説明

改善された粗さをもつ冷間圧延ストリップの製法

【課題】熱間加工ストリップの焼きなましまたは酸洗いなしに光沢表面をもつ冷間圧下金属ストリップの製法。
【解決手段】熱間加工金属ストリップ12を引張りレベラ24で引張してスケ−ルを亀裂させ、平滑にしたストリップ12Aをショットブラスト34でスケ−ルを削摩的に除去し、このストリップ12Bの両面に隣接して設置され互いに反対方向に回転する少なくとも2対の清浄用ワイヤブラシ38、42により残留するスケ−ルを全て機械的に除去して3.6Raより小さい表面粗さとした機械的に清浄化されたストリップ12Cを、他のブラシ対50で機械的に研磨して2.0ミクロンRa以下に粗さを低下させ、このストリップ12Dを冷間圧延56で表面粗さを0.4ミクロンRa以下のストリップ12Eとする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷間圧下前の熱間加工ストリップの熱間加工バンド(ストリップ)の焼きなまし及び/または熱間加工ストリップの酸洗いなしに冷間圧延金属ストリップを製造する方法に関する。本発明方法は熱間加工ストリップのスケ−ルを亀裂させ、且つストリップを平らにする引張りレベリング、ストリップのスケ−ルを削摩的に除去する粒子ブラストをストリップに施し、ストリップの各表面に隣接して少なくとも2対の清浄用ブラシを設置してそれらブラシを互いに反対方向に回転して残留することがあるスケ−ルを全て除去し且つ所定の表面粗さとなし、清浄化表面をブラシで研磨して更に粗さを減少させ、及び清浄化ストリップを冷間圧下して光沢のある仕上げ表面とする逐次工程からなる。
【0002】
【従来の技術】冷間圧下前にレベラ−を使用して熱間圧延ストリップを平らにすることは既知である。米国特許第4,872,245号明細書は熱間圧延ストリップから冷間圧延帯鋼を製造するプロセスラインを開示している。この特許は、熱間圧延ストリップを平らにしスケ−ルをストリップの巾全体に亀裂させるブライドルロ−ラ−及び曲げロ−ラ−を備えた引張りレベラ−を使用して7%以下の延伸率で延伸されたストリップを開示している。延伸されたストリップを次いで一対のブラシ間及び酸洗い槽を通してスケ−ルを除去した後タンデム圧延機上で冷間圧下される。
【0003】冷間圧下前に熱間圧延金属ストリップを再結晶焼きなましなしに、及び/または熱間圧延ストリップを酸洗いなしに、冷間圧下することは既知である。米国特許5,197,179号明細書は熱間圧延ストリップから冷間圧延ステンレス鋼製造用の連続プロセスラインを開示している。この特許は焼きなまし及び酸洗い前に冷間圧下タンデムまたは可逆圧延機を通した熱間圧延ストリップを開示している。スケ−ルを除去し易くするためにショットブラスチングを使用することができる。
【0004】冷間圧下前に熱間圧延ストリップの再結晶焼きなまし及び/または酸洗いなしに、熱間圧延金属ストリップを脱スケ−ルすることは既知である。これらの脱スケ−ル法は冷間圧下前に熱間圧延ストリップを引張りレベリングによりスケ−ルを亀裂させ、熱間圧延ストリップを平らにする工程、及びストリップをグリットブラストしてスケ−ルを除去する工程、及び熱間圧延ストリップを機械的ブラシ掛けする工程の1つまたはそれ以上からなる。米国特許5,606,787号明細書は熱間圧延ストリップから冷間圧延ステンレス鋼製造用の連続プロセスラインを開示している。この特許はタンデム冷間圧延機、連続焼きなまし炉、適宜溶融塩浴、酸洗い槽及び適宜焼戻し器を通つた熱間圧延ストリップを開示している。冷間圧下前のストリップのショットブラスト工程及び焼きなまし工程は1回の冷間圧延処理後に80μ−インチ以下の表面粗さを造るのに必要ではない。
【0005】米国特許5,554,235号明細書はタンデム圧延機上で冷間圧延前に熱間圧延ストリップの焼きなまし又は酸洗いなしに冷間圧延ステンレス鋼製造用連続プロセスラインを開示している。この特許は冷間圧延前に、熱間圧延ストリップを適宜レベラ−中で延伸してストリップを平らにしスケ−ルを亀裂させることにより脱スケ−ルし、次いでショットブラスト機またはブラシ研磨機を使用してスケ−ルを除去した熱間圧延ストリップを開示している。冷間圧延後、ストリップを適宜慣用の焼きなまし炉、他のショットブラスト機、ブラシ研磨機、酸洗い槽及び引張りレベラ−に通すことができる。特願昭55-133802号明細書は冷間圧延前に、熱間圧延ストリップの焼きなまし又は酸洗いなしに、熱間圧延鋼から冷間圧延鋼を製造するプロセスラインを開示している。熱間圧延ストリップは引張りレベラ−を使用してスケ−ルを亀裂させ、高圧水の噴霧中を通し、最後にブラシ掛けロ−ル中を通つた後で冷間圧延用タンデム圧延機中を通る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、冷間圧下した鋼の表面平面度及び表面粗さに対する要求はステンレス鋼のシ−トや管を台所の流し、自動車の装備や内装など作製用の用途に対しては益々厳格になりつつある。これらの用途にはしばしばストリップ巾の全体に20I−単位以下の平面度及び0.4ミクロン表面粗さ(Ra)以下の表面粗さを必要とする。冷間圧下前の熱バンドの焼きなまし及び/または酸洗いなしに冷間圧延ストリップを製造する従来法は、取引先の要求を満たすのに必要な冷間圧下後の平面度及び表面の滑らかさを造ることはできなかつた。従って、冷間圧下前に熱バンド焼きなまし及び/または熱間加工ストリップの酸洗いなしに光沢ある表面をもつ冷間圧延金属ストリップ、特にステンレス鋼を製造する改善された製法に対する要請が依然として残つている。また、塩酸または硫酸による酸洗い工程を必要としない、冷間圧下前の熱間加工鉄系金属ストリップを脱スケ−ルする方法も依然として要請されている。更に、硝酸、フツ化水素酸またはフツ素化合物を必要としない熱間加工ステンレス帯鋼の脱スケ−ル法も要請されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明の簡潔な要約本発明は冷間圧下前の熱バンド焼きなまし及び/または熱間加工ストリップの酸洗いなしに光沢ある表面をもつ冷間圧延金属ストリップを製造する方法に関する。すなわち本発明は、スケ−ルで覆われた熱間加工金属ストリップを用意し、張力により前記ストリップを引張つて延伸してスケ−ルを亀裂させ且つストリップを平滑にし、延伸されたストリップの各表面を粒子ブラストしてスケ−ルを除去し且つ所定の粗さをもつ表面となし、金属ストリップの各表面に隣接して設置され互いに反対方向に回転する少なくとも2個のブラシを用いて金属ストリップの各表面を清浄化し、清浄化した各表面を少なくとも1個の研磨用ブラシにより研磨して更に表面粗さを低下させ、得られたストリップを冷間圧下して表面を光沢仕上げすることを包含する、冷間圧延前の熱間加工ストリップの焼きなましまたは酸洗いなしに熱間加工ストリップから冷間圧延金属ストリップの製法に関する。
【0008】本発明の主たる目的は冷間圧下前の熱間加工ストリップの焼きなましまたは酸洗いなしに最終厚さに冷間圧下された金属ストリップを提供するにある。
【0009】本発明の他の目的は0.4ミクロン粗さ(Ra)以下の粗さをもち、同時に標準の厚さ及び標準の厚さ公差をもつ光沢表面をもつ冷間圧下金属ストリップを提供するにある。
【0010】本発明の更に他の目的はストリップ巾全体に20I−単位以下の平面度をもつ冷間圧下金属ストリップを提供するにある。
【0011】本発明の更なる目的は廃棄による環境問題を引き起こす酸洗い溶液副生物、特に硝酸またはフツ化水素酸副生物或はフツ素化合物副生物を生成しない、或はそれらの生成を最少にし、本発明と異なつて冷間圧下前に焼きなまし、酸洗いした金属シ−トに比べてコスト的に有利な脱スケ−ル方法を提供することを包含する。
【0012】こうして、本発明は、熱間加工金属ストリップを引張りレベリングしてスケ−ルを亀裂させ、且つ熱間加工金属ストリップを平滑にする工程;前記ストリップの表面を粒子ブラストして削摩的にスケ−ルを除去する工程;少なくとも2個の清浄用ブラシをストリップの各表面に隣接して設置しブラシを互いに反対方向に回転させて残留することがあるスケ−ルを全て除去して所定の表面の粗さをストリップの各表面に付与する工程;清浄化ストリップの各表面をブラシで研磨して表面の粗さを更に減少させる工程;及び清浄化ストリップを冷間圧下して両表面を光沢仕上面となす逐次工程からなる。
【0013】本発明の他の要件は前述のストリップを引張りにより少なくとも1%延伸させることからなる。
【0014】本発明の他の要件は冷間圧下前の前述の研磨した表面が1.5ミクロンRa以下の粗さ(Ra)をもつことである。
【0015】本発明の他の要件は前述の清浄用ブラシが12%以上の単位平方表面積密度をもつことである。
【0016】本発明の更に他の要件は前述の清浄用ブラシが直径0.13〜0.50mmの剛毛を備えてなることである。
【0017】本発明の他の要件は前述の冷間圧下ストリツップが0.4ミクロンRa以下の粗さ(Ra)をもつことである。
【0018】本発明の他の要件は前述のストリップが少なくとも30%冷間圧下されることである。
【0019】本発明の他の要件はストリップの各表面に隣接して少なくとも3個の前述の清浄用ブラシを備えることである。
【0020】本発明の他の要件は前述の粒子の少なくとも90%が0.10〜0.50mmの大きさをもつことである。
【0021】本発明の利点は製造コストが低下すること、廃棄環境問題を生じ且つスケ−ル“ダスト”を溶融精製炉にリサイクルすることを必要とする酸洗い溶液副生物の生成、特に硝酸またはフツ化水素酸副生物、或はフツ素化合物副生物の生成が最少量化することである。本発明は高価な汚染抑制施設及び廃棄物処理施設を回避できる。
【0022】本発明の上述の目的、および他の目的、要件及び利点は本発明の実施態様の詳細な記載及び添付特許請求の範囲の記載を考慮すれば明らかとなろう。
【0023】
【作用】好適な実施態様の詳細な記載本発明の金属ストリップは溶融金属、特にクロム含有鋼溶融物から、それを連続的に、≦10mmの厚さをもつストリップ、≦140mmの薄いスラブ、≦200mmの厚いスラブに鋳造されるか、或はインゴットに鋳造し、鋳造した金属を次いで熱間加工して連続した長さのストリップとなし(ここに“熱間加工”とは金属ストリップを必要なら再加熱し次いで例えば熱間圧延により所定の厚さに圧下することと理解されたい。もし熱間圧延したとすれば、鋼スラブは1050〜1300℃に再加熱でき、少なくとも800℃の最終温度を使用して熱間圧延し、得られたストリップを約650℃以下の温度でコイル状に巻き取られる)、更に熱間圧延したストリップを脱スケ−ルし、そして好適には少なくとも30%、より好適には少なくとも50%冷間圧下して所望の最終厚さに圧下することにより製造される。その後で冷間圧下したストリップを再結晶焼きなましすることができる。本発明の顕著な利点は冷間圧下前に熱間加工したストリップの焼きなまし、すなわち熱バンド焼きなましを必要としないことである。本発明の他の同様に顕著な利点は冷間圧下前に熱間加工したストリップをスケ−ルを除去するために、化学的処理、すなわち酸洗いする必要がないことである。
【0024】本発明の金属ストリップは種々の金属から多数の方法により造られた熱間加工ストリップから製造できる。ストリップはインゴツトから造られたスラブから、或は連続的に鋳造されたスラブから、それらを再加熱し次いで熱間圧延して2〜6mm厚の原料熱間加工ストリップとなすか、或は連続的に鋳造したストリップからそれを2〜10mmの厚さに熱間加工することにより製造できる。本発明はまた、連続的に鋳造したスラブ或はインゴツトから製造したスラブを有意な加熱なしに、あるいは有意な加熱下に高温圧延装置に直接供給することにより製造されたストリップに適用でき、或はインゴツトを熱間圧延するのに充分な温度のスラブに熱間圧下し、このスラブを更に加熱することなしに、または加熱して熱間圧下して製造されたストリップに適用でき、或は溶融金属を更に加工するのに適したストリップに直接鋳造されたストリップに適用できる。本発明の金属としては低炭素鋼、クロム合金鋼、フェライトステレス鋼、オ−ステナイトステンレス鋼及びマルテンサイトステンレス鋼のような鉄系金属、及びチタン、銅及びニツケルのような非鉄金属を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】本発明の重要な要件は張力をかけることにより熱間加工ストリップを充分に、好適には少なくとも約1%、より好適には2〜10%、最も好適には2〜7%延伸してストリップの両表面上の脆弱なスケ−ルを剥離しやすくするか、スケ−ルを亀裂させ、且つ必要に応じ、ストリップを平滑にする。以下に記載するように、亀裂したスケ−ルを粒子ブラストし、次いでブラシ掛け及び研磨することによりスケ−ルを削摩的に除去する。曲がりを除きそれにより“完全に平らな”ストリップを形成させるためのストリップに張力を掛ける手段としては焼戻し圧延機、好適には多数の曲げロ−ラ及びブライドルロ−ラ−を備えた引張りレベラ−を挙げることができる。ストリップを少なくとも1%延伸することが重要である。この理由はステンレス鋼シ−トに対する多くの用途はしばしば該シ−トがシ−ト巾全体に40I−単位以下の、好適には約20I単位以下の平面度を必要とするからである。平面度のI−単位はシ−トの曲がりの高さと間隔と間の関係であり、I=(L1−L2)/L2×10-5(L1はストリップの最長長さであり、L2はストリップの最短長さである)で表わされる。
【0026】本発明の非常に重要な要件は研磨性粒子、すなわち、角張った表面或はぎざぎざな表面をもつ粒子すなわちグリット、或は好適には球状の散弾様粒子すなわちショットをブラストする(衝撃的に衝突させる)ことにより熱間加工ストリップから亀裂したスケ−ルを除去することである。スケ−ルで覆われたストリップ表面への粒子ブラストが本発明では使用されるが、この理由は、引張りによりスケ−ルを亀裂させるのに加えて、かなりのブラストによる清浄化が熱間圧延スケ−ルの除去、特に除去が困難なフェライトステンレス鋼スケ−ル及びオ−ステナイトステンレス鋼スケ−ルの除去を確実に行うためには必要だからである。本発明で使用する適当な粒子は粒子の少なくとも95%が少なくとも0.10mmの直径をもつ鉄質球状ショット或は鉄質ギザギザ表面をもつグリットであることができる。好適には粒子の少なくとも45%は0.30〜0.50mmの直径をもち、より好適には粒子の少なくとも90%は0.10〜0.50mmの直径をもち、最も好適には粒子の45〜55%は0.10〜0.30mmの直径、粒子の45〜55%は0.30mmより大きく0.50mmまでの直径、粒子の10%以下は0.50mmより大きい直径をもつ。研磨性粒子の少なくとも95%が少なくとも0.10mmの直径をもち、それにより充分な衝撃エネルギ−と良好な粒子の分散、すなわちストリップの巾全体に単位時間当たり均等な数の粒子衝撃を与えて満足できる清浄化を達成できることが重要である。また、研磨性試料の検定は0.50mm以上の直径をもつ粒子は粒子の約10%以下であることが重要である。この理由は過度のエネルギ−による衝撃は後続する処理で除去され得る粗さより粗い平均表面粗さ(Ra)を生ずるからである。ガラス、シリカ、アルミナなどのような非金属粒子は、ストリップの表面を充分に清浄にしないから、本発明の研磨性粒子としては許容できない。ブラスト粒子が鋼表面に空気力により、すなわち圧搾空気により輸送される、充分な粒子衝撃量をもたない従来技術によるショットブラストとは異なつて、本発明で使用する金属粒子は好適には高速回転するホイ−ルを使用して鋼表面に輸送される。金属粒子の速度は少なくとも55m/秒とすべきである。鋼表面に金属粒子を強力に投擲する高速回転ホイ−ルを使用することが有利である。この理由は上述の粒子寸法に対して少なくとも55m/秒の速度を使用すると付着するステンレス鋼熱間圧延スケ−ルの大部分を除去するのに充分な衝撃エネルギ−が得られるからである。
【0027】本発明の更に他の非常に重要な要件は、残留することがある残りの亀裂入りスケ−ルを熱間加工ストリップから、清浄化されるストリップの各表面に隣接して設置され互いに反対方向に回転する少なくとも2個の清浄化用ブラシ、好適にはワイヤブラシを使用して除去することである。各ストリップ表面に対して少なくとも一対の反対方向に回転するブラシを必要とする理由はストリップの全表面から完全にスケ−ルを除去するためにはストリップ全表面(ストリップ表面の金属粒子ブラト後に残された窪み部分をも含めて)にブラシがけを確実に適用することが必要だからである。各対のブラシは、処理のこの段階で、清浄化されているが未研磨ストリップ表面の各々の粗さを好適には3.6ミクロン(μまたはμm)Raの粗さ、より好適には3.0ミクロンRa以下のRa、最も好適には2.5ミクロンRa以下の粗さに減少させるべきである。これらの清浄用ブラシの剛毛は0.13〜0.50mmの細い毛先をもつべきであると決定した。如何なる理論により束縛されることなく、剛毛の毛先の直径は少なくとも0.13mmであるべきであると考えられる。この理由はこれより細い直径のワイヤ剛毛は明らかにショットブラスト粒子によりストリップ表面上に形成された小さい窪みの中にワイヤ剛毛が物理的に入り込んで前記窪みからスケ−ルを除去するのに充分な堅さをもたないからである。ブラシ剛毛の毛先が約0.50mmを超えるとワイヤ剛毛は明らかに太すぎて小さな窪みの中に入り込めないから窪みの中にスケ−ルが残され、従ってストリップが冷間圧下された時にスケ−ルも圧延されてストリップ表面中に埋め込まれて許容できない最終表面仕上げ品を生ずるからである。好適にはブラシ剛毛の毛先の直径は0.13〜0.25mmとすべきである。本発明の反対方向に回転する清浄用ブラシの剛毛は0.13mmのように細い直径の毛先をもつから、ブラシが充分な表面密度をもつこと、すなわち剛毛が充分に隙間なく蜜に装着されて、ショットブラストによりストリップ表面上に形成された小さな窪みに剛毛が入り込むことができることが重要である。本発明者らはブラシの好適な最小表面密度は少なくとも12%単位平方表面積、より好適には20%単位平方表面積であると決定した。ここに単位平方表面積とは例えば0.12cm2/1cm2表面積及び0.20cm2/1cm2表面積とはそれぞれ12%及び20%であるように、単位2/単位2表面積であると定義される。
【0028】ワイヤブラシは、合成剛毛から造られたブラシを使用する場合のようにストリップ表面からの金属の除去は起こらないから、特別良好な清浄用ブラシである。合成ブラシは種々の大きさ及び種々の量の研磨性物質である炭化物を含浸した合成物質、例えばナイロンの編織品またはマット状品または剛毛デザインのものであることができる。これらの合成剛毛を使用し、炭化珪素または酸化アルミニウムのような物質を含浸して造られたブラシは本発明の互いに反対方向に回転する清浄用ブラシには許容できない。合成剛毛を使用して造つたブラシはストリップ表面から金属がすり減らされてストリップに2%のような多量の収量損失を生ずるから望ましくない。これに反して、ワイヤブラシはストリップ表面をすり減らしたりこすりへらすことが恐らく少ない。本発明で使用するのに適したワイヤブラシは米国、メリ−ランド州、バルチモア所在のメリ−ランド・ブラシ・カンパニから入手できる。このブラシはワイヤ剛毛を金属ストリップ上に装着し、得られたストリップを円筒状胴体の周りに螺旋状に捲きつけることにより構成される。好適にはブラシの表面は少なくと12%単位平方表面積の剛毛密度をもつ。密度が12%より小さいとストリップ表面積上への剛毛先端の適用範囲が充分でなく完全にスケ−ルを除去できない。従来技術とは異なつて、これらの清浄用ブラシは互いに反対方向に回転することが重要である。この要求に対する理由はブラシの剛毛毛先がストリップの窪んだ表面区域例えば孔または火口様窪みからスケ−ルを完全に除去することが実証されたからである。好適には、少なくとも3個の各ストリップ表面に隣接して設置されたこれらの清浄用ブラシが設けられる。3個のブラシが設置される場合には、最初のブラシは好適には金属ストリップの移動方向と反対方向に回転する。最初のブラシが時計回りに回転し、ストリップが左から右へ移動すれば、2番目のブラシは反時計回りに回転し、3番目のブラシは時計回りに回転するなどである。
【0029】本発明の最後の重要な要件は熱間加工した清浄化ストリップを冷間圧下前に更に研磨(磨き)ブラシで処理して2.0ミクロンRa以下の粗さ、好適には1.5ミクロンRa以下の粗さ、最も好適には1.0ミクロンRa以下の粗さに表面粗さを低下させて“銀白の”或は “つや消し”色の表面仕上げとすることである。この最終研磨ブラシは合成剛毛を備えることができるが、この場合もワイヤ剛毛が好適である。若干のステンレス鋼に適用する場合には、0.4ミクロンRa以下の表面粗さ、好適には0.3ミクロンRa以下の表面粗さをもつことが必要である。このタイプの光沢表面仕上げを確保するためには粗さは冷間圧下前に1.5ミクロンRaを超えるべきではない。
【0030】本発明をよりよく理解するために、熱間加工ストリップから冷間圧延した金属ストリップを製造する連続プロセスラインの概略説明図である図1を掲げて本発明を説明する。このプロセスラインはまた別の処理単位をも使用できることを理解されたい。このプロセスラインは巻出しリ−ル10から熱間加工したストリップ12を巻出す工程;ストリップの後尾端を剪断機14により切断してストリップの長さを調節でき、或はまた、ストリップの後尾端を次の後続する熱間加工ストリップに溶接してその長さを調節して連続処理に付する工程;連続ストリップを入口ブライドルロ−ラ−18及び出口ブライドルロラ−22を備えたル−パ−20を通過させる工程;その後でストリップをブライドルロラ−28、30及び曲げロ−ラ−26を備えた引張りレベラ−24により張力下で延伸する工程(この引張り及び曲げによりストリップは“完全な平らな”状態に平らにされ、スケ−ルを亀裂させ及び剥離し易くされる);延伸されたストリップ12Aは次いでショットブラスト装置34を通され、スケ−ルの大部分を削摩的にストリップから除去する工程;部分的に清浄化された表面をもつストリップ12Bを次いで残留するスケ−ルを機械的に除去しストリップの表面の粗さを減少させる多数の、ストリップの対抗する側面に並置された、清浄用ブラシ対38、42、46を備えたブラシ清浄化区域36を通す工程(これらの清浄用ブラシは少なくとも2対のストリップの対抗する側面に、すなわち1つはストリップの上側に、1つはストリップの下側に並置されたブラシ38、42、好適には少なくとも3対のストリップの対抗する側面に並置されたブラシ46を備える。例えばブラシ清浄化区域36において上側ブラシ38は矢印40に示すように時計回りに回転するとすると上側ブラシ42は矢印44に示すように反時計回りに回転し、上側ブラシ46は矢印48に示すように時計回りに回転する。下側に清浄用ブラシ正確に反対に回転する、すなわち、下側ブラシ38は反時計回りに回転し、下側ブラシ42は時計回りに回転し、下側ブラシ46は反時計回り回転する。最初の1対のブラシ38はストリップ12Bの移動方向と反対方向に回転するのが好適である。ストリップ12Bは図の左側から右側に移動するように説明されている);次いで、清浄なストリップ12Cは1対の、1つはストリップの上側に、他方はストリップの下側に、並置された研磨(磨き)ブラシ50を通り、ストリップの表面粗さを1.5ミクロンRa以下に、好適には約1.0ミクロンRa以下に減少させる工程(図1のプロセスラインは2対の研磨ブラシ50を説明している);次いで、研磨されたストリップ12Dはタンデム圧延機56中で、或はZ−圧延機(図示せず)中で、好適には少なくとも30%冷間圧下される工程;冷間圧下されたストリップ12Eは次いで引張りリ−ル58により再巻取りされる工程(この高度に研磨されたストリップ12Eは好適には0.3ミクロンRa以下の粗さををもつ光沢仕上げ表面をもつ)の逐次工程を備える。図1に説明した方法は引張りリ−ル58の直前に他のル−パ−を備えることができ、また冷間圧下機の後に連続焼きなまし炉、付加的ストリップ清浄装置、例えば酸洗い槽、などサイドトリマ−などの付加的下流側加工装置を備えることができる。巻出しリ−ル10と提携して運転される引張りリ−ル58は延伸レベラ−24中の金属ストリップを延伸する。金属ストリップを少なくとも1%延伸してスケ−ルを亀裂させストリップを平滑にすることが重要である。熱ストリップ圧延機上を圧延中に生じたストリップ12の表面の波形様凹凸、例えば耳たるみ、しわ、の程度に依存して、“完全に平らな”ストリップ12Aを得るために10%のように多量にストリップを延伸することが必要であることがある。
【0031】以下に、例を掲げて本発明を説明する。
例1(比較例)
本比較例において、厚さ20cmのステンレス鋼スラブを熱間圧延機上で熱間圧延して厚さ2.5mmのストリップを造つた。得られたストリップを引張りレベラを通し、この引張りレベラ中でストリップは3.5%延伸されてスケ−ルを亀裂させストリップは平滑にされて完全平滑状態になつた。延伸されたストリップを次いでショットブラト機に通してストリップの両表面を清浄化し、その後でショットブラストしたストリップを、1000〜3000rpmの速度で同じ方向に回転する、酸化アルミニウム含浸合成剛毛ブラシでストリップの両面をブラシ掛けした。種々の量の目で見える塩および小斑点状スケ−ルがストリップの両面上に残つた。この小斑点状スケ−ルは熱間圧延スケ−ルが十分にストリップから除去されなかつたことを示すものである。清浄化後、ストリップの厚さは合成剛毛ブラシによる過度の研磨により表面から金属層が除去されることにより0.05mm減少した。この過度の研磨は約2%のストリップ収量損失を生じた。その後で、ストリップをストリップの両側に設置されて1000〜3000rpmの速度でストリップの移動方向とは反対方向に回転する4組の研磨ブラシ間に通した。ストリップの表面粗さは3.6ミクロンRaとなつた。次いで、ストリップを直列に配置されて運転されるZ−高冷間圧下圧延機上で40%冷間圧下した。加工ロ−ルは1.3ミクロンRa以下の表面粗さのものであつた。冷間圧下後の最終冷間圧下ステンレス鋼ストリップは約0.4ミクロンRaすなわち#1仕上げ表面粗さをもつものであつた。望ましい表面は0.4ミクロンRaより小さい粗さをもつことである。好適な2−D仕上げは最終冷間圧下ステンレス鋼ストリップについて0.3ミクロンRa以下の表面粗さを必要とする。
【0032】例2(実施例)
本発明を説明する本実施例においては、厚さ20cmのオ−ステナイトステンレス鋼スラブを熱間圧延機上で熱間圧延して厚さ2.5mmのストリップを造つた。得られたストリップを下記の処理以外は例1のように処理した:すなわち、延伸したストリップを0.29mmの検定寸法をもつ鋼粒を使用したショットブラスト機を通し、その後でショットブラストしたストリップをストリップの両側に設置されて互いに反対方向に回転する、メリ−ランド・ブラシ・カンパニから入手した、ブラシで清浄化した。これらの清浄用ブラシは0.25mmの毛先をもつワイヤ剛毛を備え、ブラシの密度は21%であつた。ストリップの両表面上に目で見えるスケ−ルは残つていなかつた。清浄化後のストリップのワイヤブラシ研磨による厚さの減少は0.001mm以下であつた。その後で、ストリップを1対の並置され米国、ミネソタ州ミネアナポリス所在のミネソタ・マイニング・エンド・マニュファクチャリングから入手したスコッチ−ブライト(登録商標)(Scotch-brite(登録商標))研磨ブラシ間に通した。1対のこれらのブラシはストリップの両側に配置され、1000〜3000rpmの速度でストリップの移動方向の反対方向に回転された。高度に研磨されたストリップの表面粗さは1.5ミクロンRaであつた。研磨したストリップを次いで4個の高タンデム冷間圧下圧延機上で50%冷間圧下した。加工ロ−ルは0.13〜0.30ミクロンのRaの仕上げ表面をもつものであつた。冷間圧下後の最終冷間圧下ステンレス鋼ストリップは0.30ミクロンRaより小さい表面粗さをもち、“完全に平滑な”状態であつた。ストリップの表面粗さは大体0.26ミクロンRa以下で0.13ミクロンRaのように低い粗さであつた。本実施例は本発明が、冷圧下前に熱間圧延ストリップを焼きなましすることなく、また酸洗いすることなく、熱間圧延ストリップから2−D仕上げの優れた光沢表面をもつ冷間圧下ステンレス鋼ストリップを生成することを証明するものである。更にまた、ストリップの収量の損失を生ずるようなストリップ表面の研磨は必要としない。本実施例では全金属表面厚の0.01mm以下、すなわち0.5%以下が除去されたのに過ぎない。
【0033】本発明の精神及び範囲を逸脱することなく種々の改変が実施できることを理解されたい。従って、本発明の範囲は添付特許請求の範囲の記載から決定すべきである。
【0034】
【発明の効果】本発明は冷間圧下ストリップの製造コストが低下でき、冷間圧下ストリップは改善された粗さをもち、酸洗い溶液副生成物の最少となし、高価な環境汚染抑制及び廃棄物処理設備の必要性を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱間加工ストリップの引張りレベリング工程、ストリップのショットブラスト清浄化工程、ストリップのブラシ清浄化工程、ストリップのブラシ研磨工程及びストリップの冷間圧下工程を包含する逐次工程からなる本発明の熱間加工ストリップから冷間圧下金属ストリップを製造する連続プロセスラインの概略説明図である。
【符号の説明】
10 巻出しリ−ル; 12 熱間加工ストリップ;12A 延伸ストリップ; 12B 部分的に清浄化されたストリップ;12C 清浄なストリップ; 12D 研磨されたストリップ;12E 冷間圧下ストリップ; 14 剪断装置; 16 溶接装置;18、22、28、30 ブライドルロラ−; 20 ル−パ−;24 引張りレベラ−; 26 曲げロラ−; 34 ショットブラスト装置;36 ブラシ清浄化区域; 38、42、46 ブラシ;40、44、48 ブラシ回転方向矢印; 50 研磨ブラシ;56 タンデム圧延機; 58 引張りリ−ル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スケ−ルで覆われた熱間加工金属ストリップを用意し、前記ストリップを張力により引張って延伸してスケ−ルを亀裂させ且つストリップを平滑にし、延伸したストリップの各表面を粒子ブラストしてスケ−ルを除去し且つ所定の粗さをもつ表面となし、金属ストリップの各表面に隣接して設置され且つ互いに反対方向に回転する少なくとも2個のブラシを用いて表面を清浄化し、清浄化した各表面を少なくとも1個の研磨用ブラシにより研磨して更に表面粗さを低下させ、得られたストリップを冷間圧下して表面を光沢仕上げ表面とする工程を包含する、冷間圧延前の熱間加工ストリップの焼きなましまたは酸洗いなしに熱間加工ストリップから冷間圧延金属ストリップの製法。
【請求項2】 ストリップを少なくとも約1%延伸する、請求項1記載の製法。
【請求項3】 ストリップを2〜7%延伸する、請求項2記載の製法。
【請求項4】 冷間圧下ストリップが0.4ミクロンRaより小さい粗さをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項5】 冷間圧下ストリップが0.3ミクロンRaより小さい粗さをもつ、請求項4記載の製法。
【請求項6】 ストリップの各表面に隣接して少なくとも3個の清浄用ブラシを備える、請求項1記載の製法。
【請求項7】 清浄用ブラシが12%単位平方表面積以上の表面密度をもつ請求項1記載の製法。
【請求項8】 ブラシの剛毛がワイヤであり、0.13〜0.25mmの直径をもつ、請求項7記載の製法。
【請求項9】 ストリップが冷間圧下前に2.0ミクロンRaより小さい粗さをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項10】 ストリップが冷間圧下前に1.0ミクロンRa以下の粗さをもつ、請求項9記載の製法。
【請求項11】 粒子の少なくと95%が少なくとも0.10mmの大きさをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項12】 粒子の5%以下が0.50mmより大きい大きさをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項13】 粒子の少なくとも45〜55%が0.20〜0.30mmの大きさをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項14】 ブラシで清浄化表面が3.6ミクロンRa小さい粗さをもつ、請求項1記載の製法。
【請求項15】 ブラシで清浄化表面が3.0ミクロンRa以下の粗さをもつ、請求項14記載の製法。
【請求項16】 ストリップを少なくとも30%冷間圧下する、請求項1記載の製法。
【請求項17】 冷間圧下ストリップが20I−単位以下の平面度をもつ請求項16記載の製法。
【請求項18】 ストリップがステンレス鋼である、請求項1記載の製法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2000−233217(P2000−233217A)
【公開日】平成12年8月29日(2000.8.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−10891(P2000−10891)
【出願日】平成12年1月19日(2000.1.19)
【出願人】(391003842)アームコ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ARMCO INCORPORATED