説明

改良された耐火性バリヤー積層物およびこれらから作られた物品

本発明は、耐久防液性積層物および積層物から作られる物品の製造に関し、積層物は少なくとも一つのバリヤー層および少なくとも一つの耐火性織布層を組入れていて、布層は約2.5オンス/平方ヤード以下の質量を有している。この積層物を組入れた被服、保護カバーおよび他の保護物品についても記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリヤー層および少なくとも一つの耐火性布層を組入れた防液性および耐火性積層物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆布複合材料あるいは布および防液性バリヤー膜層の積層物を使用して防液性保護を作ることは産業界で周知である。これらの応用の最も一般的なものは防水通気性衣料品である。代表例は、ゴアテックス(GORE−TEX)の登録商標名で、W.L. Gore and Associatesにより販売されている積層材料であり、これらの材料は一つあるいは二つ以上の布層に積層あるいは接合された防水通気性フィルムを含む。これらの積層物は衣料品に二次加工され、ゴアテックス(GORE−TEX(登録商標))被服などとして販売される。被覆布はまた、これらと同じ目的で布複合材料に使用できる。被覆布および保護バリヤー膜又はフィルムの積層物は、以降、記述の便宜上単に積層物と総称する。最終物品の必要に応じて、積層物はいろいろな層の構造物を含むことができる。例えば、通常の三層積層構造物は、典型的には、少なくとも一つのニット布層を組入れてこの層にシームシールできるようにする。
【0003】
防火安全サービスについて特に要求が過酷な分野では、これらのより厳しい環境に耐えうる布が必要とされ、そのことが、使用の際に起る曲げや摩耗の後であっても、防液性を保持する積層構造物を形成するという難問を招く。例えば、高度の耐火性を有する布は、典型的には、グラスファイバー、アラミド、メラミンなどの繊維を含む。布自身の組成は、接合あるいは積層において、バリヤー層と布材料の間に耐久性接合を作り出すというさらなる難問を招く場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、耐火性などのような広範な過酷な要求のある環境条件に合致する防液性物品に容易に形成可能な、軽くて、丈夫で、可撓性で耐久防液性の、バリヤー層を含む積層物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
定義:ここで使用されているように、これらの術語は以下のように定義される。
【0006】
“積層物”は、複合材料となる複数の可撓性層からなる可撓性物品である。
【0007】
“バリヤー層”あるいは“機能層”あるいは“保護層”(あるいは“フィルム”)は、少なくとも液状水透過に対する、理想的にはある範囲の液状および蒸気の化学的攻撃および生物学的攻撃に対するバリヤーを提供するフィルムあるいは被膜と定義される。層が3分以上の時間0.07bar(1psi)以上の圧に抗して液状水の透過を防ぐならば、この層は防液性と見なされる。保護層材料は、好ましくは0.07bar(1psi)を超える圧力での液状水透過の防止を保証する。ある圧力での液状水の透過の防止は、ここに述べる防液性シームについてのスーター試験(Suter Test for Liquidproof Seams)について記載されているのと同じ条件に基づいて防液性パネルで測定される。
【0008】
“シーム”は、二片あるいは三片以上の、あるいは二つあるいは三つ以上のパネルの積層物が縫製、接着あるいは他の機械的接合により接合されている領域として定義される。
【0009】
“防液性シーム”は、3分間以上の時間0.07bar(1psi)以上の圧力で試験液に攻撃された時、液体を漏らしたり染み出させたりしないシームである。試験液は、少なくとも水であり、理想的にはある範囲の液体薬品であってよい。
【0010】
“耐火性織布”は、垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)に合格できる織布である。
【0011】
“通気性”は、材料を通過して水蒸気を移送する能力を有していると定義される。
【0012】
カバーファクター(“cover factor”あるいは“coverage factor”)は、織布中の織の開いている性質の尺度であり、次のように定義される:
*CFtotal=CFm+CFt
【数1】

CFmはたて糸のカバーファクター
CFtはよこ糸のカバーファクター
Fmはたて糸の繊度(dtex)
Ftはよこ糸の繊度(dtex)
Dmはたて糸の密度(本/2.54cm)
Dtはよこ糸の密度(本/2.54cm)
【0013】
本発明は、軽くて、丈夫で、可撓性で耐久防液性の、バリヤー層を含む積層物を対象としており、この積層物は広範な過酷な要求のある環境条件に合致する防液性物品に容易に形成できる。具体的には、本発明は一実施態様において、少なくとも一つのバリヤー層および少なくとも一つの耐火性織布層を組入れた積層物を対象とし、この織布層は約2.5オンス/平方ヤード以下の質量を有する。より好ましい実施態様において、本発明の積層物は少なくとも一つのバリヤー層と少なくとも一つの耐火性織布層を組入れ、この織布層は約0.9〜2.5オンス/平方ヤードの質量を有する。さらに好ましい実施態様において、この耐火性織布層は1〜2オンス/平方ヤードの質量、さらにより好ましくは1.6〜1.8オンス/平方ヤードの質量を有していてよい。さらなる実施態様において、この少なくとも一つの耐火性織布層は好ましくは約1,800以下、より好ましくは約1,400以下のカバーファクターを有する。本発明の耐火性布に適当な組成物は、グラスファイバー、メタアラミド、パラアラミド、メラミン、PBI、PBOなどのような材料(このような材料のブレンドおよび組み合わせを含む)を含むが、これらに限られず、また望ましい最終使用に応じて特定の望ましい機能性のための成分としての他の材料を含んでいてよい。
【0014】
驚くことに、2.5オンス/平方ヤード未満の質量を有する耐火性織布を組入れた適当な積層構造物を、二次加工し耐久防液性の物品に組入れることができることが発見された。さらに驚くことに、これらの低質量布(布はさらに1,800以下のカバーファクターを有する)を組入れた実施物を、二次加工し耐久防液性の物品に組入れることができることが発見された。
【0015】
本発明の積層物用の適当なバリヤー層に、保護膜、フィルムあるいは被膜が含まれてもよい。バリヤー層は、ポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ブチルゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アイオノマー、フッ素化エチレンプロピレン、パーフルオロアルコキシ樹脂、ウレタン、ポリウレタン、THV、ポリオレフィン、アクリル樹脂、天然ゴム、フルオロエラストマー、エチレンビニルアセテート、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリカーボネート、シリコーン、ポリアクリレート、エーテルエステル共重合体、エーテルアミド共重合体、およびこれらの組み合わせを含む材料からなる群から選択できるが、これらに限られない。防水通気性の用途については、バリヤー層が延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から形成されるのが好ましい。延伸ポリテトラフルオロエチレンは、非常に防水性で高度に通気性であることが知られている。ePTFEには公知の方法で親水性ポリマーの被膜を付与してよい。このような積層物は、好ましくは1,500g/m2/日を超える(特に3,000g/m2/日を超える)水蒸気透過率および3分以上の時間0.07barを超える水進入圧を提供し得る。薬品防護の用途については、W.L. Gore Associates, Inc.(メリーランド州エルクトン)から入手できるゴアケムパック(GORE CHEM−PAK(登録商標))布帛、DuPont(デラウェア州ウイルミントン)から入手できるナフイオン(NAFION(登録商標))などのフッ素化スルホン酸共重合体、およびStedfast, Inc.(カナダ、ケベック州)から入手できるペプゲル(PEPGEL(登録商標))などのポリエチレンイミンとポリビニルアルコールの共重合体などの不透過性あるいは選択透過性の層を組入れた積層物が好ましいであろう。
【0016】
望ましい最終使用に応じて、バリヤー層の厚さは広範に変えることができる。バリヤー層の好ましい厚さは、約200μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらには50μm以下、そしてさらには20μm以下と薄い範囲にある。上で述べたように、バリヤー層の組成物は最終使用に適していればよく、また望ましい最終使用に応じて、バリヤー層は通気性あるいは非通気性でよい。
【0017】
追加の布層を、上に述べた積層物に組入れてよい。例えば、本発明によれば、2.5オンス/平方ヤード未満の質量を有する少なくとも一つの耐火性織布が接合されている面と反対側のバリヤー層の面あるいは表面上に、一つあるいは二つ以上の追加の布層を付与することが可能である。この追加のあるいは第二の布層は最終用途に適した任意の構造物を含んでもよい。例えば、この少なくとも一つの第二の布層は、最終用途の要求に合致させるのに必要ならば、いろいろな質量、厚さおよびカバーファクターの織構造物、不織構造物あるいはニット構造物を含んでもよい。この少なくとも一つの第二の布層に関して、多層の布層もまた考えられる。本発明の一実施態様において、第二の布層は、2.5オンス/平方ヤード未満の質量を有する耐火性織布と同じあるいは類似の構造であってよい。代りに、この少なくとも一つの第二の布層は、2.5オンス/平方ヤード未満の質量を有する耐火性織布とは異なる構造を有していてもよい。このようにして、本発明にしたがっていろいろな積層構造物に合うように作るのに、重要な設計に関する選択項目が存在する。
【0018】
本発明の物品は、本発明の新規な積層物に独特な特性を生かしたいろいろな形態に二次加工できる。当業者に明らかな防液性シーム技術を使って、最終組立て構造において有益な防液特性を維持する望ましい形態に、積層物パネルを組立ててもよい。例えば、本発明により作られた適当な物品には、身体のすべての部分を保護するための被服、保護カバー、装置および供給のカバーおよび他のこのような保護物品が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の独特な積層物および物品は、従来の材料よりも多くの利点を提供する。殊に、本発明は、いろいろな軽量かつ防液性の構造物に二次加工できる軽量、耐火性および防液性の積層物、および広範な過酷な要求のある環境条件に耐えうる物品を提供する。
【0020】
先に述べたように、一実施態様において本発明は、少なくとも一つのバリヤー層および少なくとも一つの織布層を組入れている積層物を対象とし、耐火性布層は約2.5オンス/平方ヤード以下の質量を有する。驚くことに、2.5オンス/平方ヤード未満の質量を有する耐火性織布を組入れた適当な積層構造物を、二次加工し耐久防液性の物品に組入れることができることが発見された。さらに驚くことに、これらの低質量布(布はさらに1,800以下、あるいはなお1,400以下のカバーファクターを有する)を組入れた実施物を、二次加工し耐久防液性の物品に組入れることができることが発見された。図1を参照すると、本発明における使用に適した約1,100のカバーファクターを有する布の上面写真が、インチで示される定規目盛りと一緒に示されている。
【0021】
追加の布層を上記の積層物に組入れることができる。例えば、片側が約2.5オンス/平方ヤード以下の質量を有する耐火性布層に接合され、他の側が異なる布に接合されたバリヤー層を含む、積層構造物が考えられる。その代わりに、本発明の積層構造物が、約2.5オンス/平方ヤード以下の質量を有する耐火性布層がバリヤー層の両側に配置されている構造物であってもよい。
【0022】
本発明の目的のために、材料の積層を、任意の適当な従来の積層技術により行ってもよい。例えば、一つの技術において、接着剤のドットパターンを接合される一つあるいは二つ以上の層にグラビアロールにより適用してもよく、これらの材料を圧力ロールの間を通して硬化することによって積層が行われる。その代わりに、連続積層工程中あるいはバッチ積層によって適用される、連続した接着剤を使用してもよい。
【0023】
本発明の物品は、本発明の新規な積層物に独特な特性を生かしたいろいろな形態に二次加工できる。当業者に明らかな防液性シーム技術を使って、最終組立て構造において有益な防液特性を維持する望ましい形態に、積層物パネルを組立ててもよい。例えば、本発明の一実施態様において(図2を参照)、積層物パネル10、10’の間のシームが示されていて、各積層物パネルはバリヤー層12、12’および耐火性織布層20、20’を含む。ステッチライン22および25は積層物パネル10、10’を縫い付け、シームテープ15がシームを覆い、織布層20、20’に接合して防液性シームを形成する。当業者に明らかな他の保護物品もまた本発明の範囲内にあると考えられる。
【0024】
本発明の実施態様は、以下の実施例を参照して、あくまでも例として述べられる。
【0025】
試験法
布/積層物の質量の測定:3 1/2インチの円を材料試料から切取り、試料の質量を量り、試料の単位面積当りの質量をオンス/平方ヤードによる単位面積当りの質量に換算することによって材料の質量が決定される。
【0026】
防液性シームについてのスーター試験(Suter Test for Liquidproof Seams):継合わされた試料が防液性かどうかを決定するために、スーター試験法を使った。この方法は概ね、ASTM D 751−00、被覆布帛についての標準試験法(静水圧抵抗法B2)(ASTM D 751−00, Standard Test Methods for Coated Fabrics (Hydrostatic Resistance Procedure B2))に基づく。この方法は、水を試験試料の片側に水を押付け、水が試料を通り抜けて透過した徴候について他の側を観察することにより試験する試料に低圧の攻撃を加えるものである。
【0027】
試料を保持する固定具内のラバーガスケットの間で、試験試料をクランプ締めしシールして特定の領域に水が適用できるようにした。継合わされた試料については、水が適用される領域は4.25インチ径であり、シームはこの領域の中心にあった。水は、試料の片側に1psig(0.07bar)の圧力で適用された。シールされたシームの試験において、水を反対側に適用しながら、試料のシームテープ側を水漏れについて観察した。
【0028】
試料のシームテープ側を、3分間水の出現の徴候について肉眼で観察した。水が観察されなければ、試料は試験に合格したと見なして、防液性と見なした。
【0029】
薬品透過試験:組立てられた積層物試料のシールされたシームの試料を、ASTM F903、液体による透過に対する保護衣類材料の抵抗についての標準試験法、曝露法C(ASTM F903, Standard Test Method for Resistance of Protective Clothing Materials to Penetration by Liquids, using exposure Procedure C)にしたがい、3%濃度の水性フィルム形成性発泡体(Aqueous film−forming foam (AFFF))と、ASTM D471、ゴム特性−液体効果についての標準試験法 (ASTM D 471, Standard Test Method for Rubber Property−Effect of Liquids)で規定されるサロゲートガソリン燃料C(Surrogate gasoline fuel C)(トルエンおよびイソオクタンの50/50体積パーセント)を用いて液体の透過抵抗について試験した。試料が液体透過の徴候を示さなければ、試料は薬品透過試験を合格したことにする。
【0030】
通気性/水蒸気透過試験:積層構造物の試料を、ASTM F 1868、発汗防護型ホットプレートを使用した衣類材料の熱および蒸発抵抗についての標準試験法パートC(ASTM F1868, Standard Test Method for Thermal and Evaporative Resistance of Clothing Materials Using a Sweating Guarded Hot Plate using Part C)にしたがって総熱損失試験(Total Heat Loss Testing)することにより、通気性を決定した。
【0031】
垂直燃焼試験:垂直耐燃性(vertical flame resistance)は、FED−STD−191A 方法 5903.1、衣類の耐燃性、垂直(FED−STD−191A Method 5903.1, Flame Resistance of Cloth; Vertical)にしたがい測定した。垂直可燃性試験器(Vertical Flammability Tester Model 7635A、ニュージャージー州ホボケン、United States Testing Co., Inc.)と一緒にメタンガス(純度99%)を使用した。試験片寸法は3インチ×12インチであった。試料は試験前に70±2°Fおよび相対湿度65±2%で少なくとも24時間状態調整をした。
【0032】
残炎が2秒未満で、炭化物長さが100mm未満で、試験中に試験片が溶解あるいはドリップしないならば、試験片は耐燃性であるとした。
【実施例】
【0033】
例1:バリヤー膜を布層に接合することにより積層物を形成した。バリヤー膜はポリテトラフルオロエチレンを組入れていて、概ね米国特許No.5,418,054の教示により調製された(部品番号 4410030、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)。米国特許No.4,532,316の教示により調製された湿気硬化性ポリウレタン接着剤をこの膜表面にグラビア印刷して膜表面の約40%を覆い、ついでニップロール中でこの二層を圧着することにより、この膜を下記の織布層に貼り付けた。この布は、約95%のメタアラミド繊維、約3%のパラアラミド繊維および約2%の帯電防止繊維を含む織糸から構成され、この布は約1.7オンス/平方ヤードの質量があり、約1,120の総カバーファクターを有する(部品番号 WCBZ100、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)。
【0034】
得られた積層物は約2.9オンス/平方ヤードの質量があった。
【0035】
例2:バリヤー膜を布層に接合することにより積層物が形成された。バリヤー膜は、部品番号 PT9700、ゲージ0085(Deerfield Urethane, Inc.(マサチューセッツ州ホエートリー))として入手できる耐火性のポリウレタンフィルムであった。不織ホットメルト接着ウエブ(部品番号 PAIS41−050−060P、Spunfab, Ltd.(オハイオ州カイアホガフォールズ))を使用し、加熱プレスを5秒間用いて熱(325°F)および圧力を積重ねた層に加えることにより、この膜を実施例1で述べたのと同じ組成を有する布層に貼り付けて、積層物を形成した。
【0036】
得られた積層物は約8.3オンス/平方ヤードの質量があった。
【0037】
例3:便宜上ここではシェル(仕上がり被服中の配置について外側)布およびライナー(仕上がり被服中の配置について内側)布と呼ぶ、二つの織布層の間にバリヤー膜を接合することにより積層物を形成した。バリヤー膜は実施例1で述べたのと同じであった。先ずバリヤー膜の両側に実施例1に述べた湿気硬化性ポリウレタン接着剤をグラビア印刷して各側で膜表面の約30〜40%を覆うことによって、シェル布とライナー布の間にバリヤー膜を積層した。シェル布層、バリヤー層およびインナー布層を積重ね配列で配置し、ニップロールを通過させてこれらの層を圧着した。シェル布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から製造され、約3.3オンス/平方ヤードの質量があった(部品番号 WNPZ100、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)。ライナー布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から製造され、約1.7オンス/平方ヤードの質量があり、約1,120の総カバーファクターを有していた(部品番号 WCBZ100、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates, Inc)。得られた積層物は、約6.9オンス/平方ヤードの質量があった。
【0038】
本実施例により形成された試料を、薬品透過性についてここで先に述べた薬品透過試験(Chemical Permeation Test)を用いて試験したが、曝露法は、3%濃度の水性フィルム形成性発泡体(AFFF)を用いる方法C(Procedure C)であった。この試料は液体透過の徴候を示さなかったので、薬品透過試験(Chemical Permeation Test)に合格した。
【0039】
本実施例により形成された別の試料を、ここで先に述べた垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)を使って耐燃性について試験した。結果を下表に報告する。
【0040】
【表1】

【0041】
本実施例により形成された別の試料を先ず、AATCC 135の機械サイクル1、洗濯温度V、および乾燥法Ai、織物および編物の自動家庭洗濯における寸法変化(Machine Cycle 1, Wash Temperature V, and Drying Procedure Ai of AATTCC 135, Dimensional Changes in Automatic Home Laundering of Woven and Knit Fabrics)で規定される方法にしたがって5サイクルの洗濯と乾燥を行うことにより、予備調整した。投入量1.82kg±0.1kgを使用した。ついで、垂直燃焼試験(Vertical Flame Test)を使って、予備調整した試料を耐燃性について試験した。得られた結果を下表に報告する。
【0042】
【表2】

【0043】
本実施例により形成された別の試料を、先に述べた通気性/水蒸気透過試験(Breathability/Moisture Vapor Transmission Test)を用いて、通気性について試験した。得られた総熱損失値は659W/m2であった。対照として、ライナー層を類似の質量のニットで置き換えた比較積層構造物は570W/m2の総熱損失値を生じた。本実施例の構造物および比較構造物の積層物の質量は6.9オンス/平方ヤードであった。
【0044】
例4:便宜上ここではシェル(仕上がり被服中の配置について外側)布およびライナー(仕上がり被服中の配置について内側)布と呼ぶ、二つの織布層の間にバリヤー膜を接合することにより積層物を形成した。バリヤー膜は米国特許No.6,395,383(部品番号 64193、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)の教示によりポリテトラフルオロエチレンから製造された。先ずバリヤー膜の両側に実施例1で述べた湿気硬化性ポリウレタン接着剤をグラビア印刷して各側で膜表面の約30〜40%を覆うことによって、シェル布とライナー布の間にバリヤー膜を積層した。シェル布層、バリヤー層およびインナー布層を積重ね配列で配置し、ついでニップロールを通過させてこれらの層を圧着した。シェル布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から製造され、約3.3オンス/平方ヤードの質量があった(部品番号 WGPZ000、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)。ライナー布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から製造され、約1.7オンス/平方ヤードの質量があり、約1,120の総カバーファクターを有していた(部品番号 WCBZ100、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates, Inc)。
【0045】
得られた積層物は、約7.4オンス/平方ヤードの質量があった。
【0046】
例5:便宜上ここではシェル(仕上がり被服中の配置について外側)布およびライナー(仕上がり被服中の配置について内側)布と呼ぶ、二つの織布層の間にバリヤー膜を接合することにより積層物を形成した。バリヤー膜は実施例1で述べたのと同じ膜であった。この膜を、米国特許No.4,532,316の教示にしたがい調製された湿気硬化性ポリウレタン接着剤をグラビア印刷して膜表面の約40%を覆うことによって、以下に述べるライナー布に積層した。この膜とライナー布層をニップロール中で圧着した。以下に述べるシェル布を、実施例2で述べた不織ホットメルト接着ウエブ(部品番号 PAIS41−050−060P、オハイオ州カイアホガフォールズ、Spunfab, Ltd.)を使用して残りの露出している膜バリヤー層表面に貼り付けた。このシェル布はPBI(登録商標)繊維およびKelvar(登録商標)繊維を含む糸から作られ、約7.0オンス/平方ヤードの質量があった(PBI Gold Plus 70としてサウスカロライナ州グリーンビルのSafety Components Fabric Technologies, Incで入手できる)。ライナー布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から作られ、約1.7オンス/平方ヤードの質量があり、約1,120の総カバーファクターを有していた(部品番号 WCBZ100として、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates, Incで入手できる)。
【0047】
得られた積層物は、約10.1オンス/平方ヤードの質量があった。
【0048】
例6:耐火性織布層および不織層に挟まれたバリヤー膜を含む積層物を形成した。バリヤー膜は、ポリテトラフルオロエチレン(部品番号 11544NAとして、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associatesで入手できる)から作られた。この膜の片側を、約3.0オンス/平方ヤードの重さがあり、メタアラミド繊維およびパラアラミド繊維からなる不織布(部品番号 NOMX008NW、W.L. Gore & Associatesで入手できる)に、米国特許No.4,532,316の教示にしたがい調製されたホットメルト湿気硬化性ポリウレタン接着剤の連続層(接着剤厚さ約0.001インチ)を使って、米国特許No.5,026,591に概ね述べられている方法で積層した。この膜の他の側を、不織ホットメルト接着ウエブ(部品番号 PAIS41−050−060P、Spunfab, Ltd.(オハイオ州カイアホガフォールズ))を使用して、織布層に貼り付けた。この織布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から作られ、約1.7オンス/平方ヤードの質量が有り、約1,120の総カバーファクターを有する(部品番号 WCBZ100として、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associatesで入手できる)。
【0049】
得られた積層物は、約6.2オンス/平方ヤードの質量があった。
【0050】
例7:同一組成の二つの織布層に挟まれたバリヤー膜を含む積層物を形成した。バリヤー層は実施例1に述べたのと同じであった。先ずバリヤー膜の両側に実施例1に述べた湿気硬化性ポリウレタン接着剤をグラビア印刷して各側で膜表面の約30〜40%を覆うことによって、以下に述べる二つの布層の間にバリヤー膜を積層した。第一の織布層、バリヤー層および第二の織布層を積重ね配列で配置し、ついでこれらの層をニップロールを通過させて圧着した。これらの各布層は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から作られ、約1.7オンス/平方ヤードの質量があり、約1120の総カバーファクターを有していた(部品番号 WCBZ100として、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associatesで入手できる)。
【0051】
得られた積層物は、約5.0オンス/平方ヤードの質量があった。
【0052】
例8:織布層とニット層に挟まれたバリヤー膜を含む積層物を形成した。バリヤー膜は実施例1に述べたのと同じであった。この膜を、米国特許No.4,532,316の教示により調製された湿気硬化性ポリウレタン接着剤をグラビア印刷して膜表面の約40%を覆うことによって、下記の織布層に貼り付けた。ニップロール中でこの二層を圧着した。不織ホットメルト接着ウエブ(部品番号 PAIS41−050−060P、オハイオ州カイアホガフォールズ、Spunfab, Ltd.)を使用して、膜の残りの露出している表面を下記のニット布層に貼り付けた。織布は、パラアラミド繊維、メタアラミド繊維および帯電防止繊維を含む糸から作られ、約1.7オンス/平方ヤードの質量が有り、約1,120の総カバーファクターを有する(部品番号 WCBZ100として、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associatesで入手できる)。ニット布層は、パラアラミド糸から作られ、約1.8オンス/平方ヤードの質量があった(部品番号 KRDZ600として、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates, Inc で入手できる)。
【0053】
得られた積層物は、約4.9オンス/平方ヤードの質量があった。
【0054】
例9:実施例3で形成された積層構造物の二つのパネルを、各パネルのシェル布層を接触させて積重ねた。これらのパネルの一端に沿ってシームを縫って二つのパネルを接合した。この二つのパネルを開き、ライナー布を上に向けてシームを露出させ、シーム端を片側に折重ね、シームテープ(部品番号 8GNAJ025NATX、メリーランド州エルクトン、W.L. Gore & Associates)が全シーム領域に拡がってライナー布に接着して、防液性シームを形成するように、縫われたシーム上にそのシームテープを置いた。
【0055】
次に、継合わされたパネルについて、先に述べた防液性シームについてのスーター試験(Suter Test for Liquidproof Seams)を行った。試料は、3分間1psiのスーター試験に合格し、なお防液性であった。
【0056】
上記のようにして二次加工された追加の継合わされた積層構造物を、Q9熱バリヤー材料の層に対する7.5オンス/平方ヤードの天然Nomexの層がない、NFPA 1971、 2000版、セクション6−28.7.1 (NFPA 1971, 2000 edition section 6−28.7.1)による複合物へと縫った。縫った複合物はNFPA 1971、 2000版、セクション6−28.3.5.(NFPA 1971, 2000 edition Section 6−28.3.5)の予備調整の要件にしたがった。各複合物の継合わされたシームの試料を、ASTM F903、液体による透過に対する保護衣類材料の抵抗についての標準試験法、曝露法C(ASTM F903, Standard Test Method for Resistance of Protective Clothing Materials to Penetration by Liquids, using exposure Procedure C)にしたがい、3%濃度の水性フィルム形成性発泡体(Aqueous film−forming foam (AFFF))と、ASTM D471、ゴム特性−液体効果についての標準試験法(ASTM D 471, Standard Test Method for Rubber Property−Effect of Liquids)で規定されるサロゲートガソリン燃料C(Surrogate gasoline fuel C)(トルエンおよびイソオクタンの50/50体積パーセント)を用いて液体の透過抵抗について試験した。
【0057】
試料は両液体の攻撃に合格した(液体透過の徴候を示さなかった)。
【0058】
例10:実施例7で形成された積層構造物の二つのパネル(バリヤー層の各側上には同じ織布)を積重ねた。これらのパネルの一端に沿ってシームを縫って二つのパネルを接合した。この二つのパネルを開き、シーム端を上に向けてシームを露出させ、シーム端を片側に折重ね、シームテープ(部品番号 TAF−880テープ、Adhesives Films, Inc.)が全シーム領域に拡がってライナー布に接着して、防液性シームを形成するように、縫われたシーム上にそのシームテープを置いた。
【0059】
次に、継合わされたパネルについて、先に述べた防液性シームについてのスーター試験(Suter Test for Liquidproof Seams)を行った。試料は、3分間1psiのスーター試験に合格し、なお防液性であった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明において使用するのに適当な約1,100のカバーファクターを有する布の上面写真である。
【図2】本発明にしたがって形成された積層物を組入れた、継合わされたパネルの透視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのバリヤー層と、
少なくとも一つの耐火性織布層であって、その布が約2.5オンス/平方ヤード(約0.085kg/m2)以下の質量を有する、少なくとも一つの耐火性織布層と
を含む積層物を含んでなる物品。
【請求項2】
該布が約0.9〜2.5オンス/平方ヤード(約0.030〜0.085kg/m2)の質量を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
該布が約1〜2オンス/平方ヤード(約0.034〜0.068kg/m2)の質量を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
該布が約1.6〜1.8オンス/平方ヤード(約0.054〜0.061kg/m2)の質量を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
該少なくとも一つのバリヤー層がフルオロポリマーを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
該少なくとも一つのバリヤー層が延伸PTFEを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
該少なくとも一つのバリヤー層が通気性である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
該少なくとも一つのバリヤー層が非通気性である、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
該少なくとも一つの布層が約1,800以下のカバーファクターを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
該少なくとも一つの布層が約1,400以下のカバーファクターを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
被服形状の請求項1に記載の物品。
【請求項12】
第一面および第二面を有するバリヤー層と;
少なくとも一つの第一耐火性織布層であって、その第一耐火性織布が約2.5オンス/平方ヤード(約0.085kg/m2)以下の質量を有し該バリヤー層の第一面に接合された、少なくとも一つの第一耐火性織布層と;
該バリヤー層の第二面に接合された少なくとも一つの第二耐火性布と
を含む積層物を含んでなる物品。
【請求項13】
該バリヤー層が複数の層を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
該少なくとも一つの第一耐火性織布層が約0.9〜2.5オンス/平方ヤード(約0.030〜0.085kg/m2)の質量を有する、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
該少なくとも一つの第一耐火性織布層が約1〜2オンス/平方ヤード(約0.034〜0.068kg/m2)の質量を有する、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
該少なくとも一つの第一耐火性織布層が約1.6〜1.8オンス/平方ヤード(約0.054〜0.061kg/m2)の質量を有する、請求項12に記載の物品。
【請求項17】
該少なくとも一つの第一耐火性織布層が約1,800以下のカバーファクターを有する、請求項12に記載の物品。
【請求項18】
該少なくとも一つの第一耐火性織布層が約1,400以下のカバーファクターを有する、請求項12に記載の物品。
【請求項19】
該バリヤー層がフルオロポリマーを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項20】
該バリヤー層が延伸PTFEを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項21】
該バリヤー層が通気性である、請求項12に記載の物品。
【請求項22】
該バリヤー層が非通気性である、請求項12に記載の物品。
【請求項23】
該少なくとも一つの第二耐火性布層が織構造物を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項24】
該少なくとも一つの第二耐火性布層がニット構造物を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項25】
該少なくとも一つの第二耐火性布層が不織構造物を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項26】
該少なくとも一つの第二耐火性布層が、約2.5オンス/平方ヤード(0.085kg/m2)以下の質量を有する少なくとも一つの耐火性織布を含む、請求項12に記載の物品。
【請求項27】
被服形状の請求項12に記載の物品。
【請求項28】
第一積層物パネルおよび第二積層物パネルであって、該積層物パネルがそれぞれ少なくとも一つのバリヤー層および少なくとも一つの耐火性織布層を含み、その布が約2.5オンス/平方ヤード(約0.085kg/m2)以下の質量を有する、第一積層物パネルおよび第二積層物パネルと;
この少なくとも二つの積層物パネルを接合する、少なくとも一つの防液性シームと
を含んでなる物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−504444(P2009−504444A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526031(P2008−526031)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028624
【国際公開番号】WO2007/021459
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】