説明

改善された楽器用の弦

【課題】楽器用の弦及びその作製方法を提供する。
【解決手段】低温樹脂3と組み合せたポリマーカバー26が弦に設けられる。さらに、UV硬化樹脂をフィルムの多孔性の少なくとも一部に適用した多孔質フルオロポリマーのフィルムを含む新規のプラスチック材料を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用の弦に関し、詳しくはその長さに沿って汚れることがあり、及び/又は弾いたときに過度に指の不快感を生じることがある、ギターの弦などのような楽器用の弦に関する。
【背景技術】
【0002】
今日用いられている音楽用の弦には多数の様々なタイプがあり、それぞれ異なる機能を果たしている。典型的なギターでは、高音用にはストレート(巻かれていない)弦(「ガット」、金属又は合成ポリマー(例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたもの)等)を使用し、低音用には巻きつけられた金属又はポリマーの弦(通常は、金属、ナイロン又は同様の材料のコアに巻きつけた金属又はポリマーの巻線)を使用する。巻き弦は、巻き弦のらせん巻きにより供給される単位長さ当たりの弦の追加の質量に応じて、許容できる弦の張力で低音を供給する。既存の弦の設計については、長年にわたり優れた楽音が得られるよう洗練されてきているが、弦については、数多くの面で制限のある状態が続いている。
【0003】
今日、多種多様な弦楽器が用いられている。これらの弦楽器では、例えば、演奏するためギターの弦を指で触れたり、はじいたりする際に、弦の少なくとも一部分に沿って人が接触する必要がある。ストレートゲージの弦が、使用後にごみや油を容易にふき取ることができるのに対して、巻き弦は数時間の演奏後でもごみ、皮膚油、汗で汚染されることになりやすい。ごみやその他の汚染物は弦の巻線に浸透して、巻線の動きを制限してしまうと考えられる。比較的短時間の後、典型的な巻き弦は、明らかにこの汚染が蓄積するために、音楽的に「生気のない」ものとなってしまう。現在のところ、音質を損なった巻き弦は、楽器から取り外して清浄にするか又は交換しなくてはならない。この処置は、頻繁に演奏し音質に気をつかう演奏家にとって煩わしく、時間がかかり且つ費用がかかる。
【0004】
フィンガリングボード(例えば、ギターのフレットボード)に沿って指でさわることを必要とする弦における別の問題として、種々の楽音を出すために、演奏家はたびたびフィンガリングボードにかなりの量の圧力を加えなければならないことがある。このことは、音楽を始めたばかりの学生にとっては気先をくじくことになりかねない。ベテランの演奏家は、通常長年の楽器演奏から指に大きなたこをつくっている。このようなたこがあっても、楽器を演奏することにより生じる圧力と摩擦は、多くの演奏家にとってフラストレーションと疲労又は怪我の主要な原因の一つになりやすい。
【0005】
従来の弦、特に従来の巻き弦についてのさらに別の問題は、弦を横切って迅速にフィンガリングする動作により、しばしば望ましくないノイズが発生することである。例えば、演奏家がフレットボード又はフィンガーボードを横切って迅速に指を動かすと、ギターの巻き弦から「きしり音」が聞こえることがよくある。そのようなきしり音を避けるために、演奏家は、フレットボード又はフィンガーボード上で位置を変えるときに、弦から指を完全に離すよう一生懸命に努力しなければならない。この位置を変える動作により、演奏家の音の変更が遅くなり、さらに疲労も増加する。
【0006】
図1は、通常のクラシックギター10を示す。通常のクラシックギターは、「フレットボード」又は「フィンガーボード」12を有する。これを横切って、複数の弦14a、14b、14c、16a、16b及び16cが張られており、且つそれに対して、弦を押し付けて、弦をつまびいたり、はじいたりしたときに種々の音がでるようにする。典型的なクラッシクギターは、3本の相対的に「高」音(又は「高音域」)用の弦14a、14b、14cと、3本の相対的に「低」音(又は「低音域」)用の弦16a、16b、16cを含む。高音用の弦14は、一般に真っ直ぐの「巻かれていない」材料、例えばガット又は合成材料から形成されている。弦の長さを増加することなく、又はその太さを必要以上に増加することなく非常により低い音を出すために、低音域用弦16では、一般に巻き弦の構成を用いている。
【0007】
典型的な巻き低音域用弦16の形態を、図2と図3に示す弦18の内部に見ることができる。図示されるように、巻き低音域用弦16では、コア20と、コア20の周囲に繰り返し巻きつけられた巻線を用いる。巻線は、張力及びその端部の固着によりコア周囲の所定の位置に保持される。
【0008】
通常の巻き低音域用弦16をしばらく弾くと、弦の「汚染」のためにその音質が失われる傾向がある。巻き低音域用弦16の適切な音質は、演奏中に巻線の個々のラップ24a、24b、24c等の間の動きが可能であるかに左右されると考えられる。ごみ、油、汗等の形態の汚染物は、巻線内に入り込んだ状態になりがちであり、その結果、個々のラップ24の動きが制限される。これは、楽器のフィンガーボードについては、その領域で弦を絶えず扱うため、特に問題となる。その結果、比較的短い期間の演奏の後、巻き低音域用弦の音質が悪くなりはじめる。その場合、音質について気をつかっているプロの演奏家は、適切な音を維持するため、定期的に巻き低音域用弦を取り外して交換したり、きれいにしたりする必要がしばしばある。
【0009】
これらの問題のうち幾つかは、巻き弦の巻線の汚染を避けるか及び/又は弦に何らかの緩衝剤若しくは滑らかできしり音のないカバーを提供するよう、弦を何らかの物質で被覆することができれば、対処できるように思われる。例えば、フェンダー社は、巻き弦の周囲に平らな硬いポリマーテープ(例えばナイロンのようなもの)をらせん巻きしたベースギター弦を提供している。このポリマーテープは、巻き弦に接着されず、また下地の低音域用弦に追従しないが、その代わり、単に低音域用弦の周囲に硬質の平らなテープをきつくらせん状に巻きつけ、ギター弦の各端部で外側に糸を巻きつけてテープが巻きもどらないようにしておくだけで所定の位置に保持される。ポリマーテープは、その側部のへりが隣り合うテープラップに重ならず又は接着せずに隣接して巻きつけられる。
【0010】
フェンダー社の硬質テープラップを使用することにより、いくらか汚染問題の軽減を助長することができるか、又は弦を多少なりとも快適に弾けるようにすることができる(この結果のいずれも、フェンダーが主張したり、確立したものではないようである)が、フェンダーの低音域用ギター弦は、弾くと明らかに「生気のない」音がでる。比較的重く且つ硬いラッピングが、特により高い高調波振動数又は倍音振動数において、弦の振動の量と時間とを制限し、その音を消しあるいは「弱める」ものと考えられる。このような非変形カバーを使用する結果として、この弦は、通常の「明るい」あるいは「生き生きした」ギターサウンドが求められるほとんどのギター用途に適さない。
【0011】
さらに、より最近の改善された楽器用の弦が、例えば、Hebestreitらによる特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6及び特許文献7に開示されている。これらの特許は、種々の巻き弦、例えば、中央コア及び低音を作り出すのに使用されるらせん状巻線と、巻き弦の周囲又は巻き弦に適用される種々のポリマーカバー又はコーティングとを有する弦を開示している。図2及び図3に、Hebestreitらにより開示されている代表的な巻き弦を示す。図示されているように、ポリマーカバー26は、弦の巻線の回りにらせん状に巻きつけたポリマー材料を含む。好ましいカバーは、巻き弦を包み且つ巻き弦を汚染から保護する1つ若しくは複数のテープ、シート又はチューブ形態の多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。カバーは、楽器の通常の音を著しく低下させないよう選択及び適用される。したがって、カバーは、実質的に非湿潤カバーであるとして開示されている。これらの特許の教示にしたがって製造される商業的に入手可能な製品は、商標ELIXIR(登録商標)弦としてW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手できる。ELIXIR(登録商標)弦では、非常に優れた音質を確保しながら、上記問題(例えば、弦の汚染、きしり雑音等)が解決された。
【0012】
ギターの弦は、具体的には少なくとも4つの一般的なタイプのギター、即ち、アコースティックギター、エレキギター、ベースギター及びクラシックギターに関して設計されていることが周知である。アコースティックギター及びエレキギター用のギター弦には、一般的に鋼製の高音用弦、及び鋼製コアとこの鋼製コア周囲の金属巻線(例えば、真鍮等)とを含むことにより所望の低音を出すようにした低音用弦(以下、「巻き弦」と称する)がある。ベースギターは、一般的に鋼製コアと金属巻線の構成を含んで成る巻き弦だけを含む。クラシックギターは、動物の腸(以下、「ガット」と称する)又は合成樹脂材料、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、それらのコポリマー、又はより最近導入されたポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(以下、まとめて「合成」と称する)製の高音用弦を含む。クラシックギター用の巻き弦は、コアの周囲に金属巻線を含むことにより所望の低音が得られるようにした(マルチフィラメント構成であることができる)ガット又は合成コアを一般的に含み、鋼製コアを含む巻き弦と同じ多くの問題(例えば、汚染、望ましくないきしり雑音等)を有する。ガット又は合成コア材料を含む楽器用の弦は、典型的にはクラシックギターに関して使用されるが、このような弦は、他の楽器にも使用することができる。したがって、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合には、「クラシックギター用弦」は、コアとしてガット又は合成材料を有する任意の楽器用弦を含む。
【0013】
多くのクラシックギター用弦で使用されるコア材料は溶融温度が比較的低いため、Hebestreitらにより教示された弦にカバー材料を取り付けるための高温プロセスのうち幾つかは、感温性のガット又は合成コア材料に適用するには困難な場合がある。したがって、感温性のガット又は合成コアを有する楽器用の弦に好適なカバー材料、並びにこのようなカバーを下地材料に影響しないように適用する方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,339,499号
【特許文献2】米国特許第4,382,358号
【特許文献3】米国特許第6,528,709号
【特許文献4】米国特許第6,248,942号
【特許文献5】米国特許第5,907,113号
【特許文献6】米国特許第5,883,319号
【特許文献7】米国特許第5,801,319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、このようなカバーを楽器用の弦に提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、改善された弦、詳しくは通常の弦よりも長い時間にわたって汚染に対して抵抗性である一方で、通常の生き生きした音に近い音を維持するガット又は合成材料を含む弦を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、改善された巻き弦、詳しくは通常の弦よりも弾くのが容易及び/又は快適であるガット又は合成材料を含む弦を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、改善された巻き弦、詳しくは演奏家の指が弦に沿って移動するときに望ましくない雑音を生じにくいガット又は合成材料を含む弦を提供することである。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、このような弦、詳しくはガット又は合成材料を含む弦の製造方法を提供することである。
【0020】
本発明のこれら及び他の目的は、以下の説明を検討することから明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、楽器用の改善された弦及びその製造方法等を含む。
【0022】
本発明の弦は、通常の巻き弦、例えば、鋼、ガット又は合成材料を含む中央コアと、低音を作り出すのに用いられるらせん状巻線(例えば、金属又はポリマー)とを有する弦、並びに低温樹脂と組み合せたポリマーカバーを用いることができる。ポリマーカバーは、その長さの少なくとも一部分に沿って弦を被覆する。「低温樹脂」という語が本明細書で用いられる場合には、約300℃未満の温度で処理したときに硬化するか又は耐久性のある結合を形成する任意の樹脂を指すことを意図している。より好ましくは、この樹脂は、約275、250、225、200、175、150、125、100、75、50又は25℃未満で硬化するか又はこのような耐久性のある結合を形成するものを含む。
【0023】
ポリマーカバーは、低温樹脂をポリマーカバーの1つ又は複数の表面に適用することにより低温樹脂と組み合せることができる。本発明の他の実施態様においては、ポリマーカバーは、少なくとも幾らかの多孔性を含むことができ、この多孔性の少なくとも一部が低温樹脂で満たされている。本発明のさらに他の実施態様においては、ポリマーカバーは、少なくとも幾らかの多孔性を含むことができ、この多孔性の少なくとも一部が低温樹脂で満たされ、且つ低温樹脂がポリマーカバーの少なくとも一方の表面に適用されている。
【0024】
本発明のある態様においては、好適な低温樹脂をポリマーカバーの少なくとも一方の表面に適用でき、この低温樹脂は、弦とカバー材料との間に耐久性のある結合を形成することができる。
【0025】
種々様々な下地の弦材料との最も高い適合性を提供するよう、室温又は室温付近の温度で、例えば、感圧接着剤、UV又は他の光若しくは放射線硬化性樹脂等の使用を介して適用及び必要に応じて硬化できる樹脂材料を提供することが望ましい場合がある。
【0026】
特に好ましい樹脂は、例えば、ASTM D1238(押出式可塑度計による熱可塑性プラスチックのメルトフローレート)によって測定されるように、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(MFR)を有する熱可塑性樹脂を含む。低温で硬化するか又は耐久性のある結合を形成するさらに好ましい樹脂として熱硬化性樹脂がある。特に好ましい樹脂は、UV光への露光を介して硬化することができる樹脂を含む。
【0027】
本発明の作用は、添付図面とともに検討すれば以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】クラシックギターの四分の三斜視図である。
【図2】従来技術の被覆弦構成を部分的に切断した四分の三等角図である。
【図3】図2の線3−3に沿った横断面図である。
【図4】フィルムの多孔性の少なくとも一部を樹脂で満たした本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図5】フィルムの多孔性の実質的にすべてを樹脂で満たした本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図6】フィルムの多孔性の少なくとも一部を樹脂で満たし、且つフィルムの一方の表面に比較的薄い樹脂層を設けた本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図7】フィルムの多孔性の実質的にすべてを樹脂で満たし、且つフィルムの一方の表面に比較的薄い樹脂層を設けた本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図8】フィルムの多孔性の実質的にすべてを樹脂で満たし、且つフィルムの両面に比較的薄い樹脂層を設けた本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図9】フィルムの多孔性の少なくとも一部を樹脂で満たしているが、樹脂がフィルム表面と一致していない本発明の多孔質フィルムの概略図である。
【図10】(a)〜(c)は本発明による弦の構成を示す。
【図11】(a)〜(c)は本発明による弦の構成を示す。
【図12】(a)〜(c)は本発明による弦の構成を示す。
【図13】(a)〜(c)は本発明による弦の構成を示す。
【図14】(a)及び(b)は本発明による弦の構成を示す。
【図15】例1、例3及び例4に従って形成した弦の耐久性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、一般的に改善された楽器用の弦に関する。
【0030】
本発明は、弦(好ましくは巻き弦)を、その長さの少なくとも一部分に沿って、低温樹脂と組み合せたポリマーカバーでラッピングすること(又は被覆すること)を含む。ポリマーカバーは、1)低温樹脂をポリマーカバーの1つ若しくは複数の表面に適用すること、2)少なくとも幾らかの多孔性を含み、該多孔性の少なくとも一部が低温樹脂で満たされたポリマーカバーを利用すること、又は3)少なくとも幾らかの多孔性を含み、該多孔性の少なくとも一部が低温樹脂で満たされ、且つ低温樹脂がポリマーカバーの少なくとも一方の表面に適用されたポリマーカバーを利用することにより、低温樹脂と組み合せることができる。
【0031】
本発明のある態様においては、好適な低温樹脂を、ポリマーカバーの少なくとも一方の表面に適用することができ、この低温樹脂は、弦とカバー材料との間に耐久性のある結合を形成することができる。
【0032】
種々様々な下地の弦材料との最も高い適合性を提供するよう、室温又は室温付近の温度で、例えば、感圧接着剤、UV又は他の光若しくは放射線硬化性樹脂等の使用を介して適用及び必要に応じて硬化できる低温樹脂材料を提供することが望ましい場合がある。
【0033】
特に好ましい低温樹脂は、例えば、ASTM D1238(押出式可塑度計による熱可塑性プラスチックのメルトフローレート)によって測定されるように、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(MFR)を有する熱可塑性樹脂を含む。低温で硬化するか又は耐久性のある結合を形成するさらに好ましい低温樹脂として熱硬化性樹脂がある。特に好ましい低温樹脂は、UV光への露光を介して硬化することができる樹脂を含む。
【0034】
本発明のポリマーカバーは、弦の巻線を操作中の汚染からシールする役目を果たし、一方で、個々のラップの動きを制限するという問題を回避する。さらに、多孔質のポリマーカバーが使用される場合には、カバーの多孔性の少なくとも一部又は実質的にすべてを樹脂で満たすことにより、カバー材料の質量及び他の特性を変更することができる。
【0035】
ギターに使用するには、弦は、少なくともフレットボードに沿って被覆されることが重要であると考えられる。弦をかき鳴らしたり、つまびいたり、はじいたりする領域において弦を被覆しないままにし、カバーが演奏の進行中に与えられる指の爪などからの厳しい摩耗にさらされないようにすることが望ましい場合がある。しかしながら、本発明の好適な弦は、弦のストラミング、ピッキング又はプラッキング領域(一般に、図1におけるサウンドホール13の領域)の全面に及ぶカバーを含むことができる。本発明のある態様においては、弦は、ブリッジ11からフレットボード12の全面にわたって及ぶ少なくとも一部に沿って被覆されている。本発明のさらなる態様においては、弦の全長が被覆されている。
【0036】
本発明の多孔質ポリマーカバーの態様は、使用中の実質的な摩損及び摩耗に耐えるよう変更できることが見出された。耐摩損性及び耐摩耗性は、例えば、使用される樹脂の注意深い選択、ある特定の充填剤の添加、及び樹脂で満たされる多孔性の量によって改善することができる。したがって、樹脂のタイプ、使用される樹脂の量及び充填剤(使用する場合)を注意深く選択することにより、弦のストラミング/ピッキング部分に適用するピック及び/又は指の爪の摩損に耐えるよう、極めて耐久性のある耐摩耗性カバーを作製することができる。
【0037】
本発明はまた、弦の生き生きした音が損なわれるのを最小限に抑えるとともに、弦の汚染問題を解決する。本発明のカバーは、演奏中に巻線のラップが移動できるほど十分に変形可能である。好ましくは、カバーは、それが巻線に少なくとも部分的に付着した場合でも、ラップが比較的自由に移動できるほど十分に変形可能である。
【0038】
「変形可能」という語が本明細書で用いられる場合には、カバー材料が、楽器用の弦により受ける通常の圧力及び応力下でその形状を変える如何なる処置又は状態も含む。本発明で用いられる変形可能なカバーは、弦の長手方向軸に沿って弦の巻線が普通に移動することを可能とし、一方で、圧力又は応力を取り除いた際に、カバーがその最初の形状に戻りやすいよう少なくとも幾らかの回復(即ち、弾性)を含むことが特に好ましい。本発明のカバーは、弦の音質を維持するため、弦の長さに沿って十分に変形可能であるべきである。
【0039】
本発明のポリマーカバーとして使用するのに好適な材料は、フルオロポリマー;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、特には多孔質の延伸PTFE(ePTFE);フッ素化エチレンプロピレン(FEP);超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン;パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA);ポリウレタン;ポリプロピレン;ポリエステル;ポリイミド;及びポリアミドを含むがそれらに限定されない。
【0040】
本発明は、実質的に非多孔質のポリマーカバー材料の使用を含むが、特に好ましいのは多孔質のカバー材料であり、より好ましくは多孔質のフルオロポリマーフィルムであり、PTFE及びePTFEがさらにより好ましい。多孔質ポリマーカバーの多孔性は、樹脂で部分的又は実質的に完全に満たすことができる。例えば、比較的少量の樹脂を、フィルムの多孔性の選択部分に供給して、フィルムの多孔性のほとんどを満たさないままにすることができる。これにより、合計のフィルム質量をより低くすることができ、音質をより良くすることができる。本発明のある態様においては、カバーの一方の側からもう一方の側へ、カバーの多孔性全体に均一に樹脂を分布させ、少なくとも幾らかの多孔性を依然として満たさないままにすることができる。さらに、本発明のさらなる態様においては、フィルムの多孔性の実質的にすべてを樹脂で満たすことで、おそらくより良好な耐摩耗性とより良好な接着性を得ることができる。しかしながら、多孔性を十分に満たすことにより、音質が悪くなり、フィルムの質量が増大する場合がある。
【0041】
図を参照すると、図4は、多孔質のカバー材料1を示し、多孔性2の少なくとも一部が樹脂3で満たされている。図5は、多孔性2の実質的にすべてが樹脂3で満たされている多孔質カバーを示す。図6は、多孔性2の少なくとも一部が樹脂3で満たされ、樹脂4の追加の表面層がフィルムの一方の表面に供給されている本発明のある態様を示す。図7は、多孔性2の実質的にすべてが樹脂3で満たされ、樹脂4の追加の表面層がフィルムの一方の表面に供給されている本発明のある態様を示す。最後に、図8は、多孔性2の実質的にすべてが樹脂3で満たされ、カバーの両表面に樹脂4及び5の表面層を供給した本発明のある態様を示す。任意の量の多孔性を有するカバーを使用できるが、カバーは、樹脂で満たされる前に50%以上の多孔度を有することが好ましい。さらに、単位面積当たりの質量が5g/m以下である多孔質カバーが特に好ましい。カバーに樹脂を提供したり、吸収させたり、あるいは満たしたりした後、カバーの単位面積当たりの好ましい質量は6g/m以下である。
【0042】
好ましいカバー材料は、一軸延伸ポリテトラフルオロエチレン等の多孔質フルオロポリマー材料である。この材料は、被覆した弦について優れた音質を維持する性質とともに卓越した耐久性を示した。多孔質延伸PTFE、例えば、米国特許第3,953,566号、同第3,962,153号、同第4,096,227号及び同第4,187,390号にしたがって作製したものは、ポリマーのノードと相互接続用フィブリルとの多孔質網状組織を含む。これらの種類の材料は、デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から種々の形態で商業的に入手可能である。
【0043】
延伸PTFEは、PTFEを加熱して、上記特許に記載されているように、少なくとも1つの方向に伸長することにより急速に延伸される場合に形成される。得られた延伸PTFE材料では、延伸方向の優れた強度、優れた高可撓性及び適合性を含めて、幾つかの優れた特性が得られる。興味深いことに、延伸PTFE材料はかなり強く、延伸方向に比較的非変形性であるが、フィブリルのミクロ構造の配向特性により、材料は、伸長方向以外の方向では比較的変形性で且つ容易に歪曲する。公知のように、延伸PTFEの強度量と変形性は、延伸の手順を変えることにより調整でき、延伸の方向及び量を変化させることにより、広範囲の強度、多孔性及び種々の方向における変形性を提供する。
【0044】
「延伸PTFE」という語が本明細書で用いられる場合には、ポリマー材料の比較的大きなノードから延びているフィブリルを有するわずかに延伸した構造から、ノード点で単に互いに交差するだけのフィブリルを有する極度に延伸した構造までの範囲内を含め、ノードとフィブリルの構造を有する如何なるPTFE材料も包含しようとするものである。構造のフィブリルの特徴は顕微鏡検査により同定される。ノードはいくつかの構造については容易に同定することができるが、多くの極度に延伸した構造は、ほとんどもっぱらノードがフィブリルの交点としてのみ現れるフィブリルから成る。
【0045】
低温樹脂は、約300℃未満の温度で処理したときに硬化するか、又は耐久性のある結合を形成する任意の樹脂を含む。好適な低温樹脂は、任意の好適な熱硬化性樹脂を含む。例えば、好適な熱硬化性樹脂は、エポキシ(アクリル化エポキシを含む)、ポリウレタン、フェノール樹脂などを含む。さらに、好適な熱可塑性樹脂は、ASTM D1238(押出式可塑度計による熱可塑性プラスチックのメルトフローレート)によって測定されるように、約300℃未満の試験条件温度のもと、5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(MFR)を有する熱可塑性樹脂を含む。好適な熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン類、並びにフルオロポリマー類、例えば、THV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン)、HTE(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレン)、EFEP(エチレンテトラフルオロエチレン系コポリマー)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)及びPVDF(ポリフッ化ビニリデン)並びにそれらの混合物を含む。樹脂を加熱したときに硬化するか又は耐久性のある結合を形成することができる熱活性化樹脂、例えば、THV220(Dyneon LLCから入手可能なテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン)並びに化学反応を介して硬化させることができる樹脂、例えば、公知の湿分硬化接着剤(例えば、ポリウレタンプレポリマー等)又は他の化学活性化接着剤を使用することができる。
【0046】
好ましい実施態様においては、低温樹脂はUV硬化性樹脂を含む。UV硬化性は、UV光下で反応して硬化するか又は耐久性のある結合を形成する材料として規定される。UV光は、好適な電圧、好適な強度及び好適な波長を有するランプにより提供することができる。UV光による硬化は、任意の好適な時間について実施でき、硬化される試料とUVランプとの間の距離は、任意の好適な距離であることができる。上記パラメータのすべては、当業者により容易に決定できる。本発明のある態様においては、UV硬化性材料は、可視光に対しても感受性であることができる。しかしながら、好ましい条件は、UVスペクトル(100〜400nm)下にしか存在しない。好ましい範囲は、UVAスペクトル(320〜390nm)内にある。この範囲においては、下地のコア材料は、弦の処理中に損傷することはない。好適なUV硬化性樹脂は、例えば、アクリル化エポキシ類、アクリレート類、ウレタンアクリレート類、ウレタンメタクリレート類、シラン類、シリコーン類、エポキシド類、エポキシメタクリレート類、トリエチレングリコールジアセテート及びビニルエーテル類を含む。これら樹脂の具体例は、アクリル化脂肪族オリゴマー類、アクリル化芳香族オリゴマー類、アクリル化エポキシモノマー類、アクリル化エポキシオリゴマー類、脂肪族エポキシアクリレート類、脂肪族ウレタンアクリレート類、脂肪族ウレタンメタクリレート類、アリルメタクリレート、アミン変性オリゴエーテルアクリレート類、アミン変性ポリエーテルアクリレート類、芳香族酸アクリレート、芳香族エポキシアクリレート類、芳香族ウレタンメタクリレート類、ブチレングリコールアクリレート、ステアリルアクリレート、脂環式エポキシド類、シクロヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、エポキシメタクリレート類、エポキシダイズアクリレート類、グリシジルメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、オリゴエーテルアクリレート類、ポリブタジエンジアクリレート、ポリエステルアクリレートモノマー類、ポリエステルアクリレートオリゴマー類、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ステアリルメタクリレート、トリエチレングリコールジアセテート、及びビニルエーテル類を含む。好ましいUV硬化性樹脂は、例えば、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類を含む。
【0047】
樹脂を選択する際には、樹脂が、弦の巻線を互いに接着させるという望ましくない作用を有し、それによって弦の振動が制限される場合があることに留意することが非常に重要である。
【0048】
多孔質ポリマーカバー材料を使用する場合には、多孔質ポリマーカバーの多孔性の少なくとも一部又は実質的にすべてを低温樹脂で満たすことができる。さらに、低温樹脂を、カバーの一方又は両方の面に連続又は不連続コーティングとして設けることもできる。使用される樹脂の厳密な量は、いくつかの事柄に依存している。例えば、より多くの樹脂を添加することで、耐久性と耐摩耗性をさらに改善することができるが、被覆された弦のより高い周波数を低下させることもある。樹脂をより少なくすると、耐久性がより低くなり且つ耐摩耗性を低下させる結果となる場合がある。しかしながら、樹脂をより少なくすると、被覆された弦のより高い周波数を維持できる傾向にある。
【0049】
多孔質ポリマーカバーの多孔性への樹脂の提供を助長するのに、溶媒を利用することが望ましい場合がある。溶媒材料/樹脂の比はさまざまであることができ、当業者により容易に決定できる。溶媒/樹脂が重量で50/50の溶液が、特に適していることが見出された。好ましい溶媒材料は、当業者には容易に明らかであり、例えば、アルコール類、ケトン類などがある。好ましい溶媒はメチルエチルケトン(MEK)である。溶媒材料を利用すると、多孔質ポリマーカバーの多孔性の少なくとも一部に樹脂を所望とされるよう提供した後、溶媒材料を容易に除去又は取り除くことができる。
【0050】
本発明のさらなる態様においては、低温樹脂を好適な充填剤と組み合せる(例えば、混合、配合等)ことができる。好適な充填剤は、例えば、セラミック、金属、金属被覆された材料、金属化された材料、カーボン及びポリマーを含むことができ、これらは任意の好適な形態(例えば、微粒子、繊維等)で提供することができる。充填剤は、被覆された弦の特定の性質を変更(例えば、導電率の改善、耐摩耗性の改善等)するのに望ましい場合がある。例えば、エレキギター又はエレキベースギターで使用するためには、カバーに導電性の充填剤(即ち、ポリマーカバーよりも導電性の充填剤、例えば、金属、カーボン等)を提供することが特に有益な場合がある。カバーに導電性の充填剤を提供することにより、より良好な音質の弦を得ることができる。特定のポリマーカバー材料により、下地の弦が電気絶縁され、そうして、望ましくないハミングノイズが生じる場合がある。導電性の充填剤を利用することにより、ハミング又は他の望ましくないノイズを低減することができる。それゆえ、本発明のこの態様によれば、任意の好適なポリマーカバー材料(多孔質又は実質的に非多孔質)は、好適な充填剤(及び特には導電性の充填剤)をカバーの一部、全体に、及び/又はその一方若しくは両方の面上に配置させて含むよう製作することができる。
【0051】
溶媒の使用は、多孔質カバーの多孔性を樹脂又は樹脂/充填剤の組み合せで少なくとも部分的に満たす場合に特に有用なことがある。これは、多孔質カバーの多孔性に充填剤を導入する特に好ましい方法であることができる。
【0052】
好適な樹脂の適用手段は、当技術分野で公知の任意の方法を含む。多孔質ポリマーカバーに関して、好適な樹脂の適用手段は、例えば、コーティング技術(例えば、ディップコーティング)、溶媒吸収、真空補助コーティング、圧力補助コーティング、ニップコーティング、及び多孔質ポリマーカバーの多孔性の少なくとも一部に樹脂が満たされる他の好適な手段を含む。
【0053】
上記のように、好ましい多孔質ポリマーカバーは延伸PTFEである。延伸PTFEの多孔性の少なくとも一部が低温樹脂で満たされる。本発明のある態様においては、延伸PTFEフィルムの多孔性の実質的にすべてが低温樹脂で満たされる。さらに、延伸PTFEの1つ又は複数の表面は、低温樹脂の比較的薄い表面層を設けることができる。このような樹脂の1つ又は複数の表面層は、連続又は不連続であることができる。好ましい実施態様においては、樹脂の1つ又は複数の表面層は連続層である。好ましくは、フィルムに樹脂/溶媒溶液を吸収させ、そうして樹脂をフィルムの多孔性に良好に浸透させる。吸収は、まず樹脂/溶媒溶液を準備し、次にこの溶液を延伸PTFEのような多孔質フィルムと組み合せることにより達成される。アルコール類及びケトン類などの溶媒は、樹脂を溶解することができるので、樹脂は多孔質フィルムの多孔性に浸透し、それをふさぐことができる。好適な溶媒中に溶解することができる多くの好適な樹脂(例えば、ウレタン類、エポキシ類等)がある。本発明のある態様においては、樹脂は、UV硬化性ウレタン−アクリレートである。この樹脂は、例えば、加熱及び化学反応を介した他の機構によっても硬化する。
【0054】
延伸PTFEフィルム(又は他のポリマーカバー材料)に供給される樹脂の質量は、溶媒/樹脂溶液中の溶媒と樹脂の比、及びその溶液を適用する速度により調節することができる。樹脂/溶媒溶液をフィルム表面に接触させた後、拡がり機構を使用して樹脂/溶媒溶液を散布することができる。フィルムが樹脂/溶媒溶液を受け入れ又は吸収すると、フィルムの機械的特性が変化して、収縮する傾向を有する場合がある。フィルムを安定化させるため、この工程に続いて、フィルムに好適なライナーを提供することができる。好適なライナー材料の例は、Accurate Plastics社から入手可能なACCUPLY(登録商標)Laminating Release Filmである。別の好適なライナー材料は、シリコーン被覆の紙であることができる。いずれにしても、ライナーとフィルムを互いに接触させ、強制空気炉に入れることができる。ライナーのない側を空気流に向けて配向させたフィルムの平坦側を横切って、加熱空気を吹き付けることができる。これにより溶媒を取り除いて、フィルムの多孔性内に樹脂を残す。フィルムをライナーから取り外した後、フィルムを弦に適用することができる。
【0055】
この方法には、いくつかの異なる実施態様がある。例えば、図9に示すように、多孔性2の一部のみを満たした、カバーの表面とは一致しない樹脂3で部分的に満たされたカバー1がある。さらに、図4〜図8において先に説明し且つ図示した実施態様がある。
【0056】
低温樹脂がポリマーカバーの少なくとも一方の表面に設けられるか、又は低温樹脂がカバーの多孔性を少なくとも部分的に満たすか若しくはそれに提供され(溶媒を使用していれば、その溶媒を取り除き)、次いで、カバーを弦と接触させて配置することができ、次いで、低温樹脂を硬化することができる。
【0057】
カバーを適用する好ましい方法が、米国特許第5,883,319号に記載されている。好適な弦の構成は、例えば、米国特許第5,883,319号の図2〜7において示されたのものを含む。特に好ましい構成は、図2に示すように、弦の周囲にカバー材料をらせん状に巻きつけることを含む。さらに好ましい限定的でない構成が、図10〜図14に示される。具体的には、図10(a)は、巻線22を巻きつけたマルチフィラメントコア材料20を含むクラシックギター用の弦構成を示し、カバー30が、巻線22の周囲に巻きつけられた「シガレット」ラップとして提供されている。図10(b)は、図10(a)の「b−b」に沿った図10(a)の縦断面図である。図10(c)は、図10(a)の「c−c」に沿った図10(a)の断面図である。図11(a)は、巻線22を巻きつけたマルチフィラメントのコア材料20を含むクラシックギター用の弦構成を示し、カバー30が、マルチフィラメントコア20の周囲に巻きつけられた「シガレット」ラップとして提供されている。図11(b)は、図11(a)の「b−b」に沿った図11(a)の縦断面図である。図11(c)は、図11(a)の「c−c」に沿った図11(a)の断面図である。図12(a)は、巻線22を巻きつけた六角断面を有するコア材料20を含むギター用の弦構成を示し、カバー30が、巻線22の周囲に巻きつけられた「シガレット」ラップとして提供されている。図12(b)は、図12(a)の「b−b」に沿った図12(a)の縦断面図である。図12(c)は、図12(a)の「c−c」に沿った図12(a)の断面図である。図13(a)はコア材料20を含むギター用の弦構成を示し、カバー30がコア材料20を被覆している。この構成は、巻いていない又は高音の弦がカバー材料を備えている本発明のある態様を示している。図13(b)は、図13(a)の「b−b」に沿った図13(a)の縦断面図である。図13(c)は、図13(a)の「c−c」に沿った図13(a)の断面図である。最後に、図14(a)は、巻線22を巻きつけたマルチフィラメントコア材料20を含むギター用の弦構成を示し、カバー30を巻線材料20の周囲に巻きつけた後、この巻線をマルチフィラメントコア材料20に適用している。図14(b)は、図14(a)の「b−b」に沿った図14(a)の縦断面図である。
【0058】
特に好ましいコア材料はガット又は合成材料を含むが、金属コア(例えば、ステンレス鋼)もまた、本発明のカバーを使用することにより利益を得ることができる。しかしながら、このカバーは、クラシックギター用の弦と組み合せて使用した場合に特に好ましいものとなる。
【0059】
ガット及びナイロンは、クラシックギター用の弦に関して典型的なコア材料であるが、本発明のクラシックギター用の弦に関して好ましいコア材料はPEEKである。
【0060】
PEEKの弦は、ナイロンよりも明るい初期サウンドと高い耐熱性を提供する。
【0061】
使用するコア材料のタイプに関係なく、弦にカバーを設けた後、低温樹脂を硬化させて本発明の被覆弦を得ることができる。
【0062】
使用される特定の硬化機構、例えば、熱、UV線及び化学反応は、使用される樹脂のタイプに左右される。1つの好ましい樹脂は、加熱及び/又はUV線を介して硬化できるウレタン−アクリレートである。合成コア弦上でこの樹脂を硬化するための好ましい機構は、比較的低温で適用できることからUV線である。
【0063】
上記したように、高温プロセスは、合成成分を有する弦の音の質を低下させる場合がある。質の低下した音は、高周波数強度又は明るさの減少として観測される。これに関して、ナイロン6,6のコアを用いて作製した弦の音は、約120℃より高い温度で処理したときに質が低下することがある。PEEKのコアを用いて作製した弦の音は、約150℃より高い温度で処理したときに質が低下することがある。したがって、本発明のある態様において、好ましい低温樹脂は、約150℃以下の温度、本発明のさらなる態様では、約120℃以下の温度で硬化できる樹脂を含む。
【0064】
いくつかの樹脂に必要とされるより高温の処理は、その処理がこれらの弦と組み合せて使用される場合に音の質を低下させることがある。Hebestreitらは、好ましい材料はFEPであると記載している。FEPは、巻き弦の周囲に巻きつけられた延伸PTFEのカバー材料にコーティング材料として提供される。この特許に記載されているように、巻き弦の構成物は300℃を超える温度で処理される。これらの高温で合成弦を処理することにより、音楽的にも、機械的にも、弦が損なわれる場合がある。
【0065】
UV線によって樹脂を硬化するため、被覆弦をPTFEシートよりも高い張力下に置くことができる。張力により被覆弦が真っ直ぐに保たれる。PTFEは反射表面として作用し、弦の長さの範囲に及ぶべきである。UV硬化プロセスのための重要なパラメータは、W/cmで測定されるUV光のスペクトル強度、及びJ/cmで測定されるUV光のスペクトル線量である。任意の好適なパラメータが有用な場合があるが、好ましいUVスペクトルはUVA(320〜390nm)である。UVAスペクトルの好ましい強度及び線量は、それぞれ少なくとも1.3W/cm及び4J/cmである。UV炉を出た際、弦は、樹脂が硬化したことを示す不粘着性表面を有しているべきである。
【0066】
本発明のある態様においては、それぞれが縦方向に伸長された少なくとも2層の延伸PTFEが提供され、この延伸PTFE層のそれぞれは互いに異なる角度で巻きつけられている。これは、それぞれ弦の長軸の反対側端部から測定されるほぼ等しいが反対のピッチ角で以って弦上に適用される2つの連続したらせん状ラッピングにより達成される。即ち、第1ラッピングと第2ラッピングのピッチ角は弦の反対端から測定される。この構成により、弦の長さに沿って良好な変形性を維持しながら優れた強度及び耐久性が得られると考えられる。
【0067】
当然ながら、巻き弦だけでなくストレート(非巻き)弦用のポリマーカバーを提供することもできる。ストレート弦上へのこのような被覆によって、特に滑性が増し、その結果、より速く且つ快適な演奏が可能となる。上記のように、必要に応じて、弦の長さの一部のみに沿ってカバーを提供することができる。
【0068】
本発明はまた、低温樹脂がフィルムに適用される多孔質フルオロポリマーフィルムの新規の実施態様に関する。さらに、本発明のギター弦の実施態様と同様に、フルオロポリマーフィルムの多孔性は、低温樹脂で部分的又は実質的に完全に満たすことができ、さらにまた、低温樹脂の少なくとも1つの薄い表面層を備えることができる。それゆえ、低温樹脂をフィルムに適用した新規の多孔質フルオロポリマーフィルムを、そうしなければ比較的高温の処理により損傷してしまうであろう任意の好適な材料に提供することができる。したがって、本発明のさらなる態様においては、本発明は、上面及び下面を有する多孔質フルオロポリマーのフィルムと、このフィルムの上面と下面のうち少なくとも一方に適用された低温樹脂とを含むプラスチック材料に関する。このようなプラスチック材料は、例えば、任意の好適な材料及び低温樹脂を硬化するために処理される材料に対するカバー材料として提供することができ、そうしてフルオロポリマーのフィルムと下地の材料との間に好適な結合が得られる。本発明のこの態様において、UV硬化性樹脂は特に好ましい低温樹脂である。
【0069】
以下の例により、本発明がどのようにして実施及び使用できるかを説明するが、これらは本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【実施例】
【0070】
[例1]
1組のハードテンションD’Addario複合体(PEEK)クラシック弦(部品番号EJ46C)からの巻クラシック弦を、UV硬化性樹脂を吸収させたフィルムで被覆した。この組は、直径の異なる3本の巻き弦から成るものであった。以下に、それぞれの弦とその個々のD’Addario部品番号について記載する。
【0071】
【表1】

【0072】
単位面積当たりの質量が約1.1g/mで、厚さが約0.0025mmの延伸PTFEを、デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手した。このフィルムの初期多孔度は約80%であった。
【0073】
MEK溶媒/樹脂が重量で50/50の溶液を、延伸PTFEフィルムに吸収させるため調製した。使用したMEKは、ニュージャージー州、フェア・ローンのアクロス・オルガニクス N.V.によって供給されているエレクトロニクス用の残留物のないものであった。使用した樹脂は、コネチカット州、トリントンのDymax社によって製造されている621シリーズ MULTI−CURE(登録商標)ウレタンアクリレートであった。この溶媒−樹脂溶液を、延伸PTFEフィルム全体に投与し均一に塗布した。ACCUPLY(登録商標)Laminating Release Filmをライナーとして使用し、溶媒−樹脂溶液を延伸PTFEフィルムに浸透させたフィルムと組み合せた。ライナーと吸収フィルムの両方を炉(約125℃に設定)に通して送り、MEK溶媒を除去した。フィルムを炉から取り出し、フィルムの両面と一致して吸収された樹脂と、ライナー側に存在する樹脂の薄い表面コートとを有する実質的に完全な吸収構造体を回収した。この薄い表面コートは、延伸PTFE表面を実質的に完全に被覆していた。
【0074】
吸収フィルムの厚さは約0.0033mmと測定された。この吸収フィルムの単位面積当たりの質量は約2.7g/mと測定された。
【0075】
米国特許第5,883,319号に記載されているように、吸収フィルムを各弦の周囲にらせん状に巻きつけた。吸収フィルムの表面コート側を各弦の方に向けた。2層の吸収フィルムが弦の演奏用長さ全体を被覆した構成の弦が得られた。
【0076】
それぞれの被覆弦をぴんと張り、PTFEシート上に取り付けた。張力を利用して被覆弦を真っ直ぐに保った。その張力は約2000gであった。PTFEは反射表面として作用し、弦の長さの範囲に及ぶものであった。次いで、このアッセンブリをメリーランド州、ゲイザースバーグのフュージョンUVシステムズ社によって提供されているLC−6B、Bench−top Conveyor上にD−バルブ(467W/最大電力)を備えたF300S無電極UVランプシステムに通して供給した。線量はコンベヤー速度により制御し、その速度は3フィート/分に設定された。
【0077】
各弦はUV炉を出ると、吸収された樹脂が硬化したことを示す不粘着性表面を有しているのが観測された。
【0078】
さらに、カバーが各弦に適合していることがわかった。各弦は、良好な音を有することが見出された(即ち、弦は、伝統的なクラシック弦のような音であった)。弦はより滑らかな感じであり、被覆されていない弦ほどきしり音は出なかった。弾くのに使用していない被覆弦を周囲条件で1ヶ月間つるしておいたが、この期間の間に変色することはなかった。
【0079】
[例2]
2番目の組の巻きクラシック弦をD’Addario(部品番号EJ46C)から入手し、使用した溶媒/樹脂溶液を以下のように変更したこと以外は、例1で記載されるのと実質的に同様の方法で被覆した。単位面積当たりの質量が約1.1g/mで、厚さが0.0025mmの延伸PTFEを、デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手した。このフィルムの多孔度は約80%であった。75/25wt%のMEK溶媒/樹脂溶液を、延伸PTFEフィルムに吸収させるため調製した。この樹脂は、コネチカット州、トリントンのDymax社によって製造されている621シリーズ MULTI−CURE(登録商標)ウレタンアクリレートであった。この溶媒−樹脂溶液を、延伸PTFEフィルム全体に投与し均一に塗布した。ライナーを、溶媒−樹脂溶液を延伸PTFEフィルムに浸透させたフィルムと組み合せた。ライナーと吸収フィルムの両方を炉(約125℃に設定)に通して送り、MEK溶媒を除去した。フィルムを炉から取り出し、フィルムのライナー表面と一致して吸収された樹脂と、ライナー側に存在する薄い表面コートとを有する部分的な吸収構造体を回収した。この表面コートは、延伸PTFE表面のすべてではないがその一部を被覆していた。吸収フィルムは、厚さが約0.0024mmと測定された。吸収フィルムの単位面積当たりの質量は約1.8g/mと測定された。
【0080】
各弦を例1に記載されるよう被覆し、樹脂を硬化させた。
【0081】
カバーが各弦に適合していることがわかった。各弦は、良好な音を有することが見出された(即ち、弦は、伝統的なクラシック弦のような音であった)。音は、例1の弦よりもわずかに明るく聞こえた。弦はより滑らかな感じであり、被覆されていない弦ほどきしり音は出なかった。弾くのに使用していない被覆弦を周囲条件で1ヶ月間つるしておいたが、この期間の間に変色することはなかった。
【0082】
[比較例1]
(デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手した)延伸PTFEのフィルムに、NEOFLON(商標)RP−4020EFEP(エチレンテトラフルオロエチレン系コポリマー、ダイキン工業社製)をコーティングした。このコーティングは、延伸PTFE基材の一方の表面にNEOFLON RP−4020EFEPの層を接触させることにより行った。このアッセンブリをNEOFLON RP−4020EFEPの融点よりも高い温度に加熱し、次いでその温度を維持しながら伸長した。次に、このアッセンブリを冷却して、NEOFLON RP−4020EFEPをコーティングした延伸EPTFEのフィルムを得た。次に、このフィルムを約4mm未満の幅に細長く切り、下の各D’Addario弦の周囲にらせん状に巻きつけて弦の長さ全体にわたって2層のフィルムを形成した。
【0083】
【表2】

【0084】
次に、各弦を張力下に置いて約200℃で約3分間加熱した。
【0085】
炉から取り出すと、すべての弦が脆かった。これらの弦をクラシックギター(Tacoma、Model CC10)に取り付けたが、音は許容できないものであった。
【0086】
[比較例2]
熱可塑性フルオロポリマーのDyneon(商標)HTE(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、エチレン)を用いた以外、本質的には比較例1を繰り返した。炉から取り出すと、すべての弦が脆かった。これらの弦を比較例1と同じクラシックギターに取り付けたが、音は許容できないものであった。
【0087】
[例3]
(デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手した)延伸PTFEのフィルムに熱可塑性フルオロポリマーのDyneon(商標)HTE(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、エチレン)をコーティングしたものを、本質的に比較例1に記載されるようにして作製した。次いで、比較例1に詳述する通り、このフィルムを23本のD’Addarioクラシック弦(部品番号J4604C)に適用した。
【0088】
次に、弦を横切って0.5インチ/秒でトラバースするホットエアガン(マルコム社製Leister Type 3000)で以って弦を加熱した。弦の温度の測定値が約240℃となるようホットエアを調整した。
【0089】
冷却したところ、弦は脆くないことがわかった。これらの弦を比較例1と同じギターに取り付け、良好な音を有することが見出された。
【0090】
[例4]
(デラウェア州、ニューアークのW.L.ゴア・アンド・アソシエーツ社から入手した)延伸PTFEのフィルムに熱可塑性フルオロポリマーのTHV(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン)をコーティングしたものを、本質的に比較例1に記載されるようにして処理した。次いで、比較例1に詳述する通り、このフィルムを7本のD’Addarioクラシック弦(部品番号J4604C)に適用した。
【0091】
次に、例3で使用したのと同じであるが、弦を横切って約1.5インチ/秒でトラバースするホットエアガンを用いてこれらの弦を加熱した。弦表面の温度の測定値が約380℃となるようホットエアを調整した。この温度でのトラバース速度は、弦のコアが溶融しないようにするのに十分なものであった。
【0092】
これらの弦をこのプロセスから取り出したところ脆くはなかった。これらの弦を比較例1と同じギターに取り付け、良好な音を有することが見出された。
【0093】
[例5]
本例では、例1に従って形成した被覆弦の耐久性を、例3及び例4で形成した被覆弦と比較する。
【0094】
これら試料のすべてを、これらにピックの回転ホイール下でチューニング張力をかけることにより耐久性について試験した。ピックは、試験した各試料について一定深さにセットした。各弦に、弦の2.5インチセグメント内に1秒当たり8ピックを与えた。ピックのホイールは、このセグメント全体にわたって約0.8インチ/秒の一定速度でトラバースした。これらの弦の摩耗を5分ごとに確認した。弦は、カバーがすり減ってむき出しの弦が見えるようになった場合に不合格とみなした。
【0095】
図15は、この例の結果について詳細を示している。具体的には、試料番号1〜23は例3の被覆弦であり、これらすべてが試験時間50分未満で不合格となった。試料番号24〜30は例4の被覆弦であり、これらすべてが例3の被覆弦に対して幾らかの改善を示したが、依然として約100分以内に不合格となった。最後に、試料番号31〜34は、例1に記載したようにして被覆した4本のD’Addarioクラシック弦(部品番号J4604C)である。試料番号31〜34の各試験は不合格となる前に中止した。
【符号の説明】
【0096】
1 カバー材料
2 多孔性
3 樹脂
4 樹脂からなる表面層
5 樹脂からなる表面層
10 クラシックギター
11 ブリッジ
12 フレットボード
13 サウンドホール
14a、14b、14c 高音域用弦
16、16a、16b、16c 低温域用弦
18 弦
20 コア材料
22 巻線
24a、24b、24c ラップ
26 ポリマーカバー
30 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弦と、
該弦の少なくとも一部を被覆する低温樹脂と組み合せたポリマーカバーと
を含む楽器用の弦。
【請求項2】
前記ポリマーカバーが少なくとも幾らかの多孔性を含み、該多孔性の少なくとも一部が前記低温樹脂で満たされた、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項3】
前記低温樹脂が、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(ASTM D1238によって測定される)を有する熱可塑性樹脂から成る群より選択された少なくとも1つの材料と、熱硬化性樹脂とを含む、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項4】
前記低温樹脂が、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(ASTM D1238によって測定される)を有する熱可塑性樹脂から成る群より選択された少なくとも1つの材料と、熱硬化性樹脂とを含む、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項5】
前記弦が、金属、ガット及び合成材料から成る群より選択されたコア材料を含む、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項6】
前記コア材料が合成材料を含む、請求項5に記載の楽器用の弦。
【請求項7】
前記合成性材料が、ナイロン及びポリエーテルエーテルケトンから成る群より選択された、請求項6に記載の楽器用の弦。
【請求項8】
前記合成材料がポリエーテルエーテルケトンを含む、請求項7に記載の楽器用の弦。
【請求項9】
前記弦が巻き弦である、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項10】
前記弦が巻き弦である、請求項6に記載の楽器用の弦。
【請求項11】
前記樹脂がUV硬化された、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項12】
前記樹脂がUV硬化された、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項13】
前記樹脂がUV硬化された、請求項10に記載の楽器用の弦。
【請求項14】
前記ポリマーカバーがフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項15】
前記ポリマーカバーがフルオロポリマーを含む、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項16】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの多孔性を実質的に満たしている、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項17】
前記低温樹脂が、前記フルオロポリマーカバーの多孔性を実質的に満たしている、請求項15に記載の楽器用の弦。
【請求項18】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン及びパーフルオロアルコキシ樹脂から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項14に記載の楽器用の弦。
【請求項19】
前記フルオロポリマーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンである、請求項15に記載の楽器用の弦。
【請求項20】
前記低温樹脂が、前記カバーの多孔性を実質的に満たしている、請求項19に記載の楽器用の弦。
【請求項21】
前記UV硬化樹脂が、前記ポリマーカバーの多孔性のすべてを実質的に満たしている、請求項12に記載の楽器用の弦。
【請求項22】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面にさらに設けられた、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項23】
前記低温樹脂が、前記カバーの少なくとも一方の表面に不連続層として設けられた、請求項22に記載の楽器用の弦。
【請求項24】
前記低温樹脂が、前記カバーの少なくとも一方の表面に連続層として設けられた、請求項22に記載の楽器用の弦。
【請求項25】
前記UV硬化樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面にさらに設けられた、請求項21に記載の楽器用の弦。
【請求項26】
前記UV硬化樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面に不連続層として設けられた、請求項25に記載の楽器用の弦。
【請求項27】
前記UV硬化樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面に連続層として設けられた、請求項25に記載の楽器用の弦。
【請求項28】
前記樹脂がUV硬化された、請求項17に記載の楽器用の弦。
【請求項29】
前記低温樹脂が、少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項1に記載の楽器用の弦。
【請求項30】
前記低温樹脂が、少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項2に記載の楽器用の弦。
【請求項31】
前記少なくとも1つの充填剤が、セラミック、金属、金属被覆された充填剤、金属化された充填剤、カーボン及びポリマーから成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項29に記載の楽器用の弦。
【請求項32】
前記少なくとも1つの充填剤が、セラミック、金属、金属被覆された充填剤、金属化された充填剤、カーボン及びポリマーから成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項30に記載の楽器用の弦。
【請求項33】
前記UV硬化樹脂が、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項11に記載の楽器用の弦。
【請求項34】
前記UV硬化樹脂が、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項12に記載の楽器用の弦。
【請求項35】
弦と、
該弦の少なくとも一部を被覆する低温樹脂と組み合せたポリマーカバーと
を含むクラシックギター用の弦。
【請求項36】
前記ポリマーカバーが少なくとも幾らかの多孔性を含み、該多孔性の少なくとも一部が前記低温樹脂で満たされた、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項37】
前記弦が巻き弦を含む、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項38】
前記低温樹脂がUV硬化された、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項39】
前記低温樹脂がUV硬化された、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項40】
前記ポリマーカバーがフルオロポリマーを含む、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項41】
前記ポリマーカバーが、延伸ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項42】
前記低温樹脂が、前記延伸ポリテトラフルオロエチレンの多孔性を実質的に満たしている、請求項41に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項43】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン及びパーフルオロアルコキシ樹脂から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項40に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項44】
前記低温樹脂が、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(ASTM D1238によって測定される)を有する熱可塑性樹脂を含む、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項45】
前記低温樹脂が、約300℃未満の試験条件温度のもと、約5Kgの一定荷重で以って約1g/10分を超えるメルトフローレート(ASTM D1238によって測定される)を有する熱可塑性樹脂を含む、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項46】
前記低温樹脂が熱硬化性樹脂を含む、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項47】
前記低温樹脂が熱硬化性樹脂を含む、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項48】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの多孔性の実質的にすべてを満たしている、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項49】
前記低温樹脂が、前記カバーの少なくとも一方の表面にさらに設けられた、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項50】
前記低温樹脂が、前記カバーの少なくとも一方の表面に不連続層として設けられた、請求項49に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項51】
前記低温樹脂が、前記カバーの少なくとも一方の表面に連続層として設けられた、請求項49に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項52】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの多孔性の実質的にすべてを満たしている、請求項41に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項53】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面にさらに設けられた、請求項52に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項54】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面に不連続層として設けられた、請求項53に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項55】
前記低温樹脂が、前記ポリマーカバーの少なくとも一方の表面に連続層として設けられた、請求項53に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項56】
前記樹脂が、少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項35に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項57】
前記樹脂が、少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項36に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項58】
前記少なくとも1つの充填剤が、セラミック、金属、金属被覆された充填剤、金属化された充填剤、カーボン及びポリマーから成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項56に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項59】
前記少なくとも1つの充填剤が、セラミック、金属、金属被覆された充填剤、金属化された充填剤、カーボン及びポリマーから成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項57に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項60】
前記UV硬化樹脂が、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項38に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項61】
前記UV硬化樹脂が、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項39に記載のクラシックギター用の弦。
【請求項62】
上面と下面とを有する多孔質フルオロポリマーのフィルムと、
該フィルムの少なくとも一部に適用したUV硬化樹脂と
を含むプラスチック材料。
【請求項63】
前記UV硬化樹脂が、前記フィルムの多孔性の少なくとも一部を満たしている、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項64】
前記UV硬化樹脂が、前記フィルムの多孔性の実質的にすべてを満たしている、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項65】
前記多孔質フルオロポリマーフィルムが、ポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項66】
前記多孔質フルオロポリマーフィルムが、フッ素化エチレンプロピレンを含む、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項67】
前記UV硬化樹脂が、ウレタンアクリレート類及びカチオンエポキシ類から成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項68】
前記UV硬化樹脂が、前記フィルムの少なくとも1つの上面及び下面のうち少なくとも一方にわたって不連続に適用された、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項69】
前記UV硬化樹脂が、前記フィルムの少なくとも1つの上面及び下面のうち少なくとも一方にわたって連続的に適用された、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項70】
前記UV硬化樹脂が、少なくとも1つの充填剤をさらに含む、請求項62に記載のプラスチック材料。
【請求項71】
前記少なくとも1つの充填剤が、セラミック、金属、金属被覆された充填剤、金属化された充填剤、カーボン及びポリマーから成る群より選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項69に記載のプラスチック材料。
【請求項72】
巻き弦と、
該巻き弦の少なくとも一部を取り囲み、UV硬化接着剤の使用を介して該巻き弦に取り付けられたポリマーカバーと
を含む楽器用の弦。
【請求項73】
少なくとも1つのポリマー成分を有する巻き弦と、
低温樹脂により該巻き弦に取り付けられたポリマーカバーと
を含むギター用の弦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−8588(P2012−8588A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172244(P2011−172244)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【分割の表示】特願2004−323832(P2004−323832)の分割
【原出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】