説明

改善された色安定性を有する、ガンマ線殺菌性、強化ポリマー組成物

少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)と、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)と、最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する少なくとも1種の無機顔料(IP)とを含む、ガンマ線殺菌性強化ポリマー組成物(C)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年11月23日に出願された米国仮特許出願第60/989,852号明細書、2007年11月23日に出願された欧州特許出願公開第07121414.2号明細書、および2007年12月21日に出願された仏国特許出願公開第0760237号明細書の利益を主張し、3つの出願全ての内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、半芳香族ポリアミドを含む、ガンマ線殺菌性、強化ポリマー組成物に関する。より具体的には、本発明は、ガンマ線殺菌に曝露後の改善された色安定性を特徴とするような半芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物に関する。本発明はまた、前記組成物からできた成形物品または成形物品の部分、特にガンマ線殺菌医療装置に関する。本発明はまた、ガンマ線殺菌ポリマー組成物の色を安定化させるある種の顔料の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
高性能ポリマーは、多くの非常に厳しい用途に、特に医療用途で使用される多くの構成部品において、より詳細にはガンマ線による殺菌を受ける医療装置の製造のために、広く用いられている。この市場において使用できるある種のポリマー、それらの利点および欠点は、「ガンマ線殺菌:医療装置に対する効果(Gamma Radiation Sterilization:Effects on Medical Devices)」と表題された論文においてMDS Nordionによって記載および詳述されており、そのウェブサイト(http://www.nordin.com/documents/elibary/research−articles/EffectsofGammaonMedicalDevices.PDF)上で見られ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。この論文では、高濃度の酸化防止剤が放射線安定性に役立つこと、および製品が放射線安定化される場合、その濃度を増加させることが必要とされ得;しかし、ポリマー中のフェノール型酸化防止剤は、避けられるべきまたは最小にされるべきであることが、とりわけ教示される。それには、その屈折率が1.5であり、モース硬度が5〜5.5である青色顔料であるウルトラマリンブルーなどの着色剤が、照射による黄変を隠蔽する(「隠蔽する」という用語が強調される)ために用いられ得ることも教示される。他方では、この文書では、ウルトラマリンブルーが屈折率およびモース硬度の両方に関して異なる、本発明に含まれるある種の特定の顔料の使用から得られる、ガンマ線に対するいかなる可能な安定効果についても一言も述べられていない。
【0004】
半芳香族ポリアミド(芳香族ジアミンと脂肪族二酸とから誘導されるもののような)は、それらをある種の医療装置および用具に有用にさせる優れた機械的、物理的および化学的特性を有するポリマーである。したがって、例えば、本質的にその繰り返し単位全てがアジピン酸とメタ−キシレンジアミンとの重縮合反応によって得られる半芳香族ポリアミド(PMXD6)を含む、股関節またはひざ関節の補綴手術のために骨を取り除くために用いられる器具および付属物は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2006年12月26日に提出された米国仮特許出願第60/871,840号明細書に開示されている。
【0005】
Solvay Advanced Polymers,L.L.C.によりIXEF(登録商標)の商標名の下で市販された高性能ポリアリールアミドも、医療装置のようなヘルスケア用製品の製造のために提案されている(ウェブサイトhttp://www.solvayadvancedpolymers.com/market/markethealthcare/を参照のこと)。
【0006】
しかし、これらの半芳香族ポリアミドは、ガンマ線を用いることによって殺菌されなければならない医療装置の製造に用いられる場合、重大な欠点を有する。実際に、ガンマ線の作用にこれらポリアミドを含む医療装置を曝露すると、明確で視覚的に顕著な色変化、特に自然で淡い色調の組成物における劇的な色ずれが引き起こされる。これは特に、消費者に見える、このような組成物から成形された医療装置の外観にとって厄介である。
【0007】
本出願人は、ガンマ線の分解作用に曝露される場合の、半芳香族ポリアミド系成形組成物の色変化の問題に対処するためになされた有効な提案について知識を持たない。例えば、プラスチック技術者協会(Society of Plastics Engineers)の年次技術会議(1995年)(Annual Technical Conference 1995)において発表された「ガラス強化および潤滑化熱可塑性プラスチックの色および機械的特性に対するガンマ線殺菌の効果(The effect of gamma sterilization on the color and mechanical properties of glass reinforced and lubricated thermoplastics)」と表題されたジョシュ マクイルバイン(Josh McIlvaine)の論文(ANTEC’95、3346〜3349頁)において、「大部分の熱可塑性プラスチックは、ガンマ線への曝露後に色ずれを起こす」および「顔料系およびガラス繊維は、殺菌後の熱可塑性化合物の色安定性にかなりの影響を与える」ことが単に述べられているに過ぎない(3347頁、左欄、最後の全段落)。この論文(3347頁、最後から2番目の段落)には、「重要な表面に対する色ずれを最小化する適当な充填剤および顔料を選択することが同様に重要である」ことも大枠で述べられているが、これらの組成物がガンマ線殺菌に曝露される場合に、例えば、芳香族ジアミンとアジピン酸二酸とから誘導されるポリアミドをベースとした成形組成物の色変化の具体的な問題に対処する的確な教示はない。
【0008】
前述の検討から、したがって、それらの機械的特性を維持しながら、半芳香族ポリアミドをベースとしたガンマ線殺菌組成物の色安定性を改善するためにさらなる研究が必要とされたということになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特に、本発明の目的は、ガンマ線殺菌性半芳香族ポリアミド組成物であって、前記組成物が、ガンマ線に曝露される場合の優れた色安定性を特徴とすることに加えて、その優れた機械的特性も保持する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明では、
− 少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)、
− 板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)、および
− 最大4.5のモース硬度(H)および少なくとも1.70の屈折率(n)を有する少なくとも1種の無機顔料(IP)
を含むガンマ線殺菌性強化ポリマー組成物(C)が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
述べられたとおり、本発明による組成物(C)は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)を含む。本説明の目的のために、「半芳香族ポリアミド」という用語は、少なくとも1種の非芳香族二酸(またはその誘導体)と1種の芳香族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位、および/または1種の芳香族二酸(またはその誘導体)と少なくとも1種の非芳香族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位を含む任意のポリマーを定義すると理解されるべきである。
【0012】
本発明の目的のために、二酸(またはその誘導体)またはジアミンは、それが1個または2個以上の芳香族基を含む場合に、「芳香族」と考えられる。本発明の目的のために、二酸(またはその誘導体)もしくはジアミンまたはアミン−カルボン酸(またはその誘導体)は、それが芳香族基を持たない場合に、「非芳香族」と考えられる。
非常に好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA)は、芳香族ジアミンと脂肪族二酸(またはその誘導体)との重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位、および/または芳香族二酸(またはその誘導体)と脂肪族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位を含む。
【0013】
半芳香族ポリアミド(PA)の第1のクラスは、50モル%を超える、少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の芳香族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位を含む半芳香族ポリアミド(PA1)であり;好ましくは75モル%を超える、より好ましくは85モル%を超える前記繰返し単位は、少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の芳香族ジアミンとの重縮合反応により得ることができる(および好ましくは、得られる)。さらにより好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA1)の本質的に全てまたはまさに全ての繰返し単位は、少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の芳香族ジアミンとの重縮合反応により得ることができる(および好ましくは、得られる)。
【0014】
二酸誘導体という用語は、酸ハロゲン化物、特に塩化物、酸無水物、酸塩、酸アミドなどを包含することが意図され、これらは有利には、重縮合反応で用いることができる。
「少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体」および「少なくとも1種の芳香族ジアミン」という表現は、1種または2種以上の脂肪族二酸またはその誘導体、および1種または2種以上の芳香族ジアミンが、上に特定されたように反応させ得ることを意味すると理解される。
【0015】
芳香族ジアミンの非限定的な例は、とりわけ、以下に示されるような、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、m−キシリレンジアミン(MXDA):
【化1】

およびp−キシリレンジアミン(PXDA、表示せず)がある。
芳香族ジアミンは好ましくは、m−キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0016】
脂肪族二酸の非限定的な例は、とりわけ、シュウ酸(HOOC−COOH)、マロン酸(HOOC−CH2−COOH)、コハク酸[HOOC−(CH22−COOH]、グルタル酸[HOOC−(CH23)−COOH]、2,2−ジメチル−グルタル酸[HOOC−C(CH32−(CH22−COOH]、アジピン酸[HOOC−(CH24−COOH]、2,4,4−トリメチル−アジピン酸[HOOC−CH(CH3)−CH2−C(CH32−CH2−COOH]、ピメリン酸[HOOC−(CH25−COOH]、スベリン酸[HOOC−(CH26−COOH]、アゼライン酸[HOOC−(CH27−COOH]、セバシン酸[HOOC−(CH28−COOH]、ウンデカンジオン酸[HOOC−(CH29−COOH]、ドデカンジオン酸[HOOC−(CH210−COOH]、テトラデカンジオン酸[HOOC−(CH211−COOH]である。
【0017】
脂肪族二酸は好ましくは、アジピン酸である。
上記されたとおり、このような脂肪族二酸は、とりわけ遊離の酸および酸クロリドの形態下で重縮合反応において用いることができる。
【0018】
半芳香族ポリアミド(PA1)としてPMXD6ポリマーを用いる場合、良好な結果が得られる。
本発明の目的のために、PMXD6ポリマーは、その全てではないにしても、本質的に全ての繰返し単位が、アジピン酸とメタ−キシレンジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)半芳香族ポリアミドを意味することが意図される。
PMXD6ポリマーはとりわけ、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.からIXEF(登録商標)ポリアミドとして市販されている。
【0019】
PMXD6ポリマーの分子量は特に限定されない。PMXD6は有利には、少なくとも2,500、より好ましくは少なくとも5,000、より好ましくは少なくとも10,000、さらにより好ましくは少なくとも13,000の数平均分子量(Mn)を有する。さらに、PMXD6は有利には、最大60,000、より好ましくは最大50,000、さらにより好ましくは最大30,000の数平均分子量(Mn)を有する。
nは、以下の式:
n=2×106/Σ(−COOH末端基)+(−NH2末端基)
(−COOH末端基)=μ当量単位の酸末端基の数/製品樹脂1グラム(塩基で滴定)
(−NH2末端基)=μ当量単位の塩基性末端基の数/製品樹脂1グラム(酸で滴定)
に従って計算され得る。
【0020】
本発明の目的のために、「半芳香族ポリアミド(PA1)」という定義はまた、50モル%未満、好ましくは25モル%未満、より好ましくは15モル%未満の、上に特定されたとおりの少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位を含むポリアミドを包含する。この特定の実施形態において、前記少なくとも1種の脂肪族ジアミンは、上に特定されたとおりの芳香族ジアミンの1種と併せて用いられるコモノマーであり得る。前記脂肪族ジアミンは、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、プロピレン−1,3−ジアミン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1−アミノ−3−N−メチル−N−(3−アミノプロピル)−アミノプロパンの中から選択され得る。好ましい脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。
【0021】
半芳香族ポリアミド(PA)の別のクラスは、50モル%を超える、少なくとも1種の芳香族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは、得られた)繰返し単位を含む半芳香族ポリアミド(PA2)である。
「少なくとも1種の芳香族二酸またはその誘導体」および「少なくとも1種の脂肪族ジアミン」という表現は、1種または2種以上の芳香族二酸またはその誘導体と1種または2種以上の脂肪族ジアミンが、上に特定されたとおりに反応させ得ることを意味すると理解される。
【0022】
脂肪族ジアミンの非限定的な例は、とりわけ、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、プロピレン−1,3−ジアミン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ヘキサンジアミンまたはヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1−アミノ−3−N−メチル−N−(3−アミノプロピル)−アミノプロパンである。
好ましい脂肪族ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)である。
【0023】
半芳香族ポリアミド(PA2)を生成するために重縮合反応で用いられる芳香族二酸およびその誘導体は、特に制限されない。芳香族二酸の非限定的な例は、とりわけ、フタル酸(イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)およびオルトフタル酸(OPA)を含む)、ナフタレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ケトン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0024】
好ましくは、半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリフタルアミド、すなわち、その50モル%を超える繰返し単位が、IPA、TPA、およびPAから選択される少なくとも1種のフタル酸、またはその誘導体と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により得られる(および好ましくは得られた)芳香族ポリアミドである。
【0025】
誤解を避けるために、IPA、TPA、PAの化学構造式は、本明細書において以下:
【化2】

に示される。
好適なポリフタルアミドはとりわけ、Solvay Advanced Polymers,L.L.C.からAMODEL(登録商標)ポリフタルアミドとして入手できる。
半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドから選択され得る。
【0026】
本発明の目的のために、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、その
(i)50モル%を超える繰返し単位が、テレフタル酸と、イソフタル酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成され;
(ii)25超から最大50モル%の繰返し単位が、テレフタル酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成され;および
(iii)1から25モル%の繰返し単位が、イソフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成される
芳香族ポリアミドとして定義される。
【0027】
ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは、少なくとも1種の脂肪族二酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成される繰返し単位をさらに含み得る。さらに、ポリ(テレ/イソ)フタルアミドは好ましくは、(オルト)フタル酸(PA)と少なくとも1種のジアミン(脂肪族または芳香族)との重縮合反応により形成される繰返し単位を持たない。
【0028】
半芳香族ポリアミド(PA2)は、ポリテレフタルアミドからも選択され得る。
本発明の目的のために、ポリテレフタルアミドは、その50モル%を超える繰返し単位が、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成される芳香族ポリアミドとして定義される。
【0029】
ポリテレフタルアミドの第1のクラスは、その全てではないとしても、本質的に全ての繰返し単位が、テレフタル酸と少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成されるポリテレフタルアミドからなる[クラス(I)]。
ポリテレフタルアミドの第2のクラスは、その全てではないとしても、本質的に全ての繰返し単位が、テレフタル酸と、イソフタル酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成されるポリテレフタルアミドからなる[クラス(II)]。
ポリテレフタルアミドの第3のクラスは、その全てではないとしても、本質的に全ての繰返し単位が、テレフタル酸と、少なくとも1種の脂肪族二酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成されるポリテレフタルアミドからなる[クラス(III)]。このような繰返し単位は、それぞれ、テレフタルアミドおよび脂肪族酸−アミドの繰返し単位と呼ばれる。
【0030】
クラス(III)内で、あるサブクラスは、繰返し単位の総モル数(すなわち、テレフタルアミドに加えて脂肪族酸−アミドの繰返し単位)に基づくテレフタルアミドの繰返し単位のモル比が60モル%以上であるポリテレフタルアミドからなり;さらに、それは有利には、80モル%以下、好ましくは70モル%以下である[サブクラス(III−1)]。
クラス(III)内で、第2のサブクラスは、繰返し単位の総モル数(すなわち、テレフタルアミドに加えて脂肪族酸−アミドの繰返し単位)に基づくテレフタルアミドの繰返し単位のモル比が60モル%未満であるポリテレフタルアミドからなる[サブクラス(III−2)]。
ポリテレフタルアミドの第4のクラスは、その全てではないが、本質的に全ての繰返し単位が、テレフタル酸と、イソフタル酸と、少なくとも1種の脂肪族二酸と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応により形成されるポリテレフタルアミドからなる[クラス(IV)]。
クラス(I)から(IV)に有用な脂肪族酸および脂肪族アミンは、ポリマー(PA1)および(PA2)に好適であるとして上記されたものである。
ここで上に記載された半芳香族ポリアミド(PA)全ての中で、半芳香族ポリアミド(PA1)は、本発明によるポリマー組成物(C)の成分としてしばしば好ましい。PMXD6ポリマーは、半芳香族ポリアミド(PA)として特に好ましい。
【0031】
本発明の1つのさらなる特定の実施形態によれば、少なくとも1種の別のポリアミド(PA3)が、半芳香族ポリアミド(PA)に加えてポリマー組成物(C)中に場合によって取り込まれ得る。この特定の実施形態の1つの態様において、半芳香族ポリアミド(PA)と異なる前記ポリアミド(PA3)は、それら自体、上に記載された半芳香族ポリアミド(PA)の全体から選択されてもよい。この特定の実施形態の別の態様(これは好ましい)において、少なくとも1種の他のポリアミド(PA3)は脂肪族ポリアミドの中から選択される。本発明の目的のために、「脂肪族ポリアミド」という定義は、その50モル%を超える、好ましくは75モル%を超える、より好ましくは85モル%を超える繰返し単位が、脂肪族二酸(および/またはその誘導体)と脂肪族ジアミンとの重縮合反応、ならびに/または、アミノカルボン酸および/もしくはラクタムの自動−重縮合反応によって得られる(および好ましくは、得られた)任意のポリアミドを意味することが意図される。脂肪族二酸および脂肪族ジアミンは、ポリマー(PA1)および(PA2)に好適であるとして上記されたものである。
【0032】
好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)の本質的に全てまたはまさに全ての繰返し単位は、少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と、少なくとも1種の脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得られる(および好ましくは、得られた)。
より好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン66)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラアミド)(ナイロン69)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカノアミド)(ナイロン612)、ポリ(ドデカメチレンドデカノアミド)(ナイロン1212)およびそれらのコポリマーから選択される。アミノカルボン酸および/またはラクタムの自動−重縮合反応によって得られる(および好ましくは、得られた)ポリアミドの例は、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリカプロアミドおよびポリ(11−アミノ−ウンデカノ−アミド)である。
【0033】
より好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ナイロン6およびナイロン66から選択される。
さらにより好ましくは、脂肪族ポリアミド(PA3)は、ナイロン66、すなわち、1,6−ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応によって得られる(および好ましくは、得られた)ポリアミドである。
【0034】
半芳香族ポリアミド(PA)は一般に、ポリマー組成物(C)の総質量に基づいて、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも25質量%、より好ましくは少なくとも35質量%、さらにより好ましくは少なくとも40質量%の量でポリマー組成物(C)に含まれる。それに加えて、半芳香族ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総質量に基づいて、一般に最大95質量%、好ましくは最大80質量%、より好ましくは最大60%、さらにより好ましくは最大50質量%の量でポリマー組成物(C)に含まれる。
存在する場合、ポリアミド(PA3)は、半芳香族ポリアミド(PA)の質量に基づいて、有利には少なくとも3質量%、好ましくは少なくとも6質量%、より好ましくは少なくとも10質量%の量でポリマー組成物に含まれる。それに加えて、ポリマー組成物に含まれ得る最大量のポリアミド(PA3)は、芳香族ポリアミド(PA)の質量に基づいて約300質量%、好ましくは約250質量%に達し得る。
【0035】
本発明によるポリマー組成物(C)は、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択された少なくとも1種のフィラー(F)を含む。
上に定義されたとおりの任意のフィラー(F)は、原則として、本発明における使用に望ましく;ポリアミドマトリックス中に有益に取り込まれるために知られているフィラーが有利に用いられる。当業者は、ポリマー組成物(C)に最もよく適するフィラー(F)を容易に理解する。一般に、フィラー(F)は、その化学的性質、その数平均長、その数平均直径、その数平均アスペクト比、その架橋および表面処理なしに混合装置によく送り込まれる能力に依存して選択される(とりわけ、フィラーとポリアミドの間の良好な界面接着性が、ブレンドの剛性および強靭性を改善するからである)。
【0036】
フィラー(F)は一般に補強フィラーである。補強フィラーは、当業者によってよく知られている。半芳香族ポリアミド(PA)とブレンドされる場合、補強フィラーは、通常10から50質量部(例えば、30質量部)の量で、正味の半芳香族ポリアミド(PA)の引張強度より高い引張強度を有するブレンドを形成する。引張強度は、ASTM D−638に従って3.2mm(0.125インチ)の厚さのASTM試験片で測定され得る。板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーは一般に補強フィラーであり、半芳香族ポリアミドの引張強度の高い増加をしばしば与え得る。
【0037】
板状フィラーは、当業者によってよく知られている。通常、板状フィラーは、板の、またはそれに似た形状を有する粒子から本質的になるか、またはまさになり、すなわち、粒子が扁平またはほとんど扁平であり、それらの厚さは、他の2つの寸法と比較して小さい。ある種の板状フィラーは、とりわけ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、第5版、Hanserの第17.4.2章、926〜930頁に記載されている。板状フィラーの非限定的な例には、タルク(n=1.57〜1.69、H=1)、マイカ[マスコバイトマイカ(n=1.55〜1.61;Hは、2.5から4の範囲にある)およびフロゴパイトマイカ(n=1.54〜1.69、H=2.5〜3)など]、カオリン[カオリナイト(n=1.56〜1.61、H=2)、焼成カオリンまたはムライト(n=1.62、Hは焼成温度に依存して6から8の範囲にある)など]、およびクレー(Baliクレー(n=1.6、H=2〜2.5)など)が含まれる。
【0038】
針状フィラーも当業者によってよく知れられている。通常、針状フィラーは、針の形状またはそれに似た形状を有する粒子から本質的になるか、またはまさになる。ポリマー組成物(C)に含まれるような針状フィラーの粒子は通常、2から20の数平均アスペクト比を有する。とりわけ、増加させた補強効果を得る目的に対して、ポリマー組成物(C)に含まれるような粒子の数平均アスペクト比は、好ましくは少なくとも3.0、より好ましくは少なくとも4.5、さらにより好ましくは少なくとも6.0であり;高い寸法安定性および低い反りが必要とされる場合、数平均アスペクト比は、好ましくは最大15である。フィラーの粒子の数平均アスペクト比は、画像解析ソフトウェアと結合させた光学顕微鏡で測定することができる。この目的に対して、粒子は有利には、エタノールなどの溶媒中に細かく分散させる。倍率範囲は一般に約200から約400である。画像解析ソフトウェアは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「グレイレベルヒストグラムからの閾値選択方法(A Threshold Selection Method from Gray−Level Histograms)」、IEEE Trans.Syst.Ma、Cybern、9、62〜66頁(1979年)に記載されたとおりのOtsuの方法に基づくことができる。数平均アスペクト比は、個々に取られたそれぞれの粒子のアスペクト比の数平均として定義することができ、粒子のアスペクト比は、その長さ対直径の比として定義することができる。粒子の長さは、粒子と同じ正規化二次モーメントを有する楕円の長径の長さとして定義することができ、一方、粒子の直径は、粒子と同じ正規化二次モーメントを有する楕円の短径の長さとして定義することができる。
【0039】
針状フィラーの中で、ウォラストナイト(n=1.65、H=4.5〜5)およびゾノトライト(n=1.59、H=6.5)が好ましい。ウォラストナイトは、良好な耐アルカリ性を有する白色のメタケイ酸カルシウムであり;ウォラストナイトはとりわけ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、第5版、Hanserの第17.4.3.1章、930〜931頁に記載されている。ゾノトライトは、イノシリケイトであり;通常、その式は、Ca6Si617(OH)2である。本発明の目的に好適な他の針状フィラーには、セピオライト、アタパルジャイトおよびパリゴルスカイトが含まれる。
【0040】
最後に、繊維状フィラーも、当業者によってよく知られている。通常、繊維状フィラーは、繊維の形状、またはそれに似た形状を有する粒子から本質的になるか、またはまさになり、すなわち、粒子は、細長く、非常に引き伸ばしたようであり、それらの長さは、他の2つの寸法と比較して非常に大きい。とりわけ、補強増加の目的に対して、ポリマー組成物(C)中に含まれる場合、繊維状フィラーの粒子は、
−通常、5を超える、好ましくは10を超える、より好ましくは15を超える数平均比;
−通常、少なくとも50μm、好ましくは少なくとも100μm、より好ましくは少なくとも150μmの数平均長さ;および
−通常、25μm未満、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μmである数平均直径
を有する。
【0041】
ポリマー組成物(C)に含まれる場合、繊維状フィラーの粒子は、一般に30mm未満の数平均長、一般に3μmを超える数平均直径を有する。ある種の繊維状フィラーはとりわけ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「プラスチック添加剤ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、第5版、Hanserの第17.4.3.2章、および第17.4.3.3章、930〜931頁に記載されている。本発明によって使用できる繊維状フィラーの中で、ガラス繊維、アスベスト、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維などを挙げることができる。理解できるように、繊維状フィラーの特定のクラスは、ウィスカー、すなわち、Al23、SiC、BC、FeおよびNiなどの種々の原料から作られた単結晶繊維からなる。繊維状フィラーの中で、ガラス繊維が好ましく;それらには、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「プラスチック用添加剤ハンドブック(Additives for Plastics Handbook)」、第2版、John Murphyの第5.2.3章、43〜48頁に記載されているとおりの、チョップトストランドA−、E−、C−、D−、S−およびR−ガラス繊維が含まれる。それらの種類に依存して、ガラス繊維は、約1.51から約1.58の屈折率n、および6.5のモース硬度Hを有する。
【0042】
好ましくは、フィラー(F)は、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される。良好な結果は、ウォラストナイトで得られる。
非常に好ましくは、フィラー(F)は、繊維状フィラーから選択される。優れた結果が、ガラス繊維で得られる。
【0043】
フィラー(F)は一般に、黒ではない(黒の繊維状フィラーの例は炭素繊維であり;黒の板状フィラーの例は、グラファイトである)。フィラー(F)は好ましくは、少なくとも1.40、好ましくは少なくとも1.50の屈折率nを有する。
フィラー(F)は有利には、有利には少なくとも2.5、好ましくは少なくとも4.5、より好ましくは少なくとも6のモース硬度Hを有する。それに加えて、フィラー(F)のモース硬度Hと無機顔料(IP)のモース硬度Hの差[Hフィラー(F)−H顔料(IP)]は有利には、少なくとも+1、好ましくは少なくとも+2、より好ましくは少なくとも+3である。
【0044】
フィラー(F)は好ましくは、サイズ剤で被覆される。サイズ剤には、好ましくはポリアミドが含まれる。
フィラー(F)が、ポリアミドサイジングによるチョップトストランドガラス繊維である場合に、良好な結果が得られる。
【0045】
フィラー(F)は一般に、ポリマー組成物(C)の質量に基づいて、少なくとも10質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、さらにより好ましくは少なくとも40質量%の量でポリマー組成物(C)に含まれる。それに加えて、フィラー(F)は一般に、ポリマー組成物(C)の質量に基づいて、最大60質量%、好ましくは最大55質量%、より好ましくは最大52質量%の量でポリマー組成物に含まれる。
【0046】
述べられたように、本発明による組成物(C)は、少なくとも1種の無機顔料(IP)を含む。述べられたように、前記無機顔料は少なくとも1.70の屈折率(n)を特徴とすることが必要である。好ましくは、前記無機顔料は、少なくとも1.90、より好ましくは少なくとも2.10、さらにより好ましくは少なくとも2.30の屈折率nを特徴とする。これは、無機顔料(IP)の好ましい特徴を表さないが、無機顔料(IP)の屈折率(n)は一般に、4.00未満、非常にしばしば3.50未満、しばしば3.00未満であることが留意され得る。
【0047】
本説明の目的のために、フィラー(F)または無機顔料(IP)などの物質の屈折率(n)は、550から590ナノメートル(nm)で放射される光線の波長で測定して、この物質の屈折率を定義することが意図される。このような光線は、例えば、レーザー装置によって放射され得る。589nmの波長で、ナトリウムイオン源のD線によって放射される黄色の光は、物質、特にフィラー(F)または無機顔料(IP)のnを測定するためにしばしば用いられる。
【0048】
物質の屈折率の値は一般に、少数第2位で与えられる。しかし、屈折率に対する組成物の特性、特にそのガンマ線抵抗性の感度を前提として、このような高精度で屈折率nを測定することができることは、本発明を利用する当業者にとって重要ではない。約±0.05の精度で屈折率nを測定するのにはるかに十分である上記の適用は、無機顔料全ての中で、本発明のポリマー組成物(C)における使用に好適であるものを、十分に明らかで完全な仕方で区別するために、当業者にとってはるかに十分でもある。本出願において挙げられた屈折率の値は、本発明の目的のための参照値の主な情報源として用いることができる。広範な無機顔料に対する、「化学および物理のCRCハンドブック(CRC Handbook of Chemistry and Physics)」、第70版、1989〜1990年のF−67からF−69頁で与えられる屈折率の値は、本発明の目的のための参照値の別の情報源として用いることができる。特に断らない限り、「化学のCRCハンドブック((CRC Handbook of Chemistry)」に挙げられた屈折率測定値の全てはナトリウム光で測定した。所与の顔料に対して、値が本明細書に挙げられていないか、または「化学のCRCハンドブック(CRC Handbook of Chemistry)」で得られない場合は、多種多様な鉱物および顔料のためのhttp://www.mindat.org/で与えられる屈折率値に依ることができる。
【0049】
しかし、それは、顔料(IP)が、上記の屈折率の要件を満たすには十分でなく、本発明の必要条件を満たすことができないことは強調されるべきである。本発明によれば、顔料(IP)は、最大4.5、好ましくは最大4、より好ましくは最大3.5、最も好ましくは最大3のモース硬度Hも特徴としなければならない。
【0050】
本説明の目的のために、物質、特に無機顔料(IP)またはフィラー(F)の「モース硬度」(「モース指数」とも呼ばれる)は、より軟らかい材料に引っかき傷をつけるより硬い材料の能力によって種々の鉱物の引っかき抵抗性を特徴づける鉱物の硬さのよく知られている尺度でその物質の硬度Hを定義することが意図される。この純粋に順序的であるが線形ではない尺度によって、整数1は最も軟らかい鉱物(タルク)に割り当てられ、整数10は最も硬い鉱物(ダイヤモンド)に割り当てられる。材料の硬度は、所与の材料が引っかき傷をつけ得る最も硬い材料、および/または所与の材料に引っかき傷をつけ得る最も軟らかい材料を見いだすことによってその尺度に対して測定される。モース硬度Hは、大部分の固体材料に対して表にされている。モース試験の結果は通常、±0.5単位の精度で与えられる。ロックウェルまたはビッカーズ試験のようなより厳密な試験も存在するが、モース試験は、鉱物、特に顔料を特徴づけるために最も広範に用いられる傾向がある。他方、硬度に対する組成物の特性、特にそのガンマ線抵抗性の感度を前提として、高い精度の方法で硬度を測定することができることは、本発明を利用する当業者にとって重要ではない。したがって、その精度が約±0.5単位からなるモース硬度値Hは、十分に明確で完全な仕方で、無機顔料全ての中で、本発明のポリマー組成物(C)における使用に好適であるものを区別するために、当業者にとってはるかに十分である。さらに、多種多様な顔料および他の鉱物のモース硬度値Hは、http://www.mindat.org/で提供され、本明細書で報告される値は、本発明の目的のための参照値として考えることができる。
【0051】
本発明における使用に好適な無機顔料(IP)の非限定的な例には、
−青色顔料、例えば、アズライト(2CuCO3.Cu(OH)2、n=1.73〜1.84、H=3.5〜4);
−緑色顔料、例えば、β−およびγ−マラカイト(n=1.88〜1.91、H=3.5〜4)、シュードマラカイト(n=1.75〜1.87、H=4〜4.5)、ジャロサイト(n=1.71〜1.82、H=2.5〜3.5)、およびそれらの混合物;
−黄色顔料、例えば、マシコット(n=2.51〜2.71、H=3.5〜4)、オルピメント(n=2.40〜3.02、H=1.5〜2)、ナトロジャロサイト(n=2.5〜3.5、H=2.5〜3.5)、およびそれらの混合物;
−赤色顔料、例えば、レアルガー(n=2.54〜2.70、H=1.5〜2)、バーミリオンまたはシナバー(n=2.91〜3.15、H=2〜2.5)、硫化セリウム(n=2.7、H=4)およびそれらの混合物;
−白色顔料
ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0052】
特に断らない限り、値の範囲が屈折率nに対して与えられる場合、このものは、無機顔料の複数の結晶形態(例えば、形態α、β、γ、またはεおよびω)に対応する屈折率が測定された値の範囲に相当する。
【0053】
無機顔料(IP)は好ましくは、白色顔料の中から選択される。これらの顔料は通常、それらの光吸収がそれらの光散乱と比較して非常に小さいという事実によって特徴づけられる。別の言い方をすれば、これらの顔料は、可視領域(波長400〜800nm)で光を通常本質的に全く吸収しないが、この領域で可能な限り十分に入射光を分散させる。
上記の両方の必要条件を満たす白色顔料(IP)の非限定的な例は、
−硫化亜鉛、恐らくスファレライト結晶形態(n=2.40〜2.47、H=3.5)および/またはウルツ鉱型結晶形態(n=2.37、H=3)(これに優先が与えられる)および/またはマトレイト結晶形態である;硫化亜鉛は、自然源、とりわけ、ウルツ鉱、マトレイト、閃亜鉛鉱、スファレライト(クライオフェンおよびクラメライト(cramerite))として知られている細かい品種を含む)に由来し得る;それはまた、以下に上述されるように、単独でまたは他の物質とブレンドして、とりわけ、ザクトリスまたはリトポンとして合成され得る;
【0054】
−75から100質量%の硫化亜鉛(好ましくは主として、ウルツ鉱方結晶形態であり、「主として」は、半分を超える質量、一般にはさらに多くの硫化亜鉛がこの結晶形態であることを意味する)、0から25質量%の硫酸バリウム、ならびに0から最大5質量%の(硫化亜鉛および硫酸バリウム以外の)成分からなる混合物、特に混合物は一般にザクトリス(n=2.37、H=3)と呼ばれ、これは、95から100質量%(通常、約98質量%)の硫化亜鉛(主として、ウルツ鉱型結晶形態である)、0.3から3.0質量%の硫酸バリウム(通常、約1.0質量%)、0.01質量%から1.0質量%の酸化亜鉛(通常、約0.2質量%)ならびに0から最大2.0質量%(通常、約0.8質量%)の(硫化亜鉛、硫酸バリウムおよび酸化亜鉛以外の)成分からなる;上述のとおり、ザクトリスは一般に、亜鉛−および硫黄−含有原料(例えば、亜鉛くずまたは酸化亜鉛、および粉砕バライト)から合成され、ザクトリスのこの合成方法は通常、水に溶融硫化バリウムを溶解させ、それを、例えば、硫酸ナトリウムと反応させることによって硫化ナトリウム中硫化バリウムに変換し、この硫化ナトリウム溶液をコバルト処理亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛)と混合し、得られた硫化亜鉛を焼成して(望ましくは、塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの存在下で)、結晶成長を得ることを含む;あるいは、結晶成長は、水熱処理で得ることもできる;
【0055】
−25から75質量%の硫化亜鉛、25から75質量%の硫酸バリウム、ならびに0から最大5質量%の、硫化亜鉛および硫酸バリウム以外の成分、特に:
(i)レッドシールリトポンと一般に呼ばれる混合物(n=2.01、H=3)、これは、25から35質量%の硫化亜鉛(通常、約29〜30質量%)、65から75質量%の硫酸バリウム(通常、約70質量%)、0.01質量%から1.0質量%の酸化亜鉛(通常、約0.1質量%)ならびに0から最大2.0質量%(通常、約1.0質量%)の(硫化亜鉛、硫酸バリウムおよび酸化亜鉛以外の)成分からなる混合物である;
(ii)シルバーシールリトポンと一般に呼ばれる混合物、これは、57から67質量%の硫化亜鉛(通常、約60〜63質量%)、33から43質量%の硫酸バリウム(通常、約37〜40質量%)、0.01質量%から1.0質量%の酸化亜鉛(通常、約0.1質量%)ならびに0から最大2.0質量%(通常、約1.0質量%)の(硫化亜鉛、硫酸バリウムおよび酸化亜鉛以外の)成分からなる混合物である;
硫化バリウムが硫化ナトリウムに変換されないが、亜鉛塩(および恐らくは塩化亜鉛も)と反応させて、硫化亜鉛、硫酸バリウム(および恐らくは塩化バリウムも)の混合物を形成することを除いて、ザクトリスを製造するために用いた方法と同様の方法を用いて合成されたリトポン:
ZnSO4+BaS→ZnS+BaSO4 (理論的ZnS含量:29.4質量%)
ZnSO4+4BaS+3ZnCl2→4ZnS+BaSO4+3BaCl2
(理論的ZnS含量:62.5質量%)
−炭酸鉛(PbCO3)または白鉛鉱(n=1.80〜2.08、H=3〜3.5);
−鉛白(2PbCO3.Pb(OH)2)(n=1.94〜2.09、H=3〜3.5);
−硫酸鉛(n=1.93、H=2.5〜3);
−ケイ酸鉛(n=2.37、H=3);
−亜鉛白または酸化亜鉛(n=2.01、H=4);
−三酸化アンチモンSb23またはアンチモン華(n=2.18〜2.35、H=2.5〜3);
およびそれらの混合物である。
【0056】
これらの顔料全ての中で、硫化亜鉛、ザクトリスおよびリトポン(レッドシールリトポンおよびシルバーシールリトポンを含む)が好ましい。硫化亜鉛(好ましくは、ウルツ鉱型結晶形態である)、およびザクトリス(ここで、硫化亜鉛は主としてウルツ鉱型結晶形態である)は、特に好ましい。優れた結果は、Sachtlebenにより市販されるザクトリス、特に合成の、微粉化の、有機的に被覆された硫化亜鉛であるSachtelebenのSACHTOLITH HDSで得られた。
【0057】
無機顔料(IP)は通常粒子からなる。無機顔料(IP)の粒子は有利には、ポリマーなどの有機化合物、例えば、ポリアミドなどで被覆される。
無機顔料(IP)の粒子の大きさは従来、それらの光吸収(これは低くなければならない)およびそれらの光散乱(これは高くなければならない)間の均衡を最適化するために選択される(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、「ウルマンの工業化学事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)」、Wiley−VCH編者、第5版、1992年、第A20巻、257〜290頁を参照されたい)。これらの条件に従って、顔料(IP)の粒子の数平均直径は一般に、10μm未満、好ましくは5μm未満、さらにより好ましくは0.8μm未満である。他方、顔料(IP)の粒子の数平均直径は一般に、0.05μmを超える、好ましくは0.1μmを超える、さらにより好ましくは0.15μmを超える。
【0058】
無機顔料(IP)は一般に、ポリマー組成物(C)の質量に基づいて、少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも1質量%、さらにより好ましくは少なくとも3質量%の量でポリマー組成物(C)に含まれる。それに加えて、無機顔料(IP)は一般に、ポリマー組成物(C)の質量に基づいて、最大15質量%、好ましくは最大12質量%、さらにより好ましくは最大10質量%の量でポリマー組成物に含まれる。
【0059】
本発明によるポリマー組成物(C)は、種々の他のポリマー、添加剤、(球形、回転楕円形または多面形のフィラー(F)以外の)フィラー、本明細書で総称して呼ばれる成分をさらに含み得る。これらの他のフィラーの中で、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛などを挙げることができる。
組成物(C)の他の任意選択の従来の成分には、シリカなどの核生成剤、接着促進剤、相溶化剤、硬化剤、潤滑剤、離型剤、染料および着色剤、防煙剤、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、ゴムなどのタフナー(toughner)、可塑剤、帯電防止剤、液晶ポリマーなどの溶融粘度抑制剤などが含まれる。
【0060】
少なくとも1種のヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)をポリマー組成物(C)にさらに取り込むことは有利であり得る。このようなHALSの例は、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−)スクシネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸の縮合物、N,N’−ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−1,4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3−5−s−トリアジンの縮合物、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラオエート、1,1’−(1,2−エタンジル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、to(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)マロネート、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザス−ピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、to(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)スクシネート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンの縮合物などがある。HALSは、一般に0.05質量%を超える、好ましくは0.1質量%を超える従来の量で組成物(C)に取込まれてもよく;さらに、これらの量は一般に、5質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。
【0061】
前記任意選択のさらなる成分とともに、組成物(C)の必須成分(PA)、(F)および(IP)は、それらの完全な混合物を与えることを目的とする様々な異なる方法および手順のステップによって半芳香族ポリアミド(PA)中に取り込まれてもよい。例えば、上記の成分および任意選択のさらなる成分を、初期段階に:半芳香族ポリアミドの(共)重縮合の最初にまたは最後に、またはその後の混合工程においてポリマー中にそれらを混合することによって取り込むこともできる。ある種の方法は、例えば、機械的ブレンダー(ドラムブレンダーなど)を用いて、粉末または顆粒形態の必須成分と任意選択の成分とを適当な比率で乾燥混合させることを含む。次いで、この混合物は、回分式または、押出機などのような連続式装置で溶融させ、混合物をストランドに推し出し成形し、このストランドをペレットに切断する。溶融される混合物は、よく知られているマスターバッチ法によっても調製され得る。連続溶融装置に、乾燥予備混合なしに別個に添加される組成物(C)の成分(components)および成分(ingredients)を供給してもよい。
【0062】
ある種の他の方法は、1種または複数の有機溶媒にポリマー(PA)を溶解させる(または有機溶媒に前記ポリマーを溶解させ、次いで、この溶解ポリマーを非溶媒の添加によって沈殿させ、最後に回収した乾燥ケーキを成形することを含む。
【0063】
本発明の別の態様は、
−少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)、好ましくはPMXD6ポリマー、
−タルク、マイカ、カオリン、カオリナイト、ムライト、クレー、ウォラストナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタパルジャイト、パリゴルスカイト、ガラス繊維、アスベスト、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維およびウィスカー、ならびにそれらの混合物から選択される少なくとも1種のフィラー、好ましくはガラス繊維、および
−硫化亜鉛、アジュライト、β−マラカイト、γ−マラカイト、シュード−マラカイト、ジャロサイト、マシコット、オルピメント、ナトロジャロサイト、レアルガー、バーミリオン、シナバー、硫化亜鉛、立方系で結晶化させた硫化亜鉛、六方晶系で結晶化させた硫化亜鉛、ウルツ鉱、マトレイト、スファレライト、閃亜鉛鉱、クライオフェン、クラメライト、ザクトリス、リトポン、レッドシールリトポン、シルバーシールリトポン、炭酸鉛、白鉛鉱、鉛白、硫酸鉛、ケイ酸鉛、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン華、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機顔料、好ましくは硫化亜鉛(好ましくはウルツ鉱型結晶形態である)およびザクトリス(ここで、硫化亜鉛は、主としてウルツ鉱型結晶形態である)
を含むポリマー組成物に関する。
【0064】
本発明のこの態様によれば、ポリマー組成物は有利には、上記のとおりのポリマー組成物(C)の特徴全てを満たし、フィラーは有利には、上記のとおりのフィラー(F)の特徴全てを満たし、および無機顔料は有利には、上記のとおりの無機顔料(IP)の特徴全てを満たす。ポリマー組成物(C)について検討する場合、半芳香族ポリアミド(PA)は、上記のとおりの1種である。
本発明の特定の実施形態は、PMXD6ポリマー、ガラス繊維および硫化亜鉛(特にそのウルツ鉱形態である)を含むガンマ線殺菌性ポリマーに関する。
【0065】
本発明はまた、ポリマー組成物(C)を含む成形物品または成形物品の部分に関する。
本発明による成形物品は有利には、医療装置、好ましくは、ガンマ線を用いることによって殺菌されなければならないか、または殺菌されたものである。ISO規格11137は、これらの装置を殺菌するために用いられる放射線量を決定するための情報を提供する。本明細書において、「医療装置」という用語は、その最も広い意味で理解されるべきである:本発明による医療装置は、(i)疾患の症状を治療または軽減するために有用な非外科手術用装置だけでなく、またとりわけ、(ii)患者の身体が、問題部分を治療または除去するために外科医によって患者の身体が切開される患者の治療に有用な医療装置、特に、恐らくは移植片(前記移植片自体を含む)を挿入することによって、骨および関節の障害を治療または軽減するために有用なそれらの装置(「整形外科装置」として知られている)、さらに(iii)歯科に有用なそれらの装置、特に、歯の不規則性を矯正するために有用な装置(「歯列矯正装置」として知られている)および(iv)疾患を予防または診断するために有用な医療装置を包含する。
【0066】
一般に、産業規模で、これらの線量は、15から70キログレイ(KGy)、好ましくは20から40kGyからなる。
【0067】
本発明による組成物(C)から成形され得る殺菌性医療装置は、手術用具および整形外科用具から選択され得る。このような殺菌性医療装置の例には、
− キリ、特に骨用キリ;
− 牽引弓(traction bows);
− 刃
− ブローチ(ヒップブローチなど);
− カテーテル;
− のみ;
− クリップ;
− クランプ(骨クランプおよび軟骨クランプなど);
− カッター(ワイヤーカッターおよびピンカッターなど);
− キューレット、特に骨キューレット;
【0068】
− 解剖器具;
− ドリル(ハンドドリルおよびパターンドリルなど);
− エレベーター(骨エレベーターおよび骨膜エレベーターなど);
− ワイヤーエキストラクター;
− ひざ関節調整固定具;
− 鉗子[ドレッシング鉗子または組織鉗子(グレフェー鉗子、アイリス鉗子およびアドソン鉗子を含む)、適用鉗子(アプロキシメータ、反射クリップアプライヤーおよび反射クリップ除去鉗子のための適用鉗子を含む)、微細鉗子、骨切断鉗子または骨鉗子、腐骨鉗子および腱牽引鉗子など]:
− ガイド(ソーガイドおよびワイヤーガイドなど):
− 丸のみ;
− リードハンド;
− ハンドル(ソーハンドルなど);
− ヘモスタット(ロチェスター−オクスナーヘモスタット鉗子、ロチェスター−ペアンヘモスタット鉗子、バックハウスタオルクランプおよびモスキートヘモスタット鉗子など);
− ホルダー(メッシュホルダーおよびニードルホルダーなど);
− フック;
【0069】
− 移植片;
− 股関節またはひざ関節補綴手術のための骨を除去するために使用される器具および付属品;
− ナイフ(外科用メス、超微細手術用ナイフ、眼科用ナイフ、切断ナイフ、軟骨刀および半月板刀など);
− 木槌、器具ポートフォリオなど;
− 骨刀;
− スタインマンピン(完全ネジスタインマンピンおよびスムーズスタインマンピンなど);
− プライヤー(フィッシャーマンプライヤー、シザーズプライヤーおよびニードルノーズプライヤーなど);
− プローブおよび試用具(大腿膝試用具など);
− ティッププロテクター、
− プラー(ピンプラーおよびワイヤープラーなど);
− パンチ;
− やすり[股関節やすり、骨膜剥離器、骨膜剥離子(rugines and scalprums)など];
− 回収器(腱回収器など);
− 開創器(骨開創器、手開創器、指開創器、筋鉤、膝開創器、半月筋鉤およびレーキ開創器など);
【0070】
− 骨鉗子(rongeurs)(骨鉗子(bone rongeurs)およびカモノハシ骨鉗子など);
− 鋸(特に、骨鋸);
− はさみ(軟骨はさみなど);
− すべらせ器(骨すべらせ器など);
− 鏡(クナップ鏡など);
− 手術用吻合器;
− 抜去器(腱抜去器など);
− ワイヤータイトナー;
− トレイ;
− 冠状鋸;
− ピンセット(デュモントピンセットなど)(例えば、Dumont#5ピンセット)
− ワイヤー捻器;
− ワイヤー[カーシュナーワイヤー(例えば、完全ネジまたはスムーズカーシュナーワイヤー)および歯列矯正ワイヤーなど]
などが含まれる。
【0071】
ポリマー組成物(C)が様々な医療物品に成形され得る場合に、生体適合性であることが好ましい。したがって、本発明の特定の態様は、発明されたポリマー組成物(C)に含まれる半芳香族ポリアミド(PA)としての使用に好適なある種の好ましい半芳香族ポリアミド、いわゆるPMXD6ポリマーの驚くべき良好な生体適合性[米国薬局方(USP)クラスVIおよびISO 10993規格に準拠して]にある。本出願人は、PMDX6ポリマーの生体適合性の良好な生体適合性(USPクラスVIおよびISO 10993の両方に準拠して)は、ポリマー組成物(C)の使用に好適な多数の添加剤(ガラス繊維およびナイロン6,6を含む)によって影響されないことをさらに見いだした。したがって、本発明の特定の態様は、その生体適合性のための、特にその米国薬局方(USP)クラスVI規格への準拠、および/またはそのISO 10993規格への準拠のためのPMXD6ポリマー(または、半芳香族ポリマー(PA)がPMXD6ポリマーである上記のとおりのポリマー組成物(C))の使用に関する。一般に、ISO 10993の下で用いられる試験法には、ISO 10993:5:1999(ISO溶出法を用いる細胞毒性)、ISO 10993:10:2002(塩化ナトリウム抽出物およびゴマ油抽出物による最大化感作、ならびにゴマ油抽出物との皮内反応性)、ISO 10993:11:1993(塩化ナトリウム抽出物およびゴマ油抽出物による全身毒性)、およびISO 10993:18:2005(水抽出物による物理化学的試験)が含まれる。好ましくは、発明された使用は、生体適合性である材料を用いることを必要とする医療用途における(特に、USPクラスVIおよび/またはISO 10993規格に準拠している材料の使用が必要とされる医療用途における)その生体適合性(特に、そのUSPクラスVIおよび/またはISO 10993規格に準拠のための)のためのPMXD6ポリマーの使用に関する。
【0072】
本発明による成形物品は有利には、成形によって形成される。様々な成形技術が、組成物(C)から成形物品または成形物品の部分を形成するために使用され得る。組成物(C)の粉末、ペレット、ビーズ、フレーク、再粉砕材料または他の形態が、成形(液体または他の添加剤の有無に関わらず)、予備混合または別個に供給され得る。特定の実施形態において、組成物(C)は、圧縮成形され得る。抽出条件は、小試料の試行錯誤の成形によって決定され得る。上限温度は、熱質量分析などの熱分析から推定され得る。下限温度は、例えば、動的機械熱分析(DMTA)、示差走査熱量計(DSC)、または同様な方法によって、測定してTgから推定され得る。組成物(C)は射出成形され得る。当業者は、材料の応力緩和特性および溶融粘土の温度依存性を含む射出成形性に影響する要因を理解する。
【0073】
組成物(C)は、推し出し成形することもできる。非限定的な例には、角、溝、六角棒、中空棒、I−ビーム、接続ストリップ、管、長方形管、ロッド、シート、板、正方形棒、正方形管、T形材、薄肉管、微小管、ストランド、長方形ストランド、または特定の用途で必要とされるような他の形状が含まれる。押出に関連して、引抜きがあり、ここで、ガラス繊維または炭素繊維などの繊維強化材は、溶融状態で押出組成物(C)のマトリックスに連続的に添加され;非常に優れた弾性率および圧縮強度を有する複合体が得られる。
【0074】
本発明の別の態様は、材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための、最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する少なくとも1種の無機顔料(IP)の使用に関し、前記材料は、ASTM D648に従って測定した場合に、1.82MPaの荷重下で80℃を超える熱たわみ温度を有するポリマー(P)であるか、または前に定義したとおりの少なくとも1種のポリマー(P)を含むポリマー組成物である。ポリマー(P)は有利には、半芳香族ポリアミド(PA)である。この材料は有利には、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)を含むポリマー組成物である。この材料は、3から300キログレイのガンマ線量に曝露され得る。この材料は、上記のものなどの成形物品または成形物品の部分の中に含まれ得る。
【0075】
当業者によく知られているように、材料のガンマ線への曝露は、とりわけ前記材料の変色および/または機械的特性の喪失および/または化学的抵抗性の喪失をもたらし得る。したがって、ガンマ線への材料の曝露によって生じた色ずれが前記顔料の使用の結果として減少する場合に、材料のガンマ線への抵抗性がとりわけ前記顔料の使用によって増加したと見なすことができる。実施例で示されるように、全体的な色ずれは、とりわけΔEで定量化することができ、ここで、ΔEは、HUNTERLAB空間における全体的な比色差:ガンマ線曝露後のポリマー組成物(C)の色とガンマ線曝露前の同じポリマー組成物(C)の色の間の
【数1】

を意味すると理解され、Lは輝度であり、aは緑−赤軸に沿った色度であり、bは黄−青軸に沿った色度であり;上記の関係において、L、aおよびbの下の添え字γは、ガンマ線へ曝露後のポリマー組成物(C)を指し、添え字0は、曝露される前の同じポリマー組成物(C)を指す。ΔEの計算は、正反射率を含めて、イルミナント「D−65」および2°観測者(observer)を用いて行うことができる。
【0076】
ある種のポリマー(P)の典型的な熱たわみ温度が以下の表に記載される。
【表1】

【0077】
熱たわみ温度(HDT)は、4インチの間隔を用いて、ASTM D648、A法に従って測定する。ポリマー(P)は、5インチ長、1/2インチ幅、および1/8インチ厚であるプラークに射出成形される。HDT試験の間に、プラークは油などの適当な液体熱伝導媒体に浸漬させる。例えば、Dow Corning 710シリコーンオイルが半芳香族ポリマーのために用いられる。HDT試験は、焼きなましをされていない試験片に対して行われる。
【0078】
本発明のある種の実施形態において、ポリマー(P)は、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ならびにそれらのブレンドおよびコポリマーから選択され得る。ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリエーテルエーテルスルホンの構造繰返し単位は、以下:
ポリスルホン
【化3】

ポリフェニルスルホン
【化4】

ポリエーテルスルホン
【化5】

ポリエーテルエーテルスルホン
【化6】

に記載される。
【0079】
本発明のある種の他の実施形態において、ポリマー(P)は、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ならびにそれらのブレンドおよびコポリマーから選択され得る。
【0080】
ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトンの構造繰返し単位は、以下:
ポリエーテルケトン
【化7】

ポリエーテルエーテルケトン
【化8】

ポリエーテルケトンケトン
【化9】

に記載される。
【0081】
本発明のさらに別の実施形態において、ポリマー(P)はポリフェニレンスルフィドである。
【0082】
本発明のさらに別の態様は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)およびガラス繊維を含むポリマー組成物である材料の、ガンマ線に対する抵抗性を増加させるための硫化亜鉛の使用に関する。この材料は、3から300キログレイのガンマ線量に曝露され得る。この材料は、上記されたものなどの成形物品または成形物品の部分に含まれ得る。
【0083】
本発明のさらに別の態様は、それが必要とされている材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させる方法であって、前記材料は、ASTM D648に従って測定した場合に、1.82MPaの荷重下で80℃を超える熱たわみ温度を有するポリマー(P)であるか、または前に定義されたとおりの少なくとも1種のポリマー(P)を含むポリマー組成物であり、前記方法が、最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する少なくとも1種の無機顔料(IP)のガンマ線安定量をその材料に添加することを含む、方法に関する。ポリマー(P)は有利には、半芳香族ポリアミド(PA)である。この材料は有利には、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)を含むポリマー組成物である。この材料は、3から300キログレイのガンマ線量に曝露され得る。この材料は、上記されたものなどの成形物品または成形物品の部分に含まれ得る。
【0084】
本発明のさらに別の態様は、それが必要とされている材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させる方法であって、前記材料が、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)およびガラス繊維を含むポリマー組成物であり、前記方法が、硫化亜鉛のガンマ線安定量をその材料に添加することを含む、方法に関する。この材料は、3から300キログレイのガンマ線量に曝露され得る。この材料は、上記されたものなどの成形物品または成形物品の部分に含まれ得る。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための最大6.5のモース硬度および少なくとも1.40の屈折率を有する少なくとも1種の顔料の使用であって、前記材料が、ASTM D648に従って測定した場合に、1.82MPaの荷重下で80℃を超える熱たわみ温度を有するポリマー(P)であるか、前に定義されたとおりの少なくとも1種のポリマー(P)を含むポリマー組成物である、少なくとも1種の顔料の使用に関する。対象の顔料は、無機または有機であってもよく;これは好ましくは無機である。好ましいとはいえないまでも、対象の顔料は、1.40から1.70未満の屈折率を有することができ;1.40から1.70未満の屈折率を有する顔料の非限定的な例には、硫酸バリウム(n=1.63)、ウルトラマリンブルー(n=1.51)、クロロ−銅フタロシアニン(フタロシアニングリーンとしても知られる、n=1.40)が含まれる。あるいはかつ好ましくは、対象の顔料は、少なくとも1.70、より好ましくは少なくとも1.90、さらにより好ましくは少なくとも2.10、最も好ましくは少なくとも2.30の屈折率を有し;一方、これは対象の顔料の好ましい特徴を一般に表さないが、その屈折率は、通常4.00未満、非常にしばしば3.50未満、しばしば3.00未満であることが留意され得る。また、好ましいとはいえないまでも、対象の顔料は、4.5を超え、最大6.5のモース硬度を有し得;少なくとも1.70の屈折率および4.5を超えるモース硬度を有する顔料の非限定的な例には、二酸化チタン[ルチル型二酸化チタン(n:2.80、H=6〜6.5)、アナターゼ型二酸化チタン(n:2.55、H=5.5〜6)およびそれらの混合物を含み、ルチル型二酸化チタンが好ましい]、二酸化ジルコニウムまたはバデレアイト(n:2.13〜2.20、H=6.5)、および酸化鉄赤またはヘマタイト(n:2.78〜3.01、Hは5から6の範囲である)が含まれる。あるいはかつ好ましくは、対象の顔料は、最大4.5のモース硬度を有し、非常に好ましくは、その顔料は、上記された無機顔料(IP)のとおりに最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する無機顔料である。ポリマー(P)は有利には、半芳香族ポリアミド(PA)である。この材料は有利には、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)を含むポリマー組成物である。この材料は、3から300キログレイのガンマ線量に曝露され得る。この材料は、上記されたものなどの成形物品または成形物品の部分に含まれ得;例えば、成形物品は、整形外科用用具であることができ、本発明の特定の態様は、少なくとも1種のプラスチック材料から本質的になる、またはそれから本質的になる少なくとも1つの部分を含む整形外科用用具のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための対象の顔料の使用であって、そのプラスチック材料が、少なくとも1種の脂肪族二酸またはその誘導体と少なくとも1種の芳香族ジアミンとの重縮合反応により得られる50モル%を超える繰返し単位を含む少なくとも1種の半芳香族ポリアミドを含む、使用に関する。
【0086】
本発明のさらに別の態様は、材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための少なくとも1種の顔料の使用であって、前記材料が少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および少なくとも1種のフィラーを含むポリマー組成物であり、前記フィラーが、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択され、前記顔料が、硫化亜鉛、アジュライト、β−マラカイト、γ−マラカイト、シュード−マラカイト、ジャロサイト、マシコット、オルピメント、ナトロジャロサイト、レアルガー、バーミリオン、シナバー、硫化亜鉛、ウルツ鉱型結晶形態の硫化亜鉛、スファレライト型結晶形態の硫化亜鉛、ウルツ鉱、マトレイト、スファレライト、閃亜鉛鉱、クライオフェン、クラメライト、ザクトリス、リトポン、レッドシールリトポン、シルバーシールリトポン、炭酸鉛、白鉛鉱、鉛白、硫酸鉛、ケイ酸鉛、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン華、硫酸バリウム、ウルトラマリンブルー、フタロシアニングリーン、二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、および酸化鉄赤、ならびにそれらの混合物から選択される、使用に関する。顔料は好ましくは、「硫化亜鉛」から始まり「アンチモン華」までの上記に列挙した顔料、およびそれらの混合物から選択される。非常に好ましくは、硫化亜鉛、リトポンおよびザクトリスから選択される。
【0087】
本発明の最後の態様は、現下発明された医療装置、特にPMXD6ポリマーを含む強化ポリマー組成物からできたもののガンマ線に対する曝露後の優れた着色性および色の保持を取り扱う。患者を治療する場合、外科医または他の医療専門家は、非常に近い外観、または別の言い方をすれば、眼で迅速に捕らえることが容易でない1つまたは複数の特徴だけによって互いに異なっている多くの医療装置を使用することをしばしば必要とする。例えば、一つの整形外科手術に対して、外科医は、互いにそれらの大きさだけが異なる最大10から15の異なる股関節やすりを必要とし得る。医療専門家は、多数の視覚的に近い外観の医療装置[それらの1つは、医療行為(例えば、整形外科手術)の所与の時間において使用されなければならない]間を迅速かつ容易に区別することができることが非常に望ましい。本発明による医療装置は、これを可能にし、その理由は、ガンマ線への曝露後のそれらの優れた着色性および色保持の結果として、視覚的に近い外観の異なる医療装置を、実質的に異なる色で極めて容易に着色することができ、カラーパレットの広範なセットが容易に利用しやすく;さらに、それらの色が、ガンマ線のおびただしい曝露後でさえも、時間とともに弱い変化のまま保たれるからである。この点で、本発明は、少なくともそれらの色によって、恐らくは、主としてまたは本質的にそれらの色によって互いに異なる複数の医療装置の中で前記医療装置を選択するための、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)ならびに、最大6.5のモース硬度および少なくとも1.40の屈折率を有する少なくとも1種の顔料を含むガンマ線殺菌性ポリマー組成物[好ましくは、上記のとおりのガンマ線殺菌性、強化ポリマー組成物(C)]から本質的になるか、または少なくともそれから本質的になる部分を含む医療装置(特に、整形外科用用具)の色に基づく基準の使用としても見ることができ;特定の実施形態において、複数の医療装置(特に、複数の整形外科用用具)は、同じ機能性を有する医療装置(例えば、この医療装置の全てが、股関節やすりである)を含むか、またはそれらからなり、好ましくは、同じ機能性を有する本質的に相似の、またはまさに相似の医療装置からなる。この選択は、それは、医療行為(例えば、整形外科手術)の過程の間に、すなわち、医療専門家が患者を治療しているときに、しばしば起こる。
【0088】
本発明は、非限定的な実施例を参照することによって以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0089】
(比較例1Rおよび実施例2)
比較例1Rは、比較目的のために与える。
比較例1Rによれば、第1の試料は、
− 44質量%のPMXD6ポリマー;
− 50質量%の「EC−10−4,5mm−983」ガラス繊維;
− 4.9質量%のナイロン66;
− 1質量%のタルク;
− 0.1質量%のステアリン酸Ca
から構成される組成物から成形した。
【0090】
これらの成分を、ガラス繊維を側面供給によって供給して、ZSK 30押出機を用いて溶融混合した。他の材料は全ては、主ホッパーによって供給した。温度は270℃に設定した。スループットは、300rpmで20kg/時間であった。
次いで、前記成形した第1の試料を、射出成形試料1Rを得るために、Axxicon ISO型(mould)を備えたBattenfeld 350/125CD 25mmスクリューを用いて、射出速度200mm/秒、温度270℃および保持液圧40バールで射出成形した。
Griffith Merdirisによる、かつそこにおけるGammacell−220を用いて試料1Rに対して40キログレイのガンマ線照射を行った。
試料1Rの曲げ強度は、Instron 4444シリーズ装置を用いて、規格ISO 178に従ってガンマ線照射の前および後で測定した。
ガンマ線照射の前および後の試料1Rの色は、分光計で測定した。色変化の程度は、全ての場合に、HUNTERLAB単位で表して、正反射も含めて、ルミナント「D−65」および2°観測者(observer)に対して計算して、総色差(デルタE)として定量化した。この目的に対して、D65ライト、および2°観測者角を備えたHUNTERLAB(登録商標)XE分光光度計を用いた。色は、正反射率を含めて決定した。
【0091】
実施例2は、本発明によっている。
実施例2によれば、第2の試料を
− 35質量%のPMXD6ポリマー:
− 50質量%のE−タイプチョップトガラス繊維(ポリアミドでサイジングされて、公称平均直径10μm(混合前)および公称数平均長4.5mm(混合前)を有する);
− 4.9質量%のナイロン66;
− 1質量%のタルク;
− 0.1質量%のステアリン酸Ca、および
− 9質量%のザクトリス(SACHTOLITH(登録商標)HDSとしてSachtlebenにより市販された)
から構成される組成物から成形した。
【0092】
溶融混合は、比較例1Rの第1の試料に対して用いられたものと同じ条件で行った。
前記成形した第2の試料を、射出成形試料2を得るために、射出成形し、試料1Rと同様にガンマ線照射した。
試料の2の曲げ強度および色ずれは、試料1Rについて記載されたとおりに同様に試験した。
試料1Rおよび試料2に対して行った試験の結果は、以下の表1にまとめる。
【表2】

【0093】
これらの結果は、本発明によるガンマ線照射組成物で成形した試料の特性に対する硫化亜鉛ベース顔料の添加の有利な効果を示した:機械的特性は、硫化亜鉛ベース顔料の存在によって本質的に影響されず、したがって、非常に許容できる水準で維持され;一方で、その色ずれは、比較試料のものと比較して劇的に減少する。
【0094】
実施例3から実施例7
試料は、
− 42.7質量%のPMXD6ポリマー;
− 48.5質量%のE−タイプチョップトガラス繊維(ポリアミドでサイジングされて、公称平均直径10μm(混合前)および公称数平均長4.5mm(混合前)を有する);
− 4.8質量%のナイロン66;
− 1質量%のタルク;
− 0.1質量%のステアリン酸Ca、および
− 2.9質量%の無機顔料
から構成される組成物から成形した。
【0095】
無機顔料の性質によってのみ互いに異なる試料:
− 実施例3に対して、硫酸バリウム(Blanc fixe F)を用いた;
− 実施例4に対して、ルチル型二酸化チタンKronos(登録商標)2450を用いた;
− 実施例5に対して、アナターゼ型二酸化チタンKronos(登録商標)1014を用いた;
− 実施例6に対して、Lithopone−30DSとして市販されているレッドシールリトポンを用いた;
− 実施例7に対して、Sachtolith(登録商標)HDSとして市販されているザクトリスを用いた。
【0096】
それらは、試料1Rの組成物の100質量部当たり3質量部の無機顔料をさらに含む点で、比較例1Rの試料と異なる。別の言い方をすれば、組成物3から組成物7は、
− 100質量部の比較例1Rの試料、および
− 3質量部の無機顔料
から構成されていると見ることもできる。
溶融混合は、比較例1Rおよび実施例2の最初の2つの試料に対して用いたものと同じ条件で行った。
【0097】
射出成形試料3から試料7を得るために、現下成形された試料は射出成形し、試料1Rおよび試料2と同様にガンマ線照射した。
試料3から試料7の曲げ強度および色ずれは、試料1Rおよび試料2について記載したとおりに同様に試験した。
ガンマ線照射後のこれらの試料の曲げ強度および色ずれ(デルタE)の保持率%は、表2にまとめた。
試料1の顔料を含まない組成物(ガンマ線照射なし)への顔料の取込みから得られる曲げ強度の保持率%も計算した。
【0098】
【表3】

(1)=比較試料1の曲げ強度(または破断点変形)で除した対象の試料の曲げ強度(または破断点変形)
(2)=照射前の同じ試料の曲げ強度(または破断点変形)で除した照射後の対象の試料の曲げ強度(または破断点変形)
(3)照射前の試料1のL,aおよびbは、それぞれ、71、−3.2および1.7からなる。
【0099】
これらの結果から、予想外にも、特性の非常に良い全体的均衡(顔料取込み後の機械的特性の保持率、ガンマ線照射後の機械的特性の保持率およびガンマ線照射後の色保持率の点において)が、レッドシールリトポン(実施例6)またはザクトリス(実施例7)を含む組成物によって得られ、特性の最良の全体的均衡は、ザクトリス含有組成物によって得られることがわかることが示される。
これらの結果はさらに、驚くべきことに、PMXD6組成物への顔料の取込みがガンマ線に対する抵抗性の重要な増加をもたらしたことを示し(例えば、無着色の試料1Rと、1.63以上の屈折率を有する顔料で着色した試料2から試料7に対するガンマ線照射後の全体的な色差デルタEを比較されたい);さらに、屈折率が高いほど、ガンマ線抵抗性は高い(デルタEが低い)。
これらの結果はさらに、試験顔料全ての中で、最も低いモース硬度値を有するもの(公称ザクトリスおよびリトポン)が、驚くべきことに、顔料取込み後の機械的特性(例えば、曲げ強度および破断点での変形)の保持率の点で最良の結果をもたらしたことを示す。他方で、二酸化チタンのような顔料によって、機械的特性の水準は、実質的に低下させられた。したがって、このような顔料は有利には、恐らくは組成物を費用的により魅力あるものにさせることを意図して、非常に高い水準での機械的特性を要しない用途においてのみ用いられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)、
− 板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラー(F)、および
− 最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する少なくとも1種の無機顔料(IP)
を含むガンマ線殺菌性ポリマー組成物(C)。
【請求項2】
前記半芳香族ポリアミド(PA)がPMXD6ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記フィラー(F)のモース硬度Hと無機顔料(IP)のモース硬度Hの差[Hフィラー(F)−H顔料(IP)]が少なくとも+2であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記無機顔料(IP)が、硫化亜鉛、リトポンおよびザクトリスの中で選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記無機顔料(IP)が、ウルツ鉱型結晶形態の硫化亜鉛であるか、または硫化亜鉛が主としてウルツ鉱型結晶形態である硫化亜鉛を含むザクトリスであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
− 少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)、
− タルク、マイカ、カオリン、カオリナイト、ムライト、クレー、ウォラストナイト、ゾノトライト、セピオライト、アタパルジャイト、パリゴルスカイト、ガラス繊維、アスベスト、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、ウィスカー、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のフィラー、ならびに
− 硫化亜鉛、アジュライト、β−マラカイト、γ−マラカイト、シュード−マラカイト、ジャロサイト、マシコット、オルピメント、ナトロジャロサイト、レアルガー、バーミリオン、シナバー、硫化亜鉛、ウルツ鉱型結晶形態の硫化亜鉛、スファレライト結晶型の硫化亜鉛、ウルツ鉱、マトレイト、スファレライト、閃亜鉛鉱、クライオフェン、クラメライト、ザクトリス、リトポン、レッドシールリトポン、シルバーシールリトポン、炭酸鉛、白鉛鉱、鉛白、硫酸鉛、ケイ酸鉛、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン華、およびそれらの混合物から選択される少なくとも1種の無機顔料
を含むポリマー組成物。
【請求項7】
− 前記半芳香族ポリアミド(PA)がPMXD6ポリマーであり、
− 前記繊維状フィラーがガラス繊維であり、および
− 前記無機顔料が、硫化亜鉛が主としてウルツ鉱型結晶形態であるザクトリスである
ことを特徴とする、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含むガンマ線殺菌医療装置。
【請求項9】
材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための最大6.5のモース硬度および少なくとも1.40の屈折率を有する少なくとも1種の顔料の使用であって、前記材料が、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択される少なくとも1種のフィラーを含むポリマー組成物である、少なくとも1種の顔料の使用。
【請求項10】
前記顔料が、最大4.5のモース硬度および少なくとも1.70の屈折率を有する無機顔料(IP)であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記フィラー(F)のモース硬度Hと前記無機顔料(IP)のモース硬度Hの差[Hフィラー(F)−H顔料(IP)]が少なくとも+2であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記顔料が、少なくとも2.10の屈折率を有する無機顔料であることを特徴とする、請求項9、10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記半芳香族ポリアミド(PA)がPMXD6ポリマーであり、前記フィラー(F)がガラス繊維であり、前記顔料がザクトリスであることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
材料のガンマ線に対する抵抗性を増加させるための少なくとも1種の顔料の使用であって、
前記材料が、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(PA)および少なくとも1種のフィラーを含むポリマー組成物であり、
前記フィラーが、板状フィラー、針状フィラーおよび繊維状フィラーから選択され、ならびに
前記顔料が、硫化亜鉛、アジュライト、β−マラカイト、γ−マラカイト、シュード−マラカイト、ジャロサイト、マシコット、オルピメント、ナトロジャロサイト、レアルガー、バーミリオン、シナバー、硫化亜鉛、ウルツ鉱型結晶形態の硫化亜鉛、スファレライト型結晶形態の硫化亜鉛、ウルツァイト、マトレイト、スファレライト、閃亜鉛鉱、クライオフェン、クラメライト、ザクトリス、リトポン、レッドシールリトポン、シルバーシールリトポン、炭酸鉛、白鉛鉱、鉛白、硫酸鉛、ケイ酸鉛、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン華、硫酸バリウム、ウルトラマリンブルー、フタロシアニングリーン、二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、および酸化鉄赤、ならびにそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の顔料の使用。
【請求項15】
前記顔料が、硫化亜鉛、リトポンおよびザクトリスの中で選択されることを特徴とする、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2011−504527(P2011−504527A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534421(P2010−534421)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053835
【国際公開番号】WO2009/065627
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】