説明

改良された膜モジュール

【課題】改良された中空繊維膜モジュールを提供する。
【解決手段】芯部を有し、芯部上に半透性の中空繊維層が螺旋状に複数巻かれた中空膜モジュールが提供される。任意の1つの繊維層に対する繊維巻付角度は、一方または両方の端部または管板領域を除いてモジュールの軸方向長さに沿って実質的に一定であることができ、径が漸減する区間を作り出すために、複数の層のうち少なくとも一部の層において、巻付角度を、実質的に一定の巻付角度に比べて増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離またはガス移送に用いるための中空繊維膜モジュールに関し、より詳細には、ガス流からの水蒸気の除去のための、または1つのガス流からもう1つのガス流への水蒸気の移動のための、改良されたモジュールデザインに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス流の脱水及び1つのガス流から別のガス流への水分の移動のために、水浸透性の中空繊維膜モジュールが商業的に使用されてきた。特許文献1及び2にはガスの脱水に適した膜モジュールが開示されており、両文献は引用を以て本明細書の一部となす。特許文献3にはガスの乾燥または加湿のための膜が開示されている。本発明の特徴を説明するために、ボアサイドフィード型(bore-side feed)ガス脱水モジュールのみを考えるが、この膜モジュールのデザインコンセプトは、前述のガス分離及びガス移送の用途に適用可能である。これらの膜モジュールでは、除去される水分を含む供給ガスが、中空繊維膜のルーメンを通って流れる。供給ガスが膜ルーメンを通って流れるときに、水分が水浸透性膜を透過してモジュールのシェルサイドへ拡散する。このプロセスを維持するために、モジュールのシェルサイドに乾性ガスを注入して、浸透した水蒸気を一掃(スウィープ・アウェイ)する。多くの場合、この乾性スウィープガスは、膜モジュールによって生成される乾性ガスから得られるが、他の原料が用いられることもある。
【0003】
理想的なモジュールでは、各繊維のルーメンが同量のガスフローを受容するのみならず、繊維の外側付近でスウィープガスが均一に分布され、各繊維には同量のスウィープガスが接触する。しかし、実際には、ある程度のスウィープガスの不均等分布が生じ、これが性能を低下させる。この問題を克服するために、追加の膜または追加のスウィープガスフローのいずれかを用いなければならないが、いずれにしてもプロセスのコストが増す。それゆえ、膜モジュールデザイナーは、スウィープフローの不均等分布を最小にし、モジュール性能を最大にするための新たな膜モジュールデザインを絶えず開発しているのである。
【0004】
特許文献4には、芯部の周りに螺旋状に巻かれた中空繊維群を用いてシェルサイドフローを向上させた膜モジュールデザインが開示されている。しかし、特許文献4は、このアプローチの限界は繊維群が実質的に均一長でなければならないことであることを教示しており、実質的に均一長を「浸透装置セルの中空繊維群の有効長は、約20パーセント未満の差で変化することになる」(カラム6、第41〜44行)と定義している。
【0005】
膜モジュールデザインに関連する性能面に加えて、膜モジュールは、種々の用途に対して必要な構造的完全性を有していなければならない。ガス乾燥用途では、ガスは高圧であり、数百psigを超える場合がある。この圧力による力が管板の表面に加えられるので、これらの力及び高温で管板はその構造的完全性を維持しなければならない。膜モジュールを製造するプロセスでは、中空繊維は管板内に埋め込まれる。管板内に繊維が存在すると、中空繊維自体は上記した圧力による力に耐えるように材料の強度を増加させないので、管板の構造的完全性が低下する。管板内の繊維の存在に加えて、管板の強度を低下させる傾向がある他の構成要素も管板に存在しうる。例えば、特許文献5には、管板材料に埋め込まれている不浸透性の層が示されている。不浸透性材料と管板との交わりは、管板材料の不連続性をもたらし、それゆえに管板を弱体化させる。よって、膜モジュールの構造的完全性の向上が絶えず求められている。
【0006】
特許文献6では、円筒形芯管上に巻かれた複数の螺旋状に巻かれた半透性の中空繊維層を含む中空繊維膜モジュールが示されており、ここでは、1若しくは複数の層において繊維巻付角度をモジュールの軸方向長さ方向にわたって変化させている。一実施形態では、管板領域における繊維の巻付角度は、モジュールのアクティブ領域における巻付角度とは異なる(より小さい)。しかし、特許文献6のどの実施形態でも管板内のモジュールの径は管板の径と実質的に同じである。それゆえ、管板におけるポッティングエリアの多くは、繊維端部によって占められている。従って、管板の完全性は、この構成によって損なわれる。さらに、この場合には、アクティブでない繊維の長さがより長いので、供給ガス圧力損失がより大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,585,808号明細書
【特許文献2】米国特許第6,616,735号明細書
【特許文献3】米国特許第6,779,522号明細書
【特許文献4】米国特許第4,881,995号明細書
【特許文献5】米国特許第5,026,479号明細書
【特許文献6】米国特許第5,837,033号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、上記した欠陥を克服するかあるいは先行技術の制限の一部を克服するような改良されたモジュールデザインを提供することである。この場合、中空繊維は芯部の周りに巻かれている。しかし、我々は、期せずして、繊維群に実質的に等しい長さであることを求める特許文献4及び特許文献6の教示が本発明では必要とされないことを発見した。例えば、2つのモジュールが製造され、1つは繊維の有効長のばらつきが13%であり、1つはばらつきが70%であった。両モジュールには、約1875平方センチメートルのアクティブ表面積が含まれていた。各モジュールを用いて種々の圧力で空気を乾燥させ、そして、2つのモジュール間の長さのばらつきがほぼ6倍であってもこれらのモジュールの性能はほぼ同じであるということを発見した。現行の最新式の膜モジュールデザインは、供給ガス及びスウィープガスの両方のフローの不均等分布を回避する必要性を教示しているので、繊維の長さのばらつきが70%であるモジュールが長さのばらつき13%のモジュールより低い性能を有することは予期されていたであろう。この場合もやはり期せずして、本発明では繊維長さのばらつきが大きくてもモジュールの性能を低下させないことを発見した。
【0009】
層流では、繊維を通過するフローの相対量は、その相対長さに反比例する。これは、各繊維の圧力損失が同じであり、圧力損失は体積流量と長さの積に比例するためである。例えば、仮にあるモジュールが2つの繊維(1つは長さ1フィート(30.48センチメートル)、2つめは長さ10フィート(304.8センチメートル))を含んでいるとすれば、長さ10フィート(304.8センチメートル)の繊維内のフローは長さ1フィート(30.48センチメートル)の繊維のフローの10%になるであろう。乱流では、圧力損失は速度の約1.75乗と長さの積に比例する。この乱流の場合、長さ10フィート(304.8センチメートル)の繊維における体積流量は、長さ1フィート(30.48センチメートル)の繊維におけるフローの約27%になるであろう。確かに、長さのばらつきが6倍である本モジュールでは、各繊維は同量の供給フローを受容しなかったが、それにもかかわらず2つのモジュールの性能の差はほんの僅かであった。
【0010】
さらに、本モジュールデザインでは、特許文献4のカラム8、第53〜60行に示されているような巻付角度によって制限されない。繊維が螺旋状に巻かれたモジュールに関連する先行技術では全て、アクティブエリア領域における巻付角度は、繊維束の一端から他端に至るまで繊維層内で一定である。管板区間内で小さい巻付角度が維持される状態では、このことは管板内にかなりの量のアクティブでない繊維を生じさせることになり、そうなると、使用される膜の量を大きくし、モジュールの資本コストを増大させ、ルーメン及びシェルサイドの圧力損失を大きくし、モジュールの運転コストを増大させる。さらに、これは管板強度を低下させ、ひいては、より大きな管板寸法を必要とすることになり、膜の要件及びコストをさらに増大させる。
【0011】
例1
【0012】
表1のパラメータに従って、中空繊維が螺旋状に巻かれたボアサイドフィード型内部スウィープ膜エアドライヤモジュールを製造した。用いた中空繊維は、乾湿式相転換法を用いて製造した。水、凝固剤をボア液(bore fluid)として用い、溶媒及び非溶媒を含む高分子溶液を中空繊維スピナレット(紡糸口金)の環内に送り込んだ。繊維を当分野で既知の手順に従って処理し、その後、それを用いてモジュールを製造した。得られた非対称多孔中空繊維には、その後、内径に親水性ポリマーのコーティングを施した。
【表1】

【0013】
この巻きプロセス中、円筒形芯部を使用し、管板領域において繊維束の径が減少するようにモジュールのそれぞれの端部の管板領域付近において繊維が敷設(lay down)される角度を増加させた。各モジュールに対して、管板付近の繊維束の径は約1.1インチ(27.94ミリメートル)、モジュールの中心線付近の繊維束の径は1.4インチ(35.56ミリメートル)、用いた芯部は径0.9インチ(22.86ミリメートル)であった。このように、モジュールの充填密度は、モジュールの中心線付近よりも管板付近でずっと小さかった。
【0014】
両モジュールについて、表2のデータに従って圧縮空気流から水蒸気を除去する能力を調べた。鏡面冷却式露点計を用いて圧縮空気流の含水量を測定した。
【表2】

【0015】
表2のデータから分かるように、長さのばらつきが非常に様々である2つのモジュールの性能は区別できなかった。
【0016】
本発明では、より芯部に平行に繊維が管板に入るように管板領域付近の巻付角度を大きくし(特許文献6のように小さくしない)、管板付近の充填密度及びモジュール径を大幅に減少させた。この形状は、管板内の繊維の量を減少させ、圧力損失を低下させ、繊維の存在によって管板完全性の寄生損失を最小にする。
【0017】
この巻付角度の増加が与えるさらなる改良は、繊維束へのシェルサイドガスの浸透の向上である。所与の数の繊維に対して、この巻付角度増加部付近の充填密度及びベッド深さは、隣接する区間よりも著しく低い。このことは、全ての繊維の周り及び繊維束内へのシェルサイドガスのより効果的な浸透を可能にする。
【0018】
本発明の一実施形態では、芯部を含み、芯部上に半透性の中空繊維層が螺旋状に複数巻かれた中空繊維膜モジュールが提供され、繊維巻付角度は、一方または両方の端部または管板領域を除いてモジュールの軸方向長さに沿って1若しくは複数の層内で実質的に一定であり、径及び充填密度が漸減する区間を作り出すために、複数の層のうち少なくとも一部の層において、巻付角度を、実質的に一定の巻付角度に比べて増加させている。
【0019】
最大の管板完全性が要求される内部スウィープモジュールでは、不浸透性ラップを管板内に埋め込むことで、管板材料に不連続性を作り出すことになり、管板材料に破損面をもたらす場合がある。必要な強度を与えるために、モジュール製造者は、繊維束の中に管板の深さを増加させなければならないであろう。こうすることは可能であるが、これにより、モジュールのコストを増加させるであろうアクティブでない繊維区間の量を増大させることにもなる。本発明では、不浸透性ラップを管板に埋め込まない。代わりに、管板の端部と不浸透性ラップの開始部の間に隙間を残し、不浸透性ラップとモジュールシェルの間に封止部を提供する。これは、例えば、この隙間に発砲ポリウレタンフォームを詰めることによって、あるいは繊維束の周りに独立気泡フォームガスケットを巻き付けることによって、あるいは環状空間を満たしかつシェルサイドスウィープ空気が繊維をバイパスしないようにするような任意の他の材料を用いることによって、なされることができる。
【0020】
シェルサイドスウィープ空気は、単純にシェルの孔を通ってモジュールから出ることができるか、あるいは、シェルサイドスウィープ空気が注入されるのと同じように芯部内部への通路を用いてシェルサイドスウィープ空気注入区間の反対側で芯部内に集められる場合がある。
【0021】
本発明の別の態様は、上記した欠陥を克服するかあるいは先行技術の制限の一部を克服するような改良された外部スウィープモジュールデザインを提供することである。内部スウィープモジュールと同様に、外部スウィープモジュールについても、繊維群が実質的に等しい長さである必要がないことが分かった。このことは、特許文献4を考慮すると予期せぬ結果である。
【0022】
また、外部スウィープモジュールでは、内部スウィープモジュール同様に、上記したように、巻付角度の増加が繊維束内へのスウィープガスの浸透を向上させることが分かった。所与の数の繊維に対して、この巻付角度増加部付近の充填密度及びベッド深さは、隣接する区間よりも著しく低い。これにより、スウィープガスは、全ての繊維の周り及び繊維束の中へより効果的に浸透することができる。不浸透性ラップに関しては、どちらの管板内にも不浸透性ラップを埋め込まずに、むしろ上記した方法を用いてラップとシェルの間に封止部を作ることにする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
従って、本発明の目的は、管板領域において繊維束の径が縮小する部分を有する螺旋状に巻けられた繊維モジュールを提供することによって、必要ならば繊維長さに幅広いばらつきを持たせて、全てのガス乾燥及びガス移送用途のために必要な構造的完全性を有する中空繊維膜モジュールを提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的及び利点は、明細書の一部を形成する添付図面(類似の参照符号は幾つかの図面において対応する部分を示す)を参照し、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を具体化している構造物の立断面図。
【図2】図1に示した構造物の端面図。
【図3】図1に示した構造物に類似の、管板が示されている構造物。
【図3A】図3に示した構造物の端面図。
【図4】芯部にスウィープ収集部を有しかつ本発明の構造を具体化している内部スウィープ・ボアサイドフィード型中空繊維膜モジュールの概略図。
【図5】本発明の構造を具体化している内部スウィープ・ボアサイドフィード型中空繊維膜モジュールの概略図。
【図6】本発明の構造を具体化している外部スウィープ・ボアサイドフィード型中空繊維膜モジュールの概略図。
【図7】モジュールハウジング内に装着された図4に示した構造物の斜視図。
【図8】図7に示した構造の分解斜視図。
【図9】ハウジング内に装着され、脱水されたガスの一部をスウィープガスとして用いている逆流型中空繊維膜モジュールの立断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「巻付角度」なる語は、水平位にあるモジュールに関して定義される。これに関連して、巻付角度Xは、モジュール全域において敷設される繊維が垂直軸線に対してなす角度として定義される。例えば90°の巻付角度で巻かれた繊維群は、例えば上記特許文献1及び2に示されているモジュールにおいて端から端まで平行かつ真っ直ぐになる。
【0027】
「繊維層」は、モジュールの一端からモジュールの他端へ繊維を螺旋状に巻いていく動作において敷設される繊維(群)として定義される。それなので、再び第1の端部へ戻る方向に巻かれる繊維群は、別の繊維層を構成することになる。
【0028】
「芯部」は、所望の断面の軸方向に延在する中実または中空体として定義される。芯部は本明細書中で時には円形断面の中空円筒として示されるが、他の断面、例えば四角形、楕円形、三角形なども十分に本発明の範囲内である。
【0029】
芯部の周りに中空繊維を巻く方法は、管板を形成するために用いられる方法及び材料並びに中空繊維ボアを露出するために管板を切断する方法と同様に、当分野で十分に確立されている。
【0030】
本発明の中空繊維膜を巻き付けるために、ユタ州ソルトレイクシティーのCMC社製のものなど市販の巻付装置が利用可能である。しかし、トラバース(繊維敷設)速度と主軸(モジュール)回転速度の比が制御可能である限り、任意の市販の巻付装置が用いられ得る。これらのパラメータのコンピュータ制御が好ましいが、必ずしも必要ではない。
【0031】
本発明において用いられる中空繊維の径は約500ミクロン径であるのが好ましいが、使用条件に応じて任意の繊維径が用いられ得る。使用目的に応じて、適切な化学構造、寸法及び孔径サイズを有する中空繊維を選択する。そのような中空繊維の作製は、当業者に公知であり、本発明の中空繊維膜ガス脱水装置を構築するにあたり、高密度壁膜、多孔膜、非対称膜または複合膜のいずれかを用いることができる。中空繊維の原材料は、個々の用途によって決まることになる。
【0032】
図1ないし図2を参照すると、本発明の構造を具体化している中空繊維膜モジュール20が示されている。モジュール20は芯部21を含み、芯部21上には、第1の端部領域RD1の径を除いて、中空膜繊維22がモジュールの所望の径Dに達するまで螺旋状に巻かれている。RD1の径は、径DからD未満の径へ減少していく。第2の縮小径領域RD2が所望されるならば、図1に示されているように、RD2をモジュール20の他端に設けることができる。当然のことながら、両実施形態のほかに、追加の縮小径領域を有する任意の他の実施形態もまた、十分に本発明の範囲内である。
【0033】
そのような構造物を作製するために、中空膜繊維22が芯部21上に敷設される。繊維22のトラバース速度は、繊維が敷設されていく領域によって変わることになる。端部領域ER1またはER2では、トラバース速度は毎秒約6インチ(15.24センチメートル)である。中央領域すなわちアクティブ領域では、速度は毎秒約1インチ(2.54センチメートル)であるので、端部領域における敷設速度は中央領域に比べてずっと大きい。6対1の比である。
【0034】
敷設の速度は用途によって大きく変わる場合があり、端部領域における敷設の速度は、端部領域の直径を中央領域すなわちアクティブ領域Cの径Dより小さい径まで小さくするのに十分な程大きくなる限りは尚も許容範囲にあることが理解されよう。用途に応じて、縮小径RDは、径Dより幾分小さいだけであり得るか、あるいは実質的に芯部の径であり得る。縮小径RDの区間に隣接している一定部分の中央領域すなわちアクティブ領域Cを有する構成はどれでも、十分に本発明の範囲内である。中央領域Cに隣接する第1の端部から縮小径RDの領域の端部まで一様に小さくなるのが好ましいが、その他の構成も可能である。
【0035】
当然のことながら、巻付角度が中空膜繊維22の全ての層に対して同じである必要はなく、端部領域(R1、R2)におけるトラバース速度が全ての層において異なる必要もない。
【0036】
図3及び図3Aを参照すると、所望の寸法になるまで芯部に繊維が巻かれた後、管板24がポッティングされる。本発明の実施において、任意の管板ポッティング方法及び当分野で既知の任意のポッティング材料が用いられ得る。ポッティング材料は、用途によって変わり得る。管板24はキュアリング後に切断され、繊維ルーメンが露出する。繊維22はある角度をなして巻かれ、管板24は平らに切断されたので、ルーメン23は、図3Aでは分かりづらいのだが、幾分か楕円の形をしている。
【0037】
フロー向上のために、管板24は縮小径領域全体を覆わないことが好ましい。管板によって覆われない区間RDAAはアクティブエリアであり、ここを含めて繊維長さが計算されることになる。
【0038】
ここで図4ないし図6を参照すると、そのように作製されたモジュールを用いて、内部スウィープ・ボアサイドフィード型モジュールで芯部にスウィープ収集部が有るもの(27)または無いもの(28)、あるいは外部スウィープ・ボアサイドフィード型モジュール29のいずれかを作製することができる。いずれの場合でも、後述する目的のために、不浸透性ラップ31において作製される繊維束を巻き付ける必要がある。内部スウィープ・ボアサイドフィード型モジュール(27、28)にとって、モジュールのスウィープ入口と反対側にある一端を除く管板24間のモジュール全体がこのラップで覆われることは重要である。あるいは、管板強度を増強するために、不浸透性ラップは、管板に隣接するアクティブエリアを除く繊維束全体を覆い得る。この場合、不浸透性ラップとシェルの間に封止部(32)が設置されることになるであろう。
【0039】
不浸透性ラップが管板24に埋め込まれないが代わりにシェルにシールされることが本発明に重要であり、このことは、当分野で既知の任意の方法によって、例えば、管板とシェルの間にラップを埋め込むことによって、あるいは管板とシェルの間にガスケットまたは他の封止部を設けることによってなされ得る。
【0040】
内部スウィープモジュール28では、任意選択でラップとシェルの間に封止部32が設置され得る。スウィープオリフィス33からスウィープガスを中に入れるために、芯部21には管板24に近接して複数のスウィープ孔40が設けられる。
【0041】
不浸透性ラップ31及び任意選択で封止部32のせいで、スウィープオリフィス31から中に入るスウィープガスは、不浸透性ラップの遠位端31Aに到達するまでは螺旋状に巻かれた繊維24を通って移動することになり、到達後はスウィープ孔から用途に応じて大気中または他の圧力中に放出されることになる。モジュールはシェル内にシールされているので、スウィープガスはスウィープ孔40から外に出ざるを得ない。
【0042】
第1の管板24Aに埋め込まれたルーメン23内に流入する湿性供給ガスは、螺旋状に巻かれた繊維のルーメンを通って移動し、モジュールの向流配置のためにスウィープ入口と反対側の端部でモジュールから出ることになる。当然のことながら、並流構造も用いられることができ、その場合には、乾性ガスがモジュールのスウィープガス入口と同じ側の端部から中に入ることになる。
【0043】
ここで図6を参照すると、本発明を用いて作製される外部スウィープ・ボアサイドフィード型中空繊維膜モジュールが示されている。本発明のこの実施形態では、モジュール20は、図3に示したモジュールと同様に繊維が巻かれ得るが、不浸透性ラップ(ここでは明確にするために符号39で示されている)は、モジュールの各端部で所定の距離にわたり開口している。
【0044】
不浸透性ラップはスウィープ孔40の領域に終端を有することが好ましいが、これは必須というわけではない。必要に応じて、外部スウィープモジュール29を通過するスウィープガスのフローを制限するためにスウィープ入口周囲にオリフィスを設置することができる。湿性ガスは第1のプレナム46に入り、繊維22のルーメン23を通って第2のプレナム44から出ることになり、乾性ガスは第2のプレナム44から出ることになる。
【0045】
図7を参照すると、典型的には、モジュール(20、29)は、符号50によって示されるモジュールハウジング内に取り付けられる。シェル25がハウジング50の管状部分51として働き得るか、あるいはシェル25を含むモジュール20をハウジング50の管状部分51の内側にスッポリ入れることができる。いずれの構造でも、1対のエンドキャップ53がハウジングの管状部分51に気密に接続されてハウジングアセンブリ55を形成することになる。脱水される湿性ガスがモジュールアセンブリ55に入る入口57と、脱水されたガスが出ることになる出口59が設けられる。各エンドキャップ53の内側にはプレナム44(図示せず)が設けられる。管状部分51及びエンドキャップ53の構造は、どの型のモジュール27〜29が用いられているかによって変わる。
【0046】
ハウジングアセンブリ55の分解図が図8に示されている。ハウジングアセンブリ55は、スウィープ開口部及びスウィープ出口を有するモジュールハウジング50を含む。エンドキャップ53をモジュールハウジング50の端部上へねじ込んで、管板24を有する中空膜モジュール20をハウジング内にシールする。エンドキャップ53は、必ずしも管状部分上にねじ込まれる必要はないが、接着剤、超音波溶接、または当分野で既知の他の手段によって付着される場合がある。
【0047】
不浸透性ラップ31(図8には図示せず)は、ガスケット32によってハウジングにシールされる。脱水される湿性ガスが入口57から入れるようにエンドキャップ53の内部にプレナム44が設けられる。湿性ガスは、入口プレナム44Aに入り、繊維22のルーメン23を通って、中空繊維膜モジュール20の他端から出口プレナム44B内へ、そしてそこを通って出口59から出る。
【0048】
ここで図9を参照すると、入口及び出口圧縮ガスポートが一直線上に配置されるようにハウジング内に設置されているような、例えばエアゾールのコアレッシング(凝集)に用いられる典型的なインラインフィルターハウジング内に設置されているような、螺旋状に巻かれた繊維束の例が示されている。図を簡略化するために管板24は図示されておらず、巻付角度90°の真っ直ぐな繊維が示されている。中空繊維22及び管板24(図示せず)を有する中空膜モジュール20が、シェル25の内部に設置されている。不浸透性ラップ31は、封止部32によってシェル25にシールされている。必要に応じて、不浸透性ラップ31をシェル25にさらにシールするために開口部(図示せず)から自己膨張フォーム36が導入され得る。
【0049】
中空繊維膜モジュール20は、符号62及び63によって示される1対の改良エンドキャップを有し、そのことが、ハウジング入口64及びハウジング出口65を有するフィルターハウジング60内に中空繊維膜モジュール20が装着されることを可能にしている。脱水される湿性ガスは、ハウジング入口64に入り、第1のエンドキャップ62の開口部62Aを通って、繊維22のルーメン23を通って、エンドキャップ63に隣接するルーメン23から出る。エンドキャップ63は、大部分のガスの方向を変えて芯部21を通って元来た方向に戻し、第1のエンドキャップ62から放出してハウジング出口65内へ入れるために、特別に作られたものである。しかし、乾性ガスの一部は、特別なスウィープ入口68を通過でき、これは、繊維22の近くを通り、不浸透性ラップ20の下を通って、特別なスウィープ出口孔69から放出され、ハウジングスウィープ出口70から放出される。
【0050】
当分野における問題を注意深く考慮することによって、改良された中空繊維膜モジュールが提供されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空繊維が螺旋状に巻かれた中空繊維膜モジュールであって、
(a)芯部と、
(b)前記芯部上に巻かれた複数の螺旋状に巻かれた半透性の中空繊維層とを含み、
任意の1つの繊維層に対する繊維巻付角度が、一方または両方の端部または管板領域を除いて前記モジュールの軸方向長さに沿って実質的に一定であり、
径及び充填密度が漸減する区間を作り出すために、前記複数の層のうち少なくとも一部の層において、前記巻付角度を、前記実質的に一定の巻付角度に比べて増加させていることを特徴とする中空繊維膜モジュール。
【請求項2】
前記一方または両方の端部領域の始まり部分における前記モジュールの径が、中央アクティブ領域における前記中空繊維膜モジュールの径と実質的に同じであり、前記一方または両方の端部または管板領域の他端における前記モジュールの径が、前記中央アクティブ領域の径より小さいことを特徴とする請求項1の中空繊維膜モジュール。
【請求項3】
前記一方または両方の端部領域の前記他端における前記モジュールの前記径が、前記芯部の径より僅かばかり大きいことを特徴とする請求項2の中空繊維膜モジュール。
【請求項4】
一部がアクティブ領域であるような少なくとも1つの端部または管板領域と、中央アクティブ領域とをさらに含むことを特徴とする請求項2の中空繊維膜モジュール。
【請求項5】
ポッティングされたエンドキャップが、前記少なくとも1つの管板領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項4の中空繊維膜モジュール。
【請求項6】
前記中空繊維膜モジュールが各端部に管板領域を有し、前記両管板領域間にアクティブ領域が延在し、前記管板領域の各々にポッティングされたエンドキャップが設けられ、各ポッティングされたエンドキャップがそのそれぞれの管板領域の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項5の中空繊維膜モジュール。
【請求項7】
前記モジュールが、ガス不浸透性でありかつ前記少なくとも1つの管板領域に隣接する覆われていない領域を除いて前記モジュールの全体にわたって延在するような密接に適合するバリア材で覆われていることを特徴とする請求項5の中空繊維膜モジュール。
【請求項8】
前記モジュールが、ガス不浸透性でありかつ前記モジュールの全体にわたって延在するような密接に適合するバリア材で覆われていることを特徴とする請求項6の中空繊維膜モジュール。
【請求項9】
前記モジュールが、ガス不浸透性でありかつ前記少なくとも1つの管板領域に隣接する覆われていない領域を除いて前記モジュールの全体にわたって延在するような密接に適合するバリア材で覆われていることを特徴とする請求項6の中空繊維膜モジュール。
【請求項10】
前記モジュールが、ガス不浸透性でありかつ前記モジュールの全体にわたって延在するような密接に適合するバリア材で覆われていることを特徴とする請求項6の中空繊維膜モジュール。
【請求項11】
シェルの内側に気密に装着されていることを特徴とする請求項7の中空繊維膜モジュール。
【請求項12】
シェルの内側に気密に装着されていることを特徴とする請求項9の中空繊維膜モジュール。
【請求項13】
前記不浸透性バリア材と前記シェルの間に封止部があることを特徴とする請求項11の中空繊維膜モジュール。
【請求項14】
前記不浸透性バリア材と前記シェルの間に封止部があることを特徴とする請求項12の中空繊維膜モジュール。
【請求項15】
内部スウィープ・ボアサイドフィード型の中空繊維膜モジュールであって、
(a)前記中空芯部が、円筒形であり、スウィープガスの導入のために前記モジュールの一端で開口されており、前記芯部と前記シェルの内側と前記エンドキャップの間に画定される区間において前記繊維群の外側にスウィープガスをめぐらせることができるように前記アクティブ領域に隣接して前記中空芯部に複数のスウィープ孔が設けられているような、請求項13の中空繊維膜モジュールと、
(b)前記スウィープガスを逃がすことができるように前記シェルに設けられた少なくとも1つの開口部とを含むことを特徴とする中空繊維膜モジュール。
【請求項16】
前記中空芯部に、前記芯部に入るスウィープガスの量を制限するためのスウィープオリフィスをさらに含むことを特徴とする請求項15の中空繊維膜モジュール。
【請求項17】
前記ガス不浸透性材料と前記シェルの内部の間に封止部をさらに含むことを特徴とする請求項15の中空繊維膜モジュール。
【請求項18】
外部スウィープ・ボアサイドフィード型モジュールであって、
(a)前記密接に適合するバリア材が両管板領域に隣接する覆われていない領域を除いて前記モジュールの全体にわたって延在するような、請求項13の中空繊維膜モジュールを含み、
(b)封止部が、前記ガス不浸透性材料と前記シェルの内部の間に設けられ、
(c)少なくとも1つのスウィープ入口開口部が、前記シェルの一端に隣接して設けられ、
(d)少なくとも1つのスウィープ出口開口部が、前記シェルの他端に隣接して設けられることを特徴とするモジュール。
【請求項19】
前記シェルの各端部に設けられたエンドキャップをさらに含むことを特徴とする請求項18のモジュール。
【請求項20】
前記シェルの各端部に設けられたエンドキャップをさらに含むことを特徴とする請求項19のモジュール。
【請求項21】
前記モジュールの前記軸方向長さに沿って異なる繊維層の前記巻付角度が広範囲にわたって変化することを特徴とする請求項1の中空繊維膜モジュール。
【請求項22】
前記モジュールの前記軸方向長さに沿って異なる繊維層における前記繊維の前記長さが20パーセントまたはそれ以上の差で変化することを特徴とする請求項1の中空繊維膜モジュール。
【請求項23】
前記中空芯部が円筒形であることを特徴とする請求項18の外部スウィープ・ボアサイドフィード型モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−223765(P2012−223765A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154571(P2012−154571)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2009−529257(P2009−529257)の分割
【原出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(504074569)ポーラス・メディア・コーポレイション (2)
【氏名又は名称原語表記】POROUS MEDIA CORPORATION
【Fターム(参考)】