説明

改良されたクリーンルーム用ワイプ

【解決手段】 クリーンルーム用ワイプを供給する製品。前記クリーンルーム用ワイプの供給製品は、密閉されたパッケージと、前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプとを含む。前記パッケージ内の前記ワイプは、基材と、前記基材に適用された無水物仕上げ物質とを含む。前記処理されたワイプは、標準トラップ引裂き法ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、約10%を超える処理による強度寄与(Strength Contribution from Treatment)(ポンド)を有し、且つ、カーボンブラック捕獲率(Percent Carbon Black Pick−Up)の平均的改善は、未処理ワイプと比較すると約10%大きいものである。更に、密閉縁部が各ワイプの周囲に沿って設けられ、使用中の前記ワイプから生地が失われるのを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリーンルームワイプ(拭き取り用繊維)を供給する製品に関し、より具体的には、未処理ワイプより改善された強度および微粒子捕獲を提供するように処理が施されたクリーンルームワイプに関する。
【背景技術】
【0002】
表面を清浄にするワイプは、微粒子汚染を最小限にすることが望ましいときはいつでも有用である。ワイプは、多くの異なるの清浄用途(例えばクリーンルーム、自動車の塗装室、およびその他の制御環境)において使用される。
【0003】
異なる用途において、これらタイプのワイプが達すべき異なる基準が要求される。例えば、クリーンルームで使用されるワイプは、厳格な達成基準を満たさなければならない。これらの基準は流体溶解および汚染と関連し、最大許容微粒子、不特定の抽出可能分、およびイオン性汚染物質を含む。特定の汚染物質放出に関する基準は特に厳格で、これらの基準を満たすために様々な方法が工夫されてきた。
【0004】
ワイプは、ニット編布、織布、不織布から作られている。織物は、(典型的な9インチ×9インチの正方形の)ワイプに切断される。前記ワイプは、織物に存在する汚染物質を減らすため、特定の界面活性剤および高度にフィルター処理された精製水を使用してクリーンルームランドリーで洗浄される。洗浄後、前記ワイプは乾燥してまたは適切な溶剤を予め染み込ませてから包装される。
【0005】
ワイプの物理的性質は、一般にそのワイプが作られている基材によって決まり、その織物は多くの場合縁部に沿って密閉されているか、或いはさらに機械的な方法で高められている。
【0006】
このように、未処理のワイプを超えて改善された強度および微粒子補足を提供するように処理され、それと同時にこの様な使用に適する新規の改良されたクリーンルームワイプが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、クリーンルームワイプを供給する製品を対象としている。クリーンルームワイプを供給する製品は、密閉されたパッケージと、前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプとを含む。前記パッケージ内のワイプは、基材と、前記基材に適用される無水物仕上げ物質とを含む。前記処理されたワイプは、標準トラップ引裂き法(trap tear method)ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、処理による強度寄与(Strength Contribution from Treatment)(ポンド)が約10%を超え、且つ、カーボンブラック捕獲率(Percent Carbon Black Pick−Up)における平均的改善率が、未処理ワイプと比較すると約10%を超えるものである。更に、使用中に前記ワイプから生地が失われるのを防ぐため、各ワイプの周囲に沿って密閉縁部が設けられている。
【0008】
好ましくは、前記基材は合繊糸から形成される。前記合繊糸は、約30デニール〜約200デニールの間のポリエステルである。好ましくは、前記合繊糸は、約70デニールである。更に、前記合繊糸は、織地化される(例えば、空気織地化(air−texturized)され、且つ絡み合わせないで空気織地化される)。好ましくは、前記基材は、約40g/m〜約300g/mの間である。前記基材は、丸編みにより形成されて、包装前に細長く切断される。
【0009】
好ましくは、前記無水物仕上げ物質は、浸漬および詰め込み(padding)によって局所的に適用される。好ましくは、前記無水物仕上げ物質は、織物の重量に対して約0.02重量%〜2重量%の間の固体含有量を有し、最も好ましくは織物の重量に対して約0.1重量%〜0.5重量%の間の固体含有量を有する。好ましくは、前記無水物仕上げ物質は共重合体であり、好ましくはエチレン無水マレイン酸(ethylene maleic anhydride:EMA)である。
【0010】
前記ワイプはさらに、飽和剤を含む。前記飽和剤は、アルコール類、水、ケトン、次亜塩素酸塩、過酸化物、抗生物剤(biostats)、殺生物剤、潤滑剤、界面活性剤、およびそれらの混合物から選択される。場合によっては、前記クリーンルーム用ワイプは包装する前に洗浄される。前記ワイプはまた、包装後、実質的に無菌になるまで殺菌され、且つ放射線が照射されてもよい。
【0011】
前記ワイプはさらに、使用前に取り外せるようになっている、前記密閉されたパッケージを取り囲む外袋を含む。前記密閉パッケージは再封可能である。前記密閉されたパッケージは耐溶剤性である。更に、前記密閉されたパッケージは、環境と前記複数のワイプの間に無菌バリアを形成する。前記密閉されたパッケージを形成する材料は、ラミネート、フィルム、金属化フィルム、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0012】
従って、本発明の1観点は、クリーンルーム用ワイプを供給する製品を提供することであって、この製品は(a)密閉されたパッケージと、(b)前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプとを含み、前記複数のワイプは、標準トラップ引裂き法ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、処理による強度寄与(Strength Contribution from Treatment)(ポンド)が約10%を超え、且つ、カーボンブラック捕獲率(Percent Carbon Black Pick−Up)の平均的改善率が、未処理ワイプと比較すると約10%を超えるものである。
【0013】
本発明の別の観点は、粒子を捕獲する仕上げ物質を有する織物製品を提供することであって、この製品は(a)基材と、(b)前記基材に適用された無水物仕上げ物質とを含む。
【0014】
本発明の更に別の観点は、クリーンルーム用ワイプを供給する製品を提供することであり、このクリーンルーム用ワイプを供給する製品は、(a)密閉されたパッケージと、(b)前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプとを含み、前記ワイプは(i)基材と、(ii)前記基材に適用された無水物仕上げ物質とを含み、前記複数のワイプは、標準トラップ引裂き法ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、処理による強度寄与(Strength Contribution from Treatment)(ポンド)が約10%を超え、且つ、カーボンブラック捕獲率(Percent Carbon Black Pick−Up)の平均的改善率が、未処理ワイプと比較すると約10%を超えるものである前記複数のワイプと、(c)使用中に前記ワイプから生地が失われるのを防ぐため、各ワイプの周囲に沿って設けられた密閉縁部とを含む。
【0015】
本発明のこれらおよび他の観点は当業者にとって、図面を検討しながら好ましい実施形態の以下の説明を読んだ後に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に従って構成されたワイプの上面図である。
【図2】図2は、パッケージを含むワイプを供給する製品の上面図である。
【図3】図3は、外袋の内部にあるワイプを供給する製品の上面図である。
【図4】図4は、棒グラフを使用して本発明の幾つかの実施形態の強度と、幾つかの市販製品の強度との比較を図示する。
【図5】図5は、XY散布図を使用して織物基材の強度におけるEMAの効果を図示する。
【図6】図6は、棒グラフを使用して本発明の幾つかの実施形態のカーボン収集率と幾つかの市販製品のカーボン収集率との比較を図示する。
【図7】図7は、XY散布図を使用して炭素収集におけるEMAの効果を図示する。
【図8】図8は、XY散布図および2つのY軸を使用して織物基材およびカーボン収集強度におけるEMAの効果を図示する。
【図9】図9は、棒グラフを使用して本発明の幾つかの実施形態の粒子捕獲と幾つかの市販製品の粒子捕獲との比較を図示する。
【図10】図10は、棒グラフを使用して本発明の幾つかの実施形態の粒子保持と幾つかの市販製品の粒子保持との比較を図示する。
【図11】図11は、実験結果を編集したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明において、同様の参照文字が幾つかの図面にわたって同様のまたは対応する部分に指定されている。また、以下の説明において、例えば「前方」、「後方」、「左」、「右」、「上方」、「下方」などの用語および同類のものは、便宜上の用語であり、限定する用語として解釈されるものではないことは理解されるべきである。
【0018】
以下図面を参照、特に図1を参照するが、本図面は本発明の好ましい実施形態を説明することを目的とするものであり、これらが本発明を限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。図1で最も良く示すとおり、本発明に従って構成される、織物製品から形成されるワイプが概して10として示されている。前記織物製品10は、織物基材12と密閉された縁部18とを含む。本明細書で使用される「織物製品」は、特に単一または複数使用のいずれかを目的とするワイプおよび清掃用布巾(例えばクリーンルーム用ワイプ)を含む。
【0019】
織物基材12は、合繊糸から、好ましくはポリエステルとともに形成される。前記合繊糸の好ましいデニールは、約30〜約200デニールの間であり、最も好ましいのは約70デニールである。前記合繊糸は織地化され、好ましくは空気織地化され、最も好ましくは絡み合わされないで空気織地化されることである。好ましくは、基材12は約40グラム/平方メートル(g/m)〜約300g/mの間である。基材12は丸編みで形成され、好ましくは包装前に細長く切断される。
【0020】
各織物製品の周囲は、使用中に生地を失うのを防ぐため、密閉縁部18を含むことが好ましい。特に、ほつれた端部または脱落端部は、基材12からの織り糸の粒子によって領域を汚染するため望ましくない。縁部18は、高温ナイフ、熱線、高温エアジェット、超音波、またはレーザーによって密閉することができ、最も好ましくは超音波またはレーザーで密閉することである。
【0021】
織物製品10は仕上げ物質を含む。好ましくは、この仕上げ物質は、IEST−RP−CC−004.3 セクション7.1.1に従って、約華氏180度(その沸点)より高い温度で約5分間イソプロピルアルコール中において、実質的に不溶性である。好ましくは、この仕上げ物質は無水物であり、より好ましくは共重合体であり、最も好ましくはエチレン無水マレイン酸(EMA)である。この仕上げ物質は、好ましくは織物基材の重量に対して約0.02重量パーセント(重量%)〜約2重量%の間の固体含有量で基材12に適用され、より好ましくは約0.1重量%〜0.5重量%の間で、最も好ましくは約0.2%で適用される。好ましくは、この無水物仕上げ物質は局所的に適用され、最も好ましくは浸漬および詰め込みによって適用される。
【0022】
織物製品10はまた、好ましくは例えばアルコール、水、ケトン、次亜塩素酸塩、過酸化物、抗生物剤(biostat)、殺生物剤、潤滑剤、界面活性剤、およびそれらの混合物などの飽和剤を含む。
【0023】
図2を参照すると、複数の織物製品10は密閉されたパッケージ22内に包装され、供給製品20が作製される。密閉されたパッケージ22を有することは、供給製品20が飽和剤を含む場合、特に重要である。前記供給製品20の織物製品10は、好ましくは洗浄され殺菌されたクリーンルーム用のものであり、最も好ましくは包装する前に放射線が照射されたクリーンルーム用のものである。パッケージ22は、周囲環境と織物製品10との間に無菌バリアを形成し、本技術分野で知られている例えばポーチ、バック、小さな缶、ボックス、またはスリーブなどの様々な異なるタイプの容器であることが可能であり、好ましい容器のタイプは織物製品10の数量に従って変化する。
【0024】
パッケージ22が取り出し容器(ディスペンサー)として機能することを目的としてる場合、例えばフラップ(flap)24のような再封可能な開閉機構で取り出し開口部25を覆うことが望ましく、この再封可能な開閉機構は、接着材、スナップ、圧縮ジッパー、スライダージッパー、および同類のものを含むことができる。パッケージ22は、好ましくは耐溶剤性であり、例えばラミネート、フィルム、金属化フィルム、および少なくとも1つを含む混合物の材料を含む。
【0025】
図3を参照して、供給製品20はさらに、使用する前に取り外せるようになっている外袋30を含む。この外袋30は、パッケージ22による環境の汚染を防ぐ手段として用いられる。
【0026】
特に、使用者は(もしあれば)外袋30を開封して供給製品20を取り出し、それを便利な場所、例えばクリーンルーム・ワークステーションに置く。表面を整えるため、使用者はフラップ24を手前へ引いて開口部25を露わにし、手を開口部25を通して伸ばして織物製品10を掴み、開口部25から織物製品10を取り出す。次に、開口部25をフラップ24で再封して、表面を拭くため織物製品10の使用が可能となる。
【0027】
本発明は構造的に新規なだけでなく、市販のクリーンルーム用ワイプを超えて実質的で予期しなかったような改良を提供する。特に本発明は未処理ワイプより強度が高く且つ微粒子捕獲を増大させている。更に、前記粒子捕獲および粒子保持プロファイル、ならびに粒子生成プロファイルは、競合他社のワイプと比べても遜色がない。
【0028】
全てのサンプルにおいて全ての実験が実行されたわけではないことに注意すべきである。従って、幾つかの表には非連続的なサンプル番号(例えば「サンプル2」、「サンプル3」、「サンプル5」など)が表れている。これは、データが選択的に削除されたことを意味すると解釈されるべきではない。寧ろ、全てのサンプルにおいて全ての実験を行うのは確定的ではなくおよび/または負担である。サンプルが試験される場合には、データは個々に報告されるか、または他の同一のサンプルの平均として報告されている。
【0029】
しかしながら、所与のサンプル(すなわち、製品名、製造業者、化学処理)の特徴は、実際の物理的サンプルには明らかに同じではないが、様々な実験の間では同じサンプル番号によって一貫して言及している。明細書で使用される「N/T」は「試験せず」という意味であり、「N/C」は「計算不可」(例えば、ゼロは除算できないため)という意味であり、「不明」化学処理は、前記ワイプは処理をしているものとして市販されているが、本出願人には前記処理の識別ができないことを示し、「VSLP」はマサチューセッツ州Great BarringtonのBerkshire Corporationから入手可能なValuSeal LP製品であり、「MSVP」はMicroSeal VP製品である。最後に、幾つかのグラフは、予期されるものの中の最良推定値い基づいた予言的な実験例を含む。実験結果を編集したものが図11に記載されている。
【0030】
本発明の強度を市販のものと比較して試験するため、標準トラップ引裂き法(standard trap tear method)ASTM D 5587:1996を使用してクリーンルーム用ワイプの試験を行なった。当該試験はトラべゾイド引裂き法であり、定速伸長試験機(インストロン社)を使用して、試験中に得られた5つの最も高いピークの平均に基づいて編物(ニット)の引裂強度を決定する。
【0031】
この試験では、サンプル毎に合計で4回繰返し試験が行われ、織物の横目方向のデータが収集された。縦目方向のデータは、過度な伸長の後の織物のくびれおよびスナッピングのため先に実行された縦目方向の実験で再現不可能なデータが生じたため、収集されなかった。未処理ワイプ、EMAを有するワイプ、不明な化学的同一性の粒子引力処理(particle attraction treatment:PAT)を有するワイプとの間で比較が行われた。
【0032】
未処理ポリエステルニットワイプのサンプル(VSLPおよびMSVP)は、ジェットにより磨き洗浄され(jet scoured)、熱処理されて、超音波によって9インチ×9インチのワイプに切断され、さらに、ISO クラス4のクリーンルームランドリーで洗浄された。非イオン界面活性剤が、洗浄を助長し且つ仕上げ処理が施されたワイプの吸収性を高めるため洗浄中に追加された。織物の重量に対して0.16重量%または0.20重量%であることを除いて、処理されたワイプは同じ方法、つまり、EMAが前記熱処理工程の前に、詰め込みによって幾つかのサンプルに適用されることにより作製された。EMAはインディアナ州インディアナポリスのVertellus Health & Specialty Products LLCからZeMac(登録商標)E400という商標名で入手できる。これらのサンプルは、PATが施されたおよび施されていない状態の市販のワイプと比較され試験が行われた。
【0033】
【表1】

【0034】
表1および図4に示すように、約0.2%EMAで処理されたワイプは同一の未処理ワイプよりかなり強度が高い。特に、0.2%EMAのVSLPは、EMAの無いVSLPより11.5%強度が高く、0.2%EMAのMSVPは未処理MSVPより21.9%強度が高い。この強化特性は、「処理による強度寄与」の結果が示しているように真であり続ける。
【0035】
非常に低いレベルのEMAによりMSVPに著しい強度が生じるのは、EMAの織物ニット構造に対する効果にある程度起因すると考えられる。EMAのこの強度を改良する能力は特に重要であり、市販ワイプのPATの効果と比較した場合、予期しないことである。特に、未処理のAnticon Heavy Weightは、PAT処理されたものと同程度の強度を有する。従って、PATとは対照的に、PATの強度の改善が示されない一方で、EMAは強度を高める。EMAにより表面の潤滑性が向上され織り糸の滑りが高まり、これにより織り糸の束(バンチング)が形成されて、引裂き強度が高まるという仮説が立てられる。EMAと強度の関係は図5に表されている。
【0036】
本発明の別の利益は、カーボンブラック捕獲率が優れたワイプを生産することである。再び、未処理のポリエステルニットワイプのサンプル(VSLPおよびMSVP)は、ジェットにより磨き洗浄され、熱処理されて、超音波によって9インチ×9インチのワイプに切断され、されに、ISO クラス4のクリーンルームランドリーで洗浄された。非イオン界面活性剤が、洗浄を助長し且つ前記仕上げワイプの吸収性を高めるため洗浄中に追加された。織物の重量に対して0.16重量%または0.20重量%であることを除いて、処理されたワイプは同じ方法、つまり、EMAが前記熱処理工程の前に、詰め込みによって幾つかのサンプルに適用されることにより作製された。これらのサンプルは、PATが施された、または施されていない状態の市販のワイプと比較され試験が行われた。
【0037】
前記試験では、重量が40mg±1.0mgのカーボンブラック粒子をビーカーの中に400mlの水とともに置いた。9インチ×9インチのサンプルワイプを前記ビーカーに追加した後、磁気撹拌子で30秒間攪拌して、その後取り出した。ワイプから余分な水を手作業で絞り出してから前記ビーカーに戻した。前記ビーカー内の水は、1.0ミクロン細孔径ガラスファイバーフィルターを通って濾過された(事前に水の重量を量った)。前記フィルターを乾かしてから重量を量り、前記ワイプに曝したあと前記ビーカーに残っているカーボンブラックの量を計算した。
【0038】
前記ワイプによるカーボンブラック捕獲率は下記の式を使用して計算された。
【0039】
【数1】

【0040】
以下の表2は実験結果を表している。
【0041】
【表2】

【0042】
表2および図6に示すように、カーボンブラック捕獲率は、0.2%のEMAを含有するMSVPが試験が行われた他の全てのサンプルと比べて最も優れている。図7に表すように、前記カーボン収集は、EMAの濃度の働きであるように見える。表1および2からのデータを図8に重ね合わせると、カーボンの捕獲率および強度はEMA濃度と関連があることが分かる。
【0043】
カーボンブラック捕獲率および強度の改善に加えて、EMA処理された織物製品の粒子捕獲および粒子保持プロファイルも良好である。これらの実験において、EMAを含有するまたは含有しないVSLPおよびMSVPサンプルは、前記カーボンブラック捕獲試験で準備されたものと同様の準備が為された。使用された試験工程は、IEST−RP−CC−004.3 セクション6.1.3に基づき、粒子数は、Hiac Royco 8000Aレーザパーティクルカウンタを使用して、サイズ(≧0.5μm、≧1μm、≧2μm、≧5μm、≧15μm、および≧25μm)による粒子の累積数が測られ記録された。
【0044】
特に、3000mlの濾過され脱イオン化された水に0.100gのカーボンブラックを含有する懸濁液(M−1300、Cabot Corporation、米国)を震蕩させた後30分間放置した。上澄みの約400mlを静かに移し、原液として使用した。前記原液を超音波洗浄器に10分間置いた後、前記原液の750μlを濾過され脱イオン化された水に加えて755mlの粒子懸濁液を作製した。前記懸濁液をW.S.Tyler RX−86の2軸攪拌器で5分間震蕩させた後、前記懸濁液の190mlを使用して粒子濃度を測定した。乾いたワイプの重量を量り、その後にジャー内の残りの565mlの粒子懸濁液に加えた。前記懸濁液およびワイプを2軸撹拌器で5分間震蕩させた。前記ワイプを前記ジャーから取り出し、その粒子濃度を測定した。次に、前記ワイプを565mlの濾過された脱イオン化された水を含むジャーに加えて、2軸攪拌器で5分間震蕩させた後、前記ワイプを取り出した。前記濡れたワイプの重量および寸法を測って記録し、前記ジャー内の粒子濃度を測定した。
【0045】
粒子捕獲は、ワイプとともに攪拌した後の水溶液内の粒子の純減として定義される。粒子捕獲の数が負数の場合には、取り除かれるよりより多くの粒子が入れられたことを意味するため、粒子捕獲はゼロと定義された。
【0046】

粒子捕獲(数)=懸濁液中の最初の粒子−ワイプに曝された後残った粒子

粒子捕獲(%)=(粒子捕獲(数))/懸濁液中の最初の粒子)×100%

粒子保持は、清浄水中での攪拌の後汚れたワイプによって保持されている捕獲粒子の数として定義される。保持されている粒子の数が負数の場合には、粒子保持はゼロとして定義された。
【0047】
粒子保持(数)=粒子捕獲(数)−放出された粒子

粒子保持(%)=(粒子保持(数)/粒子捕獲(数))×100%

粒子捕獲データおよび粒子保持データは、表3ならびに図9および10で明らかにしている。
【0048】
【表3】

【0049】
表3ならびに図9および10から見て取れるように、EMAは、他の仕上げ物質とほぼ同等の粒子を捕獲および保持する能力を与えている。さらに、両方の2軸攪拌器(IEST RP CC004.3 セクション6.1.3およびHelmke Drum−IEST RP CC003−87−T セクション5.3)によって試験され、10個のワイプのサンプルサイズで微粒子生成を量るために修正された粒子生成は、EMAによって有意に影響されているようには見えない。これについては下記の表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
最後に、本発明による様々な予期しない改良をさらに示すため、前記実験および試験結果を編集したものを図11に示す。
【0052】
前述の説明を一読した上で、当業者であれば特定の変更および改良を思い付くであろう。例として、前記共重合体は、実際の官能基自体を維持したままで、ポリプロピレン、ビニル、アクリルのような代替可能なものに変更することも可能である。前記無水物の種類は、無水酢酸、リンゴ酸、およびマレイン酸のような代替可能なものに変更することも可能である。また、前記ニット構造の全部または一部分にマイクロデニール(microdenier)織り糸を使用する、または前記ニット構造の一部分にモノフィラメント織り糸を使用することで、例えば表面積の増大および表面からの粒子除去(スクラビング能力)の改善などの更なる改良を生む。様々な断面(円形、三葉形、パイ形、ドッグボーン(dog bone)形、リボン形、星形など)の繊維の織り糸を使用する、および前記ニット構造の全部にまたは一部分に導電性のある織り糸を使用することも、特定の用途には望ましい場合もある。これは、前記基材内に自然および合成の繊維または織り糸の混合物を含む。更に、例えば帯電防止剤、抗菌剤、防汚剤などの他の化学処理がEMAと共に、本発明のワイプに適用され得る。また、洗浄中に例えば陰イオン性、両性、または陽イオン性などの非イオン以外の界面活性剤を使用すること、および界面活性剤を使用しないで洗浄することは、幾つかの用途には望ましいかもしれない。最後に、本発明はまた、カーボンブラックに加えて微粒子物質にも親和力を提供することが予期される。適用できる粒子は、酸化アルミニウム、酸化マンガン、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミニウム、銅、酸化銅、黒鉛、黒鉛、鉄、酸化鉄、亜鉛、シリコン、二酸化ケイ素などを含む。このような変更および改良の全ては本明細書では簡潔さおよび読み易さのために取り除かれているが、適切に以下の特許請求の範囲の範囲内のものであることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム用ワイプを供給する製品であって、この製品は、
(a)密閉されたパッケージと、
(b)前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプであって、標準トラップ引裂き法ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、処理による強度寄与(Strength Contribution from Treatment)(ポンド)が約10%を超え、且つ、カーボンブラック捕獲率(Percent Carbon Black Pick−Up)の平均的改善率が、未処理ワイプと比較すると約10%を超えるものである、前記複数のワイプと
を有する製品。
【請求項2】
請求項1記載の製品において、さらに、
使用中に前記ワイプから生地が失われるのを防ぐため、各ワイプの周囲に沿って設けられた密閉縁部を含むものである製品。
【請求項3】
請求項2記載の製品において、さらに、
飽和剤を含むものである製品。
【請求項4】
請求項3記載の製品において、前記飽和剤は、アルコール類、水、ケトン、次亜塩素酸塩、過酸化物、抗生物剤(biostats)、殺生物剤、潤滑剤、界面活性剤、およびそれらの混合物から選択されるものである製品。
【請求項5】
請求項2記載の製品において、前記複数のワイプは殺菌されているものである製品。
【請求項6】
請求項5記載の製品において、前記複数のワイプは、実質的に無菌になるまで放射線が照射されるものである製品。
【請求項7】
請求項2記載の製品において、前記複数のワイプは、包装前に洗浄されたクリーンルーム用である製品。
【請求項8】
請求項1記載の製品において、さらに、
前記密閉されたパッケージを取り囲む外袋を含み、使用前に取り外せるようになっているものである製品。
【請求項9】
請求項1記載の製品において、前記密閉されたパッケージは再封可能である製品。
【請求項10】
請求項1記載の製品において、前記密閉されたパッケージは耐溶剤性である製品。
【請求項11】
請求項1記載の製品において、前記密閉されたパッケージは、周囲環境と前記複数のワイプとの間に無菌バリアを形成するものである製品。
【請求項12】
請求項1記載の製品において、前記密閉されたパッケージを形成する材料は、ラミネート、フィルム、金属化フィルム、およびそれらの混合物から成る群から選択されるものである製品。
【請求項13】
粒子を捕獲する仕上げ物質を有する織物製品であって、この製品は、
基材と、
前記基材に適用される無水物仕上げ物質と
を有する製品。
【請求項14】
請求項13記載の製品において、前記基材は合繊糸から形成されるものである製品。
【請求項15】
請求項14記載の製品において、前記合繊糸はポリエステルである製品。
【請求項16】
請求項14記載の製品において、前記合繊糸は、約30デニール〜約200デニールの間である製品。
【請求項17】
請求項16記載の製品において、前記合繊糸は、約70デニールである製品。
【請求項18】
請求項14記載の製品において、前記合繊糸は、織地化されるものである製品。
【請求項19】
請求項18記載の製品において、前記合繊糸は、空気織地化(air−texturized)されるものである製品。
【請求項20】
請求項19記載の製品において、前記合繊糸は、絡み合わないで空気織地化されるものである製品。
【請求項21】
請求項13記載の製品において、前記基材は、約40g/m〜約300g/mの間である製品。
【請求項22】
請求項13記載の製品において、前記基材は、丸編みによって形成されるものである製品。
【請求項23】
請求項22記載の製品において、前記丸編みによって形成される前記基材は、包装する前に細長く切断されるものである製品。
【請求項24】
請求項13記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は局所的に適用されるものである製品。
【請求項25】
請求項24記載の製品において、前記局所的に適用される仕上げ物質は、浸漬および詰め込み(padding)によって適用されるものである製品。
【請求項26】
請求項13記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は、織物の重量に対して約0.02重量%〜2重量%の間の固体含有量である製品。
【請求項27】
請求項26記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は、織物の重量に対して約0.1重量%〜0.5重量%の間の固体含有量である製品。
【請求項28】
請求項13記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は共重合体である製品。
【請求項29】
請求項28記載の製品において、前記共重合体は、エチレン無水マレイン酸(ethylene maleic anhydride:EMA)である製品。
【請求項30】
クリーンルーム用ワイプを供給する製品であって、
密閉されたパッケージと、
前記密閉されたパッケージ内の複数のワイプであって、(i)基材と、(ii)前記基材に適用された無水物仕上げ物質とを含み、標準トラップ引裂き法ASTM D5587:1996を使用して試験を行った場合、処理による強度寄与(ポンド)が約10%を超え、且つ、カーボンブラック捕獲率の平均的改善が、未処理ワイプと比較すると約10%を超えるものである、前記複数のワイプと、
各ワイプの周囲に沿って設けられ、使用中に前記ワイプから生地が失われるのを防ぐ密閉縁部と
を有する製品。
【請求項31】
請求項30記載の製品において、さらに、
飽和剤を含むものである製品。
【請求項32】
請求項31記載の製品において、さらに、
前記飽和剤は、アルコール類、水、ケトン、次亜塩素酸塩、過酸化物、抗生物剤、殺生物剤、潤滑剤、界面活性剤、およびそれらの混合物から選択されるものである製品。
【請求項33】
請求項30記載の製品において、前記複数のワイプは殺菌されているものである製品。
【請求項34】
請求項33記載の製品において、前記複数のワイプは、実質的に無菌になるまで放射線が照射されるものである製品。
【請求項35】
請求項30記載の製品において、前記複数のワイプは、包装前に洗浄されたクリーンルーム用である製品。
【請求項36】
請求項30記載の製品において、さらに、
前記密閉されたパッケージを取り囲む外袋を含み、使用前に取り外せるようになっているものである製品。
【請求項37】
請求項30記載の製品において、前記密閉されたパッケージは再封可能である製品。
【請求項38】
請求項30記載の製品において、前記密閉されたパッケージは耐溶剤性である製品。
【請求項39】
請求項30記載の製品において、前記密閉されたパッケージは、周囲環境と前記複数のワイプとの間に無菌バリアを形成するものである製品。
【請求項40】
請求項30記載の製品において、前記密閉されたパッケージを形成する材料は、ラミネート、フィルム、金属化フィルム、およびこれらの混合物から成る群から選択されるものである製品。
【請求項41】
請求項30記載の製品において、前記基材は、合繊糸から形成されるものである製品。
【請求項42】
請求項41記載の製品において、前記合繊糸はポリエステルである製品。
【請求項43】
請求項41記載の製品において、前記合繊糸は、約30デニール〜約200デニールの間である製品。
【請求項44】
請求項43記載の製品において、前記合繊糸は、約70デニールである製品。
【請求項45】
請求項41記載の製品において、前記合繊糸は、織地化されるものである製品。
【請求項46】
請求項45記載の製品において、前記合繊糸は、空気織地化されるものである製品。
【請求項47】
請求項46記載の製品において、前記合繊糸は、絡み合わされずに空気織地化されるものである製品。
【請求項48】
請求項30記載の製品において、前記基材は、約40g/m〜約300g/mの間である製品。
【請求項49】
請求項30記載の製品において、前記基材は、丸編みによって形成されるものである製品。
【請求項50】
請求項49記載の製品において、前記丸編みによって形成される前記基材は、包装前に細長く切断されるものである製品。
【請求項51】
請求項30記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は局所的に適用されるものである製品。
【請求項52】
請求項51記載の製品において、前記局所的に適用される仕上げ物質は、浸漬および詰め込みによって適用されるものである製品。
【請求項53】
請求項30記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は、織物の重量に対して約0.02重量%〜2重量%の間の固体含有量である製品。
【請求項54】
請求項53記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は、織物の重量に対して約0.1重量%〜0.5重量%の間の固体含有量である製品。
【請求項55】
請求項30記載の製品において、前記無水物仕上げ物質は共重合体である製品。
【請求項56】
請求項55記載の製品において、前記共重合体は、エチレン無水マレイン酸(EMA)である製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502996(P2013−502996A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526946(P2012−526946)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/046677
【国際公開番号】WO2011/025834
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512045799)ハイランド インダストリーズ、インク. (1)
【出願人】(512045711)バークシャー コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】