説明

改良された銀メッキ方法及びその方法により形成された物品

銀で有機基材をメッキをするための改良された方法が開示される。
【課題】 本方法は、(a)有機基材を洗浄し、表面を下処理する洗浄ステップと、(b)洗浄された有機的基材をスズ塩と無機酸を含む金属被覆前処理水溶液に接触させるステップと、(c)銀で金属被覆前処理された有機基材をメッキするステップとを含み、該ステップ(c)が更に、(i)金属被覆前処理された有機基材を、Na4EDTA水溶液と接触させ、(ii)金属被覆前処理された有機基材を、銀塩水溶液と接触させて有機基材上に酸化銀を析出させる。銀塩水溶液は錯化剤を含み、(iii)析出した酸化銀を有する有機基材を還元剤と接触させ、有機基材上にメタリックシルバーを形成させる。この改良されたメッキは、部分的にNa4EDTAを使用して達成され、廃棄材料からの銀の回復と改良された結晶粒形成を促進する。本発明の手段を使用して処理される物品も、また開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に抗菌性且つ帯電防止特性を有する物品の生産に好適な、改良された無電界銀メッキ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀及び他の貴金属による有機基材(例えば重合材料)の金属被覆は、当該技術において周知である。そのような技術の一つが、ブロードベント(Broadbent)等の米国特許第3,877,965号公報に記載されている。そこでは、銀によるナイロン基材の金属被覆法が説明されており、その内容は本明細書に援用されている。銀で金属被覆された物品は、銀の固有の抗菌性と帯電防止特性のために、多種多様な用途が見いだされている。例えば、銀メッキされたナイロン繊維は、一般に織られ、消費財(ソックス、包帯等)、また電子機器(移動電話、コンピュータ等)の電磁障害(EMI)の遮蔽用途として使用される。
【特許文献1】米国特許第3,877,965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、銀で基材を金属被覆するための現在のプロセスは、ある種の不利益を有する。例えば、特許第3,877,965号公報に記載されている方法には、いくつかの不利益が存在することが判明した。まず、大部分の金属被覆プロセスについて金属被覆前処理ステップは、水溶性のアルコール(例えばC1−C4アルコール)を用いて溶解されるスズ塩(例えば塩化第一スズまたは塩化第二スズ)を必要とする。アルコールの使用は、重大な蒸発の問題を生じる。
【0004】
より重大な問題は、金属被覆プロセス中での界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)の使用である。例えば、溶液の温度が低すぎる場合、界面活性剤はメッキ溶液のゲル化の原因となる可能性がある。同様に、界面活性剤はメッキ溶液でかなりの泡立ちを生じる可能性があり、それは金属被覆が完了した後に除去することが困難である。通常、金属被覆プロセス中に発生する泡沫は、最終的に繊維の表面に達する。一旦、泡沫が繊維表面にくると、適切にすすぎ落とすことが困難となる。これは次に、銀イオンの放出を阻害する可能性があり、更に、高温にさらされているとき、表面の亀裂による接着性の問題を示す。亀裂は、汚染物質(例えば混入空気)が、銀層の表面下からの圧力の下、外へ押し出される場合に発生する。
【0005】
加えて、界面活性剤を使用すると、析出した銀の色が非常に暗い灰色/銀(時々褐色でさえある)になる。消費者は一般に金属被覆された銀が明るい金属色を呈すことを期待しているので、析出した銀の他の色は、物品の美的価値を下げる。
【0006】
しかし、界面活性剤の使用に関連する最も重大な問題の1つは、環境への影響と、廃液から界面活性剤を除去することに関連するコストである。地元の下水道当局、環境保護庁(EPA)及び他の同様の機関は、現在非常に低い「メチレンブルー活性化物質(即ちMBAS)」の排出レベルを命じている。ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤は、MBASのカテゴリーに含まれる。許容範囲内(一般に100万分の5(ppm)以下)にMBASを低減するために、廃物処理にかなりの労力と出費が必要であり、その結果、生産コストと時間を増加させることになる。一般に、MBASを除去するためには、良質の吸着性(活性炭)フィルターとともに活性炭化学物質を使用することが必要であるが、フィルターは、粒子によって目詰まりするために頻繁に交換する必要がある。同様に、廃棄物から回収された銀の量が、析出物の量の割合として低濃度(例えば、約1重量パーセント)であるという問題がある。
【0007】
界面活性剤に関連する不利益の見地に立って、界面活性剤を使用しない溶液を使用する他の金属被覆プロセスが開発された。一般的に、これらのプロセスは、界面活性剤の代わりの配位子としてジナトリウムエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を使用する。銀メッキへのジナトリウムEDTAの使用に関する代表的な特許は、アプライド エレクトロレス コンセプト(Applied Electroless Concepts)社の米国特許第5,318,621号と第5,322,553号である。もう一つの例は、モンサント社(Monsanto Company)に付与された米国特許第5,158,604号である。しかし、大量の苛性ソーダを溶解するために使用して、メッキ溶液のpHを調整しなければならないので、この技術に問題がないわけでない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有機基材を銀でメッキするための改良手段を有利にも提供し、それは、先行する銀メッキ方法に関連する多くの不利益を回避する。本発明の手段は、順に少なくとも3つのステップを伴う。それは、(a)洗浄、(b)金属被覆前処理、及び(c)メッキである。メッキされる有機基材は、繊維、繊維から編み込まれた織物又は高分子発泡材料(例えば開放気泡発泡体)の形態であってもよい。本発明によれば、有機基材は、金属被覆前処理に対して表面を下処理するために、まず洗浄される。好ましくは、洗浄液が使用される。
【0009】
有機基材が十分きれいになったら、洗浄された有機基材を、スズ塩と無機酸を含む金属被覆前処理水溶液と接触させる。1つの実施形態で、金属被覆前処理溶液は、水溶性又は水混和性溶媒を含まない。もう一つの実施形態で、金属被覆前処理溶液は、界面活性剤を含まない。使用されるスズ塩は、塩化第一スズ、塩化第二スズ及びそれらの混合物を含む。使用される無機酸は、塩酸塩、硫酸、及びそれらの混合物を含む。
【0010】
金属被覆前処理された有機基材はその後、銀メッキされ、その銀メッキは、(i)金属被覆前処理された有機基材をNa4EDTA水溶液と接触させることと、(ii)続いて、金属被覆前処理された有機基材を、錯化剤を更に含む更なる銀塩水溶液と接触させることにより有機基材上に酸化銀の析出を生じさせることと、(iii)析出した酸化銀を有する有機基材を還元剤と接触させ、有機基材上にメタリックシルバーの形成させることと、を含む。特に好ましい銀塩と錯化剤は、それぞれ硝酸銀とアンモニア水である。代表的な望ましい還元剤は、アルデヒド官能基を含む還元剤である。還元剤の典型的な例として、ホルムアルデヒド、ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)、ヒドラジン、デキストロース、トリエタノールアミン、グリオキサール、転化糖、グルコース、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンボラン及びそれらの混合物が含まれる。もう一つの実施形態では、メッキステップの溶液の全てが、界面活性剤を含まない。
【0011】
本発明は、本発明の方法に従って処理される物品も提供する。1つの実施形態で有機基材は、上に析出される少なくとも1つの非貴金属層を更に含み、好ましくは、この非貴金属層は、メッキされたメタリックシルバー層上に析出される。1つの特に好ましい非貴金属は銅である。本発明に従うと、メタリックシルバー層は、物品の少なくとも5重量パーセントであり、より好ましくは少なくとも10重量パーセントである。
【発明の効果】
【0012】
有利にも、本発明の手段は、界面活性剤を使用せずにすむようにし、一方、廃棄物からの銀の回収率を増加させる。このように、本発明の使用を通して、環境への懸念を先行技術のプロセスと比較して軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、メタリックシルバーで有機基材をメッキする改良された手段を提供し、従来技術に関連する不利益の多くを回避する。本発明の手段は、金属被覆前処理に対する表面の下処理のために有機基材を最初に洗浄することを必要とする。その有機基材が十分に洗浄された後、有機基材を、スズ塩と無機酸を含む金属被覆前処理水溶液と接触させる。メッキは、その後、Na4EDTA水溶液と金属被覆前処理された有機基材とを接触させ、銀塩水溶液と金属被覆前処理された有機基材を接触させ、有機基材上に酸化銀を析出させてメッキが達成される。銀塩溶液は、既知の錯化剤を更に含む。析出された酸化銀は、有機基板を還元剤と接触させてメタリックシルバーの形成を生じさせることによって、メタリックシルバーに変わる(即ち、還元される)。
【0014】
本発明に従うと、銀で金属被覆された有機基材は、析出金属層を受容することができる有機材料を含む。有機材料は、合成又は合成材料を有する天然材料(例えば高分子繊維)が好ましい。使用される合成高分子繊維の例としては、これに限定されるわけではないが、ナイロン、ポリエステル、アクリル、レーヨン及びポリウレタンが挙げられる。天然材料の例としては、これに限定されるわけではないが、セルロース及び絹が挙げられる。有機材料は、析出する金属層を受容可能な、全ての物理的な形態であることができる。例えば、有機材料は、線状体、織物体、短繊維、細かく切断された繊維、微小にされた繊維、発泡体、粒子体及び充填剤の形態であってもよい。好ましくは、有機材料は繊維又は線状体の形態、又は、そこから形成した織物マトリクスである。有機材料が発泡体の形態であるならば、開放気泡発泡体(即ち、セルの三次元相互接続網を有する)が、全体にわたって金属被覆可能とするために好ましい。
【0015】
有機基材は、まず、洗浄によって金属被覆前処理のために下処理して細片を除去し、及び/又は、金属被覆を妨害する可能性のある材料上の全てのコーティング又は被膜を除去する。洗浄は、当該技術で周知の技術であるので多くの説明を必要としない。一般的に材料は、洗浄液で洗浄され、その洗浄液は界面活性剤(例えば非イオン性界面活性剤)を含んでもよく、また含まなくてもよい。本発明に従うと、「水性」とは、少なくとも媒体の大部分が水で、残りの部分が水溶性であるか水混和性有機溶剤であることを意味する。有機材料を、また、洗浄ブラシ又は同等品を使用して研磨することができる。好ましい実施形態において洗浄は、高速散水で達成され、それはインライン処理を容易にし、洗浄ブラシの必要性が回避される。
【0016】
有機基材が十分に洗浄された後、材料は、スズ塩と無機酸との水溶液で金属被覆前処理される。当該技術に熟練しているものにとって明らかなように、そのような溶液はしばしば「感光」液と称される。しかし、「感光」液の従来技術と異なり、金属被覆前処理溶液は、好ましくは界面活性剤及び/又は水溶性又は水混和性有機溶剤(例えばC1−C4アルコール)を含まない。好ましくは、スズ塩は、例えば塩化第一スズ、塩化第二スズ又はそれらの混合物等のハロゲン化物である。無機酸の例としては、それに限定されるわけではないが、塩酸塩、硫酸及びそれらの混合物を含む。より好ましい実施形態で、スズ塩は塩化第一スズであり、無機酸は塩酸塩である。2つの成分の範囲を、表1に示す。
【0017】
【表1】

有機基材が金属被覆前処理された後、有機基材は、有機基材から次の金属被覆を妨害する可能性がある過剰塩と酸を除去するために好ましくは洗浄される。例えば、有機基材は、制御された水流で向流すすぎにより洗浄することができる。これは、基材材料からの全ての過剰塩と酸の除去を可能にし、基材の表面上に最適量の活性部位を残存させる。基材を洗浄するための好ましい水流レベルは毎分約25〜約55ガロン(gpm)であり、30〜50gpmが好ましく、35〜45gpmがより好ましい。
【0018】
本発明に従うと、金属被覆は、3つのサブステップにおいて達成される。テトラナトリウム エチレンジアミン四酢酸(Na4EDTA)水溶液が調製され、その中に、金属被覆前処理された有機基材を、好ましくは水溶液に基材を浸すことによって接触させる。その水溶液は、好ましくは、可能な汚染を避けるために脱イオン(DI)水を使用して調製される。DI水は、約0.4〜約20メガオームの抵抗を有することが好ましい。更に、0.8〜10メガオームが好ましく、3〜7メガオームがより好ましい。Na4EDTA水溶液の濃度は、約5〜約30重量パーセント(wt.%)が好ましい。更に10〜25wt.%が好ましく、10〜20wt.%がより好ましい。好ましくは、一般的に、従来の銀メッキプロセスで見られるように、Na4EDTA溶液は界面活性剤を含まない。一般的にNa2EDTA溶液で知られているものと同様に、Na4EDTA溶液も好ましくは苛性ソーダを含まない。有利にも、Na4EDTAの使用は、より緻密な結晶粒組織でのメタリックシルバーの析出を促進し、それは、銀メッキされたナイロン繊維の、電子顕微観察による検査によって立証されるように、表面を比較的なめらかにする。同様に、Na4EDTAによって界面活性剤を含まないようにすることができ、それによって廃水の界面活性剤のレベルに関する環境的懸念が軽減される。
【0019】
銀塩水溶液は、次に、有機基材に接触させるために調製される。好ましくは、有機基材を、有機基材とNa4EDTA水溶液を含む溶液に直接銀塩溶液を加えることによって銀塩溶液と接触させる。すなわち、有機基材は両方の溶液に同時に浸され、その溶液は、金属被覆溶液という。あるいは、有機基材をNa4EDTA溶液から取り除いてもよく、その後、銀塩溶液に浸漬することもできる。1つの特に好ましい銀塩は、硝酸銀(即ち、AgNO3)である。当該技術分野で周知なように、銀塩溶液は更に錯化剤を含み、それは溶解された銀塩とその場で錯体を形成する。1つの特に好ましい錯化剤は、硝酸銀に対して錯化剤として一般に使用される水性アンモニア(即ちNH40H)である。Na4EDTA溶液と同様に、銀塩溶液は好ましくは界面活性剤を含まない。
【0020】
銀塩溶液は、まず、好ましくは、銀塩を水に溶かすことによって調製される。銀塩が溶解された後、錯化剤が溶液に添加される。酸化銀の沈澱物が形成され可能性があり、過剰錯化剤の付加を通して再融解される。過剰錯化剤の付加は、銀塩と錯化剤の錯体を形成すると思われる。例えば、硝酸銀とアンモニア液が使用される場合、酸化銀の沈澱物が形成され、それは、過剰アンモニア液の付加と同時に再融解され、軽い琥珀色を有する金属被覆溶液を提供する。水(H20)への銀塩(即ち、AgX)の好ましい当初の重さ/容積比及び錯化剤の体積パーセントを表2で示す。最終の金属被覆溶液(即ち、銀沈澱物の再融解)の錯化剤への銀塩の好ましいモル比を表3で示す。
【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

本発明に従うと、金属被覆溶液への有機基材の液浸によって、基材表面に酸化銀を析出させる。当該技術に熟練しているものにとって明らかなように、析出は、析出された酸化銀により色が変化した基材の外観検査によって確認することができる。例えば、AgN03:NH3の場合、一般にその基材が観察され、表面上の酸化銀層に関連した褐色の影を成長させる。好ましくは、有機基材は、約30秒、より好ましくは約20秒、還元剤の付加の前に金属被覆溶液に浸される。金属被覆溶液の温度は、臨界的ではないが、約15〜約45℃が好ましく、約20〜30℃がより好ましい。これらのパラメータは、当該技術に熟練している者であれば、容易に決定することができる。
【0023】
その酸化銀を有する有機基材を、酸化銀をメタリックシルバーに変えるために、続いて還元剤と接触させる。好ましくは、その接触は、還元剤を金属被覆溶液に直接加えることによって達成される。あるいは、有機基材は、金属被覆溶液から取り除かれ、還元剤の水溶液と別に接触させる(例えば浸す)。本発明に従って使用される還元剤は、当該技術で周知である。使用される還元剤の例としては、これに制限されないが、ホルムアルデヒド、ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)、ヒドラジン、デキストロース、トリエタノールアミン、グリオキサール、転化糖、グルコース、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンボランが挙げられる。ホルムアルデヒド等のアルデヒド官能基を含む還元剤がより好ましい。AgN03:NH3が使用される場合、還元剤(例えばホルムアルデヒド)の付加は、基材上に酸化銀層を形成し、銀酸化物がメタリックシルバーに変わると、輝く金又は灰−金色に変色する。好ましくは、使用される還元剤の量は、基材の約5〜約40重量パーセントであり、6〜25重量パーセントがより好ましく、8〜22重量パーセントが更に好ましい。
【0024】
十分なメタリックシルバーに変色した後、有機基材は金属被覆溶液から除去されて洗浄される。好ましくは、銀メッキされた基材は熱水に浸される。銀メッキされた基材は次に水酸化ナトリウムの稀釈液に好ましくは浸され、明るい金色又は明るい灰色に銀メッキが輝く。これは、銀の純粋な層がその基材上に析出したことを示す。物品に対しては、物品の清浄度を確保するために、多数のすすぎサイクルを行うことができる。
【0025】
当該技術で熟練している者に明らかなように、有機基材上に析出する金属銀の量は液浸時間の関数である。本発明に従うと、メタリックシルバー層の完全な析出のための時間は4時間より少ない。しかし、種々の溶液で基材を浸すための時間は、所望の銀の析出量に従い容易に変更することができる。有機基材上への銀の析出量は、最終生成物に対して望まれる特定の特性に依存し、0.1重量%〜15重量%で変動させることができる。好ましくは、銀の析出層は、少なくとも5重量パーセントであり、より好ましくは少なくとも10重量パーセントである。基材上に析出する銀の実際の量は、ボラールプロセスのような単純な滴定によって、容易に計算される。
【0026】
米国特許第3,877,965号公報の従来技術プロセスと異なり、残りの金属被覆溶液は容易に処理される。金属被覆溶液のpHは約13まで引き上げられ、コロイドの形に変わる溶解された銀になる。pHは、次に無機酸(例えば硫酸)により、一般的に約2まで引き下げられる。コロイド状の銀は、数時間後、容器の底に沈殿する。沈殿した銀の純度は、最高50重量パーセントであることが見いだされた。
【0027】
当該技術で熟練しているものにとって明らかなように、メッキをされた銀の粘着力は容易に確認することができる。基材への銀の接着性に対する1つの単純な試験は、サンプルを約5分間、200℃のオーブンに入れ、次に水内で1時間同じサンプルを沸騰させることを必要とする。加熱と煮沸の前後のサンプルの抵抗が比較される。約20パーセント以下の抵抗の変化は優れた接着性を示す。より好ましい実施形態で、抵抗の変化は10パーセント以下である。
【0028】
本発明のもう一つの実施形態では、米国特許第3,877,965号公報で説明されるように、銀メッキされた基材は更に銅等の非貴金属でメッキをされる。銅は、銀の上で自己触媒作用を示し、銅層を形成するためにそれ自身容易に還元することができる。そのようなプロセスを使用して、最高30重量%までの銅が、銀メッキされた基材に析出する。商用のメッキ液は、アトテック(Atotech)USA、エンソン(Enthone)OMIとマクデーミド(MacDermid)社から入手可能である。
【0029】
以下に、これに限定されるわけではないが、メタリックシルバー層で有機基材をメッキするための本発明の手段の使用を例示する。
【実施例1】
【0030】
25グラムの重さのナイロンの30/10ニットサンプルを、全ての汚染物質を除去するために洗浄した。ニットサンプルは、かせに巻回して、向流脱イオン水で洗浄した。サンプルは、約2分間、1重量%HCLと10グラムの無水塩化スズ(SnCl2)を含む溶液で金属被覆前処理した。銀塩溶液は、脱イオン水に0.04グラムの硝酸銀(重量の目安で0.1%の銀)を溶解することによって調製した。銀塩は、次に0.045mLの27容量%アンモニア液で合成した。テトラナトリウムEDTA溶液は、1リットルの脱イオン水で0.002グラムのNa4EDTAを溶解することによって調製した。かせを、Na4EDTA溶液を含む反応器に置いて回転した。全ての中身が空になるまで、銀塩溶液(即ち、合成された硝酸銀とアンモニア)を徐々に反応器に加えた。続いて0.016mLのホルムアルデヒドを加えた。三時間後、サンプルを除去し、熱水すすぎを行った。0.1容量%NaOH溶液(1リットル)を、70℃の温度で調製した。金属被覆したかせを、溶液に浸し、完全にすすいだ。サンプルは、ダウコーニング会社検査法0923で検査した。生物体−黄色ブドウ球菌(Staphylocococcus aureaus)ATCC7538、サンプルサイズ0.75グラムである。その結果、コロニーで>99.9%の低減となった。
【実施例2】
【0031】
実施例1のように、25グラムの重さのナイロンの30/10ニットサンプルを、全ての汚染物質を除去するために洗浄した。ニットサンプルは、かせに巻回して、向流脱イオン水で洗浄した。サンプルは、約2分間、1重量%HCLと10グラムの無水塩化スズ(SnCl2)を含む溶液で金属被覆前処理した。銀塩溶液は、脱イオン水に1.95グラムの硝酸銀(重量の目安で5%の銀)を溶解することによって調製した。銀塩は、次に2.25mlの27容量%アンモニア液で合成した。テトラナトリウムEDTA溶液は、1リットルの脱イオン水で0.1グラムのNa4EDTAを溶解することによって調製した。かせを、Na4EDTA溶液を含む反応器に置いて回転した。銀塩溶液(即ち、合成された硝酸銀とアンモニア)を反応器に加え、続いて0.8mLのホルムアルデヒドを加えた。三時間後、サンプルを除去し、熱水すすぎを行った。金属被覆されたかせを、実施例1の場合のようにNaOH溶液ですすいだ。サンプルを、ダウコーニング社検査法0923で検査した。生物体−黄色ブドウ球菌ATCC7538、サンプルサイズ0.75グラムである。その結果、コロニーで>99.9%の低減となった。
【実施例3】
【0032】
リップストップ織物25グラムサンプルを実施例1と実施例2の手続に続いて処理した。銀メッキされたサンプルを、次に、ダウコーニング社検査法0923で検査した。生物体−黄色ブドウ球菌ATCC7538、サンプルサイズ0.75グラムである。その結果、コロニーで>99.9%の低減となった。
【実施例4】
【0033】
ナノ微粉(即ち、ナイロンとポリエチレンから形成される微粉)を含む充填剤25グラムサンプルを、実施例1と2の手続に続いて処理した。銀メッキされたサンプルを、次に、ダウコーニング社検査法0923で検査した。生物体−黄色ブドウ球菌ATCC7538、サンプルサイズ0.75グラムである。その結果、コロニーで>99.9%の低減となった。
【実施例5】
【0034】
118グラムの重さのナイロンのA30/10ニットサンプルを、全ての汚染物質を除去するために洗浄した。ニットサンプルを、かせに巻回して、向流脱イオン水で洗浄した。サンプルは、約2分間、10重量%HCLと100グラムの無水塩化スズ(SnC2)とを含む溶液で金属被覆前処理した。銀塩溶液を、脱イオン水に45グラムの硝酸銀(重量の目安で約22%の銀)を溶解することによって調製した。次に、銀塩を、52mLの27容量%アンモニア液で合成した。テトラナトリウムEDTA溶液を、6リットルの脱イオン水で2.2グラムのNa4EDTAを溶解することによって調製した。かせを、Na4EDTA溶液を含む反応器に置いて回転した。全ての中身が空になるまで銀塩溶液(即ち、合成された硝酸銀とアンモニア)を徐々に反応器に加えた。続いて18mLのホルムアルデヒドを加えた。三時間後サンプルを除去し、熱水すすぎを行った。0.1容量%NaOH溶液(5リットル)を、70℃の温度で調製した。金属被覆されたかせを、次に溶液に浸して完全にすすいだ。色は、明るい略金色の銀に変わった。サンプルを乾燥し、粘着力検査に送った。結果は、ケイスレイ(Keithley)5801のマイクロオームメータを使用して484オーム(距離50cm)、加熱後345オーム、煮沸後365オームだった。
【実施例6】
【0035】
実施例5において銀メッキされた材料から得られたサンプルを切断し、1.5グラムスリーブを形成した。次に、スリーブを24時間、5重量%塩化ナトリウム溶液が入ったビーカー内に置いた。24時間後、溶液をパーキン エルマー アナリスト300を使用して銀イオンに関して検査した。同じ試験を、7日にわたり繰り返した。イオンの放出は、本発明に従って調製された銀の徐放性を示し、0.5ppmで、毎日一致していた。
【実施例7】
【0036】
実施例5の銀メッキされた材料から得られたサンプルを、0.75グラムの重さに切断し、ダウコーニング社検査法0923で検査した。使用した生物体は、黄色ブドウ球菌ATCC6538であった。サンプルは、99.9%以上、生物体成長を引き下げた。
【実施例8】
【0037】
118グラムの重さの210/34ニットナイロンサンプルをきれいにしたサンプルは、かせ巻回し、脱イオン水の逆流で洗浄した。かせは、2分間、10重量%HCLの溶液と100グラムの無水塩化スズ(SnCl2)で金属被覆前処理した。銀塩溶液を、脱イオン水で45グラムの硝酸銀を溶解することによって調製した。銀塩は、次に52mlの27容量%アンモニア液で合成した。テトラナトリウムEDTA溶液を、6リットルの脱イオン水で2.2グラムのNa4EDTAを溶解することによって調製した。かせを、Na4EDTA溶液を含む反応器内に置いて回転させた。銀塩錯体を、反応器に加え、次に18mLのホルムアルデヒドを加えた。三時間後、サンプルを除去し、熱水ですすいだ。前の実施例の場合のように、0.1重量%NaOH溶液を調製し、金属被覆されたかせを溶液に浸した。色は、灰色から明るい略金色の銀まで変色した。
【0038】
銀メッキされたサンプルを、次にアトテックUSAから市販の銅の化学品で金属被覆した。金属被覆プロセスは、供給業者によって提案される指導に従って実行した。銅の析出の終了は、溶液が深い青から、無色の状態に変化したときに視覚的に決定されることができ、それは、金属の完全な還元を示す。
【0039】
銀−銅材料の10.6グラムサンプルを次に切断した。そして、2.1グラムのロッシェル塩(即ち酒石酸カリウムナトリウム)で満たしたビーカーに置き、脱イオン水で溶解した。銀塩錯体は、3.6グラムの硝酸銀になった。次に、4.3mLのアンモニア液を、定数撹拌の下、サンプルに注いだ。銀−銅のピンクの色は、この時に明るい褐色に変わった。2、3滴の更なる希釈されたアンモニア液を、一定の撹拌の下のインキドロッパーによって溶液に落下した。サンプルの色は、次に鈍い白に変わり始め、そして明るい白色に変わった。このステップは約35分で完了した。その時、サンプルは溶液から除去されて、15分間完全に脱イオン水でリンスされた。銀の重量増加は15%であることが算出された。各金属層を析出した後の材料の抵抗も記録した。それは、ケイスレイ580のマクロオームメータを使用して行った。銀の抵抗は80オーム/50cm、銀−銅の抵抗は25オーム/50cm、そして、銀−銅−銀の抵抗は18オーム/50cmであった。
【実施例9】
【0040】
実施例8の銀−銅銀材料のサンプルを、1.5グラムのスリーブに切断した。スリーブを、次に、24時間、5重量%の塩化ナトリウム溶液が入ったビーカー内に置いた。24時間の後の溶液を、次にパーキン エルマー アナリスト300を使用して銀と銅イオンについて検査した。同じ試験を7日にわたって繰り返した。イオンの放出は、毎日不変であり、銀が2ppm、銅が3ppmであった。
【実施例10】
【0041】
実施例8の銀−銅銀材料のサンプルを、0.75グラムの重さに切断し、ダウコーニング社検査法0923により検査した。使用した生物体は黄色ブドウ球菌ATCC6538であり、生物成長は99.9%以上低減した。
【実施例11】
【0042】
11.8グラムの重さの急冷された発泡体サンプルを、非イオン性活性剤トリトンX−100で清浄し、十分にリンスした。83重量%の硫酸溶液を調製し、発泡体は表面の適切なエッチングを確実に行うために25秒から45秒間溶液に浸漬した。即時に、サンプルを脱イオン水の大量の量でリンスした。発泡体を、2分間、12重量%HCLを含む溶液と120グラムの塩化無水スズ(SnCl2)で金属被覆前処理した。発泡体サンプルを、向流脱イオン水で次にリンスした。テトラナトリウムEDTA溶液を、2リットルの脱イオン水で溶解されたNa4EDTAの0.22グラムを溶解することによって調製した。金属被覆前処理された発泡体を、Na4EDTA溶液を含む反応器に置いて、回転した。銀塩溶液を、脱イオン水で4.5グラムの硝酸銀を溶解することによって調製した。銀塩溶液を、次に、27容量%のアンモニア液5.2mLで、合成した。銀塩錯体を反応器に添加し、18mLのホルムアルデヒドを続いて添加した。三時間の後、サンプルを除去し、熱水すすぎを行った。前の実施形態で調製し、金属被覆した発泡体をNaOH溶液に浸漬した。色は濁った白い銀に変わった。サンプルを乾燥して、抵抗を評価した。銀メッキされた発泡体は、ケイスレイ580マイクロオームメータを使用したところ、0.5オーム/50cmの抵抗を示した。
【実施例12】
【0043】
本発明に従って処理した銀メッキされた繊維のサンプルを、米国特許第3,877,965号で示される手順で処理される銀メッキされた繊維と比較した。繊維の両方のサンプルを、走査型電子顕微鏡で検査した。本発明の繊維の顕微鏡写真を図1に示し、比較用の繊維の顕微鏡写真を図2で示す。顕微鏡写真から明らかにわかるように、本発明の方法でメッキした繊維は、従来技術プロセスで処理される繊維と比較してよりなめらかな表面を示す。これは、本発明の方法によって提供される銀メッキのより密着した結晶粒組織によると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の手段を使用して銀メッキをされたナイロン繊維の960x倍率の電子顕微鏡写真である。
【図2】従来技術プロセスを使用して銀メッキされたナイロン繊維の5000x倍率の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀で有機基材をメッキするための改良された方法であって、
(a)前記有機基材を洗浄し、金属被覆前処理のために表面を下処理する洗浄ステップと、
(b)洗浄された前記有機的基材を、スズ塩と無機酸を含む金属被覆前処理水溶液に接触させるステップと、
(c)銀で金属被覆前処理された前記有機基材をメッキするステップとを含み、該ステップ(c)が更に、
(i)金属被覆前処理された前記有機基材を、Na4EDTA水溶液と接触させ、
(ii)続いて、金属被覆前処理された前記有機基材を、更に銀塩水溶液と接触させて前記有機基材上に酸化銀を析出させ、ここで、前記銀塩水溶液が更に錯化剤を含み、
(iii)析出した酸化銀を有する前記有機基材を還元剤と接触させ、それによって前記有機基材上にメタリックシルバーを形成させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記有機基材が繊維の形態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記繊維が織物に織られることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機基材が高分子発泡体の形態であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子発泡体が開放気泡発泡体であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄ステップが、洗浄液で有機基材を洗浄することを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記スズ塩が塩化第一スズ、塩化第二スズ及びその混合物からなる群から選択されるハロゲン化スズであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無機酸が塩酸塩、硫酸及びその混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記銀塩が硝酸銀であり、前記錯化剤がアンモニア水であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記還元剤がアルデヒド官能基を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記還元剤がホルムアルデヒド、ロッシェル塩(酒石酸カリウムナトリウム)、ヒドラジン、デキストロース、トリエタノールアミン、グリオキサール、転化糖、グルコース、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、ヒドラジンボラン及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属被覆前処理溶液が水溶性又は水混和性の溶媒を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記金属被覆前処理溶液、前記Na4EDTA溶液及び前記銀塩溶液が界面活性剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
メタリックシルバー層を上に有する物品であって、
(a)有機基材を洗浄し、金属被覆前処理のために表面を下処理するステップと、
(b)洗浄された前記有機的基材を、スズ塩と無機酸を含む金属被覆前処理水溶液に接触させるステップと、
(c)銀で金属被覆前処理された前記有機基材をメッキするステップとを含み、該ステップ(c)が更に、
(i)金属被覆前処理された前記有機基材を、Na4EDTA水溶液と接触させ、
(ii)続いて、金属被覆前処理された前記有機基材を更に銀塩水溶液と接触させて前記有機基材上に酸化銀を析出させ、ここで、前記銀塩水溶液が更に錯化剤を含み、
(iii)析出した酸化銀を有する前記有機基材を還元剤と接触させ、それによって前記有機基材のメタリックシルバーを形成させることを特徴とするプロセスによって処理された物品。
【請求項15】
前記有機基材が上に析出される少なくとも1層の非貴金属層を更に含むことを特徴とする請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記非貴金属が銅であることを特徴とする請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記非貴金属がメタリックシルバー層上に析出されることを特徴とする請求項14に記載の物品。
【請求項18】
前記メタリックシルバー層を少なくとも5重量パーセント含むことを特徴とする請求項14に記載の物品。
【請求項19】
前記メタリックシルバー層を少なくとも10重量パーセント含むことを特徴とする請求項14に記載の物品。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−514713(P2006−514713A)
【公表日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537944(P2004−537944)
【出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/029293
【国際公開番号】WO2004/027113
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505104386)ノーブル ファイバ テクノロジーズ,インク. (2)
【Fターム(参考)】