説明

改良されたプロモーターアッセイ法

【課題】試料が濁っている場合や微生物の生存数が不明な場合でも、化学物質の存在または存在量を検定できる簡便かつ高精度なアッセイ法の提供。
【解決手段】化学物質に応答してプロモーター活性が変化するプロモーター遺伝子の下流にモニタリング用レポーター遺伝子と、化学物質の不存在下でも一定のレベルのプロモーター活性を発現するプロモーター遺伝子の下流に対照レポーター遺伝子とを同時に導入した組換え細胞を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良されたプロモーターアッセイ法、詳細には環境中の試料に存在する化学物質を検定するための、改良されたプロモーターアッセイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類がこれまでに作りだした化学物質は膨大な数にのぼり、さらに年々新しい化学物質が開発されている。これら化学物質は現代生活のあらゆる面で利用され、人類の生活向上に役立っている。その反面、化学物質の中には、その製造、流通、使用、廃棄等の様々な段階で環境中に放出され、環境での残留、食物連鎖による生物学的濃縮などを通じ、人の健康や生態系に有害な影響を及ぼすものがあり、環境汚染は社会問題化している。よって、化学物質について人体や生態系に与える影響を評価する要請がある。
【0003】
その評価方法として、レポーター・ジーン・アッセイ法が知られている。レポーター・ジーン・アッセイ法とは、転写活性を中心とした遺伝子の機能を調べるための、目印となる特定の遺伝子活性を測定する手法であり、プロモーターアッセイ法などが包含される。プロモーターアッセイ法は、ある遺伝子のプロモーターのポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結し、遺伝子の発現を間接的に計測する方法である(非特許文献1)。
通常のバイオアッセイ法では、化学物質の存在は、微生物の化学物質に対する細胞応答、例えば細胞の生死、増殖能、呼吸量、特定の遺伝子の発現の変化を指標として評価される。プロモーターアッセイ法では細胞応答としてプロモーター活性の変化、すなわちプロモーターに連結されたマーカータンパク質を指標として評価される。
【0004】
【非特許文献1】Barelle CJ, Manson CL, MacCallum DM, Odds FC, Gow Na, Brown AJ.: GFP as a quantitative reporter of gene regulation in Candida albicans. Yeast 2004 Mar; 21(4):333-40
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境中の試料に存在する化学物質は通常低濃度であるが、場合によっては高濃度で存在することがある。微生物の生死、増殖能または呼吸量を指標とするバイオアッセイ法では、(a)微生物の生育が重度に阻害される状態、あるいは(b)微生物が死滅する状態、に至らしめるレベルの化学物質が試料中に存在する場合、指標となる細胞応答は消失するため、それによりその試料には化学物質が存在するものとして評価することができる。
【0006】
他方、プロモーターアッセイ法では通常、化学物質の存在に応答してマーカータンパク質の濃度が上昇する性質を利用するため、上記(a)または(b)の状態に至らしめるレベルの化合物が試料中に存在する場合、指標となるプロモーター活性は見かけ上変化せず、試料中に化学物質が存在していないとみなされる場合がある。
すなわち、プロモーターアッセイ法では、試料中の化学物質について検出上限の限界濃度が存在し、それを超える濃度の化学物質が存在する試料では、その判定を誤らせる結果を招く。
また、検出対象である化学物質が高濃度である場合、上記(a)または(b)の状態であることを判定可能な手段の1つとして、細胞の増殖状態を濁度測定によりモニタリングすることがあげられるが、試料が濁っていると試料の濁度と細胞の濁度が重なってしまうため、正確に測定ができない。
また、試料が濁っている場合には、光散乱のため蛍光タンパク質が同量でも試料が濁っていない場合と蛍光強度が異なってしまうことも起こる。
さらに、検出キットとして微生物を乾燥保存したものを用いる場合、微生物を復元したとき生存数が不明であり、基準となる値が確定されないという問題もある。
【0007】
そこで、試料が濁っている場合や微生物の生存数が不明な場合でも、化学物質の存在または存在量を検定できる簡便かつ高精度なアッセイ法が要求されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、環境中に化学物質が存在するか否かを検定するための、改良された多指標型プロモーターアッセイ法に関する。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)2種以上のレポーター遺伝子が導入された組換え細胞であって、1の種のレポーター遺伝子が、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターの下流に連結され、他の1または複数種のレポーター遺伝子が、それぞれ、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターの下流に連結されていることを特徴とする組換え細胞、
(2)組換え酵母であることを特徴とする上記(1)に記載の組換え細胞、
(3)前記2種以上のレポーター遺伝子が、580nm以下に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質の遺伝子であることを特徴とする上記(1)に記載の組換え細胞、
(4)1種以上の組換え細胞に被検試料を接触させ、ここに、前記1種以上の組換え細胞は、2種以上のレポーター遺伝子が導入された組換え細胞であって、1の種のレポーター遺伝子が、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターの下流に連結され、他の1または複数種のレポーター遺伝子が、それぞれ、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターの下流に連結されていることを特徴とする組換え細胞であり;
被検試料中で、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターのプロモーター活性および化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターのプロモーター活性を測定し;
化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターのプロモーター活性に対する化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターのプロモーター活性の比を算出し;
この比に基づき、被検試料中の化学物質の存在または存在量を推定することを特徴とする多指標型プロモーターアッセイ法、
(5)組換え細胞が組換え酵母であることを特徴とする上記(4)に記載の方法、
(6)プロモーター活性を蛍光強度で測定することを特徴とする上記(4)に記載の方法、
(7)前記2種以上のレポーター遺伝子が、580nm以下に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質の遺伝子であることを特徴とする上記(4)に記載の方法、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、1つの細胞において、化学物質に応答してプロモーター活性が変化するモニタリング用プロモーター遺伝子の下流および化学物質の存在いかんにかかわらず一定のレベルのプロモーター活性を発現するプロモーター遺伝子の下流に対照レポーター遺伝子を導入しているので、同一環境下で、モニタリング用のプロモーター活性および基準となるプロモーター活性を同時に測定することができる。
すなわち、1種類のプロモーター活性の絶対量ではなく、基準となるプロモーター活性との相対量を用いるため、被検試料中の生菌数が不明な場合や、濁っている場合でも、1種類のアッセイ法によって簡便かつ経済的に望ましい化学物質の存在を検定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において、「被検試料」とは、河川・湖沼等の環境水および下水、排水から供給される検体試料水、あるいは廃棄物処理場の浸出水、および土、農産物からの抽出試料を意味する。これら被検試料は、農薬、医薬品、染料、塗料、接着剤等の産業用途を有し環境に放出され可能性の高い「化学物質」および消毒・焼却の過程により非意図的に生成される「化学物質」であって、毒性を有することが懸念されるものを含み得る。これらの物質の毒性作用として、内分泌撹乱物作用、変異原性、発がん性、遺伝毒性、生態毒性、免疫毒性、細胞機能障害毒性等が知られている。
【0012】
本発明方法の被検対象となり得る化学物質としては、例えば(1)ベンゾ(a)ピレン、(2)ビスフェノールA、(3)フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、(4)2,5−ジクロロフェノール、(5)2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、(6)ホルムアルデヒド、(7)塩化メチル水銀、(8)4−ニトロキノリン−N−オキサイド、(9)p−ノニルフェノール、(10)ペンタクロロフェノール、(11)亜ヒ酸ナトリウム、(12)テトラメチルチウラムジスルフィド、(13)トリブチルスズクロライド、(14)2,4,5−トリクロロフェノール、(15)Trp−P−2(酢酸塩)、(16)パラコート、(17)塩化カドミウム、(18)γ−ヘキサクロロシクロへキサン、(19)マラソン、(20)エチレンビスジチオカルバミドサンマンガン、(21)塩化ニッケル(II)、(22)重クロム酸カリウム、(23)トリフェニルスズクロライド、(24)フェノール、(25)S-4-クロロベンジル-N,N-ジエチルチオカルバマート、(26)ヘキサクロロフェン、(27)トリクロサン、(28)塩化水銀(II)、(29)硫酸銅(II)、(30)シアン化カリウム(31)ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0013】
「プロモーターアッセイ法」とは、本発明においては、化学物質に応答する遺伝子としてスクリーニングされた遺伝子のプロモーター下流にレポーター遺伝子を連結したカセットを含む組換え細胞において、被検試料を適用した際の化学物質応答遺伝子の発現量を測定する、被検試料中の化学物質を検定するためのバイオアッセイ法である。具体的には、ある遺伝子のプロモーターのポリヌクレオチド配列にマーカータンパク質をコードするポリヌクレオチドを作動可能に連結し、そのプロモーターの転写活性を利用して、被検試料適用の際の遺伝子発現を計測する。
【0014】
本発明における「多指標型プロモーターアッセイ法」は、複数のプロモーター下流にそれぞれ異なるマーカー遺伝子を連結した1種以上、すなわち、1種または2種以上の組換え細胞を用いるプロモーターアッセイ法である。各細胞の複数のプロモーターのうちの少なくとも1つは、化学物質の存在いかんにかかわらず一定のレベルでプロモーター活性を発現する対照プロモーターであり、その他は、被検試料中に存在することが疑われる化学物質に応答するモニター用プロモーターである。
まず、1種のモニター用プロモーターを用いるプロモーターアッセイ法の場合、対照プロモーターと1種のモニター用プロモーターの下流にそれぞれ異なるマーカー遺伝子を連結した1種の組換え細胞を用いる。このプロモーターアッセイ法において、検出上限の限界濃度を超える化学物質が被検試料中に存在すると、対照プロモーター活性は低下または消失するため、限界濃度を超えたことが分かる。つぎに、もとの被検試料を希釈して、被検試料中に存在する化学物質の濃度を検出上限の限界濃度以下にし、改めて、組換え細胞を用いて活性測定を行うと、モニター用プロモーターのプロモーター活性が上昇するため、そのモニター用プロモーターが特異的に応答する化学物質が被検試料中に存在すると推定できる。
つぎに、2種以上のモニター用プロモーターを用いる場合、対照プロモーターと1種のモニター用プロモーターの下流にそれぞれ異なるマーカー遺伝子を連結した2種以上の組換え細胞を用いる。このプロモーターアッセイ法において、モニター用プロモーターの組合せは、被検試料中に存在することが疑われる化学物質に特異的に応答する遺伝子のプロモーターの組が好ましい。
例えば、モニター用プロモーター1は化学物質Aに、モニター用プロモーター2は化学物質B、CおよびDに、モニター用プロモーター3は化学物質C、E、F、Gに応答するとした場合、ある被検試料にプロモーター2とプロモーター3が応答したとすれば、その試料には化学物質Cが含まれるというような予測が可能となる。このとき、各プロモーター活性は、各細胞で恒常的に発現している対照プロモーターのプロモーター活性を基準として相対量を算出すれば、試料が濁っている場合や生菌数が不明な場合でも高い精度でプロモーター活性による評価が可能となる。
なお、2種以上のモニター用プロモーターを用いる場合、対照プロモーターと2種以上のモニター用プロモーターの下流にそれぞれ異なるマーカー遺伝子を連結した1種の組換え細胞を用いることができる。
【0015】
以上のような考え方にもとづき、化学物質に対して異なる応答を示す微生物を多数用いてその応答データベースを作成することで、さらに多種類の化学物質の推定を行うことが可能である。データベース作成の具体的な手法は、特開2004−248634(DNAマイクロアレイ法を用いる毒性物質の同定方法)に詳細に記載されている。
微生物と化学物質の好ましい組み合わせは以下の実施例に示す。
【0016】
本発明において用いる「細胞」は、天然に存在する野生株または野生型株、例えばヒト、マウスその他の哺乳類由来の動物細胞および動物細胞の樹立株、これまでバイオアッセイ法に用いられている魚類、線虫等の細胞、昆虫細胞、酵母等の真菌細胞、および大腸菌等の細菌細胞の何れであっても良い。ここに、野生株は天然に存在する組換えを行っていない細胞である。野生型株は注目する遺伝子に手をつけていない細胞であり、例えばW303は栄養要求性等について組換えされているが、それ以上の組換えはされていない。樹立株は動物細胞で継代培養できるもの、例えばガン細胞などの組換えが施されていないものも含む。
【0017】
本発明において用いる「化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーター」とは、化学物質の存在いかんにかかわらず、その下流に連結したレポーター遺伝子を恒常的に発現させるプロモーターを意味する。
このようなプロモーターの例としては、以下の遺伝子からなる群から選択される酵母遺伝子が挙げられる:
【0018】
本発明において用いる「化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーター」とは、化学物質の存在量に応じて、その下流に連結したレポーター遺伝子の発現を上昇させるプロモーターを意味する。
【0019】
これら酵母遺伝子の塩基配列、アミノ酸配列は公共のデータベース(例えば、ドイツのMIPS:Munich Information Center for Protein Sequence、米国のSGD:Saccharomyces Genome Database)に開示されており、インターネットを介して知ることができる。また、プロモーター配列についても公共のデータベース(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiae)に開示されている。
【0020】
また、「化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーター」として、生育状態を変化させることにより化学物質を負荷しない状態でレポーター遺伝子が化学物質の存在いかんにかかわらず、相当する化学物質の検出限界以上のレベルで恒常的に発現させるような処理、例えば培養液の組成を変化させるような処理を行ったものも用いることができる。
【0021】
本発明に用いることができるマーカータンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein:GFP)(Heim, R., Cubitt, A. B. and Tsien, R. Y.(1995) Nature 373, 663-664;Heim, R., Prasher DC. and Tsien, R. Y.(1994) Proc. Natl. Acad. Sci., 91, 12501-12504;Warg, S. and Hazerigg, T.(1994)Nature 639, 400-403;Youvan, D.C. and Michel-Beyerle, M.E.(1996)Nature Biotechnology 14 1219-1220;Chalfie, M., Tu, Y., Euskirchen, G., Ward, W. W. and Prasher, D.C.(1994)Science 263, 802-805)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescent Protein:RFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein)、青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein:BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein:YFP)(Gene,111:229-233,1992; Nat. Biotech. 17: 969-973, 1999; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:462-467, 2001; Annu. Rev. Biochem. 67:509-544)等が挙げられる。また、増強した緑色蛍光タンパク質(GFP)(enhanced green fluorescent protein:EGFP)(Biochem. Biophys. Res. Commun. 227:707-711, 1996)等のような蛍光タンパク質も好適に用いることができる。
【0022】
水中で、光は吸収や散乱によって消散し、消散の程度は、光の波長に依存することが知られている(Hurburt, 1945、 海洋学講座 海洋測定法)。
図6に、蒸留水中での光の吸収係数および散乱係数の波長依存性を示す。この図から、散乱係数に波長依存性はあまり認められないが、580nmを超えた波長領域で、吸収係数に大きな波長依存性が認められる。すなわち、測定すべき発光波長によって吸収係数が異なれば、観測される蛍光強度の比は真の値を示さない。
【0023】
本発明において、少なくとも2種の蛍光タンパク質からの蛍光強度の比から、化学物質の存在または存在量を推定するため、吸収係数がほぼ等しい波長領域に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質から複数選択することが重要である。
したがって、本発明において、580nm以下の領域に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質を用いることが好ましく、550nm以下の領域に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質を用いることがより好ましい。本発明において、例えば、AmCyan (Clontech Laboratories, Inc.)、ZsGreen (Clontech Laboratories, Inc.)、ZsYellow (Clontech Laboratories, Inc.)、DsRed (Clontech Laboratories, Inc.)、AsRed (Clontech Laboratories, Inc.)、HcRed (Clontech Laboratories, Inc.)、ECFP (Clontech Laboratories, Inc.)、EGFP (Clontech Laboratories, Inc.)、EYFP (Clontech Laboratories, Inc.)等を組み合わせて用いる。
【0024】
本発明方法を行う一態様を説明する。化学物質に対して異なる応答を示す組換え細胞を一枚のプレートに載せた「化学物質応答遺伝子組換え細胞のプレート」を作成する。化学物質応答遺伝子組換え細胞として、「化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターの下流に第1の蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結され、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターの下流に第2の蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された組換え細胞」を用いる。その際、第2の蛍光タンパク質をコードするポリヌクレオチドを連結するプロモーターを各種の化学物質に応じて変更して、複数種類の組換え細胞を作成し、これらを適宜組み合わせて用いれば、存在する化学物質の種類をより詳しく決定することができる。
このプレートに、分析したい物質が入っている「被検試料」を加え、組換え細胞個々の応答を、マーカータンパク質に対応した専用の装置で測定する。測定の際の細胞培養条件、化学物質同定手法等の詳細は、特開2004−248634(DNAマイクロアレイ法を用いる毒性物質の同定方法)に記載されている。
この態様において、「化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現する第1のプロモーターのプロモーター活性が減少または消失した場合、用いた被検試料にはある化学物質が、微生物を(a)その生育が重度に阻害される状態、あるいは(b)微生物が死滅する状態、に至らしめるレベルで試料中に存在していると考えられる。そこで、その場合は、新たに被検試料の希釈系列を作成し、該プロモーター活性が消失しない希釈度の試料を特定し、それを新たな被検試料としてレポーター・ジーン・アッセイ法を行う。新たな被検試料を用いて行うレポーター・ジーン・アッセイ法には、被検試料中に化学物質が存在するか否かを検定するための通常の方法を用いることができる。例えば、遺伝子発現の変化、例えばRNA量またはmRNA量の変化を指標に用いる方法であり、これにはプロモーターアッセイ法が含まれる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0026】
実施例1
化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーター遺伝子の選択を行った。
化学物質の存在いかんにかかわらずGFPを発現させている遺伝子を酵母細胞から選択した。詳細には、以下の通りである。
【0027】
使用するベクターは大腸菌と酵母の両方で複製されるYEp型シャトルベクターであるpYES2(pYES2, Cat no:V825-20, Invitrogen Corporation, USA)(R.W.オールド、S.B.プリムローズ 遺伝子操作の原理 原書第5版, 培風館, pp.234-263, 2000))を用いた。また、マーカータンパク質GFPをコードするポリヌクレオチドはベクターpQBI 63(Cat no.54-0082, 和光純薬工業(株))のGFPの部分を用いた。まず、pYES2の多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にGFPのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。次いで、pYES2のGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。GFPおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。酵母遺伝子のプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD:The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)は、酵母遺伝子の約1000bp上流から直前までとした。
【0028】
次に、このプラスミドベクターで酵母Saccharomyces cerevisiae W303 ATCC201239 (MATa/MATα leu2-3/leu2-3 leu2-112/leu2-112 trp1-1/trp1-1 ura3-1/ura3-1 his3-11/his3-11 his3-15/his3-15 ade2-1/ade2-1 can1-100/can1-100)を形質転換した。形質転換の手順を以下に示す。
1)酵母細胞Saccharomyces cerevisiae W303をYPD培地200mlにてOD660が0.5になるまで振盪培養する。
2)集菌して5mlのTE-bufferに懸濁する。
3)2.5Mのリチウムアセテイト250μLを添加する。
4)300μlずつ分注し10μlの上記プラスミドベクターを添加し、30℃30分培養する。
5)700μlの50%PEG4000を添加し、30℃60分振盪培養する。
6)ヒートショック(42℃、5分)後、急冷する。
7)1Mソルビトールで2回洗浄する。
8)最小栄養培地(SD培地に必要なアミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ウラシル、ヒスチジン、アデニン)を加えたもの)で作成した寒天プレートに播種する。
【0029】
形質転換の確認は選択培地(SD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、アデニン)により行った。選択培地の寒天プレートに生育したコロニーはさらに、アミノ酸の栄養要求性を確認した。
この様にして得た形質転換体をSD培地(Yeast nitrogen base without amino acids (Difco 0919-15)+グルコース+アミノ酸(ロイシン、トリプトファン、ヒスチジン、アデニン)で25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。SD培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後に細胞の蛍光強度を、フローサイトメーター(FITCフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)で計測した。フローサイトメーターはアルゴンレーザーで励起波長488nmで励起し、530±30nmのバンドパスフィルターを用いて1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。組換えしていない細胞を計測し測定下限とし、この10倍以上の蛍光強度を示す組換え体を選択した。
これにより、酵母遺伝子YNL015Wのプロモーターを本発明に用いることができることが分かった。
【0030】
実施例2
化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターとその化学物質との好ましい組み合わせを検討した。
実施例1の手法に従い、数種類の組換え体について種々の化学物質に対して応答して、上昇したプロモーター活性を発現し、さらに化学物質の測定上限を超えた場合に酵母遺伝子の発現量が減少することを確認した。これにより、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現する酵母遺伝子とその化学物質との好ましい組み合わせが分かる。
例えば、塩化水銀に対してはYER091Cが応答し、エタノールに対してはYDR135C、YEL065W、YER091C、YLR303w、YPL061Wが応答することが分かった。
【0031】
実施例3
酵母遺伝子YNL015Wのプロモーター活性を蛍光タンパク質ZsYellow(励起極大波長=531nm、蛍光極大波長=540nmのYFP)の発現によって計測するための組換え酵母を作成し、フローサイトメトリーによる化学物質感受性試験を行った。詳細には、以下の通りである。
【0032】
1)1種類のレポーター遺伝子を導入した組換え酵母の作成
ベクターはpYES3/CT (Cat. No. V8253-20, Invitrogen Corporation, USA)を用い、ZsYellowをコードするポリヌクレオチドはベクターpZsYellow (Cat. No. 632443, Clontech Laboratories, Inc.)のZsYellowの部分を用いた。まず、pYES3/CTの多重クローニング部位(multiple cloning site)の中にZsYellowのポリヌクレオチドを挿入したベクターを作成した。ついで、pYES3/CTのGAL1プロモーターの部分を酵母遺伝子であるプロモーター配列を含むポリヌクレオチドと置換し、目的とするプラスミドベクターを得た。ZsYellowおよびプロモーター配列を含むポリヌクレオチドの挿入操作は、適当な制限酵素を選択して行った。酵母遺伝子のプロモーター配列を含むポリヌクレオチド(SCPD: The Promoter Database of Saccharomyces cerevisiaeにて開示)は、酵母遺伝子の約1000bp上流から直前までとした。
次に、このプラスミドベクターで酵母 Saccharomyces cerevisiae W303 ATCC201239を実施例1と同様に、選択培地を最小栄養培地(SD培地(ウラシル、ロイシン、ヒスチジン、アデニン))として形質転換した。
形質転換の確認は選択培地によって行った。さらに、選択培地の寒天プレートに生育したコロニーのアミノ酸の栄養要求性を確認した。
【0033】
2)化学物質感受性試験
得られた組換え酵母をSD培地(ウラシル、ロイシン、ヒスチジン、アデニン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体をSD培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の塩化水銀を負荷した。
塩化水銀負荷後、一定時間(15分、4時間)培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(PEフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測した。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に、塩化水銀を負荷しない細胞の蛍光強度を計測し、蛍光強度差異を求めた。
【0034】
3)生菌数の測定
フローサイトメーターによる計測後、生菌数の測定を行った。適当な濃度に希釈して寒天培地に播種し3日後にコロニー数をカウントした。コロニー数に希釈倍率をかけ、1mlあたりの colony forming unit (CFU/ml) を算出した。
【0035】
4)結果
得られた結果を図1および図2に示す。0.27ppmまでは4時間の処理によって生菌数、蛍光強度ともに変化していない。0.81ppmから生菌数の減少が見られ、同時に蛍光強度が減少している。
上記のように、細胞が損傷を受けその生育が重度に阻害される状態、あるいは死滅する状態では蛍光強度が減少するため、この蛍光強度の減少を検出することによって、化学物質の測定上限を超えたと判定することができる。
【0036】
参考試験例1
GFPに対してホルムアルデヒドが直接影響するか否かを確かめる実験を行った。
GFP蛋白標準品にホルムアルデヒドを加え、GFPに対するホルムアルデヒドの直接影響を検討し、本発明におけるプロモーター活性の低下が、化学物質によるマーカータンパク質の分解に由来しないことを確かめた(図3)。
GFPにホルムアルデヒドを加え測定したところ、蛍光強度を増加させる可能性が示唆されたが、時間によって減少させるということは無かった。
このことから、GFPとホルムアルデヒドが直接反応するというようなことは無いと思われる。
したがって、本発明において、プロモーター活性が低下すれば、用いた微生物が(a)その生育が重度に阻害される状態、あるいは(b)微生物が死滅する状態、に至らしめるレベルの化学物質に暴露されていることを意味すると考えることができる。
【0037】
実施例4
酵母遺伝子YER091Cのプロモーター活性を、蛍光タンパク質ZsYellowの発現に対する蛍光タンパク質GEFの発現の比によって計測するための組換え酵母を作成し、フローサイトメトリーによる化学物質感受性試験を行った。詳細には、以下の通りである。
【0038】
1)2種類のレポーター遺伝子を導入した組換え酵母の作成
実施例1で化学物質に応答するプロモーターとしてYER091Cを用いて作成したベクターおよび、実施例3で化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターとしてYNL015Wを用いて作成したベクターの両方で、酵母 Saccharomyces cerevisiae W303 ATCC201239を、実施例1および3と同様に、選択培地を最小栄養培地(SD培地(ロイシン、ヒスチジン、アデニン))として形質転換した。
【0039】
2)化学物質感受性試験
得られた組換え酵母をSD培地(ロイシン、ヒスチジン、アデニン)にて25℃において振盪培養することにより定常状態になるように増殖させた。定常状態の形質転換体をSD培地で500倍希釈して25℃、15時間振盪培養を行い対数増殖期として600nmの吸光度が0.2から0.5であることを確認した後、異なる濃度の塩化水銀を負荷した。
塩化水銀負荷後、一定時間(15分、4時間)培養した細胞の蛍光をフローサイトメーター(FITCフィルターおよびPEフィルター, EPICS XL-MCL, Bechmancoulter)を用いて計測した。フローサイトメーターにより1測定で1万個の細胞の蛍光強度を測定し、すべての細胞の蛍光強度の平均値を求め測定値とした。同様に、塩化水銀を負荷しない細胞の蛍光強度を計測し、蛍光強度差異を求めた。
【0040】
3)結果
塩化水銀の負荷濃度を変化させて、GFPおよびZsYellow由来の蛍光強度の変化をモニターし、結果を図4に示す。ZsYellow由来の蛍光強度とGFP由来の蛍光強度を用いて、化学物質濃度に対する蛍光強度の比を図4に示した。この結果から、化学物質濃度に対する蛍光強度の比の関係式fを導出できる。関係式は、計測値を補完した関係式でも、補完した関係テーブルであってもよい。
【0041】
化学物質のある濃度以上で、ZsYellow由来の蛍光強度が減少するが、これは細胞が死滅する濃度を超えたため生菌数が減少することに起因する。一方、GFP由来の蛍光強度もある特定濃度を超えたところで減少し始めるが、ZsYellow由来の蛍光強度も減少していることから、化学物質が検出限界以下しか存在しないのではなく、組換え酵母の生育が重度に阻害されているか、あるいは死滅しているからであることが分かる。
【0042】
実施例5
酵母遺伝子YER091Cのプロモーター活性を、蛍光タンパク質ZsYellowの発現に対する蛍光タンパク質GEFの発現の比によって計測するための組換え酵母を作成し、化学物質感受性試験を行った。この実施例では、得られた組換え酵母を一旦乾燥状態とし、乾燥した酵母を賦活化した後、試験を行った。詳細には、以下の通りである。
【0043】
1)2種類のレポーター遺伝子を導入した乾燥組換え酵母の作成
実施例4で作成した組換え酵母から、当該技術分野において周知の方法、例えばReed, G.およびNagodawithana, T.W. (1991) Yeast Technology, 第2版, pp.261-314, Van Nostrand Reinhold, New Yorkに記載された方法を用いて乾燥酵母を調製した。
【0044】
2)化学物質感受性試験
この実施例では、図5に示す測定用容器(1)を用いて、化学物質感受性試験を行った。この容器は、単独で用いることができるが、複数の容器を配列して、プロモーターアッセイ方法において通常用いられるマイクロタイタープレートを構成することもできる(図示せず)。
測定用容器(1)において、乾燥酵母(2)を密閉する膜部(3)は、通常、収容した後に微生物が容器外部に放出されないように密閉しつつ、容器内部(4)への被検試料液の浸入は許容する材料からなる。また、膜部は、被検試料液に含まれる比較的大きなサイズの夾雑物が容器内部へ入るのを防ぐ役割を果たす。
【0045】
図5において、遮蔽部(5)は、膜部(3)の上方に2以上の開口部(6)を形成するような形状にし、その開口部の少なくとも1を注射器(20)の先端を着脱自在に嵌合できるように構成されている。被検試料液を入れた注射器の先端を遮蔽部の開口部(6)に嵌合して注入することにより、被検試料液を圧入することができる。
【0046】
本発明の容器本体(7)は、上述の組換え微生物と被検試料液とを接触させ、組換え微生物のレポーター遺伝子の発現を測定し得るものであればいずれの形状、材料からなるものであってもよいが、少なくとも底面または側面が透明の材料からなる。容器本体(7)の大きさは、より少量の被検試料でもアッセイが十分に可能なサイズであり、通常50μl〜50mlの容積を有する。また、容器本体の形状は、図5に示すように、広範囲の容量の被検試料液を適用することができるように、開口部側の容積が底部側の容積よりも大きくなる形状とすることができる。
さらに、本発明の容器は蓋(8)を備えていてもよい。かかる蓋は、容器本体から分離していても、または図示するようなヒンジにより容器本体と連結していてもよい。
【0047】
具体的には、乾燥酵母が予め収容された測定用容器(1)に、まず、SD培地(ロイシン、ヒスチジン、アデニン)を加えて、乾燥酵母を賦活化する。
その後、注射器(20)を用いて、膜部(3)を通して、塩化水銀溶液を負荷する。
塩化水銀溶液の負荷後、この容器をマイクロタイタープレートリーダー(波長可変型蛍光/吸光マイクロタイタープレートリーダーサファイア、TECAN)に設置し、容器の下方から励起光を照射し、ZsYellowおよびGEF由来の蛍光強度を測定する。
【0048】
得られたZsYellow由来の蛍光強度とGFP由来の蛍光強度を用いて、蛍光強度の比を求めた。前記の蛍光強度の比を実施例4で求めた化学物質濃度に対する蛍光強度の比の関係式fに適用することによって、容器中の塩化水銀の濃度を算出できる。
さらに、負荷した塩化水銀溶液の体積とSD培地の体積より、塩化水銀溶液中の塩化水銀の濃度を求めることができる。
【0049】
3)まとめ
バイオアッセイを用いた環境計測キットにおいて、容器に予め乾燥酵母を入れ密封することで長期保存することが考えられるが、乾燥酵母を用いた場合、培地の添加により賦活化しても、損傷を受けている酵母もあるため、生菌数が不明である。そのため、従来、菌数あたりの蛍光強度から化学物質の濃度を求めることができなかった。
しかしながら、本発明によれば、予め計測し、作成した化学物質濃度に対する蛍光強度の比の関係式により、化学物質の存在に依存しない蛍光強度と特定の化学物質の濃度に応じて変化する蛍光強度との比から、生菌数が不明であっても、化学物質の存在量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】酵母遺伝子YNL015WのプロモーターとYFPとが連結されたカセットを含む酵母に対する塩化水銀負荷試験における蛍光強度の結果を示すグラフである。
【図2】酵母遺伝子YNL015WのプロモーターとYFPとが連結されたカセットを含む酵母に対する塩化水銀負荷試験における生菌数の結果を示すグラフである。
【図3】GFP蛋白標準品に種々の濃度のホルムアルデヒドを加え、GFPによるホルムアルデヒドの分解性を検討した結果である。
【図4】酵母遺伝子YNL015WのプロモーターとYFPが連結されたカセットおよび酵母遺伝子YER091CのプロモーターとGFPとが連結されたカセットを含む酵母に対する塩化水銀負荷試験における蛍光強度の結果を示すグラフである。
【図5】乾燥した微生物を利用するプロモーターアッセイ方法に用いるのに適した形状の容器の概略図。
【図6】蒸留水中での光の吸収係数および散乱係数の波長依存性を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1 測定用容器
2 乾燥酵母
3 膜部
4 容器内部
5 遮蔽部
6 容器開口部
7 容器本体
8 蓋
20 注射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のレポーター遺伝子が導入された組換え細胞であって、1の種のレポーター遺伝子が、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターの下流に連結され、他の1または複数種のレポーター遺伝子が、それぞれ、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターの下流に連結されていることを特徴とする組換え細胞。
【請求項2】
組換え酵母であることを特徴とする請求項1に記載の組換え細胞。
【請求項3】
前記2種以上のレポーター遺伝子が、580nm以下に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質の遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の組換え細胞。
【請求項4】
1種以上の組換え細胞に被検試料を接触させ、ここに、前記1種以上の組換え細胞は、2種以上のレポーター遺伝子が導入された組換え細胞であって、1の種のレポーター遺伝子が、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターの下流に連結され、他の1または複数種のレポーター遺伝子が、それぞれ、化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターの下流に連結されていることを特徴とする組換え細胞であり;
被検試料中で、化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターのプロモーター活性および化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターのプロモーター活性を測定し;
化学物質の存在いかんにかかわらずプロモーター活性を一定レベルで発現するプロモーターのプロモーター活性に対する化学物質に応答して上昇したプロモーター活性を発現するプロモーターのプロモーター活性の比を算出し;
この比に基づき、被検試料中の化学物質の存在または存在量を推定することを特徴とする多指標型プロモーターアッセイ法。
【請求項5】
組換え細胞が組換え酵母であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
プロモーター活性を蛍光強度で測定することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記2種以上のレポーター遺伝子が、580nm以下に蛍光極大波長を有する蛍光タンパク質の遺伝子であることを特徴とする請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−35820(P2008−35820A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216903(P2006−216903)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】