説明

改良された曲げ特性を特徴とする硬化性アクリレートポリマー組成物

【課題】柔軟で耐衝撃性を有するアクリレートポリマーを提供する。特に医療および歯科分野に適する。
【解決手段】10〜90重量%の1以上のアクリリックモノマー;およびモノマー分子あたり1個または2個以上の二重結合を有する1以上の直鎖または分枝を有するC〜Cモノマーからなるオリゴマーまたはポリマーを含む1〜60重量%のオレフィン成分を含む硬化性組成物。アクリリックモノマーとして、アルキレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、エトキシ化されたビスフェノールAジメタクリレートが好ましい。オレフィン成分は、ポリブテン、ポリブタジエン、イソプレンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、軽減された脆性を特徴とする改質されたアクリレートポリマー組成物に関連し、このようなポリマーは、歯科/医療用セメントおよび修復材料として、並びに歯科プロテーゼの製造にとりわけ適している。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
メタクリル酸エステルに基づくポリマー材料は、広範な産業および医療用途が見出されてきた。それらの役割は歯科(dentistry)において特に顕著であり、そこでそれらは現代の修復材料、セメント、バーニッシュ、キャビティライナー(cavity liners)およびシーラーの基礎となった。医学におけるアクリル樹脂の最も重要な用途には、おそらくコンタクトレンズおよびヒップ修復材に使用されるセメントが含まれる。
【0003】
これらの用途の多くは、それらの化学的、光学的および機械的性質、さらにしばしば生物学的な適合性に関する必要条件の組み合わせを満たすために該材料を必要とする。種々の利用可能なモノマーに起因して、アクリル樹脂は通常、組織生体適合性、耐摩耗性、透光性、機械的強度または硬度の必要条件を満たすポリマーを、硬化時に結果的に生じるブレンドを配合することを可能とするが、それらはしばしば柔軟性を必要とする用途において機能しないかまたは満足に至らない。それは、ポリマーの薄層が曲げ力にさらされる状況において特に当てはまる;例えば、良くフィットしたデバイスを装着または取り除いている間である。アクリルポリマーのより高い柔軟性および耐衝撃性が非常に望ましいであろう状況のもう一つの例は、このようなポリマー材料で作られたデバイスが急激な、または反復的に加えられる力にさらされる用途である。特に脆弱であるのは、このような物体の薄い部分である。
【0004】
寿命(longevity)、機械的強度および、摩耗、化学反応、熱、光などへの曝露によって該ポリマー材料に劣化作用を及ぼしかねない環境への曝露に対する抵抗性を必要とする用途において、架橋されたアクリルポリマーは一般的に線状のものよりも好ましい。従って、このような用途に頻繁に使用される、アルキルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートによって例証されるモノ不飽和モノマーに加え、ジ−、トリ−、またはより高級なポリメタクリレートが使用される。このような多官能モノマーは単官能基類と混合で使用され架橋剤として働くか、若しくは単官能基モノマーを欠く組成物中で使用されてもよい。高い機械的強度および耐薬品性並びに耐摩耗性を必要とする用途において、硬化過程での低重合収縮および低発熱量に加え、より高い分子量のジメタクリレートが一般的に好ましいモノマーである。このようなモノマーは現代の自己−および光−硬化性歯科修復材料、プロテーゼ、セメント、キャビティライナー、バーニッシュおよびシーラーの処方に特に有用である。それらの用途は整形外科においてまた拡大しており、そこでそれらは結果生じるポリマーの機械的性質および耐薬品性を高めるために、モノメタクリレートモノマーに取って代わるかまたは添加剤として使用されている。
【0005】
アクリル樹脂は特有の特徴を有するために、特にある特定のまたは非常に要求の厳しい用途において、他のタイプのモノマーと置き換えることが困難である。これらは、作業(working)および硬化時間の制御の容易性、優れた生体適合性および使用可能なモノマーの幅広い選択性、さらに新規物合成の相対的な容易さを含み、望ましい分子構造を有することが硬化型ポリマーの、例えば吸水性、可溶性、疎水性、粘着特性、様々な添加剤との適合性、光学的性質、機械的強度、耐薬品性および熱や紫外線に対する抵抗性のような関連性のある特性の改質または制御を可能とする。これらの性質は、例えば化学的方法や熱または光によるような、重合を誘導する多様な方法を可能にする。
【0006】
これらの利点がアクリル樹脂を唯一且つ重要で多くの用途、特にそれらの出現と結果的拡大によって大きな変革がもたらされた歯科分野において、しばしば置き換えられないもとする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
好適な実施形態による組成物では、オレフィンポリマーがアクリリックポリマーの添加剤として使用され、多様な用途、特に医療および歯科分野に関連したものに適した、より柔軟且つ耐衝撃性のあるアクリレートポリマーを提供する。好ましい組成物はまた、酸素抑制(oxygen-inhibited)層の軽減または除去、および/または重合過程の発熱効果の軽減に効果的に対処する。
【0008】
好適な実施形態に従ったポリマーの、医療および歯科用途において特に重要なもう一つの利点は、それらの一般的無毒性およびアレルギー反応と組織刺激の発生率が低いまたは無いことである。
【0009】
好適な実施形態に従って、約10〜90重量%の1以上のアクリリックモノマー;およびモノマー分子当たりに一個または二個の二重結合を有する1以上の直鎖または分枝を有するC4〜C6モノマーからなるオリゴマーまたはポリマーを含む約1〜60重量%のオレフィン成分を含む硬化性組成物を提供する。該組成物はさらに、重合開始剤、重合アクチベータ、安定化剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填材、治療剤、フレーバリング剤および粘度/流動性改質剤からなる群から選択された1以上の添加剤を含んでもよい。該組成物は一部または成分として存在してもよく、またそれらは使用前に共に混合される二つの部分であってもよい。該組成物は、修復材料、プロテーゼ、セメント、キャビティライナー、バーニッシュまたはシーラーのような医療用デバイスとして医療および/または歯科用途において用いられてもよい。
【0010】
一実施形態に従って、歯科処置を施す方法を提供する。これは、10〜90重量%の1以上のアクリリックモノマーおよび、モノマー分子当たり一個または二個の二重結合を有する1以上の直鎖または分枝を有するC4〜C6モノマーからなるオリゴマーまたはポリマーを含む1〜60重量%のオレフィン成分を含む硬化性組成物を得ること;該組成物を歯または歯科アプライアンスの少なくとも一表面に塗布すること;および該組成物を硬化させることを含む。
【0011】
好適な実施形態の詳細説明
ここに開示される技術は熱、化学的(すなわち、自己硬化性)、または光(紫外および/または可視)硬化性アクリレートアクリル樹脂ベースの配合物および、このような配合物の硬化によって生じるポリマーまたは物体に関する。
【0012】
アクリル樹脂は上記の非常に多くの見込みある利点を有するが、アクリル樹脂のある固有特性が、それらの用途範囲を制限し、もしくはそれらの取扱いまたは信頼性を悪化させた。このような特性には硬化ポリマーの脆性、拭い取られた後に無光沢面を残す硬化ポリマーの表面上に残る酸素抑制薄液層、および重合過程に付随した高発熱(high exothermicity)が含まれる。高発熱は主として無充填または低充填のより分子量の低いアクリレートモノマーの急速な重合中に見られるが、このような組成物および早硬性の必要性は特定の臨床用途において非常に望ましいと考えられる。アクリリックモノマーの硬化中に発生する発熱効果に関する懸念を起こす用途の例としては、ヒッププロテーゼ、歯の亀裂用シーラー、一時的または永久的歯冠および架工義歯並びに接着された歯科矯正用アプライアンスのような硬化または接着される現場(in situ)医療および歯科用デバイスが含まれる。
【0013】
アクリル樹脂の短所に関連した問題に取り組む先の試みが幾つか存在した。一つのそのような試みは高分子量のモノメタクリレートモノマーを使用するものであった。この手法は硬化過程の発熱効果を効果的に低下させたが、その結果生じたポリマーは機械的に弱く、もろくて酸素抑制層が顕著であった。第二の試みはポリエチレングリコールおよび/またはポリマー粒子充填材を不活性で無反応な成分として使用した。過多な発熱なく重合が起こったが、硬化した材料はもろく、弱い力にさらされた時でさえ容易に亀裂が入った。しかしながら、酸素抑制層はわずかに減少した。第三の試みは無機粒子充填材を使用するものであったが、硬化した材料はもろく非常に硬質であった;重合の発熱効果および酸素抑制層は顕著に軽減されたが。もう一つの試みは、フタル酸エステルおよび他のポリマー軟化用添加剤(polymers flexibilizing additives)を加えるものであった。このような添加剤は、他のタイプのポリマー中に組み込まれた場合は有効であったが、アクリル樹脂中では殆ど有効ではないことがわかった。さらに、歯科/医療材料中に使用された場合、それらの安全性に関する懸念が挙がった。
【0014】
ここに開示されるのは、改良された、化学的−、熱−または光−硬化性のアクリレート組成物およびそのような組成物で作られた物体である。好適な実施形態におけるこのような組成物の主要な性質の一つは、それらの一時的または永久的柔軟性である(“一時的柔軟性(temporary flexibility)”という用語はここにおいて、確定された時間(通常は初期硬化後1〜5分)中の材料の一過的な曲げ特性と定義される。)。このような材料はまた、ストレス下での耐破損性について非改質アクリルポリマーに比して、一般的に顕著な改善を示す。更に、重合後の酸素抑制層は実質的または完全に除去されており、望まれるのであれば、本発明の配合物の硬化過程中に生じる発熱効果についても同じである。
【0015】
好適な実施形態において、該組成物およびこのような組成物より作成された物体は以下を含む:
10〜90重量%の、一分子当たり1以上のアクリレートまたはメタクリレート部分を含む1以上のアクリル酸またはメタクリル酸エステル。
【0016】
1〜60重量%の、一分子当たりに一個または2個の二重結合および4〜6個の炭素原子を有するオレフィンモノマーの1以上のポリマーまたはオリゴマーであり、好ましくはこのようなポリマーが分子量300〜2500および粘度25〜4500cpを有する。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において、上記のような成分の範囲は、参照された成分が一つある場合、それは示された範囲内の濃度(全組成物の重量と比較して)で存在し、そして参照された成分が二種以上存在する場合は、そのような種全体の総重量が提示した範囲内に収まることを意味する。範囲内とは、上下の限界値を含むことを示す。
【0018】
該組成物は必要に応じて1以上の次の化合物および/または材料を含む:重合活性化剤、紫外線吸収剤、早期重合を防ぐための安定化剤、有機および/または無機充填材、顔料および/または染料のような着色剤(美的、診断、または使用便宜目的)、および材料の機械的または視覚/光学的性質を向上させるための他の望ましい添加剤。重合アクチベータとしてはアミン(好ましくは第三級アミン)および/または過酸化物が含まれるがこれらに限定されるのではない。好ましい重合アクチベータには、過酸化ベンゾイル、過酸化ベンゾイルのハロゲン置換誘導体、N,Nビス−(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジン、N,Nジエチル−p−トルイジン、カンファーキノン、第三級脂肪族アミン、トリアルキルアミン、メタクロイルアルキルジアルキルアミン(methacroylalkyl-dialkylamines)、およびこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されるのではない。1以上の重合アクチベータが存在する場合は、約0.5〜2重量%の濃度で存在することが望ましい。安定化剤としてはBHTが含まれるがこれに限定されるのではなく、安定化剤が存在する場合は約0.01〜0.1重量%、もしくは保存および/または輸送時における該材料の早期重合を防ぐために充分な量で存在することが望ましい。好ましい充填材としては、ガラス、シリカ(非晶質および/またはヒュームド(fumed))、クオーツシリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、およびこれらの混合物が含まれる。充填材が存在する場合は、該組成物の約10〜30重量%(約15〜25%を含む)含むことが好ましい。
【0019】
該組成物は単一部分として製造および保存されてもよく、また二つ以上の部分としてでもよい。そのそれぞれは該組成物を構成する成分化学物質および材料の幾らかまたは全てを有する。二つ(またはそれ以上)の部分は適用または使用前に混合される。二つ以上の部分配合物は、自己硬化または化学的に硬化する該組成物の配合物として好ましい。二つ以上の部分を有する組成物において、組成物の構成および成分部分の量は混合後の組成物を参照する。即ち、使用される状態の組成物である。従って、個々の部分に含まれる材料の量は変動してもよく、最終的な組成物がここにおける説明と一致するという条件の下で、例えば1:20(v/v)〜20:1(v/v)のように如何なる割合で混合されてもよい。好適な実施形態においては、二つの部分(部分Aおよび部分B)は手動またはスタティックミキサによって1:1(v/v)の割合で混合される。
【0020】
このようなオレフィンポリマーのアクリリックモノマーへの添加がこのような混合物の硬化後、望ましい曲げ特性および耐衝撃性や耐破損性を含む他の機械的性質を有する高分子材料を結果として生じることは予想外の発見であった。これらの特性がそれらを歯科および医療用途において特に有用なものとした。このようなオレフィンモノマーの存在は、硬化が熱、化学的手法または光によってなされることに関係なく、アクリリックモノマーの硬化過程を妨げなかった。このようなオレフィンポリマーによって改良された硬化型アクリレートモノマーの望ましい機械的性質に加えて、結果として生じる製品の表面は酸素抑制層が無いまたは実質的に無い。さらに、重合の発熱効果(高発熱性(high exothermicity))は実質的に検出できないまたは問題ではない。
【0021】
ポリオレフィンは熱可塑性のポリマーおよびエラストマーの改質剤としてのみ知られており、アクリレートポリマーの属するカテゴリーである熱硬化性ポリマー用には知られていなかったので、今回の組成物の発見は全くの驚きであった。さらに、このようなオレフィンポリマーが非常に種々多様なアクリレートモノマーおよび/またはそれらの混合物と適合し、それらの広範な分子量において有用であることは驚くべき発見であった。
【0022】
オレフィンポリマーまたはオリゴマー(好ましくは、約100〜700の範囲内の分子量を有する液状ポリマー)および脂肪族または芳香族アクリレートモノマーを含むブレンドは特定の局面において特に有利であることが分かった。用途によっては、メタクリル酸エステルはアクリル酸のものよりも好ましい。
【0023】
好ましい組成物のアクリレート成分は、好ましくは約10〜90重量%(約50〜80%、約60〜80%、約50〜70%、約60〜80%、約70〜80%および約50〜60%を含む)のアクリリックモノマーまたはアクリリックモノマーのブレンドを含む。ここで使用されるように、モノマーを含む組成物は、純粋にモノマーでもよく、またダイマー、トリマー若しくは他のオリゴマーの幾つかまたは全てを含んでもよい。アクリレート成分は一分子中に1以上のアクリレートまたはメタクリレート部分を含むアクリル酸またはメタクリル酸のエステルを含む。本発明の配合物に使用するのに適したアクリレートモノマーの例には以下のものが含まれるがこれに限定されるのではない:エチレンおよびプロピレングリコールジメタクリレート、ジ−、トリ−およびポリエチレン並びにプロピレングリコールジメタクリレート(ジ‐ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリ−ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジ−プロピレングリコールジメタクリレートおよびトリ−プロピレングリコールジメタクリレートを含むがこれらに限定されるのではない)、トリ−メチロールプロパントリメタクリレート(tri-methylolopropane)、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート 7,7,9−トリメチル−4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ− −5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジメタクリレート(一般的にジウレタンジメタクリレート(diurethane dimethacrylate)として知られる)、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルプロポキシ)フェニル]プロパン(一般的にビス‐GMAとして知られる)およびエトキシ化ビスフェノール‐A‐ジメタクリレート(一般的にEBAとして知られる)。特定の用途においては、ジ‐またはポリ‐ジメタクリレートとの混合物であることが好ましい次の脂肪族モノメタクリレートモノマーの使用が望ましい:C〜C12アルキルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシ−(C−C)アルキルメタクリレートおよびグリセロールメタクリレート。
【0024】
好ましい組成物のオレフィン成分は、好ましくは約1〜60重量%(約1〜10%、約1〜20%、約10〜20%、約10〜30%、約1〜40%および約10〜40%を含む)の4〜6個の炭素原子を有するオレフィンモノマーのポリマーまたはオリゴマーを含む。適当なオレフィンポリマーまたはオリゴマーの例にはC〜Cモノ−またはバイ−不飽和モノマーから誘導された種々のオレフィンポリマーまたはオリゴマーが含まれ、好ましくはブテン、ブタジエンまたはメチルブタジエン(イソプレン)のような直鎖中に4個の炭素原子を有するモノマーから生じまたは誘導されたものである。安価で望ましい範囲の分子量で商業的に利用可能であるので、殆どの用途においてポリブテンは好ましい。
【0025】
ここに開示される組成物は、医療用デバイスに形成又はかたどられ(mold)ても、また例えば整形外科処置における骨セメントのような医療用途のセメントとして使われてもよい。該材料はまた、プロテーゼまたは歯科修復材を作成するためにかたどられまたは形成されてもよく、歯および/または歯科アプライアンス(永久的または一時的な歯冠、架橋義歯が含まれるがこれに限定されない)に応用されてもよい。その結果、歯の不完全部や欠けた部分を埋めるためのセメント、キャビティライナー、バーニッシュ、シーラー、ベニヤまたは“ボンディング”材料として使用される。一実施形態にしたがって歯科処置を施す方法を提供する、これは種々の実施形態においてここで開示される硬化性組成物を得ること;該組成物を歯または歯科アプライアンスの少なくとも一表面に塗布すること:および該組成物を硬化させることを含む。従って、この開示はまた、疾患の歯(例えばキャビティまたはう蝕(カリエス))を有する歯、折れた歯または変色した歯の治療におけるセメント、キャビティライナー、バーニッシュ、シーラー、ベニヤ、ボンディング材料、プロテーゼ、または歯科修復材としてここに開示されるような硬化性の組成物の使用法を含む。
【実施例】
【0026】
以下の例は本発明の特性およびその実施方法をより良く理解するために示す:しかしながら、特許請求の範囲に明記の範囲の概略を述べることを意図するのではない。
【0027】
実施例1
熱硬化性組成物は以下からなった:
【0028】
【表1】

【0029】
該成分は混合され、該材料組成物はオーブン中において100℃で1時間硬化された。硬化した材料の性質は:バーコル硬度:25〜30;曲げ強度:71Mpa. 製品は、例えば一時的な歯冠および架工義歯材料といった目的用途に適すると判断された。
実施例2
光硬化性組成物は以下からなった:
【0030】
【表2】

【0031】
該材料は混合され、歯科硬化装置Optilux(登録商標)(光硬化)を用いて20秒間で硬化された。製品は目的用途に適していると判断された。
実施例3
化学的硬化性組成物は下表のパートAおよびBの1:1(v/v)混合物からなった:
【0032】
【表3】

【0033】
該材料は23℃で110秒間後に軟硬化され150秒後に硬く硬化された(軟硬化とは、材料が固体になるが柔軟性を示す段階と定義される)。硬化した材料の性質は:バーコル硬度:42〜45;曲げ強度:61Mpa. 製品は用途に適すると判断された。
実施例4
自己硬化性組成物は下表のパートAおよびBの1:1(v/v)混合物からなった:
【0034】
【表4】

【0035】
該材料は23℃で、175秒後に軟硬化段階に、そして210秒後に硬い硬化に達した。製品は用途に適すると判断されたが、実施例3の製品に幾分劣るものであった。
実施例5
実施例3のものと類似するが異なる充填材を保持した代替的自己硬化性組成物は下表のパートAおよびBの1:1(v/v)混合物からなった:
【0036】
【表5】

【0037】
硬化した材料は実施例3のものと類似の性質を有していた。
【0038】
実施例6
実施例3のものに類似しているが異なる柔軟化添加剤(ポリブテンに代えてポリブタジエン)を有する化学的硬化性組成物は下表のパートAおよびBの1:1(v/v)混合物からなった:
【0039】
【表6】

【0040】
該材料は23℃で85秒後に軟硬化段階に、そして140秒後に硬い硬化に達した。製品は用途に適すると判断された。
実施例7(比較)
実施例3のものに類似しているが柔軟化添加剤(ポリブテン)を含まない化学硬化性組成物は下表のパートAおよびBの1:1(v/v)混合物からなる:
【0041】
【表7】

【0042】
硬化した材料の性質は:バーコル硬度:50〜55;曲げ強度:83Mpa. 硬化した製品は、柔軟性を欠くので、一時的な歯冠および架工義歯材料として適さないと判断された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜90重量%の1以上のアクリリックモノマー;および
モノマー分子当たり1個または2個の二重結合を有する1以上の直鎖または分枝を有するC〜Cモノマーからなるオリゴマーまたはポリマーを含む1〜60重量%のオレフィン成分
を含む硬化性組成物。
【請求項2】
1以上のアクリリックモノマーが分子当たりにアクリレートまたはメタクリレート基を1〜3個有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1以上のアクリリックモノマーが(C〜C)アルキレングリコールジメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1以上のアクリリックモノマーがジウレタンジメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1以上のアクリリックモノマーがエトキシ化されたビス−フェノール−A ジメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1以上のアクリリックモノマーが2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルプロポキシ)フェニル]プロパンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
1以上のアクリリックモノマーがヒドロキシ(C〜C)アルキルメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ヒドロキシ(C〜C)アルキルメタクリレートがヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルおよび/またはヒドロキシブチルメタクリレートを含む請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1以上のアクリリックモノマーがテトラヒドロフルフリルメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
1以上のアクリリックモノマーが(C〜C)アルキルモノメタクリレートを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
オレフィン成分がポリブテンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
オレフィン成分がポリブタジエンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
オレフィン成分がイソプレンを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
オレフィン成分が平均分子量300〜2500および23℃における粘度が25〜4500cpである請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
重合開始剤、重合アクチベータ、安定化剤、紫外線吸収剤、着色剤(colorant)、充填材、治療剤、フレーバリング剤および粘度/流動性改質剤からなる群から選択された1以上の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
1〜60重量%の1以上の無機充填材をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
無機充填材がガラス、クオーツシリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウムまたはこれらの混合物を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
該組成物が熱硬化性である請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
該組成物が、過酸化物重合アクチベータを含む第一部分と、第三級芳香族アミン型重合アクチベータを含む第二部分を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
該重合アクチベータが過酸化ベンゾイルまたはそのハロゲン置換誘導体を含む請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
該第三級芳香族アミンがN,Nビス−(2−ヒドロキシエチル)p−トルイジンまたはN,Nジエチル−p−トルイジンを含む請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
光誘導型重合活性化添加剤としてカンファーキノンおよび第三級脂肪族アミンをさらに含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
該アミンがトリアルキルアミン、メタクロイルアルキル−ジアルキルアミンおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
顔料および染料などのカラーリング剤(coloring agent)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
該組成物が光硬化性である請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物を含む医療または歯科用デバイス
【請求項27】
前記デバイスが歯科用修復材料、プロテーゼ、セメント、キャビティライナー、バーニッシュまたはシーラーである請求項26に記載の医療または歯科用デバイス
【請求項28】
以下の工程を含む歯科処置を施す方法:
以下を含む硬化性組成物を得る工程:
10〜90重量%の1以上のアクリリックモノマー;および
モノマー分子当たり1個または2個の二重結合を有する1以上の直鎖または分枝を有するC〜Cモノマーからなるオリゴマーまたはポリマーを含む1〜60重量%のオレフィン成分;
該組成物を歯または歯科アプライアンスの少なくとも1つの表面へ塗布する工程;および
該組成物を硬化させる工程。
【請求項29】
該組成物を硬化させる工程が、該組成物に熱を加えることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
該組成物を硬化させる工程が、紫外または可視光を該組成物へ照射することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
該硬化性組成物が二つの部分に分かれた請求項28に記載の方法。
【請求項32】
使用前に該二つの部分を混合することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
1以上のアクリリックモノマーが、分子当たり1〜3個のアクリレートまたはメタクリレート基を有するアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである、請求項28に記載の組成物。
【請求項34】
1以上のアクリリックモノマーが、(C〜C)アルキレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、エトキシ化されたビスフェノール‐Aジメタクリレート、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルプロキシ)フェニル]プロパン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートおよびテトラヒドロフルフリルメタクリレートからなる群から選択される請求項28に記載の組成物。
【請求項35】
該オレフィン成分がポリブテン、ポリブタジエンおよび/またはイソプレンを含む請求項28に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−52402(P2006−52402A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−229259(P2005−229259)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(505251989)サイエンティフィック ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (3)
【氏名又は名称原語表記】SCIENTIFIC PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】3221 Producer Way Pomona, CA 91768−3916 USA
【Fターム(参考)】