説明

改良された耐久性を有する燃料電池

炭素担体の表面が焼成により製造された炭化ケイ素又は炭化ホウ素の添加により変性された、耐久性及び活性を有する、変性炭素担持金属触媒が開示される。この触媒は燃料電池において、触媒された電極として使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府により支援された研究の報告
本発明はOxazogen, Inc.によりthe National Science Foundation (NSF)のOxidation Resistant Carbon Supports for Fuel Cellsという名称の支給番号IIP−0839525及びIIP−1026556における米国政府支援を得てなされた。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、耐久性、特に、ポリマー電解質燃料電池(PEFC)の炭素カソードに関する耐久性を改良するために表面処理することによる、ポリマー電解質燃料電池における炭素担持触媒の性能の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
燃料電池は重要なエネルギー変換技術となる可能性を有する。オイルに対する依存性を低減しそして公害問題を回避するために、近年、燃料電池に対する研究努力が増大されてきた。結果として、最近、多大な努力が、小さい(たとえば、携帯型1キロワットサイズの発電機)から大きい(たとえば、自動車エンジン又は定置式電力プラント)まで、広い範囲の用途にわたって消費者使用に適する燃料電池システムの開発に向けられてきた。1つの開発目的は、燃料電池システムが伝統的な化石燃料燃焼代替物と競争可能なようにコストを低減することに関する。
【0004】
しかしながら、ポリマー電解質燃料電池(PEFC)の商業化に障害となる1つの問題は、操作の間に性能が徐々に低下していくことであり、その低下はカソードにおける炭素担持白金ナノ粒子の電気化学的表面積(ECSA)の損失によって主として生じる。ECSAの損失の幾つかの理由は、以下のとおりである:1)白金(Pt)ナノ粒子のマイグレーションによる凝集、2)オストワルド熟成による粒子成長(溶解及び再析)、3)炭素担体からのPtナノ粒子の脱離、及び、4)メンブレン中での溶解及び沈殿。
【0005】
カソードにおける炭素担持白金ナノ粒子のECSAの損失を遅らせる1つのアプローチは米国特許第6,548,202号明細書に開示されており、それは炭素担体に、より強固にPtを固定しようとするものである。種々の異なる表面基の存在により、酸化物担体上でのPtの安定性は炭素上でのPtの安定性よりもずっと優れている。炭素上での安定性を向上させる1つの方法は、炭素単独よりも強く白金を結合する官能基を表面に付加することである。この’202号特許は、炭素担体の表面に官能基を付加するために酸化剤の使用を用いている。この酸処理は、フェノール、カルボニル、カルボキシル、キニン及びラクトンなどの多くの異なる表面基を炭素上に発生させる。これらの表面基の発生は白金に対する潜在的な結合サイトを追加するが、得られたPEFCは酸処理を行わない燃料電池よりも僅かに良いだけの性能を有する。実際、この’202号特許は、これらの触媒による寿命の改良をほとんど示していない。この表面酸化に追加的に不利な点がある。すなわち、これらの表面基は炭素を操作の間にさらに酸化させやすくし、それにより、炭素担体の腐食及び活性の損失を速めることになる。
【0006】
別のアプローチは米国特許第6,855,453号明細書に開示されており、それは黒鉛化により炭素担体を安定化させようとするものである。3000℃までの温度に炭素担体を加熱することにより、炭素の結晶化度を変化させ、そして炭素を酸化に対してより耐性にする。これまで、このアプローチは最も耐酸化性である燃料電池炭素触媒担体の幾つかを誕生させている。しかしながら、高温黒鉛化時に炭素表面積の損失が低表面積白金触媒をもたらし、そしてより低い活性をもたらすので、表面積の点で有意な不利益がある。黒鉛化時の表面積の損失により、このプロセスがPEFCの炭素担体の商業製造に望ましくないものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
明らかに、PEFCとしてのより耐久性の燃料電池を有することが有利であり、特に炭素アノード及びカソードの腐食を遅くし、そしてその性能の改良をする、特に耐久性である、燃料電池を有することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の簡単な説明
本発明は、PEFC耐久性を大きく向上させ、そして所望の活性を維持する「変性炭素」金属触媒担体に関する。
【0009】
本発明は、変性炭素担体の表面が表面共有結合炭化物を含む、変性炭素担持金属触媒を含む電気触媒に関する。適切な金属は白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)及び銀(Ag)のうちの1種以上である。1つの実施形態において、電気触媒は白金を含むが、変性炭素担体の表面が炭化ケイ素又は炭化ホウ素を含んでいる。本発明は、また、電気触媒の製造方法及びポリマー電解質燃料電池のカソード中への電気触媒の導入も開示する。
【0010】
したがって、本発明は脱活性化を遅らせ、それにより、PEFC耐久性を大きく向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、本発明の変性炭素担持白金触媒の製造方法を例示するフローチャートを示す。
【図2】図2は、触媒された電極の好ましい製造方法を例示するフローチャートである。
【図3】図3は、ポリマー電解質燃料電池の好ましい製造方法を例示するフローチャートである。
【図4】図4は、種々のMEAの電流密度の関数として電池電圧を示し、MEA3の結果については30,000サイクル後の電流密度の関数として電池電圧を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
用語解説
本明細書中に使用する際に、下記の用語は下記のとおりに定義され、これらの用語について、単数の用語は複数の用語を包含する。
cmはセンチメートルを意味し、
DMFCは直接メタノール燃料電池を意味し、
DEFCは直接エタノール燃料電池を意味し、
ECSAは電気化学表面積を意味し、
g(s)はグラムを意味し、
GDLはガス拡散層を意味し、
hr(s)は時間を意味し、
in.はインチを意味し、
IRはフーリエ変換赤外スペクトロスコピーを意味し、
MEAはメンブレン電極アセンブリを意味し、
min(s)は分を意味し、
mLはミリリットルを意味し、
NMRは核磁気共鳴を意味し、
PEMはプロトン交換膜又はポリマー電解質膜を意味し、
PEFCsはポリマー電解質燃料電池を意味し、
Ptは白金を意味し、
RTは室温を意味し、約20℃〜約25℃であり、
sec.は秒を意味し、
SECはサイズ排除クロマトグラフィーを意味し、
TGAは熱重量分析を意味し、
Vはボルト又はボルテージを意味する。
【0013】
一般議論
カソード触媒層の劣化の主な理由は、特定の操作条件下、特に電位サイクリングの条件下における白金の溶解及び炭素の腐食である。サイクリングは種々の負荷をPEFCに課し、PEFCは、条件が変化しない安定な状態の操作で通常に設計されている。条件が変化する場合、特に、ストップ・アンド・ゴー運転、及び、自動車用途での燃料欠乏の場合には、これらのファクタは高電圧負荷を生じさせることがあり、次いで、それがPEFCの劣化を生じさせるであろう。マイグレーションによる白金ナノ粒子の凝集も表面積の損失をもたらす。
【0014】
PEFCの使用において、カソードでのPtの粒子成長及び溶解が観測される。PEFCの操作の間に、性能の徐々の低下が見られ、それはカソードにおける炭素担持白金ナノ触媒のECSAの損失によって主に生じる。ECSAの損失の幾つかの理由は以下のとおりに提案される:1)白金(Pt)ナノ粒子のマイグレーションによる凝集、2)オストワルド成熟による粒子成長(溶解及び再析)、3)炭素担体からのPtナノ粒子の脱離、及び、4)メンブレン中での溶解及び沈殿で、次いで、過酸化水素の生成を促進し、そしてメンブレンの劣化を加速する。
【0015】
また、PEFCの使用において、カソードでの炭素腐食は観測される。炭素担体のこのような腐食はPtナノ粒子の脱離及び凝集をもたらし、白金表面積の損失をもたらす。これらの問題の一般的なレビューはBorupら, Chem. Rev. 107, 3904−3951 (2007)にある。
【0016】
PEMシステムにおけるカソードの耐久性を付与するための種々の試みがなされており、成功の度合いは様々であるが、今日まで、どれも商業的に有用になっていない。
【0017】
PEFC耐久性を増加するための1つのアプローチは、操作の進行の間の白金の焼結を抑制することである。1つの以前のアプローチは、炭素担体により強固に白金を固定しようとするものである。しかしながら、種々の異なる表面基の存在のために、酸化物担体上での白金安定性は、炭素上での白金安定性よりもずっと優れている[たとえば、Palmer, M.ら, J. Chem. Tech. Biotechnol, 30, 205−216 (1980)]。
【0018】
炭素上でのPtの安定性を向上させる1つの方法は、炭素単独上のPtよりも強くPtを結合する官能基を表面に付加することである。ある研究は、Ptの酸化物との改良された結合が炭素表面上に生じるように、炭素担体の表面を部分的に酸化することを報告している。通常、炭素のこのような処理は、強鉱酸、たとえば、HNO、HPO又はHSOを用いる[Campbell,S.ら,米国特許第6,548,202号明細書を参照されたい]。この酸処理はフェノール、カルボニル、カルボキシル、キノン及びラクトンなどの多くの異なる表面基を炭素上に発生させる[Kinoshita, K., Carbon−Electrochemical and Physicochemical Properties, pp 86−90, John Wiley & Son出版, 1988を参照されたい]。これらの表面基の発生は白金に対する潜在的な結合サイトを追加するが、得られたPEM燃料電池は酸処理を行わない燃料電池よりも僅かに良いだけの性能を有する。実際、Campbellはこれらの触媒による寿命の改良がほとんどないことを報告している[米国特許第6,548,202号明細書]。この表面酸化に追加的に不利な点がある。というのは、これらの表面基は炭素を操作の間にさらに酸化させやすくする。このことは、炭素担体の腐食及び活性の損失を速めることになる。
【0019】
強酸の代わりに、炭素担体の変性を、炭素の塩素化を用い、新たなルイス酸サイトを炭素上に形成して行い、そのサイトは担体に白金をより強固に結合する。不運なことに、塩素化によるこれらのサイトの形成は塩素化炭素がより酸化を受けやすいという主な欠点を有する。我々の研究室で行った単純なTGA研究は炭素の塩素化が、未処理の担体よりも50℃低い温度で酸化される担体をもたらすことを示す。明らかに、この塩素化(以前に、表面の部分酸化と呼んだ)は安定でない触媒をもたらす。
【0020】
他の研究グループは異なるアプローチを取っている(たとえば、Atanassov, P.ら, ”Surface Chemistry and Structure Studies Surface Chemistry and Structure Studies of Carbon Support Corrosion in PEMFC’s”, 212th Electrochemical Society Mtg, Washington D.C., 10月7〜12日, 2007)。このグループは炭素担体の表面上の官能基を除去し又は部分的に除去することにより炭素担体を安定化させることを調べた。酸素官能性を含むこれらの表面基はより完全な酸化のための潜在的な攻撃ポイントとしての役割を果たす。カルボニル基及びヒドロキシル基などの表面基はさらに酸化されて、カルボキシル基になり、次いで、最後に二酸化炭素になることができる。これらの基の除去は担体の酸化を潜在的に遅らせることができる。
【0021】
炭素担体の安定化への別のアプローチは黒鉛化によるものである(たとえば、Bett, J.ら、米国特許第6,855,453号明細書を参照されたい)。3000℃までの温度に炭素担体を加熱することにより、炭素の結晶化度を変化させ、そして実際に炭素を酸化に対してより耐性にする。これまで、このアプローチは最も耐酸化性である燃料電池炭素触媒担体の幾つかを誕生させている。不運なことに、表面積の点で有意な欠点がある。高温黒鉛化時の炭素表面積の損失が低表面積Pt触媒をもたらし、そしてそれゆえ、より低い活性をもたらす。黒鉛化時の表面積の損失により、このプロセスがPEM燃料電池の炭素担体の商業製造に望ましくないものとなっている。
【0022】
炭素腐食は大きな問題であり、General Motorsの研究者は担体酸化を回避するための犠牲材料の使用を研究している(Zang,J.ら, 米国特許出願公開第2008/0020262号明細書, 2008年1月24日に公開)。この2008年特許出願では、Zhang及びその共同研究者は炭素材料を添加し、その炭素材料は炭素担体よりも有意に高速に酸化する。その概念は攻撃が担体炭素よりも犠牲炭素で優先的に起こり、それにより、触媒寿命を延長するというものである。このことが担体腐食を遅らせる商業的に実行可能な方法であるかどうかを述べるには早すぎる。担体炭素は、犠牲成分の存在下においても、許容されない速度でなおも腐食しうる。
【0023】
本発明
本発明は、生来的に酸化に対してより耐性である表面炭化物の形成により炭素担体を変性することによる異なるアプローチを取る[Fergus,J.ら., Carbon, 33(4), 537−543 (1995)を参照されたい]。導電性などの特性を維持するために、共有結合炭化物のみ−主として炭化ホウ素及び炭化ケイ素−を用いる。本発明において単純な二元系炭化物を用いるが、特定の三元系も有用であると信じられる。
【0024】
この仕事を達成するために、担体表面積が低下しないような十分に穏やかな条件下で炭素を生成しなければならない。合成条件が1000℃より高い高すぎる温度での焼成反応を必要とするならば、担体表面積の損失が起こりそして目的が達成されない。炭化ケイ素は炭素の酸化耐性を高めるための有効な材料であることが示されているが[たとえば、Moene, R.ら , Carbon, 34(5), 567−579 (1996)]、最近まで、使用される合成方法は高温を必要としていた。Moene及びその共同研究者はCH/SiCl混合物が1102℃での焼成の後に有効な耐酸化性炭素を生成することができることを示した。彼らは前駆体としてCHSiClを用いることにより、927℃の焼成温度に低下させることができた。
【0025】
最近、新しい製造者は比較的低温で:400℃という低温で分解する炭化ケイ素前駆体を供給し始めた(すなわちStarfire Systems Inc., 10 Hermes Road, Malta, NY)。これらの材料、具体的には、アリルヒドリドポリカルボシラン、ジメトキシポリカルボシラン及び超分岐ポリカルボシランは低い揮発性の前駆体であり、この前駆体は950℃未満、好ましくは400〜850℃の温度範囲での焼成の後に炭化ケイ素への高収率を有する。これらの材料は、当初、エレクトロニクス産業におけるコーティング用途で製造されていたが、これらの材料は低温炭化ケイ素材料の生成のための有望な候補である。温度の点で、これらの材料は技術の進捗の変化を示す。
【0026】
ホウ素変性コーティングに同様の観測がなされることができる。炭素に対するホウ素の添加がその耐酸化性を高めることができることが示されているが、一般に1200℃を超える温度が要求される[Fergus,J.ら, Carbon, 33(4), 537−543 (1995)を参照されたい]。ホウ酸とポリビニルアルコールとの反応により生成されるポリマーなどの前駆体は炭化ホウ素の生成のための新規の材料源を提供する。Mondal及びBanthiaは、近年、このポリマーを400〜800℃の範囲の温度で焼成することで純粋な炭化ホウ素を生じることを示した[Mondal, S.及びBanthia, A., J. Eur. Ceramic Soc, 25(2−3), 287−291 (2005)を参照されたい]。彼らはこれを、炭化ホウ素を得るためのユニークな低温(400℃)合成ルートと呼んだ。
【0027】
変性により炭素担体にPt粒子をより良好に固定することに関する文献中にある先例が示されているので、変性炭素を新規の担体として使用することに別の潜在的な利益がある。Turner及び共同研究者は、最近、ホウ素でドープされた炭素クラスターによる小Ptクラスターの安定化に関するモデル化研究の結果を出版した[たとえば、Acharya, C.及びTurner, C, J. Phys. Chem. B, 110, 17706−17710 (2006)]。彼らのモデル化研究は、「炭素担体中の置換ホウ素欠陥の存在は金属原子(Ptなど)の吸着エネルギーを増加させる」ことを明らかに示している。このことにより、燃料電池中での操作の間のPt系触媒の安定化を向上させることになるであろう。さらに、この安定化を達成するための炭素に添加されるホウ素の量は比較的少量であり、5〜10質量%の範囲である。ホウ素の量は少量にすることができるので、炭素の高い導電性は維持されるはずである。
【0028】
本発明において、炭素担持白金触媒における使用が意図されている炭素担体材料は表面炭化物を生成する、すなわち、表面共有結合炭化物を形成するように変性されており、それにより、耐酸化性である保護層を提供することにより炭素腐食を遅らせ、そして炭素担体と白金との間の結合強度を増加させる。変性炭素担持白金触媒の製造は、最初に、炭素担体材料を変性し、表面共有結合炭化物を生成させることにより行った。このことは、溶剤中にカルボシラン前駆体(アリルヒドリドポリカルボシラン)を溶解させ、炭化物前駆体含有溶液を形成することにより行う。その後、カルボシラン前駆体含有溶液を滴下して炭素担体材料に加える。その後、下記の標準焼成プロセスを用いて、カルボシラン前駆体含有溶液及び炭素担体材料を焼成することにより、表面共有結合炭化物を生成し、炭化物共有結合を含む変性炭素担体を形成する。このことを図1のフローチャートにより示す。
【0029】
このプロセスは変性炭素担体上で炭化ホウ素共有結合を生成するために行うこともできる。このプロセスは、1.51gのポリビニルアルコールを21mLの脱イオン水中に溶解させ、そして一定の攪拌とともに80℃に加熱することにより生成されるマスター溶液を製造することで行った。0.71gのホウ酸を14mLの脱イオン水中に溶解させることにより第二の溶液を製造した。この第二の溶液も80℃に加熱した。一定の攪拌とともに、このホウ酸溶液を滴下して、ポリビニルアルコール溶液に添加し、ホウ素含有前駆体を形成した。その後、イソプロパノールをホウ素含有前駆体に添加し、その後、それを徹底的に混合した。このホウ素含有前駆体溶液を、その後、炭素担体材料に滴下して加えた。その後、下記の標準焼成プロセスを用いて、ホウ素含有前駆体溶液及び炭素担体材料を焼成することにより表面共有結合炭化物を生成し、炭化物共有結合を含有する変性炭素担体を形成する。
【0030】
その後、変性炭素担体材料を白金(Pt)と組み合わせ、そして活性化変性炭素担持白金触媒を形成するように還元する。Ptは好ましいが、変性炭素担持触媒が下記の1種以上の金属:白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)及び銀(Ag)を含む変性炭素担持金属触媒が含まれる。この炭素担持触媒は、また、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)又はクロム(Cr)を含む混合金属成分を有することもできる。
【0031】
白金添加は、エタノール中のクロロ白金酸溶液を、変性炭素担体に滴下して加え、変性炭素担持触媒を形成することにより行われる。次に、変性炭素担持触媒を換気フード内で乾燥する。最後に、変性炭素担持白金触媒を、水素、アンモニア又は一酸化炭素などの気体還元剤、又は、ヒドラジンなどの液体還元剤、又は、ホルムアルデヒドなどの有機物、又は、同様の還元剤などの既知の還元剤を用いて還元し、活性化変性炭素担持白金触媒を形成する。図1のフローチャートを参照されたい。
【0032】
本発明では、幾つかの前駆体を炭素カソードに添加し、炭化ケイ素又は炭化ホウ素のいずれかの保護層を実証的に形成した。一般に、2つのクラスの変性用前駆体を用いた。1つのクラスはカルボシラン前駆体を用い、そして第二のクラスはホウ酸を用いた−ポリビニルアルコールポリマー前駆体。これらの2つの材料のうち、カルボシラン前駆体は今日までで最も良好な結果を示した。ヒドリドポリカルボシラン、ジメトキシポリカルボシラン及び2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリシラヘプタンなどの種々の異なるカルボシラン前駆体を試みたが、アリルヒドリドポリカルボシランを選択した。というのは、その調製条件下で、最も良好なコーティング収率を示したからである。ホウ素変性材料では、ホウ酸−ポリビニルアルコールポリマー前駆体のみを検討した。
【0033】
本発明は、また、ポリマー電解質燃料電池(PEFC)における使用のための触媒電極を形成するための、上記の変性炭素担持白金触媒の使用も開示する。この燃料電池の製造は、最初に、炭酸プロピレン、イソプロパノール、Nafion(商標名)(DuPont)イオノマーの溶液及び変性炭素担持白金触媒からなる「インクスラリー」を製造することにより行われた。徹底的な混合の後に、2つの正方形のTeflon(商標)(DuPont)被覆マットの中央のマスク化されていない部分にスラリーを均一に添加した。その後、溶剤をマットから蒸発させた。第二の同一のコートを適用した。乾燥後に、これらのマットはメンブレン電極アセンブリ(MEA)へと製造する準備ができた。図2のフローチャートを参照されたい。
【0034】
理論に固執したくはないが、本発明は少なくとも2つの主要なメカニズムにより脱活性化を遅らせるものと信じられる。第一に、耐酸化性である保護層を提供することにより炭素腐食を劇的に遅らせ、第二に、変性炭素はPtと担体との結合強度を増加させる−粒子成長及び溶解を遅らせる。原料として水素及び酸素を使用する燃料電池ですべての本試験を行ったが、本発明は直接メタノール燃料電池(DMFC)、リン酸燃料電池(PAFC)又は直接エタノール燃料電池(DEFC)で上手く機能するものと信じられる。
【実施例】
【0035】
本発明は以下の実施例を考慮することによりさらに明確になるであろう。実施例は本発明の純粋な例示であることが意図される。
【0036】
材料
カーボンブラック又はカーボンはVulcan XC−72であった。それは指示があるときには乾燥されたものである。
特に指示がないかぎり、すべての試薬は市販源から受け取ったまま使用した。
【0037】
方法
変性炭素を得るための標準焼成手順
炭素の未焼成部分(石英ウールのプラグ上にある)を1.0in.外径の石英チューブの中央に配置した。炭素を含有するチューブを垂直チューブファーネス中に入れ、その後、約5分間、約100cc/分の窒素でパージした。その後、ガス流を約10cc/分の窒素に低下させ、そしてファーネスを室温から850℃に10℃/分で触媒床を加熱するようにプログラムした。850℃に到達した後に、触媒床をその温度に2時間維持し、その後、室温に冷却して戻し、そしてサンプルを取り出した。
【0038】
Nafion(商標)メンブレン調製
Nafion(商標)メンブレンを塩化ナトリウム溶液中に入れることによりNafiion(商標)メンブレンをナトリウム形態に転化させ、そして約65℃に加熱し、そしてその温度に1時間維持する。メンブレンを、その後、溶液から除去し、そして乾燥する。使用の直前に、このメンブレンをホルダー中に入れ、その後、70℃の真空炉中に入れ、そこに1時間維持する。インク被覆マットを、その後、メンブレンの両側に配置し、そして一緒にプレスし、そして210℃に加熱する。その後、このアセンブリを室温に冷却する。使用前に、アセンブリを酸浴中に入れ、それをナトリウム形態からプロトン形態に転化させて戻す。最終的に、ガス拡散層をアセンブリに加え、その後、燃料電池試験スタンド中にMEAを配置する。
【0039】
カルボシラン前駆体からの変性炭素の調製
例1:アリルヒドリドポリカルボシランからの変性炭素の調製
アリルヒドリドポリカルボシラン(0.0011g)を2.8gのトルエン中に溶解させ、溶液を製造した。この溶液を1.0gの乾燥カーボンブラックに滴下して加えた。溶剤を換気フード中で約3時間蒸発させ、そしてサンプルを上記の標準条件下で焼成して、変性炭素を形成した。
【0040】
例2:アリルヒドリドポリカルボシランからの変性炭素の調製
アリルヒドリドポリカルボシラン(0.055g:Starfire Systems SMP−10)を14.0gのトルエン中に溶解させ、溶液を形成した。その後、この溶液を5.0gの乾燥カーボンブラックに滴下して加えた。溶剤を換気フード中で約3時間蒸発させ、その後、サンプルを上記の標準条件下に焼成し、変性炭素を形成した。
【0041】
例3:アリルヒドリドポリカルボシランからの変性炭素の調製
溶液を0.137gのアリルヒドリドポリカルボシランを14.0gのトルエン中に溶解させることにより製造した。この溶液を5.0gの乾燥カーボンブラックに滴下して加えた。溶剤を換気フード中で約3時間蒸発させ、その後、サンプルを上記の標準条件下に焼成し、変性炭素を形成した。
【0042】
例4:アリルヒドリドポリカルボシランからの変性炭素の調製
溶液を0.236gのアリルヒドリドポリカルボシランを12.0gのトルエン中に溶解させることにより製造した。この溶液を4.4gの乾燥カーボンブラックに滴下して加えた。溶剤を換気フード中で約3時間蒸発させ、その後、サンプルを上記の標準条件下に焼成し、変性炭素を形成した。
【0043】
独立のラボによる例1〜4の分光分析は、表1に示すとおりの焼成後の%Siを示した。
【表1】

【0044】
これらの結果は炭素担体中に取り込まれたSiの量を示す。
【0045】
例5:テトラアリルシランと1,1,4,4−テトラメチル−1,4−ジシラブタンとの反応による超分岐ポリカルボシランの調製
100mLの丸底フラスコに、テトラアリルシラン(6.19g、32.19ミリモル、3当量のアリル)、1,1,4,4−テトラメチル−1,4−ジシラブタンHSiMeCHCHSiMeH(3.14g、21.46ミリモル、1当量のSiH)、無水テトラヒドロフラン(THF、20mL)及び1滴の、キシレン中の白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒、2.1〜2.4%白金)を装填した。混合物を16時間還流し、そして無水モノマー及び過剰なTHFを真空中に除去した。残留物をアセトニトリルで洗浄し(5×20mL)、そして真空下に16時間乾燥し、定量的な収量の超分岐ポリカルボシランを黄色のオイルとして提供した(1.71g)。分離した反応生成物の特性化により下記のスペクトルが提供された。
IR (KBrディスク): ν (cm−1) 3076 (アリル);
H NMR (CDCl): δ (ppm) 0 (s; SiCH), 0.41(s;SiCHCHSi), 0.60−0.73(m; SiCHCHCH), 1.36−1.45(m; SiCHCHCH), 1.57−1.66(m; SiCHCH=CH), 4.86−4.92(m; CH=CH), 5.78−5.89 (m; CH=CH);
29Si NMR (CDCl): −3.6(Si(CHCHCH=CH), 0 (Si(CH);及び
SEC (THF): Mw = 9085, Mn = 2710, 多分散 = 3.35。
【0046】
例6:超分岐ポリカルボシランからの変性炭素の調製
溶液を0.137gの超分岐ポリカルボシランを14.0gのトルエン中に溶解させることにより調製した。この溶液を5.0gの乾燥カーボンブラックに滴下して加えた。溶剤を換気フード中で約3時間蒸発させ、その後、サンプルを上記の標準条件下に焼成し、変性炭素を形成した。
【0047】
ホウ素含有前駆体からの変性炭素の調製
例7:マスター溶液Iの調製
1.51gのポリビニルアルコール(Sigma−Aldrich)を31mLの脱イオン水中に溶解させ、そして一定の攪拌を行いながら80℃に加熱することによりマスター溶液Iを調製した。0.71gのホウ酸(Acros Organics)を14mLの脱イオン水中に溶解させることにより第二の溶液を調製した。この第二の溶液も80℃に加熱した。一定の攪拌を行いながら、このホウ酸溶液をポリビニルアルコール溶液に滴下して加えた。このマスター溶液Iを、その後、一定の攪拌を行いながらゆっくりと冷却した。
【0048】
例8:変性炭素6の調製
イソプロパノールの3.45g部分をマスター溶液Iの2.55g部分に添加した。徹底的に混合した後に、この溶液を2.0gの乾燥炭素に添加した。溶剤を換気フード中で一晩蒸発させ、その後、変性炭素を上記の標準条件下に焼成した。ここで、この材料を変性炭素6と呼ぶ。
【0049】
例9:変性炭素7の調製
イソプロパノールの0.60g部分をマスター溶液Iの5.1g部分に添加した。徹底的に混合した後に、この溶液を2.0gの乾燥炭素に添加した。溶剤を換気フード中で一晩蒸発させ、その後、変性炭素を上記の標準条件下に焼成した。ここで、この材料を変性炭素7と呼ぶ。
【0050】
例10:変性炭素8の調製
イソプロパノールの0.60g部分をマスター溶液Iの5.1g部分に添加した。徹底的に混合した後に、この溶液を2.0gの乾燥炭素に添加した。溶剤を換気フード中で一晩蒸発させ、その後、変性炭素を上記の標準条件下で焼成した。その後、イソプロパノールの0.60g部分及びマスター溶液Iの5.1g部分を用いて、炭素に対して第二の添加を行った。溶剤を換気フード中で一晩蒸発させ、その後、変性炭素を上記の標準条件下に二回目の焼成を行った。ここで、この材料を変性炭素8と呼ぶ。
【0051】
例11:マスター溶液IIの調製
3.0gのポリビニルアルコール(Sigma−Aldrich)を50mLの脱イオン水中に溶解させ、そして一定の攪拌を行いながら80℃に加熱することにより第二のマスター溶液IIを調製した。1.4gのホウ酸(Acros Organics)を20mLの脱イオン水中に溶解させることにより第二の溶液を調製した。この第二の溶液も80℃に加熱した。一定の攪拌を行いながら、このホウ酸溶液をポリビニルアルコール溶液に滴下して加えた。この第二のマスター溶液IIを、その後、一定の攪拌を行いながらゆっくりと冷却した。
【0052】
例12:変性炭素9の調製
イソプロパノールの2.0g部分をマスター溶液IIの15.0g部分に添加した。徹底的に混合した後に、この溶液を5.0gの乾燥炭素に添加した。溶剤を換気フード中で一晩蒸発させ、その後、変性炭素を上記の標準条件下に焼成した。この手順をあと3回繰り返し、炭素に対する材料の合計で4回の添加を行った。ここで、最終の焼成の後に、この材料を変性炭素9と呼ぶ。
【0053】
Ptにより活性化された変性炭素の調製
白金(Pt)を、その後、これらの変性炭素に添加し、そして水素流中で還元することにより活性化した。すべての試験で、活性化後に約20%Pt/Cの最終配合量を提供するように白金を添加した。各変性炭素について、この手順により触媒を調製した。
【0054】
変性炭素1、2、3及び5に対して、以下の手順を用いた。
2.8gのエタノール中に溶解させた0.66gのHPtCl・6HO(Acros Chemical)を含む溶液を製造した。この溶液を1.0gの変性炭素に滴下して加えた。換気フード中で一晩乾燥した後に、触媒を1.0in.外径のパイレックスガラスチューブの中央に入れ、触媒をガラスウールのプラグ上に配置した。その後、触媒を水素流中で還元した。このプロセスは、触媒を含むチューブを約100cc/分で約5分間、窒素によりパージすることにより開始する。その後、ガス組成物を、90%水素+10%窒素で約60cc/分に変更し、そしてファーネスを室温から250℃に10℃/分で触媒床を加熱するようにプログラムした。250℃に到達した後に、触媒床をその温度に2時間維持し、その後、室温に冷却して戻した。これは触媒の活性化した(還元された)形態であり、ここで、触媒1、2及び3である。
【0055】
0.33gのHPtCl・6HO(Acros Chemical)を1.4gのエタノール中に溶解させたことを除き、変性炭素4の手順と同様であった。この溶液を、その後、0.5gの変性炭素4に滴下して加えた。ここで、それは触媒4である。
白金を変性炭素4に添加するために使用した手順をすべてのホウ素変性炭素(6,7,8及び9)にも用い、触媒6,7,8及び9を形成した。
【0056】
例14:標準触媒(Std)の調製
7.7gのエタノール中に溶解させた1.57gのHPtCl・6HO(Acros Chemical)を含む溶液を製造した。この溶液を2.45gの変性炭素に滴下して加えた。活性化手順は、変性炭素触媒上で白金について使用されたのと同一の活性化手順であった。
【0057】
例15:MEA調製
「デカールトランスファー」法(たとえば、Hoogers, Gregor ed., Fuel Cell Technology Handbook, CRC Press, Boca Raton, pp 4−18, 2003)により、試験のためのMEAを製造したが、機能性燃料電池のいかなる製造方法も許容されうる。たとえば、適切なスラリー中の触媒を、メンブレン上に直接的にスプレイするか、又は、触媒をガス分散層に添加し、その後、この層をメンブレンの両側でプレスすることができる。
【0058】
A.触媒「インク」からトランスファーデカールを調製するために使用される一般手順は下記のとおりである:
テフロン被覆したガラスファイバーマットの正方形片(各辺で3.0in.)のマスクを外し、中央の1.0in.部分を用意した。この手順を第二のマットで繰り返した。0.15gの炭酸プロピレン、0.05gのイソプロパノール、0.03gの、Nafion(商標)イオノマーの10%溶液、及び、0.011gの還元20%Pt/C触媒からスラリーを製造した。徹底的に混合した後に、このスラリーを2つのマットの中央のマスクを外した部分に均一に添加した。その後、マットから溶剤を蒸発させた。その後、二回目の同一のコートを適用した。乾燥後に、これらのデカールはMEAを製造する準備ができていた。
【0059】
B.Nafionメンブレンのナトリウム形態への転化の手順
Nafion(1035)正方形片(各辺で3.0in.)を、塩化ナトリウムの1.0モル溶液を含む浴に入れた。その後、メンブレンを含むこの浴を約65℃に加熱し、その温度に1時間維持した。その後、メンブレンを溶液から取り出し、そして乾燥した。使用の直前に、このメンブレンをホルダーに入れ、そして70℃の真空炉中に入れそしてそこに1時間維持した。この真空乾燥したメンブレンはMEAを製造する準備ができていた。
【0060】
C.MEAの調製
真空乾燥したNafion1035の片をメンブレンとして用い、その後、1つのインク被覆マットを、インク面を下にしてメンブレン上に配置し、そして第二のマットをインク面を上にして第一のメンブレンの下に配置した。その後、このアセンブリを2つのViton(商標)プレスパッドの間に配置した。その後、この全体のアセンブリを2つの金属板の間に配置し、そして事前に約210℃に加熱された液圧プレスに入れた。ゲージが2000psiの読み値となるまで圧力を加え、その後、その条件を15分間維持した。このアセンブリを、一定圧力を維持しながら約室温に冷却した。圧力を開放した後に、アセンブリをプレスから取り出し、そしてマットをメンブレンから注意深く剥離した。
【0061】
使用前に、硫酸0.5モル浴中にMEAを入れることにより、アセンブリを酸浴に入れてナトリウム形態からプロトン形態に転化した。MEAを含む浴を80℃に加熱し、その温度に1時間維持した。MEAを脱イオン水で濯ぎ、その後、脱イオン水浴中に入れた。その後、浴を80℃に加熱し、1時間維持した。MEAを浴から取り出し、そして乾燥した。MEAは、これで、Fuel Cell Technologies, Inc.により製造された試験スタンド中で試験される前に、両面にガス拡散層を追加する準備ができていた。
【0062】
MEA1は触媒1を用いて製造し、そして変性炭素1から出発した。
同様に、MEA2は触媒2を用いて製造し、そして変性炭素2から出発した。
同様に、MEA9まで続けた。
このように、試験のために用いたMEAプロセスは、一般的に、下記のとおりに記載されうる。
1.炭素を乾燥し又は変性炭素を製造する。
2.Pt前駆体を変性炭素又は炭素に添加する。
3.水素流中でPt/Cを金属に還元する。
4.「インク」スラリー(溶剤+触媒+イオノマー)を製造する。
5.2つのTeflon被覆ファイバーグラスマット上にインクを被覆する。
6.Nafionメンブレンをナトリウム形態に転化させる。
7.メンブレンの上に1つのインク被覆マットを配置し(インク面を下に)、そして第二のマットをメンブレンの下に配置する(インク面を上に)。
8.このアセンブリを、加熱された液圧プレス中でプレスする。
9.マットをメンブレンから剥離する(このとき、触媒はメンブレンの前及び後の両面に付着している)。
10.ナトリウム形態をプロトン形態へと転化させて戻す。
11.燃料電池試験スタンド中にMEAを配置する前にガス拡散層(GDL)を追加する。
この仕上げられた燃料電池は、5層MEA(GDL−触媒−メンブレン−触媒―GDL)と考えられる。
【0063】
例16:MEA試験
MEAの2つの重要な特性がある−初期活性及び長期耐久性。試験した幾つかの触媒では、初期活性は所望されるよりも低く、そのため、長期耐久性の研究を行わなかった。MEAの耐久性を試験するために、下記の表2においてメトリックスを用いて加速応力試験を行った。
【0064】
【表2】

【0065】
MEAを30秒ごとに高圧から低圧へ交互にスイッチングする多数の電圧変化に付した。5000回のサイクル後のたびに、サイクルを止め、分極曲線を生成することにより活性測定を行った。活性損失vs時間を、一定電流密度0.80アンペア/cmで電圧変化を記録することにより測定した。所与のサイクル数の後の活性は、このようにして、MEAの早期の活性と容易に比較できた。結果を下記の表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
図4は30,000回サイクルの後のMEA3の分極曲線を示す。
これらの変性剤に添加により調製した触媒はMEAの寿命に大きな効果を有することができることが明らかである。特に、カルボシラン前駆体を用いて製造した触媒はMEAの寿命及び安定性を劇的に改良することができる。
【0068】
本発明をその好ましい実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者は、本開示を読みそして理解した際に、上記のとおり又は以下の特許請求されたとおりの発明の範囲及び精神を逸脱することなく適切な変化及び変更がなされてよいことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性された炭素担体の表面が、表面共有結合炭化物を含む、変性炭素担持金属触媒。
【請求項2】
前記表面共有結合炭化物が、炭化ケイ素を含む、請求項1に記載の変性炭素担持金属触媒。
【請求項3】
前記表面共有結合炭化物が、炭化ホウ素を含む、請求項1に記載の変性炭素担持金属触媒。
【請求項4】
前記金属が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、金(Au)及び銀(Ag)のうちの1種以上を含む、請求項1、2又は3に記載の変性炭素担持金属触媒。
【請求項5】
前記金属が、白金(Pt)である、請求項4に記載の変性炭素担持金属触媒。
【請求項6】
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)又はクロム(Cr)をも含む混合触媒が使用される、請求項4に記載の変性炭素担持金属触媒。
【請求項7】
a.溶剤中に炭化物前駆体を溶解させ、炭化物前駆体含有溶液を形成すること、
b.炭化物前駆体含有溶液を1,000℃未満の温度で滴下して、炭素担体材料に添加すること、
c.炭化物前駆体含有溶液及び炭素担体材料を焼成して、変性炭素担体を形成すること、
d.塩化白金酸及びエタノール溶液を変性炭素担体に添加し、変性炭素担持触媒を形成すること、
e.変性炭素担持白金触媒を乾燥すること、及び、
f.還元剤を用いて変性炭素担持白金触媒を還元し、活性化変性炭素担持白金触媒を形成すること、
の工程を含む、請求項1に記載の変性炭素担持Pt触媒の調製方法。
【請求項8】
前記炭化物前駆体が、950℃未満の温度で分解して、炭化ケイ素を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化物前駆体が、アリルヒドリドポリカルボシラン又は超分岐ポリカルボシランである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭素担体材料が、カーボンブラックである、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の変性炭素担持金属触媒を含む、触媒された電極。
【請求項12】
請求項10に記載の触媒された電極を含む、ポリマー電解質燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513469(P2013−513469A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543223(P2012−543223)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059369
【国際公開番号】WO2011/071971
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
2.テフロン
【出願人】(591184459)
【Fターム(参考)】