説明

改変A型DNAポリメラーゼ

本発明は、組換えDNA技術における適用に、より良好に適し得る、改良されたDNAポリメラーゼ、特に、A型DNAポリメラーゼを提供する。とりわけ、本発明は、産業用途または研究用途において使用される条件下で有利な表現型を与える変異を選択するために設計された定向進化実験から導かれる、改変DNAポリメラーゼを提供する。一部の実施形態では、本発明の改変A型DNAポリメラーゼは、融合ポリメラーゼから改変されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年11月3日出願の米国仮特許出願第61/110,877号に対して優先権を主張し、この全体の開示が本明細書中で参照として援用される。
【背景技術】
【0002】
DNAポリメラーゼは、一本鎖DNAを鋳型として使用して相補的なDNA鎖を合成する酵素のファミリーである。特に、DNAポリメラーゼは、新たに形成する鎖の3’末端に遊離のヌクレオチドを付加し、その結果、新しい鎖を5’−3’の方向に延長させることができる。ほとんどのDNAポリメラーゼは、重合活性およびエキソヌクレアーゼ活性(exonucleolytic activity)(例えば、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性または5’→3’エキソヌクレアーゼ活性)の両方を持つ多機能性タンパク質である。
【0003】
DNAポリメラーゼは、他の天然酵素と同じように、何百万年の間に、それらの天然の細胞環境において効率的になるように進化してきた。それらの多くは、その環境において働くためにほぼ完全に適合されている。そのような環境では、タンパク質が進化することができる道筋は、いくつもの必要条件によって制約されている;タンパク質は他の細胞成分と相関する必要があり、細胞質において機能する必要があり(すなわち、特定のpH、イオン強度、特定の化合物の存在下など)、全体としての親生物体の適応度を損なう致命的または不利益な副作用を引き起こすことができない。
【0004】
DNAポリメラーゼをそれらの天然環境から取り出し、産業用途または研究用途において使用する場合、その酵素が作用する環境および条件は、酵素が進化した環境および条件とは必然的に非常に異なる。タンパク質の進化の方向を制限した制約の多くが消える可能性がある。したがって、産業用途または研究用途において使用するためのDNAポリメラーゼを改良することに、多大な可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、組換えDNA技術における適用により良好に適し得る、改良されたDNAポリメラーゼ、特に、A型DNAポリメラーゼを提供する。とりわけ、本発明は、産業用途または研究用途において使用される条件下で有利な表現型を与える変異を選択するために設計された定向進化実験から導かれる、改変DNAポリメラーゼを提供する。
【0006】
したがって、一態様では、本発明は、対応する親酵素または野生型酵素と比較して、表2において特定されている位置から選択される1つまたは複数の位置に対応する1つまたは複数のアミノ酸の変化(例えば、1つまたは複数の置換、欠失または挿入)を含有する改変A型DNAポリメラーゼを提供する。一部の実施形態では、そのようなアミノ酸の変化によって、酵素活性、忠実度、プロセシビティー、延長速度、安定性、プライマー二量体の形成、塩抵抗性、溶解性、発現効率、フォールディングの頑強性、熱安定性、重合活性、濃度に対する頑強性、不純物に対する抵抗性、鎖の置換活性、ヌクレオチド選択性、ヌクレアーゼ活性の変化、核酸挿入色素に対する抵抗性ならびに/またはDNAの重合プロセスに関わる他の特質および特性が変化する(例えば、増加または減少する)。
【0007】
一部の実施形態では、本発明の改変A型DNAポリメラーゼは、TaqポリメラーゼのP6、K53、K56、E57、K171、T203、E209、D238、L294、V310、G364、E400、A414、E507、S515、E742またはE797に対応する1つまたは複数の位置に、アミノ酸の変化を含有する。例えば、一部の実施形態では、1つまたは複数の位置は、TaqポリメラーゼのE507に対応する位置を含む。
【0008】
一部の実施形態では、アミノ酸の変化は、アミノ酸の置換である。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の置換は、表2から選択されるアミノ酸の置換に対応する。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の置換は、P6S、K53N、K56Q、E57D、K171R、T203I、E209G、E209K、D238N、L294P、V310A、G364D、G364S、E400K、A414T、E507K、S515G、E742KまたはE797G、およびそれらの組合せからなる群から選択される置換に対応する。
【0009】
一部の実施形態では、DNAポリメラーゼは、天然に存在するポリメラーゼ、例えば、Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus caldophilus、Thermus filiformis、Thermus flavus、Thermotoga maritima、Bacillus strearothermophilusまたはBacillus caldotenaxから単離された天然に存在するポリメラーゼから改変されている。一部の実施形態では、本発明の改変A型DNAポリメラーゼは、天然に存在するポリメラーゼの切断型、例えば、5’→3’エキソヌクレアーゼドメインの部分の欠失を含有するKlenTaq(Barnes W. M.(1992年)、Gene、112巻:29〜35頁;およびLawyer F.C.ら(1993年)、PCRMethods and Applications、2巻:275〜287頁を参照されたい)から改変されている。一部の実施形態では、本発明の改変A型DNAポリメラーゼは、キメラDNAポリメラーゼから改変されている。
【0010】
一部の実施形態では、本発明の改変A型DNAポリメラーゼは、融合ポリメラーゼから改変されている。
【0011】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の改変A型DNAポリメラーゼを含有するキットを特徴とする。さらに、本発明は、本明細書に記載の改変A型DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列ならびに本発明によるヌクレオチド配列を含有するベクターおよび/または細胞を提供する。
【0012】
別の関連する態様では、本発明は、野生型酵素と比較して、表2において特定されている位置から選択される1つまたは複数の位置に、1つまたは複数のアミノ酸の変化(例えば、1つまたは複数の置換、欠失または挿入)を含有する改変Taq DNAポリメラーゼを特徴とする。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の変化によって、酵素活性、プロセシビティー、延長速度、ヌクレアーゼ活性の変化、塩に対する抵抗性、核酸挿入色素または他のPCR添加剤に対する抵抗性が増加する。
【0013】
一部の実施形態では、改変Taq DNAポリメラーゼは、P6、K53、K56、E57、K171、T203、E209、D238、L294、V310、G364、E400、A414、E507、S515、E742またはE797に対応する1つまたは複数の位置に、アミノ酸の変化を含有する。
【0014】
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の変化は置換である。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の置換は、表2から選択される。一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸の置換は、P6S、K53N、K56Q、E57D、K171R、T203I、E209G、E209K、D238N、L294P、V310A、G364D、G364S、E400K、A414T、E507K、S515G、E742KまたはE797G、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
他の関連する態様では、本発明は、配列番号2(A3E)、配列番号3(G9S)、配列番号4(D5S)、配列番号5(D2)、配列番号6(A5E)、配列番号7(B6S)、配列番号8(E2S)、配列番号9(A3)、配列番号10(H10)、配列番号11(H1S)、配列番号12(F9E)、配列番号13(A5S)、配列番号14(C10E)、配列番号15(F5S)、配列番号16(E7S)、配列番号17(G6S)、配列番号18(E1E)、配列番号19(C7)、配列番号20(E12)、配列番号21(D9)、配列番号22(F10)、配列番号23(H7)、配列番号24(A5)およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含有する改変Taq DNAポリメラーゼを提供する。
【0016】
本発明は、本明細書に記載の改変Taq DNAポリメラーゼを含有するキットおよびそれらの使用も特徴とする。さらに、本発明は、本明細書に記載の改変Taq DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列ならびにそのヌクレオチド配列を含むベクターおよび/または細胞を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、本明細書に記載の改変A型DNAポリメラーゼ(例えば、Taq DNAポリメラーゼ)を使用してDNA断片を増幅する工程を含む方法を提供する。
【0018】
一部の実施形態では、本発明に従って増幅されたDNA断片は、5kbよりも長い(例えば、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、12kbより長いかまたはそれよりも長い)。
【0019】
図面は、例示する目的のためのものにすぎず、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1−1】図1は、好熱性細菌種からの、天然に存在するA型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。定向進化実験によって見いだされた代表的なアミノ酸の変化を各アラインメントの上部に示している。
【図1−2】図1は、好熱性細菌種からの、天然に存在するA型DNAポリメラーゼのアミノ酸配列のアラインメントを示す。定向進化実験によって見いだされた代表的なアミノ酸の変化を各アラインメントの上部に示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
アミノ酸:本明細書で使用する、「アミノ酸」という用語は、その広義では、ポリペプチド鎖に取り込むことができる任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造HN−C(H)(R)−COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は天然に存在するアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸はD−アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸はL−アミノ酸である。「標準的なアミノ酸」は、天然に存在するペプチドに一般に見られる20種の標準的なL−アミノ酸のいずれかを指す。「非標準的なアミノ酸」は、それが合成によって調製されるものであるか天然源から得られるものであるかに関わらず、標準的なアミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書で使用する、「合成アミノ酸」は、塩、アミノ酸誘導体(アミドなど)、および/またはアミノ酸置換を含むがこれらに限定されない、化学修飾されたアミノ酸を包含する。ペプチド中のカルボキシ末端のアミノ酸および/またはアミノ末端のアミノ酸を含めたアミノ酸は、それらの活性に悪影響を及ぼすことなく、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または他の化学物質での置換によって修飾することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指し得る。用語が遊離アミノ酸を指しているか、ペプチドの残基を指しているかは、この用語が使用されている文脈から明らかになる。本明細書において、全てのアミノ酸残基配列は、左右の方向づけが、アミノ末端からカルボキシ末端への従来の方向になっている式で表されていることに注意されたい。
【0022】
塩基対(bp):本明細書で使用する、塩基対は、二本鎖DNA分子におけるアデニン(A)とチミン(T)の連携、またはシトシン(C)とグアニン(G)の連携を指す。
【0023】
キメラポリメラーゼ:本明細書で使用する、「キメラポリメラーゼ」(「キメラ」とも称される)という用語は、少なくとも第1のDNAポリメラーゼに由来する第1のアミノ酸配列と第2のDNAポリメラーゼに由来する第2のアミノ酸配列とを含有する任意の組換えポリメラーゼを指す。一般には、第1のDNAポリメラーゼおよび第2のDNAポリメラーゼは、少なくとも1つの明確な機能的特性(例えば、プロセシビティー、延長速度、忠実度)の特徴を有する。本明細書で使用する、対象のDNAポリメラーゼに由来する配列は、対象のDNAポリメラーゼに見られる任意の配列、または対象のDNAポリメラーゼに見られるアミノ酸配列と少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の同一性を有する任意の配列を指す。本発明による「キメラポリメラーゼ」は、新規の機能性タンパク質を形成するために連結された、関連するポリメラーゼまたは類似のポリメラーゼ(例えば、類似の配列および/または構造を共有しているタンパク質)からの2つ以上のアミノ酸配列を含有し得る。本発明による「キメラポリメラーゼ」は、新規の機能性タンパク質を形成するために連結された、関連のないポリメラーゼからの2つ以上のアミノ酸配列を含有し得る。例えば、本発明のキメラポリメラーゼは、異なる種類の生物体によって発現されたタンパク質構造の「種間の」または「遺伝子間の」融合物であり得る。
【0024】
相補的な:本明細書で使用する、「相補的な」という用語は、塩基対合を通した、2つのポリヌクレオチド鎖の領域間、または2つのヌクレオチド間の配列相補性の広範な概念を指す。アデニンヌクレオチドがチミンまたはウラシルであるヌクレオチドと特異的な水素結合(「塩基対合」)を形成できることは公知である。同様に、シトシンヌクレオチドがグアニンヌクレオチドと塩基対合できることは公知である。
【0025】
DNA結合親和性:本明細書で使用する、「DNA結合親和性」という用語は、一般には、DNA核酸に結合することにおけるDNAポリメラーゼの活性を指す。一部の実施形態では、DNA結合活性は、2バンドシフトアッセイにおいて測定することができる。例えば、一部の実施形態では(Guagliardiら、(1997年)、J. Mol. Biol.、267巻:841〜848頁のアッセイに基づいて)、二本鎖核酸(S.solfataricusのlacS遺伝子からの452−bpのHindIII−EcoRV断片)を、少なくとも約2.5×10cpm/μg(または少なくとも約4000cpm/fmol)の比活性まで、標準的な方法を使用して32Pで標識する。例えば、Sambrookら、(2001年)、MolecularCloning:A Laboratory Manual(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)の9.63〜9.75(核酸の末端標識について記載している)を参照されたい。反応混合物を、少なくとも約0.5μgのポリペプチドを結合バッファー(50mMのリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)、10%のグリセロール、25mMのKCl、25mMのMgCl)約10μl中に含有させて調製する。反応混合物を10分間、37℃まで加熱する。標識された二本鎖核酸約1×10〜5×10cpm(または約0.5〜2ng)を反応混合物に加え、さらに10分間インキュベートする。反応混合物を、0.5×Tris−ホウ酸バッファー中ネイティブポリアクリルアミドゲルにローディングする。反応混合物を、室温で電気泳動に供する。ゲルを乾燥させ、標準的な方法を使用したオートラジオグラフィーに供する。標識された二本鎖核酸の移動度の任意の検出可能な低下により、ポリペプチドと二本鎖核酸の間に結合性複合体が形成されたことが示される。そのような核酸結合活性は、最初の反応混合物における放射活性の総量と比較して結合性複合体における放射活性の量を測定するための標準的なデンシトメトリー法を使用して定量化することができる。
【0026】
延長速度:本明細書で使用する、「延長速度」という用語は、DNAポリメラーゼがポリマー鎖を伸長する平均速度を指す。本出願で使用する、延長速度が高いとは、延長速度が50nt/sよりも高い(例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140nt/sよりも高い)ことを指す。本明細書で使用する、「延長速度」と「スピード」という用語は、互換的に使用される。
【0027】
酵素活性:本明細書で使用する、「酵素活性」という用語は、DNAポリメラーゼの特異性および効率を指す。DNAポリメラーゼの酵素活性は、「ポリメラーゼ活性」とも称され、一般には、ポリヌクレオチドの鋳型指向性合成を触媒することにおけるDNAポリメラーゼの活性を指す。ポリメラーゼの酵素活性は、当技術分野で公知の種々の技法および方法を用いて測定することができる。例えば、ポリメラーゼの段階希釈物を、希釈バッファー(例えば、20mMのTris.Cl、pH8.0、50mMのKCl、0.5%のNP40、および0.5%のTween−20)中で調製することができる。各希釈物について、5μlを取り出し、25mMのTAPS(pH9.25)、50mMのKCl、2mMのMgCl、0.2mMのdATP、0.2mMのdGTP、0.2mMのdTTP、0.1mMのdCTP、12.5μgの活性化DNA、100μMの[α−32P]dCTP(0.05μCi/nmol)および滅菌脱イオン水を含有する反応混合物45μlに加えることができる。反応混合物を37℃(または、熱安定性のDNAポリメラーゼに対しては74℃)で10分間インキュベートし、次いで反応物を即座に4℃まで冷却し、氷冷の60mMのEDTA10μlを加えることによって停止させることができる。各反応混合物から一定分量25μlを取り出すことができる。取り込まれなかった放射性標識dCTPを、ゲル濾過(Centri−Sep、Princeton Separations、Adelphia、N.J.)によって各一定分量から取り出すことができる。カラム溶出液を、シンチレーション液(1ml)と混合することができる。カラム溶出液における放射活性を、シンチレーションカウンターを用いて定量化してポリメラーゼによって合成された産物の量を決定する。ポリメラーゼ活性の1単位は、30分間に10nモルの産物を合成するために必要なポリメラーゼの量として定義することができる(Lawyerら(1989年)、J. Biol. Chem.、264巻:6427〜647頁)。ポリメラーゼ活性を測定する他の方法は、当技術分野で公知である(例えば、Sambrookら(2001年)、MolecularCloning:A Laboratory Manual(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY)を参照されたい)。
【0028】
忠実度:本明細書で使用する、「忠実度」という用語は、鋳型依存性DNAポリメラーゼによるDNA重合の正確度を指す。DNAポリメラーゼの忠実度は、一般には、エラー率(不正確なヌクレオチド、すなわち、鋳型依存的な方式で取り込まれないヌクレオチドが取り込まれる頻度)によって測定する。DNA重合の正確度または忠実度は、DNAポリメラーゼのポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の両方によって維持される。「忠実度が高い」という用語は、エラー率が、4.45×10−6変異/nt/倍加より低い(例えば、4.0×10−6、3.5×10−6、3.0×10−6、2.5×10−6、2.0×10−6、1.5×10−6、1.0×10−6、0.5×10−6変異/nt/倍加より低い)ことを指す。DNAポリメラーゼの忠実度またはエラー率は、当技術分野で公知のアッセイを使用して測定することができる。例えば、DNAポリメラーゼのエラー率は、Cline、J.ら(1996年)、NAR、24巻:3546〜3551頁に記載のlacI PCR忠実度アッセイを使用して試験することができる。簡単に述べると、lacIOlacZα標的遺伝子をコードする1.9kbの断片を、2.5UのDNAポリメラーゼ(すなわち、72℃、30分間で全dNTP25nモルを取り込むために必要な酵素の量)を適切なPCRバッファー中で使用して、pPRIAZプラスミドDNAから増幅する。次いで、lacIを含有するPCR産物をラムダGT10アームにクローニングし、lacI変異体のパーセンテージ(MF、変異の頻度)を、記載の通り(Lundberg,K.S.、Shoemaker, D. D.、Adams, M. W. W.、Short, J. M.、Sorge, J. A.、およびMathur, E. J.(1991年)、Gene、180巻:1〜8頁)着色スクリーニングアッセイにおいて決定する。エラー率は、複製当たり1bp当たりの変異の頻度(MF/bp/d)として表され、ここでbpはlacI遺伝子配列(349)において検出可能な部位の数であり、dは、有効な標的倍加の数である。上記と同様に、lacIOlacZα標的遺伝子を含有する任意のプラスミドを、PCR用の鋳型として使用することができる。PCR産物は、青色/白色着色スクリーニングを可能にする、ラムダGTとは異なるベクター(例えば、プラスミド)にクローニングすることができる。
【0029】
融合DNAポリメラーゼ:本明細書で使用する、「融合DNAポリメラーゼ」という用語は、所望の活性(例えば、DNA結合活性、鋳型−プライマー複合体安定化活性、dUTP加水分解活性)を有する1つまたは複数のタンパク質ドメインと組み合わされた(例えば、共有結合的または非共有結合的に)任意のDNAポリメラーゼを指す。一部の実施形態では、1つまたは複数のタンパク質ドメインは、非ポリメラーゼタンパク質に由来する。一般には、融合DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼの、ある特定の機能的特性(例えば、プロセシビティー、延長速度、忠実度、塩抵抗性、など)を改良するために生成される。
【0030】
改変DNAポリメラーゼ:本明細書で使用する、「改変DNAポリメラーゼ」という用語は、別の(すなわち、親)DNAポリメラーゼから生じ、親DNAポリメラーゼと比較して1つまたは複数のアミノ酸の変化(例えば、アミノ酸の置換、欠失または挿入)を含有するDNAポリメラーゼを指す。一部の実施形態では、本発明の改変DNAポリメラーゼは、天然に存在する、または野生型のDNAポリメラーゼから生じる、またはそれから改変されている。一部の実施形態では、本発明の改変DNAポリメラーゼは、これらに限定されないが、キメラDNAポリメラーゼ、融合DNAポリメラーゼまたは別の改変DNAポリメラーゼを含めた組換えDNAポリメラーゼまたは設計製作された(engineered)DNAポリメラーゼから生じる、またはそれから改変されている。一般には、改変DNAポリメラーゼは、親ポリメラーゼと比較して少なくとも1つの変更された表現型を有する。
【0031】
変異:本明細書で使用する、「変異」という用語は、これらに限定されないが、置換、挿入、欠失(切断を含む)を含めた、親配列に導入された変更を指す。変異の結果として、親配列によってコードされるタンパク質には見られない新しい特性、特質、機能、表現型または形質の創出が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書では、「変異」という用語は、「変化(alteration)」と互換的に使用される。
【0032】
変異体:本明細書で使用する、「変異体」という用語は、親タンパク質と比較したとき、変化した特性を示す改変タンパク質を指す。
【0033】
連結された:本明細書で使用する、「連結された」は、これらに限定されないが、介在ドメインを伴う組換え融合または介在ドメインを伴わない組換え融合、媒介性融合、非共有結合的会合、およびジスルフィド結合を含めた共有結合、水素結合、静電結合、および高次構造の結合(conformational bonding)を含めた、ポリペプチドドメインを機能的に結合するための当技術分野で公知の任意の方法を指す。
【0034】
ヌクレオチド:本明細書で使用する、DNAまたはRNAの単量体ユニットは、糖部分(ペントース)、リン酸塩および窒素複素環塩基からなる。塩基はグリコシドの炭素(ペントースの1’炭素)を介して糖部分に連結されていて、その塩基と糖の組合せがヌクレオシドである。ヌクレオシドが、ペントースの3’位または5’位に結合したリン酸基を含有する場合、それはヌクレオチドと称される。作動可能に連結されたヌクレオチドの配列は、本明細書において、一般には「塩基配列」または「ヌクレオチド配列」と称され、本明細書において、左から右への方向づけが、従来の5’末端から3’末端への方向になっている式によって表されている。
【0035】
核酸挿入色素:本明細書で使用する、「核酸挿入色素」という用語は、二重らせんの塩基対の間に挿入することによって、可逆的な、非共有結合的な様式で核酸と結合し、それによって核酸の存在および量を示す任意の分子を指す。一般に、核酸挿入色素は、平面の芳香族の環状発色団分子である。一部の実施形態では、挿入色素として蛍光色素が挙げられる。多数の挿入色素が当技術分野で公知である。いくつかの非限定的な例として、PICO GREEN(P−7581、Molecular Probes)、EB(E−8751、Sigma)、ヨウ化プロピジウム(P−4170、Sigma)、アクリジンオレンジ(A−6014、Sigma)、7−アミノアクチノマイシンD(A−1310、Molecular Probes)、シアニン色素(例えば、TOTO、YOYO、BOBOおよびPOPO)、SYTO、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR DX、OliGreen、CyQuant GR、SYTOX Green、SYTO9、SYTO10、SYTO17、SYBR14、FUN−1、DEAD Red、ヨウ化ヘキシジウム、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモ二量体、9−アミノ−6−クロロ−2−メトキシアクリジン、DAPI、DIPI、インドール色素、イミダゾール色素、アクチノマイシンD、ヒドロキシスチルバミジン、およびLDS 751(米国特許第6,210,885号)、BOXTO、LC Green、Evagreen、Beboが挙げられる。
【0036】
オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド:本明細書で使用する、「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上、好ましくは3つを超えるデオキシリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドを含む分子と定義される。その正確なサイズは多くの因子に依存し、その因子は同様にオリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、合成によってまたはクローニングによって導くことができる。本明細書で使用する、「ポリヌクレオチド」という用語は、鎖内で共有結合したヌクレオチド単量体で構成されたポリマー分子を指す。DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)は、ポリヌクレオチドの例である。
【0037】
ポリメラーゼ:本明細書で使用する、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を指す(すなわち、ポリメラーゼ活性)。一般に、酵素は、ポリヌクレオチドの鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端において合成を開始し、鋳型鎖の5’末端へ進行する。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシヌクレオチドの重合を触媒する。
【0038】
プライマー:本明細書で使用する、「プライマー」という用語は、天然に存在しているものであろうと、合成によって作出されたものであろうと、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に置かれたとき、例えば、4種の異なるヌクレオチド三リン酸塩および熱安定性酵素が、適切な温度において適切なバッファー(「バッファー」は、pH、イオン強度、補助因子などを含む)中に存在するときに、核酸合成の開始点の役割を果たすことができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅効率を最大にするために一本鎖であることが好ましいが、代替として二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーは、まず、その鎖を分離するために処理され、その後、伸長産物を調製するために使用される。プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドであることが好ましい。プライマーは、熱安定性酵素の存在下で伸長産物の合成を開始する(prime)ために十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの供給源および方法の使用を含めた多くの因子に依存する。例えば、標的配列の複雑さに依存して、オリゴヌクレオチドプライマーは一般には15〜25ヌクレオチドを含有するが、それよりも多いまたは少ないヌクレオチドを含有し得る。短いプライマー分子は、一般に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するために、低温度を必要とする。
【0039】
プロセシビティー:本明細書で使用する、「プロセシビティー」は、鋳型に付着してとどまり、複数の修飾反応を行う、ポリメラーゼの能力を指す。「修飾反応」として、重合、およびエキソヌクレアーゼ性の切断(exonucleolytic cleavage)が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、「プロセシビティー」は、成長しているDNA鎖からの酵素の解離を間に起こすことなく一連の重合工程を行う、DNAポリメラーゼの能力を指す。一般には、DNAポリメラーゼの「プロセシビティー」は、成長しているDNA鎖からのDNAポリメラーゼの解離が間に起こることなく重合または修飾されるヌクレオチドの長さによって評価される(例えば20nt、300nt、0.5〜1kb以上)。「プロセシビティー」は、ポリメラーゼの性質、DNA鋳型の配列、および反応条件、例えば、塩濃度、温度または特定のタンパク質の存在に依存し得る。本明細書で使用する、「プロセシビティーが高いこと」という用語は、プロセシビティーが、鋳型との会合/解離当たり、20ntよりも高いこと(例えば、40nt、60nt、80nt、100nt、120nt、140nt、160nt、180nt、200nt、220nt、240nt、260nt、280nt、300nt、320nt、340nt、360nt、380nt、400ntより高いかまたはそれを超えて高いこと)を指す。プロセシビティーは、本明細書およびWO01/92501A1において定義された方法に従って測定することができる。
【0040】
合成:本明細書で使用する、「合成」という用語は、ポリヌクレオチドの新しい鎖を作製するため、または現存するポリヌクレオチド(すなわちDNAまたはRNA)を鋳型依存的な方式で延長するための任意のin vitroにおける方法を指す。本発明による、合成は、ポリメラーゼを使用してポリヌクレオチド鋳型配列のコピー数を増加させる、増幅を含む。ポリヌクレオチドの合成(例えば、増幅)によりヌクレオチドがポリヌクレオチド(すなわちプライマー)に取り込まれ、それによってポリヌクレオチド鋳型に相補的な新しいポリヌクレオチド分子が形成される。形成されたポリヌクレオチド分子およびその鋳型は、さらなるポリヌクレオチド分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書で使用する「DNA合成」は、PCR、ポリヌクレオチドの標識(すなわちプローブおよびオリゴヌクレオチドプライマーに対して)、ポリヌクレオチドの配列決定を含むが、これらに限定されない。
【0041】
鋳型DNA分子:本明細書で使用する、「鋳型DNA分子」という用語は、例えば、プライマー伸長反応において、DNAポリメラーゼによって、それから相補的な核酸鎖が合成される、核酸の鎖を指す。
【0042】
鋳型依存的な方式:本明細書で使用する、「鋳型依存的な方式」という用語は、プライマー分子の鋳型依存的な伸長(例えば、DNAポリメラーゼによるDNA合成)を含むプロセスを指す。「鋳型依存的な方式」という用語は、一般には、新たに合成されるポリヌクレオチド鎖の配列が、相補的な塩基対合の周知の規則によって規定される、RNAまたはDNAのポリヌクレオチドの合成を指す(例えば、Watson, J. D.ら、Molecular Biology of the Gene、第4版、W. A. Benjamin,Inc.、Menlo Park、Calif.、(1987年)を参照されたい)。
【0043】
熱安定性酵素:本明細書で使用する、「熱安定性酵素」という用語は、熱に対して安定であり(熱抵抗性とも称する)、ヌクレオチドの重合を触媒して(容易にして)ポリヌクレオチド鋳型配列に相補的なプライマー伸長産物を形成する酵素を指す。一般には、熱安定性の、安定なポリメラーゼは、PCRサイクルの間、二本鎖核酸を高温(例えば、約95℃)に曝露させることによって変性させる熱サイクルプロセスにおいて好まれる。PCR増幅反応に対して有効な本明細書に記載の熱安定性酵素は、少なくとも1つの基準を満たす、すなわち、酵素は、二本鎖核酸の変性をもたらすために必要な時間、高温度に供したとき、不可逆的に変性(不活化)しない。本明細書の目的での不可逆的な変性は、酵素活性の恒久的かつ完全な損失を指す。変性に必要な加熱条件は、例えば、バッファーの塩濃度および変性される核酸の長さおよびヌクレオチド組成に依存するが、一般には、主に温度および核酸の長さに依存する時間、一般には約0.5〜10分間、約90℃〜約96℃の範囲である。バッファーの塩濃度および/または核酸のGC組成が上昇するにつれて、より高い温度が許容され得る。一部の実施形態では、熱安定性酵素は、約90℃〜100℃において不可逆的に変性しない。一般には、本発明に適した熱安定性酵素は、それを下回る温度でプライマーの鋳型へのハイブリダイゼーションが促進される温度である約40℃よりも高い、作用の最適温度を有するが、(1)マグネシウム濃度および塩濃度および(2)プライマーの組成および長さに依存し、ハイブリダイゼーションはより高い温度(例えば、45℃〜70℃)で起こり得る。酵素に対して最適な温度が高くなるにつれて、プライマー指向性伸長プロセスの特異性および/または選択性が増す。しかし、40℃未満(例えば、37℃)で活性な酵素も、熱安定性であれば本発明の範囲である。一部の実施形態では、最適温度は、約50℃〜90℃にわたる(例えば、60℃〜80℃)。
【0044】
野生型:本明細書で使用する、「野生型」という用語は、天然に存在する供給源から単離されたときの、遺伝子または遺伝子産物の特性を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。
【0045】
発明の詳細な説明
本発明は、とりわけ、組換えDNA技術における適用に、より良好に適した酵素を選択するために設計された定向進化実験において同定された変異に基づくアミノ酸の変化を含有する、改変DNAポリメラーゼ(例えば、A型DNAポリメラーゼ)を提供する。
【0046】
実施例のセクションに記載の通り、本発明者らは、実際の産業用途または研究用途において酵素が通常使用される、または使用されることが予想される、典型的な環境および条件、または典型的とはいえない環境および条件を模倣することによって、定向DNAポリメラーゼ進化実験の開発に成功した。
【0047】
実施例において考察しているように、選択プロセスの間に種々の変異を観察した(表2を参照されたい)。多くの変異は、これらに限定されないが、発現効率、溶解性およびフォールディングの頑強性、熱安定性、重合活性、プロセシビティー、スピード(延長速度)、濃度に対する頑強性、不純物に対する抵抗性、化学添加剤に対する抵抗性、忠実度、プライマー二量体の回避、鎖の置換活性、ヌクレアーゼ活性の変化、ヌクレオチド選択性、ならびにDNAの重合プロセスに関わる他の特質および特性を含めた、酵素の特性に関連する利点を与える。
【0048】
本明細書において同定された変異は、DNAポリメラーゼを組換えDNAの技術における適用に、より良好に適するようにすることができる種々の表現型を与えることを意図する。例えば、本発明に従って同定された変異は、本明細書に記載の選択的な利点に関連する酵素表現型を与え得る。実際に、本発明者らは、良好に発現しており、溶解性がより高く、より高い活性、忠実度、プロセシビティーおよび/またはスピードを示し、広範囲の濃度にわたって活性であり、塩、PCR添加剤(例えば、PCR増強剤)および/または阻害剤に対して抵抗性であり、さまざまな濃度で働き、より高い忠実度および即座に測定することができない可能性のある他の表現型を有する、変異体ポリメラーゼを同定した、または同定することを予測している。これらの表現型の多くは、DNAとポリメラーゼの相関の仕方に依存し得るので、本発明に従って同定された変異の多くにおいて、DNAポリメラーゼの結合特性に影響を及ぼし得ることが予期される。
【0049】
さらに、本発明に従って同定された変異において、本明細書に記載の選択的な利点に直接関連しない酵素表現型を与え得ることが意図される。例えば、一部の表現型は、利点を与えない可能性があるが、単に有利な変異の副作用(side effect)である。さらに、一部の変異は、不利益であるとみなされる恐れがある表現型を示し得る。例えば、一部の変異は、利益(例えば、活性が高いこと)を与えるが、この利益は犠牲を伴う(例えば、エラー率が高いこと)。利益が不利益にまさる場合、その変異は、なお選択される。そのような変異は、商業用途を有し得る。例えば、忠実度が低い酵素は、エラープローンPCR(例えば、変異誘発のために)において使用することができる。
【0050】
特異的な表現型と関連付けられる変異の組合せを含有する代表的な変異および変異体クローンを、実施例のセクションにおいて考察し、少なくとも表3、4、5、8、12および15に示している。
【0051】
さらに、多くのDNAポリメラーゼが類似した配列、構造および機能的ドメインを有するので、本明細書において同定された変異および/または変異が起こる位置は、一般にDNAポリメラーゼを改変するための基礎として役立ち得ると考えられている。例えば、同一または類似した変異ならびに他の変化を、種々のDNAポリメラーゼの対応する位置に導入し、組換え用途に、より良好に適合された改変酵素を生成することができる。
【0052】
DNAポリメラーゼ
本発明によるDNAポリメラーゼは、これらに限定されないが、天然に存在する野生型DNAポリメラーゼ、組換えDNAポリメラーゼもしくは設計製作されたDNAポリメラーゼ、例えばキメラDNAポリメラーゼなど、融合DNAポリメラーゼ、または他の改変DNAポリメラーゼなどを含めた、任意の型のDNAポリメラーゼから改変することができる。特定の実施形態では、本発明に適したDNAポリメラーゼは、熱安定性DNAポリメラーゼ(PCRに適する)である。
【0053】
天然に存在するDNAポリメラーゼ
一部の実施形態では、本発明に適した天然に存在するDNAポリメラーゼは、A型DNAポリメラーゼ(ファミリーAのDNAポリメラーゼとしても公知である)である。A型DNAポリメラーゼは、E.coliのポリメラーゼIとのアミノ酸配列の相同性に基づいて分類され(BraithwaiteおよびIto、Nuc. Acids. Res.、21巻:787〜802頁、1993年)、E.coli pol I、Thermus aquaticus DNA pol I(Taqポリメラーゼ)、Thermus flavus DNA pol I、Streptococcus pneumoniae DNA pol I、Bacillus stearothermophilus pol I、ファージポリメラーゼT5、ファージポリメラーゼT7、ミトコンドリアのDNAポリメラーゼpolガンマ、ならびに以下に考察されているさらなるポリメラーゼが挙げられる。
【0054】
ファミリーAのDNAポリメラーゼは、市販されており、Taqポリメラーゼ(New England BioLabs)、E.coli pol I(New England BioLabs)、E.coli pol Iクレノウ断片(New England BioLabs)、およびT7 DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)、およびBacillus stearothermophilus(Bst)DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)が挙げられる。
【0055】
適切なDNAポリメラーゼは、最適増殖温度が、所望のアッセイ温度と同様である細菌または他の生物体から導くこともできる。例えば、そのような適切な細菌または他の生物体は、>80〜85℃の最高増殖温度または>70〜80℃の最適増殖温度を示し得る。
【0056】
多くのA型DNAポリメラーゼの配列情報が、公的に入手可能である。表1は、代表的なA型DNAポリメラーゼについての、それが由来する種を含めた、GenBank受託番号および他のGenBank受託情報の一覧を提供する。
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表1−3】

本発明に適したDNAポリメラーゼは、未だ単離されていないDNAポリメラーゼを含む。
【0060】
切断DNAポリメラーゼ
一部の実施形態では、本発明に適したDNAポリメラーゼとして、天然に存在するポリメラーゼの切断型(truncated version)(例えば、ポリメラーゼ活性を保持している、N末端、C末端または内部の欠失から生じたDNAポリメラーゼの断片)が挙げられる。1つの代表的な本発明に適した切断DNAポリメラーゼは、5’→3’エキソヌクレアーゼドメインの部分の欠失を含有するKlen Taqである(Barnes W. M.(1992年)、Gene、112巻:29〜35頁;およびLawyer F. C.ら(1993年)、PCRMethods and Applications、2巻:275〜287頁を参照されたい)。
【0061】
キメラDNAポリメラーゼ
一部の実施形態では、本発明に適したキメラDNAポリメラーゼとして、2つ以上の異なるDNAポリメラーゼに由来する配列を含有する任意のDNAポリメラーゼが挙げられる。一部の実施形態では、本発明に適したキメラDNAポリメラーゼとして、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、同日付で出願された「キメラDNAポリメラーゼ」という表題の同時係属出願に記載のキメラDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0062】
本発明に適したキメラDNAポリメラーゼとして、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第20020119461号、米国特許第6,228,628号および同第7,244,602号に記載のキメラDNAポリメラーゼも挙げられる。
【0063】
融合DNAポリメラーゼ
適切な融合DNAポリメラーゼとして、所望の活性(例えば、DNA結合活性、dUTP加水分解活性または鋳型−プライマー複合体安定化活性)を有する1つまたは複数のタンパク質ドメインと組み合わされた(例えば、共有結合的にまたは非共有結合的に)任意のDNAポリメラーゼが挙げられる。一部の実施形態では、所望の活性を有する1つまたは複数のタンパク質ドメインは、非ポリメラーゼタンパク質に由来する。一般には、融合DNAポリメラーゼは、DNAポリメラーゼのある特定の機能的特性(例えば、プロセシビティー、延長速度、忠実度、塩抵抗性、dUTP許容性など)を改良するために生成される。例えば、Pavlovら、2002年、Proc. Natl. Acad. Sci USA、99巻:13510〜13515頁に記載のように、DNAポリメラーゼを、DNAトポイソメラーゼVからのヘリックスーヘアピンーヘリックスDNA結合性モチーフにインフレームで融合し、融合DNAポリメラーゼのプロセシビティー、塩抵抗性および熱安定性が増加することが示された。WO97/29209、米国特許第5,972,603号およびBedfordら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA、94巻:479〜484頁(1997年)に記載のように、チオレドキシン結合性ドメインをT7 DNAポリメラーゼに融合することにより、チオレドキシンの存在下でDNAポリメラーゼ融合物のプロセシビティーが増大する。古細菌のPCNA結合性ドメインをTaq DNAポリメラーゼに融合させると、PCNAの存在下で、増大したプロセシビティーを有し、より高収量のPCR増幅DNAを産生する、DNAポリメラーゼ融合物がもたらされる(Motz、M.ら、J.Biol. Chem.、2002年5月3日;277巻(18号);16179〜88頁)。また、参照により本明細書に組み込まれている、WO01/92501A1に開示されているように、Sulfolobus sulfataricusからの配列非特異的DNA結合性タンパク質であるSso7dまたはSac7dを、DNAポリメラーゼ、例えばPfu DNAポリメラーゼまたはTaq DNAポリメラーゼなどに融合することにより、これらのDNAポリメラーゼのプロセシビティーが大幅に増加することが示された。さらなる融合ポリメラーゼは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許公開第20070190538A1号に記載されている。
【0064】
市販されている代表的な融合ポリメラーゼとして、DNAトポイソメラーゼV(Topo V)からの配列非特異的ヘリックス−ヘアピン−ヘリックス(HhH)モチーフに融合したTaqポリメラーゼのハイブリッドである、TopoTaq(商標)(Fidelity Systems)(その全てが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,427,928号;同5,656,463号;同5,902,879号;同6,548,251号;Pavlovら、2002年、Proc. Natl. Acad. Sci USA、99巻:13510〜13515頁を参照されたい);小さな塩基性クロマチン様Sso7dタンパク質に融合したキメラDeep Vent(商標)/Pfu DNAポリメラーゼであるPhusion(商標)(FinnzymesおよびNEB、BioRadによりiProofとして販売されている。)(その全てが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6627424号、米国特許出願公開第20040191825号、同第20040081963号、同第20040002076号、同第20030162173号、同第20030148330号、およびWangら、2004年、NucleicAcids Research、32巻(3号)、1197〜1207頁を参照されたい);二本鎖DNA結合性タンパク質に融合したPfuに基づくDNAポリメラーゼであるPfuUltra(商標)II Fusion(Stratagene)(参照により組み込まれている、米国特許出願第20070148671号);DNA結合性ドメインに融合したHerculase II酵素であるHerculase II Fusion(Stratagene);およびプライマー−鋳型複合体を安定化するアクセサリータンパク質に融合したT.zilligiiからのDNAポリメラーゼである、Pfx50(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
本発明の改変DNAポリメラーゼの生成
改変DNAポリメラーゼは、1つまたは複数のアミノ酸の変化を、本明細書に記載の位置(例えば、表2、3、4、5、8、12および15において特定されている位置)に対応する位置にDNAポリメラーゼに導入することによって生成することができる。
【0066】
種々のDNAポリメラーゼにおける対応するドメインは、アミノ酸配列のアライメントによって決定することができる。アミノ酸配列のアライメントは、当技術分野の技術の範囲内の種々の様式で、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含めた、アライメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。WU−BLAST−2ソフトウェアを使用してアミノ酸配列の同一性を決定することが好ましい(Altschulら、Methods in Enzymology、266巻、460〜480頁(1996年);URL://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU−BLAST−2は、いくつかの検索パラメータを使用し、そのほとんどはデフォルト値に設定される。調整可能なパラメータは、以下の値に従って設定される:オーバーラップスパン(overlap span)=1、オーバーラップフラクション(overlap fraction)=0.125、ワード閾値(word threshold)(T)=11。HSPスコア(S)およびHSP S2パラメータは動的な値であり、プログラム自体によって確立されるが、特定の配列の組成に依存して、最小値は調整することができ、上記の通り設定される。アライメントの例を図1に示す。
【0067】
変化は、1つまたは複数のアミノ酸残基の置換、欠失または挿入であってよい。各位置についての適切な変化は、本明細書に記載の対応する位置における変異の性質および範囲を調査することによって決定することができる。一部の実施形態では、適切なアミノ酸の変化は、対象のDNAポリメラーゼ(例えば、親DNAポリメラーゼ)の3次元構造を評価することによって決定することができる。例えば、表2、3および4に記載のものと同一であるまたは類似したアミノ酸の置換を、DNAポリメラーゼに導入することができる。代替的なアミノ酸の置換は、記載の保存的なアミノ酸および非保存的なアミノ酸に対する技法およびガイドラインのいずれかを用いて、例えば、標準のDayhoff頻度交換マトリックスまたはBLOSUMマトリックスによって、作製することができる。アミノ酸側鎖の6つの一般的なクラスが類別されており、それらとして、クラスI(Cys);クラスII(Ser、Thr、Pro、Ala、Gly);クラスIII(Asn、Asp、Gln、Glu);クラスIV(His、Arg、Lys);クラスV(Ile、Leu、Val、Met);およびクラスVI(Phe、Tyr、Trp)が挙げられる。例えば、Aspの、別のクラスIII残基、例えばAsn、GlnまたはGluなどに代えての置換は、保存的な置換である。本明細書で使用する、「非保存的な置換」は、1つのクラス内のアミノ酸の別のクラスからのアミノ酸での置換;例えば、クラスII残基であるAlaの、クラスIII残基、例えばAsp、Asn、GluまたはGlnなどでの置換を指す。挿入または欠失は、場合によって、1〜5アミノ酸の範囲にあり得る。
【0068】
関連する位置において許容された適切なアミノ酸の変化は、得られた改変DNAポリメラーゼを、当技術分野で公知のまたは以下の実施例に記載のin vitroアッセイにおいて、活性について試験することによって、確認することができる。
【0069】
オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)変異誘発、およびPCR変異誘発などの当技術分野で公知の方法を用いて変形(variation)を作製することができる。部位特異的変異誘発(Carterら、Nucl.Acids Res.、13巻:4331頁(1986年);Zollerら、Nucl. Acids Res.、10巻:6487頁(1987年))、カセット変異誘発(Wellsら、Gene、34巻:315頁(1985年))、制限酵素選択(restriction selection)変異誘発(Wellsら、Philos.Trans. R. Soc. London SerA、317巻:415頁(1986年))、プライマー配列に変異が含まれた逆PCR、または他の公知の技法をクローニングされたDNAに対して行って所望の改変DNAポリメラーゼを生成することができる。
【0070】
一部の実施形態では、本発明に適した変化は、アセチル化、アシル化、アミド化、ADPリボシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、脂質または脂質誘導体の共有結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、または任意の同様のプロセスを含めた化学修飾も含む。
【0071】
本発明による改変DNAポリメラーゼは、表2、3、4、5、8、12および15に記載の位置に対応する1つまたは複数の位置に1つまたは複数のアミノ酸の変化を含有し得る。本発明による改変DNAポリメラーゼは、定向進化実験において観察または選択された変異と無関係のさらなる置換、挿入および/または欠失も含有し得る。したがって、一部の実施形態では、本発明による改変DNAポリメラーゼは、対応する野生型(または天然に存在する)DNAポリメラーゼと少なくとも70%、例えば、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、改変DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼの野生型の形態と比較して、1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸または15アミノ酸の置換、欠失、挿入、またはそれらの組合せを有する。
【0072】
「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、必要であれば、最大の配列同一性パーセントを達成するため、配列を整列させ、ギャップを導入した後に、どんな保存的な置換も配列同一性の一部とみなさずに、対応する親配列のアミノ酸残基と同一である改変配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、上記の対応する位置を決定するためのアラインメントと類似である。
【0073】
当技術分野で周知の方法を適用して改変DNAポリメラーゼを発現させ、単離することができる。多くの細菌性発現ベクターは、外来配列によってコードされるタンパク質を高レベルで誘導性発現させることができる、配列要素または配列要素の組合せを含有する。例えば、発現ベクターは、例えば、Novagen(http://www.emdbiosciences.com/html/NVG/AllTables.html#)から市販されている。
【0074】
一例として、組み込まれた誘導型のT7 RNAポリメラーゼ遺伝子を発現している細菌を、T7プロモーターに連結された改変DNAポリメラーゼ遺伝子を持つ発現ベクターで形質転換することができる。適切な誘導物質、例えば、lac−誘導性プロモーターに対するイソプロピル−p−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することによってT7 RNAポリメラーゼを誘導することにより、T7プロモーターからキメラ遺伝子の高レベルの発現が誘導される。
【0075】
適切な細菌宿主株は、当業者によって当技術分野において入手可能なものから選択することができる。これに限定するものではない例として、E.coliのBL−21株が、E.coliの他の株と比較してプロテアーゼ欠乏性であるので、外因性タンパク質を発現させるために一般に用いられている。特定のポリメラーゼ遺伝子に対するコドンの利用がE.coli遺伝子において通常見られるものと異なる状況については、より希なアンチコドンを持つtRNAをコードするtRNA遺伝子(例えば、argU tRNA遺伝子、ileY tRNA遺伝子、leuW tRNA遺伝子およびproL tRNA遺伝子)を担持するように改変されたBL−21の株があり、クローニングされたキメラ遺伝子を高効率で発現させることを可能にする(希なコドンtRNAを担持しているいくつかのBL21−CODON PLUSTM細胞株は、例えばStratageneから入手可能である)。それに加えてまたはその代わりに、DNAポリメラーゼをコードする遺伝子は、E.coliにおける発現を容易にするためにコドン最適化をすることができる。コドン最適化された配列は、化学合成することができる。
【0076】
本発明の改変DNAポリメラーゼの精製に適した当業者に公知の多くの方法がある。例えば、Lawyerらの方法(1993年、PCR Meth. & App.、2巻:275頁)は、元々はTaqポリメラーゼを単離するために設計されたため、E.coliにおいて発現させたDNAポリメラーゼを単離するために良く適している。あるいは、宿主タンパク質を破壊するための熱変性工程、および、活性が高く、およそ80%純粋なDNAポリメラーゼを単離するための2カラム精製工程(DEAE−セファロースカラムおよびヘパリン−セファロースカラムを通じて)を使用するKongらの方法(1993年、J.Biol. Chem.、268巻:1965頁、参照により本明細書に組み込まれている)を用いることができる。
【0077】
さらに、改変DNAポリメラーゼは、硫安分画し、続いてQセファロースカラムおよびDNAセルロースカラムによって、またはHiTrap Qカラムにおいて夾雑物を吸着し、続いてHiTrapヘパリンカラムから勾配溶出させることによって単離することができる。
【0078】
本発明の改変DNAポリメラーゼの適用
本発明の改変DNAポリメラーゼは、ポリヌクレオチドの合成を伴う任意の方法に使用することができる。ポリヌクレオチドの合成方法は、当業者に周知であり、例えば、Molecular Cloning、第2版、Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ColdSpring Harbor、N. Y.(1989年)において見ることができる。 例えば、本発明の改変DNAポリメラーゼは、これらに限定されないが、ニックトランスレーションによるDNAの標識、cDNAクローニングにおける第2鎖cDNA合成、DNAの配列決定、全ゲノム増幅、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した核酸配列の増幅、検出、および/またはクローニングを含めた組換えDNA技術における種々の使用を有する。
【0079】
一部の実施形態では、本発明は、産業用途または研究用途において使用されるPCRにより良く適している酵素を提供する。PCRは、特異的なポリヌクレオチドの鋳型配列を増幅するためのin vitroにおける方法を指す。PCRの技法は、PCR: APractical Approach、M. J. McPhersonら、IRL Press(1991年)、InnisらによるPCR Protocols: AGuide to Methods and Applications、Academic Press(1990年)、およびPCR Technology:Principals and Applications for DNA Amplification、H. A. Erlich、Stockton Press(1989年)を含めた多数の出版物に記載されている。PCRは、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号;同第4,889,818号;同第5,075,216号;同第5,079,352号;同第5,104,792号;同第5,023,171号;同第5,091,310号;および同第5,066,584号を含めた多くの米国特許にも記載されている。
【0080】
プロセシビティー、延長速度、塩抵抗性および/または忠実度がより高い改変DNAポリメラーゼにより、長期増幅の効率および成功率が改善し(より高い収量で、より長く標的を増幅する)、DNA鋳型の必要量が減少することが予想される。
【0081】
種々の特異的なPCR増幅の応用が当技術分野において利用可能である(総説について、例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれている、Erlich、1999年、Rev Immunogenet.、1巻:127〜34頁; Prediger、2001年、MethodsMol. Biol.、160巻:49〜63頁; Jurecicら、2000年、Curr. Opin. Microbiol.、3巻:316〜21頁;Triglia、2000年、Methods Mol. Biol.、130巻:79〜83頁; MaClellandら、1994年、PCR MethodsAppl.、4巻:S66〜81; AbramsonおよびMyers、1993年、Current Opinion in Biotechnology、4巻:41〜47頁を参照されたい)。
【0082】
これに限定するものでない例として、本明細書に記載の改変DNAポリメラーゼは、これに限定されないが、i)非特異的な増幅を減少させるホットスタートPCR;ii)高いアニーリング温度で開始し、次いで、非特異的なPCR産物を減少させるための工程においてアニーリング温度を低下させるタッチダウンPCR;iii)外側のプライマーセットおよび内側のプライマーセットを使用して信頼度がより高い産物を合成するネステッドPCR;iv)既知配列に隣接している領域を増幅するための逆PCR。この方法では、DNAを消化し、所望の断片をライゲーションによって環状化し、その後、既知配列に相補的な外向きに伸長しているプライマーを使用したPCRを行なう。v)AP−PCR(任意開始(arbitrary primed))/RAPD(無作為増幅多型DNA)。これらの方法では、任意のオリゴヌクレオチドを使用して増幅することによって、あまり知られていない標的配列を持つ種からゲノムフィンガープリントを作成する。;vi)RNA指向性DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)を使用してcDNAを合成し、その後cDNAをPCRに使用するRT−PCR。この方法は、組織または細胞中の特定の配列の発現を検出するために非常に感度が高い。この方法は、mRNA転写物を定量化するためにも使用することができる。:vii)RACE(cDNA末端の急速増幅)。これは、DNA/タンパク質の配列についての情報が限られている場合に使用される。この方法は、cDNAの3’末端または5’末端を増幅し、それぞれ特異的なプライマー1つのみにより(加えて1つのアダプタープライマー)cDNA断片を生成させる。次いで、オーバーラップRACE産物を組み合わせて全長cDNAを作出することができる;viii)異なる組織において示差的に発現された遺伝子を同定するために使用するDD−PCR(ディファレンシャルディスプレイPCR)。DD−PCRにおける最初の工程はRT−PCRを伴い、次いで短い、計画的な非特異的プライマーを使用して増幅を行う;ix)同じ検体中のDNA配列の2つ以上の独特な標的が同時に増幅されるマルチプレックスPCR。1つのDNA配列をPCRの質を検証するための対照として使用することができる;x)同じプライマーセットに対して、標的DNAと競合する(競合PCR)内部コントロールDNA配列(しかしサイズが異なる)を使用するQ/C−PCR(定量的比較);xi)遺伝子を合成するために使用する反復PCR(recursive PCR)。この方法で使用されるオリゴヌクレオチドは、一続きの遺伝子(>80塩基)に対して、あるいは末端のオーバーラップ(−20塩基)を持つセンス鎖およびアンチセンス鎖に対して相補的である。;xii)非対称PCR;xiii)In Situ PCR;xiv)部位特異的PCR変異誘発;xv)全ゲノムを増幅するために、部分的に縮重した(degenerate)プライマーを使用するDOP−PCR;xvi)増幅を検出するためにSYBR greenまたはオリゴヌクレオチドプローブを使用する定量PCR;およびxvii)PCR産物中の変異の数が増加するように条件を最適化したエラープローンPCRを含めた、PCRの応用において使用することができる。
【0083】
本発明は、いかなる特定の増幅システムにも限定されないことが理解されよう。他のシステムが開発されたとき、それらのシステムは、本発明の実行によって利益を得ることができる。
【0084】
キット
本発明は、本発明の改変DNAポリメラーゼおよびその組成物を含有する1つまたは複数の容器を有するパッケージユニットを含むキット形式も企図している。一部の実施形態では、本発明は、PCRにおける合成を含めた、ポリヌクレオチドを合成するために使用する種々の試薬の容器をさらに含むキットを提供する。
【0085】
本発明による発明のキットは、以下の品目の1つまたは複数も含有してよい:ポリヌクレオチド前駆物質、プライマー、バッファー、説明書、PCR添加剤および対照。キットは、本発明による方法を実行するために適切な比率で互いに混合された試薬の容器を含んでよい。試薬の容器は、試薬を単位量で含有することが好ましく、それは、対象(subject)の方法を実行するときの計量工程(measuring step)を不要にする。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
Taqポリメラーゼを使用した定向進化実験
組換えDNA技術により良好に適している変異した酵素を選択するために、酵素が通常用いられる標準的な条件、あるいは実際の適用において予想される条件などの完全な条件とはいえない条件を単純に模倣することによって、定向進化実験を設計する。選択を十分なラウンド行った後、組換えDNAの技術における典型的な適用に、より良好に適した酵素(または複数の酵素)が現れるはずである。定向進化実験の詳細および選択された変異に関連付けられる代表的な利点は、参照により本明細書に組み込まれている、同日に出願された「改変DNAポリメラーゼ」という表題の同時係属出願に記載されている。
【0087】
具体的には、本発明者らはA型DNAポリメラーゼであるTaqを使用して定向進化実験を行った。エラープローンPCRによって創出したTaq変異体ライブラリーに対して定向進化実験を行った。
【0088】
数ラウンドの選択を行った。選択が進行している過程の間、多くの異なる変異が、単独または組合せのいずれかで、様々な種類の利点を様々な程度で与える可能性がある。一般には、選択の最初のラウンド中、明らかな優性クローンはないが、莫大な数の中立または不利益な変異体が排除されるようである。その後、一般には、いくつもの特定の変異が予想数よりも多く現れる。これらの変異がそこにあるのは、それらがいくつかの利点を有するからである。
【0089】
一般には、出発物質中に存在する莫大な変異体のプールが排除され、他の変異体および野生型を打ち負かした残りの少数の種類またはファミリーの変異体がプールの優位を占めたときに、選択が働いたとみなす。この段階で、変異が与える改良の性質を正確に定義する必要はない。それが選択されたという事実、特に独立した選択の実行において同じ変異が優位になれば、そのことが十分な証拠である。
【0090】
さらなる選択によって、これらの変異の一部の数がプール中で増加する一方、他の変異は、それらがいくつかの利点を有するものの、より良好に適合したクローンと競合するには十分ではないため排除される可能性があり得る。同時に、前に注目されなかった変異体が現れ得る。これらの変異体が遅れて現れることは、これらの特異的な変異が出発プール中では数が少なかったということ、またはその変異が、利益を顕在化するために同じクローン中に別の(または2つ以上の)変異を必要としたことに起因し得る。選択をさらにもっと続ければ、最終的に、いくつかのクローンが実質的に優位を占める可能性がある。一般には、幅広い有益な変異を単離することが望ましい場合、この最終ポイントの前にクローンを単離することが重要である。
【0091】
特定の実験では、プロセシビティーが高い変異体を生成し、そして、(1)PCR反応における高濃度の塩(KCl)に対する抵抗性および/または(2)PCR反応における高レベルのSYBR Green I挿入色素に対する抵抗性のいずれかについてスクリーニングした。Taqに対して数ラウンドの選択を行った。選択が進行している過程の間、多くの異なる変異が、種々の位置において、単独または組合せのいずれかで観察された。これらのプレッシャーのいずれかに対して野生型よりも高い許容性を表しているクローンを選択し、配列決定した。代表的な変異および対応する位置を表2に示している。種々の変異または変異の組合せを含有する代表的なクローンを表3(高濃度の塩(KCl)に対する抵抗性に基づく)および表4(高レベルのSYBR Green Iに対する抵抗性に基づく)に示している。1つまたは複数のこれらの変異を含有する酵素は、酵素活性を保持している。これらの選択されたクローンの一般の表現型は野生型Taqよりも高い比活性を有し、以下のさらなる実施例に記載のように、種々の表現型にさらに特徴付けられる。
【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

(実施例2)
選択的な利点の種類
選択され得る幅広い利点があり、その一部を以下に列挙し考察する。
【0095】
1)発現効率:
酵素を高レベルで発現しているクローンは、発現が低いクローンを超える利益を有する。変異した酵素の比活性は改良されていない可能性があるが、全体の活性は改良されている。この特性は、それによって産生レベルが増加し、かつ/または産生費用が低下するので、酵素の製造に対して特に価値がある。
【0096】
2)溶解性およびフォールディングの頑強性:
溶解性が増加すると、封入体が形成される確率が低下する。したがって、これらのクローンでは、有用な、正しくフォールディングされた酵素産物が高い比率で発現している。
【0097】
3)熱安定性:
PCRに必要である熱サイクルの間、加熱によってある一定の割合の酵素が不活化することが周知である。熱不活化に対して抵抗性である酵素は、活性を長く維持する。したがって、酵素を少なく使用することができ、かつ/またはより多くのサイクルを行うことができる。
【0098】
4)活性:
酵素活性が増加した変異体により、効率的な重合がもたらされる。
【0099】
5)プロセシビティー:
プロセシビティーが増加した変異体は、長いPCR産物を合成し、複合型の二次構造を持つ配列を合成することができる。より多くのヌクレオチド/伸長工程を取り込むことができる変異体酵素は、より低濃度で効率的に作用する可能性がある。
【0100】
6)スピード:
延長速度が増加した変異体により、より効率的な重合がもたらされる。高速の酵素は、伸長させる時間がより短い状態で使用することもできる。このことは、ハイスループットシステムに対して特に価値がある。
【0101】
7)濃度に対する頑強性:
PCR反応は、多すぎる酵素または少なすぎる酵素が使用された場合、適切に行われない恐れがあることが公知である。本発明者らが使用した選択条件下で、過剰に供給されようと低レベルで供給されようと、適切な産物を生成することができるポリメラーゼが利点を有する。
【0102】
8)塩、PCR添加剤および他の阻害剤に対する抵抗性:
塩、PCR添加剤(例えば、挿入色素)および他の不純物の存在下で選択を行った。塩が存在することにより、ポリメラーゼのDNA結合親和性が低下する恐れがある。不純物が存在することにより、所望のPCR産物の形成が妨害される恐れがある。塩および阻害剤に対して抵抗性であり、所望の産物を合成することができるポリメラーゼが有利であり、選択される。この特性は、PCRが粗製試料に使用される適用に対して特に適している。
【0103】
9)忠実度:
全てのポリメラーゼが、複製中に、誤ったdNTPを取り込むことによって、またはつかえながら進み欠失および挿入を引き起こすことによってのいずれかで、誤りを生じる。そのような誤りにより、選択の間に機能的遺伝子が排除され得るので、誤りを生じないためのプレッシャーがある。忠実度が高いポリメラーゼが有利であり、選択される。
【0104】
10)鎖の置換活性:
分子内の自己アニーリングに起因するDNA中の二次構造により、ポリメラーゼによって触媒されるDNA鎖の延長が阻害される場合がある。同様に、プライマーに加え、相補的なDNAの部分的な再アニーリングにより、PCRが阻害される。鎖の置換活性が改良された任意の酵素が、選択において利益を有する。
【0105】
11)ピロホスフェート許容性:
ピロホスフェートは、ポリメラーゼによってヌクレオチドが新生の鎖内に取り込まれる間に遊離する。ピロホスフェートの蓄積は、ポリメラーゼ活性の阻害につながり得る。定向進化の実施例において選択されたポリメラーゼは、ピロホスフェートによる阻害による影響が少なくなるように進化した可能性がある。
【0106】
12)未知:
PCRのプロセスに関わる多くの他の因子がある。任意の理由でPCRにより良好に適合された酵素が、本発明者らの選択条件下で選択され得る。
【0107】
ある特定の選択されたクローンおよび変異を種々の表現型についてさらに特徴付ける。今までのところ、本発明者らは、いくつかの異なる表現型:プロセシビティー、大きな断片を合成する能力、および阻害剤に対する許容性についての試験を行った。表現型を調査するための試験は、以下の実施例に記載されている。
【0108】
(実施例3)
ヘパリン結合性アッセイ
選択されたTaq変異体のプロセシビティーを試験するために、本発明者らはヘパリン結合性アッセイを使用した。ヘパリンは、炭水化物のグリコサミノグリカンファミリーのメンバーであり(密接に関連する分子であるヘパラン硫酸を含む)、可変的に硫酸化された繰り返し二糖単位からなる。ヘパリンポリマーはらせん状構造を形成し、DNAプロセシング酵素が、二本鎖DNAに結合する接触点と同じ接触点でヘパリンに結合すると考えられている。したがって、ヘパリン結合性アッセイに基づいてDNA結合親和性を測定することができる。簡単に述べると、生理的なpHにおいて、硫酸基を脱プロトン化する。負電荷およびらせん状構造がDNAの構造および電荷に類似しており、DNA結合性タンパク質がヘパリンに結合できるようなる。DNAポリメラーゼは、酵素のDNAへの結合に関与する正電荷を持つアミノ酸残基をいくつも含有する。この特質を、ポリメラーゼを精製する間に利用することができ、それによってポリメラーゼが、アガロースビーズに共有結合しているヘパリンに結合する。ポリメラーゼの結合親和性を、結合相互作用の数および強度によって決定する。ポリメラーゼを、溶出バッファー中の塩の量を増加させることによって溶出する。ポリメラーゼとヘパリンの間のイオン結合は、塩の濃度を増加させて加えることによって破壊される。したがって、酵素が溶出する塩濃度が、ポリメラーゼのヘパリンおよびDNAに対する結合親和性を示す。
【0109】
具体的には、Taq変異体を含有するE.coli細胞のペレットを50mMのTris−HCl、pH8.0、150mMのNaCl(結合バッファー)中に溶解した。溶解物を75℃で30分インキュベートしてE.coliタンパク質を変性させ、次に20℃で20分間、20000×gで遠心分離した。上清をHiTrapヘパリンカラム(GE Healthcare)にローディングし、0.15〜2MのNaCl勾配で溶出した。溶出ピークにおける伝導率(mS/cm)を、溶出物の塩濃度の基準として記録した。伝導率が高いことが、ポリメラーゼのヘパリンおよびDNAに対する親和性が高いことを示す。Taqポリメラーゼの溶出ピークにおける伝導率は38.3mS/cmであった(表5を参照されたい)。親和性が低いポリメラーゼ変異体についての伝導率は38mS/cmを下回った。ある特定の親和性が高いポリメラーゼ変異体の伝導率は、46.7mS/cmから54.4mS/cmの間であった(表5を参照されたい)。
【0110】
伝導率は、溶液中の塩の量に比例する。本発明者らは、塩濃度と伝導率の間の相関を実験的に決定した。本発明者らは、結合バッファーおよび溶出バッファーを種々の比率で使用し(200〜700mMのNaClの最終濃度)伝導率を測定した。本発明者らは、伝導率対NaCl濃度をプロットした。線形回帰分析により、伝導率(Cd)をCd=0.084×Cs+7.26(R2=0.9995)、ここでCsはNaClの濃度、で表すことができることが明らかになった。このことから、本発明者らは、Taqポリメラーゼが約370mMのNaClで溶出し、変異体が約470mMのNaClから約561mMのNaClの間で溶出したと算定した。
【0111】
【表5】

(実施例4)
長いPCR断片を生成する能力
ラムダDNA鋳型から5kb、8kbまたは10kbの断片のいずれかを生成するためにプライマー対を設計した。プロセシビティーが高い酵素のそれぞれを、酵素濃度の制限下で、それぞれのアンプリコン長を増幅するその能力について試験した。
【0112】
代表的なプライマーとして、
【0113】
【化1】

が挙げられる。
【0114】
アッセイのための反応成分を表6に示している。これらの反応のサイクルプロファイルを表7に示している。
【0115】
【表6】

【0116】
【表7】

反応産物をアガロースゲルに泳動し、適切な断片サイズにバンドが存在するかまたは存在しないかについてスコア化した。代表的な結果を表8に示している。
【0117】
【表8】

(実施例5)
高濃度の塩に対する許容性
プロセシビティーが高いTaqクローンを、高濃度の塩の存在下で2kbのPCRアンプリコンを増幅するその能力について試験した。10mMのTris−HCl(pH8.4、25℃で)、および150mMのKClまたは150mMのNaClのいずれかを含有するバッファー中で反応を行った。150mMのKClを用いたアッセイおよび150mMのNaClを用いたアッセイのための代表的な反応成分を、それぞれ、表9および10に示している。これらのアッセイの代表的なサイクルプロファイルを表11に示している。
【0118】
代表的なプライマーとして、
【0119】
【化2】

が挙げられる。
【0120】
【表9】

【0121】
【表10】

【0122】
【表11】

反応産物をアガロースゲルに泳動し、適切な断片サイズにバンドが存在するかまたは存在しないかについてスコア化した。代表的な結果を表12に示している。
【0123】
【表12】

(実施例6)
フェノールに対する抵抗性
プロセシビティーが高いTaqクローンを、1%のフェノールの存在下で2kbのPCRアンプリコンを増幅するその能力について試験した。10mMのTris−HCl(pH8.4、25℃で)および1%のフェノールを含有するバッファー中で反応を行った。これらのアッセイのための反応成分を表13に示している。これらのアッセイのサイクルプロファイルを表14に示している。
【0124】
【表13】

【0125】
【表14】

反応産物をアガロースゲルに泳動し、適切な断片サイズにバンドが存在するかまたは存在しないかについてスコア化した。代表的な結果を表15に示している。
【0126】
【表15】

【0127】
【表16−1】

【0128】
【表16−2】

【0129】
【表16−3】

【0130】
【表16−4】

【0131】
【表16−5】

【0132】
【表16−6】

等価物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識する、または、常用の実験法だけを使用して確認することができる。本発明の範囲は上記の説明に限定されないものとするが、添付の特許請求の範囲に示す通りである。本明細書および特許請求の範囲において使用する「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(この)」という冠詞は、それに反することが明確に示されていない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。あるグループの1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、それに反することが示されていない、または他に文脈から明らかでない限り、そのグループのメンバーの1つ、2つ以上または全部が、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、そうでなければ関連する場合に満たされるとみなされる。本発明は、まさに1つのグループメンバーが、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、そうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、そのグループのメンバーの2つ以上または全部が、所与の産物またはプロセスに存在する、利用される、そうでなければ関連する実施形態も含む。さらに、本発明は、特に指示のない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、請求項の1つまたは複数からの1つまたは複数の限定、要素、条項、説明的な用語などが、同じ基になる請求項に従属している別の請求項(または、関連した、任意の他の請求項)に導入されている、変形、組合せ、および並び替えを包含することが理解されよう。要素がリストとして、例えば、マルクーシェグループまたは類似の形式で提示されている場合、要素の各サブグループも開示され、任意の(1つまたは複数の)要素をそのグループから取り出すことができることが理解されよう。一般に、本発明または本発明の態様が、特定の要素、特徴などを含むと称される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素、特徴などからなる、または本質的になることが理解されよう。単純にする目的で、それらの実施形態は、本明細書において全ての場合を具体的に示していない。本発明の任意の実施形態、例えば、従来技術中に見られる任意の実施形態を、特定の除外について本明細書において列挙したかに関わらず、特許請求の範囲から除外することができることが理解されよう。
【0133】
それに反することが明確に示されていない限り、2つ以上の動作を含む本明細書で特許請求された任意の方法では、方法の動作の順序は、必ずしも方法の動作が列挙された順序に限定されないが、本発明は、順序がそのように限定された実施形態も包含することが理解されよう。さらに、特許請求の範囲が組成物を列挙している場合、本発明は、その組成物を使用する方法およびその組成物を作製する方法を包含する。特許請求の範囲が組成物を列挙している場合、本発明は、その組成物を使用する方法およびその組成物を作製する方法を包含することが理解されよう。
【0134】
参照文献の組み込み
本明細書において引用した全ての出版物および特許文献は、各出版物または特許文献のそれぞれの内容が本明細書に組み込まれたのと同じようにその全体が参照により組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する親酵素または野生型酵素と比較して、表2において特定されている位置から選択される1つまたは複数の位置に対応する1つまたは複数のアミノ酸の変化を含む改変A型DNAポリメラーゼであって、前記1つまたは複数のアミノ酸の変化によって、酵素活性、プロセシビティー、核酸挿入色素に対する抵抗性、および/または塩抵抗性が増加している、改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項2】
前記1つまたは複数の位置が、TaqポリメラーゼのP6、K53、K56、E57、K171、T203、E209、D238、L294、V310、G364、E400 A414、E507、S515、E742またはE797に対応する位置を含む、請求項1に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項3】
前記1つまたは複数の位置が、TaqポリメラーゼのE507に対応する位置を含む、請求項1に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項4】
前記アミノ酸の変化がアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項5】
前記アミノ酸の変化がアミノ酸の置換である、請求項4に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項6】
前記1つまたは複数のアミノ酸の置換が、表2から選択される、請求項5に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項7】
前記1つまたは複数のアミノ酸の置換が、P6S、K53N、K56Q、E57D、K171R、T203I、E209G、E209K、D238N、L294P、V310A、G364D、G364S、E400K、A414T、E507K、S515G、E742KまたはE797G、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項8】
天然に存在するポリメラーゼから改変されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項9】
前記天然に存在するポリメラーゼが、Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus caldophilus、Thermus filiformisから単離されたものである、請求項8に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項10】
切断DNAポリメラーゼから改変されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項11】
融合ポリメラーゼから改変されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の改変A型DNAポリメラーゼ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の改変A型DNAポリメラーゼを含むキット。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の改変A型ポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列。
【請求項14】
請求項13に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のヌクレオチド配列を含む細胞。
【請求項16】
請求項14に記載のベクターを含む細胞。
【請求項17】
対応する親酵素または野生型酵素と比較して、表2において特定されている位置から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数のアミノ酸の変化を含む改変Taq DNAポリメラーゼであって、前記1つまたは複数のアミノ酸の変化によって、酵素活性、プロセシビティー、および/または塩抵抗性が増加している、改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項18】
前記1つまたは複数の位置が、P6、K53、K56、E57、K171、T203、E209、D238、L294、V310、G364、E400 A414、E507、S515、E742またはE797に対応する位置を含む、請求項17に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項19】
前記1つまたは複数の位置がE507位を含む、請求項17に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項20】
前記アミノ酸の変化がアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項21】
前記アミノ酸の変化がアミノ酸の置換である、請求項20に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項22】
前記1つまたは複数のアミノ酸の置換が、表2から選択される、請求項21に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項23】
前記1つまたは複数のアミノ酸の置換が、P6S、K53N、K56Q、E57D、K171R、T203I、E209G、E209K、D238N、L294P、V310A、G364D、G364S、E400K、A414T、E507K、S515G、E742KまたはE797G、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項24】
配列番号2(A3E)、配列番号3(G9S)、配列番号4(D5S)、配列番号5(D2)、配列番号6(A5E)、配列番号7(B6S)、配列番号8(E2S)、配列番号9(A3)、配列番号10(H10)、配列番号11(H1S)、配列番号12(F9E)、配列番号13(A5S)、配列番号14(C10E)、配列番号15(F5S)、配列番号16(E7S)、配列番号17(G6S)、配列番号18(E1E)、配列番号19(C7)、配列番号20(E12)、配列番号21(D9)、配列番号22(F10)、配列番号23(H7)、配列番号24(A5)およびそれらの組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む改変Taq DNAポリメラーゼ。
【請求項25】
請求項17から24のいずれか一項に記載の改変Taq DNAポリメラーゼを含むキット。
【請求項26】
請求項17から24のいずれか一項に記載の改変Taq DNAポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列。
【請求項27】
請求項26に記載のヌクレオチド配列を含むベクター。
【請求項28】
請求項26に記載のヌクレオチド配列を含む細胞。
【請求項29】
請求項27に記載のベクターを含む細胞。
【請求項30】
対応する親酵素または野生型酵素と比較して、表2において特定されている位置から選択される1つまたは複数の位置に1つまたは複数のアミノ酸の変化を含む改変Taq DNAポリメラーゼを使用してDNA断片を増幅することを含む方法。
【請求項31】
前記DNA断片が5kbよりも長い、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記DNA断片が8kbよりも長い、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記DNA断片が10kbよりも長い、請求項30に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【公表番号】特表2012−507987(P2012−507987A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534890(P2011−534890)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063167
【国際公開番号】WO2010/062777
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511109814)カパバイオシステムズ (2)
【Fターム(参考)】