンファジン、オクトピロックス、パラクロロメタキシレノール、ナイスタチン、トルナフタート、亜鉛ピリチオン、およびクロトリマゾールが挙げられる。
【0172】
さらに抗微生物ペプチドを使用することができる。
【0173】
日焼け止め剤
紫外線への曝露は、角質層の過剰な剥離およびきめの変化を引き起こしうる。したがって、本発明の組成物は任意で日焼け止め剤を含有してもよい。本明細書において用いられる「日焼け止め剤」は、日焼け止め剤も物理的な日焼け止めも共に含む。適当な日焼け止め剤は有機物でも無機物でもよい。
【0174】
本明細書において有用な無機日焼け止め剤は、以下の金属酸化物を含む: 約15 nm〜約100 nmの平均一次粒径を有する二酸化チタン、約15 nm〜約150 nmの平均一次粒径を有する酸化亜鉛、約15 nm〜約150 nmの平均一次粒径を有する酸化ジルコニウム、約15 nm〜約500 nmの平均一次粒径を有する酸化鉄、およびそれらの混合物。本明細書において用いられる場合、無機日焼け止め剤は、組成物の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%、より好ましくは約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0175】
多種多様な従来の有機日焼け止め剤は、本明細書において用いるのに適している。SagarinらはCosmetics Science and Technology (1972)の第VIII章, 189頁以下参照で、多数の適当な剤を開示している。具体的な適当な日焼け止め剤は、例えば、p-アミノ安息香酸、その塩およびその誘導体(エチル、イソブチル、グリセリルエステル; p-ジメチルアミノ安息香酸); アントラニラート(すなわち、o-アミノ-ベンゾアート; メチル、メンチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチル、リナリル、テルピニル、およびシクロヘキセニルエステル); サリチラート(アミル、フェニル、オクチル、ベンジル、メンチル、グリセリル、およびジ-プロピレングリコールエステル); ケイ皮酸誘導体(メンチルおよびベンジルエステル、a-フェニルシンナモニトリル; ブチルピルビン酸シンナモイル); ジヒドロキシケイ皮酸誘導体(ウンベリフェロン、メチルウンベリフェロン、メチルアセト-ウンベリフェロン); トリヒドロキシ-ケイ皮酸誘導体(エスクレチン、メチルエスクレチン、ダフネチン、ならびにグルコシド、エスクリンおよびダフニン); 炭化水素(ジフェニルブタジエン、スチルベン); ジベンザルアセトンおよびベンザルアセトフェノン; ナフトールスルホン酸塩(2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸のナトリウム塩および2-ナフトール-6,8-ジスルホン酸のナトリウム塩); ジ-ヒドロキシナフトエ酸およびその塩; o-およびp-ヒドロキシビフェニルジスルホナート; クマリン誘導体(7-ヒドロキシ、7-メチル、3-フェニル); ジアゾール(2-アセチル-3-ブロモインダゾール、フェニルベンゾキサゾール、メチルナフトキサゾール、さまざまなアリールベンゾチアゾール); キニン塩(重硫酸塩、硫酸塩、塩化物、オレイン酸塩、およびタンニン酸塩); キノリン誘導体(8-ヒドロキシキノリン塩、2-フェニルキノリン); ヒドロキシ-またはメトキシ-置換ベンゾフェノン; 尿酸およびビオルル酸; タンニン酸およびその誘導体(例えば、ヘキサエチルエーテル); (ブチルカルボトール) (6-プロピルピペロニル)エーテル; ヒドロキノン; ベンゾフェノン(オキシベンゼン、スリソベンゾン、ジオキシベンゾン、ベンゾレソルシノール、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、オクタベンゾン; 4-イソプロピルジベンゾイルメタン; ブチルメトキシジベンゾイルメタン; エトクリレン; オクトクリレン; [3-(4'-メチルベンジリデンボルナン-2-オン)、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ならびに4-イソプロピル-ジ-ベンゾイルメタンを含む。
【0176】
コンディショニング剤
本発明の組成物は、湿潤剤、保湿剤または皮膚コンディショニング剤から選択されるコンディショニング剤を含有することができる。種々のこれらの材料を利用することができ、各々が組成物の約0.01重量%〜約20重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、およびさらにより好ましくは約0.5重量%〜約7重量%のレベルで存在することができる。これらの材料は、グアニジン; 尿素; グリコール酸およびグリコール酸塩(例えば、アンモニウム塩および第四級アルキルアンモニウム塩); サリチル酸; 乳酸および乳酸塩(例えば、アンモニウム塩および第四級アルキルアンモニウム塩); 種々の形態のいずれかでのアロエベラ(例えば、アロエベラゲル); ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、グリセロール、ヘキサントリオール、ブタントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのようなポリヒドロキシアルコール; ポリエチレングリコール; 糖類(例えば、メリビオース)およびでんぷん; 糖およびでんぷん誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース、フコース、グルコサミン); ヒアルロン酸; モノエタノールアミンラクトアミド; モノエタノールアミンアセトアミド; パンテノール; アラントイン; およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されることはない。本明細書において同様に有用なのは、1990年12月11日付で発行された、Orrらの米国特許第4,976,953号に記述のプロポキシル化グリセロールである。
【0177】
構造化剤
本発明の組成物、および特に本発明のエマルジョンは、構造化剤を含有することができる。構造化剤は、本発明の水中油型エマルジョンにおいて特に好ましい。理論によって限定されるものではないが、構造化剤は組成物に流動学的特性を与えるのに役立ち、それにより組成物の安定性に寄与すると考えられる。例えば、構造化剤は液晶ゲルネットワーク構造の形成を補助する傾向がある。構造化剤は乳化剤または界面活性剤として機能することもできる。本発明の好ましい組成物は、1つまたは複数の構造化剤を、約0.1%〜約20%、より好ましくは約0.1%〜約10%、さらにより好ましくは約0.5%〜約9%含有する。
【0178】
本発明の好ましい構造化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸、平均で約1〜約5のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、平均で約1〜約5のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、およびそれらの混合物から選択される。本発明のより好ましい構造化剤は、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、平均で約2のエチレンオキシド単位を有するステアリルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(ステアレス-2)、平均で約2のエチレンオキシド単位を有するセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル、およびそれらの混合物から選択される。さらにより好ましい構造化剤は、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアレス-2、およびそれらの混合物から選択される。
【0179】
増粘化剤(増粘剤およびゲル化剤を含む)
本発明の組成物は、1つまたは複数の増粘化剤を、組成物の好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約4重量%、およびさらにより好ましくは約0.25重量%〜約3重量%含有することができる。
【0180】
本発明の組成物で用いる非限定的な部類の増粘化剤は、以下から選択されるものを含む: カルボン酸重合体(1992年2月11日付で発行された、Haffeyらの米国特許第5,087,445号; 1985年4月5日付で発行された、Huangらの米国特許第4,509,949号; 1957年7月2日付で発行された、Brownの米国特許第2,798,053号; およびCTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary, Fourth Edition, 1991, pp. 12 and 80に記述されているものなど); 架橋ポリアクリル酸重合体(1992年3月31日付で発行された、Haweらの米国特許第5,100,660号; 1989年7月18日付で発行された、Heardの米国特許第4,849,484号; 1989年5月30日付で発行された、Farrarらの米国特許第4,835,206号; 1986年12月9日付で発行された、Gloverらの米国特許第4,628,078号; 1986年7月8日付で発行された、Flesherらの米国特許第4,599,379号; および1987年7月15日付で公開された、FarrarらのEP 228,868に記述されているものなど); ポリアクリルアミド重合体(置換分枝重合体または非分枝重合体を含む非イオン性ポリアクリルアミド重合体、ならびにアクリル酸および置換アクリル酸とのアクリルアミドおよび置換アクリルアミドのマルチブロック共重合体); 多糖類(これはセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートカルボキシレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、微結晶セルロース、セルロース硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物を含めて、繰り返し糖(repeating sugar)(すなわち、糖質)単位の骨格を含有するゲル化剤を指す); ならびにゴム(アカシア、寒天、アルギン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム、アミロペクチン、アルギン酸カルシウム、カルシウムカラギナン、カルニチン、カラギナン、デキストリン、ゼラチン、ジェランガム、グアーガム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヘクトライト、ヒアルロン酸(hyaluroinic acid)、水和シリカ、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシプロピルグアー、カラヤゴム、昆布、ローカストビーンガム、納豆ゴム、アルギン酸カリウム、カリウムカラギナン、アルギン酸プロピレングリコール、スクレロチウムゴム、ナトリウムカルボキシメチルデキストラン、ナトリウムカラギナン、トラガカントゴム、キサンタンゴム、およびそれらの混合物などの)。
【0181】
組成物の調製
本発明の方法に有用な組成物は、通常、局所組成物を作出する技術分野において知られているような従来の方法により調製される。このような方法は、典型的に、加熱、冷却、真空の適用などを伴うかまたは伴わずに、1つまたは複数の段階で比較的均一な状態にまで成分を混合することを含む。
【0182】
保存剤
保存剤を本発明の組成物に組み入れて、潜在的に有害な微生物の増殖を防ぐことができる。保存剤は微生物が増殖する傾向のある水相にあるが、微生物は無水相または油相に存在することもある。したがって、水にも油にも共に溶解性を有する保存剤が、本発明の組成物で利用されることが好ましい。本発明の組成物に適した従来の保存剤は、パラヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルである。使用できる他の保存剤は、ヒダントイン誘導体、プロピオン酸塩、および種々の第四級アンモニウム化合物を含む。
【0183】
特に好ましい保存剤は、メチルパラベン、イミダゾリジニルウレア、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピルパラベン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)三ナトリウム、およびベンジルアルコールである。保存剤は、保存剤と他の成分との間に考えられる不適合性を回避するように選択することができる。保存剤は、組成物の約0.01重量%〜約2重量%に及ぶ量で利用されることが好ましい。当技術分野において公知の他の保存剤を本発明において使用することができる。
【0184】
投与の方法
本発明の別の局面は、コラーゲンを含む分散された脂質小胞および/またはシクロデキストリンが患者の皮膚の真皮層に供与される、本発明の組成物を投与する方法を提供することである。この方法は、対象の皮膚または他の標的部位を、ヒトコラーゲンを含有する空洞を持った脂質小胞(例えば、非リン脂質パウシラメラーの脂質小胞)を含む組成物と接触させる段階を含む。
【0185】
本発明の組成物は哺乳類の皮膚の状態を調節するために、および/または改善するために有用である。表皮組織の状態のそのような調節は、予防的調節および治療的調節を含みうる。例えば、そのような調節法は、表皮組織の肥厚化ならびに哺乳類の皮膚萎縮の阻止および/または遅延、哺乳類の皮膚上でのクモ状血管腫および/または赤いしみの出現の阻止および/または遅延、哺乳類の目の下のくまの出現の阻止および/または遅延、哺乳類の皮膚の血色の悪さの阻止および/または遅延、哺乳類の皮膚のたるみの阻止および/または遅延、哺乳類の唇の柔軟化および/または平滑化、哺乳類の皮膚の痒みの阻止および/または軽減、皮膚のきめ(例えば、しわおよび細かいすじ)の調節、ならびに皮膚の色(例えば、赤み、そばかす)の改善に向けられる関する。
【0186】
表皮組織の状態の調節は、安全でかつ有効な量の本発明の組成物を表皮組織に局所的に塗布することを伴う。塗布される組成物の量、塗布の頻度および使用期間は、所与の組成物のコラーゲン(および、存在する場合、他のスキンケア剤)のレベル、ならびに例えば、存在するかまたは起こると予想される表皮組織の損傷のレベルを踏まえ、所望とされる調節のレベルに応じて大きく異なると考えられる。
【0187】
好ましい態様において、組成物は皮膚に長期的に塗布される。「長期の局所塗布」とは、対象の生存期間の長期にわたる、好ましくは少なくとも約1週間にわたる、より好ましくは少なくとも約1ヶ月間にわたる、さらにより好ましくは少なくとも約3ヶ月間にわたる、さらにより好ましくは少なくとも約6ヶ月間にわたる、およびさらにより好ましくは少なくとも約1年間にわたる、組成物の継続的な局所塗布を意味する。利益はさまざまな最大使用期間(例えば、5、10または20年)の後に得られるが、対象の生涯を通じて長期の塗布が続くことが好ましい。典型的には、塗布はそのような長期にわたり1日あたりおよそ1回になるが、しかし塗布の程度は1週間あたり約1回から1日あたり約3回またはそれ以上まで変化してもよい。
【0188】
皮膚外観および/または感触の利益をもたらすため、広範な量の、本発明の組成物を利用することができる。1回の塗布あたりに通常塗布される本発明の組成物の量は、mg組成物/cm2皮膚で、約0.1 mg/cm2〜約10 mg/cm2である。特に有用な塗布量は約1 mg/cm2〜約2 mg/cm2である。
【0189】
表皮組織の状態の改善および/または調節は、ある美容的、予防的、治療的または他の利益のため皮膚または他のケラチン構造に残るよう意図されることが好ましい、皮膚ローション、クリーム、ゲル、泡、軟膏、ペースト、乳液、スプレー、コンディショナー、トニック、化粧品、口紅、ファンデーション、アフターシェーブなどの形態で組成物を塗布すること(すなわち「つけたまま(leave-on)」の組成物)により実践されることが好ましい。組成物を皮膚に塗布した後に、組成物は少なくとも約15分間、より好ましくは少なくとも約30分間、さらにより好ましくは少なくとも約1時間、さらにより好ましくは少なくとも数時間、例えば、約12時間まで皮膚に放置されることが好ましい。身体の外側部分の任意の部分、例えば、唇、目の下の領域、まぶた、頭皮、首、胴、腕、手、脚、足などを処置することができる。組成物は指でまたは器具もしくは装置(例えば、パッド、綿ボール、塗布用ペン、スプレー塗布器など)で塗布することができる。
【0190】
真皮層への少なくとも最低レベルのコラーゲン(および、存在する場合、少なくとも1つのスキンケア剤)の継続的分散を確実にする別の手法は、例えば、顔に貼り付けられる貼付剤の使用により化合物を塗布することである。そのような手法は、いっそうの集中的処置を必要とする問題のある皮膚領域(例えば、顔の目尻のしわの領域、眉間のすじ、目の下の領域など)に特に有用である。貼付剤は閉塞性、半閉塞性または非閉塞性であってよく、接着性または非接着性であってよい。組成物は貼付剤の中に含有されても、または貼付剤の貼付の前に皮膚に塗布されてもよい。貼付剤は同様に、Wuらの米国特許第5,821,250号、同第5,981,547号、および同第5,972,957号に記述されているものなどの、発熱反応の化学的開始剤のようなさらなる剤を含むことができる。貼付剤は、少なくとも約5分間、より好ましくは少なくとも約15分間、さらに好ましくは少なくとも約30分間、さらにより好ましくは少なくとも約1時間、さらに好ましくは夜間療法の形態として夜間、皮膚に放置されることが好ましい。
【実施例】
【0191】
実施例1 - 皮膚へのコラーゲンの吸収
この研究により、リポソームにスパイクされた14C-コラーゲンの経皮吸収の薬物動態を評価した。有限用量法およびフランツ拡散セルを用い、インビトロにおいて、摘出ヒト顔面皮膚での吸収を測定した。
【0192】
インビトロヒト死体皮膚モデルは、経皮吸収の研究および局所的に塗布された薬物の薬物動態の測定に有益な手段であることが証明されている。このモデルでは、典型的なインビボの条件に適合する温度および湿度で皮膚を維持可能にする、特別にデザインされた拡散セルの中に埋め込まれたヒト死体皮膚を使用する。有限用量(例えば、4〜7 mg/cm2)の配合物を皮膚の外表面に塗布し、皮膚の内表面を浸けたレセプター溶液中でのその出現速度をモニターすることで薬物の吸収を測定する。

【0193】
生成物は異なる3人の皮膚提供者からの複製皮膚切片に対して、14C-コラーゲンをスパイクした配合物の経皮吸収を48時間の用量時間にわたり試験した。投薬後の事前に選択した時点で、真皮の貯留層溶液をそっくりそのまま除去し、新鮮なレセプター溶液と交換し、アリコートをその後の分析のために確保した。研究の完了時に、真皮および表皮の内容物も評価した。これらのサンプルを液体シンチレーション分光法により14C同位体含有量について分析した。
【0194】
(要約表) 全提供者での[14C]-コラーゲンをスパイクしたNovasomeの全吸収の結果
単回塗布から48時間にわたる摘出ヒト顔面皮膚を通じた放射性同位体としての14C-コラーゲンの経皮吸収。全質量(μg)および塗布用量の割合としての平均±SE (n=3)

「Pen」は浸透である。
【0195】
放射標識コラーゲンはAmerican Radiolabeled Chemicals, Inc. (ARC; St. Louis, MO 63143)により調製された。手短に言えば、研究の出資者がそれらのコラーゲンを標識化のためARCに送付した。ARCは[14C]ホルムアルデヒドおよびシアノ水素化ほう素ナトリウムを用いて、メチル化によりコラーゲンを標識した。この放射標識材料は25 μCi/mgの比放射能を有することが示され、0.01 Mリン酸カリウム緩衝液(pH 7.2) 1 mL量で提供された。
【0196】
この放射標識材料を最初に真空遠心分離(Speed Vac, Savant, Inc.)によりおよそ3時間乾燥し、その後にNovasomeデイクリーム50 μL中での再構成を行い、三方活栓弁を通じて20回、二重注射器(100 μL)の交差押出しにより混合した。このスパイク済のクリームを使用の前に室温で24時間平衡化させた。最終比放射能は、3.82 μg/uLの放射標識コラーゲンがクリーム基剤の一翼を担うクリーム配合物1 μLあたり0.1 μCiと測定された。
【0197】
皮膚調製物の研究:
美容整形後に得られた、皮膚疾患の明らかな兆候のないヒトの摘出顔面皮膚(まぶたおよび耳介前)をこの研究に使用した。これから全ての皮下組織および真皮の下側およそ25%を除去し、これを水不浸透性のプラスチック袋の中に密封し、使用されるまで-70℃以下で貯蔵した。実験の前に、皮膚を融解し、次に水中で注いで、付着血液またはその他の材料を表面から取り除いた。
【0198】
単一の提供者からの皮膚をフランツ拡散セル(0.4 cm2〜0.8 cm2)に適合できるほど十分に大きな、複数のさらに小さな切片に切断した。真皮のチャンバーをリン酸緩衝等張食塩水(PBS)、pH 7.4 ± 0.1の貯留層溶液で最大容積まで満たし、表皮のチャンバーを周囲の実験室環境に開け放しておいた。その後、セルを、真皮の貯留層溶液がおよそ600 RPMで磁気的に撹拌されている拡散装置の中に入れ、その皮膚表面温度を32.0°± 1.0℃で維持した。
【0199】
各皮膚切片の完全性を保証するため、トリチウム水に対するその浸透性を試験生成物の塗布の前に判定した。短時間(0.5〜1時間)の平衡化時間の後、露出した表面全体が覆われるよう点滴器で皮膚の上部全体に3H2O (NEN, Boston, MA, sp. Act. およそ0.5 μCi/mL)を重層した(およそ100〜500 μL)。5分後、3H2Oの水層を除去した。30分でレセプター溶液を収集し、液体シンチレーション計数により放射能含有量を分析した。完全性試験の後、レセプター溶液を複数回交換して、測定可能な残存トリチウムを除去した。
【0200】
投薬およびサンプル収集
皮膚切片への局所試験配合物の投与前に、チムニーをフランツセルから取り除いて、皮膚の表皮表面への十分なアクセスを可能にし、貯留層溶液を新鮮なPBS溶液と交換した。
【0201】
その後、試験生成物を同一提供者の皮膚の複製切片に塗布した。投薬は、配合物5 μL/cm2を送達するように設定された容積移送式ピペットを用いて行った。利用可能な皮膚を考慮して、投薬領域の異なる3つのチャンバーサイズを用いた(0.4、0.5および0.8 cm2)。この用量をピペットの先端で表面全体に広げた。塗布から5〜10分後、フランツセルのチムニー部分を交換した。予備のセルは投薬されなかったが、サンプリングして、解析的分析の間の妨害物質を評価した。
【0202】
試験配合物の塗布から事前に選択された時間間隔(0.5、1、3、7、19、26、43、48時間)の後に、レセプター溶液をそっくりそのまま除去し、新鮮な溶液と交換し、アリコートを分析に供した。
【0203】
最後のサンプルを収集した後に、皮膚の表面を再蒸留脱イオン水で洗浄して、皮膚の表面から未吸収の配合物を収集した。洗浄の後、皮膚をチャンバーから取り出し、表皮と真皮に分けて、各々をその後の放射能含有量の分析のために処理した。
【0204】
分析方法
各サンプルの14C-放射能含有量の分析は、液体シンチレーション分光法によった。各レセプター溶液および各表面洗浄液1ミリリットル容量に、シンチレーション液5〜7 mLを加えた。組織(表皮および真皮)を終夜Soluene-350 (PerkinElmer; ロット番号24-060203)に溶解し、その後、各サンプルにシンチレーション液5〜7 mLを加えた。
【0205】
PerkinElmer Tri-Carb 3100TR液体シンチレーション計測器を用いて、液体シンチレーション分光法により、サンプルを14C含有量について定量化した。各サンプルをそれぞれ5分以上の間、二つ組で計測した。外部標準クエンチ補正法を用いて、1分間の計測数(CPM)を1分間の崩壊数(DPM)に自動的に変換した。データは全てブランクサンプルの同位体バックグラウンドに対して補正された。
【0206】
(表1)平均流束(μg/cm2/時間)としての浸透速度の結果
単回塗布から48時間にわたるヒト死体皮膚を通じた放射性同位体としての14C-コラーゲンの経皮吸収(平均 ± SD まぶた、平均 ± SE 耳介前、n=1〜2の提供者)。

サンプル間の中間点としての時間。
【0207】
(表2)全吸収および質量平衡の結果
単回塗布から48時間にわたるヒト死体皮膚を通じた放射性同位体としての14C-コラーゲンの経皮吸収。塗布用量の割合および全質量(μg)としての平均 ± SD まぶた、および平均 ± SE 耳介前。(n=1〜2の提供者)

【0208】
データから、14C-コラーゲンがNovasomeデイクリーム基剤配合物の中に取り込まれる場合、放射性同位体はヒトの摘出顔面皮膚の中におよび中を通って浸透することが示唆された。
【0209】
本発明をその詳細な説明と共に記述してきたが、先の記述は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例証し、限定はしないよう意図されることが理解されるべきである。他の局面、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10 Kd未満のコラーゲンタンパク質を含む、リポソーム。
【請求項2】
さらにヒアルロン酸を含む、請求項1記載のリポソーム。
【請求項3】
コラーゲンタンパク質がヒトコラーゲン由来である、請求項1記載のリポソーム。
【請求項4】
コラーゲンタンパク質が組換えにより産生される、請求項1記載のリポソーム。
【請求項5】
コラーゲンタンパク質が合成により産生される、請求項1記載のリポソーム。
【請求項6】
コラーゲンタンパク質が約8.5 kdである、請求項1記載のリポソーム。
【請求項7】
コラーゲンタンパク質がSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:2から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項6記載のリポソーム。
【請求項8】
落屑剤、抗アクネ剤、抗しわ剤、ビタミンB3化合物、レチノイド、ヒドロキシル酸、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、キレーター、フラボノイド、抗炎症剤、抗セルライト剤、局所麻酔剤、日焼け剤、皮膚美白剤、皮膚鎮静剤(skin soothing agent)および皮膚治療剤、抗微生物剤および抗真菌剤、日焼け止め剤、コンディショニング剤、構造化剤(structuring agent)、増粘化剤、ならびに保存剤からなる群のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1記載のリポソーム。
【請求項9】
パウシラメラー(paucilamellar)である、請求項1記載のリポソーム。
【請求項10】
コラーゲンタンパク質がα2β1インテグリンに対するリガンドである、請求項1記載のリポソーム。
【請求項11】
10 Kd未満のコラーゲンタンパク質を含むリポソームを含む、美容組成物。
【請求項12】
10 Kd未満のコラーゲンタンパク質が結び付いたシクロデキストリンを含む、対象の皮膚の中に剤を送達するための組成物。
【請求項13】
以下の段階を含む、対象の皮膚の中に剤を投与するための方法:
10 Kd未満のコラーゲンタンパク質を内封している空洞を含んだ担体を含む組成物を、対象の皮膚に接触させる段階であって、
該担体がリポソームまたはシクロデキストリンである、段階。
【請求項14】
担体がリポソームである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
リポソームがヒアルロン酸をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
リポソームが、落屑剤、抗アクネ剤、抗しわ剤、ビタミンB3化合物、レチノイド、ヒドロキシル酸、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、キレーター、フラボノイド、抗炎症剤、抗セルライト剤、局所麻酔剤、日焼け剤、皮膚美白剤、皮膚鎮静剤および皮膚治療剤、抗微生物剤および抗真菌剤、日焼け止め剤、コンディショニング剤、構造化剤、増粘化剤、ならびに保存剤からなる群のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
10 Kd未満のコラーゲン断片を含む組成物を、対象の皮膚に接触させる段階を含む、対象の皮膚にコラーゲンを投与するための方法。
【請求項18】
皮膚が対象の顔面上である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物が一つまたは複数の乳化剤および/または浸透増強剤をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
コラーゲンが皮膚の真皮層に送達される、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2011−508746(P2011−508746A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540922(P2010−540922)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/088413
【国際公開番号】WO2009/086504
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(508101339)
【Fターム(参考)】