説明

改善された防湿バリア効果を有するポリビニルアルコール−ポリエーテルグラフトポリマーとポリビニルアルコールとの組み合わせに基づくフィルムコーティング剤

ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、N-ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)および色素(成分C)に基づくフィルムコーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性成分もしくは食餌療法活性成分の投与剤形または栄養補助剤のコーティングのためのフィルムコーティングに関し、該フィルムコーティング組成物は、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)およびビニリピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、有機または無機色素(成分C)、任意により界面活性剤(好ましくは、10超のHLB値を有する界面活性剤)(成分D)ならびにさらなる慣用のコーティング成分からなる。フィルムコーティングは、好ましくは、即時放出コーティングのために用いることが意図される。
【背景技術】
【0002】
固体投与剤形は、非常に様々な理由から、速溶性コーティングを施して提供される。この場合、例えば、外観、区別可能性および嚥下容易性を改善し、苦味を隠し、または外的影響(例えば、湿気または酸素など)から投与剤形を保護することが可能である。フィルムコーティングは、人工消化液をはじめとする種々の水性媒体に迅速に溶解しなければならないので、コーティング調製物の最も重要な成分は、水溶性フィルム形成性ポリマーであるはずである。錠剤のコーティングに対して、主に用いられるフィルム形成性ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースであるが、これらは重大な欠点を有する。例えば、水中でのこれらのポリマーの粘度は非常に高く、比較的高濃度での高い粘度により、スプレーノズルでの微細噴霧化は不可能であり、コーティングが滑らかでなく、不均一で見栄えが悪くなるために、約10%までの濃度にしかできない。さらに、これらのポリマーは非常に脆く、多くの場合に保存中に(特に水分の吸収または放出によってコアの体積が変化すると)ひび割れを起こす。
【0003】
医薬投与剤形のコーティング組成物もしくは結合剤としての、パッケージング材料としての、または化粧品、皮膚科製剤もしくは衛生用製剤中の添加剤としてのポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーの使用は、例えば、WO 00/18375から公知である。つまり、例えば、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーならびに着色および被覆のための慣用のコーティング成分(すなわち、酸化鉄、タルクおよび二酸化チタン)からなるフィルムコーティング組成物のための処方が報告されている。このタイプのコーティングは柔軟性があるが、比較的柔らかく、せん断力がかかった際に摩耗現象が生じる。ドラム中での錠剤の回転運動に伴う錠剤の大きな負荷により生じる高い圧力は、強いせん断力をもたらすので、非常に大規模なコーティングバッチの場合は特に、このことが重要な意味を持つ。多くの薬剤およびまた一部の添加物は極めて脂溶性が高いので、多くの場合、コーティングが錠剤表面にうまく接着しない。さらに、そのようなフィルムコーティング組成物の滑らかさおよび光沢は、多くの場合、満足のいくものではない。
【0004】
同様に、ポリビニルアルコールはフィルム形成剤として公知であるが、様々な欠点のためにほとんど用いられない。ポリビニルアルコール、可塑剤およびタルクからなるポリビニルアルコール含有調製物の使用が、WO 01/04195に記載されている。これらの調製物の欠点は、水性コーティング溶液の調製中の溶解の遅さ、高い粘度、噴霧溶液中での低濃度、可塑剤の使用およびフィルムコーティングの溶解速度の遅さ(特に保存後)、ならびに保存後のフィルムコーティングの脆化(ひび割れを伴う)である。さらに、比較的高濃度のポリビニルアルコール溶液(>8%)を噴霧化すると、スプレーノズルで糸状のものが形成される。
【0005】
薬局方でコポリビドンまたはコポビドンとも称され、N-ビニルピロリドンおよび酢酸ビニル(重量比60:40)から得られるコポリマーが、同様に、フィルム形成剤として公知である。コポビドンの水吸収性は比較的高いので、コポビドン自体はフィルム形成剤としてあまり好ましくなく、フィルムコーティングの脆さおよび溶解性を改善するために、通常、より吸湿性の低い物質と組み合わせる。水性コーティング溶液またはフィルムコーティングの塗布前に、水分に弱い活性成分を含む錠剤コアを保護するために、コーティング下地としてコポビドンを用いることができることも指摘されている(V. Buehler, “Polyvinylpyrrolidone Excipients for Pharmaceuticals”, pp. 214-216, Springer Verlag Berlin Heidelberg 2005を参照されたい)。しかしながら、コポビドンそれ自体は、有機溶液から中間層としてのみ塗布することができる。
【0006】
色素は、フィルムコーティングの必須成分である。フィルムコーティングでは、色素は、着色目的で機能するだけでなく、ある種のバリア効果を発揮することもできる。しかしながら、一方で、水性噴霧懸濁液への比較的高い割合の色素の組み込みは煩雑であり、また一方で、高含有量の色素を含む懸濁液の噴霧もまた制御が比較的困難であるので、フィルムコーティング組成物中での比較的高い色素含有量は、実用の観点からは不利である。これに加えて、高含有量の色素を含む噴霧懸濁液は、比較的分離しやすい性質を有する。
【0007】
WO 03/070224には、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマー、ヒドロキシ、アミドまたはエステル官能基を有する成分およびさらなる慣用のコーティング成分からなるコーティングが記載されている。この文献では、まず、原材料物質のプレミックスを物理的混合物として調製し、次にこれを水中に分散する。これらの調製物は分離しやすい性質を有し、粗度値が良好でない。
【0008】
WO 2006/002808には、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーに基づく迅速分散性フィルムコーティング組成物が記載され、該組成物は、特に細かく微粉化された色素によって、低い粗度および良好な物理的安定性を有する。例えば、該グラフトポリマーとビニルピロリドン-酢酸ビニルの6:4コポリマーとの二成分の組み合わせなどの、2種類のポリマーの組み合わせも記載されている。しかしながら、そのようなコーティング組成物に対しては、色素添加量について限界がある。このようなフィルムの場合、水蒸気透過も満足のいくものではない。
【0009】
原則として、50重量%以上のできる限り大きな色素添加量を有するフィルムコーティングが望ましい。しかしながら、これまで知られている比較的大きな色素添加量を有するフィルムコーティング組成物は、水蒸気透過に関しての条件を満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 00/18375
【特許文献2】WO 01/04195
【特許文献3】WO 03/070224
【特許文献4】WO 2006/002808
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】V. Buehler, “Polyvinylpyrrolidone Excipients for Pharmaceuticals”, pp. 214-216, Springer Verlag Berlin Heidelberg 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、活性成分に対して改善された防湿性を有する改良型フィルムコーティング組成物を見出すことであった。そのようなフィルムコーティング組成物は、できる限り迅速に水に溶解するものであり、したがって、即時放出剤形に好適である必要がある。さらに、フィルムコーティングは、色素添加量について最適化されている必要がある。コーティング組成物は、粉末状であっても、個々の成分が分離しやすい性質を有しない必要があり、特に色素とポリマーとが分離せず、さらに、流動性が高くなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
それゆえ、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、重量比6:4のN-ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、色素(成分C)、任意の界面活性剤(成分D)および任意のさらなる製薬用添加物(成分E)に基づくフィルムコーティング組成物が見出された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】水蒸気透過に関する透過測定の結果を示す図である。
【図2】水蒸気透過に関する透過測定の結果を示す図である。
【図3】水蒸気透過に関する透過測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
フィルムコーティング組成物は、以下のように構成することができる:
(A) 10〜75重量%のポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、
(B) 5〜45重量%のポリビニルピロリドンまたはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、
(C) 10〜85重量%の色素(成分C)、
(D) 0〜10重量%の1種以上の界面活性剤(成分D)および
(E) 0〜30重量%のさらなる慣用のコーティング成分(成分E)、
ここで、成分A〜Eの合計量は100重量%以下である。
【0016】
成分Aは、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物である。
【0017】
ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとは、グラフト基材としてのポリエーテルの存在下での、少なくとも1種の脂肪族C1〜C24-カルボン酸のビニルエステル(好ましくは酢酸ビニル)の重合およびそれに続くポリビニルエステル基の完全または部分的鹸化により得られるポリマーを意味するものと理解される。
【0018】
平均分子量400〜50,000g/mol、特に好ましくは1500〜20,000g/molを有するポリエーテルが好ましい。
【0019】
そのようなグラフトコポリマーの調製は、それ自体公知である。
【0020】
DE 1 077 430には、ポリアルキレングリコールを基材とするビニルエステルのグラフトポリマーの調製方法が記載されている。
【0021】
DE 1 094 457およびDE 1 081 229には、ビニルエステルの鹸化によるポリアルキレングリコールを基材とするポリビニルアルコールのグラフトポリマーの調製方法、ならびに保護コロイド、水溶性包装用フィルムとして、布地のサイズ剤および仕上げ剤として、ならびに化粧品でのその使用が記載されている。
【0022】
70mol%超、特に好ましくは80mol%超、非常に特に好ましくは85mol%超のポリビニルエステル基の鹸化度を有するポリマーが好ましい。
【0023】
酢酸ビニルがグラフト化されるモノマーとして用いられ、ポリエチレングリコール6000がグラフト基材として用いられ、エステル基の鹸化度が85mol%超であり、構成分子であるポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール6000の質量比が75:25であるポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーが特に好ましい。
【0024】
ポリビニルアルコールとは、通常は酢酸ビニルの重合および酢酸基の鹸化により得られるホモポリマーを意味するものと理解される。好適なポリビニルアルコールは、好ましくは、80mol%超、好ましくは85mol%超の加水分解度(酢酸基の鹸化度)を有する。20℃での水溶液中4重量%強度の粘度は、3〜30mPas、好ましくは3〜20mPasであり得る。
【0025】
個々の組成物の緊密混合物となるように、グラフトポリマーとポリビニルアルコールとを同時処理する。調製方法のために、個々の成分を互いに包埋する(つまり、成分同士が分離せず、機械的手段によって包埋剤を分離することができない)。成分Aは、ポリマーの水溶液の同時噴霧(joint spraying)により調製する。好ましくは、成分Aはまた、二酸化ケイ素も含む。特に好ましい成分Aは、55〜65重量%のグラフトポリマー、35〜45重量%のポリビニルアルコールおよび0.1〜0.3重量%の二酸化ケイ素からなる。
【0026】
成分Aは、好ましくは、15〜60重量%、特に好ましくは20〜45重量%の量で存在する。
【0027】
さらに、フィルムコーティング組成物は、成分Bとして、薬局方からコポリビドンまたはコポビドンとして知られるコポリマーを含み、コポリビドンまたはコポビドンは、重量比60:40のビニルピロリドンおよび酢酸ビニルから得られる。これらのポリマーの水中での1重量%強度で測定したK値(Fikentscherによる)は、20〜50、好ましくは25〜35の範囲内である。成分Bは、好ましくは、5〜35重量%、特に好ましくは5〜20重量%の量で存在する。
【0028】
さらに、フィルムコーティング組成物は、成分Cとして、有機または無機色素を含む。
【0029】
色素とは、付与媒体に不溶性の着色性物質または白色物質を意味するために用いられる用語である。色素は、無機または有機色素であり得る。
【0030】
好適な無機色素は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、またはリン酸水素カルシウムである。ケイ酸アルミニウムのうちでは、カオリンが最も好適である。ケイ酸マグネシウムのうちでは、特にタルクが重要である。
【0031】
好ましい色素は、酸化鉄、ならびに二酸化チタン、タルクおよびカオリンからなる群より選択される白色色素である。
【0032】
好適な有機色素は、有機着色レーキまたはその混合物である。用いることができる有機着色レーキは、例えば、キノリン黄色レーキ、タルトラジンレーキ、黄褐色レーキ、FD&C黄色アルミニウムレーキ、コチニール赤色レーキ、エリトロジンレーキ、アゾルビンレーキ、インジゴチンレーキ、β-カロテンである。
【0033】
好ましくは、色素は、20〜75重量%の量で存在する。
【0034】
成分Dとして、所望であれば、界面活性剤を用いることができ、好ましくは10超のHLB値を有する界面活性剤を用いる(HLB値:親水性親油性バランス;Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe [Lexicon of Auxiliaries], Editio Cantor Verlag Aulendorf, 5th edition (2002), pages 115-121を参照されたい)。界面活性剤を用いる場合、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の量で用いることができる。
【0035】
C8〜C30-脂肪酸、C8〜C30-アルキルスルホネート、C8〜C30-アルキルスルフェート、C8〜C30-アルキルアリールスルホネートまたはスルホコハク酸ジオクチルのアルカリ金属塩、C8〜C30-脂肪酸のエトキシレート、C8〜C30-脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪族アルコールエーテルまたはフェノール、およびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーが特に好適である。特定の物質クラスからの例は、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(9)モノステアレート、ポリオキシエチレン(10)ステアリルセチルエーテル、ポリソルベート80、ポリソルベート20、エトキシル化ヒマシ油(35 EO)、エトキシル化水添ヒマシ油(40 EO)、エトシキル化12-ヒドロキシステアリン酸(15 EO)、ポロキサマー188、ポロキサマー408である。
【0036】
さらに、フィルムコーティングは、成分Eとして、コーティング成分として慣用の追加の添加物を含むことができる。さらなる慣用のコーティング成分は、以下のものを含む:
水溶性染料、デタッキファイヤ(detackifier)、充填剤、光沢付与剤、消泡剤、保護コロイド、緩衝剤物質、pH調節物質または接着促進剤。
【0037】
本発明のフィルムコーティング組成物は、最初は白色調製物として調製することができ、続いてこれにさらなる粉末着色成分を添加することができる。フィルムコーティングの有益な性質は、この手順の間も保持される。
【0038】
本発明の調製物は、通常、可塑剤を必要としない。可塑剤は多くの場合、コーティングされた状態での保存中に障害をもたらすので、可塑剤が不要であることは大変有益である。例えば、可塑剤は、コアに侵入し、活性成分の物理化学特性を変化させる場合があり、結果としてフィルムが脆くなり、割れやすくなる。さらに、ほとんどの可塑剤は、ある程度の揮発性を有し、これは同様に、脆化を引き起こす。しかしながら、所望であれば、可塑剤の添加が可能である。
【0039】
フィルムコーティング組成物は、例えば、最初に成分AおよびBを水に溶解することにより調製することができる。次にこの溶液を色素の水懸濁液と併せることができる。色素懸濁液は、適切であれば界面活性物質を添加して、色素を水にホモジナイズすることにより得られる。
【0040】
さらに、原材料物質のすべてを一緒に水に入れ、ホモジナイズすることもできる。この手順の場合、消泡剤の使用も望ましい。
【0041】
記載した手順の場合に用いる水の量は、得られる本発明のフィルムコーティング組成物の水分散液が、5〜45重量%、好ましくは15〜30重量%の固体含量を有するように選択する。
【0042】
水性フィルムコーティング組成物はまた、乾燥粉末に変換することもできる。水分散液の乾燥ステップは、スプレードライヤー、パドルドライヤーまたは流動床ドライヤーで行なうことができる。原則として、乾燥対象の分散液を、圧力によって噴霧し、温風を用いて乾燥させる。乾燥中の懸濁液の噴霧のために、0.1MPa超、好ましくは2.0MPa超、特に好ましくは8.0MPa超の圧力をかける。噴霧は、単頭ノズル、二頭ノズルまたは回転ディスクを用いて行なうことができる。乾燥ステップは、50〜200℃、好ましくは80〜180℃の注入空気温度で行なうことができる。
【0043】
本発明のフィルムコーティング組成物は、5μm〜1000μmの平均粒径を有する粉末または顆粒として取得することができる。所望であれば、粒径はまた、粉砕工程により調整することもできる。
【0044】
粉末としての利用のためには、本発明の調製物は、適切であればさらなる添加物(特に着色添加物)を混合して、水に撹拌混入し、好適な噴霧デバイスを用いて基材に付与することができ、この場合、フィルムコーティングを、続いて温風を用いることにより乾燥させることができる。粉末状フィルムコーティング組成物の再分散のためには、通常、高せん断撹拌器具は必要なく、シンプルな低速撹拌機でよい。
【0045】
フィルムコーティングは、固体医薬投与剤形および栄養補助剤に好適なすべてのコーティングデバイス(例えば、水平ドラム塗布機、流動床塗布機、浸漬ブレード塗布機、コーティングパンなど)で付与することができる。
【0046】
コーティング調製物の噴霧のために、好ましくは二頭ノズルを用いる。注入空気温度は、20〜90℃、好ましくは30〜70℃とすべきである。
【0047】
原則として、半球状、凸形または凹形表面を有するすべてのコア剤形を、それらが丸形か、多角形か、長方形か、またはフットボール形かにかかわらず、コーティングすることができる。
【0048】
コアはまた、コーティング下地を有することもでき、これは一般的に、例えばコーティングおよび消化管内容物の酸素、プロトンまたは化学物質に対して、活性成分をさらに保護するために用いられる。
【0049】
組成が異なるさらなるフィルムコーティングを、本発明のフィルムコーティングに付与することもできる。つまり、例えば、無色フィルムコーティングまたは特殊光沢層を付与することができる。
【0050】
活性成分に関しては、本発明の投与剤形には制限はない。すべての領域の適応症からの活性成分、ヒト医薬および動物医薬、ビタミン、カロテノイド、栄養補助食品、食餌療法活性成分または栄養補助剤、ミネラル物質、微量栄養素などを用いることが可能である。活性成分は、様々な物理化学特性(親油性、溶解性、粒径、粒子構造、表面など)を有し得る。
【0051】
コーティング対象の投与剤形は、錠剤、カプセル剤または押出成形剤であり得る。
【0052】
本発明のフィルムコーティング組成物は、水蒸気透過に関して、改善された特性を有する。これは、特に、水分に弱い活性成分に関して有利である。
【実施例】
【0053】
別途記載しない限り、パーセンテージは重量%を意味する。
【0054】
原材料物質
(A)成分A:60重量%のポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール6000グラフトポリマー(重量比PVA:PEG=75:25、鹸化度94mol%)、40重量%のポリビニルアルコール(Mowiol(登録商標)5-88(Kuraray)、DIN 53015に従う粘度5〜6mPas)および0.2重量%の二酸化ケイ素(PVA-PEGおよびPVAの総量に基づく)の同時噴霧混合物(Kollicoat(登録商標)Protect、BASF)、
(B)成分B:60重量%のN-ビニルピロリドンおよび40重量%の酢酸ビニルのコポリマー(コポビドン)(Kollidon(登録商標)VA64、BASF SE)、
SDS:ラウリル硫酸ナトリウム。
【0055】
噴霧懸濁液の調製-一般的手順
成分AおよびBを、撹拌しながら水に溶解し、20重量%強度の溶液を得た。色素を、Ultra-Turraxミキサーで水と共にホモジナイズし、20重量%の固体割合を有する色素懸濁液を得た。次に、色素懸濁液を、成分AおよびBの溶液に撹拌混入した。
【表1】

【0056】
水蒸気透過に関する透過測定の結果を、図1〜3に図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、N-ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)および色素(成分C)に基づくフィルムコーティング組成物。
【請求項2】
界面活性剤(成分D)をさらに含む、請求項1に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項3】
さらなる製薬用添加物(成分E)をさらに含む、請求項1または2に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項4】
以下の成分:
(A) 10〜75重量%のポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、
(B) 5〜35重量%のビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、
(C) 10〜85重量%の色素(成分C)、
(D) 0〜10重量%の1種以上の界面活性剤(成分D)および
(E) 0〜30重量%のさらなる慣用のコーティング成分(成分E)
を含み、成分A〜Eの合計量が100重量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項5】
以下の成分:
(A) 15〜60重量%のポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、
(B) 5〜30重量%のビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、
(C) 20〜75重量%の色素(成分C)、
(D) 0〜10重量%の1種以上の界面活性剤(成分D)および
(E) 0〜30重量%のさらなる慣用のコーティング成分(成分E)
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項6】
以下の成分:
(A) 20〜45重量%のポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマーとポリビニルアルコールとの同時処理混合物(成分A)、
(B) 5〜20重量%のビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(成分B)、
(C) 20〜75重量%の色素(成分C)、
(D) 0〜10重量%の1種以上の界面活性剤(成分D)および
(E) 0〜30重量%のさらなる慣用のコーティング成分(成分E)
を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項7】
成分Aとして、グラフト基材としてのポリエーテルの存在下での酢酸ビニルの重合およびそれに続く85mol%超の酢酸基の鹸化により得られるポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項8】
成分Aに、80mol%超の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項9】
ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトポリマーとポリビニルアルコールとの混合溶液の噴霧により得られた成分Aを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項10】
成分Cとして、有機または無機色素を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項11】
成分Bとして、N-ビニルピロリドン:酢酸ビニルの重量比6:4を有するコポリマーを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項12】
成分Dとして、10超のHLB値を有する界面活性剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項13】
1〜5重量%の量で成分Dを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項14】
成分Dとしてラウリル硫酸ナトリウムを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項15】
成分Eとして、水溶性染料、デタッキファイヤ(detackifier)、充填剤、光沢付与剤、消泡剤、保護コロイド、緩衝剤物質、pH調節物質、接着促進剤またはそれらの混合物を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項16】
粉末または水分散液の形態の、請求項1〜14のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物。
【請求項17】
フィルムコーティングが請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を付与することにより得られたものである、フィルムコーティングを有する投与剤形。
【請求項18】
医薬活性成分もしくは食餌療法活性成分または栄養補助剤を含む投与剤形のコーティングのための、請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514303(P2013−514303A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543670(P2012−543670)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069556
【国際公開番号】WO2011/082980
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】