説明

改変Ernsタンパク質を有するウシウイルス性下痢ウイルス

本発明は、免疫原性組成物およびワクチンとしての利用性を有するキメラペスチウイルスであって、その同種Ernsタンパク質を発現しないウシウイルス性下痢ウイルスを含み、さらに、別のペスチウイルスに由来する異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体を発現するキメラペスチウイルスに関する。また、本明細書において、ウシウイルス性下痢ウイルス感染の蔓延を治療または予防するための方法およびキット、ならびに、ワクチン接種された動物と野生型に感染した動物とを区別するための方法およびキットも記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なキメラペスチウイルス、ならびに免疫原性組成物およびワクチンにおけるそれらの使用に関するものである。本発明はまた、ウシウイルス性下痢ウイルス感染の蔓延を治療または予防するための方法およびキットにも関する。本発明はさらに、ワクチン接種された動物と野生型ウイルスに感染した動物とを区別するための方法およびキットにおける、キメラペスチウイルスの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDウイルス、またはBVDV)を含めたペスチウイルスは、家畜動物および野生動物の両方で、いくつかの種から単離されている。同定された、BVDVの宿主には、バッファロー、アンテロープ、トナカイ、および様々なシカ種が含まれ、一方、固有のペスチウイルス種が、キリンおよびプロングホーンアンテロープにおいて同定されている。BVDVは、フラビウイルス科の小型のRNAウイルスである。これは、ヒツジにおけるボーダー病およびブタにおける豚コレラの原因物質である、他のペスチウイルスと近縁である。最近では、Bungowannahペスチウイルスという名の分岐ペスチウイルスが、オーストラリアにおける子豚の胎内感染の病原因子として同定された。
【0003】
BVDVにより生じる疾患は、特に牛において広く蔓延しており、経済上、壊滅的であり得る。牛におけるBVDV感染の結果、繁殖上の問題が生じ得、流産または早産が生じ得る。BVDVは、妊娠中の牛の胎盤を通過し得、その結果、ウイルスに対して免疫寛容であり、死ぬまで持続的にウイルス血症である、持続感染した(PI)子牛が産まれ得る。感染した牛はまた、発熱、下痢、咳、および消化器粘膜の潰瘍を特徴とする「粘膜疾患」を示し得る。これらの持続感染した動物は、粘膜疾患のさらなる突発をもたらす、群内でのウイルスの拡散源をもたらし、かつ、腸疾患または肺炎の発生の原因となる微生物に非常に感染しやすい。
【0004】
BVDVは、2つのバイオタイプの1つに分類される。「cp」バイオタイプのものは、培養細胞に対する細胞変性効果を誘発し、一方、非細胞変性バイオタイプまたは「ncp」バイオタイプのウイルスは誘発しない。さらに、2つの主要な遺伝子型(1型および2型)が認められており、これらの両方は、様々な臨床的症候群を生じさせることが示されている。
【0005】
BVDVビリオンは、40から60nmの直径である。BVDVのヌクレオカプシドは、RNAの単一分子およびカプシドタンパク質Cからなる。ヌクレオカプシドは脂質膜に囲まれており、この脂質膜内に、2つの糖タンパク質E1およびE2が固定されている。第3の糖タンパク質であるErnsは、エンベロープと緩やかに会合している。BVDVのゲノムは、およそ12.5kbの長さであり、5’非翻訳領域(NTR)と3’非翻訳領域との間に位置する単一のオープンリーディングフレームを含有する。およそ438kDのポリタンパク質は、このオープンリーディングフレームから翻訳され、細胞プロテアーゼおよびウイルスプロテアーゼによって、少なくとも11個のウイルス構造タンパク質および非構造(NS)タンパク質にプロセシングされる(Tautzら、J.Virol.71:5415〜5422(1997);Xuら、J.Virol.71:5312〜5322(1997);Elbersら、J.Virol.70:4131〜4135(1996);およびWiskerchenら、Virology 184:341〜350(1991))。BVDVのゲノム順序は、p20/Npro、p14/C、gp48/Erns、gp25/E1、gp53/E2、p54/NS2、p80/NS3、p10/NS4A、p32/NS4B、p58/NS5A、およびp75/NS5Bである。3つのエンベロープタンパク質gp48/Erns、gp25/E1、およびgp53/E2が、重度にグリコシル化されている。Erns(以前は、E0またはgp48と呼ばれていた)は、ジスルフィドによって共有結合しているホモ二量体を形成する。疎水性の膜アンカー領域が存在しないことは、Ernsがエンベロープと緩やかに会合していることを示唆する。Ernsは、感染した牛において高い抗体力価を誘発するが、抗血清は、限られたウイルス中和活性を有する。
【0006】
BVDVワクチンの中で、現在利用可能なものは、化学的に不活化された野生型ウイルスを含有するものである。これらのワクチンは、典型的には、複数回用量の投与を必要とし、短期間の免疫応答をもたらす。それらはまた、胎児のウイルス伝染は防御しない。ヒツジにおいて、精製E2タンパク質に基づくサブユニットワクチンが報告されている。このワクチンは、胎児を感染から防御すると考えられるが、防御はウイルスの同種株にのみ限定され、抗体力価と防御との間に相関はない。
【0007】
改変生(ML)BVDVワクチンは、ウシもしくはブタの細胞における反復継代によって、または温度感受性の表現型をウイルスに付与する化学的に誘発される突然変異によって弱毒化されているウイルスを用いて生産されている。単回用量のMLV BVDVワクチンは、感染からの防御をもたらすために十分であることが証明されており、免疫性の期間は、ワクチン接種された牛において数年間延長し得る。さらに、MLVワクチンを用いた交差防御が報告されている(Martinら、「Proceedings of the Conference of Research Workers in Animal Diseases」、75:183(1994))。しかし、既存のMLVワクチンでは、ワクチン接種された動物と自然感染した動物との区別は不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、BVDVの蔓延を防止するための新規なワクチンが必要とされていることは明らかである。このようなワクチン(複数可)は、今後の全国的なまたは地域的なBVDV撲滅プログラムにおいて貴重となり得、また、他の牛ワクチンと組み合わされて、産業におけるかなりの前進となり得る。BVDVの蔓延を防止および監視するために、より効果的なワクチンは、「印つき(marked)」ワクチンであろう。このようなワクチンは、野生型ウイルスには存在しないさらなる抗原決定基を含有するか、または野生型ウイルスに存在する抗原決定基を欠いたものであり得る。前者に関しては、ワクチン接種された動物は、「マーカー」免疫原性決定基に対する免疫応答を高めるが、ワクチン接種されていない動物は高めない。マーカー決定基に対する免疫学的アッセイの使用を介して、マーカー決定基に対する抗体の存在によって、ワクチン接種された動物を、ワクチン接種されていない、自然感染した動物から区別することができる。後者の戦略のケースでは、印つきワクチン内に該決定基が存在していないため、野生型ウイルスに感染した動物は、マーカー決定基に対する免疫応答を高め、一方、感染していない、ワクチン接種された動物は高めない。マーカー決定基に対する免疫学的アッセイの使用を介して、感染した動物を、ワクチン接種された、感染していない動物から区別することができる。両方のシナリオにおいて、感染した動物を除外することによって、群は、時間とともに、BVDVを有さないものになり得る。BVDV疾患の脅威を取り除くことの利益に加え、群がBVDVを有さないことを保証することは、貿易経済上の利益における直接的な自由をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態において、本発明は、その同種Ernsタンパク質を発現しないウシウイルス性下痢ウイルスを含むキメラペスチウイルスであって、さらに、別のペスチウイルスに由来する異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体を発現する、キメラペスチウイルスを提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスであって、前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体が、トナカイペスチウイルス、キリンペスチウイルス、およびプロングホーンアンテロープペスチウイルスからなる群から選択されるペスチウイルスに由来する、キメラペスチウイルスを提供する。
【0011】
異なる実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスであって、前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在しない少なくとも1つのErnsエピトープを有する、キメラペスチウイルスを提供する。
【0012】
別個の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスであって、前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在する少なくとも1つのErnsエピトープを欠く、キメラペスチウイルスを提供する。
【0013】
1つの実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスの培養物を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスを含む細胞系または宿主細胞を提供する。
【0015】
さらに別の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子を提供する。
【0016】
異なる実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスおよび獣医学的に許容できる担体を含む免疫原性組成物を提供する。
【0017】
別個の実施形態において、本発明は、獣医学的に許容できる担体がアジュバントである、上記の免疫原性組成物を提供する。
【0018】
さらに別の実施形態において、本発明は、前記キメラペスチウイルスが生で弱毒化されている、上記の免疫原性組成物を提供する。
【0019】
さらに別の実施形態において、本発明は、前記キメラペスチウイルスが不活化されている、上記の免疫原性組成物を提供する。
【0020】
異なる実施形態において、本発明は、動物における1つまたは複数のさらなる病原性微生物の蔓延を治療または予防するために有用な1つまたは複数のさらなる抗原をさらに含む、上記の免疫原性組成物を提供する。
【0021】
別個の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子および獣医学的に許容できる担体を含む、免疫原性組成物を提供する。
【0022】
1つの実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスおよび獣医学的に許容できる担体を含む、ワクチンを提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、獣医学的に許容できる担体がアジュバントである、上記のワクチンを提供する。
【0024】
異なる実施形態において、本発明は、前記キメラペスチウイルスが生で弱毒化されている、上記のワクチンを提供する。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、前記キメラペスチウイルスが不活化されている、上記のワクチンを提供する。
【0026】
さらに別の実施形態において、本発明は、動物における1つまたは複数のさらなる病原性微生物の蔓延を治療または予防するために有用な1つまたは複数のさらなる抗原をさらに含む、上記のワクチンを提供する。
【0027】
別個の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子および獣医学的に許容できる担体を含む、ワクチンを提供する。
【0028】
1つの実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンを少なくとも1つの容器内に含む、キットを提供する。
【0029】
別の実施形態において、本発明は、ウシウイルス性下痢ウイルス感染の蔓延を治療または予防する方法であって、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンが動物に投与される方法を提供する。
【0030】
異なる実施形態において、本発明は、動物にワクチン接種する方法であって、DIVAペスチウイルスワクチンが前記動物に投与され、前記DIVAペスチウイルスワクチンが上記のキメラペスチウイルスを含み、さらに、前記キメラペスチウイルスが、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在しない少なくとも1つのErnsエピトープを有する方法を提供する。
【0031】
別個の実施形態において、本発明は、動物にワクチン接種する方法であって、DIVAペスチウイルスワクチンが前記動物に投与され、前記DIVAワクチンが上記のキメラペスチウイルスを含み、さらに、前記キメラペスチウイルスが、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在する少なくとも1つのErnsエピトープを欠く方法を提供する。
【0032】
さらに別の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物と、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物とを区別する方法であって、前記ワクチンでワクチン接種された動物が、前記ワクチンのキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を生成し、
a)動物から血清試料を得るステップ、
b)抗体の存在または不存在について前記試料をアッセイするステップ、
c)前記抗体を有する動物を、前記ワクチンでワクチン接種されていると同定するステップ、および
d)前記抗体を欠く動物を、野生型BVDVに感染していると同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0033】
さらに別の実施形態において、本発明は、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物と、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物とを区別する方法であって、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するが前記ワクチンのキメラペスチウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を生成し、
a)動物から血清試料を得るステップ、
b)抗体の存在または不存在について前記試料をアッセイするステップ、
c)前記抗体を有する動物を、野生型BVDVに感染していると同定するステップ、および
d)前記抗体を欠く動物を、前記ワクチンでワクチン接種されていると同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0034】
1つの実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物と、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物とを区別するための診断キットであって、ワクチンのキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を検出し得る試薬を含む診断キットを提供する。
【0035】
別の実施形態において、本発明は、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物と、上記のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物とを区別するための診断キットであって、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するがワクチンのキメラペスチウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を検出し得る試薬を含む診断キットを提供する。
【0036】
さらに別の実施形態において、本発明は、上記のキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しないErnsエピトープを認識する抗体を提供する。
【0037】
異なる実施形態において、本発明は、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するが上記のキメラペスチウイルスにおいては存在しないエピトープを認識する抗体を提供する。
【0038】
別の実施形態において、本明細書において記載されるキメラペスチウイルスは、BVDVによって生じる感染の予防または治療のための薬剤の調製において用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の定義は、本発明の実施形態の記載において採用される用語に適用され得る。以下の定義は、参照することによって本明細書に組み込まれる個別の参考文献に含まれる、あらゆる相反する定義に優先する。
【0040】
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。さらに、文脈から別段の必要性がない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれる。
【0041】
本明細書において用いられる「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸に類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を言う。天然アミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、およびその後に修飾されているアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。20種の従来のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、α−アミノ酸およびα−二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、ならびに他の従来にないアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドに適した成分であり得る。従来にないアミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、σ−N−メチルアルギニン、ならびに他の類似のアミノ酸およびイミノ酸が含まれる。
【0042】
アミノ酸類似体は、天然アミノ酸と同一の基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合している炭素を有する化合物を言う。例示的なアミノ酸類似体には、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、およびメチオニンメチルスルホニウムが含まれる。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)、または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同一の本質的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸に類似の様式で機能する化合物を言う。
【0043】
アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に知られている三文字記号によって、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される一文字記号によって言及され得る。
【0044】
本明細書において用いられる「動物」という用語は、限定はしないが、家畜および野生の両方のウシ、ヒツジ、ヤギ、およびブタの種を含む、BVDV感染に感受性のあるあらゆる動物を含むものである。
【0045】
本明細書において用いられる「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、エピトープの認識によって抗原に結合し得る、免疫グロブリン分子を言う。抗体は、ポリクローナル混合物またはモノクローナルであり得る。抗体は、天然由来源もしくは組換え由来源からも完全な免疫グロブリンであり得るか、または、完全な免疫グロブリンの免疫反応性部分であり得る。抗体は、例えばFv、Fab’、F(ab’)を含む様々な形態で、および一本鎖で存在し得る。
【0046】
本明細書において用いられる「抗原」という用語は、対象に暴露されると、その抗原に特異的な免疫応答を誘発する、1つまたは複数のエピトープ(線状エピトープ、立体構造エピトープ、またはその両方)を含有する分子を言う。「抗原」という用語は、弱毒化された、不活化された、または改変された生の、細菌、ウイルス、真菌、寄生生物、または他の微生物を言い得る。本明細書において用いられる「抗原」という用語はまた、自然界で抗原が随伴する生物全体から分離し、別個になっている、サブユニット抗原を言い得る。「抗原」という用語はまた、抗イディオタイプ抗体またはその断片などの抗体、および抗原または抗原決定基(エピトープ)を模倣し得る合成ペプチドミモトープを言い得る。「抗原」という用語はまたは、DNA免疫化の用途など、インビボで、抗原または抗原決定基を発現する、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを言い得る。
【0047】
本明細書において用いられる「BVDV」、「BVDV単離体」、または「BVDV株」という用語は、限定はしないがI型およびII型を含む、ウイルスゲノム、関連タンパク質、および他の化学的構成要素(脂質など)からなる、ウシウイルス性下痢ウイルスを言う。多くのI型およびII型のウシウイルス性下痢ウイルスが当業者に知られており、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC(登録商標))を介して入手可能である。ウシウイルス性下痢ウイルスは、RNAの形態のゲノムを有する。RNAは、クローニングにおける使用のために、DNAに逆転写され得る。したがって、本明細書においてなされる、核酸配列およびウシウイルス性下痢ウイルス配列への言及は、ウイルスRNA配列およびウイルスRNA配列に由来するDNA配列の両方を包含する。
【0048】
本明細書において用いられる「細胞系」または「宿主細胞」という用語は、ウイルスの複製および/または維持が可能な、原核細胞または真核細胞を意味する。
【0049】
本明細書において用いられる「キメラの」または「キメラ」という用語は、例えば、2つ以上の祖先に由来する遺伝的または物理的成分を含有する、例えばウイルスなどの微生物を意味する。
【0050】
本明細書において用いられる「培養物」という用語は、他の種またはタイプの不存在下で成長している細胞または微生物の集団を意味する。
【0051】
本明細書において用いられる「DIVA」という用語は、感染した動物をワクチン接種された動物から区別し得るワクチンを意味する。
【0052】
「エピトープ」は、T細胞受容体または特異的抗体に結合する抗原の特異的部位であり、典型的には、約3個のアミノ酸残基から約20個のアミノ酸残基を含む。
【0053】
本明細書において用いられる「異種」という用語は、異なる種または株に由来することを意味する。
【0054】
本明細書において用いられる「同種」という用語は、同一の種または株に由来することを意味する。
【0055】
本明細書において用いられる「免疫原性組成物」という用語は、単独で、または薬学的に許容できる担体と共に動物に投与されると、免疫応答を生じさせる(すなわち、免疫原性活性を有する)組成物を意味する。免疫応答は、細胞傷害性T細胞によって主に仲介される細胞性免疫応答、または、ヘルパーT細胞によって主に仲介され、次に自らがB細胞を活性化して抗体の生産を導く、液性免疫応答であり得る。
【0056】
本明細書において用いられる「病原体」または「病原性微生物」という用語は、その宿主動物において疾患、疾病、または異常な状態を誘発し得るかまたは生じさせ得る、微生物、例えば、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、または寄生蠕虫を意味する。
【0057】
本明細書において用いられる「ペスチウイルス」という用語は、フラビウイルス科のペスチウイルス属のRNAウイルスを意味する。ペスチウイルスには、限定はしないが、BVDV(1型および2型)、豚コレラウイルス(CSFV)、およびボーダー病ウイルス(BDV)、ならびに、イノシシ、バッファロー、エランド、バイソン、アルパカ、プーズー、ボンゴ、様々なシカ種、キリン、トナカイ、シャモア、およびプロングホーンアンテロープなどの種から単離されたペスチウイルスが含まれる(VilcekおよびNettleton、Vet Microbiol.116:1〜12(2006))。
【0058】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド分子」という用語は、鎖内で共有結合しているヌクレオチドモノマーからなる、有機ポリマー分子を意味する。DNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)は、独特の生物学的機能を有するポリヌクレオチドの例である。
【0059】
本明細書において用いられる「予防する」、「予防(preventing)」、または「予防(pretenvion)」などの用語は、微生物の複製を阻害すること、微生物の伝染を阻害すること、またはその宿主における微生物の定着を阻害することを意味する。本明細書において用いられるこれらの用語および類似の用語はまた、感染の1つまたは複数の兆候または症状を阻害または遮断することを意味し得る。
【0060】
本明細書において用いられる「治療上効果的な量」という用語は、それを投与された対象において免疫応答を引き起こすために十分な、微生物、またはサブユニット抗原、またはポリペプチド、またはポリヌクレオチド分子、およびその組み合わせの量を意味する。免疫応答は、限定はしないが、細胞性免疫および/または液性免疫の誘発を含み得る。
【0061】
本明細書において用いられる「治療する」、「治療(treating)」、または「治療(treatment)」などの用語は、微生物による感染を低減させるかまたは除去することを意味する。本明細書において用いられるこれらの用語および類似の用語はまた、微生物の複製を低減させること、微生物の伝染を低減させること、またはその宿主における微生物の定着能力を低減させることを意味し得る。本明細書において用いられるこれらの用語および類似の用語はまた、微生物による感染の1つもしくは複数の兆候もしくは症状を低減させること、改善すること、もしくは除去すること、または微生物による感染からの回復を早めることを意味し得る。
【0062】
本明細書において用いられる「ワクチン」および「ワクチン組成物」という用語は、感染を予防するかもしくは低減させる組成物、または感染の1つもしくは複数の兆候もしくは症状を予防するかもしくは低減させる組成物を意味する。病原体に対するワクチン組成物の予防効果は、通常は、対象において、細胞介在性免疫応答または液性免疫応答または両方の組み合わせである免疫応答を誘発することによって達成される。一般的に、感染の発生の廃絶もしくは低減、兆候もしくは症状の改善、または感染した対象からの微生物の除去の促進は、ワクチン組成物の防御効果の指標である。本発明のワクチン組成物は、BVDVによって生じる感染に対する防御効果を提供する。
【0063】
本明細書において用いられる「変異体」という用語は、所与のタンパク質および/または遺伝子配列の派生物を言い、派生した配列は、突然変異による違いを除いて、本質的に所与の配列と同一である。前記違いは、天然のものであり得るか、または合成によってもしくは遺伝的に生じたものであり得る。
【0064】
本明細書において用いられる「獣医学的に許容できる担体」という用語は、信頼できる医学的判断の範囲内にあり、不必要な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなく動物の組織に接触させる使用に適しており、合理的なリスク対効果比に見合い、かつそれらの目的とする用途に効果的な物質を言う。
【0065】
以下の記載は、当業者による本発明の実施を助けるために提供される。それでも、この記載は、本発明を不必要に制限するものと解釈されるべきではなく、それは、本明細書において論じられる実施形態における改変および変更が、本発明の発見の趣旨または範囲から逸脱することなく、当業者によって行われ得るためである。
【0066】
ウイルス、免疫原性組成物、およびワクチン
本発明は、1つまたは複数のキメラペスチウイルスを含む免疫原性組成物およびワクチンを提供し、前記キメラペスチウイルスは、その同種Ernsタンパク質を発現しないウシウイルス性下痢ウイルスを含むが、別のペスチウイルスに由来する異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体を発現する。キメラペスチウイルスは、限定はしないが、BVDV/トナカイペスチウイルスキメラ、BVDV/キリンペスチウイルスキメラ、およびBVDV/プロングホーンアンテロープペスチウイルスキメラからなる群から選択され得る。
【0067】
1つの実施形態において、BVDV/キリンキメラペスチウイルスは、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))、10801 University Boulevard、Manassas、VA 20110−2209、USAでUC25547として寄託されている株であり、この株には、PTA−9938というATCC(登録商標)受託番号が付与されている。1つの実施形態において、BVDV/プロングホーンアンテロープキメラペスチウイルスは、ATCC(登録商標)でUC25548として寄託されている株であり、この株には、PTA−9939というATCC(登録商標)受託番号が付与されている。1つの実施形態において、BVDV/トナカイキメラペスチウイルスは、ATCC(登録商標)でUC25549として寄託されている株であり、この株には、PTA−9940というATCC(登録商標)受託番号が付与されている。
【0068】
本発明のキメラペスチウイルスは、細胞、細胞系、および宿主細胞において増殖し得る。前記細胞、細胞系、または宿主細胞は、例えば、限定はしないが、昆虫細胞および植物細胞を含む、哺乳動物細胞および非哺乳動物細胞であり得る。本発明のキメラペスチウイルスが増殖し得る細胞、細胞系、および宿主細胞は、当業者が容易に知ることができ、また、入手しやすいものである。
【0069】
本発明のキメラペスチウイルスは、免疫原性組成物またはワクチンにおいて用いる前に、弱毒化または不活化され得る。弱毒化および不活化の方法は、当業者に周知である。弱毒化のための方法には、限定はしないが、適切な細胞系に対する細胞培養における連続継代、紫外線照射、および化学的突然変異生成が含まれる。不活化のための方法には、限定はしないが、ホルマリン、ベータプロピオラクトン(BPL)、もしくはバイナリーエチレンイミン(BEI)での処理、または当業者に知られている他の方法が含まれる。
【0070】
ホルマリンによる不活化は、ホルムアルデヒドの最終濃度が0.05%となるまで、ウイルス懸濁液と37%ホルムアルデヒドとを混合することによって行うことができる。ウイルス−ホルムアルデヒド混合物は、室温でおよそ24時間にわたり持続的に撹拌することによって混合される。不活化ウイルス混合物は次に、適切な細胞系での成長についてアッセイすることによって、残りの生存ウイルスについて試験される。
【0071】
BEIによる不活化は、BEIの最終濃度が1mMとなるまで、本発明のウイルス懸濁液と0.1MのBEI(0.175NのNaOH内の2−ブロモエチルアミン)とを混合することによって行うことができる。ウイルス−BEI混合物は、室温でおよそ48時間にわたり持続的に撹拌することによって混合され、その後、最終濃度が0.1mMとなるまで、1.0Mのチオ硫酸ナトリウムが添加される。混合は、さらに2時間にわたり続けられる。不活化ウイルス混合物は、適切な細胞系での成長についてアッセイすることによって、残りの生存ウイルスについて試験される。
【0072】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、1つまたは複数の獣医学的に許容できる担体を含み得る。本明細書において用いられる場合、「獣医学的に許容できる担体」には、あらゆるおよび全ての溶媒、分散媒質、被覆剤、アジュバント、安定剤、希釈剤、保存剤、抗生物質および抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などが含まれる。希釈剤には、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが含まれ得る。等張剤には、当業者に知られているもののなかでも、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれ得る。安定剤には、当業者に知られているもののなかでも、アルブミンが含まれる。保存剤には、当業者に知られているもののなかでも、メルチオレート(merthiolate)が含まれる。
【0073】
アジュバントには、限定はしないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、例えば、当業者に知られている多くのもののなかでも、フロイント完全アジュバントおよび不完全アジュバント、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta Ga.)、SAF−M(Chiron、Emeryville Calif.)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、QS−21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge Mass.)、GPI−0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)もしくは他のサポニン画分、モノホスホリル脂質A、アブリジン脂質−アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)から得られる易熱性エンテロトキシン(組換え、またはそれ以外のもの)、コレラ毒素、またはムラミルジペプチドが含まれる。本発明との関連で有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は、当業者によって容易に決定され得る。1つの実施形態において、本発明は、約50μgから約2000μgのアジュバントを含む免疫原性組成物およびワクチンを検討する。別の実施形態において、アジュバントは、約100μgから約1500μgの量、または約250μgから約1000μgの量、または約350μgから約750μgの量で含まれる。別の実施形態において、アジュバントは、2ml用量の免疫原性組成物またはワクチン当たり約500μgの量で含まれる。
【0074】
免疫原性組成物およびワクチンはまた、抗生物質を含み得る。このような抗生物質には、限定はしないが、アミノグリコシド、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、マクロライド、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、およびテトラサイクリンのクラスのものが含まれる。1つの実施形態において、本発明は、約1μg/mlから約60μg/mlの抗生物質を含む免疫原性組成物およびワクチンを検討する。別の実施形態において、免疫原性組成物およびワクチンは、約5μg/mlから約55μg/mlの抗生物質、または約10μg/mlから約50μg/mlの抗生物質、または約15μg/mlから約45μg/mlの抗生物質、または約20μg/mlから約40μg/mlの抗生物質、または約25μg/mlから約35μg/mlの抗生物質を含む。さらに別の実施形態において、免疫原性組成物およびワクチンは、約30μg/ml未満の抗生物質を含む。
【0075】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンはさらに、1つまたは複数の他の免疫調節物質、例えば、インターロイキン、インターフェロン、または他のサイトカインを含み得、その適切な量は、当業者によって決定され得る。
【0076】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、キメラペスチウイルスをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド分子を含み得る。キメラペスチウイルスゲノムの全てをコードするDNA分子もしくはRNA分子、または1つもしくは複数のオープンリーディングフレームを、免疫原性組成物またはワクチンにおいて用いることができる。DNA分子またはRNA分子は、他の作用物質の不存在下で投与され得るか、または、細胞の取り込みを促進する作用物質(例えば、リポソームまたは陽イオン性脂質)と共に投与され得る。免疫原性組成物またはワクチンにおける総ポリヌクレオチドは、通常、約0.1μg/mlから約5.0mg/mlの間である。別の実施形態において、免疫原性組成物またはワクチンにおける総ポリヌクレオチドは、約1μg/mlから約4.0mg/ml、または約10μg/mlから約3.0mg/ml、または約100μg/mlから約2.0mg/mlである。核酸(DNAまたはmRNA)を利用するワクチンおよびワクチン接種手順は、例えば米国特許第5,703,055号、米国特許第5,580,859号、米国特許第5,589,466号など、当技術分野において良く記載されており、前記文献の全ては、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンはまた、さらなるBVDV抗原、例えば、米国特許第6,060,457号、米国特許第6,015,795号、米国特許第6,001,613号、および米国特許第5,593,873号において記載されているものを含み得、前記文献の全ては、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0078】
1つまたは複数のキメラペスチウイルスに加え、免疫原性組成物およびワクチンは、他の抗原を含み得る。抗原は、微生物の不活化された全調製物もしくは部分的調製物の形態であり得るか、または、遺伝子操作技術もしくは化学的合成によって得られる抗原分子の形態であり得る。本発明に従った使用に適した他の抗原には、限定はしないが、ヘモフィルス・ソムナス(Haemophilus somnus)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、アクチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumonie)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、マンヘミア・ヘモリチカ(Mannhemia haemolytica)、マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、ヨーネ菌(Mycobacterium paratuberculosis)、クロストリジウム種(Clostridial spp.)、乳房連鎖球菌(Streptococcus uberis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、クラミジア種(Chlamydia spp.)、ブルセラ種(Brucella spp.)、ビブリオ種(Vibrio spp.)、サルモネラ菌(Salmonella enterica serovars)、およびレプトスピラ種(Leptospira spp.)などの病原性細菌に由来するものが含まれる。抗原はまた、カンジダ(Candida)などの病原性真菌、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、ネオスポラ・カニナム(Neospora caninum)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、アイメリア種(Eimeria spp.)、バベシア種(Babesia spp.)、ジアルジア種(Giardia spp.)などの原生動物、または、などのオステルタギア(Ostertagia)、クーペリア(Cooperia)、ヘモンクス(Haemonchus)、およびカンテツ(Fasciola)などの寄生蠕虫に由来し得る。さらなる抗原には、ウシコロナウイルス、ウシヘルペスウイルス−1、3、6、ウシパラインフルエンザウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、ウシ白血病ウイルス、牛疫ウイルス、口蹄疫ウイルス、狂犬病ウイルス、およびインフルエンザウイルスなどの、病原性ウイルスが含まれる。
【0079】
投与の形態、投薬量、経路
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、BVDVに対する効果的な免疫応答を誘発するために動物に投与され得る。したがって、本発明は、治療上効果的な量の、本明細書において記載される本発明の免疫原性組成物またはワクチンを動物に投与することによる、BVDVに対する効果的な免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0080】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、投与経路に応じて様々な形態で作製され得る。例えば、免疫原性組成物およびワクチンは、注射での使用に適した無菌の水性の溶液もしくは分散液の形態で作製され得るか、または、フリーズドライ技術を用いて凍結乾燥形態で作製され得る。凍結乾燥された免疫原性組成物およびワクチンは、典型的には約4℃で維持され、アジュバントを伴って、または伴わずに、安定化溶液、例えば生理食塩水またはHEPES内で再構成され得る。免疫原性組成物およびワクチンはまた、懸濁液または乳濁液の形態で作製され得る。
【0081】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、治療上効果的な量の上記のキメラペスチウイルスの1つまたは複数を含む。精製されたウイルスは、免疫原性組成物もしくはワクチンにおいて直接的に用いられ得るか、または、さらに弱毒化されるかもしくは不活化され得る。典型的には、免疫原性組成物またはワクチンは、約1×10個から約1×1012個の間のウイルス粒子、または約1×10個から約1×1011個の間のウイルス粒子、または約1×10個から約1×1010個の間のウイルス粒子、または約1×10個から約1×10個の間のウイルス粒子、または約1×10個から約1×10個の間のウイルス粒子を含有する。防御効果をもたらすために効果的な、免疫原性組成物またはワクチンにおけるウイルスの正確な量は、当業者によって決定され得る。
【0082】
免疫原性組成物およびワクチンは通常、約0.5mlから約5mlの間の容積の、獣医学的に許容できる担体を含む。別の実施形態において、担体の容積は、約1mlから約4mlの間であるか、または約2mlから約3mlの間である。別の実施形態において、担体の容積は、約1mlであるか、または約2mlであるか、または約5mlである。免疫原性組成物およびワクチンにおける使用に適した、獣医学的に許容できる担体は、本明細書において先に記載されたもののいずれかであり得る。
【0083】
当業者は、投与の前にウイルスを弱毒化または不活化する必要があるかどうかを、容易に決定することができる。本発明の別の実施形態において、キメラペスチウイルスは、さらなる弱毒化を行うことなく、動物に直接投与され得る。治療上効果的なウイルスの量は、用いられる特定のウイルス、動物の状態、および/または感染の程度に応じて変化し得、当業者によって決定され得る。
【0084】
本発明の方法に従うと、単回用量を動物に投与することができるか、あるいは、約2週間から約10週間の間隔で2回以上の接種を行うことができる。追加投与レジメンが必要とされてもよく、投薬レジメンは、最適な免疫化をもたらすために調節され得る。当業者は、最適な投与レジメンを容易に決定することができる。
【0085】
免疫原性組成物およびワクチンは、血流内、筋肉内、または内臓内に直接投与され得る。非経口投与のための適切な手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、および皮下が含まれる。非経口投与のための適切な装置には、針(マイクロ針を含む)注入器、針を有さない注入器、および点滴技術が含まれる。
【0086】
非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物、および緩衝剤(好ましくは約3から約9のpH、または約4から約8のpH、または約5から約7.5のpH、または約6から約7.5のpH、または約7から約7.5のpHにするもの)などの賦形剤を含有し得る、水性溶液であるが、いくつかの用途では、これは、無菌の非水性溶液として、または、発熱物質を有さない滅菌水などの適切な媒体と組み合わせて用いるための乾燥形態として、より適切に製剤され得る。
【0087】
例えば凍結乾燥による、無菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術を用いて、容易に達成され得る。
【0088】
非経口溶液の調製において用いられる化合物の溶解度は、緩衝液、塩、界面活性剤、リポソーム、シクロデキストリンなどを含む、溶解度増強剤の組み込みなどの、当業者に知られている適切な製剤技術を用いることによって増大し得る。
【0089】
非経口投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、および計画放出が含まれる。したがって、本発明の化合物は、活性化合物の調節放出をもたらすインプラントデポ(implanted depot)としての投与のために、固体、半固体、または揺変性液体として製剤され得る。このような製剤の例には、薬剤被覆ステント、およびポリ(dl−乳酸グリコール酸共重合体)(PGLA)ミクロスフェアが含まれる。
【0090】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンはまた、皮膚または粘膜に、すなわち皮膚にまたは経皮的に、局所的に投与され得る。この目的のための典型的な製剤には、ゲル、ヒドロゲル、ローション、溶液、クリーム、軟膏、散布剤、包帯剤、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハース、インプラント、スポンジ、ファイバー、包帯、およびマイクロエマルジョンが含まれる。リポソームもまた用いることができる。典型的な担体には、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびプロピレングリコールが含まれる。浸透増強剤もまた組み込むことができる。例えば、FinninおよびMorgan、J.Pharm Sci、88(10):955〜958(1999)を参照されたい。
【0091】
局所的投与の他の手段には、エレクトロポレーション、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシス、および、マイクロ針注射または針を有さない(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)など)注射による送達が含まれる。
【0092】
局所的投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、および計画放出が含まれる。
【0093】
免疫原性組成物およびワクチンはまた、典型的には、乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末の形態で(単独で、または混合物として、例えば、ラクトースとの乾燥混和物で、または、例えばホスファチジルコリンなどのリン脂質と混合された、混合成分粒子として)、または、1,1,1,2−テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンなどの適切な噴射剤の使用を伴うかもしくは伴わない、加圧された容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、細かな霧を生じさせるために電気流体力学を用いたアトマイザー)、もしくは噴霧器からのエアロゾルスプレーとして、鼻腔内でまたは吸入によって投与され得る。鼻腔内での使用では、粉末は、生体接着剤、例えば、キトサンまたはシクロデキストリンを含み得る。
【0094】
加圧された容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、または噴霧器は、例えば、エタノール、水性エタノール、または、活性物質の分散、可溶化、もしくは放出延長のための適切な別の作用物質を含む、本発明の化合物(複数可)の溶液または懸濁液と、溶媒としての噴射剤(複数可)と、ソルビタントリオレエート、オレイン酸、またはオリゴ乳酸などの、最適な界面活性剤とを含有する。
【0095】
乾燥粉末製剤または懸濁液製剤における使用の前に、薬品は通常、吸入による送達に適したサイズに微粒化される(典型的には、約5ミクロン未満)。これは、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、またはスプレー乾燥などの、あらゆる適切な粉末化方法によって達成され得る。
【0096】
吸入器または吹送器において用いるための、カプセル(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製される)、ブリスター、およびカートリッジは、本発明の化合物の粉末混合物、ラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基材、および、l−ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウムなどの性能調節剤を含有するように製剤され得る。ラクトースは、無水であり得るか、または、一水和物の形態であり得る。他の適切な賦形剤には、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。
【0097】
細かい霧を生じさせるための電気流体力学を用いたアトマイザーにおいて用いるための、適切な溶液製剤は、作動当たり約1μgから約20mgの本発明の化合物を含有し得、作動容積は、約1μlから約100μlで変動し得る。別の実施形態において、作動当たりの化合物の量は、約100μgから約15mg、または約500μgから約10mg、または約1mgから約10mg、または約2.5μgから約5mgの範囲であり得る。別の実施形態において、作動容積は、約5μlから約75μl、または約10μlから約50μl、または約15μlから約25μlの範囲であり得る。典型的な製剤は、本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、および塩化ナトリウムを含み得る。プロピレングリコールの代わりに用いることができる別の溶媒には、グリセロールおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0098】
吸入/鼻腔内投与のための製剤は、例えばPGLAを用いて、即時放出および/または調節放出となるように製剤され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、および計画放出が含まれる。
【0099】
乾燥粉末吸入器およびエアロゾルのケースでは、投薬単位は通常、定量を送達するバルブによって決定される。本発明に従った単位は、典型的には、約10ngから約100μgの本発明の化合物を含有する定量または「一回分」を投与するように準備される。別の実施形態において、定量で投与される化合物の量は、約50ngから約75μgであるか、または約100ngから約50μgであるか、または約500ngから約25μgであるか、または約750ngから約10μgであるか、または約1μgから約5μgである。全体的な1日用量は、典型的には約1μgから約100mgの範囲であり得、これは、単回用量で投与され得るか、または、より一般には、1日を通して分割された用量として投与され得る。別の実施形態において、全体的な1日用量は、約50μgから約75mg、または約100μgから約50mg、または約500μgから約25mg、または約750μgから約10mg、または約1mgから約5mgの範囲であり得る。
【0100】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンはまた、口腔的または経口的に、すなわち、口を介して、または口を経由して、かつ、嚥下または口腔粘膜(例えば、舌下吸収もしくは頬吸収)を介した輸送またはその両方を伴って、対象の体内に投与され得る。メントールおよびレボメントールなどの適切な香料、または、サッカリンまたはサッカリンナトリウムなどの適切な甘味料を、口腔投与または経口投与を意図した本発明のこれらの製剤に添加することができる。
【0101】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、例えば、座剤、ペッサリー、または浣腸剤の形態で、直腸または膣に投与され得る。ココアバターが従来の座剤基材であるが、様々な代替物を必要に応じて用いることができる。直腸/膣投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、および計画放出が含まれる。
【0102】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンはまた、典型的には、等張の、pH調節された無菌生理食塩水内の、微粒化された懸濁液または溶液の液滴の形態で、目または耳に直接投与され得る。目および耳への投与に適した他の製剤には、軟膏、生分解性(例えば、吸収可能なゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えば、シリコン)のインプラント、ウエハース、レンズ、ならびに、ニオソームまたはリポソームなどの微粒子系または小胞系が含まれる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、もしくはメチルセルロースなどのセルロースポリマー、または、例えばゲランガムなどのヘテロ多糖ポリマーが、塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と共に組み込まれ得る。このような製剤はまた、イオントフォレーシスによって送達され得る。
【0103】
目/耳投与のための製剤は、即時放出および/または調節放出となるように製剤され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、および計画放出が含まれる。
【0104】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、動物におけるウシウイルス性下痢ウイルス感染の蔓延を治療または予防するための薬剤の調製において用いられ得る。
【0105】
本発明の免疫原性組成物およびワクチンは、動物に投与するための薬剤の調製において用いられ得、該薬剤は、その同種Ernsタンパク質を発現しないウシウイルス性下痢ウイルスを含むキメラペスチウイルスを含む、DIVAペスチウイルスワクチンであり、前記キメラペスチウイルスは、別のペスチウイルスに由来する異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体を発現する。1つの実施形態において、キメラペスチウイルスは、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在しない少なくとも1つのErnsエピトープを有する。別の実施形態において、キメラペスチウイルスは、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在する少なくとも1つのErnsエピトープを欠く。
【0106】
検出方法、診断方法
本発明は、動物対象内に存在するペスチウイルスの源を決定する方法を提供する。
【0107】
感染した動物をワクチン接種された動物から区別し得るワクチンであるDIVAワクチンを用いたワクチン接種は、動物対象内に存在するペスチウイルスの源を決定するための手段を提供する。この区別は、限定はしないが、ELISA、ウェスタンブロッティング、およびPCRを含む、様々な診断方法のいずれかを介して達成され得る。これらの方法および他の方法は容易に認識され、当業者に知られている。
【0108】
本発明のキメラペスチウイルスは、ゲノム構成および発現されるタンパク質の両方において、野生型BVDV株から区別され得る。このような区別により、ワクチン接種された動物と感染した動物との間の判別が可能になる。例えば、決定は、ある研究試験においてBVDVについて陽性であると判定された動物が、野生型BVDV株を有するか、または、ワクチン接種を介して以前に獲得された本発明のキメラペスチウイルスを有するかに関して行うことができる。
【0109】
決定を行うために、様々なアッセイを採用することができる。例えば、ウイルスは、BVDVについて陽性であると判定された動物から単離され得、核酸に基づいたアッセイを用いて、事前のワクチン接種の指標であるキメラペスチウイルスゲノムの存在を決定することができる。核酸に基づいたアッセイには、サザンブロットアッセイまたはノーザンブロットアッセイ、PCR、および配列決定が含まれる。あるいは、タンパク質に基づいたアッセイを採用することができる。タンパク質に基づいたアッセイにおいて、感染が疑われる細胞または組織を、BVDVについて陽性であると判定された動物から単離することができる。細胞抽出物は、このような細胞または組織から作製され得、例えば、事前に接種されたキメラペスチウイルスまたは野生型BVDVのいずれかの存在を区別して同定し得る、ウイルスタンパク質に対する適切な抗体を用いて、ウェスタンブロットに供され得る。
【0110】
動物において誘発される免疫応答の程度および性質は、様々な技術を用いることによって評価され得る。例えば、接種された動物から血清を回収し、例えば、従来のウイルス中和アッセイにおいて、キメラウイルスに特異的な抗体の存在または不存在について試験することができる。リンパ組織における応答性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の検出は、細胞性免疫応答の誘発の指標である、T細胞増殖などのアッセイによって達成され得る。関連する技術は、例えば、Coliganら.Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons Inc.(1994)など、当技術分野において良く記載されている。
【0111】
キット
例えば特定の疾患または状態を治療する目的で、さらなる化合物と組み合わせた免疫原性組成物またはワクチンを投与することが望ましい場合があるが、免疫原性組成物またはワクチンが、組成物の投与または共投与に適したキットの形態で好都合に含まれるか、または組み合わされ得ることは、本発明の範囲内である。
【0112】
したがって、本発明のキットは、1つまたは複数の別個の医薬組成物と、容器、分割されたボトル、または分割された箔袋などの、前記組成物を個別に保持するための手段とを含むことができ、該医薬組成物の少なくとも1つは、本発明に従った免疫原性組成物またはワクチンである。このようなキットの例は、シリンジおよび針などである。本発明のキットは、異なる投薬形態を投与するため、例えば口腔もしくは非経口で投与するため、異なる投薬間隔で別個の組成物を投与するため、または別個の組成物を互いに滴定するために、特に適している。本発明の組成物の投与を助けるために、キットは典型的には、投与のための指示書を含む。
【0113】
本発明の別のキットは、BVDVに感染した動物と、キメラペスチウイルスをワクチン接種された動物との検出および区別に有用な1つまたは複数の試薬を含み得る。キットは、BVDV全体、または、免疫原性組成物もしくはワクチンのキメラペスチウイルスにおいて存在しない、BVDVのポリペプチド、エピトープ、もしくはポリヌクレオチド配列の存在について試料を分析するための試薬を含み得る。あるいは、本発明のキットは、キメラペスチウイルス、または、野生型BVDVにおいて存在しないポリペプチド、エピトープ、もしくはポリヌクレオチド配列の存在について試料を分析するための試薬を含み得る。ウイルス、ポリペプチド、またはポリヌクレオチド配列の存在は、抗体、PCR、ハイブリダイゼーション、および当業者に知られている他の検出方法を用いて決定され得る。
【0114】
本発明の別のキットは、特定のエピトープに対する抗体を検出するための試薬を提供し得る。エピトープは、本発明のキメラペスチウイルスにおいて存在し、野生型BVDVにおいては存在しないか、あるいは、野生型BVDVにおいて存在し、本発明のキメラペスチウイルスにおいては存在しない。このような試薬は、抗体の存在について試料を分析するために有用であり、当業者に容易に知られ、利用可能である。抗体の存在は、当業者に知られている標準的な検出方法を用いて決定され得る。
【0115】
特定の実施形態において、キットは、印刷された指示書一式、または、キットが、BVDVに感染した動物を、キメラペスチウイルスをワクチン接種された動物から検出および区別するために有用であることを示すラベルを含み得る。
【0116】
抗体
抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または組換え抗体のいずれかであり得る。好都合には、抗体は、免疫原またはその一部に対して調製され得る。例えば、免疫原のアミノ酸配列に基づいた、もしくは、クローニング技術によって組換えで調製された合成ペプチド、または、天然の遺伝子産物、および/あるいはその一部を単離し、免疫原として使用することができる。免疫原は、HarlowおよびLane、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、NY、(1988)、ならびにBorrebaeck、「Antibody Engineering − A Practical Guide」、W.H.Freeman and Co.(1992)において全体的に記載されているような、当業者に周知の標準的な抗体生産技術によって抗体を生産するために用いられ得る。抗体断片はまた、当業者に知られている方法によって抗体から調製され得、Fab、F(ab’)、およびFvを含む。
【0117】
抗体の生産において、所望の抗体についてのスクリーニングは、当技術分野において知られている、免疫学における標準的な方法によって達成され得る。具体的に記載されていない技術は、Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、AppletonおよびLange、Norwalk、CT(1994)、ならびにMishellおよびShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、New York(1980)などにおいて、全体的に追跡されている。通常、ELISAおよびウェスタンブロッティングが、好ましいタイプの免疫アッセイである。両アッセイは、当業者に周知である。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方をアッセイにおいて用いることができる。抗体は、当技術分野において周知であるように、固体支持体基質に結合させても、検出可能な部分とコンジュゲーションさせても、結合およびコンジュゲーションの両方を行ってもよい。(蛍光部分または酵素部分のコンジュゲーションの全体的な議論については、JohnstoneおよびThorpe、「Immunochemistry in Practice」、Blackwell Scientific Publications、Oxford(1982)を参照されたい。)固体支持体基質への抗体の結合もまた、当技術分野において周知である。(全体的な議論については、HarlowおよびLane(1988)、ならびにBorrebaeck(1992)を参照されたい。)本発明における使用について検討される検出可能な部分には、限定はしないが、蛍光マーカー、金属マーカー、酵素マーカー、および放射性マーカー、例えば、ビオチン、金、フェリチン、アルカリホスファターゼ、b−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、フルオレセイン、ローダミン、トリチウム、14C、およびヨード化が含まれ得る。
【0118】
本発明はさらに、限定するものではないが、以下の実施例によって例示される。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
キメラペスチウイルスの構築および血清学的特徴付け
大腸菌(E.coli)K12 GM2163[F−ara−14、leuB6、thi−1、fhuA31、lacY1、tsx−78、galK2、galT22、supE44、hisG4、rpsL136、(Str)、xyl−5、mtl−1、dam13::Tn9(Cam)、dcm−6、mcrB1、hsdR2(rkmk)、mcrA]は、University of NebraskaのR.Donis博士から得られた、ウシウイルス性下痢ウイルス株NADL(BVDV−NADL)の完全長ゲノムcDNAを含有するプラスミドを有する。
【0120】
RD細胞(SV40で形質転換されたウシ精巣細胞、R.Donis博士から得た)を、3%ウマ血清、変法イーグル培地(MEM)内の1%非必須アミノ酸(NEAA)、2mMのGlutaMax、および10μg/mlのゲンタマイシンを補った、OptiMEMにおいて維持した。BK−6細胞は、Pfizer Global Manufacturing(PGM)から得た。細胞を、5%ウマ血清またはドナーウシ血清(PGM)、2mMのGlutamax、ならびに1%の抗生物質および抗真菌剤を補った、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において成長させた。指定されたものを除く全ての培地成分は、Invitrogen(Carlsbad、CA)から購入した。全ての細胞は、5%CO環境において37℃で維持した。
【0121】
BVDVのErnsに特異的なモノクローナル抗体(MAb)15C5を、IDEXX(Westbrook、ME)から購入した。BVDV NS3に対するMAb20.10.6は、E.Dubovi博士(Cornell University)から提供された。ボーダー病ウイルス(BDV)のErnsタンパク質に対する特異性を有する、MAb WS363、WS373、およびWS371を、Veterinary Laboratories Agency(Surrey、UK)から得た。ウシ血清試料番号77、816、1281、および1434を、Pfizer社内で得た。
【0122】
キメラペスチウイルスは、オーバーラップPCR法を用いて、BVDV−NADL株のErns遺伝子を、キリンペスチウイルスのErns遺伝子(G−Erns)、トナカイペスチウイルスのErns遺伝子(R−Erns)、またはプロングホーンアンテロープペスチウイルスのErns遺伝子(P−Erns)で置き換えることによって生成させた。PfuUltra(商標)II fusion HS DNAポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla、CA)またはPlatinum(登録商標)Taq DNA Polymerase High Fidelity(Invitrogen)のいずれかを用いた。オーバーラップPCRおよび完全長ウイルスDNAの生成のためのオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号を伴う)を、表1に列挙する。
【0123】
【表1−1】

【0124】
【表1−2】

【0125】
BVDV−NADLの完全長cDNAを含有するプラスミドを、dam−大腸菌(E.coli)K12 GM2163から抽出した。プラスミドをインビトロでdamメチルトランスフェラーゼおよびS−アデノシルメチオニン(New England Biolabs、Ipswich、MA)でメチル化した。G−Erns遺伝子、R−Erns遺伝子、およびP−Erns遺伝子(それぞれ、GenBank受託番号NC_003678、NC_003677、およびAY781152)を合成し、クローニングベクター内にクローニングした。
【0126】
キメラBVDV−NADL/G−ErnsDNAの構築のために、C遺伝子の5’UTRから3’末端をコードするBVDV−NADL断片を、オリゴB−5およびオリゴ127プライマーを用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。G−Erns遺伝子を、オリゴ128およびオリゴ129を用いて、G−Erns遺伝子を含有するプラスミドDNAからPCRによって増幅した。E1から3’UTRをコードするBVDV断片を、オリゴ130およびオリゴ84を用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。PCR産物は、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Valencia、CA)を用いてゲル精製した。精製されたPCR産物を、DpnIおよびExonuclease 1(New England Biolabs)で処理した。オリゴB−5およびオリゴ84を用いたPCRによって、処理されたPCR産物を組み合わせて、完全長キメラBVDV−NADL/G−Ernsゲノムを作製した。
【0127】
キメラBVDV−NADL/R−ErnsDNAの構築のために、C遺伝子の5’UTRから3’末端をコードするBVDV−NADL断片を、オリゴB−5およびオリゴ131プライマーを用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。R−Erns遺伝子を、オリゴ132およびオリゴ133を用いて、R−Erns遺伝子を含有するプラスミドからPCRによって増幅した。E1から3’UTRをコードするBVDV断片を、オリゴ134およびオリゴ84を用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。PCR産物は、QIAquick Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。精製されたPCR産物を、DpnIおよびExonuclease 1で処理した。オリゴB−5およびオリゴ84を用いたPCRによって、処理されたPCR産物を組み合わせて、完全長キメラBVDV−NADL/R−Ernsゲノムを作製した。
【0128】
キメラBVDV−NADL/P−ErnsDNAの構築のために、C遺伝子の5’UTRから3’末端をコードするBVDV−NADL断片を、オリゴB−5およびオリゴ135プライマーを用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。P−Erns遺伝子を、オリゴ136およびオリゴ137を用いて、P−Erns遺伝子を含有するプラスミドDNAからPCRによって増幅した。E1から3’UTRをコードするBVDV断片を、オリゴ138およびオリゴ84を用いて、メチル化されたプラスミドからPCRによって増幅した。PCR産物は、QIAquick Gel Extraction Kitを用いてゲル精製した。精製されたPCR産物を、DpnIおよびExonuclease 1で処理した。オリゴB−5およびオリゴ84を用いたPCRによって、処理されたPCR産物を組み合わせて、完全長キメラBVDV−NADL/P−Ernsゲノムを作製した。
【0129】
キメラErns領域の配列確認のために、それぞれの組み合わされた完全長キメラゲノムの5’UTRからE1領域に対応する断片を、オリゴB−5およびオリゴ175を用いたPCRによって増幅し、PCR産物を配列決定および分析した。
【0130】
完全長ウイルスゲノムRNA転写産物を、mMessage mMachine T7 Ultra kit(Ambion、Austin、TX)を用いて、BVDV−NADLの完全長cDNAまたはキメラBVDV−NADL/ErnsDNAを含有するプラスミドから生成した。各RNA転写産物の質および量を、RNAゲルおよびNanodrop分光光度計(Nanodrop、Wilmington、DE)上で決定した。6ウェルプレートのウェルにおいて一晩培養したRD細胞を、製造者の指示に従って、Lipofectin試薬(Invitrogen)を用いて、ウイルスRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を37℃で3日間にわたりインキュベートした。上清を採取し、−80℃で保存した。
【0131】
採取した上清から得られたウイルスRNAを、製造者の指示に従ってMagMax(商標)AI/ND Viral RNA Isolation Kit(Ambion)を用いて抽出した。RNAを逆転写し、NproからE1をコードする各キメラの領域を、オリゴ177およびオリゴ175プライマー(表1)を用いて、かつ製造者の指示に従ってThermoScript(商標)RT−PCR System(Invitrogen)を用いて増幅した。次に、RT−PCR産物を配列決定した。
【0132】
ウイルスRNAのトランスフェクションまたはウイルス感染のいずれかから得られた細胞単層を、80%アセトン内で固定した。BVDV特異的な、またはBDV特異的なモノクローナル抗体(Mab)を、抗マウスIgGペルオキシダーゼABC Eliteキット(Vector Laboratories、Burlingame、CA)と組み合わせて用いた。VIPペルオキシダーゼ基質(Vector Laboratories)を用いて発色させた。
【0133】
キメラウイルスの力価を、限界希釈法によって決定した。ウイルス試料を10倍連続希釈し、希釈当たり4〜6反復ずつ、96ウェルプレートに移した(ウェル当たり100μl)。BK−6細胞の懸濁液100μlを次に各ウェルに添加し、プレートを37℃で4〜5日間にわたりインキュベートした。ウイルス感染を、細胞変性効果(CPE)およびMab染色の両方によって決定した。ウイルス力価を、Spearman−Karber法を用いて計算した。
【0134】
各キメラの生物学的クローンを得るために、ウイルス試料をまず100倍希釈し、その後、10倍連続希釈した。希釈されたウイルス100μlを、希釈当たり4複製ずつ、96ウェルプレートの各ウェルに移した。BK−6細胞100μlを次に各ウェルに添加し、プレートを37℃で4日間にわたりインキュベートした。上清を採取し、新たなプレートに移し、−80℃で保存した。細胞を固定し、染色した。単一のウイルスフォーカスを含有するウェルから得られる上清を採取し、ウイルスストックとして増殖させた。
【0135】
成長速度研究を、BK−6細胞を含有するT−25フラスコにおいて実施した。細胞がおよそ90%のコンフルエンスに達すると、それらを、0.02のMOIで、各キメラに感染させた。1時間にわたり吸着させた後、接種材料を除去した。細胞をPBSで3回洗浄し、次に、3mlの新鮮な成長培地を添加した。次に、力価決定のために、0から144時間までの様々な時点で、試料を回収した。
【0136】
ウイルス中和試験のために、3つのBVDV−NADL/Ernsキメラ、親のBVDV−NADL、およびBVDV−CM5960(BVDV I型)の凍結ストックを、約4000TCID50/mlまで、DMEM内に希釈した。BVDVのI型およびII型の両方に対する所定の力価を有する、Bovi−Shield Gold(Pfizer、New York、NY)で免疫化された牛から得られた血清を、DMEMで2倍連続希釈した。ウイルス50μl(200TCID50)を、96ウェル組織培養プレートにおいて、等容積の希釈した牛血清と混合し(4複製/希釈)、37℃で60分間にわたりインキュベートした。次に、BK−6細胞100μlを各ウェルに添加し、プレートを、37℃で3〜6日間にわたりインキュベートした。BVDV抗体について陰性の血清もまた、対照として、各プレート内に含めた。血清の終点中和力価を、3日目および6日目に、CPEおよび免疫組織化学(IHC)の両方によって決定した。
【0137】
結果。NADLのErns遺伝子/タンパク質が、キリンペスチウイルスのErns(G−Erns)、トナカイペスチウイルスのErns(R−Erns)、またはプロングホーンアンテロープペスチウイルスのErns(P−Erns)によって置き換えられた、キメラBVDV−NADL/ErnsDNAを構築した。キメラErns領域のそれぞれを含有するプラスミドDNAを配列決定して、配列の信頼性を確認した。キメラペスチウイルスBVDV−NADL/G−Erns(PTA−9938)、BVDV−NADL/P−Erns(PTA−9939)、およびBVDV−NADL/R−Erns(PTA−9940)は、2009年4月2日に、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))、10801 University Blvd.、Manassas、VA、20110、USAに寄託され、2009年4月23日に、ATCC(登録商標)によって、生存能力のあることが確認された。
【0138】
BVDV−NADL/Ernsキメラウイルスを、インビトロで転写されたウイルスRNAでトランスフェクトした後に、RD細胞から取り出した。RD細胞における大きな細胞変性効果(CPE)が、BVDV−NADL/G−ErnsまたはBVDV−NADL/R−ErnsのRNA転写産物でトランスフェクションした48〜72時間後に観察された。しかし、CPEは、BVDV−NADL/P−Ernsウイルスでは明らかではなかった。培養上清を各ウェルから採取し、残った細胞を固定し、BVDV NS3特異的MAb抗体20.10.6で染色した。3つのキメラペスチウイルスの1つに感染させた細胞を、MAbと共にインキュベートした。ウイルスRNAを、採取した上清から抽出し、配列決定して、全ての3つのキメラのErns遺伝子を確認した。
【0139】
3つのBVDV−NADL/Ernsキメラを、BVDVまたはBVDに特異的ないくつかのErnsMAbのそれぞれに対する反応性について試験した。結果を表2に示す。BVDV−NADL/R−Ernsキメラは、全ての3つのBDV ErnsMabに反応したが、BVDV−NADL/G−Ernsウイルス、BVDV−NADL/P−Ernsウイルス、BVDV−NADL親ウイルスのいずれも、BDV ErnsMAbによって認識されなかった。BVDV−NADL/G−Ernsウイルス、BVDV−NADL/R−Ernsウイルス、およびNADL親ウイルスは、pan−BVDV ErnsMAb 15C5に反応した。BDVのErnsまたはBVDVのErnsのいずれかに特異的なMAbは、BVDV−NADL/P−Ernsキメラと反応しなかった。
【0140】
【表2】

【0141】
ウイルスにおけるキメラErnsタンパク質が、BVDVワクチン接種された牛から得られる抗体によるウイルス中和エピトープの認識に対して何らかの影響を有するかどうかを決定するために、3つのBVDV−NADL/Ernsキメラ、BVDV−NADL、およびBVDV−CM5960(BVDV I型)を用いて、ウイルス中和アッセイを行った。0から40000超の範囲の中和抗体力価を有する(BVDV−CM5960に対して事前に決定した)、4頭の雌牛から得られた血清を用いた。結果(表3)は、全ての3つのキメラに対する力価が、全体として、親のBVDV−NADLおよびBVDV−CM5960に対するものに匹敵することを示す。BVDV−NADL/P−Ernsに対する中和力価は、他の2つのキメラであるBVDV−NADLおよびBVDV−CM5960に対するものよりもわずかに低かった。
【0142】
【表3】

【0143】
3つのBVDV−NADL/Ernsキメラを、限界希釈によって、2回、生物学的にクローニングした。BVDV−NADL/G−Ernsの3つのクローン、BVDV−NADL/R−Ernsの4つのクローン、およびBVDV−NADL/P−Ernsの3つのクローンを得た。これらのクローンをそれぞれ、1〜3回増殖させた。滴定の結果は、増殖したBVDV−NADL/G−Ernsクローン1、BVDV−NADL/R−Ernsクローン3および5、ならびにBVDV−NADL/P−Ernsクローン2が、最高の力価をもたらすことを示した。
【0144】
成長速度研究を、BVDV−NADL/G−Ernsクローン1、BVDV−NADL/R−Ernsクローン3、BVDV−NADL/P−Ernsクローン2、およびクローニングされていないBVDV−NADL/P−Ernsで行った。これらのクローンから作成された成長曲線を、親のBVDV−NADLと比較した。BVDV−NADL/G−ErnsキメラおよびBVDV−NADL/R−Ernsキメラは、親のBVDV−NADLに類似の成長速度を有したが、BVDV−NADL/P−Ernsは、親ウイルスおよび他の2つのキメラよりも成長が遅く、各時点で低い力価を有していた。
【0145】
NADLのErns遺伝子/タンパク質が、キリンペスチウイルス、トナカイペスチウイルス、またはプロングホーンアンテロープペスチウイルスのErnsによって置き換えられた、3つのBVDV−NADL/Ernsキメラウイルスを作製した。全ての3つのキメラは、RD細胞およびBK−6細胞の両方において、生存能力を有し、かつ感染性であった。インビトロでのデータは、キメラErnsタンパク質が、BVDVワクチン接種された牛から得られる抗血清によるキメラの中和に影響しないことを実証した。このことは、キメラウイルス上の中和エピトープが、その位置に関わらず、Ernsの置換によって影響されなかったことを示唆する。
【0146】
キメラウイルスは、異なる成長速度を有し、BVDVまたはBDVのErnsモノクローナル抗体に対して差次的に反応した。BVDV−NADL/G−ErnsおよびBVDV−NADL/R−Ernsは、親ウイルスと類似の成長速度を有したが、BVDV−NADL/P−Ernsは、親ウイルスよりも成長が遅く、低い力価を有していた。BVDV−NADL/G−ErnsおよびBVDV−NADL/R−Ernsは両方とも、BVDV Ernsモノクローナル抗体15C5に反応したが、BVDV−NADL/P−Ernsは反応しなかった。配列比較の結果は、G−ErnsおよびR−Ernsが、P−Erns(59%)よりも、BVDV NADLに対して高い配列類似性を有する(それぞれ、75.8%および76.2%)ことを示した。これらのデータは、MAb反応性の結果と総合すると、G−ErnsおよびR−Ernsが、P−Ernsよりも、親Ernsに対して抗原的に類似している可能性があることを示唆する。
【0147】
(実施例2)
キメラペスチウイルスワクチン候補の構築および血清学的特徴付けおよび効力試験
1型BVDV株CM5960および2型BVDV株CM53637を、Pfizer Global Manufacturingから得た。ウイルスRNAを、製造者の指示に従ってMagMax(商標)AI/ND Viral RNA Isolation Kit(Ambion)を用いて抽出した。RNAを逆転写し、製造者の指示に従って、ThermoScript(商標)RT−PCR System(Invitrogen)を用いて、cDNAを生成した。キメラペスチウイルスを、オーバーラップPCR法を用いて、CM5960およびCM53637のErns遺伝子をプロングホーンアンテロープペスチウイルスのErns遺伝子(P−Erns)で置き換えることによって生成した。PCRに用いたオリゴヌクレオチドプライマーを表1に列挙する。
【0148】
キメラCM5960/P−ErnsDNAの構築のために、C遺伝子の5’UTRと3’末端との間のCM5960のcDNA断片を、オリゴB−5およびオリゴ135プライマーを用いて、CM5960のcDNAからPCRによって増幅した。P−Erns遺伝子を、オリゴ136およびオリゴ137を用いて、P−Erns遺伝子を含有するプラスミドDNAからPCRによって増幅した。E1の開始点とE2の3’末端との間の第3の断片を、オリゴ138およびオリゴ237プライマーを用いて、CM5960のcDNAからPCRによって増幅した。
【0149】
上記の断片を、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen)を用いてゲル精製し、オリゴB−5およびオリゴ237を用いたPCRによって組み合わせて、1つの断片を作製した。E1領域とNS5B領域との間の断片を、オリゴP7およびオリゴP8プライマーを用いて、CM5960のcDNAからPCRによって増幅した。NS5A領域と3’UTRの末端との間の別の断片を、オリゴP3およびオリゴ84プライマーを用いて、CM5960のcDNAからPCRによって増幅した。次に、これらの3つの断片をゲル精製し、オリゴB−5およびオリゴ84を用いたPCRによって組み合わせて、完全長キメラCM5960L/P−Ernsゲノムを作製した。
【0150】
キメラCM53637/P−ErnsDNAの構築のために、C遺伝子の5’UTRと3’末端との間のCM53637のcDNA断片を、オリゴ296−1およびオリゴ297プライマーを用いて、CM53637のcDNAからPCRによって増幅した。E1の開始点とE2の3’末端との間の第2の断片を、オリゴ298およびオリゴ303プライマーを用いて、CM53637のcDNAからPCRによって増幅した。これらの2つの断片をゲル精製し、P−Erns遺伝子をコードする断片と共に(上記を参照されたい)、オリゴ296−1およびオリゴ303を用いたPCRによって組み合わせて、1つの断片を作製した。
【0151】
次に、E1領域とNS3領域との間の断片を、オリゴ298およびオリゴ299プライマーを用いて、CM53637のcDNAからPCRによって増幅した。NS3領域と3’UTRの末端との間の別の断片もまた、オリゴ300およびオリゴ92−1プライマーを用いて、CM53637のcDNAからPCRによって増幅した。これらの2つの断片および上記の1つの断片をゲル精製し、オリゴ296−1およびオリゴ92−1を用いたPCRによって組み合わせて、完全長キメラCM53637/P−Ernsゲノムを作製した。
【0152】
完全長ウイルスゲノムRNA転写産物を、mMessage mMachine T7 Ultraキット(Ambion)を用いて、キメラCM5960P−ErnsDNAおよびキメラCM53637/P−ErnsDNAから生成した。各RNA転写産物の質および量を、RNAゲル上で決定した。6ウェルプレートのウェルにおいて一晩培養したRD細胞を、製造者の指示に従って、Lipofectin試薬(Invitrogen)を用いて、ウイルスRNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの後、細胞を37℃で3日間にわたりインキュベートした。細胞に上清を加えたものを、RD細胞および/またはBK−6細胞において、1回から数回継代した。次に、上清を、BK−6細胞において連続継代した。上清を採取し、−80℃で保存した。
【0153】
取り出した組換えウイルスの同一性を確認するために、採取した上清から得られたウイルスRNAを、製造者の指示に従ってMagMax(商標)AI/ND Viral RNA Isolation Kit(Ambion)を用いて抽出した。RNAを、製造者の指示に従ってThermoScript(商標)RT−PCR System(Invitrogen)を用いて逆転写し、5’UTRとE2またはp7との間の各キメラの領域を、オリゴB−5およびオリゴ237プライマー(CM5960/P−Ernsキメラについて)またはオリゴ296−1およびオリゴ321プライマー(CM53637/P−Ernsキメラについて)を用いたPCRによって増幅した。次に、RT−PCR産物を配列決定した。
【0154】
ウイルスRNAのトランスフェクションまたはウイルス感染のいずれかから得られた細胞単層を、80%アセトン内で固定した。BVDV特異的なMabを、免疫組織化学のために、抗マウスIgGペルオキシダーゼABC Eliteキット(Vector Laboratories)と組み合わせて用いた。VIPペルオキシダーゼ基質(Vector Laboratories)を用いて発色させた。
【0155】
結果。キメラCM5960/P−ErnsウイルスおよびCM53637/P−Ernsウイルスを構築し、取り出した。キメラプロングホーンErns領域を含む、5’UTRからE2の領域を、配列決定によって確認した。両方のキメラは、RD細胞およびBK−6細胞の両方において、生存能力を有し、かつ感染性であった。免疫組織化学的染色において、両方のキメラは、BVDV Erns特異的MAb 15C5に対して反応性ではなかったが、BVDV NS3特異的MAb20.10.6に対して反応性であった。
【0156】
キメラペスチウイルス(BVDV−CM5960(BVDV I型)/P−Erns)についての配列は、配列表において配列番号31として表される。キメラペスチウイルス(BVDV−CM53637(BVDV II型)/P−Erns)についての配列は、配列表において配列番号32として表される。
【0157】
CM5960/P−Ernsキメラを、限界希釈によって、生物学的にクローニングした(方法論については、上記の実施例1を参照されたい)。
【0158】
(実施例3)
牛呼吸器疾患モデルにおけるキメラペスチウイルスワクチン候補の効力試験
BVDV陰性の健康な牛を得、研究群にランダムに割り当て、担当獣医の管理化で維持する。試験ワクチンを無菌アジュバントと組み合わせ、筋肉内(IM)注射もしくは皮下(SC)注射または鼻腔内(IN)接種のいずれかによって投与する。ワクチンは、単回用量または2回用量のいずれかで与える。2回用量のワクチンは、21から28日間あけて投与する。その後、BVDVの1型または2型株での最終ワクチン接種の後、21日目から28日目に、動物をチャレンジする。チャレンジ接種材料は、4mlの分割された用量で、鼻孔当たり2mlで、鼻腔内に与える。ワクチン接種されておらずチャレンジされていない動物、および/またはワクチン接種されておらずチャレンジされた動物からなる対照群もまた、研究を通して維持する。
【0159】
直腸体温、うつ、食欲不振、および下痢を含む、臨床的パラメータを、毎日監視する。血清中和力価を、BVDV1型または2型株を組み合わせた血清の連続希釈物を用いて、ウシ細胞培養物において、ウイルスは一定で血清を減少させるアッセイによって決定する。ウシ細胞培養物におけるBVDVのチャレンジ後の単離を、末梢血から試みる。BVDV陽性の細胞培養物を、間接的な免疫蛍光によって決定する。チャレンジ後の防御を実証するために、感染の発生の低減を、ワクチン接種された群と対照群との比較で実証する。
【0160】
(実施例4)
妊娠した雌牛−子牛モデルにおけるキメラペスチウイルスワクチンの効力試験
BVDV陰性の雌牛および繁殖年齢の未経産牛を得、ワクチン接種試験群またはプラセボ(対照)群にランダムに割り当てる。雌牛に、筋肉内(IM)注射または皮下(SC)注射によって、21日から28日あけて、ワクチンまたはプラセボのいずれかを2回接種する。2回目のワクチン接種の後、全ての雌牛にIMプロスタグランジン注射を行い、発情期を同期させる。発情を示す雌牛を、認定されたBVDV陰性精子を用いて、人工授精によって繁殖させる。妊娠期間のおよそ60日目に、雌牛の妊娠状態を、直腸検査によって決定する。
【0161】
およそ6週間後、妊娠が確認された雌牛を、各試験群からランダムに選択する。これらの雌牛のそれぞれを、BVDV1型または2型の鼻腔内接種によってチャレンジする。血液試料を、BVDVの単離の目的で、チャレンジの日に、およびチャレンジ後、複数の間隔をあけて、回収する。
【0162】
チャレンジの28日後、左脇腹の開腹を行い、羊水を各雌牛から抽出する。手術の直前に、血清中和アッセイのために、血液試料を各雌牛から回収する。帝王切開による分娩の後、血液試料を各胎児から回収する。次に胎児を安楽死させ、BVDVの単離の目的で、組織を無菌状態で回収する。自然流産が生じるケースでは、血液試料は、流産が検出されたときおよびその2週間後に、母牛から採取する。血液試料と流産した胎児の組を、血清学的試験およびウイルスの単離に供する。ワクチンの効力を、胎児の感染および後期流産の不存在または減少によって実証する。
【0163】
(実施例5)
ワクチン接種された牛と自然感染した牛とを区別するための診断アッセイ
本発明のワクチンでワクチン接種された牛を、野生型BVDVに自然感染した牛と比較することができる。様々な年齢の牛を、与えられた指示に従って、生のまたは不活化されたキメラペスチウイルスワクチンのいずれかでワクチン接種する。血清試料を、ワクチン接種の2〜3週間以降に回収する。キメラペスチウイルスワクチンを与えられた牛とBVDVの野外(野生型)株に感染した牛とを区別するために、血清試料を、差次的な診断アッセイを介して試験する。キメラペスチウイルスは、キメラペスチウイルスのErnsタンパク質に結合するが野生型BVDV上に存在するErnsタンパク質には結合しない、特異的抗体の生産を引き起こす。野生型BVDVのコンテクストにおいて、その逆が成り立つ。野生型BVDV上に存在するErnsタンパク質を認識するがキメラペスチウイルス上に存在するErnsタンパク質は認識しない、特異的抗体が生成される。抗体の結合特異性および結合親和性をアッセイする方法は、当技術分野において周知であり、これには、限定はしないが、競合ELISA、直接ペプチドELISA、ウェスタンブロット、間接免疫蛍光アッセイなどの、免疫アッセイ形式が含まれる。
【0164】
競合ELISAでは、Ernsタンパク質(天然に、合成に、または組換えに由来する)を含む、全てまたは部分的な野生型ペスチウイルス抗原またはキメラペスチウイルス抗原を、抗原由来源として用いる。アルカリ性条件化でELISAプレートを抗原で被覆した後、牛血清試料および希釈液を、野生型BVDVのErnsタンパク質またはキメラペスチウイルスのErnsタンパク質のいずれかに特異的なMAbの、最適な希釈液と共に添加し、30〜90分間にわたりインキュベートする。ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼのいずれかをMAbと共役させて、比色分析による結合の検出を可能にする。プレートを洗浄した後、酵素特異的な発色基質を添加し、最終インキュベーションステップの後、各ウェルの光学密度を、用いる基質に適した波長で測定する。標識されたmAbの結合の阻害の程度は、プレートを被覆しているタンパク質を特異的に認識する、牛血清における抗体のレベルに依存する。
【0165】
キメラペスチウイルス上に存在するキメラErnsタンパク質(例えば、プロングホーンErns)が試験抗原であるケースでは、キメラペスチウイルスErns特異的mAbによる結合の不存在は、ワクチン接種の指標である、キメラペスチウイルス特異的エピトープを認識する牛血清における抗体の存在を示す。逆に、免疫化されていないが自然感染している牛から得られる血清は、プレートを被覆しているキメラペスチウイルスErnsタンパク質に結合する抗体を含有しない。したがって、キメラペスチウイルスErns特異的mAbは、結合したタンパク質に結合し、その後の発色をもたらす。
【0166】
野生型BVDV上に存在するErnsタンパク質が試験抗原であるケースでは、野生型BVDV Erns特異的mAbによる結合の不存在は、自然(野生型)感染の指標である、野生型BVDV特異的エピトープを認識する牛血清における抗体の存在を示す。逆に、キメラペスチウイルスワクチンで免疫化された牛から得られる血清は、プレートを被覆している野生型BVDV Ernsタンパク質に結合する抗体を含有しない。したがって、野生型BVDV Erns特異的mAbは、結合したタンパク質に結合し、その後の発色をもたらす。このようなアッセイの開発のために、以下の方法を実施した。
【0167】
まず、BVDV−NADL Ernsを発現する組換えバキュロウイルスを構築した。BVDVのCタンパク質の一部と、完全長Erns遺伝子とを、オリゴ250プライマー(配列番号29、5’−CACCATGAAAATAGTGCCCAAAGAATC−3’)およびオリゴ252プライマー(配列番号30、5’−TTAAGCGTATGCTCCAAACCACGTC−3’)を用いて、BVDV−NADLの完全長cDNAを含有するプラスミドからPCRによって増幅した。PCR産物を、pENTR(商標)/D−TOPO(Invitrogen)内にクローニングし、製造者の指示に従って、One Shot(登録商標)Competent E.coli(Invitrogen)内に形質転換した。組換えプラスミドを抽出し、インサートを配列決定によって確認した。このプラスミドはpENTR−Ernsと名付けた。製造者の指示に従って、pENTR−ErnsおよびBaculoDirect(商標)Baculovirus Expression System(Invitrogen)を用いて、BVDV−NADL Ernsを発現する組換えバキュロウイルスを構築した。BVDV−NADL Ernsを発現する組換えバキュロウイルスを生成し、プラーク精製し、増殖させ、4℃および−80℃の両方で保存した。組換えバキュロウイルスにおけるBVDV−NADL Ernsの発現を、従来のウェスタンブロット法の後に、免疫蛍光染色、およびBVDV Erns特異的MAb 15C5に対するウェスタンブロッティングによって確認した。
【0168】
ELISA抗原の生産のために、100mlの懸濁培養物におけるSF21細胞を、0.5mlの組換えバキュロウイルスストックに感染させた。27℃で4日間インキュベートした後、細胞を採取した。細胞を低速(約800g)で10分間にわたり遠心分離し、細胞を回収し、PBSで1回洗浄した。細胞を150mMのNaCl、pH8.0の50mMのTris HCl、および1%IGEPAL CA−630ですすいだ。混合物をまず、氷上で10分間にわたりインキュベートし、次に−80℃で1時間にわたりインキュベートした。解凍した後、混合物を、1000gで15分間にわたり遠心分離することによって澄明化した。上清を、4℃で、8000gで20分間にわたり遠心分離することによって、さらに澄明化した。Baculo−Erns溶解物と呼ばれる最終上清を、アリコートにし、−80℃で保存した。
【0169】
アッセイの実施において、ELISAプレートは、100μl/ウェルのMAb WB210(Veterinary Laboratory Agency、1型BVDV Erns特異的)を用いて、4℃で一晩被覆し、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.0)内で1:1000に希釈した。翌日、プレートを3回洗浄し、ブロック緩衝液(1%カゼインナトリウム塩および0.05%Tween 20を含有するPBS)を用いて、37℃で1時間にわたりブロックした。次に、プレートをブロック緩衝液で3回洗浄し、100μlのBaculo−Erns溶解物(PBS内で1:3200に希釈したもの)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で1時間にわたりインキュベートした。ブロック緩衝液で3回洗浄した後、100μlの希釈されていない牛血清試料を、ウェルの1つのカラムを除いて(非競合15C5−HRP対照として利用するため)、ウェルに添加し、37℃で1時間にわたりインキュベートした。ブロック緩衝液でさらに3回洗浄した後、100μlのMAb 15C5−HRP複合体(BVDV Erns特異的、ブロック緩衝液内で1:20000に希釈したもの)を各ウェルに添加し、37℃で1時間にわたりインキュベートした。ブロック緩衝液で3回洗浄した後、100μlのABTS基質(ペルオキシダーゼ基質溶液A+B、KPL、USA)を各ウェルに添加し、発色のために、室温で20〜60分間にわたりインキュベートした。光学密度(OD)を405nmの波長で測定した。各血清試料についてのODの低減のパーセンテージを、以下の式によって計算する。
[1−(試料のOD÷15C5−HRP対照の平均OD)]×100%
【0170】
結果:
ウイルス中和(VN)試験によって陽性であると判定された血清試料の全ては、試料ID番号13851を除いて、82%を超えるO.D.の低減を有していた(表4)。ウイルス中和試験によって陰性であると判定された血清試料の全ては、試料ID番号5150を除いて、17%未満のO.D.の低減を有していた(表4)。アッセイは異なる抗体を測定しており、特異的抗体の割合は動物間で変化するため、この相違は、アッセイの実施様式における差によって説明することができる。
【0171】
【表4】

【0172】
本発明を、その特定の形態を参照して非常に詳細に記載してきたが、他の形態も可能である。したがって、添付の特許請求の範囲は、本明細書に含まれる形態の記載に限定されるべきではない。
【受託番号】
【0173】
ATCC PTA−9938
ATCC PTA−9939
ATCC PTA−9940

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その同種Ernsタンパク質を発現しないウシウイルス性下痢ウイルスを含むキメラペスチウイルスであって、さらに、別のペスチウイルスに由来する異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体を発現する、キメラペスチウイルス。
【請求項2】
前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質、または前記異種Ernsタンパク質の天然の変異体、合成の変異体、もしくは遺伝的変異体が、トナカイペスチウイルス、キリンペスチウイルス、およびプロングホーンアンテロープペスチウイルスからなる群から選択されるペスチウイルスに由来する、請求項1に記載のキメラペスチウイルス。
【請求項3】
前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在しない少なくとも1つのErnsエピトープを有する、請求項1に記載のキメラペスチウイルス。
【請求項4】
前記キメラペスチウイルスの異種Ernsタンパク質が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在する少なくとも1つのErnsエピトープを欠く、請求項1に記載のキメラペスチウイルス。
【請求項5】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスの培養物。
【請求項6】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスを含む細胞系または宿主細胞。
【請求項7】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスをコードするポリヌクレオチド分子。
【請求項8】
請求項1のキメラペスチウイルスおよび獣医学的に許容できる担体を含む免疫原性組成物。
【請求項9】
獣医学的に許容できる担体がアジュバントである、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記キメラペスチウイルスが生で弱毒化されている、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記キメラペスチウイルスが不活化されている、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
ウシにおける1つまたは複数のさらなる病原性微生物の蔓延を治療または予防するために有用な1つまたは複数のさらなる抗原をさらに含む、請求項8に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
請求項7に記載のポリヌクレオチド分子および獣医学的に許容できる担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスおよび獣医学的に許容できる担体を含む、ワクチン。
【請求項15】
獣医学的に許容できる担体がアジュバントである、請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
前記キメラペスチウイルスが生で弱毒化されている、請求項14に記載のワクチン。
【請求項17】
前記キメラペスチウイルスが不活化されている、請求項14に記載のワクチン。
【請求項18】
請求項7に記載のポリヌクレオチド分子および獣医学的に許容できる担体を含む、ワクチン。
【請求項19】
ウシにおける1つまたは複数のさらなる病原性微生物の蔓延を治療または予防するために有用な1つまたは複数のさらなる抗原をさらに含む、請求項14に記載のワクチン。
【請求項20】
請求項14に記載のワクチンを少なくとも1つの容器内に含む、キット。
【請求項21】
ウシウイルス性下痢ウイルス感染の蔓延を治療または予防する方法であって、請求項14に記載のワクチンが動物に投与される方法。
【請求項22】
動物にワクチン接種する方法であって、DIVAペスチウイルスワクチンが前記動物に投与され、前記DIVAペスチウイルスワクチンが請求項1に記載のキメラペスチウイルスを含み、さらに、前記キメラペスチウイルスが、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在しない少なくとも1つのErnsエピトープを有する方法。
【請求項23】
動物にワクチン接種する方法であって、DIVAペスチウイルスワクチンが前記動物に投与され、前記DIVAワクチンが請求項1に記載のキメラペスチウイルスを含み、さらに、前記キメラペスチウイルスが、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在する少なくとも1つのErnsエピトープを欠く方法。
【請求項24】
請求項14に記載のワクチンでワクチン接種された動物と、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物とを区別する方法であって、前記ワクチンでワクチン接種された動物が、前記ワクチンのキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を生成し、
a)動物から血清試料を得るステップ、
b)抗体の存在または不存在について前記試料をアッセイするステップ、
c)前記抗体を有する動物を、前記ワクチンでワクチン接種されていると同定するステップ、および
d)前記抗体を欠く動物を、野生型BVDVに感染していると同定するステップ、
を含む方法。
【請求項25】
野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物と、請求項14に記載のワクチンでワクチン接種された動物とを区別する方法であって、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物が、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するが前記ワクチンのキメラペスチウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を生成し、
a)動物から血清試料を得るステップ、
b)抗体の存在または不存在について前記試料をアッセイするステップ、
c)前記抗体を有する動物を、野生型BVDVに感染していると同定するステップ、および
d)前記抗体を欠く動物を、前記ワクチンでワクチン接種されていると同定するステップ、
を含む方法。
【請求項26】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物と、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物とを区別するための診断キットであって、ワクチンのキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を検出し得る試薬を含む診断キット。
【請求項27】
野生型ウシウイルス性下痢ウイルスに感染した動物と、請求項1に記載のキメラペスチウイルスを含むワクチンでワクチン接種された動物とを区別するための診断キットであって、野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するがワクチンのキメラペスチウイルスにおいては存在しない少なくとも1つのErnsエピトープに対する抗体を検出し得る試薬を含む診断キット。
【請求項28】
請求項1に記載のキメラペスチウイルスにおいて存在するが野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいては存在しないErnsエピトープを認識する抗体。
【請求項29】
野生型ウシウイルス性下痢ウイルスにおいて存在するが請求項1に記載のキメラペスチウイルスにおいては存在しないエピトープを認識する抗体。

【公表番号】特表2012−510285(P2012−510285A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539129(P2011−539129)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055291
【国際公開番号】WO2010/064164
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】