説明

改善されたゾル−ゲル法、該方法により得られる生成物及び該生成物を使用して核物質を貯蔵する方法

式X−M−(OR)n−mで示される化合物の溶液の製造、ゾルを得るための該化合物の加水分解、ゲル化、乾燥、緻密化及び焼結を含んでなるエーロゲルを製造するためのゾル−ゲル法。本方法は、放射性物質の水溶液により構成される放射性残留物を処理するために使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善されたゾル−ゲル法並びに該方法により得ることができ、極めて高い機械抵抗及び高い細孔容積により特徴付けられるエーロゲル生成物に関するものであり;さらに本発明は、核物質を、簡単かつ経済的に貯蔵されることができる形状へ変換する方法にも関するものであり、その際にそのような方法は、前記の改善されたゾル−ゲル法の使用を含んでなり:言い換えると、故に本発明は、以下に開示される改善されたゾル−ゲル法の使用を含んでなる放射性排出物を処理し、かつ貯蔵する方法にも関する。
【0002】
エーロゲルはゾル−ゲル法の考えられる生成物の一つである。該エーロゲルは、熱音響遮断及び触媒反応に、並びにガラス又はセラミックガラスを製造するための中間生成物に照準された研究材料として現在主に使用され;さらにそれらは、集積回路の製造における極めて低い誘電率の絶縁層として使用されることができる。
【0003】
該ゾル−ゲル法が、適している前駆物質の溶液(“ゾル”と呼ばれる)から出発して、単一酸化物又は混合酸化物が、三次元固体の形状のもとで又は担体上の薄層として製造される化学的手順であることは公知である。ゾル−ゲル法は、多くの特許刊行物の対象であり、かつ、例えば、次の特許:US-A-4,574,063、US-A-4,680,048、US-A-4,810,674、US-A-4,961,767及びUS-A-5,207,814に開示されている。
【0004】
該出発溶液は一般的に、水、アルコール及びヒドロアルコール混合物の中から選択された溶剤を含有する。該前駆物質は、一般式M(−OR)[ここでMは金属又はメタロイドを意味し、−ORは(一般的に炭素原子1〜4個を有するアルコールからの)アルコール成分であり、かつnはMの原子価を意味する]で示される化合物がより一般的に使用される場合でも、金属又はメタロイドの可溶性塩、例えば硝酸塩、塩化物又は酢酸塩であってよい。より一般的に使用される前駆物質は、式Si(OCHで示されるテトラメトキシオルトシラン(TMOSとして公知)、及び式Si(OCHCHで示されるテトラエトキシオルトシラン(TEOSとして公知)である。
【0005】
ゾル−ゲル法の第一工程は、反応:
M(−OR) + n HO → M(OH) + n ROH (I)
による、前駆物質の水で促進された加水分解であり、その際に水は溶剤であるか又はアルコール溶液の場合には添加される。
【0006】
この工程は通常、一般的に3を下回り、かつ好ましくは約1〜2の範囲内の低いpH値により促進される。
【0007】
第二工程は、反応:
M(OH) + M(OH) → (OH)n−1M−O−M(OH)n−1 + HO (II)
による、前もって得られたM(OH)の縮合である。
【0008】
初めに溶液中に存在する全てのM(OH)種をカバーするこの反応は、開放構造を有する無機酸化物ポリマーを生じさせ、その細孔(porosity)は出発溶剤及び反応(I)において生じるアルコールを含有し;そのような無機ポリマーはゲルと呼ばれる。
【0009】
実際に適用するためには、該ゲルは、その細孔中に存在する液相の抽出を通じて乾燥されるべきである。場合による乾燥法は、単純な溶剤蒸発により実施され;それにより得られたドライゲルは“キセロゲル”と呼ばれる。キセロゲル製造が、時にはゲルが破壊されうる、蒸発の間の細孔壁に対する溶剤の高い毛管力(capillary strengths)のために極度に困難であることは当業者に公知である。
【0010】
ドライゲルを製造するための代替的な方法は、超臨界の(supercritical or ipercritic)溶剤抽出により実施され;それにより得られるドライゲルは“エーロゲル”と呼ばれる。超臨界乾燥において、ゲル細孔液体は、適したオートクレーブの内部で、当該の臨界圧力値及び臨界温度値よりも高い圧力値及び温度値にされる。それゆえ、全ての液体体積は同時発生的に液相から超臨界の流体相へ移動し、かつ細孔に関連した毛管圧力は連続的に出発値から減少された値へ移動し、こうしてキセロゲル製造の場合に蒸発により形成されるメニスカス破壊力(meniscus destructive strengths)を回避する。溶剤超臨界抽出の手順は例えば次の特許:US-A-4,432,956及びUS-A-5,395,805に開示されている。この手順に関する主な問題は、ゲル細孔形成後に通常ゲル細孔中に存在しているアルコールが、一般的に60〜70barを上回る臨界圧力(Pc)及び250℃を上回る臨界温度(Tc)を有するという事実に属している。これらの臨界値は、極度に耐性があり、かつ費用のかかるオートクレーブの使用を強制し;さらに、担体上の薄層の形での(例えば、集積回路の製造工程の1つとしてのエーロゲル誘電状態を発生させることが目的とされる)ゲルの場合に、アルコール及びエステルの臨界温度は、高すぎる可能性があり、かつ担体と又はその上にある他の材料と適合性でない可能性がある。
【0011】
前記問題を克服するための技術は、抽出前に、細孔液体を、より低い臨界定数、特により低いTcを有する液体と交換することにある。例えば、約200℃のTc値を有する、炭化水素、例えばペンタン又はヘキサンを使用することが可能である。さらなる交換は、中間体液体、例えばアセトンを用いて実施されることができるか、又は一般的な手順に従い、ゲル細孔溶剤は、任意の乾燥操作の前に非プロトン性溶剤と直接交換されることができる。
【0012】
エーロゲル製造の過程で、代替的な工程は、アクアゲル液相をキセノンで交換し、抽出し、かつキセノンを回収することを含んでなり、その際にそのような交換は好ましくは液体キセノンにより実施され、かつその抽出は超臨界条件下で実施される。
【0013】
エーロゲルの性質及び構造にも影響を及ぼしている、ゾル−ゲル法の重要なポイントは加水分解/縮合工程にあり、主にpHに関する限り、ゲル化を制御するための分散相制御及びゲル化時間のモニタリングが関係している。それゆえ出願人は、ゲル化を制御するための慎重な分散及び加水分解及びゲル化工程における特別に配慮されるpH値が、前記のいずれのものと異なる特性を有するエーロゲルを製造することを可能にすることを見出し、このことは本発明による第一の対象を定義するものであり、かつそのような種類のまさしくエーロゲルは本発明の第二の対象であり、かつ本発明により完全に含まれている。
【0014】
故に本発明の第一の対象は、次の操作:
a)式
−M−(OR)n−m
[式中、Mは元素の周期表の3、4又は5族に属するカチオンであり;nはカチオンの原子価であり、mは0、1又は2であり、XはR又はORであり、R及びRは、同じか又は異なり、12までの炭素原子数を有する炭化水素基である]で示される少なくとも1つの化合物の水又はヒドロアルコール溶液、又は懸濁液を製造し;
b)上記の化合物を加水分解していわゆるゾルを得;
c)場合により超音波処理し;
d)場合により、加水分解工程の前又は後に1つのM酸化物のコロイド状懸濁液を添加し;
e)ゾルをゲル化し;
f)場合によりゲル細孔中に存在する溶剤を置換し;
g)ゲルを乾燥させ;
h)場合により、それにより得られた生成物を緻密化させるか又は焼結させる
ことを含んでなる、エーロゲルを製造するためのゾル−ゲル法であり、前記方法は、
・該加水分解工程を−2〜+3の範囲内のpHで実施し;
・該ゲル化工程を−2÷+0.5の範囲内に維持したpHで実施し;
・金属前駆物質の慎重な分散を、該加水分解工程の前及び該加水分解工程中に実施する
ことにより特徴付けられる。
【0015】
該ゲル乾燥は好ましくは実質的に超臨界条件下で又は超臨界条件に近い条件下で実施される。
【0016】
加水分解を受ける金属前駆物質は、公知技術に従って、それに適している任意の化合物であってよい。故に、可溶性塩、例えば、硝酸塩、塩化物又は酢酸塩が使用されることができ;さらに、前記の式によるアルコキシド又はアルコキシド混合物が使用されることができ、その際にこの後者が好ましいケースである。とりわけ、概要としてケイ素アルコキシド及び、これらのアルコキシドの中でも、テトラメトキシオルトシラン、テトラエトキシオルトシラン及びテトラプロポキシオルトシランを挙げることができる。
【0017】
該加水分解は、酸の種類の、触媒の存在で実施され、かつ水は溶剤として存在していてよいか、又は興味深い前駆物質のアルコール性溶液に添加されることができ;関連した条件及び手順は、公知技術により、例えば、米国特許第5,207,814号明細書により開示されたものであり、該明細書において加水分解は室温で実施され、かつ好ましくは使用される酸触媒は塩酸、硝酸又は酢酸である。金属酸化物、主に酸化ケイ素は、例えば、前記の米国特許の教示に従い、得られたゾルを用いて乳化させてその性質を変性させることができる。
【0018】
該加水分解は室温で、次のゲル化/縮合に適しているpHに等しいか又はそれとは異なるpHの値で実施され、その際に−2〜+1の範囲内であり;該pH選択は、ゲル化の条件にできるだけ近い条件下で加水分解反応を実施する有利さも評価する当業者の務めである。
【0019】
そしてまた、該加水分解は、連続的で慎重な撹拌が先行するか又は連続的で慎重な撹拌の作用を受けるので、該分散は、ゾル塊の突然の縮合を回避するために慎重に制御される。それゆえ、未だ見たことのない物理的特性及び機械的特性、例えば高い機械抵抗及び著しく幅広い細孔容積を有するエーロゲルが得られる。そしてまた本発明による対象であるエーロゲルは、さらに特別な光学的性質により特徴付けられている。
【0020】
ゾル−ゲル法の他の工程は、関連した文献、特許又は非特許文献に挙げられた十分公知の技術に従い実施されることができる:前記の文献は確実に最も関連した文献である。
【0021】
本発明によるゾル−ゲル法の格別に有利な使用は、放射性廃棄物を回収し、かつ貯蔵する方法におけるその使用である。
【0022】
放射性廃棄物又は放射性排出物とも呼ばれる、放射性残留物は、さらに使用されることができない放射性物質である。故に該残留物は、慎重に貯蔵されなければならないか又は危険でないように排出されなければならない。それらは、原子力発電所(nuclear plants)中で、研究センター中で又は放射性同位体ユーザーにより製造される固体状、液状又はガス状の物質である。放射性廃棄物、とりわけ高活性の液状放射性廃棄物を処理し、かつ状態調節することは、解決されるべき高い特殊化問題を要求する。核燃料処理のためのプラントを管理することから来る主な問題の1つは、ウラン及びプルトニウムが分離された核分裂生成物を含有している放射性液状残留物のための長い貯蔵の必要により与えられている。一般的にそのような処理は、予備濃縮及び十分な放射能崩壊までの、適している遮へいされたコンテナ中での濃縮された生成物のその後の保守にある。通常、該燃料再処理の第一段階から来る、強放射性液状排出物の特別な場合に、該残留物は乾式濃縮(dry concentration)後に、全ての又は実質的に全ての崩壊に十分である時間に亘って、厚いコンクリート壁により遮へいされた、地下貯蔵所内に置かれた適しているコンテナ内部に貯蔵される。
【0023】
この乾式濃縮に関連した問題は、処理された液体の強硝酸性であり;それは蒸発を通じて部分的に除去される一方で、その一部はアルカリにより中和され、このことは固体残留物を形成している塩の量を増大させる。他の問題は、高放射性材料、蒸気状放射性飛沫、及び結晶化された塩のスケール形成のための劣悪な熱貫流のために濃縮操作が困難であることにより与えられる。当該生成物の放射性分解により引き起こされる熱により:表面/体積比を減少させるためにかなり大きな容器を用いることにより、これらの溶液を濃縮することが試みられており、その際に該容器は十分に断熱され、かつ十分に溝が設けられ(ditched)、該操作は、含まれる液体を小さな体積に減少させるためにたくさんの年数を強制する場合でさえ、実施されることができる。
【0024】
次の方法も、小規模で又は単に実験的な方法を通じてすら提案されるか又は適用される方法の中から、引用されることができる:
・埋設するためのコンクリートブロックを製造するための放射性水の使用:コンクリートシックニングの間に該塩は不溶性化合物として固定され、その際にこれらの塩は、それゆえ雨又は地下水により除去不可能である;
・放射性金属イオンを固定するゼオライト又はゼオライト化合物での処理;その後イオン交換されたゼオライトは、か焼されて不溶性化合物に変換され、ついで埋設される;
・乾式蒸発及びその後のガラス質化合物(シリカ、リン酸塩等)と一緒の溶融、これにより地下に貯蔵されるガラスも得る;代替的に、放射性材料をマトリックス細孔内部に組み込むためにコンポジットエーロゲルの使用が提案されている;
・金属るつぼ中での(場合によりフラックスと一緒の)乾式蒸発、ついでこれらも気密に密閉され、地下に貯蔵される;
・低放射性レベル及び希釈された濃度での、アルコキシド及び放射性廃棄物の溶液に関してのゾル−ゲル法を通じてのガラス質体への変換(US 5,494,663)。
【0025】
しかしながら、使用されるか又は単純に実験的に提案された、全ての方法は、費用がかかり、かつ困難な制御操作、含まれる高い体積のための大きい貯蔵空間及び、それゆえ、運搬問題及びコストを要求する。
【0026】
出願人は、液状放射性排出物を回収し、かつ貯蔵する方法における前記の改善されたゾル−ゲル技術の使用が、液体分離並びにガラス固化に関してコストの実質的なカット、最終生成物(本質的にシリカガラス)の極めて高い化学的安定性及び熱安定性、著しい体積減少、ガラス固化された生成物の高い形態学的なたわみ性を与えることにより、今まで示唆された方法に生じる全ての欠点を克服することを可能にすることを見出し、このことは本発明の第三の対象である。
【0027】
故に本発明の対象は、次の操作:
・処理すべき放射性排出物溶液をpH制御し、かつ場合によりそれを−2÷+1.0の範囲内に調節し;
・前述の項目a)の式に属するものの中から選択される化合物の前記溶液を、それ自体として又は水性の又はヒドロアルコール性の溶液又は懸濁液の形状のもとで添加し;
・得られた混合物を加水分解してゾルを形成させ;
・場合により、加水分解工程の前又は後に、M酸化物のコロイド状懸濁液を添加し;
・前述の操作を実施する間に、適切に撹拌し;
・場合によりゾルを超音波処理し;
・ゾルをゲル化し;
・場合により、非プロトン性溶剤でゲル細孔溶剤を置換し;
・ゲルを乾燥させ;
・ゲルを焼結してガラス質体を形成させ;
・ガラス質体を適している材料コンテナ中へ挿入し;
・コンテナ貯蔵する
ことを含んでなる、高放射性レベルでも、放射性物質の水溶液により本質的に構成される放射性残留物を処理し、並びにその後に該放射性残留物を貯蔵する方法にある。
【0028】
前記のような、放射性排出物は、組成が起源に依存する多数の放射性物質の水溶液である。処理を考慮して、それらの排出物は3つのクラスに属する:
・高放射性レベル:10〜10キュリー/m
・中放射性レベル:10−3〜10キュリー/m
・低放射性レベル:10−3キュリー/m未満。
【0029】
本発明による方法は、特に強放射性液体が関係している限り、公知技術の方法に対して著しい利点を示す。前記の式によるM化合物に関して、特別な意味は、テトラメトキシオルトシラン及びテトラエトキシオルトシランの使用により与えられる。
【0030】
挙げられた操作の中で、ゲル乾燥は好ましくは、十分公知の技術に従い、例えば前記の米国特許の開示に従い、実質的に超臨界条件下で、又は超臨界条件に近い条件下で、実施される。
【0031】
ゲル焼結により得られたガラス質体を含ませるのに使用される材料は、当分野で通常使用されるものから選択され、その際にステンレス鋼は好ましいものである。また、コンテナ貯蔵は、十分公知の方法論に従い、例えばコンクリート建築工事により十分保護される地下構造内部で実施される。
【0032】
本発明の開示により実施される、放射性廃棄物の処理方法、並びに改善されたゾル−ゲル法は、次の例によりさらに説明され、本発明の多数の項目をよりよく概説するために明瞭に報告されるが、その意味及び範囲を限定するものではない。
【0033】
実施例
例1(比較):ゲル化制御を伴わない加水分解
3.4モル濃度の水性HNO 300ccを、“duran”ガラスにより製造されかつ内容量800ccを有する実験室用容器中へ移した。6cm長さのマグネチックアンカーをフラスコへ入れた。該フラスコを高出力マグネチックスターラー(FALK、F40 ST シリアルナンバーA973115)の上に載せた。TEOS 100gを、十分撹拌しながら硝酸コンテナに徐々に添加した。選択された撹拌レベルは10レベルスケール内の4の値に相当し、液体がフラスコ内で高い回転速さを有することを可能にした。
【0034】
2つの液体の混合により、透明で見たところ均質な乳濁液が形成された。乳濁液撹拌をTEOS添加後にも続けた。TEOS添加開始から約30分後に、温度は最大値、55℃に達した。開始からおおよそ少し後に温度は40℃に低下し、このことは迅速に進行するゲル化開始を意味していた。45分後にゲル化は完了し、かつフラスコ内容物は事実上固体であった。
【0035】
例2:ゲル化時間制御を伴う加水分解
3.4モル濃度の水性HNO 300mlを、“duran”ガラスにより製造され、かつ内容量800ccを有する実験室用容器中へ移した。6cm長さのマグネチックアンカーをフラスコへ入れた。該フラスコを高出力マグネチックスターラー(FALK、F40 ST シリアルナンバーA973115)の上に載せた。TEOS 100gをメスシリンダー中に秤量して硝酸コンテナに添加した。
【0036】
液体が安定化された回転速さのもとでフラスコから流れ出る(flow escape)ことなく最大回転速さに達したことが注目された。容器中央に深い渦流が存在し、かつ容器端部の近くに来た液体の高い周辺レベルが存在した。吸収された力のレベルは最大であった:前記のスケールに関して10。
【0037】
この時点でTEOSを同じ撹拌処方下に徐々に添加した。
【0038】
2つの液体の乳化速度論は、次の表に報告されている:
【0039】
【表1】

【0040】
ついで澄明なゾルを超音波により処理した(Bronson Sonifier 450を用いて4パワーで3分間)。超音波処理の間に撹拌機を最も低い速さのもとで維持した。
【0041】
30分後、澄明なゾルを、僅かに円錐形であり、かつ蒸発を防止するために調整された2つの透明なポリエチレン型中へ流し込んだ。
【0042】
35分で、2つの試料は、極めて移動性の表面を有して澄明であった。
【0043】
60分で、該試料は、僅かにあまり移動性でない表面を有して依然として澄明であった。
【0044】
95分で、まだ液状試料でゲル化は確実に開始した。
【0045】
4時間と20分後に、2つの試料は実質的に固体であった。
【0046】
当該のゾルと前述の例のゾルとの間の挙動の差は、加水分解段階に対するゲル化段階の遅れの点で並びにこの例の手順においてゲル化段階がゆっくりで徐々に進行する点で明らかであり、この例の手順は工業的な成形方法の中で制御されることができる。例1及び2の実験的な条件の中で単にプログラムされた差は、この例2の過程において実施された、はるかにずっと強くかつ系統的な撹拌であった。
【0047】
例3:超臨界乾燥すべきゲルの状態調節
例2により製造されたゲルを、超臨界条件下で乾燥を受けるのに適するように溶剤交換にかけた。そのために、ゲルを、適している手順を通じて、出発する型から二回蒸留した水のコンテナへ移し、その中へ流し込んだ。コンテナ中での系統的な水交換により、ゲルpHを72時間の時間に亘って約4にした。ついで該液体を、アセトン/水混合物と交換し、その際にアセトンを徐々にアセトン含量99.5%まで豊富化させた。
【0048】
ついでゲルを、適しているオートクレーブ(AU 95種類のBrignole 0523)中で超臨界乾燥させた。オートクレーブサイクル終了時に、エーロゲルは、正味の(net)及び完全な(full)モルホロジーを有し、光学検査でチップ又はクラック及び欠陥を有さずに得られ、その際にまた可能な機械的応力に対して極めて耐性であった。
【0049】
例4:ガラス固化
例3により製造された円柱形のエーロゲルを次のようにガラス緻密化した。
【0050】
該エーロゲルを、不活性雰囲気又は酸化性雰囲気又は腐食性雰囲気下で並びに任意の雰囲気の不在でかなり安全な環境中で1400℃までの処理を可能にするNovara Technologyにより製造された適している緻密化炉の試料バスケットルーム中に配置した。該試料を800℃で酸素か焼し;ついで1350℃よりも高く、しかし1400℃よりも低い温度で、酸素の痕跡を含有するヘリウム中の10%体積でのHCl雰囲気にかけた。サイクル終了時に、シリカガラス円柱が、型(又は当初のゲル)の内容積に対して約2.8分の1だけ直線的に減少したサイズを有して得られた。体積により、緻密化されたガラスは、おおよそ型内容積の22分の1に等しい体積を充填した。
【0051】
例5:高濃度金属カチオンの存在でのゲル化
1.5モル濃度の希HNO 300ccを、500ccプラスチック容器中へ流し込み、かつ約250rpmでプロペラ撹拌し、その際に溶液温度は30℃であった。約5分に亘って、Al(NO 114.0g及びHOを徐々に添加し、溶液温度を21℃に低下させた。プロペラ速さを約450rpmに増加させた。氷浴の使用により、溶液温度は約8℃に低下した。TEOS 100gを滴下漏斗に入れ、プロペラ速さを約800rpmにさらに増加させた。この時点でTEOS添加を徐々に添加し、この添加を、15分後に14℃の温度増加を伴い終了し、すなわち溶液最終温度は22℃であった。
【0052】
ついで溶液を、大きすぎる温度増加を回避するために依然として氷浴を使用することにより、5分間超音波にかけた(Bronson Sonifier 450、4パワー)。極めて澄明に見えるゾルをついで5つの透明な僅かに円錐の型中へ流し込んだ。ゲル化開始は、ゾル流し込み後約4時間で起こった。光学検査で透明であり、かつ見たところ均質であった5つのアクアゲルが得られた。
【0053】
例6:放射性廃棄物に典型的な組成のシミュレーション
1.5モル濃度のHNO 300ccを500ccプラスチック容器中へ流し込み、約250rpmでプロペラ撹拌機を用いて撹拌した。溶液温度は30℃であった。
【0054】
約5分に亘って、Al(NO 114.0g及びHOを徐々に添加し、温度を21℃に低下させた。プロペラ速さを450rpmに増加させた。4.5% b.w.でのFeCl水溶液10.8gを添加した。その後Nd(NO 0.1g及びCe(NO 0.1gを含有する水溶液5gを徐々に添加した。氷浴を用いて溶液温度を約8℃に低下させた。TEOS 100gを滴下漏斗に入れ、プロペラ速さをさらに約800rpmに増加させ;この時点でTEOS添加を徐々に開始し、これを15分後に終了し、その際に14℃の温度は22℃の最終温度まで増加した。該溶液をついで、強い温度増加を回避するために氷浴を依然として使用することにより、5分間超音波にかけた(Bronson Sonifier 450)。かなり液状に見えるゾルをついで僅かに円錐の透明なポリエチレン型中へ流し込んだ。ゲル化開始はゾル流し込み後約4時間で起こった。
【0055】
光学検査で完全に透明であり、かつ見たところ均質であった5つのアクアゲルが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の操作:
a)式
−M−(OR)n−m
[式中、Mは元素の周期表の3、4又は5族に属するカチオンであり;nはカチオンの原子価であり、mは0、1又は2であり、XはR又はORであり、R及びRは、同じか又は異なり、12までの炭素原子数を有する炭化水素基である]で示される少なくとも1つの化合物の水又はヒドロアルコール溶液、又は懸濁液を製造し;
b)上記の化合物を加水分解していわゆるゾルを得;
c)場合により超音波処理し;
d)場合により、加水分解工程の前又は後に1つのM酸化物のコロイド状懸濁液を添加し;
e)ゾルをゲル化し;
f)場合によりゲル細孔中に存在する溶剤を置換し;
g)ゲルを乾燥させ;
h)場合により、それにより得られた生成物を緻密化させるか又は焼結させる
ことを含んでなる改善されたゾル−ゲル法において、
・該加水分解工程を−2〜+3の範囲内のpHで実施し;
・該ゲル化工程を−2÷+0.5の範囲内に維持したpHで実施し;
・金属前駆物質の慎重な分散を、該加水分解工程の前及び該加水分解工程中に実施する
ことを特徴とする、改善されたゾル−ゲル法。
【請求項2】
ゲル乾燥を、実質的に超臨界の条件下又はそれに近い条件下で実施する、請求項1記載の改善されたゾル−ゲル法。
【請求項3】
該式に属するM化合物が、テトラメトキシオルトシラン、テトラエトキシオルトシラン及びテトラプロポキシオルトシランの中から好ましくは選択されている、請求項1記載の改善されたゾル−ゲル法。
【請求項4】
b)の加水分解及びc)のゲル化を、同じpH値で実施する、請求項1記載の改善されたゾル−ゲル法。
【請求項5】
次の特性:高い機械抵抗、幅広い細孔容積及び特別な機械的性質及び光学的性質を有している、エーロゲル。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項記載のゾル−ゲル法により得られる場合の、請求項5記載のエーロゲル。
【請求項7】
次の操作:
・処理すべき放射性排出物溶液をpH制御し、かつ場合によりそれを−2÷+1.0範囲内に調節し;
・前述の項目a)の式に属するものの中から選択される化合物の前記溶液を、それ自体として又は水性の又はヒドロアルコール性の溶液又は懸濁液の形状のもとで添加し;
・得られた混合物を加水分解してゾルを形成させ;
・場合により、加水分解工程の前又は後に、M酸化物のコロイド状懸濁液を添加し;
・前述の操作を実施する間に、適切に撹拌し;
・場合によりゾルを超音波処理し;
・ゾルをゲル化し;
・場合により、非プロトン性溶剤でゲル細孔溶剤を置換し;
・ゲルを乾燥させ;
・ゲルを焼結してガラス質体を形成させ;
・ガラス質体を適している材料コンテナ中へ挿入し;
・コンテナ貯蔵する
ことを含んでなる水性放射性排出物の処理方法。
【請求項8】
前記の排出物溶液に添加した化合物が、テトラメトキシオルトシラン及びテトラエトキシオルトシランの中から好ましくは選択される、請求項7記載の水性放射性排出物の処理方法。
【請求項9】
ゲル乾燥を好ましくは、実質的に超臨界の条件下で又はそれに近い条件で実施する、請求項7記載の水性放射性排出物の処理方法。
【請求項10】
前記の排出物が、高レベル放射能液体により特に構成される、請求項7記載の水性放射性排出物の処理方法。

【公表番号】特表2007−510532(P2007−510532A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529980(P2006−529980)
【出願日】平成16年9月11日(2004.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010174
【国際公開番号】WO2005/040053
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501094502)デグサ ノヴァラ テクノロジー ソチエタ ペル アツィオーニ (15)
【氏名又は名称原語表記】Degussa Novara Technology S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Pisacane 7/B, I−20016 Pero (MI), Italy
【Fターム(参考)】