説明

改善された特性を有するペプチド模倣大環状分子

本発明は、その対応するポリペプチドに比べて改善された特性を有する生物学的に活性なペプチド模倣大環状分子を提供する。本発明はさらに、このような大環状分子を調製する方法および、例えば、治療適用において使用する方法を提供する。例えば、本発明は、1つ以上の架橋を配置することにより、らせんポリペプチドのインビボ半減期を増大させる方法を提供する。上記方法のいくつかの実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて平均少なくとも50倍増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、2008年11月24日に出願された米国仮出願第61/117,508号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
組み換えまたは合成的に産生したポリペプチドは、医薬として重要な適用を有する。しかし短鎖ペプチドなどのポリペプチドは、代謝安定性が劣り、細胞透過性が劣り、かつ高次構造の可塑性に起因して乱雑な(promiscuous)結合を受ける場合が多い。らせんペプチドを安定化するための種々のアプローチが、例えば、アミノ酸側鎖を連結するためにジスルフィド結合、アミド結合または炭素−炭素の結合を導入することにより、所望の立体配置でペプチドを維持するための分子内架橋剤(crosslinker)の使用によって試みられている。例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;Hiroshigeら(1995),J.Am.Chem.Soc.117:11590−11591;Blackwellら(1998),Angew.Chem.Int.Ed.37:3281−3284;Schafmeisterら(2000),J.Am.Chem.Soc.122:5891−5892;Walenskyら(2004),Science 305:1466−1470;Bernalら(2007),J.Am.Chem Soc.129:2456−2457;特許文献1(2004年11月5日出願);特許文献2(Verdineら);米国特許出願第11/957,325号(2007年12月14日出願);米国特許出願第12/037,041号(2008年2月25日出願)および特許文献3(これらの特許および刊行物の内容は参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。依然として、改善されたインビボ半減期、低用量または低投与頻度での有効性などの改善された生物学的特性を有する治療的および薬学的に有用なポリペプチドに対する相当な必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0250680号明細書
【特許文献2】米国特許第7,192,713号明細書
【特許文献3】米国特許第5,811,515号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jacksonら、J.Am.Chem.Soc.(1991)113:9391〜9392
【非特許文献2】Phelanら、J.Am.Chem.Soc.(1997)119:455〜460
【非特許文献3】Taylor、Biopolymers(2002)66:49−75
【非特許文献4】Brunelら、Chem.Commun.(2005)(20):2552−2554
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明はこれらおよび他の必要性に対処するものである。一局面において、本発明は、らせんペプチド模倣大環状分子の対応する非架橋対応物(counterpart)に比べて改善された薬物動態的特性を有するらせんペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0006】
例えば、本発明は、1つ以上の架橋を配置することにより、らせんポリペプチドのインビボ半減期を増大させる方法を提供する。上記方法のいくつかの実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて平均少なくとも50倍増大する。上記方法の他の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて少なくとも100倍、150倍または200倍増大する。いくつかの実施形態では、上記ポリペプチドは、上記架橋ポリペプチドのみかけの血清結合親和性(Kd)が1、3、10、70マイクロモルまたはそれを超えるように選択される。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドのKdは1〜10、70、または700マイクロモルである。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドは、ヒト血液において0.1〜50%または0.15〜10%という推定の遊離の割合を有するように選択される。いくつかの実施形態では、上記ポリペプチドは、上記架橋ポリペプチドのヘリシティ%が水性条件下、室温で25%、50%または75%より大きくなるように選択される。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドのヘリシティ%は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて少なくとも2倍、5倍または10倍増大する。
【0007】
上記方法のいくつかの実施形態では、上記ポリペプチドは1つの架橋を含む。上記方法の他の実施形態では、上記ポリペプチドは2つの架橋を含む。
【0008】
本方法のいくつかの実施形態では、1つの架橋が2つのα炭素原子を接続する。本方法の他の実施形態では、1つの架橋が結合される1つのα炭素原子を式R−の置換基で置換する。本方法の別の実施形態では、1つの架橋が連結されている2つのα炭素原子が式R−の独立した置換基で置き換えられる。
【0009】
本発明の方法の一実施形態では、R−はアルキルである。例えば、R−はメチルである。あるいは、R−および1つの架橋の任意の部分は一緒になって、環状構造を形成し得る。本方法の別の実施形態では、1つの架橋は、連続した炭素−炭素結合から形成される。例えば、1つの架橋は、少なくとも8、9、10、11、または12個の連続した結合を含んでもよい。他の実施形態では、1つの架橋は、少なくとも7、8、9、10または11個の炭素原子を含んでもよい。
【0010】
上記方法の別の実施形態では、上記架橋ポリペプチドはBCL−2ファミリーメンバーのα−らせんドメインを含む。例えば、上記架橋ポリペプチドはBH3ドメインを含む。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドは、表1、2、3および4の任意の配列の少なくとも60%、70%、80%、85%、90%または95%を含む。
【0011】
この方法のいくつかの実施形態では、この架橋ポリペプチドは、エネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、かつ細胞内標的に結合する。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、1つ以上の架橋を含むらせんポリペプチドであって、360分より長いインビボ半減期を有する架橋らせんポリペプチドを提供する。他の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は500分または1,000分より長い。別の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は500〜5,000分である。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記らせんポリペプチドは、1つの架橋を含む。他の実施形態では、上記らせんポリペプチドは2つの架橋を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つの架橋が2つのα炭素原子を接続する。他の実施形態では、1つの架橋が結合される1つのα炭素原子を式R−の置換基で置換する。別の実施形態では、1つの架橋が結合されている2つのα炭素原子が式R−の独立した置換基で置き換えられる。
【0015】
本発明の一実施形態では、R−はアルキルである。例えば、R−はメチルである。あるいは、R−および1つの架橋の任意の部分は一緒になって、環状構造を形成し得る。別の実施形態では、1つの架橋は、連続した炭素−炭素結合から形成される。例えば、1つの架橋は、少なくとも8、9、10、11、または12個の連続した結合を含んでもよい。他の実施形態では、1つの架橋は、少なくとも7、8、9、10または11個の炭素原子を含んでもよい。
【0016】
別の実施形態では、上記架橋ポリペプチドは、BCL−2ファミリーメンバーのαらせんドメインを含む。例えば、上記架橋ポリペプチドは、BH3ドメインを含む。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドは、表1、2、3および4の任意の配列に対して少なくとも60%、70%、80%、85%、90%または95%を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記架橋ポリペプチドはエネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、かつ細胞内標的に結合する。
【0018】
文献の引用
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的にかつ個々に参照により組み込まれて示されるのと同程度まで、参照により本明細書に援用される。
【0019】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理を利用し、図面を伴った例示的な実施形態を説明する、以下の詳細な説明を参照することにより、さらに十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のペプチド模倣大環状分子の配列およびその対応する非架橋対応物の配列を示す。
【図2】図2は、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ半減期を示す。半減期は、0.6mg/mLまたは2mg/mLの各々の非標識ペプチド模倣大環状分子を、それぞれ3mg/kgまたは10mg/kg用量での1回の静脈内ボーラス注射後のSprague Dawleyラットにおいて測定した。化合物1種類あたり3匹の動物を使用し、濃度は、血中レベル(血漿)の質量分析による解析によって決定した。
【図3a】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3b】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3c】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3d】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3e】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3f】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3g】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3h】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3i】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3j】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3k】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3l】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3m】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3n】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3o】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3p】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3q】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3r】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3s】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3t】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図3u】図3a〜uは、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿濃度曲線を示す。
【図4】図4は、本発明のペプチド模倣大環状分子(marocycle)のみかけのラット血清結合親和性およびラット血液中において該分子の推定の遊離の割合を示す。
【図5】図5は、ラットおよびサルにおける本発明のペプチド模倣大環状分子のPKプロフィールを示す。
【図6】図6は、齧歯類および高等動物種における本発明のペプチド模倣大環状分子のクリアランス速度など、実際のPK特性および予測PK特性を示す。
【図7】図7は、本発明のペプチド模倣大環状分子の222nmにおけるモル楕円率および推定ヘリシティ% を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において用いる場合、「大環状分子(macrocycle)」という用語は、少なくとも9個の共有結合された原子によって形成されるリングまたはサイクルを含む化学構造を有する分子を指す。
【0022】
本明細書において用いる場合、「ペプチド模倣大環状分子(peptidomimetic macrocycle)」または「架橋ポリペプチド」という用語は、同じ分子内の第一の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)および第二の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)の間で大環状分子を形成する、複数のペプチド結合および少なくとも1つの大環状分子形成リンカーによって結合された複数のアミノ酸残基を含む化合物を指す。ペプチド模倣大環状分子は、大環状分子形成リンカーが、第一のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素を第二のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素に連結する実施形態を含む。ペプチド模倣大環状分子は必要に応じて、1つ以上のアミノ酸残基および/またはアミノ酸アナログ残基の間の1つ以上の非ペプチド結合を含み、そして必要に応じて、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸残基またはアミノ酸アナログ残基を、大環状分子を形成する任意のものに加えて、含む。
【0023】
本明細書において用いる場合、「安定性」という用語は、円二色性、NMR、または別の生物物理学的手段によって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によって溶液中で規定される二次構造の維持、またはインビトロもしくはインビボにおけるタンパク質分解性の分解に対する抵抗性を指す。本発明において企図される二次構造の非限定的な例は、α−らせん、β−ターン、およびβ−プリーツシートである。
【0024】
本明細書において用いる場合、「らせん(helical)安定性」という用語は、円二色性またはNMRによって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によるαらせん構造の維持を指す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、対応する架橋されていない大環状分子と比較して、円二色性によって決定されるα−ヘリシティにおいて、少なくとも1.25、1.5、1.75、または2倍の増大を示す。
【0025】
「α−アミノ酸」または単に「アミノ酸」という用語は、α−炭素と呼ばれる炭素に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子を指す。適切なアミノ酸としては、限定するものではないが、天然に存在するアミノ酸のD−異性体およびL−異性体の両方、ならびに有機合成または他の代謝経路によって調製される天然に存在しないアミノ酸が挙げられる。文脈が具体的に別のことを示さない限り、本明細書において使用されるアミノ酸という用語は、アミノ酸アナログを含むものとする。
【0026】
「天然に存在するアミノ酸」という用語は、自然界において合成されるペプチドにおいて一般に見つけられ、一文字の略語、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、およびVによって公知の20個のアミノ酸のうちのいずれか1つを指す。
【0027】
「アミノ酸アナログ」または「非天然アミノ酸」という用語は、アミノ酸に構造的に類似しており、かつペプチド模倣大環状分子の形成においてアミノ酸の代わりに用いることができる分子を指す。アミノ酸アナログとしては、限定するものではないが、アミノ基とカルボキシル基の間に1つ以上の追加のメチレン基を包含すること(例えばα−アミノβ−カルボキシ酸)を除いて、または同様に反応性の基によってアミノ基もしくはカルボキシ基が置換されること(例えば第二級もしくは第三級アミンでの第一級アミンの置換またはエステルでのカルボキシ基の置換)を除いて、本明細書において規定されるアミノ酸と構造的に同一である化合物が挙げられる。
【0028】
「非必須」アミノ酸残基は、その必須の生物学的または生化学的活性(例えばレセプター結合または活性化)を消失することも、実質的に改変することもなく、ポリペプチドの野生型配列から改変することができる残基である(例えば、BH3ドメインまたはp53 MDM2結合ドメイン)。「必須」アミノ酸残基とは、ポリペプチドの野生型配列から改変された場合に、結果として、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性を消失し、または実質的に消失することになる残基である。
【0029】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と交換される置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えばK、R、H)、酸性の側鎖(例えば、D、E)、非荷電極性側鎖(例えば、G、N、Q、S、T、Y、C)、非極性側鎖(例えば、A、V、L、I、P、F、M、W)、β分枝側鎖(例えば、T、V、I)、および芳香族側鎖(例えば、Y、F、W、H)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、BH3ポリペプチドにおける、予測される非必須アミノ酸残基は、例えば、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基と交換される。許容できる置換の他の例は、等比体積の(isosteric)考慮(例えば、メチオニンに対するノルロイシン)または他の特性(例えば、フェニルアラニンに対する2−チエニルアラニン)に基づく置換である。
【0030】
大環状分子または大環状分子形成リンカーと組み合わせて、本明細書において用いられる「メンバー」という用語は、大環状分子を形成し、または大環状分子を形成することができる原子を指し、そして置換基または側鎖の原子を除外する。類推によって、シクロデカン、1,2−ジフルオロ−デカン、および1,3−ジメチルシクロデカンは全て、水素またはフルオロ置換基またはメチル側鎖が大環状分子の形成に参加しないので、10員の大環状分子と考えられる。
【0031】
記号
【0032】
【化1−1】

は、分子構造の一部として用いられる場合、単結合またはトランスもしくはシス二重結合を指す。
【0033】
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸におけるα−炭素に結合した部分を指す。例えば、アラニンについてのアミノ酸側鎖は、メチルであり、フェニルアラニンについてのアミノ酸側鎖は、フェニルメチルであり、システインについてのアミノ酸側鎖は、チオメチルであり、アスパルテートについてのアミノ酸側鎖は、カルボキシメチルであり、チロシンについてのアミノ酸側鎖は、4−ヒドロキシフェニルメチルであるなどである。他の天然に存在しないアミノ酸側鎖、例えば、自然界において生じるもの(例えば、アミノ酸代謝物)または合成的に作製されるもの(例えば、α,α二置換アミノ酸)もまた含まれる。
【0034】
用語「α,α二置換アミノ」酸という用語は、2つの天然または非天然アミノ酸側鎖に結合した炭素(α−炭素)に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子または部分を指す。
【0035】
「ポリペプチド」という用語は、共有結合(例えば、アミド結合)によって結合した、2個以上の天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸を包含する。本明細書において記載されるポリペプチドとしては、完全長タンパク質(例えば、完全に処理された(processed)タンパク質)およびより短いアミノ酸配列(例えば、天然に存在するタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)が挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される場合、「大環状分子化試薬(macrocyclization reagent)」または「大環状分子形成試薬」という用語は、2つの反応基の間の反応を媒介することによって、本発明のペプチド模倣大環状分子を調製するために用いられ得る任意の試薬を指す。反応性の基は、例えば、アジドおよびアルキンであってもよく、この場合には、大環状分子化試薬としては、限定するものではないが、CuBr、CuI、またはCuOTfなどの反応性Cu(I)種、ならびにアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤の添加によってインサイチュにおいて活性Cu(I)試薬に変換することができる、Cu(COCH、CuSO、およびCuClなどのCu(II)塩を提供する試薬などのCu試薬が挙げられる。大環状分子化試薬としては、例えば、CpRuCl(PPh、[CpRuCl]、または反応性Ru(II)種を提供し得る他のRu試薬などの、当該分野において公知のRu試薬をさらに挙げることができる。他の場合において、反応基は、末端のオレフィンである。そのような実施形態において、大環状分子化試薬または大環状分子形成試薬は、第VIII族遷移金属カルベン触媒などの、安定した後遷移金属カルベン錯体触媒を含むが、これらに限定されないメタセシス(metathesis)触媒である。例えば、そのような触媒は、+2酸化状態を有し、16の電子数を有し、かつ五配位のRuおよびOs金属中心である。追加の触媒は、Grubbsら、「Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis」Acc.Chem.Res.1995、28、446〜452頁および米国特許第5,811,515号において開示される。さらに他の場合において、反応基は、チオール基である。そのような実施形態において、大環状分子化試薬は、例えば、ハロゲン基などの2つのチオール反応性基で官能化されたリンカーである。
【0037】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素またはその基を指す。
【0038】
「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。例えば、C〜C10は、基が、その中に1〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。いかなる数の指示もない場合、「アルキル」とは、その中に1〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0039】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル(つまり−R−)を指す。
【0040】
「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルケニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルケニル」という用語は、C〜Cアルケニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルケニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0041】
「アルキニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルキニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルキニル」という用語は、C〜Cアルキニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルキニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0042】
「アリール」という用語は、6個の炭素の単環式または10個の炭素の二環式芳香族環系を指し、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子は、置換基によって置換される。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを指す。「アリールアルコキシ(arylalkoxy)」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを指す。
【0043】
「アリールアルキル」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、上記に規定されるC〜Cアルキル基で置き換えられているものを指す。アリールアルキル基の代表的な例としては、限定するものではないが、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、3−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−プロピルフェニル、3−プロピルフェニル、4−プロピルフェニル、2−ブチルフェニル、3−ブチルフェニル、4−ブチルフェニル、2−ペンチルフェニル、3−ペンチルフェニル、4−ペンチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、2−イソブチルフェニル、3−イソブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、2−sec−ブチルフェニル、3−sec−ブチルフェニル、4−sec−ブチルフェニル、2−t−ブチルフェニル、3−t−ブチルフェニル、および4−t−ブチルフェニルが挙げられる。
【0044】
「アリールアミド」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、1つ以上の−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アリールアミド基の代表的な例としては、2−C(O)NH2−フェニル、3−C(O)NH−フェニル、4−C(O)NH−フェニル、2−C(O)NH−ピリジル、3−C(O)NH−ピリジル、および4−C(O)NH−ピリジルが挙げられる。
【0045】
「アルキルヘテロ環」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヘテロ環で置き換えられているものを指す。アルキルヘテロ環基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCH−モルホリン、−CHCH−ピペリジン、−CHCHCH−モルホリン、および−CHCHCH−イミダゾールが挙げられる。
【0046】
「アルキルアミド」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アルキルアミド基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CH−C(O)NH、−CHCH−C(O)NH、−CHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHCHC(O)NH、−CHCH(C(O)NH)CH、−CHCH(C(O)NH)CHCH、−CH(C(O)NH)CHCH、−C(CHCHC(O)NH、−CH−CH−NH−C(O)−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH3、および−CH−CH−NH−C(O)−CH=CHが挙げられる。
【0047】
「アルカノール」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヒドロキシル基で置き換えられているものを指す。アルカノール基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CHCHCHCHCHOH、−CHCH(OH)CH、−CHCH(OH)CHCH、−CH(OH)CH、および−C(CHCHOHが挙げられる。
【0048】
「アルキルカルボキシ」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−−COOH基で置き換えられているものを指す。アルキルカルボキシ基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHCHCHCOOH、−CHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CH、−CHCHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CHCH、−CH(COOH)CHCH、および−C(CHCHCOOHが挙げられる。
【0049】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において用いる場合、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、およびより好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和環式炭化水素基および部分的に不飽和の環式炭化水素基であって、ここでそのシクロアルキル基が、必要に応じてさらに置換されている環式炭化水素基を包含する。いくつかのシクロアルキル基としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0050】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子が、置換基によって置換されている。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、またはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニル、またはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0051】
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0052】
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0053】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する非芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、各々の環の0、1、2、または3個の原子は、置換基によって置換される。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル(dioxanyl)、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0054】
「置換基」という用語は、任意の分子、化合物、または部分の上の水素原子などの第2の原子または基を交換する基を指す。適切な置換基としては、限定するものではないが、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、およびシアノ基が挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含有し、従ってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマー混合物として存在する。これらの化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物はまた、複数の互変異性形態で表され、そのような事例において、本発明は、本明細書において記載される化合物の全ての互変異性形態を含む(例えば、環系のアルキル化が、複数の部位でアルキル化をもたらす場合、本発明は、全てのそのような反応産物を含む)。そのような化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。本明細書において記載される化合物の全ての結晶形態は、明確に規定されない限り、本発明に含まれる。
【0056】
本明細書において用いる場合、「増加」および「減少」という用語は、統計的に有意に(すなわち、p<0.1)、それぞれ、少なくとも5%の増加または減少を引き起こすことを意味する。
【0057】
本明細書において用いる場合、変数についての数値的な範囲の記述は、本発明が、その範囲内の値のうちのいずれかに等しい変数で実行されてもよいことを伝えるように意図される。従って、本質的に不連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の整数値と等しい。同様に、本質的に連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の実際の値と等しい。例として、限定するものではないが、0および2の間の値を有するとして記載される変数は、その変数が本質的に不連続の場合、値0、1、または2をとり、その変数が本質的に連続の場合、値0.0、0.1、0.01、0.001、または任意の他の実際の値≧0かつ≦2をとる。
【0058】
本明細書において用いる場合、具体的に別のことを示されない限り、「または(あるいは、もしくは)」という単語は、「いずれか/または」の排他的な意味ではなく、「および/または」の包括的な意味で用いられる。
【0059】
「平均して」という用語は、各データポイントについての、少なくとも3回の独立した反復の実行に由来する平均値を表す。
【0060】
「生物学的活性」という用語は、本発明の大環状分子の構造的および機能的特性を包含する。生物学的活性は、例えば、構造的安定性、α−ヘリシティ、標的に対する親和性、タンパク質分解性の分解に対する抵抗性、細胞透過性、細胞内安定性、インビボ安定性、またはその任意の組合せである。
【0061】
本発明の1つ以上の特定の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書本文および図面からならびに本特許請求の範囲から明白となる。
【0062】
本発明のペプチド模倣大環状分子の生物学的特性
一局面において、本発明は、1つ以上の架橋を配置することにより、らせんポリペプチドのインビボ半減期を増大させる方法を提供する。例えば、上記ポリペプチドのインビボ半減期は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて平均少なくとも50倍増大する。上記方法の他の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて少なくとも100倍、150倍または200倍増大する。他の実施形態では、本発明は、1つ以上の架橋を含むらせんポリペプチドであって、360分より長いインビボ半減期を有する架橋らせんポリペプチドを提供する。他の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は500分または1,000分より長い。別の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は500〜5,000分である。別の実施形態では、上記ポリペプチドのインビボ半減期は静脈内投与後に測定される。
【0063】
いくつかの実施形態では、上記ポリペプチドは、上記架橋ポリペプチドのみかけの結合親和性(Kd)が1、3、10、70マイクロモル以上であるように選択される。他の実施形態では、上記架橋ポリペプチドのKdは1〜10、70または700マイクロモルである。他の実施形態では、この架橋ポリペプチドは、0.1〜50%、または0.15〜10%というヒト血液中の推定遊離画分を保有するように選択される。
【0064】
本発明は、親の架橋ポリペプチドのアナログを合成する工程と、血清タンパク質の非存在下で、および血清についての2つ以上の濃度の存在下でも細胞アッセイを行って、血清タンパク質に対する各々の架橋ポリペプチドの見かけの親和性を決定し、かつ数学的外挿によって全血中のEC50を算出する工程を含む、所望の血清結合親和性を有する架橋ポリペプチドを特定する方法を提供する。
【0065】
一実施形態では、EC50シフト分析による血清タンパク質についてのみかけのKd値を用いて、HSAおよび他の血清タンパク質に結合する実験的化合物の傾向(propensity)を定量する簡易かつ迅速な手段が得られる。血清タンパク質の存在下におけるみかけのEC50(EC’50)とインビトロアッセイに添加された血清タンパク質の量との間には線形の関係が存在する。この関係は、Kとして表される血清タンパク質についての化合物の結合親和性によって規定される。この用語は、複数の実験的に識別不能な結合事象の累積効果から生じ得る、実験的に決定されるみかけの解離定数である。この関係の形態はここでは式.1に示しており、その導出は、その内容が本明細書において参照によって援用されるCopelandら、Biorg.Med Chem Lett.2004,14:2309〜2312に見出され得る。
【0066】
【数1】

血清タンパク質結合のかなりの割合が、血清中で血清アルブミンが極めて高濃度であることに起因する(35〜50g/Lまたは530〜758μM)、この血清アルブミンとの薬物相互作用に帰せられ得る。これらの化合物のK値を算出するために、本発明者らは、タンパク質添加の際のEC50におけるシフトが、添加された血清に存在する血清アルブミンに完全に帰せられ得ると仮定しており、ここでPは100%の血清について700μMであり、Pは10%の血清について70μMであるなどである。本発明者らは、さらに、上記化合物の全てが1:1の化学量論で血清アルブミンに結合し、そのため式(1)の項nは一致して固定されるという簡易な仮定を行う。これらのパラメーターを適切な位置において、本発明者らは、Mathematica4.1(Wolfram Research,Inc.,www.wolfram.com)を用いて非線形回帰分析によって、漸増する血清(および血清タンパク質)濃度で、EC50値における変化から各々のステープルペプチドについてのK値を算出する。血中の遊離画分は、参照によってその内容が本明細書に援用されるTrainor,Expert Opin.Drug Disc.,2007,2(1):51〜64から誘導されるように、以下の式(ここで[血清アルブミン]は700μMに設定される)によって概算する。以下の式は、この血清アルブミンがヒト血清アルブミンである実施形態を示す。
【0067】
【数2】

一実施形態では、改善された生物学的活性を、細胞透過性の増大またはアポトーシスを誘導する能力の増大として測定する。さらに他の実施形態では、生物学的活性を、培養された細胞をこのようなポリペプチドの有効濃度に曝すインビトロアッセイで死滅させられた細胞の数の割合として測定する。
【0068】
いくつかの実施形態では、上記ポリペプチドは、上記架橋ポリペプチドのヘリシティ%が水性条件下、室温で25%、50%または75%より大きくなるように選択される。他の実施形態では、水性条件下、室温での上記架橋ポリペプチドのヘリシティ%は、上記架橋のない対応するポリペプチドに比べて少なくとも2倍、5倍または10倍増大する。
【0069】
本発明のペプチド模倣大環状分子の設計
生物学的活性を付与すると考えられる、らせん構造を含む公知の一次アミノ酸配列を有する任意のタンパク質またはポリペプチドが、本発明の主題である。例えば、ポリペプチドの配列は、分析することが可能で、大環状分子化(macrocyclization)試薬と反応性の基を含有するアミノ酸アナログは、適切な位置で置換することができる。適切な位置は、二次構造のどの分子表面(単数または複数)が、生物学的活性に必要とされ、従って、どの他の表面(単数または複数)を介して、本発明の大環状分子形成リンカーが、生物学的活性に必要とされる表面(単数または複数)を立体的にブロッキングすることなく、大環状分子を形成することができるかを確認することによって決定される。そのような決定は、活性にとって重要な残基(および表面)を可視化するための、二次構造と天然の結合パートナーとの間の複合体のX線結晶解析などの方法を用いるか;活性にとって重要な残基(および表面)を機能的に同定するための、二次構造における残基の配列の変異誘発によるか;または他の方法によって行われる。そのような決定によって、適切なアミノ酸は、本発明のアミノ酸アナログおよび大環状分子形成リンカーで置換される。例えば、α−らせん二次構造については、らせんの1つの表面(例えば、らせんの軸に沿って縦方向にかつらせんの軸のまわりで45〜135°で放射状にわたる分子表面)は、生物学的活性のために、インビボまたはインビトロにおいて、別の生体分子と接触するために必要とされる場合がある。そのような場合において、大環状分子形成リンカーは、活性に直接必要とされないその表面の部分におけるらせんの表面に沿って縦方向にのびながら、らせんの2つのα−炭素を連結するように設計される。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態において、ペプチド配列は、タンパク質のBCL−2ファミリーに由来する。BCL−2ファミリーは、BH1、BH2、BH3、およびBH4と呼ばれる、最大4つまでの保存BCL−2相同性(BH)ドメインの存在によって規定され、これらのすべては、α−らせんセグメントを含む(Chittendenら(1995),EMBO 14:5589;Wangら(1996),Genes Dev.10:2859)。BCL−2およびBCL−Xなどの抗アポトーシスタンパク質は、すべてのBHドメインにおいて配列保存を示す。プロアポトーシスタンパク質は、BH1、BH2、およびBH3ドメインにおいて相同性を有する「多重ドメイン(multidomain)」ファミリーメンバー(例えばBAK、BAX)、ならびにBH3両親媒性α−らせんセグメントにおいて排他的に配列相同性を含有する「BH3ドメインのみの」ファミリーメンバー(例えばBID、BAD、BIM、BIK、NOXA、PUMA)に分類される。BCL−2ファミリーメンバーは、ホモ二量体およびヘテロ二量体を形成するための能力を有し、このことは、プロアポトーシスタンパク質と抗アポトーシスタンパク質とのレベルの間の競合的な結合および比率が、死刺激に対する感受性を決定する(dictate)ことを示唆している。抗アポトーシスタンパク質は、プロアポトーシス過剰、つまり過剰なプログラム細胞死から細胞を保護するように機能する。追加の「防衛」手段としては、プロアポトーシスタンパク質の転写を調節すること、および、プロアポトーシスタンパク質を不活性なコンフォーマーとして維持することが挙げられる。死促進(pro−death)機能を活性化するために、タンパク質分解性の活性化、脱リン酸化、またはリガンド誘導性コンホメーション変化のいずれかが必要である。ある種の細胞型において、原形質膜で受け取られた死シグナルは、ミトコンドリア経路を介してアポトーシスを引き起こす。ミトコンドリアは、カスパーゼ9を活性化する、細胞質ゾル複合体の重要な成分であるシトクロムcを隔離することにより、細胞死の門番(gatekeeper)としての役割を担うことができ、これによって下流における致死的なタンパク質分解事象が生じる。BCL−2/BCL−XおよびBAK/BAXなどの多重ドメインタンパク質は、ミトコンドリア膜で保護者および実行者といった対立する(dueling)役割を果たし、それらの活性は、BCL−2ファミリーの上流のBH3のみのメンバーによってさらに調節される。例えば、BIDは、プロアポトーシスのタンパク質のBH3ドメインのみのファミリーのメンバーであり、原形質膜で受け取られる死シグナルを、ミトコンドリア膜のエフェクタープロアポトーシスタンパク質に伝達する。BIDは、プロアポトーシスタンパク質および抗アポトーシスタンパク質の両方と相互作用する能力を有し、カスパーゼ8による活性化に際して、シトクロムc放出およびミトコンドリアのアポトーシスを引き起こす。欠失および変異誘発の研究により、プロアポトーシスファミリーメンバーの両親媒性α−らせんBH3セグメントが、死ドメインとして機能する場合があり、従って、多重ドメインアポトーシスタンパク質と相互作用するための重要な構造的モチーフに相当する(represent)場合があることが確認された。構造的研究によって、BH3らせんが、BH1、2、および3のドメインのインターフェースにより形成される疎水性の溝の中に挿入することによって、抗アポトーシスタンパク質と相互作用することができることが示された。活性化BIDは、抗アポトーシスタンパク質(例えばBCL−2およびBCL−X)によって結合され、それらによって隔離され、そして、プロアポトーシスタンパク質BAXおよびBAKの活性化を引き起こすことができ、シトクロムc放出およびミトコンドリアアポトーシスプログラムをもたらす。BADもまた、その発現がBAX/BAKの活性化を引き起こすBH3ドメインのみのプロアポトーシスファミリーメンバーである。しかしながら、BIDとは対照的に、BADは、抗アポトーシスファミリーメンバーBCL−2およびBCL−Xに対して優先的な結合を示す。BAD BH3ドメインは、BCL−2に対して高い親和性結合を示すが、BAD BH3ペプチドは、ミトコンドリアからのシトクロムc放出をインビトロにおいて活性化することができず、このことは、BADが、BAX/BAKの直接の活性化因子ではないことを示唆している。BCL−2を過剰発現するミトコンドリアは、BID誘導性シトクロムc放出に対して抵抗性であるが、BADを用いる同時処理は、BID感度を回復することができる。BADによるミトコンドリアアポトーシスの誘発は:(1)BCL−2/BCL−XL結合ポケットからの、BIDおよびBID様タンパク質などのBAX/BAK活性化因子の置き換えまたは(2)抗アポトーシスタンパク質によるBID様タンパク質の隔離を予防するための、BADによる、BCL−2/BCL−XL結合ポケットの選択的な占有、のいずれかに起因するようにみえる。従って、2つのクラスのBH3ドメインのみのタンパク質、すなわち、ミトコンドリアアポトーシスを直接活性化するBID様タンパク質、および、多重ドメイン抗アポトーシスタンパク質の結合ポケットを占有することによって、BID様プロアポトーシスに対する感受性をミトコンドリアに与えるための能力を有するBAD様タンパク質の2つが、明らかになっている。本明細書において開示される方法論に改めることのできるBCL−2ファミリーメンバータンパク質の種々のα−らせんドメインは開示されている(Walenskyら(2004),Science 305:1466;およびWalenskyら、米国特許出願公開第2005/0250680号、これらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0071】
他の実施形態では、ペプチド配列は癌遺伝子タンパク質MDM2に結合する腫瘍サプレッサーp53タンパク質に由来する。MDM2結合部位は、αらせんを形成するp53腫瘍サプレッサーの領域内に位置する。米国特許第7,083,983号(その内容全体が参照によって本明細書に援用される)では、Laneらが、MDM2に対する結合を担うp53の領域が、成熟ヒトP53タンパク質のアミノ酸13〜31(PLSQETFSDLWKLLPENNV)によってほぼ示されることを開示する。Laneによって開示される他の改変された配列も本発明で意図される。さらに、p53およびMDM2の相互作用は、Shairら、(1997),Chem.&Biol.4:791(その内容全体が参照によって本明細書に援用される)によって考察されており、かつp53遺伝子における変異は、全ての報告された癌症例の実質半分で特定されている。細胞にストレスが課されるので、p53は、細胞周期停止およびDNA修復、またはプログラミングされた細胞死のいずれかをもたらす応答を組織化すると考えられる。p53タンパク質の機能を直接変更するp53遺伝子の変異と同様、p53は、MDM2における変化によっても変更され得る。MDM2タンパク質は、p53に結合して、p53のトランス活性化ドメインと結合する(associating)ことによって転写活性化を破壊することが示されている。例えば、p53のトランス活性化ドメイン由来の11アミノ酸のペプチドは、MDM2の割れ目に挿入する2.5ターンの両親媒性αらせんを形成する。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生成される新規なαらせん構造を操作して、らせんアクセプターに緊密に結合し、かつ天然のタンパク質−タンパク質相互作用を破壊する構造を生成する。次いで、これらの構造を、ハイスループットの技術を用いてスクリーニングして、最適な低分子ペプチドを特定する。MDM2相互作用を破壊するこの新規な構造は、多くの適用に有用であり、この適用としては限定するものではないが、軟部組織の肉腫(野性型p53の存在下でMDM2を過剰発現する)の制御が挙げられる。次いで、これらの癌は、いくつかの実施形態では、MDM2を遮断する低分子を用いて防止され、それによってp53の抑制が防止される。さらに、いくつかの実施形態では、MDM2−p53相互作用の低分子破壊因子(disrupter)は、従来の化学療法でp53依存性アポトーシス応答の程度を制御および調節することを補助するアジュバント療法として用いられる。
【0072】
本発明での使用のための適切なペプチド配列の非限定的な例示のリストを下記に示す:
【0073】
【表1】

表1は、BH3結合部位を標的とし、癌、自己免疫障害、代謝性疾患および他のヒト疾患状態に関係するヒト配列を挙げている。
【0074】
【表2】

表2は、BH3結合部位を標的とし、癌、自己免疫障害、代謝性疾患および他のヒト疾患状態に関係するヒト配列を挙げている。
【0075】
【表3】

表3は、MDM2/Xのp53結合部位を標的とし、癌に関係するヒト配列を挙げている。
【0076】
【表4】

表4は、ヒトGタンパク質共役レセプターを標的とし、かつ多くのヒト疾患状態に関係する配列を挙げている(Tyndallら(2005)、Chem.Rev.105:793〜826)。
【0077】
本発明のペプチド模倣大環状分子
この方法のいくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つの架橋を含む。この方法の他の実施形態において、上記ポリペプチドは、2つの架橋を含む。この方法のいくつかの実施形態において、1つの架橋は、2つのα−炭素原子を連結する。この方法の他の実施形態において、1つの架橋が結合した1つのα−炭素原子は、式R−の置換基で置換されている。この方法の別の実施形態において、1つの架橋が結合している2つのα−炭素原子は、式R−の独立した置換基で置換される。本発明の方法の一実施形態において、R−は、アルキルである。例えば、R−は、メチルである。あるいは、R−と1つの架橋の任意の部分は一緒になって環状構造を形成することができる。この方法の別の実施形態において、1つの架橋は、連続した炭素−炭素結合から形成される。例えば、1つの架橋は、少なくとも8、9、10、11、または12個の連続した結合を含んでもよい。他の実施形態において、1つの架橋は、少なくとも7、8、9、10、または11個の炭素原子を含んでもよい。
【0078】
この方法の別の実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、BCL−2ファミリーメンバーのα−らせんドメインを含む。例えば、上記架橋ポリペプチドは、BH3ドメインを含む。他の実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、表1、2、3、および4における任意の配列のうち少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%を含む。この方法のいくつかの実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、エネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、細胞内標的に結合する。
【0079】
いくつかの実施形態において、上記らせんポリペプチドは、1つの架橋を含む。他の実施形態において、上記らせんポリペプチドは、2つの架橋を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、1つの架橋は、2つのα−炭素原子を連結する。他の実施形態において、1つの架橋が結合した1つのα−炭素原子は、式R−の置換基で置換されている。別の実施形態において、1つの架橋が結合されている2つのα−炭素原子は、式R−の独立した置換基で置換される。本発明の一実施形態において、R−は、アルキルである。例えば、R−は、メチルである。あるいは、R−と1つの架橋の任意の部分は一緒になって環状構造を形成することができる。別の実施形態において、1つの架橋は、連続した炭素−炭素結合から形成される。例えば、1つの架橋は、少なくとも8、9、10、11、または12個の連続した結合を含んでもよい。他の実施形態において、1つの架橋は、少なくとも7、8、9、10、または11個の炭素原子を含んでもよい。
【0081】
別の実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、BCL−2ファミリーメンバーのα−らせんドメインを含む。例えば、上記架橋ポリペプチドは、BH3ドメインを含む。他の実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、表1、2、3、および4における任意の配列のうち少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、または95%を含む。いくつかの実施形態において、上記架橋ポリペプチドは、エネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、細胞内標的に結合する。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(I):
【0083】
【化1−2】

を有し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0084】
【化2】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwの各々は独立して1〜1000の整数であり;
x、yおよびzの各々は独立して0〜10の整数であり;uは1〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0085】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現(occurrence)は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、らせん内水素結合を可能にする。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0088】
【化3】

である。
【0089】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−らせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0090】
一実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
【0091】
【化4】

である。
【0092】
ここで、RおよびRは各々独立して、独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルである。
【0093】
関連する実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
【0094】
【化5】

である。
【0095】
他の実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は、下記に示される任意の式の化合物:
【0096】
【化6】

【0097】
【化7】

【0098】
【化8】

であり、
式中、「AA」は、任意の天然または非天然アミノ酸側鎖を表し、かつ
【0099】
【化9】

は、上記で定義した[D]、[E]であり、nは、0および20、50、100、200、300、400、または500の間の整数である。いくつかの実施形態において、nは、0である。他の実施形態において、nは、50未満である。
【0100】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
【0101】
【化10】

いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(II):
【0102】
【化11】

を有しており、
式中:
A、C、DおよびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然のアミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0103】
【化12】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式
【0104】
【化13】

の大環状分子形成リンカーであり;
、L、およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwの各々は独立して1〜1000の整数であり;
x、yおよびzの各々は独立して0〜10の整数であり;uは1〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0105】
一例では、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方とも、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0107】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0108】
【化14】

である。
【0109】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−らせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0110】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
【0111】
【化15】

【0112】
【化16】

他の実施形態において、本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子:
【0113】
【化17】

を提供し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0114】
【化18】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
、L、L、およびLは、独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であって、それぞれ、非置換であるかまたはRで置換され;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwの各々は独立して1〜1000の整数であり;
x、yおよびzの各々は独立して0〜10の整数であり;uは1〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0115】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0118】
【化19】

である。
【0119】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカー[−L−S−L−S−L−]の長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−らせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0120】
大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば液相法または固相法によって合成され、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方を含むことができる。例えばChemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。いくつかの実施形態では、チオール部分は、アミノ酸残基L−システイン、D−システイン、α−メチル−Lシステイン、α−メチル−D−システイン、L−ホモシステイン、D−ホモシステイン、α−メチル−L−ホモシステイン、またはα−メチル−D−ホモシステインの側鎖である。ビスアルキル化試薬は、一般式X−L−Yで表されるものであり、式中、Lは、リンカー部分であり、XおよびYは、Lとの結合を形成するために−SH部分によって置き換えられる脱離基である。いくつかの実施形態において、XおよびYは、I、Br、またはClなどのハロゲンである。
【0121】
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物におけるDおよび/またはEは、細胞の取り込みを促進するためにさらに改変される。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子の脂質付加(lipidating)またはペグ化(PEGylating)は、細胞の取り込みを促進し、バイオアベイラビリティを増大させ、血液循環を増加させ、薬物動態を改変し、免疫原性を低下させ、および/または必要とされる投与の頻度を減少させる。
【0122】
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物における、[D]および[E]の少なくとも1つは、上記ペプチド模倣大環状分子が、少なくとも2つの大環状分子形成リンカーを含むような、追加の大環状分子形成リンカーを含む部分を表す。特定の実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、2つの大環状分子形成リンカーを含む。
【0123】
本発明のペプチド模倣大環状分子では、本明細書に記載されている任意の大環状分子形成リンカーは、表1〜4に示される任意の配列との任意の組み合わせで、および本明細書において示される任意のR−置換基との任意の組合せでも、用いられてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、少なくとも1つのα−らせんモチーフを含む。例えば、式I、II、またはIIIの化合物におけるA、B、および/またはCは、1つ以上のα−らせんを含む。一般的な問題として、α−らせんは、1ターンあたり3〜4個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子のα−らせんは、1〜5個のターン、および従って3〜20個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態において、α−らせんは、1個のターン、2個のターン、3個のターン、4個のターン、または5個のターンを含む。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、上記ペプチド模倣大環状分子内に含まれるα−らせんモチーフを安定化させる。従って、いくつかの実施形態において、第1のCαから第2のCαまでの大環状分子形成リンカーLの長さは、α−らせんの安定性を増加させるために選択される。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、α−らせんの1ターン〜5ターンまでの間に架かる(span)。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、α−らせんの約1ターン、2ターン、3ターン、4ターン、または5ターンに架かる。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーの長さは、α−らせんの1ターンあたり約5Å〜9Åまたはα−らせんの1ターンあたり約6Å〜8Åである。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約1ターンに架かる場合、その長さは、約5個の炭素−炭素結合〜13個の炭素−炭素結合、約7個の炭素−炭素結合〜11個の炭素−炭素結合、または約9個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約2ターンに架かる場合、その長さは、約8個の炭素−炭素結合〜16個の炭素−炭素結合、約10個の炭素−炭素結合〜14個の炭素−炭素結合、または約12個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約3ターンに架かる場合、その長さは、約14個の炭素−炭素結合〜22個の炭素−炭素結合、約16個の炭素−炭素結合〜20個の炭素−炭素結合、または約18個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約4ターンに架かる場合、その長さは、約20個の炭素−炭素結合〜28個の炭素−炭素結合、約22個の炭素−炭素結合〜26個の炭素−炭素結合、または約24個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約5ターンに架かる場合、その長さは、約26個の炭素−炭素結合〜34個の炭素−炭素結合、約28個の炭素−炭素結合〜32個の炭素−炭素結合、または約30個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、α−らせんの約1ターンに架かる場合、その連結は、約4個の原子〜12個の原子、約6個の原子〜10個の原子、または約8個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約2ターンに架かる場合、その連結は、約7個の原子〜15個の原子、約9個の原子〜13個の原子、または約11個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約3ターンに架かる場合、その連結は、約13個の原子〜21個の原子、約15個の原子〜19個の原子、または約17個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約4ターンに架かる場合、その連結は、約19個の原子〜27個の原子、約21個の原子〜25個の原子、または約23個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約5ターンに架かる場合、その連結は、約25個の原子〜33個の原子、約27個の原子〜31個の原子、または約29個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約1ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約17員〜25員、約19員〜23員、または約21員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約2ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約29員〜37員、約31員〜35員、または約33員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約3ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約44員〜52員、約46員〜50員、または約48員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約4ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約59員〜67員、約61員〜65員、または約63員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記α−らせんの約5ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約74員〜82員、約76員〜80員、または約78員を含有する環を形成する。
【0125】
他の実施形態において、本発明は、式(IV)または(IVa)のペプチド模倣大環状分子を提供し、
【0126】
【化20】

式中、
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0127】
【化21】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vは1〜1000の整数であり;
wは1〜1000の整数であり;
xは0〜10の整数であり;
yは0〜10の整数であり;
zは0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0128】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0130】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−らせんである二次構造を含み、かつRは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0131】
【化22】

である。
【0132】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−らせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0133】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
【0134】
【化23】

他の実施形態において、本発明は、式(V):
【0135】
【化24】

(式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0136】
【化25】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
、RおよびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれが、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
wは、1〜1000の整数であり;
xは、0〜10の整数であり;
yは、0〜10の整数であり;
zは、0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である)
のペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0137】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。一実施形態では、RはHであり、Rはメチルである。別の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも3である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現(occurrence)は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0139】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、α−らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、らせん内水素結合を可能にする。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0140】
【化26】

である。
【0141】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるα−らせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0142】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態を以下に示す。
【0143】
【化27】

ペプチド模倣大環状分子の例示的な実施形態を以下に示す。
【0144】
【化28】

【0145】
【化29】

ペプチド模倣大環状分子の調製
本発明のペプチド模倣大環状分子は、当技術分野において公知の任意の種々の方法によって調製され得る。例えば、表1、2、3または4において「X」で示される任意の残基が、同じ分子中の第2の残基またはそのような残基の前駆体とクロスリンカーを形成し得る残基で置換されてもよい。
【0146】
ペプチド模倣大環状分子の形成をもたらすための種々の方法が、当技術分野において公知である。例えば、式Iのペプチド模倣大環状分子の調製は、Schafmeisterら,J.Am.Chem.Soc.122:5891−5892(2000);Schafmeister & Verdine,J.Am.Chem.Soc.122:5891(2005);Walenskyら,Science 305:1466−1470(2004);および米国特許7,192,713において記載されている。引用文献において開示されているα,α−二置換アミノ酸およびアミノ酸前駆体を、ペプチド模倣大環状分子の前駆体ポリペプチドの合成において使用してもよい。このようなアミノ酸を前駆体ポリペプチド中に組み込んだ後、末端オレフィンをメタセシス触媒と反応させ、これによってペプチド模倣大環状分子の形成をもたらす。
【0147】
他の実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式IVまたはIVaである。このような大環状分子の調製のための方法は、例えば、米国特許第7,202,332号において記載されている。
【0148】
いくつかの実施形態において、これらのペプチド模倣大環状分子の合成は、アジド部分およびアルキン部分を含有するペプチド模倣物前駆体の合成;その後ペプチド模倣物前駆体を大環状分子化試薬と接触させて、トリアゾール結合ペプチド模倣大環状分子を生成させることを特徴とする複数段階工程を含む。大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば、液相法または固相法によって合成され、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸の両方を含有することができる。例えば、Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985年の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。
【0149】
いくつかの実施形態において、アジドはある残基のα−炭素に結合しており、アルキンは別の残基のα−炭素に結合している。いくつかの実施形態において、アジド部分は、アミノ酸L−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、α−メチル−D−リジン、L−オルニチン、D−オルニチン、α−メチル−L−オルニチンまたはα−メチル−D−オルニチンのアジド−アナログである。別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシンである。さらに別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸である。
【0150】
いくつかの実施形態において、本発明は、ペプチド模倣大環状分子を合成するための方法であって、式VIまたは式VII:
【0151】
【化30】

であって、
式中、v、w、x、y、z、A、B、C、D、E、R、R、R、R、LおよびLは式(II)で定義されたとおりであり、大環状分子化試薬がCu試薬である場合R12は−Hであり、大環状分子化試薬がRu試薬である場合R12は−Hまたはアルキルである、ペプチド模倣物前駆体を、大環状分子化試薬と接触させる工程を含み、さらにこの接触させる工程が、式IIIまたは式IVにおいてアルキンとアジド部分との間に形成される共有結合をもたらす、方法を提供する。例えば、大環状分子化試薬がRu試薬である場合、R12はメチルであってもよい。
【0152】
本発明のペプチド模倣大環状分子において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。1つの例では、Bはα,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。
【0153】
例えば、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。別の例において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つはメチルである。他の実施形態において、RおよびRはメチルである。大環状分子化試薬は、Cu試薬であっても、またはRu試薬であってもよい。
【0154】
いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物前駆体は、接触工程の前に精製される。他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に精製される。さらに他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に再折り畳み(リフォールディング)される。この方法は溶液中で行われてもよいし、または、あるいは、この方法は固体支持体上で行われてもよい。
【0155】
上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に結合する、標的高分子の存在下で本発明の方法を行うこともまた、本発明において想定される。いくつかの実施形態において、この方法は、上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に優先的に結合する標的高分子の存在下で行われる。またこの方法を適用して、ペプチド模倣大環状分子のライブラリーを合成してもよい。
【0156】
いくつかの実施形態において、式VIまたは式VIIのペプチド模倣物前駆体のアルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸、および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。他の実施形態において、式VIまたは式VIIのペプチド模倣物前駆体のアジド部分は、ε−アジド−L−リジン、ε−アジド−D−リジン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、ε−アジド−α−メチル−D−リジン、δ−アジド−α−メチル−L−オルニチン、およびδ−アジド−α−メチル−D−オルニチンからなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。
【0157】
いくつかの実施形態において、x+y+zは3であり、A、BおよびCは独立して、天然または非天然のアミノ酸である。他の実施形態において、x+y+zは6であり、A、BおよびCは独立して天然または非天然のアミノ酸である。
【0158】
本発明のペプチド模倣大環状分子のいくつかの実施形態において、[D]および/または[E]は、追加のペプチド模倣大環状分子または大環状分子構造(macrocyclic structure)を含む。例えば、[D]は、式:
【0159】
【化31】

を有してもよく、
式中、A、C、D’、およびE’はそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0160】
【化32】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
、RおよびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換されており;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vは1〜1000の整数であり;
wは1〜1000の整数であり;かつ
xは0〜10の整数である。
【0161】
別の実施形態において、[E]は、式:
【0162】
【化33】

を有し、式中、置換基は、前段落において定義されたとおりである。
【0163】
いくつかの実施形態において、接触工程は、プロトン性溶媒(protic solvent)、水性溶媒、有機溶媒、およびこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。例えば、溶媒は、HO、THF、THF/HO、tBuOH/HO、DMF、DIPEA、CHCNまたはCHCl、ClCHCHClまたはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。溶媒は、らせん形成に有利な溶媒であってもよい。
【0164】
代替であるが等価な保護基、脱離基または試薬は置換され、かつ特定の合成工程は、代替の順番または所望の化合物を生成する順序で行われる。本明細書に記載の化合物の合成において有用な、合成化学による変換および保護基の方法論(保護および脱保護)としては、例えば、Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons(1991);FieserおよびFieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);およびPaquette編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)、ならびにこれらの後続の版において記載されているものなどを含む。
【0165】
本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、Fieldsら、Synthetic Peptides:A User’s Guideの第3章、Grant編、W.H.Freeman&Co.、New York、N.Y.、1992年、77頁において記載されているものなどの化学合成法によって製造される。従って、例えば、ペプチドは、固相合成の自動化メリフィールド(Merrifield)技術を用いて、側鎖保護アミノ酸を用いてtBocまたはFmoc化学のいずれかによって保護されたアミンを用いて、例えば、自動ペプチド合成機(例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA)、430A、431、または433型)において合成される。
【0166】
本明細書に記載のペプチド模倣物前駆体およびペプチド模倣大環状分子を製造する1つの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を用いる。C末端アミノ酸は、リンカー分子との酸不安定結合を介して架橋ポリスチレン樹脂に結合している。この樹脂は、合成に用いられる溶媒において不溶性であり、このため比較的簡単にかつ迅速に過剰な試薬および副産物を洗い流すようになる。N末端は、Fmoc基で保護されており、酸において安定であるが塩基によって除去することができる。側鎖官能基は、必要に応じて塩基に安定だが酸に不安定な基で保護されている。
【0167】
より長いペプチド模倣物前駆体は、例えば、自然な化学的ライゲーション(native chemical ligation)を用いて個々の合成ペプチドを結合することによって作製される。あるいは、より長い合成ペプチドは、周知の組換えDNA技術およびタンパク質発現技術によって生合成される。このような技術は、周知の標準的マニュアルにおいて詳細なプロトコールとともに提供されている。本発明のペプチド模倣物前駆体をコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、好ましくは遺伝子が発現される生物体に最適なコドンを有する、アミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的には、必要であればペプチドおよび任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクター中に挿入し、宿主細胞中にトランスフェクトする。次いでペプチドを、選択した発現系および宿主に適した適切な条件下で発現させる。ペプチドを標準的な方法によって精製し特徴付ける。
【0168】
ペプチド模倣物前駆体は、例えば、ハイスループット多チャンネルコンビナトリアル合成装置(例えば、CreoSalus、Louisville、KY製のThuramed TETRASマルチチャンネルペプチド合成装置またはAAPPTEC、Inc.、Louisville、KY製のModel Apex 396マルチチャンネルペプチド合成装置)を用いるハイスループットなコンビナトリアル法において、例えば作製される。
【0169】
以下の合成スキームは、本発明を例示するためだけに提供され、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図するものではない。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、アジドアミノ酸アナログであるε−アジド−α−メチル−L−リジンおよびε−アジド−α−メチル−D−リジン、ならびにアルキンアミノ酸アナログであるL−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、および(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸を表す。従って、以下の合成スキームにおいて、各々のR、R、RおよびRは、−Hであり;各々のLは−(CH−であり;各々のLは−(CH)−である。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することが可能で、ここでR、R、R、R、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。
【0170】
合成スキーム1
【0171】
【化34】

合成スキーム1は、本発明のいくつかの化合物の調製を示す。キラル補助基(S)−2−[N−(N’−ベンジルプロリル)アミノ]ベンゾフェノン(BPB)およびグリシンまたはアラニンなどのアミノ酸に由来するシッフ塩基のNi(II)複合体は、Belokonら(1998)、Tetrahedron Asymm.9:4249〜4252において記載されているとおり調製する。得られた複合体を引き続き、アジドまたはアルキニル部分を含むアルキル化試薬と反応させて、鏡像異性的に濃縮された本発明の化合物を得る。必要に応じて、ペプチド合成において使用するために、得られた化合物を保護してもよい。
【0172】
合成スキーム2
【0173】
【化35】

合成スキーム2に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として反応させるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてCu(I)などの大環状分子化試薬との反応の前に精製する(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。一実施形態において、トリアゾール形成反応は、α−らせん形成に有利な条件下で行われる。一実施形態において、大環状分子化工程は、HO、THF、CHCN、DMF、DIPEA、tBuOHまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。別の実施形態において、大環状分子化工程はDMFにおいて行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
【0174】
合成スキーム3
【0175】
【化36】

合成スキーム3に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いた、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、樹脂上で粗混合物としてCu(I)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。次いで、得られたトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子を、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護して、固相樹脂から切断する。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、DMF、THF、NMP、DIPEA、2、6−ルチジン、ピリジン、DMSO、HOまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
【0176】
合成スキーム4
【0177】
【化37】

合成スキーム4に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体は、粗混合物として反応させるか、またはRu(II)試薬、例えば、CpRuCl(PPhもしくは[CpRuCl]などの大環状分子化試薬と反応させる前に精製する(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、DMF、CHCNおよびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
【0178】
合成スキーム5
【0179】
【化38】

合成スキーム5に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、かつ市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として樹脂上でRu(II)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる。例えば、試薬はCpRuCl(PPhまたは[CpRuCl]であってもよい(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、CHCN、DMF、およびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
【0180】
いくつかの例示的なペプチド模倣大環状分子を表5に示す。「Nle」はノルロイシンを表し、メチオニン残基を置換する。同様なリンカーを用いて、表1〜表4において開示されているポリペプチド配列に基づいてペプチド模倣大環状分子を合成することが想定される。
【0181】
【表5−1】

表5は、例示的な本発明のペプチド模倣大環状分子を示す。「Nle」はノルロイシンを示す。
【0182】
本発明は、本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子の合成における天然に存在しないアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子の合成のために使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いることができる。例えば、L−プロパルギルグリシンが本発明において有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含む他のアルキン含有アミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−プロパルギルグリシンは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖のアルキンとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素とアルキンとの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。また、アミノ酸であるL−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、およびα−メチル−D−リジンのアジド−アナログが、本発明において有用なアミノ酸であると想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含有する他の末端アジドアミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−リジンのアジドアナログは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端アジドとの間に4つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端アジドとの間に4つ未満のメチレン単位または4つより多いメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。表6は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用ないくつかのアミノ酸を示す。
【0183】
【表6−1】

表6は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用な例示的アミノ酸を示す。
【0184】
いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはD−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物中に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、α−メチル−L−プロパルギルグリシン、α−メチル−D−プロパルギルグリシン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、およびε−アジド−α−メチル−D−リジンなどのα,α−二置換のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、N−アルキル化、例えば、N−メチル−L−プロパルギルグリシン、N−メチル−D−プロパルギルグリシン、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンである。
【0185】
いくつかの実施形態において、そのアミノ酸の−NH部分は、−Fmocおよび−Bocを含むがこれらに限定されない保護基を用いて保護される。他の実施形態において、そのアミノ酸は、ペプチド模倣大環状分子の合成の前には保護されていない。
【0186】
他の実施形態において、式IIIのペプチド模倣大環状分子が合成される。以下の合成スキームは、そのような化合物の調製を記載する。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、LおよびLが両方とも−(CH)−であるL−システインまたはD−システインに由来するアミノ酸アナログを示す。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することができ、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。「[AA]」、「[AA]」、「[AA]」という記号は、天然または非天然アミノ酸などのアミド結合による結合部分の配列を表す。以前に記述されているとおり、「AA」のそれぞれの出現は任意の他の「AA」の出現とは無関係であり、「[AA]」などの式は、例えば、同一ではないアミノ酸の配列ならびに同一なアミノ酸の配列を包含する。
【0187】
合成スキーム6
【0188】
【化39】

スキーム6において、ペプチド模倣物前駆体は2つの−SH部分を含み、かつN−α−Fmoc−S−トリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−トリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708〜2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって適切に保護されたN−α−Fmoc−S−トリチルモノマーに変換される。次いで前駆体ペプチド模倣物は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MのグアニジニウムHCL、pH8などの水性溶液中で行われる(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552〜2554)。他の実施形態において、アルキル化反応に使用される溶媒はDMFまたはジクロロエタンである。
【0189】
合成スキーム7
【0190】
【化40】

スキーム7において、前駆体ペプチド模倣物は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つは特別に保護されていて、それにより大環状分子形成のためのその選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。前駆体ペプチド模倣物は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルモノマーに変換される。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で有機溶液においてX−L−Yと反応させる。例えば、この反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化反応は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
【0191】
合成スキーム8
【0192】
【化41】

スキーム8において、ペプチド模倣物前駆体は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つが特別に保護されており、大環状分子形成のため、その選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。ペプチド模倣物前駆体は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システイン、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システイン、N−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−L−システイン、およびN−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルまたはN−α−Fmoc−S−S−t−ブチルモノマーに変換される。ペプチド模倣物前駆体のS−S−tブチル保護基は、公知の条件によって選択的に切断される(例えば、DMF中20%2−メルカプトエタノール、参照:Galandeら(2005)、J.Comb.Chem.7:174−177)。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で、有機溶液においてモル過剰のX−L−Yと反応させる。例えば、反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いでペプチド模倣物前駆体は、樹脂上で有機溶液における立体障害塩基による処理によって環化される。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、NH/MeOHまたはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
【0193】
合成スキーム9
【0194】
【化42】

スキーム9において、ペプチド模倣物前駆体は、2つのL−システイン部分を含む。ペプチド模倣物前駆体は、生きた細胞中で公知の生物学的発現系によって、または公知のインビトロの無細胞発現方法によって合成される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L2−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40 :233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MグアニジニウムHCL、pH8(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552−2554)などの水性溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。別の実施形態において、アルキル化は非変性水溶液中で実行され、さらに別の実施形態においてアルキル化は、α−らせん構造形成に有利な条件下で行われる。さらに別の実施形態において、アルキル化は、前駆体ペプチド模倣物が別のタンパク質に結合するのに有利な条件下で行われ、その結果、アルキル化の間に結合α−らせん高次構造の形成がもたらされる。
【0195】
チオール基との反応に適切な、XおよびYについての種々の実施形態が想定される。一般に、各々のXまたはYは独立して、表5に示す一般的なカテゴリーから選択される。例えば、XおよびYは、−Cl、−Brまたは−Iなどのハロゲン化物である。本明細書に記載の任意の大環状分子形成リンカーを、表1〜4に示す任意の配列との任意の組合せ、そしてまた、本明細書に示す任意のR−置換基との任意の組合せでも用いてもよい。
【0196】
【表5−2】

表6は、本発明の例示的な大環状分子を示す。「N」は、ノルロイシンを表し、メチオニン残基を置き換える。同様なリンカーを用いて、表1〜表4において開示されているポリペプチド配列に基づいてペプチド模倣大環状分子を合成することが想定される。
【0197】
【表6−2】

本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子の合成における、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方のアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣大環状分子の合成に使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いてもよい。例えば、システインが、本発明における有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含むシステイン以外の含硫アミノ酸もまた、有用である。例えば、システインは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端−SHとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端−SHの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。非限定的な例としては、α−メチル−L−ホモシステインおよびα−メチル−D−ホモシステインが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログは、D−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態において、アミノ酸アナログは、α−メチル−L−システインおよびα−メチル−D−システインなどのα,α−二置換のものである。
【0198】
本発明は、大環状分子形成リンカーを用いてペプチド模倣物前駆体内の2つ以上の−SH部分を連結させて本発明のペプチド模倣大環状分子が形成される、大環状分子を包含する。上述したように、大環状分子形成リンカーは、立体構造の剛性、代謝安定性の増加および/または細胞透過性の増加を付与する。さらに、いくつかの実施形態において、大環状形成の連結は、ペプチド模倣物の大環状分子のα−らせん二次構造を安定化させる。大環状分子形成リンカーは式X−L−Yのものであり、ここで、上記で定義したとおりXおよびYは両方とも同じ部分または異なる部分である。XおよびYは両方とも、1つの大環状分子形成リンカー−L−によるビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣物前駆体のビスアルキル化を可能にするという化学的特性を有する。上記で定義されているとおり、リンカー−L−は、上記で定義されているとおり、全てが必要に応じてR基で置換することができる、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレンもしくはヘテロシクロアリーレン、または−R−K−R−を含む。さらに、スルフヒドリル含有アミノ酸の−SHに結合している炭素以外の、大環状分子形成リンカー−L−内の1〜3個の炭素原子は、N、SまたはOなどのヘテロ原子で必要に応じて置換される。
【0199】
大環状分子形成リンカーX−L−YのL成分は、とりわけ、ペプチド模倣大環状分子を形成するために用いられる2つのアミノ酸アナログの位置の間の距離に依存して、長さが変化し得る。さらに、大環状分子形成リンカーのL成分および/またはL成分の長さが変化するので、安定なペプチド模倣大環状分子の形成に適切な全長のリンカーを生み出すために、Lの長さもまた変化し得る。例えば、使用されるアミノ酸アナログがさらなるメチレン単位をLおよびLのそれぞれに付加することによって変化する場合、Lの長さは、LおよびLの増加した長さを相殺するために約2メチレン単位に相当する(equivalent)長さだけ減少する。
【0200】
いくつかの実施形態において、Lは、式−(CH−のアルキレン基であり、nは約1〜約15の整数である。例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。他の実施形態において、Lはアルケニレン基である。さらに別の実施形態において、Lはアリール基である。
【0201】
表7は、X−L−Y基のさらなる実施形態を示す。
【0202】
【表7】

スキーム10
【0203】
【化43】

合成スキーム10に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は少なくとも1つのオレフィン部分とアルキン部分を含み、市販のN−a−Fmoc保護アミノ酸およびアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプテン酸のN−α−Fmoc保護形態を用いた、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。上記ペプチドの遊離N末端は、6−ヘプテン酸を用いて標準的なアミド結合形成条件でアシル化される。アシル化基の末端オレフィンは、内部アミノ酸側鎖の末端オレフィンに、米国特許5,811,515に記載のルテニウム触媒型オレフィンメタセシスを用いて架橋される。次いで、ペプチド模倣物前駆体は脱保護され、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって固相樹脂から切断される。
【0204】
本発明を実行するために適切であると想定される、ペプチド模倣大環状分子を形成するためのさらなる方法としては、Mustapa,M.Firouz Mohdら、J.Org.Chem(2003)、68、8193〜8198頁;Yang、Binら Bioorg Med.Chem.Lett.(2004)、14、1403〜1406頁;米国特許第5,364,851号;米国特許第5,446,128号;米国特許第5,824,483号;米国特許第6,713,280号;および米国特許第7,202,332号によって開示されているものが挙げられる。そのような実施形態において、α位にさらなる置換基R−を含有しているアミノ酸前駆体が用いられる。そのようなアミノ酸は、架橋剤が置換される位置、または、あるいは、大環状分子前駆体の配列中のどこか他の場所であってもよい所望の位置で、大環状分子前駆体中に組み込まれる。次いで前駆体の環化を、示される方法に従って達成する。
【0205】
アッセイ
本発明のペプチド模倣大環状分子の特性を、例えば、以下に記述される方法を用いることによってアッセイする。
【0206】
α−ヘリシティを決定するためのアッセイ
溶液中で、α−らせんドメインを有するポリペプチドの二次構造は、ランダムコイル構造とα−らせん構造との間の動的平衡に到達し、「ヘリシティパーセント(percent helicity)」として表される場合が多い。従って、例えば、非改変プロアポトーシスBH3ドメインは大部分が、溶液中で通常25%未満のα−らせん含量を有するランダムコイルである。一方、最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いα−ヘリシティを有する。いくつかの実施形態において、本発明の大環状分子は、50%より高いα−ヘリシティを有する。BH3ドメインベースの大環状分子などの本発明のペプチド模倣大環状分子のヘリシティをアッセイするために、上記化合物を、水性溶液(例えば、pH7の50mMのリン酸カリウム溶液、または蒸留水(distilled HO)、25〜50μMの濃度まで)に溶解する。標準的な測定パラメーター(例えば、温度、20℃;波長、190〜260nm;ステップ分解能、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;光路長(path length)、0.1cm)を用いて、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において円二色性(CD)スペクトルを得る。平均残基楕円率(例えば、[Φ]222obs)をらせんデカペプチドモデル(Yangら(1986)、Methods Enzymol.130:208)について報告されている値で割ることによって、各ペプチドのα−らせん含量を計算する。
【0207】
融解温度(Tm)を決定するためのアッセイ
α−らせんなどの二次構造を含む本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドよりも高い融解温度を示す。代表的には、本発明のペプチド模倣大環状分子は、水性溶液中で高度に安定な構造を表す60℃超のTmを示す。融解温度に対する大環状分子形成の影響をアッセイするために、ペプチド模倣大環状分子または非改変ペプチドを、蒸留水中に溶解(例えば、50μMの最終濃度で)し、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において標準的なパラメーター(例えば、波長222nm;ステップ解像度、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;温度上昇速度:1℃/分;光路長、0.1cm)を用いて、ある温度範囲(例えば、4〜95℃)にわたって楕円率の変化を測定することによって、Tmを決定する。
【0208】
プロテアーゼ耐性アッセイ
ペプチド骨格のアミド結合は、プロテアーゼによる加水分解を受けやすく、そのためペプチド性化合物は、インビボでの急速な分解に対して脆弱になる。しかし、ペプチドらせん形成は、代表的にはアミド骨格を埋没させ、従って、タンパク質分解性の切断からアミド骨格を保護することができる。本発明のペプチド模倣大環状分子をインビトロのトリプシンタンパク質分解に供して、対応する架橋されていないポリペプチドと比較した分解速度の変化について評価し得る。例えば、ペプチド模倣大環状分子および対応する架橋されていないポリペプチドを、トリプシンアガロースでインキュベートし、遠心分離によって種々の時点で反応をクエンチして、その後HPLC注入して、280nmでの紫外線吸収により残存基質を定量する。簡潔に述べると、ペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体(5μg(mcg))を、トリプシンアガロース(Pierce)(S/E約125)で0、10、20、90、および180分間インキュベートする。高速での卓上遠心分離によって反応をクエンチし、HPLCによる280nmでのピーク検出によって単離した上清中の残存している基質を定量する。タンパク質分解反応は一次反応速度式(first−order kinetics)を示し、時間に対するln[S](k=−1X勾配)のプロットから速度定数、kを決定する。
【0209】
エキソビボ安定性アッセイ
最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いエキソビボ半減期を有し、かつ12時間以上のエキソビボ半減期を有する。エキソビボの血清安定性研究には、種々のアッセイを用いてもよい。例えば、ペプチド模倣大環状分子および/または対応する架橋されていないポリペプチド(2μg)をそれぞれ、新鮮なマウス血清、ラット血清および/またはヒト血清(例えば、1〜2mL)とともに、37℃で0、1、2、4、8、および24時間インキュベートする。異なる大環状分子濃度のサンプルは、血清を用いた段階希釈によって調製することができる。インタクトな化合物のレベルを決定するために、以下の手順を用いてもよい:100μlの血清を2mlの遠心管に移すこと、その後に10μLの50%ギ酸および500μLのアセトニトリルを添加し、4±2℃で10分間、14,000RPMで遠心分離することによって、サンプルを抽出する。次いで上清を新しい2mlのチューブに移し、TurbovapにおいてN<10psi下、37℃でエバポレートさせる。サンプルを100μLのアセトニトリル:水(50:50)中で再構成し、LC−MS/MS分析にかける。エキソビボ安定性を試験するための同等または同様の手順は公知であり、血清中の大環状分子の安定性を決定するために用いることができる。
【0210】
インビトロ結合アッセイ
アクセプタータンパク質に対するペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体の結合および親和性を評価するために、例えば、蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。FPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されると、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。
【0211】
例えば、フルオレセイン化(fluoresceinated)ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(25〜1000nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて、非線形回帰分析によって決定し得る。本発明のペプチド模倣大環状分子は、場合によっては、対応する架橋されていないポリペプチドと同様のまたはそれより低いKdを示す。
【0212】
BCL−2、BCL−X、BAXまたはMCL1などのBH3ペプチドに対するアクセプタータンパク質を、例えば、このアッセイにおいて用いてもよい。MDM2またはMDMXなどのp53ペプチドに対するアクセプタータンパク質も、このアッセイで用いてもよい。
【0213】
ペプチド−タンパク質相互作用のアンタゴニストを特徴付けるためのインビトロ置換アッセイ
ペプチド(例えば、BH3ペプチドまたはp53ペプチド)とアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物の結合および親和性を評価するために、例えば、ペプチド模倣物前駆体配列に由来するフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子を利用する蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。このFPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されるとき、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。フルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子とアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物は、競合的結合FPA実験において検出される。
【0214】
例えば、推定アンタゴニスト化合物(1nM〜1mM)およびフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(50nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。アンタゴニスト結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて非線形回帰分析によって決定することができる。
【0215】
有機低分子、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質などの任意のクラスの分子を、このアッセイにおいて推定アンタゴニストとして検査してもよい。BCL2、BCL−XL、BAXまたはMCL1などのBH3ペプチドに対するアクセプタータンパク質を、このアッセイにおいて用いてもよい。MDM2またはMDMXなどのp53ペプチドのアクセプタータンパク質をこのアッセイで用いてもよい。
【0216】
インタクトな細胞における結合アッセイ
インタクトな細胞における、それらの天然アクセプターに対するペプチドまたはペプチド模倣大環状分子の結合は、免疫沈降実験によって測定することが可能である。例えば、インタクトな細胞を、血清の非存在下でフルオレセイン化(FITC標識)化合物とともに4時間インキュベートし、次に、血清置換(serum replacement)し、さらに4時間〜18時間の範囲でインキュベートする。次いで細胞をペレットにして、溶解緩衝液(50mMのTris[pH7.6]、150mMのNaCl、1%CHAPSおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で、10分間4℃でインキュベートする。抽出物を14,000rpmで15分間遠心分離にかけ、上清を回収して10μlのヤギ抗FITC抗体と4℃で回転させながら2時間インキュベートし、その後さらに4℃で2時間、プロテインA/Gセファロース(50μlの50%ビーズスラリー)とインキュベートする。短時間の遠心分離の後、ペレットを、漸増する塩濃度(例えば、150、300、500mM)を含有する溶解緩衝液中で洗浄する。次いで、ビーズを、150mMのNaClで再平衡化させて、その後SDS含有サンプル緩衝液の添加および煮沸を行う。遠心分離後、上清を必要に応じて、4%〜12%勾配Bis−Trisゲルを用いて電気泳動し、その後Immobilon−Pメンブレンに移す。ブロッキング後、必要に応じて、ブロットを、FITCを検出する抗体と、またBCL2、MCL1、BCL−XL、A1、BAX、BAK、MDM2またはMDMXを含む、ペプチド模倣大環状分子に結合するタンパク質を検出する1つ以上の抗体とともに、インキュベートする。
【0217】
細胞透過性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する非架橋ポリペプチドに比べてより細胞透過性である。いくつかの実施形態では、ペプチド模倣大環状分子は、対応する非架橋ポリペプチドよりも細胞透過性である。最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する非架橋ポリペプチドよりも少なくとも2倍大きい細胞透過性を有し、多くの場合、4時間後において、適用されたペプチド模倣大環状分子の20%以上が細胞を透過したことが観察される。ペプチド模倣大環状分子および対応する非架橋ポリペプチドの細胞透過性を測定するために、インタクトな細胞を、フルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子または対応する非架橋ポリペプチド(10μM)と一緒に4時間、37℃で、無血清媒体中で、インキュベートし、媒体で2回洗浄し、トリプシン(0.25%)で10分間、37℃でインキュベートする。細胞を再度洗浄してPBS中に再懸濁する。細胞の蛍光を、例えば、FACSCaliburフローサイトメーターまたはCellomics’ KineticScan(登録商標)HCS Readerのいずれかを用いることによって分析する。
【0218】
細胞効力アッセイ
特定のペプチド模倣大環状分子の効力は、例えば、ヒトまたはマウス細胞集団に由来する種々の腫瘍形成性および非腫瘍形成性の細胞系統ならびに初代細胞を用いる細胞ベースの死滅アッセイにおいて決定される。細胞生存率を、例えば、ペプチド模倣大環状分子(0.5〜50μM)による24〜96時間のインキュベーションにわたってモニターして、EC50<10μMで死滅させるペプチド模倣大環状分子を特定する。細胞生存率を測定するいくつかの標準的なアッセイが市販されており、ペプチド模倣大環状分子の効力を評価するために必要に応じて用いられる。さらに、ペプチド模倣大環状分子がアポトーシス機構を活性化することによって細胞を死滅させるか否かを評価するために、アネキシンVおよびカスパーゼ活性化を測定するアッセイが必要に応じて用いられる。例えば、細胞内ATP濃度の関数として細胞生存率を決定するCell Titer−gloアッセイが用いられる。
【0219】
インビボ安定性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子のインビボ安定性を検討するために、化合物を、例えば、マウスおよび/またはラットに、IV、IP、POまたは吸入経路によって0.1〜50mg/kgの範囲の濃度で投与し、注入後0分、5分、15分、30分、1時間、4時間、8時間および24時間で血液検体を採取する。次いで25μLの新鮮血清中のインタクトな化合物のレベルをLC−MS/MSによって上記のとおり測定する。
【0220】
動物モデルにおけるインビボ効力
インビボでの本発明のペプチド模倣大環状分子の抗腫瘍形成活性を決定するために、化合物を、例えば、単独で(IP、IV、PO、吸入または鼻腔内経路によって)または最適以下の用量の関連する化学療法(例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、エトポシド)と組み合わせて投与する。一例において、ルシフェラーゼを安定に発現する5×10個のRS4;11細胞(急性リンパ芽球性白血病患者の骨髄から樹立した)を、NOD−SCIDマウスの尾静脈内に、全身照射を受けてから3時間後に注入する。治療しないまま放置した場合、この形態の白血病はこのモデルにおいて3週間以内に死に至る。白血病は、例えば、マウスにD−ルシフェリン(60mg/kg)を注入し、麻酔をかけた動物をイメージングする(例えば、Xenogen In Vivo Imaging System、Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)ことによって、容易にモニターされる。全身の生物発光を、Living Image Software(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)による光子フラックス(光子/秒)の積分によって定量する。単独のまたは最適以下の用量の関連する化学療法剤と組み合わせたペプチド模倣大環状分子を、例えば、白血病マウス(注入の10日後/実験の1日目、14〜16の生物発光範囲内)に尾静脈またはIP経路で0.1mg/kg〜50mg/kgの範囲の用量で7〜21日間投与する。必要に応じて、実験中1日おきにマウスをイメージングし、実験期間中、毎日生存をモニターする。死亡したマウスを必要に応じて、実験終了の時点で解剖する。別の動物モデルは、ルシフェラーゼを安定に発現する、ヒト濾胞性リンパ腫に由来する細胞系統DoHH2の、NOD−SCIDマウスへの移植である。これらのインビボ試験では必要に応じて、予備的な薬物動態的、薬力学的および毒性データを作成する。
【0221】
臨床試験
ヒトの治療に対する本発明のペプチド模倣大環状分子の適合を決定するために、臨床試験を行う。例えば、癌と診断されかつ治療を必要とする患者を選択して、治療群および1つ以上のコントロール群に分け、治療群には本発明のペプチド模倣大環状分子を投与し、一方コントロール群には、プラセボ、または公知の抗癌剤を与える。従って、本発明のペプチド模倣大環状分子の治療の安全性および効力は、生存およびクオリティー・オブ・ライフなどの因子に関して患者群の比較を行うことによって評価することができる。この例において、ペプチド模倣大環状分子で治療した患者群は、プラセボで治療した患者コントロール群と比較して長期生存の改善を示す。
【0222】
医薬組成物および投与経路
投与方法としては、限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、脳内、膣内、経皮、経直腸、吸入、または耳、鼻、目もしくは皮膚への適用による局所が挙げられる。
【0223】
本発明のペプチド模倣大環状分子はまた、薬学的に受容可能な誘導体またはそのプロドラッグも含む。「薬学的に受容可能な誘導体」とは、レシピエントへの投与の際、本発明の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステルの塩、プロドラッグまたは他の誘導体を意味する。特に好ましい薬学的に受容可能な誘導体は、哺乳動物に投与される場合、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経口投与された化合物の血液中への吸収を増加させることによって)か、またはその親種と比較して生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への活性な化合物の送達を増加させるものである。いくつかの薬学的に受容可能な誘導体は、水溶解度(aqueous solubility)または胃腸粘膜の能動輸送を増大する化学基を含む。
【0224】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、選択的な生物学的特性を増強するために、適切な官能基を共有結合または非共有結合で結合することによって改変される。そのような改変としては、所与の生物学的コンパートメント(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透性を増大させる、経口の利用可能性を増加させる、可溶性を増大させて注入による投与を可能にする、代謝を変化させる、および排泄率を変化させる改変が挙げられる。
【0225】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機の酸および塩基に由来する塩ならびに有機の酸および塩基に由来する塩が挙げられる。適切な酸塩(acid salt)の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩およびN−(アルキル)塩が挙げられる。
【0226】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に受容可能なキャリアとしては固体または液体のいずれかのキャリアが挙げられる。固体形態の調製物としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性粒剤が挙げられる。固体キャリアは、希釈剤、着香剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても機能する1つ以上の物質であってもよい。処方および投与のための技術に関する詳細は、科学文献および特許文献において十分に記述されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Maack Publishing Co、Easton PAの最新版を参照のこと。
【0227】
粉末剤においては、キャリアとは、微粉化した(finely divides)活性成分と混合されている微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な結合特性を有するキャリアと適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。
【0228】
適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質増量剤(filler)であり、これには、限定するものではないが、糖、例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または別の植物由来のデンプン;セルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム;ならびにアラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が挙げられる。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩のような崩壊剤または可溶化剤を加える。
【0229】
液体形態の調製物としては、液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注入用に、液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液に処方することができる。「非経口」という用語は、本明細書において使用される場合、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、および皮下を含む投与方法のことをいう。
【0230】
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に小分割される。単位剤形は、バイアルまたはアンプル中に、小分けされた錠剤、カプセル、および粉末など、個別量の調製物を収容しているパッケージであるパッケージ調製物であってもよい。また、単位剤形は、それ自体カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジであってもよく、または、適切な数の任意のこれらのパッケージ化形態であってもよい。
【0231】
本発明の組成物がペプチド模倣大環状分子と1つ以上のさらなる治療剤または予防剤の組合せを含む場合、化合物およびさらなる薬剤の両方は、単独療法レジメンにおいて通常投与される投薬量の約1〜100%、およびより好ましくは約5〜95%の投薬量レベルで存在するべきである。いくつかの実施形態において、さらなる薬剤は、反復投与レジメンの一部として、本発明の化合物とは別々に投与される。あるいは、これらの薬剤は1つの剤形の一部であり、1つの組成物中で本発明の化合物と一緒に混合される。
【0232】
使用方法
一局面において、本発明は、ペプチド模倣大環状分子がモデリングされる際にタンパク質またはペプチドの天然リガンド(単数または複数)に結合する因子を特定するための競合的結合アッセイにおいて有用である、新規なペプチド模倣大環状分子を提供する。例えば、p53MDM2系において、p53に基づく標識され安定化されたペプチド模倣大環状分子を、競合的にMDM2に結合する低分子とともにMDM2結合アッセイにおいて用いる。競合的結合研究によって、p53/MDM2系に特異的な薬物候補の迅速なインビトロ評価および決定が可能になる。同様に、BH3/BCL−X抗アポトーシス系では、BH3に基づく標識されたペプチド模倣大環状分子を、競合的にBCL−Xに結合する低分子とともにBCL−X結合アッセイにおいて用いてもよい。競合的結合研究によって、BH3/BCL−X系に特異的な薬物候補の迅速なインビトロ評価および決定が可能になる。本発明はさらに、ペプチド模倣大環状分子に対する抗体の産生を提供する。いくつかの実施形態において、これらの抗体は、ペプチド模倣大環状分子、およびそのペプチド模倣大環状分子が誘導されるp53またはBH3ペプチド模倣大環状分子前駆体の両方に特異的に結合する。そのような抗体は、例えば、p53/MDM2系またはBH3/BCL−XL系をそれぞれ妨害する。
【0233】
他の局面において、本発明は、異常な(例えば、不十分なまたは過剰な)BCL−2ファミリーメンバーの発現または活性(例えば、外因性または内因性アポトーシス経路異常)に関連する障害のリスクがある(または罹患しやすい)か、または障害を有する被験体を処置するための予防方法および治療方法の両方を提供する。いくつかのBCL−2型障害は、少なくとも一部は、1つ以上のBCL−2ファミリーメンバーの異常レベル(例えば、過剰または過少発現)によって、または異常な活性を示す1つ以上のBCL−2ファミリーメンバーの存在によって引き起こされると考えられている。そのように、BCL−2ファミリーメンバーのレベルおよび/または活性の減少あるいはBCL−2ファミリーメンバーのレベルおよび/または活性の増強は、例えば、障害の有害な症状を改善または減少させるために用いられる。
【0234】
別の局面において、本発明は、腫瘍細胞においてp53とMDM2との間の相互作用または結合を妨害することによって、過剰増殖性疾患を処置または予防するための方法を提供する。これらの方法は、ヒトを含む温血動物に対して、または野性型のp53を含む腫瘍細胞に対して、本発明の化合物の有効量を投与する工程を包含する。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の投与は、細胞増殖停止またはアポトーシスを誘導する。他の実施形態またはさらなる実施形態では、本発明を用いて、MDM2レベルの上昇を含む疾患および/または腫瘍細胞を処置する。本明細書において用いる場合、MDM2のレベルの上昇とは、ELISAおよび同様のアッセイによって測定した場合、mdm2の正常なコピー数(2)より多く、または1細胞あたり約10,000個を超えるMDM2分子を含む細胞中で見出されるより大きいMDM2レベルを指す(Picksleyら、(1994),Oncogene 9,2523 2529)。
【0235】
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を、回復させる、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、治す、改善する、好転させる、または影響を与えるという目的で、その疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を有する患者への治療剤の適用もしくは投与、または、その患者から単離した組織もしくは細胞系統への治療剤の適用もしくは投与として定義される。
【0236】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子を用いて、癌および腫瘍性の状態を処置、予防、および/または診断する。本明細書において用いる場合、「癌」、「過剰増殖性」および「腫瘍性」という用語は、自律的増殖能、すなわち、急速に増殖する細胞増殖によって特徴付けられる異常な状況または状態を有する細胞のことをいう。過剰増殖性疾患および腫瘍性疾患の状況は、病的なもの、すなわち、疾患状況を特徴付けているかまたは構成しているものとして分類してもよいし、または非病的なもの、すなわち、正常な状況から逸脱しているが疾患状況を伴わないものとして分類してもよい。この用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲性のステージに関係なく、全てのタイプの癌増殖または腫瘍形成過程、転移組織または悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官を含むことを意味する。転移性腫瘍は、乳房、肺、肝臓、結腸および卵巣の起源の腫瘍を含むがこれらに限定されない、複数の原発性腫瘍型から生じる可能性がある。「病的過剰増殖性」細胞は、悪性腫瘍増殖によって特徴付けられる疾患状況において発生する。非病的な過剰増殖性細胞の例としては、創傷回復に伴う細胞の増殖が挙げられる。細胞増殖性障害および/または分化性障害の例としては、癌、例えば、癌腫、肉腫、または転移性障害が挙げられる。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、そのような癌の転移などを制御するための新規な治療剤である。
【0237】
癌または腫瘍形成病態の例としては、限定するものではないが、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頸部癌、皮膚癌、脳腫瘍、扁平上皮癌、皮脂腺腺癌(sebaceous gland carcinoma)、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーマ、星状膠細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽腫、網膜芽腫、白血病、リンパ腫、またはカポジ肉腫が挙げられる。
【0238】
増殖性障害の例としては、造血性新形成障害が挙げられる。本明細書において用いられる場合、「造血性新形成障害」という用語は、造血起源の、例えば、骨髄系、リンパ系または赤血球系、またはこれらの前駆体細胞から生じる、過形成/新形成細胞を伴う疾患を包含する。好ましくは、その疾患は、低分化急性白血病、例えば、赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。さらなる例示的な骨髄障害としては、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)(Vaickus(1991)、Crit Rev.Oncol./Hemotol.11:267〜97に概説されている)が挙げられるがこれらに限定されず;リンパ性悪性疾患としては、限定するものではないが、B細胞系ALLおよびT細胞系ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、前リンパ性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)およびワルデンストロームマクログロブリン血症(WM)が挙げられる。悪性リンパ腫のさらなる形態としては、限定するものではないが、非ホジキンリンパ腫およびその変種、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGF)、ホジキン病およびReed−Stemberg病が挙げられる。
【0239】
乳房の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、増殖性乳房疾患、例としては、例えば、上皮過形成、硬化性腺症、および小管乳頭腫;腫瘍、例えば、線維腺腫、葉状腫瘍、および肉腫などの間質性腫瘍、ならびに大管乳頭腫などの上皮腫瘍;上皮内腺管癌(ductal carcinoma in situ)(パジェット病を含む)および上皮内小葉癌を含む上皮内(非侵襲性)癌を含む乳房の癌、ならびに、侵襲性腺管癌、侵襲性小葉癌、髄様癌、膠様(粘液性)癌、管状癌、および侵襲性乳頭状癌を含むがこれらに限定されない侵襲性(浸潤性)癌、ならびに混合型悪性新生物が挙げられる。男性乳房における障害としては、女性化乳房および癌腫を含むがこれらに限定されない。
【0240】
肺の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、気管支原性癌、例としては、腫瘍随伴症候群、細気管支肺胞癌、神経内分泌腫瘍、例えば、気管支カルチノイド、混合型腫瘍、および転移性腫瘍;肋膜の病理、例としては、炎症性胸水、非炎症性胸水、気胸、および胸膜腫瘍、例としては、孤立性線維性腫瘍(胸膜線維腫)および悪性中皮腫が挙げられる。
【0241】
結腸の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、非新形成ポリープ、腺腫、家族性症候群、結腸直腸発癌、結腸直腸がん、およびカルチノイド腫瘍が挙げられる。
【0242】
肝臓の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、結節性過形成、腺腫、ならびに悪性腫瘍、例としては、肝臓の原発性がんおよび転移性腫瘍が挙げられる。
【0243】
卵巣の細胞増殖障害および/または細胞分化障害の例としては、限定するものではないが、卵巣腫瘍、例えば、体腔上皮の腫瘍、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、子宮内膜性腫瘍、明細胞腺癌、嚢胞性線維腺腫(cystadenofibroma)、ブレンナー腫瘍、表層上皮腫瘍;胚細胞腫瘍、例えば、成熟型(良性)奇形腫、単胚葉性奇形腫(monodermal teratoma)、未熟型悪性奇形腫、未分化胚細胞種、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌;性索間質性腫瘍、例えば、顆粒膜夾膜細胞腫、莢膜細胞腫線維腫(thecomafibroma)、アンドロブラストーマ、ヒル(hill)細胞腫瘍、および性腺芽腫;ならびに転移性腫瘍、例えば、クルーケンベルグ腫瘍が挙げられる。
【0244】
他の実施形態またはさらなる実施形態では、本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子を用いて、過活動性細胞死または生理的傷害などによる細胞死によって特徴付けられる病態を処置、予防または診断する。早発性のまたは望ましくない細胞死によって特徴付けられる病態、またはあるいは望ましくないまたは過剰な細胞増殖のいくつかの例としては、限定するものではないが、細胞低形成性(hypocellular)/低形成性、無細胞性/無形成性、または細胞過形成性(hypercellular)/過形成性の病態が挙げられる。いくつかの例としては、血液系の障害、例としては、限定するものではないが、ファンコニ−貧血、再生不良性貧血、サラセミア、先天性好中球減少症、骨髄異形成が挙げられる。
【0245】
他の実施形態またはさらなる実施形態において、アポトーシスを減少させるように作用する本発明のペプチド模倣大環状分子を用いて、望ましくないレベルの細胞死に関連する障害を処置する。従って、いくつかの実施形態において、本発明の抗アポトーシスペプチド模倣大環状分子を用いて、ウイルス感染、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染に関連する感染に伴う細胞死を引き起こすものなどの障害を処置する。広範な神経系の疾患が、特定のセットのニューロンの逐次の消失によって特徴付けられ、本発明の抗アポトーシスペプチド模倣大環状分子は、いくつかの実施形態においてこれらの障害の処置に用いられる。そのような障害としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋委縮性側索硬化症(ALS)色素性網膜炎、脊髄性筋委縮症、および種々の形態の小脳変性症が挙げられる。これらの疾患における細胞消失は、炎症応答を引き起こさず、アポトーシスが細胞死の機構であるようである。加えて、いくつかの血液系疾患が、血球の産生減少と関連している。これらの障害としては、慢性疾患に伴う貧血、再生不良性貧血、慢性好中球減少症、および骨髄異形成症候群が挙げられる。骨髄異形成症候群および一部の形態の再生不良性貧血などの血球産生の障害は、骨髄内のアポトーシス細胞死の増加と関連している。これらの障害は、アポトーシスを促進する遺伝子の活性化、間質細胞もしくは造血性生存因子の後天性欠乏、または毒素および免疫応答のメディエーターの直接的作用に起因する可能性がある。細胞死と関連する2つのよく見られる障害は、心筋梗塞および脳卒中(stroke)である。両方の障害において、急激な血流の喪失という事象において生じる虚血の中心部内の細胞は、壊死の結果として急速に死滅するように見える。しかしながら、中心虚血領域の外部では、細胞はより長い期間にわたって死滅し、形態学的にはアポトーシスによって死滅するように見える。他の実施形態またはさらなる実施形態では、本発明の抗アポトーシスペプチド模倣大環状分子を用いて、望ましくない細胞死に関連する全てのこのような障害を処置する。
【0246】
本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子で処置される免疫障害のいくつかの例としては、限定するものではないが、臓器移植拒絶反応、関節炎、狼瘡、IBD、クローン病、喘息、多発性硬化症、糖尿病などが挙げられる。
【0247】
本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子で処置される神経障害のいくつかの例としては限定するものではないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、オランダ型遺伝性脳出血アミロイドーシス、反応性アミロイドーシス、蕁麻疹および難聴を伴う家族性アミロイド腎症、マックルウェルズ症候群、特発性骨髄腫;マクログロブリン血症随伴性骨髄腫、家族性アミロイド多発性神経炎、家族性アミロイド心筋症、孤立性心アミロイド、全身性老人性アミロイドーシス、成人発症糖尿病、インスリノーマ、孤立性心房性アミロイド、甲状腺の髄様癌、家族性アミロイドーシス、アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、家族性アミロイド性多発性ニューロパシー、スクレイピー、クロイツフェルトヤコブ病、ゲルストマンストロイスラー−シャインカー症候群、ウシ海綿状脳症、プリオン媒介疾患、およびハンチントン病が挙げられる。
【0248】
本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子で処置される内分泌障害のいくつかの例としては、限定するものではないが、糖尿病、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、副甲状腺機能低下症、性機能低下症などが挙げられる。
【0249】
本発明のペプチド模倣大環状分子で処置または予防される心臓血管障害(例えば、炎症性障害)の例としては、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、発作(stroke)、血栓症、動脈瘤、心不全、虚血性心疾患、狭心症、心臓突然死、高血圧性心疾患;細動脈硬化症、小血管疾患、腎症、高グリセリド血症、高コレステロール血症、高脂血症、黄色腫症、喘息、高血圧症、気腫および慢性肺疾患などの非冠動脈疾患;あるいは血管形成術後の再狭窄、シャント、ステント、合成もしくは天然切除移植片、留置カテーテル、弁または別の移植可能なデバイスの留置などの介入処置を伴う心臓血管状態(「処置による血管外傷」)が挙げられる。好ましい心臓血管障害としては、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、動脈瘤、および発作が挙げられる。
【実施例】
【0250】
以下の節では、本発明の例示的実施例を提供する。
【0251】
実施例1.本発明のペプチド模倣大環状分子の合成
α−らせんのBID、BIMおよびp53ペプチド模倣大環状分子を先に記載されたように(Walenskyら(2004)Science 305:1466−70;Walenskyら(2006)Mol Cell 24:199−210;Bernalら(2007)J.Am Chem Soc.9129、2456−2457)および以下に示すとおり、合成し、精製し、解析した。この試験に使用した大環状分子を図1に示す。対応する非架橋ポリペプチドは、本発明のペプチド模倣大環状分子の天然の対応物である。
【0252】
オレフィン側鎖を含むα,α二置換非天然アミノ酸を、Williamsら(1991)J.Am.Chem.Soc.113:9276;Schafmeisterら(2000)J.Am.Chem Soc.122:5891およびVerdineら PCT WO 2008/121767に従って合成した。ペプチド模倣大環状分子は、2個以上の天然に存在するアミノ酸(表1を参照のこと)を対応する合成アミノ酸で置き換えることにより設計した。置換は、iおよびi+4の位置またはiおよびi+7位置で行なった。大環状分子は、固相ペプチド合成の後、合成アミノ酸のオレフィンメタセシスに基づく架橋によって、そのオレフィン含有側鎖を介して生成した。
【0253】
表示する配列において、以下の略号を用いる:「Nle」はノルロイシンを表し、「Aib」は2−アミノイソ酪酸を表し、「Ac」はアセチルを表し、「Pr」はプロピオニルを表す。「$」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+4までの架橋剤によって接続されたα−Me S5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$r5」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+4までの架橋剤によって接続されたα−Me R5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$s8」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+7までの架橋剤によって接続されたα−Me S8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$r8」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+7までの架橋剤によって接続されたα−Me R8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「St」で表されるアミノ酸は、2つの全ての炭素架橋剤(S−5/R−5ビス−ペンテニルアミノ酸)を接続する。「Hep」で表されるアミノ酸は、オレフィン架橋N末端ヘプテン酸である。架橋剤は、各々のアミノ酸のα炭素間に8個または11個の炭素原子を含む線状の全ての炭素架橋剤である。
【0254】
非天然アミノ酸(五炭素のオレフィンアミノ酸のRおよびS鏡像異性体ならびに八炭素のオレフィンアミノ酸のS鏡像異性体)を、核磁気共鳴(NMR)分光法(Varian Mercury 400)および質量分析法(Micromass LCT)により特徴付けた。ペプチド合成を、固相条件、リンクアミドAM樹脂(rink amide AM resin)(Novabiochem)およびFmoc主鎖保護基化学を用いて、手作業または自動ペプチド合成装置(Applied Biosystems,model 433A)のいずれかで行った。天然Fmoc保護アミノ酸(Novabiochem)のカップリングのために、10当量のアミノ酸および1:1:2モル比のカップリング試薬HBTU/HOBt(Novabiochem)/DIEAを使用した。非天然のアミノ酸(4当量)を、1:1:2モル比のHATU(Applied Biosystems)/HOBt/DIEAを用いてカップリングした。オレフィンメタセシスを、脱気したジクロロメタンに溶解した10mMのGrubbs触媒(Blackewellら,1994、上記)(Strem Chemicals)を用いて、固相において行い、室温において2時間反応させた。メタセシスされた化合物の単離は、トリフルオロ酢酸が媒介する脱保護および切断、粗生成物を得るためのエーテル沈殿、ならびに純粋な化合物を得るための逆相C18カラム(Varian)における高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Varian ProStar)により達成した。純粋な生成物の化学組成は、LC/MS質量分析(Agilent 1100 HPLCシステムとインターフェース接続したMicromass LCT)およびアミノ酸分析(Applied Biosystems、モデル420A)により確認した。
【0255】
実施例2.N末端架橋SP−18およびSP19大環状分子の合成
【0256】
【化44】

ペプチドを、Thuramed Tetras自動マルチチャンネルペプチド合成装置において、4−(2’4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシアセトアミド−ノルロイシルアミノメチル結合ポリスチレン樹脂(Rink AM樹脂)から始めて伸長させた。アミノ酸(5当量)を、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)保護に基づく標準的な固相プロトコルおよびカップリング剤として2−(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)(5当量)を用いてカップリングさせた。自動プロセスの間、α−メチル化Fmoc保護オレフィンアミノ酸(これは、反応時間が長いシングルカップリングを行なった)以外のアミノ酸にはすべてダブルカップリングを使用した。最後のアミノ酸をペプチドに付加した後、Fmoc基を除去し、遊離アミンを、10%DIEA中の無水酢酸を用いてアシル化した。線状ペプチドを上記のようにして、樹脂(最初の樹脂充填量に基づき0.5mmol)上で構築し、所望のFmoc保護オレフィンアミノ酸を組み込んだ。最後のアミノ酸のカップリング後、上記に概要を示した方法を用いて、N末端を6−ヘプテン酸(5当量)でアシル化した。樹脂をDCMで洗浄した。樹脂を減圧乾燥させ、Grubbs I触媒(20mL,4mg/mL,0.02mmol)の無水DCM溶液中に溶解させた。18時間後、反応物を濾過し、樹脂をDCMで洗浄した。オレフィンメタセシス工程を、出発材料が完全に消費されるまで繰り返した。環化されたペプチドを樹脂から同時に切断し、樹脂を、トリフルオロ酢酸(TFA)(93.5%)、水(2.5%)、トリイソプロピルシラン(TIPS)、(2.5%)、およびエタンジチオール(EDT)(2.5%)の溶液(15mL)で処理することにより側鎖上の保護基を除去した。4時間後、冷ジエチルエーテル(200mL)を添加した。混合物を遠心分離し、上清みをデカンテーションした。ペレットを1:1のアセトニトリル/水(50mL)中に懸濁させ、凍結乾燥させた。粗製ペプチドを、C18逆相HPLC(移動相としてアセトニトリルと水(0.1%TFA含有)を使用)を用いて精製した。所望のペプチドを含む画分をプールした。画分を50:50 アセトニトリル:HCl(水性)(60mN、次いで10mN)中で2回、および50:50 アセトニトリル:水中で1回凍結乾燥させ、SP18またはSP19を無色の固形物として得た(SP18:16mg,SP19:32mg)。
【0257】
実施例3.試料の調製および標準曲線の作成:
インビボ血漿安定性試験のため、50μLの10mMの各々の大環状分子(DMSO中)を、9950μLのラット血漿(1:200v/v)と混合し、ボルテックスによって混合した(4分間)。このストックをラット血漿中で連続希釈し、9種類の標準品(20〜20,000、または100〜50,000ng/mLの範囲)を得た。高濃度(初期の時点)の試験試料は、ブランク血漿中で10:1または5:1に希釈した。血漿ブランクを含む試料はすべて、内部標準ペプチド(血漿中)と1:1v/vで混合した。
【0258】
実施例4.薬物動態的解析
IV用量製剤は、本発明のペプチド模倣大環状分子を5%DMSO/D5Wに、10mg/Kg/用量が得られるように溶解させることにより調製される。この試験では、カニューレ処置された(canulated)Crl:CD(登録商標)(SD)雄ラット(7〜8週齢,Charles River Laboratories)を使用する。静脈内用量を大腿静脈カニューレを介して投与し、動物に注射1回あたり10mL/kgを投与する。薬物動態的解析用の血液を10の時点(投与の0.0833、0.25、0.5、1、2、4、6、8、12および24時間後)で採取する。最後の試料採取後、動物を致死(terminate)させる(剖検なし)。
【0259】
全血試料を約4℃で10分間遠心分離する(約1500×g)。血漿を調製し、血液採取/遠心分離の30分以内に新鮮チューブに移し、これを凍結させ、暗所にて約−70℃でLC−MS/MS解析のために調製するまで保存する。
【0260】
試料の抽出は、例えば、10μLの50%ギ酸を100μLの血漿(試料または標準品)に添加した後、10秒間ボルテックスすることにより行なう。500μLのアセトニトリルを添加した後、2分間ボルテックスし、14,000rpmで10分間、約4℃にて遠心分離する。上清みをきれいなチューブに移し、Turbovapにおいて<10psiで37℃にてエバポレートする。LC−MS/MS解析の前に、試料を100μLの50:50のアセトニトリル:水で再構成する。
【0261】
ピーク血漿濃度(Cmax)、ピーク血漿濃度に達するのに要する時間(tmax)、血漿消失半減期(plasma terminal half−life)(t1/2)、血漿濃度時間曲線下面積(AUC)、クリアランスおよび分布容量を血漿濃度データから計算する。薬物動態の計算はすべて、WinNonlinバージョン4.1(Pharsight Corp)を用いて、ノンコンパートメント解析によって行なう。本発明のペプチド模倣大環状分子のこの解析の結果を図2に示す。
【0262】
以下のLC−MS/MS法を使用する。簡単には、使用したLC−MS/MS機器はAPI 365(Applied Biosystems)であった。分析カラムはPhenomenex Synergi(4μ,Polar−RP,50mm×2mm)であり、移動相A(水中の0.1%ギ酸)およびB(メタノール中の0.1%ギ酸)は、以下の勾配が得られるように0.4ml/分の流速でポンプ輸送する。
【0263】
【表8】

MRM: 814.0〜374.2(陽イオン化)
(実施例5)
血清タンパク質に対するみかけの親和性(K)の決定
EC50シフト分析による血清タンパク質についてのみかけのK値の測定によって、血清アルブミンおよび他の血清タンパク質に結合する実験化合物の傾向を定量する簡易かつ迅速な手段が得られる。血清タンパク質の存在下におけるみかけのEC’50(EC50)とインビトロアッセイに添加された血清タンパク質の量との間には線形の関係が存在する。この関係は、Kとして表される血清タンパク質についての化合物の結合親和性によって規定される。この項は、複数の実験的に識別不能な結合事象の累積効果から生じ得る、実験的に決定されるみかけの解離定数である。この関係の形態はここでは式(1)に示しており、その由来は、Copelandら、Biorg.Med Chem Lett.2004,14:2309〜2312に見出され得る。
【0264】
【数3】

血清タンパク質結合のかなりの割合が、血清中で血清アルブミンが極めて高濃度であることに起因する(35〜50g/Lまたは530〜758μM)、このタンパク質との薬物相互作用に帰せられ得る。これらの化合物についてのK値を算出するために、本発明者らは、タンパク質添加の際のEC50におけるシフトが、添加された血清に存在する血清アルブミンに完全に帰せられ得ると仮定しており、ここでPは100%の血清について700μMであり、Pは10%の血清について70μMであるなどである。本発明者らは、さらに、化合物の全てが1:1の化学量論で血清アルブミンに結合し、そのため式(1)の項nは一致して固定されるという簡易な仮定を行った。これらのパラメーターを適切な位置において、本発明者らは、Mathematica4.1(Wolfram Research,Inc.,www.wolfram.com)を用いて式1の非線形回帰分析によって、血清(および血清タンパク質)濃度を漸増させて、EC50値における変化から各々の架橋したポリペプチドについてのK値を算出した。全血中のEC’50値は、式1のPを700μM[血清アルブミン]に設定することによって推定される。
【0265】
血液中の遊離の割合は、Trainor,Expert Opin.Drug Disc.,2007,2(1):51−64によって誘導される下記の等式によって推定され、式中、全血清アルブミン濃度(例えば、[HSA])は700μMに設定する。下記の式は、任意の型の血清アルブミン(例えば、ラット血清アルブミン)で使用され得る。
【0266】
【数4】

実施例6.α−ヘリシティの決定
2つのバイアル(1.0mg)の各々の試料を50%アセトニトリル/50%水に1.0mg/mlの終濃度で溶解させた。100μLまたはほぼ0.1mgの各々の試料を各々のバイアル内にアリコートに分けた。3つの30μL試料をアミノ酸解析に用いた。試料はすべて一晩凍結乾燥させ、次いで−20℃で保存した。試料は、いくつかの異なる濃度(1.0mg/ml、0.5mg/ml、0.1mg/ml、および0.05mg/ml)に希釈し、種々のパス長のセル(1.0mm、2.0mm、5.0mm、および10.0mm)に入れた。試料はすべて残屑について目視検査し、各々の試料を5℃でスキャンし、溶解性に理想的なパス長および濃度を決定した。試料は、20mMのリン酸(pH2.0)緩衝液中、0.05mg/mlで可溶性であった。スキャンおよび温度融解はすべて、この緩衝液条件(温和な(benign)緩衝液−20mMリン酸 pH2.0)において、10.0mmのCDセル内で行なった。試料はすべて、Jasco J−815分光偏光計にて、Spectra Managerソフトウェアパッケージを用いて実施した。試料を、2.0mLの温和な緩衝液(0%TFEと表示)またはSigma−Aldrich製(カタログT63002)のトリフルオロエタノール(TFE)を5%、10%、15%、20%もしくは50%含む緩衝液に溶解させた。CDスキャンは、250〜190nmで5℃にて行なった。データは0.2nm毎に収集した。各々のCDスキャンの前に適切な緩衝液ブランクを実行して、上記緩衝液を各々の実施から差し引いた。温度融解は5℃から80℃までで実施し、その直後に、80℃から5℃までの逆融解を行なった。データを0.2度毎に収集した。アミノ酸解析は、AccQ Tag System(Waters,Milford,MA)を用いて、Agilent 1100 HPLCにて行なった。簡単には、ペプチドアリコートを200uLの6M HClを各々のアリコートに添加し、試料を110℃で24時間加熱することにより加水分解し、次いで、試料を真空乾燥させ、得られた残渣を200uLの200mM HClに再懸濁させた。AccQ Tag Chemistry Kitに備えられた試薬を使用し、20uLの加水分解物中の各々の遊離アミノ酸をキノリン部分で誘導体化した。HPLCを使用し、各々の加水分解物試料について、慣用的な勾配および慣用的なカラムを用いて個々のアミノ酸を分離し、各々の存在量を254nmのUVによって測定した。酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.05)および60/40(v/v)アセトニトリル/水を流動緩衝液とした。各々のピークの面積を、各々のアミノ酸の量が既知であるの一組の標準品と比較することにより、各々の加水分解物試料中に存在する各々のアミノ酸の絶対量を決定した。各々のペプチドの配列を使用し、ペプチドの濃度を、試料中のアラニンまたはロイシンのいずれかの量を用いて決定した。データはすべて、エクセルファイルに取込んで保存し、らせんの割合、モル楕円率、またはAAAによる濃度を計算した。水溶液におけるヘリシティ%は、親ペプチドが50%TFE中で100%らせんであるという仮定の下に、各々の架橋ペプチドでの0%TFE中のモル楕円率(222nm)を、親ペプチドでの50%TFE中のモル楕円率(222nm)で割ることによって決定した。
【0267】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載しているが、このような実施形態が例示目的のみで提供されていることは当業者には明らかであろう。多くの変形、改変および置き換えが、本発明から逸脱することなく当業者には思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の種々の代替は、本発明の実践に使用可能であると理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義しており、そして本特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物が本発明の範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせんポリペプチドのインビボ半減期を1つ以上の架橋を配置することにより増大させる方法であって、前記ポリペプチドのインビボ半減期が、前記架橋のない対応するポリペプチドに比べて少なくとも50倍増大する、方法。
【請求項2】
前記らせんポリペプチドのインビボ半減期が平均少なくとも50倍増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記らせんポリペプチドのインビボ半減期が少なくとも100倍増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記らせんポリペプチドのインビボ半減期が少なくとも150倍増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記らせんポリペプチドのインビボ半減期が少なくとも200倍増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋の少なくとも1つは2つのα−炭素原子を接続する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つの架橋が結合される1つのα−炭素原子が、式R−の置換基で置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つの架橋が結合される2つのα−炭素原子が、式R−の独立した置換基で置換されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R−がアルキルである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
R−がメチルである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記らせんポリペプチド内に1つの架橋が配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記らせんポリペプチド内に2つの架橋が配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
連続した炭素−炭素結合で1つの架橋が形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つの架橋に少なくとも8個の連続した結合が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
1つの架橋に9個の連続した結合が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1つの架橋に12個の連続した結合が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
1つの架橋に少なくとも7個の炭素原子が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1つの架橋に少なくとも10個の炭素原子が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記架橋ポリペプチドがBCL−2ファミリーメンバーのα−らせんドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋ポリペプチドがBH3ドメインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記架橋ポリペプチドが表1、2、3または4の配列の少なくとも60%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記架橋ポリペプチドが表1、2、3または4の配列の少なくとも80%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記架橋ポリペプチドがエネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、細胞内標的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記架橋ポリペプチドが、前記架橋ポリペプチドのみかけの血清結合親和性(Kd)が1マイクロモル以上となるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記架橋ポリペプチドが1〜700マイクロモルのKdを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記架橋ポリペプチドが1〜70マイクロモルのKdを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記架橋ポリペプチドが1〜10マイクロモルのKdを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記架橋ポリペプチドが3、10、70マイクロモルのKdまたは3、10、70マイクロモルを超えるKdを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋ポリペプチドが、ヒト血液中で0.1〜50%という推定の遊離の割合を有するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記架橋ポリペプチドが、ヒト血液中で0.15〜10%という推定の遊離の割合を有するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
1つ以上の架橋を含むらせんポリペプチドであって、前記架橋らせんポリペプチドが、前記架橋のない対応するポリペプチドのインビボ半減期より少なくとも50倍長いインビボ半減期を有する、らせんポリペプチド。
【請求項32】
前記架橋らせんポリペプチドが、前記架橋のない対応するポリペプチドのインビボ半減期より少なくとも100倍長いインビボ半減期を有する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記架橋らせんポリペプチドが、前記架橋のない対応するポリペプチドのインビボ半減期より少なくとも150倍長いインビボ半減期を有する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記架橋らせんポリペプチドが、前記架橋のない対応するポリペプチドのインビボ半減期より少なくとも200倍長いインビボ半減期を有する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項35】
前記架橋の少なくとも1つは、2つのα−炭素原子を接続する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項36】
1つの架橋が結合される1つのα−炭素原子が式R−の置換基で置換されている、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項37】
1つの架橋が結合される2つのα−炭素原子が式R−の独立した置換基で置換されている、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項38】
R−がアルキルである、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項39】
R−がメチルである、請求項36に記載のポリペプチド。
【請求項40】
前記らせんポリペプチド内に1つの架橋が配置される、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項41】
前記らせんポリペプチド内に2つの架橋が配置される、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項42】
連続した炭素−炭素結合で1つの架橋が形成される、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項43】
1つの架橋に少なくとも8個の連続した結合が含まれる、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項44】
1つの架橋に9個の連続した結合が含まれる、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項45】
1つの架橋に12個の連続した結合が含まれる、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項46】
1つの架橋に少なくとも7個の炭素原子が含まれる、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項47】
1つの架橋に少なくとも10個の炭素原子が含まれる、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項48】
前記架橋ポリペプチドがBCL−2ファミリーメンバーのα−らせんドメインを含む、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項49】
前記架橋ポリペプチドがBH3ドメインを含む、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項50】
前記架橋ポリペプチドが表1、2、3または4の配列の少なくとも60%を含む、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項51】
前記架橋ポリペプチドが表1、2、3または4の配列の少なくとも80%を含む、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項52】
エネルギー依存性のプロセスによって細胞膜を透過し、細胞内標的に結合する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項53】
ハロゲン、アルキル基、蛍光性部分、親和性標識、標的部分、または放射性同位体の1つ以上で置換されている、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項54】
治療効果をもたらす、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項55】
薬学的に許容され得る塩の形態である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項56】
前記架橋ポリペプチドのみかけの血清結合親和性(Kd)が1マイクロモル以上である、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項57】
前記架橋ポリペプチドが1〜700マイクロモルのKdを有する、請求項56に記載のポリペプチド。
【請求項58】
前記架橋ポリペプチドが1〜70マイクロモルのKdを有する、請求項56に記載のポリペプチド。
【請求項59】
前記架橋ポリペプチドが1〜10マイクロモルのKdを有する、請求項56に記載のポリペプチド。
【請求項60】
前記架橋ポリペプチドが3、10、70マイクロモルのKdまたは3、10、70マイクロモルを超えるKdを有する、請求項56に記載のポリペプチド。
【請求項61】
前記架橋ポリペプチドがヒト血液中で0.1〜50%という推定の遊離の割合を有する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項62】
前記架橋ポリペプチドがヒト血液中で0.15〜10%という推定の遊離の割合を有する、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項63】
上記請求項のいずれかに記載のポリペプチドを、薬学的に許容され得る希釈剤またはキャリアとの組合せまたは集合状態で含む医薬組成物。
【請求項64】
前記架橋ポリペプチドが、前記架橋ポリペプチドのヘリシティ%が水性条件下、室温で25%以上となるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項65】
前記架橋ポリペプチドが、前記架橋ポリペプチドのヘリシティ%が水性条件下、室温で50%以上となるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項66】
前記架橋ポリペプチドが、前記架橋ポリペプチドのヘリシティ%が水性条件下、室温で75%以上となるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項67】
前記ポリペプチドのインビボ半減期が静脈内投与後に決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項68】
水性条件下、室温での前記架橋ポリペプチドの前記ヘリシティ%が、前記架橋のない対応するポリペプチドのヘリシティ%より少なくとも2倍大きい、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項69】
水性条件下、室温での前記架橋ポリペプチドの前記ヘリシティ%が、前記架橋のない対応するポリペプチドのヘリシティ%より少なくとも5倍大きい、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項70】
水性条件下、室温での前記架橋ポリペプチドの前記ヘリシティ%が、前記架橋のない対応するポリペプチドのヘリシティ%より少なくとも10倍大きい、請求項31に記載のポリペプチド。
【請求項71】
前記ポリペプチドの前記インビボ半減期が静脈内投与後に決定される、請求項31に記載のポリペプチド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図3e】
image rotate

【図3f】
image rotate

【図3g】
image rotate

【図3h】
image rotate

【図3i】
image rotate

【図3j】
image rotate

【図3k】
image rotate

【図3l】
image rotate

【図3m】
image rotate

【図3n】
image rotate

【図3o】
image rotate

【図3p】
image rotate

【図3q】
image rotate

【図3r】
image rotate

【図3s】
image rotate

【図3t】
image rotate

【図3u】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−509902(P2012−509902A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537728(P2011−537728)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065824
【国際公開番号】WO2010/060112
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(507272957)エルロン・セラピューティクス・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】AILERON THERAPEUTICS,INC.
【Fターム(参考)】