説明

改善された触媒及び環状エーテルの重合のための方法

本発明の対象は、少なくとも1種の酸活性化された層状ケイ酸塩と、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族の遷移金属の酸化物との混合物を含有する触媒、並びにポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフラン−コポリマー、前記ポリマーのジエステルもしくはモノエステルの製造方法において、テトラヒドロフランを少なくとも1種のテロゲン及び/又はコモノマーの存在下で係る触媒上で重合させることを特徴とする方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の酸活性化された層状ケイ酸塩と、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族の遷移金属の酸化物との混合物を含有する改善された触媒、並びにポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフラン−コポリマー、前記ポリマーのジエステルもしくはモノエステルの製造方法において、テトラヒドロフランを少なくとも1種のテロゲン及び/又はコモノマーの存在下で係る触媒上で重合させる方法に関する。
【0002】
ポリテトラヒドロフラン(以下、"PTHF")は、ポリオキシブチレングリコールとも呼ばれるが、それは、プラスチック工業及び合成繊維工業において、多方面にわたる中間生成物であり、とりわけポリウレタン−、ポリエステル−及びポリアミド−エラストマーの製造のためのジオール成分として使用される。その他に、ポリテトラヒドロフランは、その幾つかの誘導体も同様に、多くの使用事例において、例えば分散剤として又は古紙の脱色("脱インキ")に際して、有益な助剤である。
【0003】
PTHFは、工業的には通常は、テトラヒドロフラン(以下、"THF")を好適な触媒上で、添加することでポリマー鎖の鎖長の制御と、ひいては平均分子量の調節が可能な試薬(連鎖中断試薬又は"テロゲン")の存在下で重合させることによって製造される。その制御は、その際に、テロゲンの種類と量によって行われる。好適なテロゲンの選択によって、付加的に、ポリマー鎖の一方の端部に又は両端部に官能基を導入することができる。
【0004】
ここで、例えばテロゲンとしてカルボン酸もしくは無水カルボン酸を使用することによって、PTHFのモノエステルもしくはジエステルを製造することができる。引き続いて鹸化もしくはエステル交換をすることによってはじめて、PTHF自体が生成する。従って、この製造は、二段階PTHF法と呼称される。
【0005】
他のテロゲンは、連鎖中断試薬として作用するだけでなく、PTHFの成長しているポリマー鎖中にも組み込まれる。それらは、テロゲンの機能を有するだけでなく、同時にコモノマーでもあるので、同じ権限でテロゲンとしてもコモノマーとしても呼称することができる。係るコモノマーのための例は、2個のヒドロキシ基を有するテロゲン、例えばジアルコールである。これらは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール又は低分子のPTHFであってよい。
【0006】
更に、コモノマーとしては、環状エーテル、有利には3員環、4員環及び5員環、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド、オキセタン、置換オキセタン、例えば3,3−ジメチルオキセタン並びにTHF誘導体、例えば3−メチルテトラヒドロフラン、3,3−ジメチルテトラヒドロフラン又は3,4−ジメチルテトラヒドロフランが適している。
【0007】
係るコモノマーもしくはテロゲンの使用は、水、1,4−ブタンジオール及び低分子のPTHFを除いて、テトラヒドロフラン−コポリマー(以下にTHFコポリマーと呼ぶ)の製造をもたらし、そして前記のようにPTHFを化学的に変性させることを可能にする。
【0008】
工業的には、PTHFは、一段階で、テロゲンとして水、1,4−ブタンジオール又は低分子のPTHFを用いた酸触媒上でのTHF重合によって製造することができる。触媒としては、反応系中に溶解された均一系も、不均一系、すなわち十分に未溶解の系も知られている。しかしながら、比較的低いTHF転化率が欠点であり、それは、とりわけ分子量650〜3000のPTHFの合成に際して達成される。
【0009】
大工業的には、主に、上述の二段階法が実施され、その際、THFは、例えばフルオロスルホン酸の存在下でまず重合させて、ポリテトラヒドロフラン−エステルを得て、引き続き加水分解して、PTHFが得られる。通常は、前記のTHF重合の形態において、一段階法の場合よりも高いTHF転化率が達成される。有利には、とりわけ、無水カルボン酸、例えば無水酢酸の存在下で、酸性触媒の存在下にTHF重合を行って、PTHF−ジアセテートを得て、引き続きPTHF−ジアセテートを、例えばメタノールとエステル交換することで、PTHF及びメチルアセテートが得られる。
【0010】
本願において好ましい、無水カルボン酸の存在下でのTHF重合によるPTHFの製造、もしくは無水カルボン酸及びコモノマーとしての環状エーテルの存在下での酸性の粘土鉱物上でのTHF重合によるTHFコポリマーの製造は公知である。
【0011】
ここで、DE−A−2801578号には、PTHF−ジアセテートを、THFから無水カルボン酸の存在下で、かつ触媒として含水率<3質量%を有する漂白用粘土の存在下で製造する方法が記載されている。
【0012】
DE−A−19801462号においては、触媒として、酸活性化されたカルシウム−モンモリロナイトを、粉末形もしくはストランド形で、THF重合のために使用して、とりわけPTHF−ジアセテートを得ている。
【0013】
US6,274,527号においては、酸活性化されたアルジェリアのベントナイトを基礎とする触媒が開示されている。特定の原料粘土を、3日間まで室温で、もしくは1〜2時間にわたり高められた温度で、0.1〜0.9モル/lの濃度の硫酸で活性化させ、濾過し、洗浄し、そして乾燥させる。
【0014】
酸活性化された粘土鉱物、特に層状ケイ酸塩の製造方法は、同様に知られている。一つの見通しを、EP398636号及びそこに引用される文献が与えている。酸活性化されたベントナイトは、大規模に、漂白用粘土としてオイルの脱色のために使用される。
【0015】
技術水準による触媒は、比較的低い活性のみを示しており、これは、工業設備において非常に大きな反応器容量及び/又は非常に長い反応時間を必要とする。環状エーテル、特にTHFの重合のための不均一系触媒による方法の経済性は、従って、決定的に、触媒の生産性に依存する。従って、本発明の課題は、ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフラン−コポリマー、これらのポリマーのジエステル又はモノエステルの製造のための高活性な触媒を提供することであった。
【0016】
前記課題は、本発明によれば、少なくとも1種の酸活性化された層状ケイ酸塩と、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族の遷移金属の酸化物との混合物を含有する触媒によって解決される。
【0017】
元素の周期律表の第8族及び/又は第9族(新しいIUPAC命名法、旧命名法によれば第VIIIA族)の遷移金属の酸化物としては、特に、コバルトの酸化物及び鉄の酸化物、特に有利には酸化鉄(III)及び酸化コバルト(II,III)(Co34)が適している。殊に好ましくは、使用前にDE−A−10154718号に従って前処理された、すなわち700〜1200℃の温度で焼成された酸化鉄(III)である。殊に適した酸化鉄(III)は、Thyssen−Krupp社の商品名HP型(Hoesch Premium)として販売されている。本発明による触媒は、0.5〜10質量%、有利には0.5〜5質量%、特に有利には3〜4質量%を含有している。酸化鉄(III)は、特に有利には、層状ケイ酸塩に対して、0.5質量%又は3〜4質量%の量で含まれている。酸化コバルト(II,III)は、有利には、層状ケイ酸塩に対して、0.5〜5質量%の量で含まれている。
【0018】
酸活性化された層状ケイ酸塩としては、商慣習の酸活性化された漂白用粘土を使用することができる。このための例は、モンモリロナイト−サポナイトのグループ又はパリゴルスカイト−セピオライトのグループの粘土鉱物、特に有利にはモンモリロナイトであり、これらは例えばKlockmanの鉱物学の教科書(Klockmanns Lehrbuch der Mineralogie)、第16版、F.Euke出版、1978年、第739〜765頁に記載されている。モンモリロナイトを含有する材料は、また、ベントナイトとも、又は時としてフラー土としても呼称される。
【0019】
原則的に、層状ケイ酸塩のための起源としては、全てのモンモリロナイトを含有する鉱床が該当し、例えばそれらは、"The Economics of Bentonite",8th Edition 1997,Roskill Information Services Ltd,Londonに挙げられている。しばしば、原料粘土は、モンモリロナイトに加えて、その他の鉱物性成分及び非鉱物性成分を含有する。鉱物性成分には、例えば石英、長石、カオリン、ムスコバイト、ゼオライト、カルサイト及び/又は石膏が種々の量で含まれていてよい。
【0020】
好ましい層状ケイ酸塩は、高いモンモリロナイト含有率を有し、かつ相応して低い含有率の副成分を有する。モンモリロナイト含有率は、メチレンブルー吸着の測定によって斑点法に従い、ドイツ鋳物師協会(VDG,Entwurf P 69 E 1998年6月)の審査基準"結合剤調査/結合粘土の調査(Bindemittelpruefung/Pruefung von Bindetonen)"によって測定することができ、好ましい原料粘土は、メチレンブルー値>250mg/g、有利には>290mg/g、特に>320mg/gを示す。層状ケイ酸塩としては、その交換可能なカチオンが高いパーセンテージでアルカリ金属、特にナトリウムからなるものが特に好ましい。電荷当量に対して、これらの原材料は、>25%の、有利には>40%の一価の交換可能なカチオンを含有する。
【0021】
原材料としての前記のナトリウム−ベントナイトは、天然に存在し、ナトリウム含有ベントナイトのための公知の起源は、例えば米国ワイオミング州又はインドにあり、これらは、また、その由来にちなみ、"ウェスタンベントナイト"、"ワイオミングベントナイト"としても、又はその特性にちなみ、"膨潤性ベントナイト"としても知られている。高い割合のアルカリ土類金属カチオン、特にカルシウムを有するベントナイトは、例えば"サブベントナイト"又は"サザンベントナイト"として知られており、アルカリ性活性化によってナトリウム含有ベントナイトに変換することができる。また、係るアルカリ性活性化された原材料は、本発明による触媒のために適している。最後に、原則的に、好適な原材料を合成により製造することも可能である。
【0022】
天然起源の層状ケイ酸塩は、時として、なおも非鉱物性の不純物、特に炭素化合物を含有する。触媒原材料としては、有利には、全炭素含有率<3%、有利には<1%、特に有利には<0.5%を含有する係るベントナイトである。
【0023】
該層状ケイ酸塩は、本発明による触媒の製造のために酸活性化される。そのために、該層状ケイ酸塩を、塊形又は粉末形のいずれかにおいて、自体公知のようにして、鉱酸、例えば塩酸、硫酸又は硝酸で処理する。また、有機酸、例えばギ酸又は酢酸中での活性化も可能である。
【0024】
既に製造元によって酸活性化された層状ケイ酸塩(粘土鉱物とも呼ばれる)は、例えばSuedchemie社から名称"K10"又は"KSF"又は"Tonsil"として販売されている。
【0025】
本発明による触媒は、遷移金属酸化物と、酸活性化された層状ケイ酸塩とを混合し、場合により引き続き形状付与することによって得られる。そのために、遷移金属酸化物及び酸活性化された層状ケイ酸塩を、混合ユニット、例えば混合ミル又は粉砕機中に一緒に入れて、短時間の乾式混合を行う。触媒を、成形体として、例えば押出物又はタブレットとして使用することが望ましい場合には、水及び結合剤を添加し、そして好適なプレス又は成形装置で成形される。粉末形の原材料からの成形体の製造は、自体公知であり、例えばとりわけHandbook of Heterogenous Catalysis,Vol.1,VCH Verlagsgesellschaft Weinheim,1997,p.414−417記載されているように、例えばタブレット化、アグロメレーション又は押出により行うことができる。この成形の際に、当業者に公知の助剤、例えば結合剤、滑剤、孔形成剤及び/又は溶剤を使用することができる。
【0026】
その触媒は、好ましい一実施形態においては、溶剤、例えば水、希釈された鉱酸、酸水溶液又は有機溶剤の添加によって、直接的に結合剤、滑剤又は孔形成剤を使用せずに加工することができる。
【0027】
該触媒は、一般に、温度30〜200℃及び常圧で乾燥させるが、場合により減圧下で乾燥させることもできる。引き続き、その触媒を、温度150〜800℃、有利には250〜600℃で焼成することができる。
【0028】
本発明による触媒は、重合のために、例えばタブレット形、ストランド形、球形、リング形又は破片形で使用することができる。好ましくは、成形体としては、タブレット、ストランド又は球が使用される。球の場合には、直径0.1〜10mm、有利には0.3〜5mmが用いられる。タブレットは、有利には直径1〜5mm及び高さ1〜3mmで使用される。ストランド(押出物)の場合には、直径0.5〜4mm、有利には1〜3mmの範囲を有するものが使用される。好ましい押出物の長さ対直径の比率は、通常は、20:1〜0.5:1、有利には、5:1〜1:1である。円柱形の押出物の他に、例えば、中空ストランド、リブ付ストランド、星型ストランド又は他の当業者に公知の押出物形を使用することができる。
【0029】
重合反応で使用する前の触媒の前処理としては、例えば80〜200℃、有利には100〜150℃にまで加熱された不活性ガス、例えば空気又は窒素を用いての乾燥が該当する。
【0030】
テロゲンとしては、PTHF−エステルの製造に際して、無水カルボン酸及び/又は無水カルボン酸/カルボン酸の混合物が適している。これらのうち、2〜12個の炭素原子を含む、脂肪族の及び芳香族のポリカルボン酸及び/又はモノカルボン酸もしくはそれらの無水物が好ましい。好ましいテロゲンのための例は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸及び無水マレイン酸であり、場合により相応の酸の存在下のものである。特に、テロゲンとしては無水酢酸が好ましい。
【0031】
好ましいテロゲンを使用する場合に生成するPTHF−アセテートは、種々の方法でPTHFに変換することができる(例えばUS4,460,796号に示される)。
【0032】
THFの他のコポリマーは、開環重合が可能なコモノマーとしての環状エーテル、有利には3員環、4員環及び5員環、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド、オキセタン、置換オキセタン、例えば3,3−ジメチルオキセタン並びにTHF誘導体、例えば3−メチルテトラヒドロフラン、3,3−ジメチルテトラヒドロフランもしくは3,4−ジメチルテトラヒドロフランを付加的に使用することによって製造することができ、その際、3−メチルテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0033】
テロゲンと、所望であればコモノマーは、適宜、THF中に溶解させて、重合へと供給される。テロゲンは、重合において連鎖中断又は連鎖移動をもたらすので、使用されるテロゲンの量を介して、ポリマーの平均分子量を制御することができる。反応混合物中に含まれるテロゲンが多ければ多いほど、PTHF又は上述のPTHF誘導体の平均分子量は低くなる。重合混合物のテロゲン含有率に応じて、平均分子量250〜10000ダルトンを有する上述のPTHF誘導体もしくはTHFコポリマーを、狙い通りに製造することができる。好ましくは、本発明による方法によって、平均分子量500〜5000ダルトン、特に有利には650〜4000ダルトンを有するPTHF、上述のPTHF誘導体もしくはTHFコポリマーが製造される。
【0034】
重合は、一般に0〜80℃の温度で、有利には25℃からTHFの沸点温度までの温度で実施される。使用される圧力は、一般に、重合の成果には決定的ではないので、一般に、大気圧で、又は重合系の自圧下で作業される。それを除けば、THFと易揮発性の1,2−アルキレンオキシドとの共重合が起こり、それは有利には圧力下で実施される。通常は、圧力は、0.1〜20バール、有利には0.5〜2バールである。
【0035】
エーテルペルオキシドの形成を回避するために、有利には不活性ガス雰囲気下での重合が行われる。不活性ガスとしては、例えば窒素、二酸化炭素又は希ガスを用いることができ、有利には窒素が使用される。
【0036】
特に、水素雰囲気下で重合を実施することが好ましい。この実施形態は、生ずる重合体の特に低い色数をもたらす。水素分圧は、その際、0.1〜50バールで選択することができる。重合触媒を遷移金属でドープするか又は重合触媒と遷移金属含有触媒とを混合することによって、重合の実施に際して、水素の存在下で、色数をなおも更に改善することができる。遷移金属としては、周期律表の第7族〜第10族の元素、例えばルテニウム、レニウム、ニッケル、鉄、コバルト、パラジウム及び/又は白金が用いられる。
【0037】
本発明による方法は、断続的に又は連続的に実施することができ、その際、経済的理由から、一般に、連続的な作業様式が好ましい。
【0038】
断続的な作業様式の場合には、反応物であるTHF、上述のテロゲン及び/又は所望であればコモノマーと、触媒とを、一般に、撹拌槽もしくはループ型反応器中で、所定の温度において、THFの所望の転化率に至るまで変換させる。反応時間は、添加される触媒量に応じて、0.5〜40時間、有利には1〜30時間であってよい。触媒は、重合のためには、一般に、使用されるTHFの質量に対して、1〜90質量%、有利には4〜70質量%、特に有利には8〜60質量%の量で添加される。
【0039】
連続的な作業様式の場合に、反応は、連続法に適した商慣習の反応器又は反応器配列において、懸濁法又は固定床法で実施でき、懸濁法の場合には、例えばループ型反応器もしくは撹拌反応器中で、そして固定床法の場合には、管形反応器もしくは固定床反応器中で実施することができ、その際、固定床法が好ましい。
【0040】
好ましい固定床法においては、重合反応器は、アップフロー様式で、すなわち反応混合物を下方から上方に導き、又はトリクル様式で、すなわち反応混合物を上方から下方に反応器に導くことで、作業することができる。THF及びテロゲン及び/又はコモノマーからなる出発物質混合物(フィード)は、重合反応器に連続的に供給され、その際、触媒負荷は、0.01〜2.0kg THF/(1*h)、有利には0.02〜1.0kg THF/(1*h)、特に有利には0.04〜0.5kg THF/(1*h)である。
【0041】
更に、重合反応器は、直行の行程で、すなわち生成物の返送なく、又は循環において、すなわち反応器から出る重合混合物の一部を循環に返送して、作業することができる。循環法の場合には、循環と供給との比率は、150:1以下、有利には100:1未満、好ましくは60:1未満である。
【0042】
テロゲンとして使用される無水カルボン酸の重合反応器に供給される出発材料混合物中での濃度は、使用されるTHFに対して、0.03〜30モル%、有利には0.5〜20モル%、特に有利には1〜12モル%である。
【0043】
付加的にカルボン酸が使用される場合に、フィード中のモル比は、通常は、使用される無水カルボン酸に対して、1:20〜1:20000である。
【0044】
付加的にコモノマーが使用される場合に、フィード中のモル比は、使用されるTHFに対して、通常は、0.1〜60、有利には0.5〜50、特に有利には2〜40モル%である。
【0045】
懸濁法で重合を実施する場合に、重合排出物の後処理のために、大部分の重合触媒を、例えば濾過、傾瀉又は遠心分離によって重合混合物から分離し、そして得られた重合排出物を更なる後処理に供給することが必要である。好ましい固定床法においては、重合排出物は直接的に更に後処理される。
【0046】
特に好ましいPTHF−アセテートもしくはTHFコポリマー−アセテートの後処理は、自体公知の方法により実施できる。例えば、未反応のTHFと、場合により無水酢酸、酢酸及びコモノマーの蒸留による分離の後に、得られたPTHF−アセテートもしくはTHFコポリマー−アセテートを、塩基触媒で、メタノールとエステル交換させて、PTHFもしくはTHFコポリマーとメチルアセテートが得られる。
【0047】
所望であれば、引き続き、平均分子量200〜700ダルトンを有する低分子のPTHF及び/又はテトラヒドロフランコポリマーを蒸留により分離することができる。通常は、この場合に、低分子の環状オリゴマーも蒸留により分離することができる。蒸留残滓として、平均分子量650〜10000ダルトンを有するPTHFもしくはTHFコポリマーが残留する。
【0048】
本発明による触媒は、使用後に、断続的に又は連続的に作業されるPTHF法において再生させることができ、例えばEP−A−0535515号に記載されるような温度処理によって、及び/又は触媒を水性溶剤及び/又は有機溶剤で洗浄することによって再生させることができる。
【0049】
実施例
実施例1
201.2gのSuedchemie社製の活性化された漂白用粘土K10を、1.01g(0.5質量%に相当する)のThyssen−Krupp社製のHP型のFe23と粉砕機中で混ぜ合わせ、乾燥材料1グラム当たりに0.75mlの水を用いて押出物へと加工し、そして120℃で乾燥させ、引き続き450℃で焼成させた。
【0050】
実施例2
196.1gのSuedchemie社製の活性化された漂白用粘土K10を、6.1g(3質量%に相当する)のThyssen−Krupp社製のHP型のFe23と粉砕機中で混ぜ合わせ、乾燥材料1グラム当たりに0.75mlの水を用いて、実施例1と同形で同じ寸法の押出物へと加工し、そして120℃で乾燥させ、引き続き450℃で焼成させた。
【0051】
実施例3
194gのSuedchemie社製の活性化された漂白用粘土K10を、8.1g(4質量%に相当する)のThyssen−Krupp社製のHP型のFe23と粉砕機中で混ぜ合わせ、乾燥材料1グラム当たりに0.75mlの水を用いて、実施例1と同形で同じ寸法の押出物へと加工し、そして120℃で乾燥させ、引き続き450℃で焼成させた。
【0052】
実施例4
99.5gのSuedchemie社製の活性化された漂白用粘土K10を、0.5g(0.5質量%に相当する)のThyssen−Krupp社製のHP型のCo34と粉砕機中で混ぜ合わせ、乾燥材料1グラム当たりに0.89mlの水を用いて、実施例1と同形で同じ寸法の押出物へと加工し、そして120℃で乾燥させ、引き続き450℃で焼成させた。
【0053】
比較例1
200gのSuedchemie社製の活性化された漂白用粘土K10を、乾燥材料1グラム当たりに0.75mlの水を用いて、実施例1と同形で同じ寸法の押出物へと同様に加工した。
【0054】
実施例5: 連続的な重合
研究室用の装置において、それぞれ保護ガス下で、150gのTHF及び14.8gの無水酢酸からなる混合物を50℃で1l/hで循環において22gの乾燥され成形された触媒上で連続的に重合させた。30分後、60分後、90分後及び120分後に、反応液体の屈折率を、THF Glock Instruments社製の屈折計(DR−122型の屈折計、Nd 1,3800−1,4535)で測定する。PTHF−ジアセテート形成の時間的依存性の評価によって、外挿法を通じ、触媒押出物の初期生産性を測定する。
【0055】
それらの結果は、上述の触媒について、第1表にまとめている。
【0056】
第1表:
【表1】

【0057】
実施例6: 連続的な重合
61.5g/hのTHF及び2.5g/hの無水酢酸を、ポンプを用いて40℃で管形反応器を通じて、200ml(=約118g)の実施例1による触媒上で循環において流通させた。一定の循環:供給の比率は、15:1であった。1時間ごとに、更に64gの重合混合物を該反応器に入れ、その一方で、同量の生成物混合物をその循環から取り出した。分析のために、反応排出物の易揮発分、すなわち実質的に未反応のTHF及び無水酢酸を、真空中で、まず70℃及び30ミリバールで、次いで170℃及び0.3ミリバールで蒸発させた。転化率は、蒸発残留物と初期物質との比較によって、52%(初期物質の質量に対して)と測定された。
【0058】
比較例2
61.5g/hのTHF及び2.5g/hの無水酢酸を、ポンプを用いて40℃で管形反応器を通じて、200mlの比較例1による触媒上で流通させた。一定の循環:供給の比率は、15:1であった。1時間ごとに、更に64gの重合混合物を該反応器に入れ、その一方で、同量の生成物混合物をその循環から取り出した。分析のために、反応排出物の易揮発分、すなわち実質的に未反応のTHF及び無水酢酸を、真空中で、まず70℃及び30ミリバールで、次いで170℃及び0.3ミリバールで蒸発させた。蒸発残留物と初期物質との比較による転化率は、43%(初期物質の質量に対して)と測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸活性化された層状ケイ酸塩と、元素の周期律表の第8族及び/又は第9族の遷移金属の酸化物との混合物を含有する触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒であって、遷移金属の酸化物が、層状ケイ酸塩に対して、0.5質量%から10質量%までの量で含まれていることを特徴とする触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒であって、遷移金属の酸化物が、酸化鉄(III)及び/又は酸化コバルト(II,III)から選択されることを特徴とする触媒。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒であって、酸化鉄が、層状ケイ酸塩に対して、0.5質量%の又は3〜4質量%の酸化鉄(III)の量で含まれていることを特徴とする触媒。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒であって、酸化コバルト(II,III)が、層状ケイ酸塩に対して、0.5〜10質量%の量で含まれていることを特徴とする触媒。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の触媒であって、温度700〜1200℃で焼成された酸化鉄(III)が使用されることを特徴とする触媒。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒であって、酸活性化された層状ケイ酸塩が、モンモリロナイト−サポナイトのグループ又はパリゴルスカイト−セピオライトのグループから選択されることを特徴とする触媒。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒であって、酸活性化された層状ケイ酸塩が、メチレンブルー値>250mg/gに相当する高いモンモリロナイト含有率を有するか又はモンモリロナイトからなることを特徴とする触媒。
【請求項9】
請求項8に記載の触媒であって、酸活性化された層状ケイ酸塩が、ベントナイトであることを特徴とする触媒。
【請求項10】
請求項9に記載の触媒であって、ベントナイトが、全炭素含有率3質量%未満を有することを特徴とする触媒。
【請求項11】
ポリテトラヒドロフラン、ポリテトラヒドロフラン−コポリマー、これらのポリマーのジエステル又はモノエステルの製造方法において、テトラヒドロフランを、少なくとも1種のテロゲン及び/又はコモノマーの存在下で、請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒上で重合させることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−518483(P2009−518483A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543786(P2008−543786)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069095
【国際公開番号】WO2007/065838
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】