説明

改変された免疫組成物

本発明は、腺疫菌エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種の一方または両方のタンパク質由来の少なくとも一つの抗原性エピトープまたは抗原決定基を含む、少なくとも一つの抗原を含む抗原性組成物、およびに腺疫菌エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種に対する非ヒト哺乳動物の免疫化のためのその使用に関する。本発明は、上記の抗原性組成物を免疫化成分として含む、ワクチン組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば馬などの非ヒト哺乳類に対する、腺疫菌(Streptococcus equi)に対する免疫処置のための、抗原組成物又は免疫原性組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウマにおける連鎖球菌感染症は、ランスフィールド(Lancefield)C群に分類され、エクイ(equi)およびズーエピデミカス(zooepidemicus)とそれぞれ命名された2つの亜種を含む、腺疫菌(Streptococcus equi)種が主な原因である。
【0003】
実質的にウマに限定される腺疫菌エクイ亜種(Streptococcus equi subsp. equi)は、全世界に分布し、かつウマの上気道への伝染性の強い重度の病気である、腺疫の原因病原体である。腺疫は、全世界的に最も頻繁に報告されるウマの病気の一つであり、熱、鼻汁、咽頭後リンパ節および下顎リンパ節における膿瘍形成を特徴とする。 いくつかの場合において、この病気は、擬似腺疫(bastard strangles)と呼ばれる、体内における転移性経過を示す。この病気は全世界的に分布し、かつ多大な経済的損失を引き起こす。その上、腺疫は強い伝染性の病気でありながら、感染した動物だけでなく、例えば罹災した種馬飼育場の他のすべての動物も、少なくとも3ヶ月は隔離しなければならない。
【0004】
腺疫菌亜種ズーエピデミカスは、健康なウマの上気道においてしばしば日和見共生をしていると考えられている。しかしながら、ストレス後またはウイルス感染後は、腺疫菌亜種ズーエピデミカスは、腺疫様症状をもたらす、二次感染を引き起こす。その上、ズーエピデミカス亜種はウマだけでなく、ブタ、イヌ、ネコ、およびウシなどの広範囲にわたる他の動物にも感染する。ヒトでも、ズーエピデミカス亜種の感染の症例が報告された。この亜種は、子宮内膜炎、子宮頸炎、流産、乳腺炎、肺炎、膿瘍および関節感染などの状態における一次病原体として関係している。
【0005】
これらの連鎖球菌感染は、ペニシリン、テトラサイクリン、またはゲンダマイシンなどの抗生物質で手当てし治療することは可能であるが、このような感染の爆発を阻害し、かつ抗生物質治療に関連した耐性株の発生リスクを未然に防ぐかまたは減少させる、効果的な予防薬が望まれている。
【0006】
しかしながら、S.エクイに対するワクチンなどの、予防薬の開発に多くの試みがなされてきたにもかかわらず、エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種に対する効果的なワクチン又は免疫製剤は、現在までに利用可能ではない。
【0007】
存在する腺疫に対するワクチンは、例えば熱殺菌などの不活性化、または弱毒化した腺疫菌エクイ亜種、もしくは酸抽出/M−タンパク質中でのムタノリシン濃縮、すなわちS.エクイ株産生の免疫原生タンパク質に基づく。M様タンパク質に基づく腺疫菌ズーエピデミカス亜種に対するワクチンは、米国特許出願第5583014号に開示されている。国際特許出願第87/00436号では、ウマに投与後、上咽頭粘膜における抗体応答を刺激する、腺疫菌に対するワクチンの使用のための、腺疫菌の非病原性株が開示されている。
【0008】
近年、腺疫に対する市販ワクチンであるEquilis StrepE(IntervetVET社、英国)が、英国において販売され(2004年11月)、ヨーロッパ、南アフリカおよび南米において使用されている。しかしながら、弱毒化(生きた、欠損変異した)した腺疫菌エクイ亜種に基づくこのワクチンの安全性及び有効性は、疑わしい。
【0009】
既存の開発ワクチンはまたは免疫原生製剤は、副作用に阻害され、さらに、不十分な保護を提供するため、望ましくない副作用を引き起こすことなく、腺疫菌の感染を保護する及び/またはその蔓延を阻害する、ワクチンなどの有効かつ安全な予防薬が必要とされている。
【0010】
真核細胞表面への接触が、感染の確立および細菌病原体によるコロニー形成に必須のステップであることは、周知である。よって、宿主細胞の細胞外マトリックス(ECM)または細胞質タンパク質の異なる成分と相互作用及び/または結合する連鎖球菌の表面タンパク質は、免疫的な目的の活性成分として使用するための、潜在的な候補である。
【0011】
これは、上記のM様タンパク質に基づくワクチン、または国際特許出願第98/01561号に開示されている記載に例示されている。フィブリノーゲンおよび補体因子Hの、Mタンパク質への結合は、腺疫菌の貪食作用への抵抗に重要であると考えられている。
【0012】
宿主細胞への接触のために腺疫菌が使う他の機序は、ECM成分のフィブロネクチン(Fn)が挙げられる(参考文献21、22)。Fn結合細菌性細胞表面タンパク質と固定Fnとの結合は、腺疫菌の上皮細胞への内在化を促進する(参考文献2,23,24)。フィブロネクチンは、細胞質および細胞外マトリックスでは原繊維形態で見られる、二量体糖タンパク質である。Fnの主な機能は、Fn分子の任意の領域を特異的な細胞表面受容体への結合に関与する、真核細胞の基質接着を仲介することである。さらにFnは、DNA、ヘパリン、フィブリン、およびコラーゲンなどの、いくつかの他の巨大分子と相互作用する。
【0013】
従って、異なる腺疫菌由来のFn結合タンパク質が以前にクローン化され、配列決定された。例えば、腺疫菌からは、ズーエピデミカス亜種のFn結合性細胞表面タンパク質である、一つのFn結合タンパク質がクローン化および特徴付けられ、FNZと命名された(Lindmark et al.,1996年,参考文献9)。他の腺疫菌エクイ亜種由来のFn結合タンパク質が、Lindmark およびGussによってクローン化され、かつ特徴付けられた(1999年、参考文献12)。SFSと命名された後者のタンパク質、およびそのウマの腺疫予防ワクチン中での活性成分として使用使用できる可能性は、国際出願第00/37496号で開示されている。
【0014】
Jonsson 等 (1995年、参考文献8)において、血漿プロテアーゼインヒビターα2Mとの結合を仲介する、ZAGと命名されたタンパク質が、腺疫菌ズーエピデミカス亜種よりクローン化及び特徴付けられた。この文献中では、このタンパク質は、連鎖球菌Mタンパク質機能が類似していると推測されている。このタンパク質ZAGも、国際出願第95/07296号に開示され、そのα2M結合特性も含まれている。 しかしながら、その免疫原生特性、または例えばウマの腺疫予防ワクチン中の活性成分として使用できる可能性は、開示されていない。ZAGをコードする遺伝子zagは、これらの参考文献中に開示されている。
【0015】
腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来の、上記のzag遺伝子と類似の遺伝子であって、エクイ亜種に存在する遺伝子が、Lindmark 等 (1999年、参考文献11)および Lindmark (1999年、参考文献13)に記載されている。この遺伝子は以下で、eagと命名され、EAGと命名されたタンパク質をコードする。
【0016】
国際出願第2004/032957 A1号では、腺疫菌に存在し、かつその組成物が、腺疫菌に存在し、FNZ,SFS,SEC,及びSclCとそれぞれ命名されているタンパク質群より選択される、好ましくは少なくとも一つのさらなる抗原を含む、EAGと命名されたタンパク質由来の少なくとも一つの抗原を含む、抗原性組成物が開示されている。
【0017】
国際出願第2007/115059 A2号では、本願に添付の配列表に示す特異的なアミノ酸配列もしくはその類似体、またはそのポリペプチドの一部であり、かつ少なくとも一つのエピトープを含む断片を有する、少なくとも一つの腺疫菌のポリペプチドを含む、サブユニット免疫原性またはワクチン組成物が開示されている。しかしながら、腺疫に対する免疫を与えたウマに関する結果は、この文献では提供されていない。
【0018】
Lannergard,J.,Frykberg,L.およびGuss, B.(2003年) FEMS Microbiol Lett 222: 69−74(参考文献28)で報告されている研究では、cneと命名された新しい遺伝子が単離され、かつ対応するタンパク質CNEが特徴付けられた。
【0019】
Flock,M.,Jacobsson,K.,Frykberg,L.,Hirst,T., R.,Franklin,A.,Guss,B. および Flock,J.−I.(2004年) Infect lmmun 72:3228−3236(参考文献5)では、ウマ腺疫のマウスモデルにおいて、FNS,SFS,及びEAGとそれぞれ命名されたタンパク質の一部が、マウスを免疫するのに用いられたことが報告されている。FNZおよびEAGは、安全かつ効果的な、腺疫に対するワクチンの開発の有望な候補と考えられている。
【0020】
Lannergard,J.およびGuss,B.(2006年)FEMS Microbiol Lett 262: 230−235(参考文献26)では、それぞれ腺疫菌エクイ亜種および腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来の2つの新規タンパク質IdeEおよびIdeZが、酵素活性に関して特徴付けられた。
【0021】
Vaccine(Timoney 等、2007年)では、CNE(SECとも命名)およびSe44.2(IdeE2とも命名)を含む、腺疫菌の非常に多くの組換え細胞外タンパク質が、ワクチン組成物として有用でないことが報告されている。先にマウスで得られたSCE/CNEの結果は、ウマに適用されないと推測される。したがって、必要な表面局在タンパク質の組換え形態が、ワクチン組成物の好ましい候補であるかどうかは明らかではない。
【0022】
Waller,A.,Flock,M.,Smith,K.,Robinson,C,Mitchell,Z.,Karlstr(oe)m,A.,Lannergard,J.,Bergman,R.,Guss,B.および Flock,J.−I.(2007年)Vaccine 25: 3629−3635(参考文献27)では、腺疫菌エクイ亜種由来の組換え抗原EAG,CNEおよびSclCを用いたウマの腺疫に対するワクチン接種が報告されている。この研究では、ワクチン接種した動物は、腺疫菌エクイ亜種で曝露後、顕著に減少した細菌の回復、および顕著に低いレベルの鼻汁を示した。
【0023】
効果的なワクチンを開発するために多大な努力がなされ、また国際出願第2004/032957 A1号のいくつかの免疫化成分は、腺疫菌感染を予防するワクチンとして使用する有力な候補であるが、高度の免疫原性を有し、かつ制限された副作用を示す、または副作用を示さない、安全なワクチンの開発が未だに望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、腺疫菌エクイ亜種およびズーエピデミカス亜種の一方または両方に存在するタンパク質由来の、少なくとも一つの抗原性エピトープまたは抗原性決定因子を含む、少なくとも一つの抗原、好ましくは免疫原を含む、抗原性、好ましくは免疫原性組成物、ならびにその非ヒト哺乳動物の腺疫菌エクイ亜種および/またはズーエピデミカス亜種に対する免疫化のための使用に基づく。
【0025】
本発明は、上記の該抗原性組成物を免疫原生成分として含むワクチン組成物、該抗原性、好ましくは免疫原性組成物またはワクチン組成物を調製する方法、非ヒト哺乳動物において腺疫菌に対する免疫応答を誘導する方法、および非ヒト哺乳動物における腺疫菌感染を予防または治療する方法を目指す。一般的に使用する場合、「腺疫菌」という表現は、腺疫菌エクイ亜種およびズーエピデミカス亜種の一方または両方を表す。
【0026】
好ましい態様では、本発明はウマなどのウマ科の腺疫を予防するワクチンを目指す。
【0027】
腺疫菌エクイ亜種が原因の感染に関連して、「非ヒト哺乳動物」という表現は、原則的にウマ、ロバ、およびシマウマ、ならびにラバおよびケッティなどのこれらの交雑種からなる、ウマ科に属する動物を表す。ラクダおよびヒトコブラクダもこれに包含される。
【0028】
腺疫菌ズーエピデミカス亜種が原因の感染に関連して、「非ヒト哺乳動物」という表現は、ウシ、ブタ、イヌおよびネコなどの他の哺乳動物を、さらに表す。
【0029】
以下に、本発明は、図面を参考にしてより詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ポリペプチドEq5およびEq8(白丸)でワクチン接種した、または未ワクチン接種(黒丸)した後に、腺疫菌エクイ亜種株1866で実験感染した、所定のマウスの体重減少を示す。平均値及び誤差を示している。
【図2】ポリペプチドEq5およびEq8(白丸)でワクチン接種した、または未ワクチン接種(黒丸)した後に、腺疫菌エクイ亜種株1866で実験感染した、所定のマウスの鼻腔成長を示す。平均値及び誤差を示している。
【図3】ポリペプチドEAG(白四角)、ポリペプチドEAG+IdeE+IdeE2(白丸)でワクチン接種した後、または未ワクチン接種(黒丸)した後に、腺疫菌エクイ亜種株1866で実験感染した、所定のマウスの体重減少を示す。平均値及び誤差を示している。
【図4】ポリペプチドEAG(白四角)、ポリペプチドEAG+IdeE+IdeE2(白丸)でワクチン接種した後、または未ワクチン接種(黒丸)した後に、腺疫菌エクイ亜種株1866で実験感染した、所定のマウスの鼻腔成長を示す。平均値及び誤差を示している。
【図5】図5aおよび5bは、EAG+CNE+SclC 経鼻投与(黒四角)、Eq5+Eq8経鼻投与(黒丸)および対照(白丸)で免疫化したマウスの体重減少および鼻腔成長を示している。平均値及び誤差を示している。
【図6】抗原投与接種材料の生育を示している(腺疫菌エクイ亜種4047)
【図7】ワクチン接種段階でのポニーの平均体温を示している。
【図8】ワクチン接種段階での鼻のスコアの平均を示している。
【図9】ワクチン接種段階でのリンパ節のスコアの平均を示している。
【図10】ワクチン接種段階での鼻洗浄液中の腺疫菌ズーエピデミカス種の平均カウントを示している。
【図11】抗原投与後のポニーの平均体温を示している
【図12】抗原投与段階での平均フィブリノーゲンレベルを示している。
【図13】抗原投与段階での平均好中球レベルを示している。
【図14】抗原投与段階での平均リンパ節スコアを示している。
【図15】抗原投与段階での平均リンパ節スコアを示している。
【図16】抗原投与段階での鼻洗浄液中の腺疫菌ズーエピデミカス種の平均カウントを示している。
【図17】死後の実験における平均病理スコアを示している。
【図18】平均組織病理スコアを示している。
【図19】7頭の免疫したウマの鼻洗浄液中のIgG抗体のELISA測定結果を示す。切捨ての吸光度値1.0を与えるのに必要とされた血清の対数希釈が、各個別の鼻洗浄液サンプルについて計算された。平均値(n=7)および標準誤差が示されている。免疫化前(免疫前1日目)および3回目の免疫化から12日後(86日目)に採取したサンプルが示されている。ウマは、EAG,CNEおよびSclCで免疫化されている。
【図20】7頭の免疫したウマの血清中のIgG抗体のELISA測定結果を示す。切捨ての吸光度値1.5を与えるのに必要とされた血清の対数希釈が、各個別の鼻洗浄液サンプルについて計算された。平均値(n=7)および標準誤差が示されている。免疫化前(免疫前1日目)、V2後(71日目)、およびV3後(86日目)に採取したサンプルが示されている。
【図21】7頭の免疫したウマ(Pentavac)の血清中のIgG抗体のELISA測定結果を示す。切捨ての吸光度値1.5を与えるのに必要とされた血清の対数希釈が、各個別の鼻洗浄液サンプルについて計算された。平均値(n=7)および標準誤差が示されている。免疫化前(免疫前1日目)、V2後(71日目)、V3後(86日目)、およびV3とV4の間(270日目)に採取したサンプルが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[配列の簡単な説明]
配列番号1は、IdeE2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号2は、組換えIdeE2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、Eq5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、組換えEq5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、Eq8タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号6は、組換えEq8タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、ズーエピデミカス亜種由来のIdeZタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、ズーエピデミカス亜種由来のEqz5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、ズーエピデミカス亜種由来のEqz8タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、IdeEタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号11は、ズーエピデミカス亜種由来のIdeZタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号12および13は、本発明に関して通常EAGと命名されている、eag遺伝子のヌクレオチド配列およびEAG4Bタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ示す。
配列番号14は、ideE2遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号15は、eq5遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号16は、eq8遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号17は、ズーエピデミカス亜種由来のideZ遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号18は、ズーエピデミカス亜種由来のeqz5遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号19は、ズーエピデミカス亜種由来のeqz8遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号20は、ideE遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号21は、ズーエピデミカス亜種由来のideZ遺伝子のヌクレオチド配列を示す。
配列番号22〜27は、オリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列を示す。
配列番号28は、CNE(またはSEC2.16)タンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号29は、SclCタンパク質のアミノ酸配列を示す。
配列番号30は、免疫化に使用する、組換えIdeEのアミノ酸配列を示す。
配列番号31〜32は、プライマーのヌクレオチド配列を示す。
【0032】
本発明は、非ヒト哺乳動物に投与した場合、抗原性応答、好ましくは免疫原性応答を導くことを可能にする、腺疫菌のポリペプチドまたはタンパク質の同定、およびこれらのポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは遺伝子の同定に関する。
【0033】
本発明は、該ポリペプチドもしくはタンパク質、または該ポリヌクレオチドもしくは遺伝子の断片または類似体にも関連する。
【0034】
より特異的には、細胞外タンパク質をコードする腺疫菌の遺伝子が同定され、かつ続いて、対応する産物が発現されて、ワクチン研究において評価された。本発明は、少なくとも部分的に、このような研究に基づく。
【0035】
したがって、本発明は少なくとも一つの抗原を含む抗原性組成物に関し、前記少なくとも一つの抗原は、少なくとも腺疫菌エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種のタンパク質の一部を含み、かつ前記少なくとも該タンパク質の少なくとも一部は、腺疫菌の少なくとも一つの抗原性エピトープまたは抗原性決定部分を含む。
【0036】
一実施形態によれば、本発明は少なくとも一つの抗原を含む、抗原性組成物に関し、
前記少なくとも一つの抗原は、少なくとも腺疫菌エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種のタンパク質の一部を含み、かつ前記少なくとも該タンパク質の少なくとも一部は、腺疫菌の少なくとも一つの抗原性エピトープまたは抗原性決定部分を含み、かつ、該タンパク質またはポリペプチドは、
EAGと命名され、かつ配列番号13に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
IdeEと命名され、かつ配列番号10に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
IdeE2と命名され、かつ配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
Eq5と命名され、かつ配列番号3に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
Eq8と命名され、かつ配列番号5に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
IdeZ2と命名され、かつ配列番号7に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、
Eqz5と命名され、かつ配列番号8に示すアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはポリペプチド、および
Eqz8と命名され、かつ配列番号9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチド、またはその類似体もしくは断片、からなる群より選択され、かつ、EAGを含む組成物は、タンパク質またはポリペプチドであり、IdeE、IdeE2、Eq5、Eq8,IdeZ2、Eqz5、およびEqz8からなる群より選択される、少なくともさらに一つの抗原を含む。
【0037】
便宜上、配列の詳細な説明で示すアミノ酸配列を有するポリペプチドは、しばしば単にEAG,IdeE、IdeE2、Eq5,Eq8,IdeZ2、Eqz5,およびEqz8とそれぞれ命名される。EAG,IdeE、IdeE2、Eq5,Eq8と命名されたタンパク質は腺疫菌エクイ亜種で見つけることができ、かつIdeZ2、Eqz5,およびEqz8と命名されたタンパク質は腺疫菌ズーエピデミカス亜種で見つけることができる。
【0038】
現存の抗原性組成物または免疫原性組成物の抗原または免疫原は、該タンパク質もしくはポリペプチドの全アミノ酸配列を含むことができ、またはそのC末端もしくはN末端などの断片、もしくはその類似体を含むことができる。例えば、EAGのN末端断片は、本発明の様々な態様に従って使用されている。
【0039】
一実施例では、本発明は、EAG,IdeE,IdeE2、Eq5,Eq8、IdeZ、IdeZ2、Eqz5,およびEqz8からなる群より選択される、少なくとも2または3の、抗原または免疫原を含む、抗原性組成物または免疫原性組成物に関する。
【0040】
特定の態様では、本発明は、EAG,IdeE,IdeE2、Eq5,およびEq8からなる群より選択される、少なくとも2または3の、抗原または免疫原を含む、抗原性組成物または免疫原性組成物に関する。好ましくは、この組成物は、SclC(配列番号29)およびCNE(配列番号28)(SEC、例えばSEC2.16とも命名)のいずれかまたは両方の上記の抗原も含む。さらなる態様は、EAG,SclC、CNE、Eq5,Eq8を含む抗原性組成物に関する。
【0041】
好ましい組成物は、Eq5およびEq8をそれぞれ含む、2つの抗原または免疫原を含む。さらなる態様において、本発明は、好ましくはEAG,IdeE、およびIdeE2を含む、3つの抗原または免疫原を含む組成物に関する。本発明は、にIdeEおよびIdeE2のいずれかまたは両方を含む組成物にも関連する。
【0042】
本発明は、抗原性組成物にも関連し、前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドがEAG,Eq5,およびEq8からなる群より選択され、かつ組成物が、配列番号28で示されるアミノ酸配列を有する、CNE(またはSEC)と命名されたタンパク質またはポリペプチド、および配列番号29で示されるアミノ酸配列を有する、SclCと命名されたタンパク質またはポリペプチドからなる群より選択される、少なくとも一つの抗原をさらに含む。好ましくは、該少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドは、IdeEおよびIdeE2からなる群より選択される。
【0043】
有用なワクチン組成物として示される、本発明の抗原性組成物は、一つの態様では、抗原EAG,SclC、CNE(またはSEC)、Eq5、Eq8、IdeEおよびIdeE2を、ならびに別の態様では、抗原EAG1、SclC、CNE(またはSEC)、Eq5、およびEq8を含む。
【0044】
本発明は、抗原性組成物にも関連し、該少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドはEAG,Eq8、およびIdeE2からなる群より選択され、かつ前記組成物は、IdeE、Eq5,IdeZ2、Eqz5およびEqz8および/またはSclCならびにCNE(またはSEC)からなる群より選択される、少なくとも一つのさらなる抗原を含む。
【0045】
本発明によれば、抗原性組成物は、好ましくは、組換え技術的に生産された少なくとも一つの抗原、および/または単離されたもしくは精製された抗原である、少なくとも一つの抗原を含む。
【0046】
上記より、腺疫菌のタンパク質由来の本発明の抗原または免疫原は、抗原性または免疫原性である、全長タンパク質、該タンパク質の断片または該タンパク質の類似体を含み得ることは明白である。よって、本発明は本願明細書で特異的に開示するタンパク質の断片に限定されない。
【0047】
本発明の抗原性組成物は、該少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドをコードする、少なくとも一つの組み換えベクターおよびこれに挿入された少なくとも一つのポリヌクレオチドを含み得、かつ前記ベクターは該ポリペプチドを、腺疫菌に感受性の非ヒト哺乳動物の生体内で発現することができる。
【0048】
本発明の一実施形態よれば、前記ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターである発現ベクターであり、かつ該ポリヌクレオチドは、本発明の抗原をコードするヌクレオチド配列を有する。
【0049】
本発明のさらなる態様は、上記の抗原性組成物を免疫化成分として含む、腺疫菌の感染から非ヒト哺乳動物を予防するためのワクチン組成物、および薬学的に許容される担体に関する。
【0050】
好ましくは、本発明のワクチン組成物は、免疫化成分として2、3またはそれ以上の本発明の抗原または免疫原を含む、抗原性組成物または免疫原性組成物を含む。さらに、1またはそれ以上のこれらの抗原または免疫原は、N末端断片またはC末端断片などの、該タンパク質またはその断片の類似体を含む。
【0051】
ワクチン組成物は、アジュバントなどのさらなる成分を含み得る。好ましくは、該アジュバントは全身性免疫または粘膜系免疫を刺激する。このようなアジュバントは、当技術分野で周知である。
【0052】
本発明による使用に好ましいアジュバントには、(1)アクリル酸またはメタクリル酸、無水マレイン酸ポリマーおよびアルケニル誘導体ポリマー、(2)免疫刺激配列(ISS)、(3)水中油型エマルション、(4)4級アンモニウム塩を含む陽イオン性脂質、(5)サイトカイン、(6)水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム、(7)サポニン、または(8)ナノ粒子を含む。
【0053】
本発明の使用に好ましいアジュバントは、Abisco(Isconova AB,スウェーデン)である。ISCOMSの重要な成分は、チリアン・ソープバークツリー(シャボンノキ:Quillaia Saporinaria molina)由来のキラヤ(Quillaia)サポニンである。キラヤサポニンには、免疫系を活性化する能力があることが周知である。特別な化学量論下でキラヤサポニンをコレステロールおよびリン脂質と混合すると、ISOCOMSとして知られる、球状オープンケージ様構造を形成する。
【0054】
他の好ましいアジュバントはGinsengである。 Gisengは、植物オタネニンジン(Panax ginseng, CA. Meyer)の根から調製される、乾燥抽出物である。Ginsengは、化学的にはダマラン類の三テルペノイド配糖体である、サポニンの一種であるジンセノサイドと呼ばれるいくつかの活性物質を含む。ジンセノサイドはアジュバンド特性を有し、最も活性なアジュバンドはRb1を名づけられた画分である。Rb1アジュバント化ワクチンのワクチン接種後に分泌されたサイトカインIFN−γ、IL−2、IL−4,IL−10を測定することにより、Rb1画分は、Th1とTh2の免疫応答の平衡を引き起こすことが証明されている。加えて、GinsengおよびRb1画分は、強力な抗原特異的抗体応答を刺激する。
【0055】
好ましい態様においては、ワクチン組成物は、好ましくはウマである、腺疫菌エクイ亜種が原因の腺疫に感受性の哺乳動物を保護するワクチンである。
【0056】
本発明のワクチン組成物は、生理的に投与可能な形態で提供される。好ましくは、ワクチン組成物は、皮下接種、筋肉内接種、または経鼻接種で投与可能である。
【0057】
好ましくは、本発明のワクチン組成物は、腺疫菌抗原に向けた血清、粘膜および/または気管支洗浄抗体応答を、腺疫菌に感受性の哺乳動物、特にウマ内で刺激する。
【0058】
本発明は、本発明の抗原性組成物または免疫原性組成物として使用される、抗原または免疫原の生産方法にも関連し、該方法は、
(a)該抗原をコードするDNA断片を提供し、そして該断片を発現ベクター内に挿入するステップと、
(b)該DNA断片を含む該ベクターを、適合する宿主細胞内に導入するステップと、
(c)ステップ(b)の該宿主細胞を、該DNA断片のコードされる生産物が発現するのに必要な条件下で培養するステップと、
(d)発現した生産物を培養した宿主細胞から単離するステップ
とを含む。
【0059】
好ましくは、該方法は、ステップ(d)で単離された生産物を、アフィニティークロマトグラフィーまたはその他の当技術分野で周知のクロマトグラム法によって精製する、ステップ(e)をさらに含む。
【0060】
従って、本発明の抗原はは通常、組換え技術によって生産される。
【0061】
本発明のさらなる態様は、本発明のワクチンを調製する方法に関し、該ワクチンは免疫化成分として上記の抗原性または免疫原性組成物を含み、該方法は該抗原性組成物と薬学的に許容される担体とを混合するステップを含む。
【0062】
本発明は、抗血清の生産方法にも関連し、該方法は、本発明の抗原性調製物を宿主動物に投与して、該動物中で抗体を生産するステップと、該動物中で生産された該抗体を含む抗血清を回収するステップとを含む。
【0063】
さらに本発明は、非ヒト哺乳動物、好ましくはウマの腺疫菌感染を予防または治療する方法に関係し、該動物に免疫学的に有効量の本発明のワクチンまたは抗血清を投与するステップを含む。
【0064】
従って、本発明は、腺疫菌感染からウマを予防する方法に関係し、該方法はウマに本発明のワクチン組成物を、筋肉内接種、皮下接種、もしくは経鼻接種、または例えば皮下および経鼻の組み合わせで接種して、該ウマ中で腺疫菌に対する免疫応答を誘導するステップを含む。好ましくは、鼻咽頭粘液内でのIgGおよび/またはIgAおよび/またはIgM抗体様の免疫応答は、該ウマ内で誘導される。
【0065】
本発明は、本発明の抗原性組成物のタンパク質またはポリペプチドに特異的な、少なくとも一つの、好ましくは2つの抗体を含む、抗体調製物に関連し、該抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり、または該調製物は該抗体の断片を含む。
【0066】
本発明の抗体調製物は、腺疫に対して予防的または治療的に使用でき、かつ腺疫菌に感受性の、または腺疫菌に感染した非ヒト哺乳動物に投与した場合、受動免疫法を提供する。
【0067】
本発明は、大腸菌を宿主細胞として用いる本発明方法によって調製された、1または複数の抗原成分を含むワクチン組成物を記載する。これらの抗原の元は、該方法がその発現および精製用に開発されている場合、天然の細菌でもあり得る。あるいは、本発明の抗原は、融合戦略に基づく方法によっても生産され、それぞれの抗原の様々な部分は、異なる抗原由来の部分からなるタンパク質中の融合カン(fusion can)として再結合する。この融合戦略は、T細胞エピトープまたは弱毒化毒素(またはその一部)などの免疫反応部の導入にも適しているため、抗原提示または抗原局在を最適化する他の特性の導入に適している。
【0068】
さらに、大腸菌に加えて組換え抗原を発現するための他の宿主は、他の適した細菌種およびウイルス種でもある。今日、異種発現のための多くの異なる発現系が分子生物学の分野で周知である。
【0069】
本発明の他の関連は、本発明は宿主内での生存に重要な遺伝子(すなわち、代謝経路における欠損を引き起こす変異)が欠損した、または不活性化した遺伝子を有するが、本発明の抗原を維持または過剰生産する、腺疫菌の特異的な弱毒化変異体の設計に使用できる。
【実施例】
【0070】
腺疫菌エクイ亜種およびズーエピデミカス亜種のゲノムのDNA配列は同定されたが(www.sanqer.ac.uk/)、まだアノテートされていない。スクリーニングされた読み取り枠から、細胞外タンパク質をコードする多くの遺伝子が同定された。これらの遺伝子の間で、いくつかを選択して、組換えタンパク質は生産され、かつワクチン研究で評価された。これらの遺伝子のクローニングおよび発現は、以下に示す。さらに、これらのタンパク質の抗原としての使用も記載されている。
【0071】
[実施例1]エクイ亜種由来のideE、ideE2、eq5およびeq8遺伝子を内包するクローンの構築
腺疫菌エクイ亜種株1866(PCT/SE03/01587, Lannergard and Guss 2007)由来の染色体DNAを、IdeE、IdeE2、Eq5およびEq8をコードする潜在的な遺伝子を増幅する鋳型として使用した(ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は以下の配列表に示す)。予想されるシグナル配列を同定するために、コンピュータープログラムSignalP(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を使用した。ideE、ideE2、eq5およびeq8遺伝子またはこれらの遺伝子の一部を増幅するのに使用したプライマーの配列は、プライマー表に列挙してある。プラスミドベクターpTYB4(New England Biolabs社)中のクローニング部位に合わせるため、制限酵素NcoIおよびXhoIの切断部位が、プライマー配列に導入された。
【0072】
PCR増幅は、プライマー(20pmol/μl)およびReadyToGo(登録商標)PCRビーズ(GE Healthcare社)を用いて、以下のプログラムを用いて行った。
ステップ1:95℃で1分間予熱、DNA鎖分離
ステップ2:95℃で30秒
ステップ3:46℃で15秒間、アニーリング
ステップ4:72℃で2分間、伸長
ステップ2〜4を26サイクル。
【0073】
PCR生産物は1%アガロースゲル上で解析後、QIAquick PCR Purification Kit(登録商標)(Qiagen社)を用いて精製した。制限酵素による切断を一晩行った後、断片を再度同じキットを用いて精製した。
【0074】
プライマー表:ideE、ideE2、eq5およびeq8遺伝子のPCR増幅に使用したプライマー配列。下線のヌクレオチド配列は、導入した制限酵素NcoIおよびXhoI切断部位に対応する。
【0075】
【表1】

【0076】
大腸菌内でクローン化及び組換えタンパク質を生産するために、IMPACT(登録商標)タンパク質精製システム(New England Biolabs社)が使用された。pTYB4ベクター(New England Biolabs社)を含む大腸菌株ER2566株は使用説明書に従って生育され、そしてベクターはQIAprep Spin Miniprep (Qiagen社)を用いて精製された。精製されたベクターは、制限酵素NcoIおよびXhoIで消化された。消化後、ベクターは、以後のライゲーションステップにおけるバックグラウンドの再ライゲーションしたベクターを減らすため、酵素アルカリフォスファターゼで処理された。ベクターのライゲーションおよび個々のPCR産物用に、ReadyToGo T4DNAリガーゼ(GE Healthcare社)が使用された。ライゲーション後、個々のサンプルをコンピテントセルである大腸菌株ER2566に電気穿孔法で形質転換して、そしてLA−Ampプレート(最終濃度50μg/mlでアンピシリンが添加されたLB培地寒天プレート)上に播種後、37℃で一晩培養した。次の日、コロニーを数え、一構築物あたり4個のコロニーが培養され、以後の実施例に使用した。それぞれの構築物中の挿入物の存在の確認のため、プラスミドを精製し、それぞれのプライマーの組み合わせを用いて、さらにPCR解析を行った。それぞれの挿入物の配列は、ベクターにハイブリダイズするプライマー(インテインコード領域に位置するT7 ユニバーサル順方向および逆方向プライマー)を用いたDNA配列解析によっても同定された。
【0077】
腺疫菌エクイ亜種株1866のideE遺伝子のクローニングは、以前にLannergardおよびGussによって報告された(2006年)。ideEのGenBank受入番号はDQ508733である。免疫化用の組換えIdeEタンパク質を得るために用いる遺伝子の一部分は、プライマー表に列挙されているプライマーIdEG1およびIdEG2を用いてクローン化した。PCR増幅後、DNA断片は制限酵素BAmH1およびXhoIで消化後、先に同じ酵素で消化したベクターpGEX6−P−1(GE Healthcare社)にライゲートした。
【0078】
[実施例2]抗原CNE,ScIC,EAG4B,IdeE,IdeE2,Eq5およびEq8の調製
使用したベクターは、大腸菌発現およびIMPACT(登録商標)T7(NEB Inc.)と呼ばれる精製系の一部である。簡単には、使用説明書に従って、それぞれ組換えIdeE2、Eq5及びEq8を発現するクローンは、アンピシリン(最終濃度50μg/ml)が添加されたLB培地中で、37℃で生育した。光学密度(OD600)が0.6付近の時点で、生育培地にIPTG(最終濃度0.4mM)が添加され、生育温度を20℃に変更した。一晩の生育後、細胞は回収されて、緩衝液[20 mM Tris−HCl(pH 8.0), 500mM NaCI,0.1mM EDTA,および 0.1%Triton X−100]中に再懸濁して、凍結及び解凍によって溶解した。遠心後、上清を滅菌濾過して、キチンカラムに添加した。カラムは同じ緩衝液で広範囲に洗浄した後、切断緩衝液(20mM Tris−HCl(pH 8.0),50mM NaCI,0.1mM EDTA,および 30mMジチオスレイトール(DTT))で処理した。切断緩衝液中には、還元環境は、インテイン−キチン結合部分が結合している間、抗原部分をカラムから遊離させる、インテイン仲介自己切断を誘導する。抗原を含む溶出サンプルは、リン酸緩衝食塩液(PBS;137mM NaCl,2.7mM KCl,10mM NaHPO,1.4mM KHPO(pH 7.4))中で透析後、濃縮した。得られた抗原の量を定量後、その品質をSDS−PAGEも用いて確認した。組換えIdeEタンパク質は生産後、製造業者(GE Healthcare社)推奨の手順に従って、GST−アフィニティークロマトグラフィー系を用いて精製した。CNE(SEC), ScIC, および EAG4Bの記載及び生産は、以前に記載されている(国際出願第 2004/032957 号(PCT/SE03/01587),Waller 等、2007年)。以下の実施例において、EAG4Bタンパク質は単にEAGと呼ぶ。
【0079】
[実施例3]組換えIde2はIgGを切断する
IdEは、様々な種由来のIgGを特異的に切断するプロテアーゼとして、以前に示されている(LannegardおよびGuss、2006年)。組換えIdE2も抗体を切断するかどうかを検証するため、ヒト、ウマおよびマウス由来のIgGをPBS内で、37℃で1時間反応させた。精製した組換えIdeEを正の対照として、精製IgGを負の対照として使用した。切断後、サンプルは8〜25%勾配SDS−PAGEを用いて解析した。結果は、組換えIdeE2は、IdeEよりも効果的にウマIgGを切断することを示した。
【0080】
[実施例4]腺疫菌エクイ亜種におけるideE、ideE2、eq5、およびeq8遺伝子の存在
以前に、エクイ亜種のideE遺伝子のホモログがズーエピデミカス亜種に存在することが報告されている(LannegardおよびGuss、2006年)。ズーエピデミカス亜種のゲノムデータベース(www.sanger.ac.uk/)を用いて、ideE2、eq5およびeq8に類似の遺伝子の存在を、BLAST検索を用いて解析した。 結果は、類似のタンパク質をコードする遺伝子が検出されたことを示した。ideZ2、 eqz5、及びeqz8と呼ばれる遺伝子の配列と、これらに伴うIdeZ2, Eqz5およびEqz8のアミノ酸配列は本明細書の実施例の配列表に示してある。
【0081】
[実施例5]Eq5およびEq8によるマウスの免疫化
約23〜25gのマウス(NMRI)をケージ内に各5匹ずつ入れた。マウスは、12μgの各抗原および10μgのAbisco300(Isconova AB,スウェーデン)で、経鼻で免疫化した。15匹を抗原(Eq5およびEq8)で免疫化し、15匹は陰性対照として用いるため、Abisco300アジュバントを投与した。 全体積を最低27μlに保ち、かつIsoflovet(Abbot Laboratories,英国)で麻酔したマウスの鼻孔に、30分おきに2回投与した。免疫化は、0、13および32日目に行った。
【0082】
[実施例6]EAG、IdeEおよびIdeE2によるマウスの免疫化
EAG、IdeEおよびIdeE2によるマウスの免疫化は、Eq5とEq8の場合と同様に行った。しかしながら、マウスは3つの群に分け、各グループ10匹づつとした。 これらはEAG+IdeE+IdeE2、またはEAGのみ、投与され、かつ1つの群は陰性対照としてアジュバントAbisco300のみが投与された。免疫化は、0、21、および53日目に行った。実験感染は60日目に行った。
【0083】
[実施例7]腺疫菌エクイ亜種による実験感染
実験感染は、Eq5+Eq8については43日目(最後の免疫化から10日後)、EAG+/−IdeE+IdeE2については60日目(最後の免疫化から10日後)に行った。 腺疫の臨床例として、腺疫菌エクイ亜種株1866を用いた。株は最初、麻酔したマウスの鼻孔に約10CFUを接種して、動物を通過した。細菌は7日後のマウスの鼻から回収された後、5%COで37℃の条件下、BGプレート上で生育した。単一コロニーを、BGプレート上で、37℃で一晩生育した後、1%酵母抽出物(THY)を含むTodd Hewittブロス(THB)中に再懸濁した。培養物はバイアル中に−80℃で保管され、各実施例において新しいバイアルを使用した。マウスに感染させるために、細菌はBGプレート上で5%CO下、37℃で一晩生育後、THYに植菌し、振とうすること無く一晩生育した。培養液はその後THYおよび10%ウマ血清(Sigma社)10倍に希釈後、5%CO下で、37℃で4時間生育した。培養液は遠心分離後、THBに再懸濁した。 10μl中に1×10CFUを含む投与量を、すべてのマウスの腺疫菌感染に使用した。マウスは日ごとに追跡調査した。細菌の鼻中での生育は、再現可能な状態で、マウスの鼻を血液寒天プレート上に優しく押し付けて、0〜+++の4段階の基準でスコア化した。鼻サンプルをその後プレート全体の表面に塗布した。1個の+は、5〜100個のコロニーを、2個の+は100以上のコロニーを、3個の+はコンフルエントな生育を意味する。体重は毎日測定し、体重減少の百分率を計算した。
【0084】
[実施例8]ワクチン投与の実験結果
マウスはEq5およびEq8の両方で免疫化され、経時体重減少を測定した。図1は、ワクチン投与したマウス(n=15)は、対照マウス(n=15)よりも体重減少が少なかったことを示す。すべての日においてP値は0.0001であった(Student−t検定)。 腺疫菌の鼻内での生育も、日ごとに4段階スケールの測定を行った。図2は、ワクチン接種したマウスは、対照群よりも鼻内での生育がより少ないことを示す。5日目における鼻内で細菌が大幅に生着した(スコア2〜3)マウスの頻度は、2つの群の間で、顕著に違っていた。P=0.002(フィッシャー直接検定)。
【0085】
次の実験において、マウスはEAG(n=10)、EAG+IdeE+IdeE2(n=10)でワクチン接種、または非ワクチン接種(n=10)した。経時体重減少率を測定した。図3は、EAG+IdeE+IdeE2をワクチン接種した動物が、対照群よりも低い体重減少であったことを示す。P値は3日目、5日目、6日目でそれぞれ0.0013、0.0008および0.0009であった(Student−t検定)。EAGのみをワクチン接種した動物も、対照群と同等の体重減少であった。腺疫菌の鼻内での生育も、日ごとに4段階スケールの測定を行った。図4は、EAG+IdeE+IdeE2をワクチン接種した動物は、対照群よりも鼻内での生育がより少ないことを示す。また、EAGのみのワクチン接種では予防されなかった。
【0086】
[実施例9]Eq5、Eq8およびEAG、CNE、ScICでのマウスの免疫化
経鼻投与による Eq5+Eq8およびEAG+CNE+ScICでの免疫化は、上記と同様に行い、1群あたり10匹のマウスで、3群行った。1群はEq5+Eq8で、他群はEAG+CNE+ScICである。第3群はAbisco300での対照群である。免疫化は0、14、および22日目に行った。抗原投与は29日目に行った。実験結果を図5aおよび図5bに示す。図5aおよびbは、EAG+CNE+ScIC(n=10)の顕著な予防効果を示す。P値は2日目で0.04、5日目で0.09であった。Eq5+Eq8の予防効果は、より顕著であり、P値は2日目で0.005、5日目で0.009であった。
【0087】
配列リスト
(1)配列番号1と配列番号14は、ideE2のヌクレオチド配列(配列番号14)の下にIde2タンパク質(配列番号1)を示すために、組み合わせられている。
【0088】

【0089】
(2)配列番号2は、組換えIdeE2タンパク質の配列を示す。太字で表示されているアミノ酸は、pTYB4ベクターにコードされているアミノ酸である一方、残りはIdeE2タンパク質由来である。
【0090】

【0091】
(3)配列番号3と配列番号15は、Eq5のヌクレオチド配列(配列番号15)の下にEq5タンパク質(配列番号3)を示すために、組み合わせられている。
【0092】


【0093】
(4)配列番号4は、組換えEq5タンパク質の配列を示す。太字で表示されているアミノ酸は、pTYB4ベクターにコードされているアミノ酸である一方、残りはEq5タンパク質由来である。
【0094】

【0095】
(5)配列番号5と配列番号16は、Eq8のヌクレオチド配列(配列番号16)の下にEq8タンパク質(配列番号5)を示すために、組み合わせられている。
【0096】

【0097】
(6)配列番号6は、組換えEq8タンパク質の配列を示す。太字で表示されているアミノ酸は、pTYB4ベクターにコードされているアミノ酸である一方、残りはEq8タンパク質由来である。
【0098】

【0099】
(7)配列番号7と配列番号17は、腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来のideZ2のヌクレオチド配列(配列番号17)の下にIdeZ2タンパク質(配列番号7)を示すために、組み合わせられている。
【0100】

【0101】
(8)配列番号8と配列番号18は、腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来のeqz5のヌクレオチド配列(配列番号18)の下にEqz5タンパク質(配列番号8)を示すために、組み合わせられている。
【0102】


【0103】
(9)配列番号9と配列番号19は、腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来のeqz8のヌクレオチド配列(配列番号19)の下にEqz8タンパク質(配列番号9)を示すために、組み合わせられている。
【0104】

【0105】
(10)配列番号10と配列番号20は、ideEのヌクレオチド配列(配列番号20)の下にIdeEタンパク質(配列番号10)を示すために、組み合わせられている。
【0106】
腺疫菌エクイ亜種由来のideE遺伝子のヌクレオチド配列(GenBank DQ508733)およびIdeEのアミノ酸配列を示す。
【0107】

【0108】
(11)配列番号11と配列番号21は、ideZのヌクレオチド配列(配列番号21)の下にIdeZタンパク質(配列番号11)を示すために、組み合わせられている。
【0109】
腺疫菌ズーエピデミカス亜種由来のideZ遺伝子のヌクレオチド配列(GenBank DQ826037)およびIdeZのアミノ酸配列を示す。
【0110】

【0111】
(12)配列番号12
eag遺伝子のヌクレオチド配列
【0112】

【0113】
(13)配列番号13
EAG4Bタンパク質のアミノ酸配列
【0114】

【0115】
(14)配列番号28
SEC2.16(CNE)のタンパク質配列
【0116】



【0117】
(15)配列番号29
SclCのタンパク質配列
【0118】


【0119】
(16)配列番号30 組換えタンパク質IdeE
【0120】

太字のアミノ酸はベクター由来である。
【0121】
[実施例10]ワクチン接種実験
本実験の目的は、ウェルシュ・マウンテンポニーにIntervacc社の多成分サブユニットワクチンを接種後、野生型腺疫菌株4047を経鼻抗原投与した場合の、予防レベルを特定することである。本実験は、英国のAnimal Health Trust社によって行われた。本実験で使用した、Nordostrep SeptavacまたはNordostrep Pentavac A(または単にSeptavacまたはPentavac)と命名されたワクチンは、以下に記載されている。
【0122】
方法
ワクチン接種期間のため、ポニーは最初に3つの群に無作為抽出した。
【0123】
【表2】

【0124】
最初の試験群1および3を、抗原投与に回した(第2の試験群2(Pentavac A)は、第9節に記載してある)。いずれのワクチン群で抗原投与するかの決定は、抗原投与の1週間前にIntervaccで行った。
【0125】
Nordostrep Pentavac A処方
Pentavacワクチンは、以下の5つの腺疫菌タンパク質:EAG,SclC、CNE、Eq5およびEq8からなる。皮下ワクチン接種のため、5種類のタンパク質をPBS中に溶解し(各タンパク質を50μg/ml)、1mlのバイアルに分取して、−20℃で保存した。ワクチン接種の直前に、バイアルを解凍後、1mlのアジュバント(Abisco 200, 375 μg/投与量, Isconova AB,スウェーデン)と混合した。経鼻投与のため、5種類のタンパク質をPBS中に溶解し(各タンパク質を150μg/ml)、2mlのバイアルに分取して、−20℃で保存した。ワクチン接種の直前に、バイアルを解凍後、2mlのアジュバント(Abisco 300, 500 μg/投与量, Isconova AB, Sweden)と混合した。プラセボ処方において、腺疫菌タンパク質は省略した。従って、皮下ワクチン接種のプラセボは、PBS及びAbisco 200, 375 μg/投与量のみを、ならびに経鼻ワクチン接種では、プラセボはPBS及びAbisco 300, 500 μg/投与量のみを含む。
【0126】
Nordostrep Septavac処方
Septavacワクチンは、以下の7つの腺疫菌タンパク質:EAG,SClC、CNE、Eq5、Eq8、IdeEおよびIdeE2からなる。皮下ワクチン接種のため、7種類のタンパク質をPBS中に溶解し(各タンパク質を50μg/ml)、1mlのバイアルに分取して、−20℃で保存した。ワクチン接種の直前に、バイアルを解凍後、1mlのアジュバント(Abisco 200, 375 μg/投与量, Isconova AB, Sweden)と混合した。経鼻投与のため、7種類のタンパク質をPBS中に溶解し(各タンパク質を150μg/ml)、2mlのバイアルに分取して、−20℃で保存した。ワクチン接種の直前に、バイアルを解凍後、2mlのアジュバント(Abisco 300, 500 μg/投与量, Isconova AB, スウェーデン)と混合した。プラセボ処方において、腺疫菌タンパク質は省略した。従って、皮下ワクチン接種のプラセボは、PBS及びAbisco 200, 375 μg/投与量のみを、ならびに経鼻ワクチン接種のプラセボは、PBS及びAbisco 300, 500 μg/投与量のみを含む。
【0127】
これらの処方において、EAGはEAG4Bの断片を含み、かつCNEは2.16と命名された断片である。
【0128】
結果の要約
本実験は 新規多成分サブユニットワクチンの腺疫に対する予防の効率で評価した。Septavacワクチンは、1回目および2回目の投与後1日後に、ポニーにおいて発熱を誘導した。しかしながら、それ以外の副作用はなく、このワクチンは大変良好な耐用性を示した。
【0129】
すべてのポニーは、分割して同一の投与量(腺疫菌株4047、1×10cfu)で抗原投与され、両方の鼻孔から投与された。7頭すべての対照ポニーが、発熱および多発性リンパ節膿瘍を発症した(100%)。ワクチン接種した1頭のポニーのみが、発熱(進行中のズーエピデミカス亜種感染によるもの)し、および1頭がリンパ節膿瘍を発症した(14%)。 統計的に、体温、検死スコア、ならびにフィブリノーゲン及び好中球レベルを測定した場合、ワクチン接種したポニーは顕著に腺疫菌を予防していた。
【0130】
全体的に、Septavacワクチンは腺疫の予防に安全かつ効果的なワクチンであった。しかしながら、本発明は、本実施例で研究されたSeptavacおよびPentavacワクチンに制限されないが、本発明の抗原/免疫原の多くの組み合わせは、腺疫の予防に用いるワクチン組成物に使用可能な候補である。
【0131】
1.処置
先の2つの研究(国際出願第2004/032957A1号および参考文献27)は、Intervaccワクチンは腺疫菌抗原投与においていくつかの予防を与えたことを示した。 2つの研究にまたがる4つすべてのワクチン群は、咽嚢蓄膿症を減じた。本実験は、一つは5種類(Pentavac)の、もう一つは7種類(Septavac)の腺疫菌タンパク質を含む、2つのNordvaccワクチンの免疫原性を比較するために設計された。
【0132】
血液及び鼻洗浄液サンプルは、ワクチンサブユニットに対するウマの免疫応答を特定するプロトコールに従って採取された。免疫原性データに基づき、与えられた予防レベルを定量するため、ワクチン接種した一群を抗原投与した。それぞれのポニーは、全抗原投与量が1×10cfuの腺疫菌株4047を、両方の鼻孔にそれぞれ5×10の2mlの培地を、噴霧することで抗原投与された。この用法は、不可抗力の宿主免疫応答を避けている間、感染度を最適化するものと信じられている。ポニーは抗原投与後三週間の期間にわたり、定期健診、毎日の健康診断、体温のモニタリング、セロコンバージョンを特定するための血清の採取、及び鼻洗浄液の採取による細菌学的分析によって、病気の臨床兆候を注意深くモニターした。すべてのポニーは、膿瘍発症後の解剖検査、または抗原投与後3週間の実験終点に達した場合、AHTが開発したスコア化システムによる疾患病状の重症度の特定に供した。 実験のポニーから回収された組織の組織病理学検査は、解剖(PM)検査では明瞭でない、腺疫菌感染の前兆を同定するために使用した。
【0133】
【表3】


【0134】
2.1ワクチン
ウマ用のNordostrepワクチン
第1群:Nordostrep Pentavac Aをワクチン接種した7頭のポニー
2ml 皮下投与(各側頭部に1mlずつ)
4ml 経鼻投与(各鼻孔に2mlずつ)
4、60、74日目
第2群:Nordostrep Septavacをワクチン接種した7頭のポニー
2ml 皮下投与(各側頭部に1mlずつ)
4ml 経鼻投与(各鼻孔に2mlずつ)
4、60、74日目
第3群:皮下投与でプラセボ2mlをワクチン接種した7頭のポニー(各側頭部に1mlずつ)
4ml 経鼻投与(各鼻孔に2mlずつ)
4、60、74日目
【0135】
ワクチンバイアルは1回目のワクチン接種前にAHTから受領し、EQ番号2305の冷凍庫に、使用するまで−20℃で保存した。プラセボ(抗原を含まない)およびアジュバントバイアルは、EQ番号44の冷蔵庫に、使用するまで4℃で保存した。
【0136】
ワクチン接種時に、AHTのA.Waller、 L.ProwseまたはC.Robinsonが規定したプロトコールどおりに、ワクチン及びアジュバントを混合した。
【0137】
2.2 細菌抗原投与
SOP/BACT/25の記載に従って、腺疫菌40407を新鮮なプレートから調製した。
【0138】
細菌は予想通り生育し、そして1:40希釈培養物を、OD600nmが0.3に到達したときに回収した。抗原投与接種材料の生育を、図6に示す。以下の結果が得られた。
【0139】
播種結果:1/105希釈 37コロニー
35コロニー
33コロニー
32コロニー
平均=100μlあたり34.25
従って、ポニー1頭あたりの実質投与量は、4×34.25×10×10 = 1.37×10cfu/投与量。
【0140】
3.動物管理
3.1供給
英国のBeedies、 Shropshireより供給された21頭のウェルシュ・マウンテンポニーを使用した。ポニーは初回ワクチン接種時において約8ヶ月齢であった。
【0141】
3.2 同定/分配
ポニーは、首のマイクロチップによって識別した。21頭のポニーは、ワクチン接種の群に無作為に割り振った(表3)。
【0142】
【表4】

【0143】
3.3飼育
抗原投与に先立ち、ポニーは,英国 Kentford州のLanwades Park、およびNewmarket州のKirtlingの草地で放牧した。これらの場所はこの種の仕事のホームオフィスとして承認されている。飲料水は適宜利用した。
【0144】
第1群および第3群のポニーは、順化を可能にするために、抗原投与の3日前にACVS(Allen Centre)に移送された。ポニーはワクチン接種群に従って2つの動物室に分離されたため、それぞれのワクチン接種群は一緒にいた。
【0145】
4.方法
4.1ワクチン接種
ワクチン接種はAHT SOP/EQU/03に従って咽頭後リンパ節の近傍への皮下投与で、またはAHT SOP/EQU/07に従い、経鼻スプレーで行った。
【0146】
4.1.2臨床的予備試験
初回ワクチン接種前、V2(ズーエピデミカス接種)前、およびV3前に、獣医師がすべてのポニーを臨床試験した。臨床的に良好な状態の健康なポニーのみが、本試験に用いられた(SOP/EQU/08)。
【0147】
4.1.3 ワクチン接種
ポニーは、表4に従いワクチン接種した。ポニー9229は進行性のズーエピデミカス亜種の感染により、2008年2月14日に発熱したため、除外した。このポニーは週末に回復し、2008年4月18日にワクチン接種した。
【0148】
【表5】

*ズーエピデミカス亜種の感染により、7日遅れ
【0149】
4.1.4 ワクチン接種前後の臨床観察
臨床観察はワクチン接種後日毎に行った。 副作用が発生した場合、必要に応じて追加の検査を行った。
【0150】
4.2 腺疫菌4047株の実験的抗原投与
4.2.1 予備臨床検査
ACVS投与の前に、獣医師が抗原投与するポニーの臨床検査をした。臨床状態が良好な健康なポニーのみが、抗原投与に供された。
【0151】
4.2.2 抗原投与
3回目のワクチン接種から2週間後(2008年5月8日)、各ポニーは、新しい腺疫菌4047培養液2mlを、AHT SOP/BACT32に従い、軟性チューブおよびスプレーノズルを用いて、両方の鼻孔に経鼻で投与された。このような抗原投与量は、全量で1×108cfuの腺疫菌4047と予想された。
【0152】
抗原投与量の投与の間、問題には直面しなかった。予備の接種材料を、実際の抗原投与量(投与量あたり1.37×10cfu)を定量するのに用いた。
【0153】
4.3 抗原投与後のモニタリング
4.3.1 臨床検査
AHT SOP/EQU/02に従い、ポニーを検査した。各ポニーを抗原投与の日、および21日後毎に、腺疫菌感染に関連する兆候(様子、鼻汁、リンパ節腫長および膿瘍、咳の兆候、つかえ感および摂食障害、ならびに眼球の兆候)の発生について臨床的に検査した。
【0154】
4.3.2 直腸温度
個体の直腸温度を、抗原投与日から投与から21日後までの間、午前9時付近に測定した。
【0155】
4.4 血液採取
血液サンプルは、AHT SOP/EQU/01および実験プロトコール予定に従って、頸静脈より採取した。血清は、AHT SOP/EQU/01に従って調製後、使用時まで−20℃以下で凍結保存した。
【0156】
4.5 血液サンプルの調製
血液サンプルの調製は、Animal Health TrustのAndrew Waller氏の責任下で、Leah Prowse氏によって行われた。
【0157】
4.6 鼻洗浄液サンプルの調製
個々の鼻洗浄液サンプルは、実験プロトコール予定に述べたように、AHT SOP/EQU/02に従って行われた。500μlの鼻洗浄液サンプルに、AHT SOP/BACT/02に従って、1mlあたりのβ‐溶血連鎖球菌数の定量を可能にする研究室に送るサンプリングの時点で500μlのTodd−Hewittブロスを、その場で加えた。残りの鼻洗浄液サンプルは遠心分離後、上清をデカントで清潔な5mlのポリプロピレンチューブに入れ、粘膜抗体の定量に使用するまで、−70℃で保存した。
【0158】
4.7 解剖検査
膿瘍、または抗原投与後21日目の終点に達した結果、すべてのポニーを安楽死させた後、Animal Health Trustによって行われる完全な解剖検査に供された。
【0159】
組織サンプルはリン酸緩衝液ホルマリン中に保存された後、通常の方法に従って微視的検査、および完全かつ正式な報告の提供に供された。 組織標本を取り出した後、結果は記録され、かつ腺疫菌感染レベルの評価に用いた。プロトコールに従ってチャコール標本を各エリアから採取した後、腺疫菌の存在を特定するため、COBA連鎖球菌選択プレートで処理した。
【0160】
腺疫の病状は表5に示す系を用いてスコア化した。
【0161】
【表6】

【0162】
4.8 病理組織検査
解剖検査時にポニーより採取した組織サンプルはホルマリンで固定後、薄片に切断され、解析のためRoyal Veterinary CollegeのKen Smith教授に送った。Smith教授は各ポニー由来のサンプルに対する報告を準備してくれ、かつ彼の所見は表6に従ってスコア化した。
【0163】
【表7】

【0164】
偏差
実験は、許可された実験プロトコールによる以下の偏差と共に、第08.C001 P号のプロトコール、およびそれに続く補正に従って行われた。
【0165】
ポニー9229は2008年2月14日から、ズーエピデミカス感染により、発熱した。 このポニーは週末には回復し、2008年4月18日にはワクチン接種した。
【0166】
45%のポニーがズーエピデミカス感染のため、V2の日付は、7日遅れた。これはV3に影響し、抗原投与も7日遅れた。
【0167】
スタッフの不足により、ポニーのサンプリングが1日遅れた。
85日目にサンプル採取しなければならなかったポニーは、実質的に86日目にサンプル採取した。
【0168】
20mlのEDTA血液を86日目に採取し、そのうち10mlを、アーカイビング用のポニーのDNA精製ができるようにした。
【0169】
Nordvaccは、抗原接種していないPentavac群(2)を、抗原応答の持続をモニターするため、6カ月の期間維持することを決定した。
【0170】
6.実験終了時におけるポニーの最終結果
第1群および第3群のすべてのポニーは、安楽死させた後、解剖検査に供した。第2群のポニーは6ヶ月間の間、抗体応答の持続をモニターするために維持した。
【0171】
7.アーカイビング
生データはLanwades Park, Kentford, Newmarket, Suffolk, CB8 7UUのAnimal Health Trustに保管された。
【0172】
8.結果の要約
8.1 第1回目および第2回目のワクチン接種後の応答
8.1.1臨床応答
すべてのポニーは、第1回目のワクチン接種において良好に応答した。 注入部位反応は、どの群でも観測されなかった。しかしながら、ワクチン接種群では、直腸温度の上昇が観測された(図7)。これは、7頭中4頭がV1の1日後に、7頭中5頭がV2の1日後に、発熱(体温>38.9℃)したことが、Septavacの群において顕著であった。対して、Pentavac群の7頭中2頭、および対照では0頭がV1後の発熱し、Pentavac群の7頭中3頭、および対照では0頭がV2後の発熱した。興味深いことに、Septavacを投与した1頭、Pentavacを投与した2頭、および対照の1頭が、V3後に発熱した。これは、ワクチン中の抗原をより効果的に中和する、V2後に誘導された高いレベルの抗体によるものであると考えられる。
【0173】
ワクチン投与相における実験群間の経鼻スコア(図8)、リンパ節スコア(図9)、またはズーエピデミカスカウント(図10)には、いくつかのポニーがこの年齢のポニーに典型的なズーエピデミカス感染をしたことを除いては、明確な違いはなかった。これは、図7で示すようなV2の初回投与日(2008年4月3日)付近での平均直腸温度の上昇をもたらす。ポニーはズーエピデミカス感染から回復することができ、すべてのポニーは2008年4月10日にワクチン接種した。
【0174】
8.2 抗原投与後の応答
両方の抗原投与の準備および処理は極めて順調に行われ、すべてのポニーが必要量の腺疫菌を、2008年5月8日に問題なく受けた。
【0175】
最も早い発熱の発症は、抗原投与後4日後における対照ポニー2078であった。さらに2頭のポニーが、5日目に発熱し、さらに6,7日目、および最後の対照ポニーが10日目に発熱した(図11)。対照ポニーの発熱平均日は4.2日であり、対照的にワクチン接種したポニーは0.7日であった。しかしながら、対照ポニーは抗原投与後8日目に健康上の問題で安楽死させた後、すべてのポニーは抗原投与後13日目に安楽死させたことに注目されたい。これは、腺疫菌感染に負けたポニーを安楽死させるため、平均体温、観測スコア、フィブリノーゲンオおよび好中球レベル、ならびに対照ポニーの観測スコアに波及効果をもたらした。全体的に、抗原投与後5日目から11日目にかけて、2つの群の平均体温に顕著な違いがあった(表11)。Septavacを投与したポニーについては、ポニー0976のみが8日目に発熱した(表7)。しかしながら、これは、このポニーにおける明らかなズーエピデミカス亜種感染の進行によるものであった。
【0176】
フィブリノーゲンレベルは、抗原投与後6、8日目および11日目に、2つの群の平均体温に顕著な違いがあった(図12)。すべての対照はフィブリノーゲンレベルの上昇を呈したが、ワクチン接種した2頭(ポニー0976および9794)のみがより高いレベルを示した。
【0177】
好中球レベルも、抗原投与後6、8日目および11日目に、2つの群の平均体温に顕著な違いがあった(図13)。すべての対照はフィブリノーゲンレベルの上昇を呈したが、ワクチン接種した1頭(ポニー9794)のみがより高いレベルを示した。
【0178】
顎下腺リンパ節腫長のレベルが対照ポニーで増大したが、統計的に顕著には見えなかかった(図14)。実験群間において、鼻洗浄液(図15)およびズーエピデミカスカウント(図16)の違いはなかった。
【0179】
解剖検査において、すべての対照は複数のリンパ節膿瘍が見られた一方で、ワクチン接種した1頭のポニー(9794)のみに、リンパ節膿瘍が見られた(表8および9)。全体的に、対照の平均病理スコアは11.7であり、それぞれ顕著なレベルの予防がSeptavacワクチンによって誘導されたことを意味する(図17)。腺疫菌はすべての対照ポニーのリンパ節から単離されたが、ワクチン接種群は2頭のみであった(0976および9794)(表10)。これらの知見は、Septavac群のポニーは1頭のみが、リンパ節の2か所において膿瘍を発症しという、組織病理検査によって強調される。
【0180】
さらに、Septavac群の鼻洗浄液中および血清サンプルのIgGレベルを、ELISAを用いて測定した結果、抗原は粘膜抗体および血清抗体を産生していた(図19および図20)。
【0181】
【表8】

【0182】
【表9】

【0183】
【表10】

【0184】
【表11】

【0185】
【表12】

【0186】
9.Pentavac A ワクチン接種実験
2回目の試験において、実験群2の7頭のウマ(3.2節、表3)はV3ワクチン接種後(表4)、放牧したのち、ELISAにおけるPentavac A製剤中の5つの抗原に対するIgG抗体力価を、血液サンプルを定期的に採取した。270日目(2008年11月6日)、Pentavac Aの追加抗原投与を4.1節に記載の手順に従って行った。 抗原投与に先立って、群はACVSに移送された後、14日間にわたり追加投与され、その後群は、4.2章に記載のように実験的に腺疫菌4047を抗原投与された後、4.3に記載のように基本的にモニターした。
【0187】
9.1 Pentavac A ワクチン接種実験の簡単な要約
Pentavac A実験は、ワクチン接種後、個々の抗原に対する顕著な抗体応答が最低6ヶ月間持続することを明らかにした(図21)。 Pentavac Aワクチンは、腺疫菌の抗原投与による感染の発生のため遅延し、そのため群中の1頭のポニーが腺疫を発症しなかった。
【0188】
さらなる応用
本発明から予想される結果は、免疫グロブリンを分解する酵素は、標的動物を感染から予防するワクチン中の抗原として使用できる。したがって、本発明の一態様においては、ヒト病原体群A連鎖球菌(GAS)に関して、細菌によるヒトの感染を予防するワクチン組成物を構築することは可能である。GAS株において、IdeEおよびIdeE2と配列相同性を共有する、細胞外免疫グロブリン分解タンパク質(Sib35、IdeSまたはMac−タンパク質と呼ばれる)についてのいくつかの報告があるため、したがって本発明を考慮することは、抗原を精製することが可能で、かつ別々にまたはA群株由来の他の精製した細胞外タンパク質(Mタンパク質もしくはM様タンパク質またはこれらの断片)と組み合わせて、ワクチン中の抗原として使用できる。本発明についての他の推測される結果は、本発明は、診断目的またはヒトを含む標的動物の受動免疫の目的において、特異的な抗血清、ポリクローナル、またはモノクローナル抗体の開発に使用できる。
【0189】
参考文献



【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの抗原を含む抗原組成物であって、
前記少なくとも1つの抗原は、腺疫菌エクイ亜種またはズーエピデミカス亜種のタンパク質またはポリペプチドの少なくとも一部であり、かつ前記タンパク質またはポリペプチドの前記少なくとも一部は、腺疫菌の少なくとも1つの抗原性エピトープまたは抗原性決定基を含み、
前記タンパク質またはポリペプチドは、配列番号13に示すEAGと命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号10に示すIdeEと命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号1に示すIdeE2と命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号3に示すEq5と命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号5に示すEq8と命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号7に示すIdeZ2と命名されたタンパク質またはポリペプチド、配列番号8に示すEqz5と命名されたタンパク質またはポリペプチド、及び配列番号9に示すEqz8と命名されたタンパク質またはポリペプチド、またはこれらの類似体もしくは断片からなる群より選択され、及び、
EAGを含む組成物が、IdeE,IdeE2,Eq5,Eq8,IdeZ2,Eqz5およびEqz5からなる群より選択されるタンパク質またはポリペプチドである、少なくとも1つのさらなる抗原を含む、抗原組成物。
【請求項2】
前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドはIdeEおよびIdeE2からなる群より選択され、かつIdeE2を含む組成物がさらに少なくとも一つの抗原を含む、請求項1の抗原性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドがEq5およびEq8からなる群より選択される、請求項1または2の抗原性組成物。
【請求項4】
前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドがEAG,Eq5およびEq8からなる群より選択され、前記組成物が、配列番号28に示すアミノ酸配列を有するCNE(またはSEC)と命名されたタンパク質またはポリペプチド、および配列番号29に示すアミノ酸配列を有するSclCと命名されたタンパク質またはポリペプチドからなる群より選択される少なくとも一つの抗原を含む、請求項1の抗原性組成物。
【請求項5】
前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドはIdeEおよびIdeE2からなる群より選択される、請求項4の抗原性組成物。
【請求項6】
前記抗原EAG,ScIC,CNE(またはSEC),Eq5,Eq8,IdeEおよびIdeE2を含み、または前記組成物が前記抗原EAG,ScIC,CNE(またはSEC),Eq5およびEq8を含む、請求項1の抗原性組成物。
【請求項7】
前記少なくとも一つのタンパク質がEAG、Eq8,およびIdeE2からなる群より選択され、前記組成物はIdeE, Eq5,IdeZ2,Eqz5およびEqz8からなる群より選択されるさらに少なくとも一つの抗原を含む、請求項1の抗原性組成物。
【請求項8】
少なくとも一つの抗原が組換え的に生産された、請求項1〜7のいずれか一項の抗原性組成物。
【請求項9】
少なくとも一つの抗原が単離されたまたは精製された抗原である、請求項1〜8のいずれか一項の抗原性組成物。
【請求項10】
少なくとも一つの組替えベクター、およびそれに挿入された、前記少なくとも一つのタンパク質またはポリペプチドをコードする少なくとも一つのポリヌクレオチドを含み、かつ 前記ベクターは、腺疫菌感染に感受性の非ヒト哺乳動物の生体内で前記ポリペプチドを発現できる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗原性組成物。
【請求項11】
前記ベクターが、プラスミドまたはウイルス性ベクターの発現ベクターであり、かつ前記ポリヌクレオチドが配列番号12および14〜21に示すヌクレオチド配列を有する、請求項10に記載の抗原性組成物。
【請求項12】
免疫原性組成物である、請求項1〜11のいずれか一項の抗原性組成物。
【請求項13】
免疫化成分として請求項1〜12のいずれか一項の抗原性組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、非ヒト哺乳動物の腺疫菌感染を予防するワクチン組成物。
【請求項14】
アジュバントをさらに含む、請求項13のワクチン組成物。
【請求項15】
感受性哺乳動物、好ましくはウマに対する腺疫菌エクイ亜種が引き起こす腺疫を予防するワクチンである、請求項13〜14のいずれか一項のワクチン組成物。
【請求項16】
生理的に投与可能な形態で提供され、かつ好ましくは皮下または経鼻接種で投与可能な、請求項13のワクチン組成物。
【請求項17】
腺疫菌感染に感受性な哺乳動物、好ましくはウマにおいて、腺疫菌抗原に向かう血清、粘膜および/または気管支洗浄抗体応答を刺激する、請求項15または16のワクチン組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか一項の抗原性組成物の抗原または免疫原を生産する方法であって、
(a)前記抗原をコードするDNA断片を提供するステップと、そして前記断片を発現ベクターに導入するステップと、
(b)前記DNA断片を含む前記ベクターを適合する宿主細胞に導入するステップと、
(c)ステップ(b)で提供された前記宿主細胞を 前記DNA断片にコードされる前記生産物の発現に必要な条件下で培養するステップと、
(d)前記培養した宿主細胞より発現した生産物を単離するステップ
とを含み、かつ、任意で、
(e)ステップ(d)で単離した生産物を、アフィニティークロマトグラフィーまたは当技術分野で既知の他のクロマトグラム法で精製するステップ
とを含む、方法。
【請求項19】
前記ワクチン組成物が、請求項1〜12のいずれか一項の抗原性または免疫原性組成物を免疫化成分として含み、前記方法が前記抗原性または免疫原性組成物と薬学的に許容される担体とを混合するステップを含む、請求項13〜17のいずれか一項のワクチン組成物の調製方法。
【請求項20】
ウマにおけるエクイ亜種が原因の腺疫を含む腺疫菌感染を予防するワクチンを調製するための、請求項1〜12のいずれか一項の抗原性または免疫原性組成物の使用。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれか一項の抗原性調製物を動物宿主に投与して、前記動物宿主において抗体を生産するステップと、
前記動物宿主において生産された前記抗体を含む抗血清を回収するステップ
とを含む、抗血清の生産方法。
【請求項22】
非ヒト哺乳動物、好ましくはウマにおける腺疫菌感染の予防的治療または治療方法であって、前記哺乳動物に、免疫学的に効果のある量の、請求項13〜17のいずれか一項のワクチン組成物、または請求項21に従って生産された抗血清を投与するステップを含む、方法。
【請求項23】
ウマを腺疫菌感染から予防する方法であって、皮下または経鼻で、請求項13〜17のいずれか一項のワクチン組成物をウマに接種して、前記ウマにおいて腺疫菌に対する免疫応答を誘導するステップを含む、方法。
【請求項24】
鼻咽頭粘膜におけるIgGおよび/またはIgAおよび/またはIgM抗体を形成する免疫応答が前記ウマにおいて誘導された、請求項23の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの、好ましくは少なくとも2つの、請求項1〜12のいずれか一項の組成物のタンパク質またはポリペプチドに特異的な抗体を含む、抗体調製物であって、前記抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであって、または前記調整物は前記抗体の断片を含む、抗体調製物。
【請求項26】
腺疫に対して予防的または治療的に使用され、かつ腺疫菌感染に感受性のある、または腺疫菌に感染した非ヒト哺乳動物に投与した場合、受動的免疫を提供する、請求項25の抗体調製物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−506433(P2011−506433A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537898(P2010−537898)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/SE2008/051445
【国際公開番号】WO2009/075646
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510162399)インターバック アーベー (1)
【氏名又は名称原語表記】Intervacc AB
【Fターム(参考)】