説明

改良されたマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンワクチン

本発明は、有利にも単回投与後、感染に対する免疫を提供する、改良されたマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンワクチン組成物を提供する。この組成物は、不活化されたマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンおよびアジュバント混合物を含み、これが組み合わせて、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエ感染に対する免疫を提供して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンに対して特異的な免疫応答を誘発するが、これには細胞媒介性免疫および局所(分泌IgA)免疫が挙げられる。好ましい実施形態では、アジュバント混合物は、アクリル酸ポリマー、最も好ましくはカルボポール、および代謝性オイルの混合物、例えば、1またはそれ以上の不飽和のテルペン炭化水素、好ましくはスクアレンまたはスクアラン、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、例えば、プルロニック(登録商標)を含む。このワクチン組成物は必要に応じて、防腐剤、好ましくはチオメルソール、および/またはEDTAを含んでもよい。別の実施形態では、本発明は、改良されたマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンワクチン組成物を提供するが、この組成物は有利にも単回投与後の感染からの免疫を提供し、そして、他のワクチン成分と組み合わされて、不活化されたマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンおよびアジュバントまたはアジュバント混合物を含み、これが組み合わされて、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエ感染から免疫を提供して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンに対して特異的な免疫応答を誘発するが、これには細胞媒介性免疫および局所(分泌IgA)免疫が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、詳細には、単回用量でマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対してレシピエント動物を免疫するのに有効な量の不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを使用する、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する防御免疫を誘導するための改良方法に関する。
【0002】
(背景技術)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエは、ブタのマイコプラズマ肺炎の病原因子である。この疾患は、体重増加の減少および飼料効率の悪化に起因して養豚業における経済的損失の重要な原因である。この疾患は、慢性の咳、被毛のくすみ、成長の鈍化および発育不全(数週間続く)を生じる。特に腹側尖端および心臓葉における硬化の紫から灰色の領域の特徴的な病変が感染動物で観察される。疾患はほとんど死亡を生じないが、感染したブタはしばしば、日和見病原体による二次感染に罹り易く、その結果として死亡またはストレスが生じる。経済的な損失だけでも、毎年2億〜2億5千万ドルと見積もられている。
【0003】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエは、増殖の遅い選好性の細菌であって、細胞壁を欠く。呼吸管(気道)にやはり位置する共通の二次因子である、Mycoplasma hyorhinisに起因して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエをこの呼吸管から単離することはしばしば困難である。この疾患は、咳き込みによって生じるエアロゾルによって、そして罹患したまたは回復期のキャリアのブタからの直接の接触によって、伝播される。感染した動物と未感染の動物の混和は、早期でかつ頻繁な再感染を生じる。感染は頻繁に、分娩の際のキャリアのメスブタによる子ブタの感染で開始する。家畜の群管理の技術に起因して、感染は寿命の後期まで明らかにはなり得ない。さらなる感染は、通常、離乳後、ブタが集められる場合に観察される。顕在性の疾患は通常6週齢以上のブタで観察される。成長速度および飼料転換速度は感染動物では顕著に低下する。抗生物質を用いる処置は高価であって、長期の使用が必要である。再感染も問題である。ワクチンは現在、感染およびその結果を回避するための最も有効な方法である。
【0004】
フォートドッジアニマルヘルス(Fort Dodge Animal Health)(FDAH)は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによって生じる臨床症状に対して健康なブタを防御するためのワクチンとして使用するために、マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを、Suvaxynf(登録商標)Respifend(登録商標)MHの商品名で市販している。このワクチンは、アジュバントとしてカルボポール(Carbopol)を含み、そして少なくとも1週齢のブタについて2回投与のワクチンが推奨され、この二回目の投与は、最初のワクチン接種後2〜3週である。しかし、2回投与のワクチンは、疾患に拮抗して完全な保護を得るには、動物を2回処理する必要があるという明白な不利な点を有する。
【0005】
従って、本発明の目的は、ワクチンの単回用量の投与を用いて、防御免疫を誘発して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによって生じる疾患を防御する、この生物体に対する有効なワクチンを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによって生じる感染および疾患に対してブタにおける使用に適切した、そして他のバクテリンおよび/またはトキソイドと組み合わせて用いられ得るワクチン組成物を提供することである。
【0007】
本発明のなおさらなる目的は、ワクチンの単回投与後に防御免疫を誘発するために、バクテリンの免疫原性を増強するアジュバント処方物を利用することによって、疾患(この疾患の原因の生物体は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエである)の予防または緩和のための方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的および特徴は、本明細書において以下に記載される詳細な説明から明らかになる。
【0009】
(発明の開示)
本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによる感染に対して動物を免疫するためのワクチン組成物であって、免疫量の不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンと;アクリル酸ポリマー、ならびに代謝性オイルとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物を含むアジュバント混合物と;医薬上許容されるキャリアとを含み、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する;ワクチン組成物に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによる感染に対して動物を免疫するための免疫原性組成物を提供し、この免疫原性組成物は、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを、上記のアジュンバント混合物および医薬上許容される安定化剤、キャリアまたは希釈剤と一緒に組み合わせて含む。このアジュバントは通常、このワクチン組成物中に約1〜25(v/v)%の最終濃度で、そして好ましくは約5〜12(v/v)%の最終濃度で存在する。この組成物はまた、1またはそれ以上の病原体(このような病原体の1またはそれ以上の株、タイプ、血清型などを含む)、例えば、Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiae、レプトスピラ属、およびウイルス抗原、例えば、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)由来の他のワクチン成分(活性化バクテリンまたは精製トキソイドを含む)を含んでもよく、そして筋肉内、皮下、経口、エアロゾル、または経鼻の経路によって投与されてもよい。本発明の他の実施形態において、他のワクチン成分は、SIV;Haemonphilus parasuis;PRRSVおよびPCVからなる群;SIVおよびErysipelothrix rhusiopathiaeからなる群:Pasteurella multiocidaおよびBordetella bronchisepticaからなる群から選択される1またはそれ以上の抗原を含む。本発明のさらに別の実施形態において、本発明の他のワクチン成分は、SIVから選択される場合、SIV−H1N1株、SIV−H1N2株およびSIV−H3N2株からの選択が挙げられる。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンおよびアジュバント混合物を含む上記のワクチンの単回用量を投与することによって、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによって生じる疾患に対して動物を防御するための方法を提供する。
【0012】
本発明のなおさらなる態様では、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエによる感染に対して動物を免疫するための免疫原性組成物またはワクチンを提供するが、これはアジュバントまたはアジュバント混合物と組み合わせた、不活性なマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリン(このアジュバントまたはアジュバント混合物が、単独でまたは混合物で、この組成物またはワクチンに対する細胞媒介性免疫応答および局所(分泌型IgA)免疫応答を提供する)と;少なくとも1つのさらなる細菌性抗原および/またはウイルス抗原を含む他のワクチン成分と;医薬上許容されるキャリアとを含み、このワクチン組成物は、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する。この組成物またはワクチンにおいて、他のワクチン成分は、1またはそれ以上の病原体(このような病原体の1またはそれ以上の株、タイプ、血清型などを含む)、例えば、Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiae、レプトスピラ属の細菌、およびウイルス抗原(このようなウイルス抗原の1またはそれ以上の株、タイプ、血清型などを含む)、例えば、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)由来の不活化バクテリンまたは精製トキソイドを含んでもよく、そして筋肉内、皮下、経口、エアロゾル、または経鼻の経路によって投与されてもよい。
【0013】
本発明のなお別の態様において、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびウイルス病原体による感染に対して動物を免疫するためのワクチン組成物を提供する。このワクチン組成物は、免疫量のマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンと;ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群より選択される少なくとも1つの免疫量のウイルス抗原と;アクリル酸ポリマー、代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを水中油型エマルジョンの形態で含むアジュバント系とを含み;このワクチン組成物は、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する。
【0014】
本発明のなおさらなる態様において、本発明は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび少なくとも1つのウイルス病原体、そして必要に応じてさらなるウイルスおよび/または細菌の病原体、による感染に対して動物を免疫するためのワクチン組成物および方法を提供する。このワクチン組成物(単数または複数)および方法(単数または複数)は、単回投与後に、マイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する。
【0015】
(発明の詳細な記載)
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、および他の文献は、その出典を明示することにより本明細書の一部とする。矛盾がある場合には、本発明の開示が優先する。
【0016】
本明細書において用いる場合、「バクテリン(bacterin)」とは、不活化された細菌の集合であって、これは特定のアジュバントと組み合わされて、動物に投与された場合に疾患または感染に対して防御するための防御免疫を誘発し得る。
【0017】
「アジュバント(Adjuvant)」とは、ワクチン組成物においてマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫原性および有効性を増強する1またはそれ以上の物質からなる組成物を意味する。
【0018】
本明細書および請求の範囲において用いる場合、MHDCEという用語は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエのDNA細胞等価物(マイコプラズマ・ハイオニューモニエ DNA cell equivalents)を意味する。
【0019】
「免疫量(immunizing amount)」とは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエに対する免疫を提供するバクテリンの量である。「免疫量」は、種、血統、年齢、大きさ、健康状態およびその動物が同じ生物体に対するワクチンを以前に与えられているかどうかに依存する。
【0020】
本発明は、単回投与免疫に適切なマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)に対するワクチンを提供する。本発明のワクチンは、バクテリンの免疫原性を増強し、それによって単回投与で防御免疫を誘発するアジュバント混合物を含む。
【0021】
ワクチンは、当該分野で標準的な方法によって、新鮮に回収された培養物から調製されてもよい(例えば、米国特許第5,338,543号または米国特許第5,565,205号、および以下の実施例2を参照のこと)。すなわち、生物体は、PPLO(Pleuropneumonia様生物(pleuropneumonia-like organism))完全培地[Difco].Laboratories]等の培養培地中で増殖され得る。この生物体の増殖は、色調変化単位(color changing units)(CCU)を決定するような標準的技術によってモニターされ、十分高い力価が達成されたときに回収される。このストックは、処方のためにワクチン中に入れられる前に、さらに濃縮されて従来の方法で凍結乾燥されてもよい。Thomasら、Agri-Practice,Vol.7 No.5,26〜30頁に記載される方法のような他の方法を使用してもよい。
【0022】
本発明のワクチンは、アジュバント混合物と組み合わされたマイコプラズマ・ニューモニエバクテリンおよび1またはそれ以上の医薬上許容されるキャリアを含む。使用に適したキャリアとしては、水性媒体、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、最小必須培地(MEM)、またはHEPES緩衝液を有するMEMが挙げられる。
【0023】
本発明のワクチン組成物における使用のためのアジュバント混合物は、免疫応答を増強し、そしてアクリル酸ポリマーと代謝性オイルの混合物、例えば、不飽和テルペン炭化水素またはその水素化生成物、好ましくはスクアラン(2,3,10,15,19,23−ヘキサメチルテトラコサン)またはスクアレン、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとの混合物を含む。このようなアクリル酸ポリマーは、ホモポリマーであってもまたはコポリマーであってもよい。アクリル酸ポリマーは好ましくは、カルボマーである。カルボマーは商品名カルボポール(Carbopol)で市販されている。アクリル酸ポリマーは、例えば、米国特許第2,909,462号および同第3,790,665号に記載されており、その内容を出典明示により本明細書の一部とする。ポリオキシエチレン−ポリオキシプリピレンブロックコポリマーは、固体および液体成分を懸濁することを補助する、界面活性剤、好ましくは液体界面活性剤である。この界面活性剤は、商品名プルロニック(Pluronic)(登録商標)でポリマーとして市販されている。好ましい界面活性剤は、ポリオキサマー401であって、これはプルロニック(登録商標)L121の商品名で市販されている。
【0024】
免疫原性の刺激性アジュバント混合物は代表的に、本発明のワクチン組成物中に、v/v量として約1%〜25%、好ましくは約2%〜15%、さらに好ましくは約5%〜12(v/v)%の量で存在する。アジュバント混合物使用の量およびアジュバントの2つの成分の比は、他のバクテリンまたは精製トキソイドの添加に依存して変化し得る。このアジュバント混合物は一般に、水性媒体中にエマルジョンとして処方された、代謝性オイルと、アクリル酸ポリマーと、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーとを含む。
【0025】
このアジュバント混合物において代謝性オイルおよびアクリル酸ポリマーは、それぞれ、約10〜150mL/Lおよび約0.5〜10g/Lの範囲の量で存在してもよい。このアジュバント混合物の好ましい実施形態において、代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー成分の混合物は、スクアランおよびプルロニック(登録商標)L121(ポロキサマー401)の混合物であって、これは約50〜100mL/Lの量で存在してもよく、そしてカルボキシメチレンポリマーは、カルボポール934P(Carbomer 934P)であって、約2mL/Lの量で存在してもよい。典型的には、このアジュバント混合物は、アクリル酸ポリマーを代謝性オイル/ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー混合物に対して約1:25〜1:50の比で含む。
【0026】
好ましいアクリル酸ポリマーは、ポリアリルスクロースとアクリル酸架橋したポリマーであるカルボポール934P NFおよび941 NFとしてB.F.Goodrichによって市販されるものであって、化学式(CHCHOOOH)を有する。これらのポリマーは、水性キャリアとともに適切に処方する水性ゲルを形成する。好ましいポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーはプルロニック(登録商標)L121、L61、L81またはL101としてBASFから市販される非イオン性界面活性剤である。
【0027】
不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫量と;細菌性抗原および/またはウイルス抗原から選択された他のワクチン成分と;医薬上許容されるキャリアとの組み合わせに関する、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する、本発明のワクチン組成物において、このワクチン組成物はさらに、アジュバントまたはアジュバント混合物を含み、これが単一でまたは組み合わされて、細胞媒介性免疫および局所(分泌型IgA)免疫を提供する。これらのアジュバントまたはアジュバントは、例えば、サポニン、例えば、クイル(QUIL)(登録商標)A;サイトカイン、例えばIL−12およびIL−18および局所(分泌型IgA)免疫;水酸化アルミニウム、代謝性オイル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーおよびアクリル酸ポリマー(水中油型エマルジョンの形態で)、エチレンマレイン酸コポリマー;別のアジュバントを有するアクリル酸ポリマー、DEAEデキストラン、ミコバクテリア(放線菌)細胞壁由来アジュバントなどのアジュバントからさらに選択されてもよい。本発明のこの組成物における他のワクチン成分としては、1またはそれ以上の病原体(このような病原体の1またはそれ以上の株、タイプ、血清型などを含む)、例えば、Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiae、レプトスピラ属に由来する、不活化バクテリンまたは精製トキソイドを含む細菌抗原、ならびにウイルス抗原(このようなウイルス抗原の1またはそれ以上の株、タイプ、血清型などを含む)、例えば、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)を挙げることができる。本発明の他の実施形態では、他のワクチン成分としては、SIV;Haemonphilus parasuits;PRRSVおよびPCVからなる群;SIVおよびErysipelothrix rhusiopathiaeからなる群;Pasteurella multiocidaおよびBordetella bronchisepticaからなる群より選択される1またはそれ以上の抗原が挙げられる。本発明のなお別の実施形態では、本発明の他のワクチン成分は、SIVから選択される場合、SIV−H1N1株、H1N2およびSIV−H3N2株からの選択が挙げられる。
【0028】
本発明のワクチンは、筋肉内、皮下、経鼻、腹腔内、または経口の経路によって、好ましくは細胞内または皮下の経路によって投与されてもよい。
【0029】
本発明のワクチンは一般に、不活化マイコプラズマ・ハイオニューモニエと、代謝性オイルと、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーと、アクリル酸ポリマーとを水中油型エマルジョンの形態で含む。このワクチンは好ましくは、アクリル酸ポリマーを0.5〜10g/Lの範囲内の濃度で含む。このワクチンは好ましくは、代謝性オイルを2〜6mL/Lの範囲内の濃度で含む。このワクチンは好ましくは、ポリオキシエチレン−プロピレンブロックコポリマーを1〜3mL/Lの範囲内の濃度で含む。
【0030】
単回投与のために、このワクチンは好ましくは、約1〜10〜3×1011MHDCE/mL、好ましくは約1×10〜3×10MHDCE/mLに相当する量のマイコプラズマ・ニューモニエバクテリンを含む。約1〜5mL、好ましくは2mLが動物1匹あたりに、筋肉内、皮下、または腹腔内に投与され得る。1〜10mL、好ましくは2〜5mLが経口または経鼻的に投与され得る。
【0031】
以下の実施例は、その範囲を限定することなく本発明をさらに例示することを意図している。
【0032】
実施例1
マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリン
ワクチン組成物の調製
(ウイルスストックの説明)マイコプラズマ・ハイオニューモニエは、多数の容易に利用可能な供給源から得ることができる。1つの実施形態では、マイコプラズマ・ハイオニューモニエのP−5722−3株を用いてもよい。この培養物は、C.Armstrong,Purdue University,West Lafayette,Indianaから入手した。マイコプラズマ・ハイオニューモニエの培養物の受け取り後、これをマイコプラズマ・ハイオニューモニエのブロスで7回継代してマスターシードを確立した。
【0033】
(細胞培養)Bacto PPLO粉末、酵母エキス、グルコース、L−システイン塩酸塩、アンピシリン、酢酸タリウム、フェノールレッド、消泡剤、正常滅菌ブタ血清および水を含む培地中で、18〜144時間にわたってマイコプラズマ・ハイオニューモニエを増殖させた。不活化のために、二元エチレンイミン(BEI)を、発酵容器内の産生培養物に添加する。pHを7.4に調節し、次いで従来の手順に従って収集して、マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを得る。
【0034】
(ワクチン組成物の調製)
(用いられる防腐剤の組成および割合)収集したバクテリンを、それぞれ0.01%および0.07%以下のチメロサールおよびエチレンジアミン四酢酸、四ナトリウム塩(EDTA)の添加によって保存する。アンピシリン(米国薬局方)は、増殖培地中に0.250グラム/リットルで存在する。残留アンピシリン濃度は、収集液の容積に依存して最終生成物中で変化するが、最終生成物の残留アンピシリンの濃度は30μg/mLを超えない。
【0035】
(この生成物の標準化)
マイコプラズマ濃縮物をDNA蛍光アッセイによって定量する。
【0036】
1またはそれ以上のテルペン炭化水素およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む代謝性オイルの混合物、例えば、スクアラン/プルロニック(Squalane/Pluronic)L121混合物を、10gの塩化ナトリウム、0.25gの塩化カリウム、2.72二塩基性リン酸ナトリウム、0.25一塩基性リン酸カリウム、20mLプルロニック L121(BASF Corporation)、40mLスクアラン(Kodak)、3.2mL Tween 80を900mLの精製水に溶解して1000mLにすることによって調製する。混合後、この成分をオートクレーブに付してもよい。次いで、この混合物を安定なエマルジョンが形成されるまでホモジナイズする。ホルマリンを0.2%の最終濃度まで添加してもよいし、またはチメロサールを1:10,000の最終濃度まで添加してもよい。
【0037】
(シリアルをつくるための単位の組み立て)
満足なマイコプラズマ・ハイオニューモニエ濃縮物を無菌的にアジュバント、防腐剤と合わせて、撹拌装置を備えた無菌容器中に希釈して30分以上混合する。
【0038】
【表1】

シリアルのpHを7.0±0.2に調節する
MHDCE=マイコプラズマ・ハイオニューモニエ DNA細胞等価物
【0039】
(最終容器の充填および密閉の方法および技術)
この生成物を、滅菌200〜500ミクロンのフィルターエレメントを通じて全体的に濾過して、9CFR114.6に明記された条件下で、充填操作のために指定された室内で滅菌の最終容器中に充填する。このガラス容器またはプラスチック容器を、ゴム栓で閉じて、アルミニウムのシールで圧着密閉する。各々2.0mLの用量は、2×10個以上のマイコプラズマ・ハイオニューモニエDNA細胞等価物を含む。
【0040】
(効力についての試験)完成した生成物のバルクまたは最終容器サンプルは、以下のように効力を試験することができる:
効力試験のためのアッセイ法:Harlan Sprague Dawleyまたは他の受容可能な供給業者からの1つの搬送物のうち6〜7週齢のICR雌性マウスを用いる。未知および参照のバクテリンを用いる免疫のためには各々最低20匹のマウスが必要である。最低5匹のマウスを非接種対照としておいておく。試験バクテリンおよび参照バクテリンを個々に完全に混合する。25ゲージで5/8インチの針を取り付けた滅菌の使い捨て可能なシリンジを用いて、宿主動物用量の十分の一(0.2mL)をマウスの鼠径部に皮下接種する。各群のマウスを14日間、個々の単位として飼育して、食物および水には自由に接近可能にさせる。次いで各々のマウスを麻酔する。麻酔されたマウスをその後ろに置く。片手で頭を下に保ち片方の前脚を体から離して伸ばさせる。円刃刀を用いて、伸ばした前脚とノドとの間で、皮膚切開を約1/2インチ長行い、上腕動脈を切断する。針のない3.0mLのシリンジを用いて、切開にたまった血液を収集する。この血液を表示付の試験管に放出させて凝固させる。この凝固した試験管を1,000×gで遠心分離して、凝固から血清を分離する。試験するまで個々の血清を−20℃以下で保管する。
【0041】
(血清学的試験)
ELISA手順を用いて、参照バクテリンおよび/または未知のバクテリンに対するマウスの抗体応答を測定する。DynatechのDisposable Immulon II Flat-Bottom Microtiter Platesまたは等価のもの、およびELISA Plate Readerを用いて、ELISA手順を行なう。
【0042】
(試験試薬)
リン酸緩衝化生理食塩水−ツィーン(Tween)(PBST)(5N NaOHまたは5N HClを用いてpHを7.2〜7.4に調整)
【表2】

グリシン緩衝化生理食塩水(GBS)(5N NaOHまたは5N HClを用いてpHを9.5〜9.7に調整)
【表3】

陽性対照血清:陽性対照血清は、マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンを用いてワクチン接種したマウスからの血清のプールである。
【0043】
(結合体および基質)
アフィニティー精製した抗マウスIgGペルオキシダーゼ標識結合体は、Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc.(カタログ番号074−1802)から入手する。結合体の最適希釈を決定するための手順は以下に詳細である。ペルオキシダーゼ基質溶液(Peroxidase Substrate Solutions)(ABTS)は、Kirkegaard and Perry, Inc.から入手する。
結合体の滴定:10mM GBSに希釈した20μg/mLのマイコプラズマ・ハイオニューモニエの細胞全体抗原(Whole Cell Antigen)を1ウェルあたり100μl用いて、ImmulonII Flat-Bottom Plateをコーティングする。このプレートを37℃+2℃で1時間以上インキュベートして、2〜7℃に少なくとも18時間以上で1週間以内移す。使用の前にプレートをPBSTで3回洗浄し、このとき各洗浄の間で浸漬時間を1分とり、タッピングして乾燥させる。PBST中での1:40希釈の陽性対照血清を調製して、この希釈された陽性血清(100μL/ウェル)をこのプレートのウェルの半分に添加する。PBSTをこのウェルのもう半分に添加する。このプレートを室温で1時間インキュベートして、その後にこのプレートを3回洗浄する。結合体化した血清をPBSTを用いて2倍に連続希釈するが、これは1:100希釈で開始して1:10,240希釈で終わる。各々の結合体希釈の100μLを陽性血清の4つのウェルに、そしてPBSTの4つのウェルに添加して、室温で30分間反応させる。このプレートを4回洗浄して、100μlのペルオキシダーゼ基質溶液(abts)を各ウェルに添加する。このプレートをTλ=450の二重波長設定で読み取る。PBST対照の値が陽性対照血清の値から差引きされるとき、陽性対照血清について0.850〜1.050の読み取りが得られる結合体の希釈を選択する。
【0044】
(試験抗原)
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗原は、全細胞調製物であって、Fort Dodge Animal Healthから供給される。
【0045】
ELISAは以下のとおり行なわれる:Dynatech Immulon II Flat-Bottom Mictotiter Platesを用いる。1バイアルの凍結乾燥マイコプラズマ・ハイオニューモニエ全細胞抗原(Lyophilized Mycoplasma hyopneumoniae Whole Cell Antigen)をグリシン緩衝化生理食塩水(Glycine Buffered Saline)(GBS)を用いて10mLに復元する。この復元したMycoplasmaタンパク質の濃度は20μg/mLである。次いで、100μl(2μg)の希釈抗原をプレートの全ウェルに添加する。このプレートを37℃±2℃で1時間以上インキュベートし、次いで最低18時間かつ最大1週間、2〜7℃に移す。このプレートをPBSTで3回洗浄し、このとき各洗浄の間で1分浸漬し、次いでタッピング乾燥させる。血清をPBST中での1:40希釈する。陽性対照血清をあらゆるプレートに四連で入れる。1ウェルあたりのサンプル溶液は100μlである。連続試験血清サンプルおよび参照血清サンプルを同じプレートの上で二連で試験する。このプレートを室温で1時間インキュベートして、PBSTを用いて3回洗浄する。100μlの抗マウスIgGペルオキシダーゼ標識結合体(Kirkegaard and Perry)をPBST中で希釈して、全てのウェルに加え、このウェルを室温で30分間インキュベートさせる。このプレートをPBSTを用いて4回洗浄する。100μlのペルオキシダーゼ基質溶液(ABTS)を全てのウェルに添加して、このプレートを、PBST対照ウェルに対して機械がブランクであるとき、陽性血清対照が0.850〜1.050のOD405(450)に達するまでインキュベートする。このプレートを読み取るが、これはPBSTウェルに対してブランクである。試験を確証するために、参照バクテリンとともにインキュベートされたマウスの血清は、0.500の最小平均値を生じなければならず、そしてワクチン接種されていない対照マウスの血清は0.100の最大平均値には達してはならない。あるいは、参照バクテリンでインキュベートされたマウスの血清の平均値と非ワクチン接種の対照マウスの血清の平均値との間の相違は、0.400以上でなければならない。
【0046】
連続ワクチン接種、参照ワクチン接種および対照についての平均値を以下のように算出して評価する:満足とみなされるためには、試験バクテリンは参照以上の平均中央光学密度を示さなければならない。あるいは、片側スチューデントT試験を用いて、試験バクテリンは参照バクテリンよりも有意に(p≦0.05信頼水準)低くてはならない。1.686以上の算出された任意のT値は、参照バクテリンと試験バクテリンとの間で有意な相違を示し、試験バクテリンが却下される。1.686未満の算出された任意のT値は、満足なシリアルを示す。生成物の効率に未関連の任意の理由のために不満足であることが試験によって決定された任意の試験バクテリンを再試験して、最初の試験を無効であるとみなす。
【0047】
実施例2
(試験ワクチン)
試験のためのワクチンを、1またはそれ以上のテルペン炭化水素およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む代謝性オイルの混合物(Squalane/プルロニック L121混合物)の5%、ならびにアジュバントとして0.2%アクリル酸ポリマー(Carbopol)、および1用量あたり2×10個のエム・ハイオニューモニエ(M.hyopneumoniae)DNA細胞等価物(MHDCE)を用いて、実施例1に詳述されている手順に従って調製した。
【0048】
実施例3
この試験は、3週齢で実施例2のワクチンの1用量のワクチン接種によって誘導されたブタにおける免疫の4ヶ月の免疫期間(duration of immunity)(DOI)を実証するためにデザインした。
【0049】
この研究のために、2つの別の動物実験を行なった。両方の実験における全てのブタは、ワクチン接種の時点で血清陰性(抗体力価<10)であって、このことはこの動物がマイコプラズマ・ハイオニューモニエに感受性であったことを示した。対照群における全てのブタはチャレンジの前に血清陰性のままであった。これによってワクチン接種されたブタにおける免疫応答がワクチンに起因しており、いかなる環境曝露にも起因しないことが示される。
【0050】
最初の実験では、実施例2のワクチンをBoehringer Ingelheim(BI)が製造した市販の製品であるIngelvac M. hypo(登録商標)と一緒に、高レベルの病原性エム・ハイオニューモニエ(0.4×10個の生物体)のチャレンジによって評価した。18〜21日齢の22匹のブタに実施例2のワクチンを筋肉内(IM)で用いてワクチン接種し、そして(8)匹のブタにはIngelvac M.hyo(登録商標)[シリアル271 032]を用いた。22匹のブタをチャレンジの対照として、10匹のブタを非チャレンジの対照として用いた。ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群のブタを、ワクチン接種後4週間で病原性エム・ハイオニューモニエを用いてチャレンジした。実施例2のワクチンをワクチン接種されたブタは、平均の肺病変が15.9%であり、チャレンジ対照群のブタは平均の肺病変が19.6%であった。このブタはIowa State University(アイオワ州立大学)(ISU)の推奨よりも高い用量でチャレンジされていたにもかかわらず、実施例2のワクチンをワクチン接種された群での平均肺病変は、対照群よりも少なかった。ただしその差は有意ではなかった(p=0.19)。同様に、市販品であるIngelvac M.hyo(登録商標)を、同じ用量のチャレンジを用いて同じ群の動物において評価した場合、やはり同様のレベルの肺病変が観察された(14.6%)。また、Ingelvac M.hyo(登録商標)ワクチン接種群と対照群(p=0.27)との間、そしてIngelvac M.hyo(登録商標)ワクチン接種群と実施例2のワクチンをワクチン接種された群との間にも有意な相違はなかった。
【0051】
第二の実験では、実施例2のワクチンを、ワクチン接種後4ヶ月の時点で、ISUによって示唆されるレベル(1.0×10個の生物体)での病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジによって評価した。23匹のブタを21日齢の時点で1用量のワクチンでワクチン接種し、25匹のブタをチャレンジ対照として、7匹のブタを非チャレンジ対照として用いた。ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群のブタを、ワクチン接種後4週間で病原性エム・ハイオニューモニエを用いてチャレンジした。対照群は平均の肺病変が10.4%で、ワクチン接種された群は平均の肺病変が5.5%であった。ワクチン接種群と対照群との間に有意な相違はなかった(p=0.031)。これによって、実施例2のワクチンは、防御免疫を刺激するのに有効であり、これは3週齢のブタに単回用量のワクチン接種後、少なくとも4ヶ月持続し得るということが示される。
【0052】
この2つの実験における実施例2のワクチンに対するデータを組み合わせて解析した場合、ワクチン接種群の平均の肺病変は対照群の肺病変よりも有意に低かった。
【0053】
結論として、実施例2のワクチンは、3週齢のブタにおける1用量のワクチン接種後4ヶ月の病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジに対する防御免疫を誘導する。
【0054】
(実験データ)
2つの別個の実験をこの研究において行なった。実験1では、Microsoft Excelの無作為化プログラムを用いて、67匹のブタを4つの群に割り当てた。24匹のブタを、18〜21日齢の時点で実施例2によって調製したワクチンの1用量を用いて筋肉内(IM)にワクチン接種した。24匹のブタをチャレンジの対照として、10匹のブタを非チャレンジの対照として用いた。9匹のブタには市販品Ingelvac M.hyo(登録商標)[シリアル271 932、Boehringer Ingelheim(BI)製造]を表記の指示どおりIM(筋肉内)ワクチン接種した。5匹のブタ(2匹のブタは実施例2のワクチンをワクチン接種、1匹はBIワクチン、そして2匹は対照)が、ワクチン接種とは無関係の理由でワクチン接種の保持期間に死んだ。ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群における残りのブタを、ワクチン接種の4ヵ月後に、14mLの病原性エム・ハイオニューモニエ(1.4×10個の生物体)を用いてチャレンジした。4つ全ての群においてブタをチャレンジ後30日で安楽死させて、実験における各ブタについて肺病変をスコア付けした。
【0055】
第二の実験では、25匹のブタを21日齢の時点で、実施例2によって調製したワクチンの1用量を用いて筋肉内(IM)にワクチン接種した。25匹のブタをチャレンジの対照として、10匹のブタを非チャレンジの対照として用いた。2匹のブタが、ワクチン接種とは無関係の理由で死に、1匹のブタがワクチン接種保持期間に誤って販売された。ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群における残りのブタを、ワクチン接種の4ヵ月後に、10mLの病原性エム・ハイオニューモニエ(1.0×10個の生物体)を用いてチャレンジした。2匹のブタが、チャレンジ観察期間後にワクチン接種/チャレンジとは無関係の理由で死んだ。3つ全ての群において残りのブタをチャレンジ後30日で安楽死させて、実験における各ブタについて肺病変をスコア付けした。
【0056】
(ワクチン接種)
ワクチン接種群における各ブタには2mL用量の試験ワクチンを首の横のIM(筋肉内)に与えた。
【0057】
(チャレンジおよび検死)
病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジストック、凍結(−70℃)肺ホモジネートは、Iowa State University(ISU)のEileen Thacker博士によって調製された。このチャレンジストックが純粋であって、1mLあたり約10個のエム・ハイオニューモニエ生物体を含むことを確認した。推奨されるチャレンジ用量は10mLの1:100希釈ストック(すなわち、1.0×10個の生物体)である。
【0058】
最初の実験において、ワクチン接種群およびチャレンジ対照群におけるブタを14mLの1:100希釈されたストック(すなわち、1.4×10個の生物体)を用いてチャレンジした。第二の実験におけるブタを、推奨されるとおり10mLの1:100希釈されたストック(すなわち、1.0×10個の生物体)を用いてチャレンジした。
【0059】
チャレンジの日に、暖かい水の中でホモジネートを急速に融解して、滅菌のエム・ハイオニューモニエ増殖培地を用いてISUによる推奨に従って希釈した。50mg/mLキシラジン、50mg/mLケタミンおよび100mg/mLテラゾールからなるXylazine−Katamine−TelazolTMの混合物を用いてブタを鎮静させた。この麻酔用混合物を体重1ポンドあたり0.01〜0.02mLで筋肉内(IM)に与える。各々のブタに単回の14mL(第一の実験)または10mLの用量(第二の実験)のチャレンジ物質を気管内に投与した。ニードルの位置が正しいことを確認するために、チャレンジ用量の投与の前にシリンジに空気を吸引した。ワクチン接種されていない非チャレンジ対照のブタは、別の部屋で飼育してチャレンジはしなかった。
【0060】
チャレンジ後(DPC)30日で、全てのブタを安楽死させた。肺を取り出して、試験群について情報のない個人が肺病変全体をスコア付けした。
【0061】
(サンプル収集および試験)
競合的ELISAキット(DAKO Co.が製造)によって検出されるエム・ハイオニューモニエに対する血清抗体について、ワクチン接種の日(0 DPV)、ワクチン接種後1ヶ月(1 MPV)、4 MPV/0 DPC、および30 DPCの時点で、全てのブタから血液サンプルを収集した。血清サンプルを試験する前は−20℃で保管した。
【0062】
(データ解析)
ワクチン接種群と非ワクチン接種群との間で分散分析(ANOVA)によって肺病変スコアを比較した。肺スコアをアークサイン変換して、残差の分布を改善した。
【0063】
(結果および考察)
(血清学)
両方の実験における全てのブタを、市販の競合的ELISAキットによって、全ての試験について1:10血清希釈を用い、エム・ハイオニューモニエに対する血清抗体について試験した。全てのブタが、ワクチン接種の時点で血清陰性(抗体力価<10)であって、このことはこの動物がエム・ハイオニューモニエに対して感受性であることを示す。対照群における全てのブタは、チャレンジの前に血清陰性のままであった。これによって、ワクチン接種されたブタにおける免疫応答がワクチンに起因しており、外部環境への曝露に起因するものではないことが示される。ワクチン接種された群における全てのブタ、およびチャレンジ対照群におけるほとんどのブタ(実験1における22匹のブタのうち18匹、および実験2における25匹のブタのうち15匹)が、チャレンジの後にエム・ハイオニューモニエに対して抗体陽転(セロコンバート)したが、非チャレンジ動物の全てが血清陰性のままであった。このことは、このチャレンジがエム・ハイオニューモニエ特異的であることを意味する。この試験動物の血清学的状態を表1にまとめている。
【0064】
(第一の実験における免疫原性試験)
実施例2のワクチンが、ワクチン接種後4ヶ月で、ISUによって推奨されるよりも高レベルのチャレンジに対して防御できる強力な免疫を刺激し得るか否かを決定するために、第一の実験を行なった。この実験ではまた、ワクチン接種の4ヶ月後に防御免疫を刺激する能力について、実施例2のワクチンと市販のIngelvac M.hyo(登録商標)とを比較した。
【0065】
FDAH Suvaxyn MH−Oneを用いてワクチン接種した22匹のブタおよび、認可された製品であるIngelvac M.hypo(登録商標)(セリアル271,032)を用いた8匹のブタを、ブタ1匹あたり1.4×10生物体というチャレンジ物質を用いてチャレンジした(ブタ1匹あたり1.0×10個の生物体がICUによって推奨される、セクション5.5を参照のこと)。22匹のブタをチャレンジ対照として、10匹のブタを非チャレンジ対照として用いた。肺病変の割合を表2にまとめる。実施例2のワクチンでワクチン接種されたブタは、15.9%の平均肺病変を有し、チャレンジされた対照ブタは19.6%の平均肺病変を有した。実施例2のワクチンをワクチン接種された群における肺病変は、そのブタをさらに高用量のエム・ハイオニューモニエでチャレンジした場合でも対照よりも少なかった。しかし、その差は有意ではなかった(p=0.19)。同様に、市販の製品であるIngelvac M.hyo(登録商標)を同じ用量のチャレンジを用いて同じ群の動物で評価した場合、また同様のレベルの肺病変が得られた(14.6%)。Ingelvac M.hyp(登録商標)ワクチン接種群と対照群との間(p=0.27)、そしてIngelvac M.hyp(登録商標)ワクチン接種群と実施例2のワクチンを用いてワクチン接種した群との間(p=0.88)に有意な差はなかった。
【0066】
実施例2のワクチンを受けた群において、病変に有意な数字上の減少は記録されなかったが、この実験で得られたデータによって、この実験で用いたさらに高いチャレンジ用量(1.4×10個の生物体)は、市販のIngelvac製品によって刺激されたブタの免疫に対してさえおそらく圧倒的であったということが示唆される。このチャレンジレベルはおそらく、20〜25匹の動物の群サイズを用いるワクチン接種/チャレンジ研究の評価には適切ではないが、さらに大きい群サイズを用いれば、有意差を証明することが可能である。
【0067】
(第二の実験における免疫原性試験)
実験2では、ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群におけるブタを、4ヶ月DOIを実証するために、ワクチン接種後4ヶ月で、ISUによって推奨されるチャレンジ用量(1.0×10個の生物体)を用いて評価した。肺病変の割合を表3にまとめている。この対照群は、10.4%の平均肺病変を有した。ワクチン接種群は5.5%の平均肺病変を有した。ワクチン接種群と対照群との間に有意な差がある(p=0.031)。これによって、実施例2のワクチンは、3週齢のブタにおいて単回用量のワクチン接種後少なくとも4ヶ月持続し得る防御免疫を刺激するのに有効であるということが示される。
【0068】
(両方の実験の組み合わせた結果の評価)
2つの実験は有意に異なるが、群に対する実験の影響は有意ではなかった。群の影響の大きさは、2つの実験の間で同様であった。従って、群の影響は、実験を考慮することなく評価できる。フルモデル(full model)の解析によって、群と実験との間の相互作用は有意でないことが示されたので、これによって群の影響は両方の実験で同じであるという概念が補強され、2つの実験からのデータを1つの解析に組み合わせることが正当化される。従って、2つの実験由来の実施例2のワクチンに関するデータを組み合わせて、肺病変についてのアークサイン変換された変数を、独立した変数として群および実験を用いて解析した場合(レデュースドモデル(reduced model)、この群は統計学的に有意である(p=0.013)。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

ブタをブタ1匹あたり1.4×10個の生物体でチャレンジした(ISU推奨用量はブタ1匹あたり1.0×10個の生物体)。
**FDAHワクチン群と対照群との比較
***BIワクチン群と対照群との比較
****BIワクチン群とFDAH群との比較
【0071】
【表6】

ブタをISU推奨用量を用いてチャレンジした(ブタ1匹あたり1.0×10個の生物体)。
**FDAHワクチン群と対照群との比較
【0072】
実施例4
(単回用量投与6ヶ月後の病原性チャレンジに対する本発明のワクチン組成物によって誘導される長期免疫の評価)
実施例1および2に記載されるのと本質的に同じ手順を用い、そして以下に示される量を用いて、試験ワクチンAを調製した。
【0073】
【表7】

シリアルのpHを7.0±0.2に調節
MHDCE=マイコプラズマ・ハイオニューモニエ DNA細胞等価物
【0074】
(まとめ)
33匹の21日齢のブタをこの評価に入れた。20匹のブタを、3週齢の時点でワクチンAの1用量を用いて筋肉内(IM)にワクチン接種した。10匹のブタを非ワクチン接種対照として、3匹のブタを非チャレンジの環境対照として使用した。
【0075】
全てのブタは、ワクチン接種の時点で血清陰性(抗体力価<10)であって、このことは、この動物がエム・ハイオニューモニエに対して感受性であったことを示した。対照群の全てのブタはチャレンジの前に血清陰性のままであった。これによって、ワクチン接種されたブタにおける免疫応答は、ワクチンに起因しており、環境への曝露に起因するものではないということが示される。
【0076】
ワクチン接種6ヵ月後、20匹のワクチン接種ブタおよび10匹の非ワクチン接種の対照ブタに病原性エム・ハイオニューモニエ(ブタ1匹あたり1.0×10個の生物体)をチャレンジした。3匹のブタを非チャレンジ対照として用いた。ワクチン接種したブタは、3.6%の平均肺病変スコアを有し、そしてチャレンジされた対照ブタは14.6%の平均肺病変スコアを有した。ワクチン接種群における肺病変は、対照群よりも有意に少なかった(p=0.0215)。
【0077】
この評価で得られたデータによって、試験ワクチンAは、単回用量のワクチン接種後6ヶ月の時点で病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジに対して長期の防御免疫を誘導したことが示される。
【0078】
(実験のデザイン)
33匹の21日齢のブタを同腹の仔ごとにMicrosoft Excelの無作為化プログラムを用いて3つの群(ワクチン接種群、チャレンジ対照群および非チャレンジ環境対照群)に無作為に割り当てた。20匹のブタを3週齢で、1用量の試験ワクチンAを用いて筋肉内にワクチン接種した。10匹のブタをチャレンジ対照として、3匹のブタを非チャレンジの環境対照として用いた。ワクチン接種した群およびチャレンジ対照のブタに、ワクチン接種後6ヶ月で、ブタ1匹あたり病原性エム・ハイオニューモニエの培養物(1.0×10個の生物体)の10mLをチャレンジした。3匹の非ワクチン接種ブタを非チャレンジ対照として用いた。このチャレンジしたブタおよび非チャレンジ対照を、チャレンジ後26日で安楽死させて、各々のブタについて肺病変をスコア付けした。
【0079】
ワクチン接種群における各々のブタに、1回の2mL用量の試験ワクチンを首の横のIM(筋肉内)に与えた。
【0080】
(チャレンジおよび検死)
病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジストック、凍結(<−70℃)肺ホモジネートは、Iowa State University(ISU)のEileen Thacker博士によって調製された。このチャレンジストックが純粋であって、1mLあたり約10個のエム・ハイオニューモニエ生物体を含むことを確認した。
【0081】
ブタを10mLの1:100希釈のストック(すなわち、1.0×10個の生物体)を用いてチャレンジした。
【0082】
チャレンジの日に、暖かい水の中でホモジネートを急速に融解して、滅菌のエム・ハイオニューモニエ増殖培地を用いてISUによる推奨に従って希釈した。50mg/mL キシラジン、50mg/mL ケタミンおよび100mg/mL テラゾールからなるXylazine−Katamine−TelazolTMの混合物を用いてブタを鎮静させた。麻酔混合物は、体重1ポンドあたり0.01〜0.02mLで筋肉内に(IM)投与した。各々のブタに単回の10mL用量のチャレンジ物質(1.0×10個の生物体)を気管内に与えた。ニードルの位置が正しいことを確認するために、チャレンジ用量の投与の前にシリンジに空気を吸引した。ワクチン接種されていない非チャレンジ対照のブタは、別の部屋で飼育してチャレンジはしなかった。
【0083】
チャレンジ後(DPC)26日の時点で、全てのブタを安楽死させた。肺を取り出して、実施例3に記載のとおり肺病変全体をスコア付けした。
【0084】
(サンプル収集および試験)
競合的ELISAキット(DAKO Co.が製造)によって検出される、エム・ハイオニューモニエに対する血清抗体の決定のために、ワクチン接種の日(0DPV)、35DPV、−1DPC、および26DPCの時点で、全てのブタから血液サンプルを収集した。血清サンプルを試験する前は−20℃で保管した。
【0085】
(データ解析)
ワクチン接種群と対照群との間で一元分散分析(ANOVA)によって肺病変スコアを比較した。肺病変スコアをアークサイン変換して、残差の分布を改善した。肺病変スコアについての正規性の仮定は疑わしかったので、肺病変スコアおよびアークサイン変換した肺病変スコアの両方をウィルコクソン順位和検定によって解析した。有意差のレベルをp<0.05に設定した。ノンパラメトリックなウィルコクソン順位和検定からの結果を報告の目的で用いた。
【0086】
(結果および考察)
(血清学)
全てのブタを、全ての試験について1:10の血清希釈を用い、市販の競合的ELISAキットによって、エム・ハイオニューモニエに対する血清抗体について試験した。キットの指示に従って疑わしい試験結果のサンプルは、データ解析において陽性として処理した。全てのブタは、ワクチン接種の時点で血清陰性(抗体力価<10)であって、これによって、この動物がエム・ハイオニューモニエに対して感受性であったことが示される。対照群における全てのブタは、チャレンジの前に血清陰性のままであった。ワクチン接種後、20匹のワクチン接種のうち15匹(15/20)が、少なくとも1回エム・ハイオニューモニエに対して血清陽性になった(35DPVおよび−1DPCで収集したサンプル)。これによって、ワクチン接種されたブタにおける免疫応答がワクチンに起因しており、外部環境への曝露に起因するものではないことが示される。ワクチン接種された全てのブタ、およびチャレンジ対照群における10匹のブタのうち4匹は、チャレンジの後にエム・ハイオニューモニエに対して血清陽性になったが、非チャレンジ動物の全てが血清陰性のままであった。この試験動物の血清学的状態を表4にまとめている。
【0087】
(肺病変スコア)
試験ワクチンAを用いてワクチン接種された20匹のブタおよび10匹の非ワクチン接種の対照ブタに、ワクチン接種後6ヶ月の時点で病原性エム・ハイオニューモニエ(ブタ1匹あたり1.0×10個の生物体)をチャレンジした。3匹のブタを非チャレンジ対照として用いた。20匹のワクチン接種のうち8匹(40%)は、チャレンジ後、肺病変を発症しなかったが、対照群で10匹のブタのうち肺病変を有さなかったのは1匹だけであった(10%)。肺病変の割合を表5にまとめる。ワクチン接種したブタは、3.6%の平均肺病変スコアを有し、そしてチャレンジされた対照ブタは14.6%の平均肺病変スコアを有した。ワクチン接種群における肺病変は、対照群よりも有意に少なかった(p=0.0215)。
【0088】
【表8】

市販のキットを用い、ELISAによって、エム・ハイオニューモニエに対する血清抗体について血清サンプルを試験した。
全てのサンプルを血清希釈1:10で試験した。結果をキットの指示に従って解釈した。
1:10で疑わしいサンプルは陽性と解釈した。
**DPV=ワクチン接種後日数
***DPC=チャレンジ後日数
【0089】
【表9】

CL=信頼水準
**P値は1群および2群の比較からであった。
【0090】
表4および5に示されるデータからわかるとおり、試験ワクチンAは、3週齢の時点でワクチン接種されたブタでの単回投与後に6ヶ月間、病原性エム・ハイオニューモニエに対する防御免疫を誘導する。
【0091】
実施例5
ブタインフルエンザウイルスワクチンは、当該分野で周知の方法によって作成できる。また、SIV株、例えばH1N1およびH3N2もまた、当該分野で周知であって、例えば、Ames,IowaにあるUSDAのNSVLおよび他のいずれかから容易に入手可能である。これらの株は代表的には、例えば、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミン、ラクトアルブミン、ヒドロシレート(hydrosylate)および炭酸水素ナトリウムのうちの1またはそれ以上を用いて必要に応じて補充されたOpti−Mem(登録商標)増殖培地を用いて、例えば、Maidin Darby Canine Kidney(MDCK)細胞株上で増殖され得る。1つの実施例では、最適のウイルス増殖を促進するために、H1N1株の増殖のための増殖培地を適切な量のトリプトースリン酸ブロス、酪酸ナトリウムおよびトリプシンでさらに補充する;そしてH3N2株の増殖のための増殖培地をさらに適切な量のトリプシンで補充する。収集の際、収集されたウイルス液をホルマリンで不活化してもよい。次いで、これらのワクチン株を含むSIVワクチン組成物を代表的には以下のとおり処方してもよい:
【0092】
【表10】

【0093】
3つの異なる研究を使用して、種々の画分の組み合わせの有効性を実証する。各々の研究において、適切な年齢の無作為に割り当てられたブタを3つの群にわけた:ワクチン接種群、試験されている画分についてのチャレンジ対照群、および環境対照群。
【0094】
これらの研究の結果は以下のとおりであった。
【0095】
(研究のまとめ−M.hyo.画分)
この動物実験は、Swine Influenza Vaccine,H1N1およびH3N2(不活化ウイルス)(本発明によるマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリン)およびSIV画分による抗原ブロックを欠くことの有効性を実証するためにデザインされた。
【0096】
全てのブタがワクチン接種の時点で血清陰性(抗体力価<10)であって、これによって、この動物がエム・ハイオニューモニエに対して感受性であったことが示される。対照群における全てのブタは、チャレンジの前に血清陰性のままであった。これによって、ワクチン接種されたブタにおける免疫応答がワクチンに起因しており、外部環境への曝露に起因するものではないことが示される。
【0097】
22匹のブタを、1週齢でSIVワクチン(ワクチンA)を用いてワクチン接種して、最初のワクチン接種から3週後、MH/SIVワクチン(ワクチンB)を用いて再ワクチン接種した。22匹のブタをエム・ハイオニューモニエチャレンジの対照として、3匹のブタを環境の対照として用いた。2回目のワクチン接種の4週後、ワクチン接種した群およびチャレンジ対照群のブタを、病原性エム・ハイオニューモニエを用いてチャレンジした。ブタをチャレンジ後28日で安楽死させて、各ブタについて肺病変をスコア付けした。
【0098】
対照群の20匹のブタのうち18匹(90%)が5%より大きい肺病変スコアを発症したが、ワクチン接種群においては21匹のブタのうち5%より大きい肺病変にスコア付けされたのは8匹(38%)だけであった。ワクチン接種群は平均10.2%の肺病変を有し、チャレンジ対照ブタは平均16.9%の肺病変を有した。ワクチン接種群と対照群との間に有意な差があった(p=0.02)。これによって、1週齢でSIVワクチンをワクチン接種されたブタおよび3週間後にMH/SIVワクチンをワクチン接種されたブタは、病原性エム・ハイオニューモニエチャレンジに対して防御免疫を発達させたことが示される。これはまた、MH−SIV併用ワクチンにおいては、SIV画分によるエム・ハイオニューモニエ画分に対する抗原ブロックの効果はないことを示す。
【0099】
(研究のまとめ−SIV H1N1画分)
この動物実験は、Swine Influenza Vaccine,H1N1およびH3N2(不活化ウイルス)(本発明によるマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリン)のブタインフルエンザウイルス(SIV)H1N1画分の有効性を実証するためにデザインされた。
【0100】
全てのブタがワクチン接種の時点でSIV H1N1に対して血清陰性(抗体力価<10)であった。全ての対照は、チャレンジ前に血清陰性のままであったが、全てのワクチン接種されたブタはSIV−H1N1に抗体陽転した。これによって、チャレンジによって実証されるように、ワクチン接種されたブタにおける防御的な免疫応答がワクチンに起因しており、外部環境への曝露に起因するものではないことが示される。
【0101】
25匹のブタを、1週齢でSIVワクチン(ワクチンA)を用いてワクチン接種して、最初のワクチン接種2週後、SIV/MHPワクチン(ワクチンB)を用いて再ワクチン接種した。24匹のブタをチャレンジの対照として、5匹のブタを環境の対照として用いた。2回目のワクチン接種の3週後、ブタをチャレンジした。ブタを臨床兆候について観察して、直腸温度を、チャレンジの2日前に開始してチャレンジの5日後(post the challenge)(DPC)まで毎日記録した。5DPCの時点でブタを安楽死させて、各ブタについて肺病変をスコア付けした。0DPC、3DPCおよび5DPCで収集した鼻腔用綿棒および検死によって収集した肺組織サンプルを用いてウイルス単離を試みた。
【0102】
チャレンジの前(0DPC)にブタから収集した鼻腔用綿棒からはウイルスは単離されなかった。チャレンジの後(3DPCおよび5DPC)収集した鼻腔用綿棒からの25のワクチン接種のうち1つに比べて、対照群においては24匹のブタのうち10匹からウイルスが単離された。チャレンジ後の鼻腔のウイルス排出において、ワクチン接種群と対照群との間には有意な差があった(p=0.0011)。ウイルスはまた、検死で収集された肺組織サンプルから、24匹の対照ブタのうち14匹から、そして25匹のワクチン接種ブタのうち1匹から単離された。ワクチン接種群と対照群との間には有意な差があった(p<0.0001)。まとめると、チャレンジ後、ウイルスは、24の対照のうち19(79%)から単離され、そして25のワクチン接種のうちでは2つしか(8%)単離されなかった。さらに、SIV H1N1チャレンジはまた、発熱性の応答を誘発した。ワクチン接種と対照との間で全体的な発熱性応答は有意ではなかった(p=0.07)が、対照は、ワクチン接種に比べて、2DPCで有意に高い温度上昇を有した(p=0.0355)。チャレンジによって誘発された臨床兆候は極めて穏やかであって、個々の兆候の発生率は、チャレンジ評価のためのこれらのデータを用いるのに不適切なほど低い。ワクチン接種群は、平均6.9%の肺病変スコアを有し、チャレンジ対照群は平均9.2%の肺病変スコアを有した。
【0103】
まとめると、鼻腔のウイルス排出の発生率および頻度、ならびに肺組織からのウイルス単離の罹患率は、対照に比べてワクチン接種群では有意に低かった。ワクチン接種されたブタはまた、チャレンジ後発熱性応答を被ることが少なく、また対照群に比べて肺病変が低かった。これによってワクチン接種ブタは、SIV H1N1チャレンジに対して防御されたことが示される。
【0104】
(研究のまとめ−SIV H3N2画分)
この動物実験は、Swine Influenza Vaccine,H1N1およびH3N2(不活化ウイルス)(本発明によるマイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリン)のブタインフルエンザウイルス(SIV)H3N2画分の有効性を実証するためにデザインされた。
【0105】
全てのブタが、最初のワクチン接種の日(0DPV1)に血清陰性(抗体力価<10)であるか、またはSIV H3N2に対する移行抗体(maternal antibody)が低かった。それらのブタにおけるこの低い移行抗体力価は、チャレンジの時点までに血清陰性に低下した。対照群における全てのブタはチャレンジの前に血清陰性のままであった。これによって、チャレンジによって実証されるように、ワクチン接種されたブタにおける防御的免疫応答がワクチンに起因しており、外部環境への曝露に起因するものではないことが示される。
【0106】
22匹のブタを、1週齢でSIVワクチン(ワクチンA)を用いてワクチン接種して、最初のワクチン接種から3週後、SIV−MHPワクチン(ワクチンB)を用いて再ワクチン接種した。18匹のブタをチャレンジの対照として、5匹のブタを環境の対照として用いた。ブタを臨床兆候について観察して、直腸温度を、チャレンジ3日前からチャレンジの5日後(post the challenge)(DPC)まで記録した。5DPCの時点でブタを安楽死させて、各ブタについて肺病変をスコア付けした。0DPC、3DPCおよび5DPCで収集した鼻腔用綿棒および肺組織サンプルを用いてウイルス単離を試みた。
【0107】
SIV H3N2病原性チャレンジは、対照のブタにおいて発熱性応答を誘発した。対照の78%が発熱したが、ワクチン接種群では18%しか発熱しなかった。ワクチン接種群と対照との間には発熱性応答に有意な差があった(p=0.0002)。チャレンジによって誘発された臨床兆候は軽度であって、個々の兆候の発生率は低かった。チャレンジされた対照群においては6匹のブタ(33%)が1〜2日間咳をしたが、ワクチン接種群で咳をしたのは2匹(9.1%)だけであった。同様に、ワクチン接種群と対照との間で他の臨床兆候に有意な差はなかった。対照群における18匹のブタのうち15匹(83%)が5%より大きい肺病変スコアを発症したが、ワクチン接種群においては22匹のブタのうち5%より大きい肺病変にスコア付けされたのは5匹(23%)だけであった。ワクチン接種群は平均4.9%の肺病変スコアを有し、チャレンジ対照群は平均23.2%の肺病変スコアを有した。ワクチン接種群と対照群との間に肺病変スコアにおいて有意な差があった(p=0.0003)。チャレンジの前(0 DPC)にブタから収集した鼻腔用綿棒からはウイルスは単離されなかった。3DPCの時点で収集した鼻腔用綿棒から、22のワクチン接種のうち5つ(23%)に比べて、対照群においては18匹のブタのうち12匹(67%)からウイルスが単離された。ウイルスは、5DPCの時点で収集した鼻腔用綿棒からは、対照群では18匹のブタのうち3匹において単離されたが、ワクチン接種ブタでは単離されなかった。ウイルスはまた、検死(5DPC)から収集した肺組織サンプルから、対照群では、18匹のブタのうち5匹で単離されたが、ワクチン接種ブタでは単離されなかった。チャレンジ後の鼻腔用綿棒から(個々の日についてp=0.0035、3DPCおよび5DPCの組み合わせでのウイルス排出についてp=0.0008)および肺組織から(p=0.013)のウイルス単離において、ワクチン接種群と対照群との間には有意な差がある。
【0108】
まとめると、ワクチン接種されたブタは、チャレンジ後発熱性応答を被ることが有意に少なく、また対照のブタに比べて肺病変スコアがかなり低かった。鼻腔におけるウイルス排出において、および肺組織サンプルからのウイルス回収において、ワクチン接種と対照との間に有意な差があった。これによって、1週齢でSIVワクチンをワクチン接種されて、3週後にSIV−MHPワクチンを追加免疫されたブタは、病原性SIV H3N2チャレンジに対して防御免疫を発達させたことが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびウイルス病原体による感染に対して動物を免疫するためのワクチン組成物であって、
マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫量と;
ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群より選択される少なくとも1つのウイルス抗原の免疫量と;
アクリル酸ポリマー、ならびに代謝性オイルとポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物を含むアジュバント混合物と;
医薬上許容されるキャリアと
を含み、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する、ワクチン組成物。
【請求項2】
アジュバント混合物が、アクリル酸ポリマーと、1またはそれ以上のテルペン炭化水素を含む代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物とからなり、アクリル酸ポリマーの代謝性オイル/ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー混合物に対する割合が約1:25ないし1:50であるところの、請求項1記載のワクチン組成物。
【請求項3】
アジュバント混合物がワクチン組成物の約1−25(v/v)%からなるところの、請求項1記載のワクチン組成物。
【請求項4】
アクリル酸ポリマーが約1(v/v)%の最終濃度で存在し、テルペン炭化水素/ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー混合物が約5(v/v)%ないし10(v/v)%の最終濃度で存在するところの、請求項3記載のワクチン組成物。
【請求項5】
アジュバント混合物がワクチン組成物の約2−15(v/v)%からなるところの、請求項3記載のワクチン組成物。
【請求項6】
アジュバント混合物がワクチン組成物の約5−12(v/v)%からなるところの、請求項5記載のワクチン組成物。
【請求項7】
代謝性オイルがスクアランまたはスクアレンであるところの、請求項1記載のワクチン組成物。
【請求項8】
アクリル酸ポリマーがカルボマーであるところの、請求項6または請求項7記載のワクチン組成物。
【請求項9】
Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiaeおよびレプトスピラ属の細菌からなる群より選択される、少なくとも1つのバクテリンまたは精製トキソイドをさらに含む、請求項1−8のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項10】
1またはそれ以上の以下の群、SIV;Haemonphilus parasuis;PRRSVおよびPCVからなる群;SIVおよびErysipelothrix rhusiopathiaeからなる群:Pasteurella multiocidaおよびBordetella bronchisepticaからなる群から選択される細菌性抗原またはウイルス抗原をさらに含む、請求項1−8のいずれかに記載のワクチン組成物。
【請求項11】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび少なくとも1つのウイルス抗原によって惹起される疾患に対して動物を防御するための方法であって、該動物に対してワクチン組成物を投与する工程を含み、該ワクチン組成物が、
マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫量と;
ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群より選択される少なくとも1つのウイルス抗原の免疫量と;
アクリル酸ポリマー、ならびに代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物を含むアジュバント混合物と;
医薬上許容されるキャリアと
を含み、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエ感染からの防御免疫を誘発する、方法。
【請求項12】
細菌の免疫量が約1×10〜3×1011MHDCE/mLであるところの、請求項11記載の方法。
【請求項13】
細菌の免疫量が約1×10〜3×10MHDCE/mLであるところの、請求項12記載の方法。
【請求項14】
投与工程の投与の様式が、筋肉内、皮下、腹腔内、エアロゾル、経口または経鼻であるところの、請求項11記載の方法。
【請求項15】
アジュバント混合物が、アクリル酸ポリマー、ならびに1またはそれ以上のテルペン炭化水素を含む代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーの混合物からなり、約1〜25(v/v)%の最終濃度にて存在するところの、請求項11記載の方法。
【請求項16】
アジュバント混合物のアクリル酸ポリマーがカルボマーであるところの、請求項15記載の方法。
【請求項17】
アジュバント混合物の代謝性オイルがスクアランまたはスクアレンからなる群より選択されるテルペン炭化水素であるところの、請求項15記載の方法。
【請求項18】
Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiaeおよびレプトスピラ属の細菌からなる群より選択される、少なくとも1つのさらなるバクテリンを同時投与することをさらに含むところの、請求項11−17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび少なくとも1つのウイルス病原体および少なくとも1つのさらなる病原体によって惹起される疾患に対して動物を防御するための請求項11−17に記載の方法であって、1またはそれ以上の以下の群、SIV;Haemonphilus parasuis;PRRSVおよびPCVからなる群;SIVおよびErysipelothrix rhusiopathiaeからなる群:Pasteurella multiocidaおよびBordetella bronchisepticaから選択される1またはそれ以上の細菌性抗原またはウイルス抗原から選択される少なくとも1つのさらなる細菌性抗原およびウイルス抗原を同時投与することをさらに含む、請求項11−17記載の方法。
【請求項20】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびウイルス病原体による感染に対して動物を免疫処理するためのワクチン組成物であって、
マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫量と;
Haemonphilus parasuis、Pasteurella multiocida、Streptococcum suis、Actinobacillus pleuropneumoniae、Bordetella bronchiseptica、Salmonella choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiae、レプトスピラ属の細菌、ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌性抗原またはウイルス抗原の免疫量と;
少なくとも1つのアジュバントと;
医薬上許容されるキャリアと
を含み、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する、ワクチン組成物。
【請求項21】
1またはそれ以上の以下の群、SIV;Haemonphilus parasuis;PRRSVおよびPCVからなる群;SIVおよびErysipelothrix rhusiopathiaeからなる群:Pasteurella multiocidaおよびBordetella bronchisepticaからなる群から選択される細菌性抗原またはウイルス抗原をさらに含むところの、請求項20記載のワクチン組成物。
【請求項22】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよびウイルス病原体による感染に対して動物を免疫処理するためのワクチン組成物であって、
マイコプラズマ・ハイオニューモニエバクテリンの免疫量と;
ブタインフルエンザウイルス(SIV)、ブタ繁殖呼吸症候群ウイルス(PRRSV)およびブタサーコウイルス(PCV)からなる群より選択される少なくとも1つのウイルス抗原の免疫量と;
アクリル酸ポリマー、代謝性オイルおよびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを水中油型エマルジョンの形態で含むアジュバント系と;
を含み、単回投与後にマイコプラズマ・ハイオニューモニエからの防御免疫を誘発する、ワクチン組成物。


【公表番号】特表2006−515304(P2006−515304A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563182(P2004−563182)
【出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/015115
【国際公開番号】WO2004/058142
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】