説明

改良されたレオロジーを有するインクのための顔料組成物

顔料合成の間に、顔料を少量の長鎖脂肪族アミンで処理することを含む、改良されたインクフローを与える顔料組成物の製造方法を提供する。得られた顔料組成物は、ミルベースインクの製造に用いることができ、それは高い顔料着色における改良されたフロー粘度(レオロジー)で、容易に取り扱えることと、融通性よく配合できること、たとえば異なるインク用途のための多数の最終インクを、単一のミルベースから、非常に経済的な形で製造できることに起因する。最終インクは、好ましくは包装グラビア印刷プロセスに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば印刷インクの製造に用いることができるインク濃縮物に、改良されたレオロジーを付与する有機顔料組成物の製造に関する。
【0002】
高いミルベース顔料着色における改良されたミルベースフロー粘度を与える、顔料系液体インク、たとえばC.I.ピグメントレッド57:1系包装グラビアインクの従来の顕色は、通常大きな顔料一次結晶サイズと符合するので、多くの印刷インク用途には好都合ではない最終インク中の色特性、たとえば高い不透明度及び低い色の濃さに関係がある。
【0003】
しかし、改良されたミルベースフローは、次の問題に取り組むのに際して、インク製造業者には大きな助けとなる。
−高い顔料着色のミルベースインクのポンピング:高い処理量を与え、したがって時間及び金銭が節減される。
−ミルベースインクを最終印刷インクにまで希釈する時に、融通度の範囲が広がる。
ミルベースインク中の顔料着色が高いほど、インク製造業者は希釈ワニス成分の選択に融通をきかせることができる。したがって、異なるインク用途のための多数の最終インクを、単一のミルベースから、より短時間かつより低コストで製造することができる。
【0004】
従来、顔料組成物に化学薬剤を添加することにより、顔料の分散及び粉砕を容易にするための試みが多くなされている。
【0005】
アゾ顔料C.I.12120を製造するための、最初の工程でアミン又はアミドでの処理を用いて、その後アミドでさらに処理する2工程の方法が、RO 101329には開示されている。FR 2048418には、顔料組成物を、長鎖脂肪族カルボン酸と組み合わせて長鎖脂肪族アミン、好ましくはジアミンで処理し、アミンと水不溶性塩を形成する方法が開示されている。このような塩で処理された顔料は、満足な着色特性及び分散度を発現させるためには、さらに比較的長時間の粉砕が必要である。EP 0651052には、グラビアインクにおける光沢及び着色力を改良するために、無機化合物と組み合わせてアミンで処理されたジアリライド顔料組成物が開示されている。EP 0761769には、長鎖脂肪族第一級アミン、エチレンポリアミン、及びプロピレントリアミンの組み合わせで処理され、改良されたグラビアインクの着色力、光沢、及び透明度を与えるジアリライド顔料組成物が開示されている。ジアリライド顔料の製造のために、ポリアミンと組み合わせての長鎖脂肪族アミンのさらなる使用が、EP 0062304には記載されている。EP 0567918には、アミド、ジアミン、及び長鎖脂肪族アミンの組み合わせで顔料を処理することにより得られるアゾ顔料組成物が開示されている。長鎖脂肪族アミン及びジアミンの組み合わせで処理された別のアゾ顔料組成物が、EP 0057880には開示されている。
【0006】
GB 1080115では、多量の長鎖脂肪族アミンを顔料スラリーに添加し、このスラリーを数時間(フラッシュ時間)加熱処理することより「フラッシング」(水性相から有機(アミン)相への顔料の移行)を行うことで、容易に分散させうる顔料を製造する方法が開示されている。しかし、このように多量のアミンで処理された顔料は、その対応する印刷インクの印刷性能に関しては問題も有する。GB 1156835には、顔料をトリアミンと数時間接触させることによる、容易に分散させうる顔料の製造方法が記載されている。トリアミンを使用する結果として、モル量の顔料に対するアミノ基の当量は高いままである。
【0007】
しかし、従来技術のレオロジーは、完全に満足なものではない。特にミルベースフローが低いことの問題を、本発明の目的により克服できることが今や見出され、主な目的は顔料を極めて少量の長鎖脂肪族アミンで処理すること(「フラッシング」なし)により、金属を含有する有機顔料組成物の製造方法である。この処理は極短時間行い、高いミルベース顔料着色で注目に値する程改良されたフロー粘度を有するミルベースインク、さらには優れた色の濃さ、光沢及び透明度のプリントを生成する最終印刷インクを導く、顔料配合物をもたらす。本発明のさらなる目的は、ミルベースインク、最終印刷インク、それらの製造方法、及びそれらの使用である。以下、本発明のこれら及びその他の目的を説明する。
【0008】
したがって、本発明の第一の局面では、顔料を、単離及び乾燥の前に、完全又は部分的な遊離塩基(free base)としての、脂肪鎖中の炭素原子数6〜22の脂肪族アミンで、得られる顔料の計算重量に基づいて0.1〜7.5重量%用いて処理し、その後組成物を単離及び乾燥させることを含む、金属を含有する有機顔料組成物の製造方法が提供される。脂肪族アミンが1個以上のアミノ基を有する場合には、脂肪族アミンは、得られる顔料の計算重量に基づいて4重量%未満の量で存在する。
【0009】
本発明の方法により得られる顔料組成物は、本発明のさらなる目的である。
【0010】
原則として、顔料は本発明のインク組成物の他の成分と適合性であり、印刷インクを形成するためのベース(着色剤)を構成する。
【0011】
金属を含有する有機顔料は、たとえばモノアゾ、アゾメチン、フタレイン、アントラキノン、フタロシアニン、又はトリフェニルメタン金属錯体顔料を含むが、これらに限定されない。顔料の混合物も使用することができる。好ましい金属を含有する有機顔料は、アゾ金属錯体、アゾメチン金属錯体、又は金属を含有するフタロシアニン、又はこれらの混合物である。最も好ましい金属を含有する有機顔料は、モノアゾ金属錯体(アゾ顔料レーキ)であり、たとえばβ−ナフトール、2−ヒドロキシ−3−カルボキシナフタレン(BONA)、ナフトールAS、又はナフタレンスルホン酸顔料レーキ、又はこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。
【0012】
好適な青色又は緑色顔料は、非置換又はハロゲン化金属フタロシアニン、たとえば銅フタロシアニン顔料(たとえばC.I.ピグメントブルー15:3)であり、一方赤色顔料は、たとえばナフトール顔料、好ましくは、たとえばβ−ナフトール又は2−ヒドロキシ−3−カルボキシナフタレン(BONA)金属塩顔料であり、たとえばC.I.ピグメントレッド48、57、52、53、及び63を含む。
【0013】
これらの全ての有機顔料に関するそれ以上の詳細については、Industrial Organic Pigments, W. Herbst, K. Hunger, 2nd Edition, VCH Verlagsgesellschaft, Weinheim, 1997を引用する。
【0014】
長鎖脂肪族アミンは、たとえば、脂肪鎖中の炭素原子数6〜22、好ましくは8〜18の飽和若しくは不飽和の脂肪族アミン、又はこれらの混合物を含む。
【0015】
飽和アミンの例は、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン(ラウリルアミン)、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン(パルミチルアミン)、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、エイコシルアミン(C20)(アラキジルアミン)、及びドコシルアミン(C22)(ベヘニルアミン)である。
【0016】
不飽和アミンは、1〜3個の二重結合を含有することができ、たとえばオレイルアミン(C1835NH2)、リノレイルアミン(C1833NH2)、及びリノレニルアミン(C1831NH2)を含む。さらに、たとえばジステアリルアミン、ジパルミチルアミン、又はジオレイルアミン。
【0017】
利用可能な市販製品は、たとえばココアミン(C8〜C18第一級アミンの混合物、Armeen(登録商標)C(Akzo Nobel))、タロウアミン(C12〜C18第一級アミンの混合物、Armeen(登録商標)HT)、及びオレイルアミン(C12〜C18第一級アミンの混合物、Armeen(登録商標)O)である。
【0018】
上で挙げたモノアミンの代わりに又はそれらと共に組み合わせて、得られる顔料の計算重量に基づいて4重量%未満の量で存在するという条件で、長鎖脂肪族ジアミン又はトリアミンも使用することができる。利用可能な市販製品は、たとえばタロウプロピレンジアミン(Duomeen(登録商標)T)及びオレイルジプロピレントリアミン(Triameen(登録商標)OV)である。
【0019】
金属を含有する有機顔料組成物の製造のための本発明の方法の一般的な方法の特徴を、C.I.ピグメントレッド57:1(2−ナフタレンカルボン酸−3−ヒドロキシ−4−[(4−メチル−2−スルホフェニル)アゾ]−カルシウム塩(1:1))の製造の場合について与える。
【0020】
C.I.ピグメントレッド57:1のナトリウム色素は、ジアゾニウム塩とカップリング成分との水性カップリング反応の生成物である。ジアゾニウム塩は、2−アミノ−5−メチル−ベンゼンスルホン酸(商品名:4B酸)のジアゾ化から形成され、次にこれをカップリング成分、この場合2−ヒドロキシ−3−カルボキシ−ナフタレン(BONA)と反応させる。4B酸のジアゾニウム塩とカップリング成分とは反応してナトリウム色素を形成し、これに塩化カルシウムを添加し、沈殿したカルシウム顔料を形成する。この場合、C.I.ピグメントレッド57:1が形成する。合成は、樹脂の存在下で行うのが好ましいが、顔料が形成した後に水性顔料スラリーへ樹脂を添加することも包含できる。
【0021】
本方法で用いるのに適切な樹脂は、主成分がアビエチン酸であるロジン;化学変性されたロジン、たとえば水素化、脱水素化、又は不均化されたロジン;二量化又は重合されたロジン;部分的にエステル化されたロジン;非エステル化ロジン;非エステル化又は部分的にエステル化されたフマル酸、マレイン酸、又はフェノール変性ロジン;及びこれらの混合物を含む。本方法で用いる樹脂レベルは、典型的には1%〜30%の範囲であるが、好ましくは3%〜10%の範囲である。
【0022】
これらの樹脂を用いるカップリング反応から生成した顔料生成物を「樹脂処理された顔料スラリー」と呼ぶ。
【0023】
シェーディング剤、たとえばC.I.ピグメントレッド63:1の添加は任意である。シェーディング剤は、顔料合成においてその場で製造しても、あるいは前もって形成したスラリーとして又はプレスケーキとして又はドライブレンドとして添加してもよい。さらなる選択肢は、BONAと共に第2(それ以上)の「ナフトール系」カップリング成分を含むことである。
【0024】
シェーディング剤が存在する場合、C.I.ピグメント57:1対シェーディング剤の重量比は、典型的にはそれぞれ90%:10%〜99.9%:0.1%であるが、好ましくは95%:5%〜99%:1%である。さらなるナフトール系カップリング成分が存在する場合、BONA対この成分の比は、典型的には85%:15%〜99.9%:0.1%であるが、好ましくは95%:5%〜99%:1%である。
【0025】
樹脂処理された顔料スラリーを合成するための標準の方法の例を、例1及び6で詳述した。樹脂処理された顔料スラリーは、典型的には合成後1%〜15%の濃度であるが、好ましくは1%〜6%である。
【0026】
後処理として、アミン溶液を水性の樹脂処理された顔料スラリーに添加するpH5〜12、好ましくはpH6〜10。樹脂処理された顔料スラリーに添加するアミンのレベルは、得られる顔料の計算重量に基づいて、典型的には0.1%〜7.5重量%であるが、好ましくは0.5%〜4重量%、最も好ましくは0.5%〜3重量%である。アミンが2個以上のアミノ基を有する場合、添加するアミンの量は、得られる顔料の計算重量に基づいて4重量%未満である。
【0027】
好適な作業モードでは、アミン処理は、水性の樹脂処理された顔料スラリーに、単離及び乾燥前に、モノアミンを、得られる顔料の計算重量に基づいて、典型的には0.1%〜7.5重量%、好ましくは0.5%〜4重量%、最も好ましくは0.5%〜3重量%添加することからなる。
【0028】
樹脂処理された顔料スラリーに、アミンをその水溶性塩、たとえば塩化物若しくは酢酸塩の形態で、又は遊離アミンとして、単独の形態又は水性分散液として加えることができる。次に顔料スラリー混合物を、30秒〜24時間、典型的には1分〜60分、好ましくは5分〜30分、最も好ましくは10〜20分攪拌する。攪拌する間、スラリー混合物を、高温に、典型的には40℃〜95℃だが、好ましくは6O℃〜9O℃に加熱してもよい。
【0029】
顔料スラリーの単離を、ろ過し、水で洗浄して塩、たとえば塩化物及び酢酸塩をスラリーから除去し、その後、典型的には20%〜40%の固形分及び80%〜60%の水であるが、好ましくは25%〜35%の固形分及び75%〜65%の水であるプレスケーキを単離することにより行う。次に場合によりプレスケーキを造粒する。次にプレスケーキ顆粒を90℃〜120℃の温度で乾燥する。乾燥した生成物を顆粒として単離するか、又は粉末形態に粉砕することができる。
【0030】
インク製造業者による顔料生成物の分散は、種々の異なるワニス系及び用途において行うことができる。
【0031】
本発明の特に好適な態様は、2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸(4B酸)と2−アミノナフタレンスルホン酸(Tobias酸)ジアゾニウム塩とを、2−ヒドロキシ−3−カルボキシ−ナフタレン(BONA)の溶液を用いて、フマル酸化されたロジンの存在下で反応させることである。4B酸/Tobias酸の重量比は、典型的にはそれぞれ90%:10%〜99.9%:0.1%であるが、好ましくは95%:5%〜99%:1%である。
【0032】
カップリング後、次に色素スラリーを塩化カルシウムでレーキ化する。レーキ化後、PHをpH9.0に調整し、次に酢酸/長鎖脂肪族アミンの溶液(得られる顔料の計算重量に基づいて3重量%の長鎖脂肪族アミン)をスラリーに加える。最終pHはpH7.0〜7.5に達し、この時点でスラリーを75℃に加熱し、温度を10〜30分間保持し、次にろ過、洗浄、造粒し、そして乾燥した。
【0033】
この顔料生成物を乾燥した塊又は粉末として製造することもできる。一般に顆粒の使用が好ましく、それはこの顔料形態はダスティングが低いためである。
【0034】
記載した方法によって製造したこの顔料生成物は、顔料をワニス媒体に分散させる時に、ミルベースインク粘度について驚くべき利点を導く。
【0035】
「インク濃縮物」又は「ミルベースインク」は、通常「最終インク」の製造前に、種々の剪断作用を引き起こす方法、たとえば混合、ビーズ練磨、三本ロール練磨、混練、及び押出によって、顔料組成物を印刷インクワニス/溶剤組合せに組み込むことにより製造する。
【0036】
代表的な方法の例は、三本ロールミル、水平又は垂直ビーズミル、コブラミル(cobra mill)、Zブレードミキサー又はニーダー、一軸、二軸、又は三軸スクリュー押出機、並びにMueller glass plate分散装置である。
【0037】
たとえば包装グラビアインクのミルベースインクの場合、顔料配合量は、ミルベースインクの15〜40重量%、好ましくは18〜35重量%の範囲にわたることができる。
【0038】
ミルベースインクをふるいにかけた後で、インクを「最終印刷インク」組成物に希釈する。最終印刷インクの顔料配合量は、最終インクに基づいて1〜15重量%、好ましくは6〜12重量%の範囲にわたることができる。
【0039】
本発明のさらなる目的であるミルベースインク(「インク濃縮物」)及び最終インク(すぐに使用できる印刷インク)、たとえば包装グラビアインクの両方について、市場で使用する多数の異なる溶剤システムがある。
【0040】
包装グラビアシステム、特にニトロセルロース/溶剤ワニス系の組成物は、アルコールリッチからエステルリッチまで変えることができる(純粋なアルコール、純粋なエステル、又はこれらの混合物に溶解したニトロセルロースを包含する)。使用するアルコールは、一般に脂肪族アルコール、好ましくはエタノールであるが、より高沸点の溶剤、たとえばエトキシプロパノールであってもよい。エステルは一般に酢酸エチルである。
【0041】
用途の全詳細を、"The Printing Ink Manual, 5th Ed, edited by R. H. Leach and R. J. Pierce, 1993, Blueprint (Chapman and Hall), ch. 9, p 547-598"に見ることができる。
【0042】
特記しない限り、本発明に記載されている評価は、ニトロセルロース/エタノール/酢酸エチル系システムにおいて行う。ニトロセルロース樹脂は、粘度及びニトロ化レベルの両方を変えることができる。
【0043】
液体包装インク配合物において通常用いる他のシステムは、PVB(ポリビニルブチレート)及びPA(ポリアミド)である。インク/ワニスの代表的な製造を、"The Printing Ink Manual, p 715-765"に見ることもできる。
【0044】
包装グラビアインクの製造のために、ビーズミル分散法が一般に用いられる。
【0045】
最終印刷インクはさらに、当業者に公知の通常の添加剤を含んでもよい。
【0046】
代表的な添加剤は、乾燥促進剤、乾燥防止剤、無色エキステンダー、充填剤、不透明剤、酸化防止剤、ワックス、オイル、界面活性剤、湿潤剤、分散安定剤、滲み通り防止剤、及び消泡剤;さらには付着性向上剤、架橋剤、可塑剤、光開始剤、光安定剤、消臭剤、殺生剤、レーキ化剤、及びキレート化剤を含む。
【0047】
このような添加剤は、通常、印刷インク組成物の総重量に基づいて、0〜10重量%、特に0〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%の量で用いる。
【0048】
他の、たとえば出版グラビア、フレキソ、活版、又は平版印刷プロセスの最終印刷インクを、上で明示した顔料生成物を用いて製造することもできる。平版印刷プロセス用に、当技術分野において公知の全てのタイプの平版印刷インク、たとえばヒートセット、コールドセット、枚葉紙、又はuv−硬化性印刷インクを用いることができる。
【0049】
印刷インクの使用及び印刷プロセスは、本発明のさらなる目的である。
【0050】
本発明により得ることができる最終印刷インクは、全てのタイプの前記印刷プロセスで、全体的に良好な印刷性能を導き、そして予想外に濃くなった色の濃さ、一層改良された光沢及び透明度のプリントを生成する。
【0051】
以下、本発明をその特定の例を参照してさらに説明する。これらの例は、例示の目的で示され、本明細書で記載した本発明の範囲を限定するものとして解釈されないことは明らかである。
【0052】
以下の例では、特記しない限り、量を重量部又は重量%で表す。
【0053】
例1:(C.I.ピグメントレッド57:1)
フマル酸変性ロジン(Pinerez(登録商標)SM3096 - Eka Nobel)7.5g(0.021mol)を、水(175ml)中の水酸化ナトリウム液(5.3g、50%、0.06mol)の溶液に8O℃で溶解した。溶解したら、氷を加えることによって溶液の温度を50℃に下げた。次に、2−ヒドロキシ−3−カルボキシ−ナフタレン(36.6g、0.195mol)を、水酸化ナトリウム浴(17.1g、50%、0.21mol)と一緒に溶液に加え、水(360ml)をさらに添加した。溶解したら、氷水を加えることによって溶液を20℃に冷却し、2−ナフトール−6−スルホン酸(2.1g、9.4mmol)及び水酸化ナトリウム(9.25g、50%、0.115mol)を容器に添加し、そして水を添加することにより溶液を1000mlにした。次に、カップリングに先立って溶液を8℃に冷却した。
【0054】
2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸(36.3g、0.194mol)及び2−アミノナフタレンスルホン酸(0.41g、1.8mmol)を、水(310ml)中の水酸化ナトリウム液(16.95g、50%、0.211mol)の溶液に40℃で溶解した。次に、溶液の温度を氷を加えることによって0℃に下げ、亜硝酸ナトリウム(13.3g、0.192mol)を溶液に加えた。5分攪拌後、濃塩酸(43.7g、36%;0.43mol)を溶液に加えた。ジアゾ化反応の温度上昇を、氷を加えることによって10℃未満に制御した。必要ならば、さらに亜硝酸ナトリウムを添加して、反応を完結させ、そして亜硝酸のわずかな過剰を確実にした。0〜5℃で氷を添加することにより、懸濁液の容量を700mlに調節した。
【0055】
次に、機械攪拌しながら、ジアゾ化されたスラリーを樹脂/カップリング成分溶液に30分かけて直接添加することによってカップリングを行った。温度を8℃に維持した。カップリング初めのpHはpH13.2であった。カップリングが進行するとpHは低下し始め、それからpH11.4でpHを希水酸化ナトリウムの添加で維持した。
【0056】
カップリングが完結し、色素を30分攪拌して確実に均質にした後、次にpH11.4及び8℃で塩化カルシウム(30.96g;0.278mol)を混合物に加えて生成物をレーキ化した。さらに30分攪拌した後、顔料スラリーを10%の希塩酸でpH9.0に調節し、この時点で水(25ml)中の酢酸(1.0g、16.6mmol)溶液に溶解したココアミン(Armeen(登録商標)C - Akzo Nobel、2.65g、14.3mmol)をスラリーに加えた。pHはpH7.8に低下した。次にpHを、10%の希塩酸でpH7.4に調節した。次にスラリーを75℃に加熱し、この温度に10分間保持した。次に、水を加えることによって懸濁液を65℃に冷却した。
【0057】
次に、顔料を、ろ過によってスラリーから取り出し、無塩に洗浄し、造粒し、そして90℃で20時間乾燥した。収量85.0g(理論の96%)。次に、乾燥した顔料を粉砕し、応用試験に先立って、500ミクロンのふるいを通してふるった。
【0058】
この例では、次に、このように得られた顔料を以下の方法で試験した:顔料21gをニトロセルロースワニス31g及びエタノール48gと混合した。混合物を、1.7〜2mmのガラスビーズ200gを含有する250mlのポリエチレンコンテナ中で手練りした。次にコンテナを蓋及びポリエチレンテープで密閉し、Skandex disperserで45分間分散させてミルベースインクを得た。ミルベースインクをふるい処理によってガラスビーズから分離した。次に、ミルベースインクの粘度をShell Cup No. 4により測定した。
【0059】
インク特性の評価を、エタノール/酢酸エチル溶剤ブレンド11.5gを用いてミルベースインク24gを希釈し、ニトロセルロースワニス14.7gをさらに添加することにより行った。次に、K-barを用いてインクを非吸収基材上に引き伸ばした。プリントが乾燥したら、着色力、色合い、光沢、及び透明度を全て視覚的に測定した。インクの粘度をShell Cup No.3により測定した。
【0060】
例1で製造した顔料(Armeen(登録商標)Cを含有)を用いて製造したインクのカラーリスティック(colouristic)は、例5で比較顔料から製造したインクのカラーリスティックと同等である。しかし、例1の生成物のインクミルベースフローは、例5の生成物よりも著しく流動性である。ミルベースフロー測定の結果を表1に示した。
【0061】
例2:
Armeen(登録商標)Cをタロウアミン(Armeen(登録商標)HT)2.65gに置き換えたほかは、例1と同様に顔料を製造した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例1と同様に試験すると、このサンプルは、例5で述べるアミンフリープロセスから製造した生成物を含むインクに比べて、同等のインクカラーリスティック及び著しく改良されたインクミルベースフロー(表1を参照)を示した。
【0062】
例3:
Armeen(登録商標)Cをオレイルアミン(Armeen(登録商標)O)2.65gに置き換えたほかは、例1と同様に顔料を製造した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例1と同様に試験すると、このサンプルは、例5で述べるアミンフリープロセスから製造した生成物を含むインクに比べて、同等のインクカラーリスティック及び著しく改良されたインクミルベースフロー(表1を参照)を示した。
【0063】
例4:
Armeen(登録商標)Cをオレイルジプロピレントリアミン(Triameen(登録商標)OV)2.65gに置き換えたほかは、例1と同様に顔料を製造した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例1と同様に試験すると、このサンプルは、例5で述べるアミンフリープロセスから製造した生成物を含むインクに比べて、同等のインクカラーリスティック及び改良されたインクミルベースフロー(表1を参照)を示した。
【0064】
例5:(比較例)
樹脂処理した顔料スラリーにアミンアセテート溶液を添加しないほかは、例1と同様に顔料を製造した。pH11.4及び8℃でカルシウムを色素に加えた後、pHを希塩酸でpH7.4に下げ(アミンアセテートは添加せず)、次に例1と同様に顔料スラリーを加熱処理し完成した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例1と同様に試験すると、インクのカラーリスティックは、例1〜4で述べたアミン処理した生成物と同等であるが、インクミルベースフローは、例1〜4で述べたアミン処理した生成物に比べて、著しく不良であった(Shell Cup 4によるフローがより遅い)。
【0065】
結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
例6:(C.I.ピグメントレッド57:1)
フマル酸変性ロジン(Pinerez(登録商標)SM3096 - Eka Nobel)7.5g(0.021mol)を、水(175ml)中の水酸化ナトリウム液(5.3g、50%、0.06mol)の溶液に80℃で溶解した。溶解したら、溶液の温度を、氷を加えることによって50℃に下げた。次に2−ヒドロキシ−3−カルボキシ−ナフタレン(38.7g、0.205mol)を、水酸化ナトリウム溶液(17.1g、50%、0.21mol)と一緒に溶液に加え、水(360ml)をさらに添加した。溶解したら、氷水を加えることによって、溶液を20℃に冷却し、水酸化ナトリウム(9.25g、50%、0.115molを容器に添加し、そして水を添加することにより溶液を1000mlにした。次に、カップリングに先立って溶液を8℃に冷却した。
【0068】
2−アミノ−5−メチルベンゼンスルホン酸(36.3g、0.194mol)及び2−アミノナフタレンスルホン酸(0.41g、1.8mmol)を、水(310ml)中の水酸化ナトリウム液(16.95g、50%、0.211mol)の溶液に40℃で溶解した。次に、溶液の温度を氷を加えることによって0℃に下げ、亜硝酸ナトリウム(13.3g、0.192mol)を溶液に加えた。5分攪拌後、濃塩酸(43.7g、36%;0.43mol)を溶液に加えた。ジアゾ化反応の温度上昇を、氷を添加することにより10℃未満に制御した。必要ならば、さらに亜硝酸ナトリウムを添加して、反応を完結させ、そして亜硝酸のわずかな過剰を確実にした。0〜5℃で氷を添加することにより、懸濁液の容量を700mlに調節した。
【0069】
次に、機械攪拌しながら、ジアゾ化されたスラリーを樹脂/カップリング成分溶液に30分かけて直接添加することによってカップリングを行った。温度を8℃に維持した。カップリング初めのpHはpH13.2であった。カップリングが進行するとpHは低下し始め、それからpH11.4でpHを希水酸化ナトリウムの添加で維持した。
【0070】
カップリングが完結し、色素を30分攪拌して確実に均質にした後、次にpH11.4及び8℃で塩化カルシウム(30.96g;0.278mol)を混合物に加えて生成物をレーキ化した。さらに30分攪拌した後、顔料スラリーを10%の希塩酸でpH9.0に調節し、この時点で水(25ml)中の酢酸(1.0g、16.6mmol)溶液に溶解したココアミン(Armeen(登録商標)C - Akzo Nobel、2.65g、14.3mmol)をスラリーに加えた。pHはpH7.8に低下した。次にpHを、10%の希塩酸でpH7.4に調節した。次にスラリーを75℃に加熱し、この温度に10分間保持した。次に、懸濁液を、水を加えることによって65℃に冷却した。
【0071】
次に、顔料をスラリーからろ過によって取り出し、無塩に洗浄し、造粒し、そして90℃で20時間乾燥した。収量86.0g(理論の96%)。次に、乾燥した顔料を粉砕し、応用試験に先立って、500ミクロンのふるいを通してふるった。応用試験を例1で述べたように行った。
【0072】
例6で製造した顔料(Armeen(登録商標)Cを含有する)を用いて製造したインクのカラーリスティックは、例9で比較の顔料から製造したインクのカラーリスティックと同等である。しかし、例6の生成物のインクミルベースフローは、例9の生成物よりも著しく流動性である。ミルベースのフロー測定の結果を表2に示した。
【0073】
例7:
Armeen(登録商標)Cをタロウアミン(Armeen(登録商標)HT)2.65gに置き換えたほかは、例6と同様に顔料を製造した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例6と同様に試験すると、このサンプルは、例9で述べるアミンフリープロセスから製造した生成物を含むインクに比べて、同等のインクカラーリスティック及び著しく改良されたインクミルベースフロー(表2を参照)を示した。
【0074】
例8:
Armeen(登録商標)Cをオレイルアミン(Armeen(登録商標)O)2.65gに置き換えたほかは、例6と同様に顔料を製造した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例6と同様に試験すると、このサンプルは、例9で述べるアミンフリープロセスから製造した生成物を含むインクに対して、同等のインクカラーリスティック及び著しく改良されたインクミルベースフロー(表2を参照)を示した。
【0075】
例9:(比較例)
樹脂処理したルビン(rubine)スラリーにアミンアセテート溶液を添加しないほかは、例6と同様に顔料を製造した。pH11.4及び8℃でカルシウムを色素に加えた後、pHを希塩酸でpH7.4に下げ(アミンアセテートは添加せず)、次に例6と同様に顔料スラリーを加熱処理し完成した。ニトロセルロースワニス系に組み込んで例6と同様に試験すると、インクのカラーリスティックは、例6〜8で述べたアミン処理した生成物と同等であるが、インクミルベースフローは、著しく不良であった(Shell Cup 4によるフローがより遅い)。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
例10:
ココアミン(Armeen(登録商標)C)2.00gを用いたほかは、例1と同様に顔料を製造した。
【0078】
例11:
タロウアミン(Armeen(登録商標)HT)2.00gを用いたほかは、例2と同様に顔料を製造した。
【0079】
例12:
オレイルアミン(Armeen(登録商標O)2.00gを用いたほかは、例3と同様に顔料を製造した。
【0080】
例13:
オレイルジプロピレントリアミン(Triameen(登録商標)OV)2.00gを用いたほかは、例4と同様に顔料を製造した。
【0081】
例14:
ココアミン(Armeen(登録商標)C)2.00gを用いたほかは、例6と同様に顔料を製造した。
【0082】
例15:
タロウアミン(Armeen(登録商標)HT)2.00gを用いたほかは、例7と同様に顔料を製造した。
【0083】
例16:
オレイルアミン(Armeen(登録商標)O)2.00gを用いたほかは、例8と同様に顔料を製造した。
【0084】
例17:
ココアミン(Armeen(登録商標)C)0.45gを用いたほかは、例1と同様に顔料を製造した。
【0085】
例18:
タロウアミン(Armeen(登録商標)HT)0.45gを用いたほかは、例2と同様に顔料を製造した。
【0086】
例19:
オレイルアミン(Armeen(登録商標)O)0.45gを用いたほかは、例3と同様に顔料を製造した。
【0087】
例20:
オレイルジプロピレントリアミン(Triameen(登録商標)OV)0.45gを用いたほかは、例4と同様に顔料を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を、単離及び乾燥の前に、完全又は部分的な遊離塩基としての、脂肪鎖中の炭素原子数6〜22を有する脂肪族アミンで、得られる顔料の計算重量に基づいて0.1〜7.5重量%用いて処理し、その後組成物を単離及び乾燥させることを含む、
ただし、脂肪族アミンが1個以上のアミノ基を有する場合、該脂肪族アミンは、得られる顔料の計算重量に基づいて、4重量%未満の量で存在する、
金属を含有する有機顔料組成物の製造方法。
【請求項2】
脂肪族アミンが、脂肪鎖中の炭素原子数6〜22、好ましくは8〜18の飽和若しくは不飽和の脂肪族アミン、又はこれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脂肪族アミンの量が、得られる顔料の計算重量に基づいて、0.5〜4重量%、好ましくは0.5〜3重量%である、請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
脂肪族アミンがモノアミンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
脂肪族アミンでの処理を、0〜95℃、好ましくは60〜90℃の温度で、5〜30分、好ましくは10〜20分の時間行う、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
金属を含有する有機顔料が、モノアゾ、アゾメチン、フタレイン、アントラキノン、フタロシアニン、若しくはトリフェニルメタン金属錯体顔料、又はこれらの混合物である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
金属を含有する有機顔料が、β−ナフトール、2−ヒドロキシ−3−カルボキシナフタレン(BONA)、ナフトールAS又はナフタレンスルホン酸モノアゾ顔料レーキ、又はモノアゾ顔料レーキの混合物である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
顔料を、顔料合成の間又は後に、顔料の重量に基づいて1〜30重量%、好ましくは3〜10重量%の量の樹脂でさらに処理することを含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の方法により得られる顔料組成物。
【請求項10】
顔料の重量に基づいて、長鎖脂肪族アミンを0.1〜7.5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、及び樹脂を1〜30重量%を含有する、請求項9記載の顔料組成物。
【請求項11】
樹脂がフマル酸変性ロジンである、請求項10記載の顔料組成物。
【請求項12】
顔料がC.I.ピグメントレッド57:1である、請求項9〜11のいずれか1項記載の顔料組成物。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項記載の顔料組成物を、インクワニス/溶剤の組み合わせ(インクビヒクル)に分散させることを含む、顔料着色液体インク濃縮物(ミルベースインク)の製造方法。
【請求項14】
顔料を、顔料着色インクの重量に基づいて15%〜40重量%の量で含む、請求項13の方法により得られる顔料着色液体インク濃縮物(ミルベースインク)。
【請求項15】
請求項14記載の顔料着色液体インク濃縮物(ミルベースインク)の顔料配合量を、インクワニス及び溶剤を含むインクビヒクルによって希釈することを含む、印刷インクの製造方法。
【請求項16】
顔料を、印刷インクの重量に基づいて1〜15重量%の量で含む、請求項15の方法により得られる印刷インク。
【請求項17】
包装グラビア、出版グラビア、フレキソ、活版、又は平版印刷プロセスにおける、請求項16記載の印刷インクの使用。

【公表番号】特表2007−531810(P2007−531810A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506766(P2007−506766)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051428
【国際公開番号】WO2005/097914
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】