説明

改良土

【課題】 土木用の土としての耐水性、耐酸性の向上を図り、接着剤の凝集沈殿汚泥を資源化する。
【解決手段】 建設残土および/または山砂等に、接着剤の凝集沈殿汚泥を含ませる。該建設残土および/または山砂100重量部に対して、該接着剤の凝集沈殿汚泥の配合割合は0.01〜50重量部、より好ましくは3〜10重量部とする。また、該接着剤の凝集沈殿汚泥の粒子径は0.01〜10μmとする。
その他、必要に応じて石膏系の改質剤や、繊維物質を配合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事や、鋳鉄管、ヒューム管、塩ビ管、陶管などの埋設管の埋め立て工事など土木用途に使用する改良土に関し、より詳しくは土木用土に、接着剤製造工場で発生する汚泥や、必要に応じて土壌改質剤などを配合し、適量の水で混練して得られる改良土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、埋設管、構造物などの埋戻し材や、道路、堤防、土地造成などの盛土材、裏込め材として用いる土砂として、施工現場の掘削残土を用いる方法や、当該発生残土が不良の場合には、これに替えて良質の土砂を用いるか又は当該発生残土にセメント系改質材、石灰系改質材、石膏系改質材、有機系改質剤等の土壌改質材を配合した改良土を用いる方法が知られている。
【0003】
中でも本発明のように有機系改質剤を用いた先行技術としては、例えば、特開平6−17052号公報には、含水土壌に平均粒径0.05〜0.4mmのカルボキシル基含有水溶性重合体粉末を添加混合し、更に石灰を混合する技術が、特開平8−260509号公報には、建設残土等の高含水泥土に高分子ポリマーを添加し、加熱処理する技術が、特開平11−80728号公報には、建設発生土に天然高分子系固化剤を添加し団子状塊にした後、石灰等の安定剤を混合技術が、する技術が開示されている。
【0004】
更に、特開2000−219550号公報には、再生クラッシャーランの製造過程で発生するコンクリート細片及び微粉末、建設発生土、或いはそれらの混合物を珪素樹脂加工する技術が、特開2002−30652号公報には、溶解性土砂に水とセメント系改質材と繊維状物質の水溶液を混合攪拌して一次改良土とした後、水と高分子ポリマー系改質材の水溶液を混合攪拌する技術が、特開2002−129160号公報には、吸水性高分子と高膨潤性粘土と水溶性高分子からなる土壌改良剤を泥土に添加、混練する技術が、特開2002−1611275号公報には、水とセメント系改良材と高分子ポリマー系改良材からなる土質改良材水溶液を、土砂と混練する技術が、特開2002−199814号公報には、土砂と水と吸水性繊維物質、及び水溶性高分子ポリマーを含む混合物を攪拌して構成した高吸水性改良土などが開示されている。
【0005】
一方、接着剤を製造する工場においては、反応釜を洗浄した洗浄水が排出され、汚水処理過程で接着成分を含有する汚泥が発生し、産業廃棄物として処分されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−17052号
【特許文献2】特開平8−260509号
【特許文献3】特開平11−80728号
【特許文献4】特開2002−30652号
【特許文献5】特開2002−129160号
【特許文献6】特開2002−161275号
【特許文献7】特開2002−199814号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の土木用土は砂質粘土が主成分のため雨水や散水等により再泥土化し流れ出したりすることがあり、また、セメント系改質材、石灰系改質材などで改良した土は、降雨、特に近年問題となっているpH3〜5程度の酸性雨により溶出し、乾燥すると岩塊状に固結する等の問題があった。その他、石灰系改質材、石膏系改質材による改良土は降雨水に溶出して汚泥化、濁水化するなどの問題もあった。更に、純粋な化学物質の添加はコストアップの要因になり、土壌を汚染するなど環境への影響もあった。
【0008】
また、接着剤を製造する工場において発生した汚泥は、凝集沈殿処理され、廃棄されるが、廃棄処理には多額の費用を要し、最近では廃棄場所も少なくなりつつあり、地球環境の保全、又産業廃棄物の処理コストの削減等の観点から、接着剤を製造する工場において発生した汚泥を再資源化して他の用途に再利用することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑み検討されたもので、接着剤を製造する工場において発生した汚泥を再資源化し、埋戻し材や盛土材用途に利用することにより耐水性、耐酸性及び接着性を向上させることを目的とするものであり、以下のことを特徴とする発明である。
すなわち、請求項1に記載の発明は、建設残土および/または山砂等に、接着剤の凝集沈殿汚泥を含むことを特徴とする改良土である。
また、請求項2に記載の発明は、該建設残土および/または山砂等100重量部に対して、該接着剤の凝集沈殿汚泥の配合割合が0.01〜50重量部であることを特徴とする請求項1記載の改良土である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接着性汚泥により土が強固に団粒化され、地盤沈下、地滑り、降雨水で汚泥化、濁水化しない不溶解性の土となり流出することなどがなく、土盤支持力が改善される。しかも耐水性、耐酸性、接着性に優れる。一方では、これまで廃棄処分していた接着剤汚泥を再資源化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において改良の対象となる土は浚渫土、軟弱土、掘削土、泥土、建設残土、汚泥、砂質粘土、砂質土、粘性土など特に制約はないが、上下水道工事、道路工事、宅地造成工事などの土木・建設工事に伴って発生する建設残土が改質効果が大きい土として好適に使用され、含水比の範囲は一般的に5〜150%程度である。含水比とは、100℃の炉乾燥によって失われる土中水の質量の、土の炉乾燥質量に対する比を百分率で表わした値であり、JISA1203(含水比試験方法)によって測定される値である。
【0012】
本発明において用いる接着剤の凝集沈殿汚泥とは、接着剤製造工場において、その反応釜、搬送用や保管用の容器、その他使用器具を洗浄した排水を凝集沈殿させた後、乾燥し、改良土として配合しやすいように水分調整したものであり、汚泥としては、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、SBR、NBR、MBR、酢酸ビニル系共重合樹脂などのラテックスやエマルジョンを含有するものが挙げられ、特にアクリル樹脂系の汚泥を用いると耐水性が向上する。
【0013】
前記の排水は詳しく述べると、先ず工場内の一個所の処理槽に集められ凝集沈殿槽に入れられる。次いで、攪拌しながらpH調整、有機物を凝集させる目的で塩化第二鉄を0.2重量部程度配合し、pHを2〜3にする。次に苛性ソーダを配合して、pH6.5〜7.5に中和し、例えば、メタリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、アクリル酸を主成分とする高分子凝集剤を微量配合してフロックを形成させる。
【0014】
上澄み液が取り除かれた沈殿層を珪藻土が加えられた真空脱水機に導入して脱水し、珪藻土によって捕捉された汚泥を取り出す一連の処理によって、フロックを水から分離する。このフロックの成分重量比は、一例を挙げれば、酢酸ビニル樹脂が12、珪藻土3、塩化鉄3、その他3(アクリル、ラテックス、炭酸カルシウム、珪砂など)で、残りの79は水分となっている。
【0015】
この汚泥は、含水率が10〜80%、より好ましくは20〜50%になるまでフィルタープレスや真空脱水機により水分調整される。下限に満たないと原料土成分との混合が不均一になりやすく、上限を超えるとベトベトで、原料土中の固形分と水分が分離しやすく、取り扱いが容易ではなくなる。
【0016】
前記の接着剤の凝集沈殿汚泥は原料土に配合することで接着成分が原料中の砂、粘土、石灰及び一般的な土壌改良剤などにバインダーとして作用し、接着強度、耐水性、耐酸性が著しく向上し、降雨水による流出を防止することができる。
【0017】
また、酢酸ビニルエマルジョンのように耐水性のないものであっても、凝集沈殿処理することによりエマルジョンが疎水化され、土に耐水性、耐酸性を付与することができる。
【0018】
接着剤の凝集沈殿汚泥の原料土に対する配合割合は、対象とする土質や含水比で異なるが本発明では汚泥の配合量が多くなればなるほど、接着力を向上させることができるが、その反面、乾燥収縮が大きくなり、また粘性が上がり作業性が悪くなる傾向がある。従って配合割合は原料土100重量部に対して0.01〜50重量部、より好ましくは0.05〜30重量部、更に好ましくは3〜10重量部の範囲とし、この範囲であれば改良土としての充分機能する。下限に満たないと接着力が乏しくなり、上限を超える混練する際の作業性が悪くなる。粒子径については特に制約はないものの0.01〜10μmの範囲が概ね好ましく、下限に満たないと乾燥収縮率がやや大きくなり、上限を超えると均一に分散されにくく、耐水性、耐酸性がやや劣る傾向にある。
【0019】
次に、本発明においては接着剤の凝集沈殿汚泥に加えて、土壌改質剤を配合してもよい。土壌改質剤としては、水硬性物質、例えば、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ジェットセメント、シリカセメントなどのセメント系改質剤、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)))、炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とする石灰系改質剤、無水石膏、半水石膏、二水石膏などを主な成分とする石膏系改質剤などが挙げられる。
【0020】
消石灰は水と混和され、空気中の炭酸ガスと結合して徐々に硬化する気硬性を備えおり、その化学変化は化1で示される。

【化1】


消石灰は土木用土の表面から硬化させるので内部の水分の急激な蒸発を緩和し、乾燥収縮を抑制する。
石灰系改質剤の添加量は、原料土100重量部に対して0.01〜20重量部配合することにより酸性土壌の中和剤として作用し、粘り気が増す。
【0021】
石膏は、硫酸カルシウムを主体とする無色或いは白色の無臭の物質で、二水石膏(CaSO4・2H2O)、半水石膏(CaSO4・1/2H2O)及び無水石膏(CaSO4)の3形態に大別されるが、半水石膏(焼き石膏)や無水石膏は、化2、化3で示されるように水を加えると短時間で硬化する性質を有する水硬性の土木材料である。尚、二水石膏はそれ自体では水硬性を持たないが、焼成等により半水石膏、無水石膏に変化し、水硬性が得られ、硬化剤として機能する。
【化2】


【化3】

【0022】
石膏としては、石膏ボードを粉砕し、水硬性が得られるように温度100〜230℃の範囲で焼成処理したもの(半水石膏或いは無水石膏)で粒度3〜30μm程度の微粒子が適用できるが、石膏を含有する成型体であれば廃材でもよく、例えば、廃石膏ボード、廃石膏ブロック、型どり用廃石膏型、陶磁器製造工程で発生する廃石膏型などを用いることができる。
【0023】
石膏は、比重が小さく、原料土との混練が容易であり、原料土100重量部に対して1〜50重量部、より好ましくは5〜20重量部配合することにより硬化剤として作用し、粘り気が増すといった利点がある。石膏の配合割合が下限に満たないと粘り気が余り増さず、上限を超えると硬くなり土木・建設作業がしづらくなる。また、石膏は収縮しにくくいため、亀裂を生じないといった利点もある。
【0024】
その他、必要に応じて吸水性繊維物質を配合してもよく、吸水性繊維物質としては、例えば、セルロース繊維、アルギン酸繊維、キチン,マンナン繊維、羊毛、絹、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール系繊維等があげられる。
また、焼却灰、フライアッシュ、スラグ、シャモットなどを配合してもよい。
【0025】
本発明の改良土は、通常の方法、例えばベルトコンベヤ上の原料土に前記の各種改質剤を散布し、バックホウ、パドルミキサーなどにより混合することで得られるが、混合、攪拌装置には特に制約はない。
【実施例】
【0026】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、本発明をより具体的に示すものであって、配合割合など特に限定されるものではない。
実施例1
接着剤の凝集沈殿汚泥
接着剤の凝集沈殿汚泥として、アクリル系接着剤を含有する排水を塩化第二鉄、高分子凝集剤を用いて凝集沈殿させ、フィルタープレスで含水率が40%になるように乾燥させ、粒子径3μmの接着剤の凝集沈殿汚泥(a)を得た。
砂質粘土系の建設残土 100重量部
アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a) 0.5重量部
上記配合にて、混練して実施例1の改良土を得た。
【0027】
実施例2
実施例1において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)を5重量部配合した以外は同様に実施して実施例2の改良土を得た。
【0028】
実施例3
砂質粘土系の建設残土 100重量部
アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a) 20重量部
生石灰 0.5重量部
上記配合にて、混練して実施例3の改良土を得た。
尚、生石灰は、汚泥(a)の添加量が多いため水熱反応で水分を除去するために用いた。
【0029】
実施例4
砂質粘土系の建設残土 100重量部
アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a) 5重量部
二水石膏 10重量部
ポリアミド繊維 0.5重量部
生石灰 0.5重量部
上記配合にて、混練して実施例4の改良土を得た。
【0030】
実施例5(酢酸ビニル系接着剤の凝集沈殿汚泥(b)を用いた場合)
実施例2において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)に代えて酢酸ビニル系接着剤の凝集沈殿汚泥(b)を用いた以外は同様に実施して実施例5の改良土を得た。
【0031】
実施例6
実施例2において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)の粒子径を0.05μmとした以外は同様に実施して実施例6の改良土を得た。
【0032】
実施例7
実施例2において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)の粒子径を15μmとした以外は同様に実施して実施例7の改良土を得た。
【0033】
比較例1(汚泥(a)を配合しない場合)
実施例1において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)を0.005重量部配合した以外は同様に実施した。
【0034】
比較例2(汚泥粉末(a)の配合量が上限を超える場合)
実施例3において、アクリル系接着剤の凝集沈殿汚泥(a)を60重量部配合した以外は同様に実施したが、粘性が高く作業性が悪い上、ゴム弾性であり圧縮強度試験においては測定不可であった。
【0035】
評価結果を表1に示す。
【表1】


試験方法、評価方法は以下の通りとした。
【0036】
耐水性
表1に示す配合で、水分が25%になるように調整し、直径が2cmの球体を成型し、20℃−相対湿度65%の恒温恒湿槽に一週間放置して乾燥し、乾燥後300mlのビーカーに蒸留水を150ml入れ、球体を一週間浸漬し、目視にて外観を確認した。異常なきを◎、一部が溶出し、浸漬水が薄茶色を呈したものを○、球体がくずれ、完全に球形をとどめていないものを×とした。
【0037】
耐酸性
耐水性の試験と同様に、球体を作成し、蒸留水の代わりにpH3.5の塩酸水溶液を用いて外観を確認し、異常なきを◎、一部が溶出し、浸漬水が薄茶色を呈したものを○、球体がくずれ、完全に球形をとどめていないものを×とした。
【0038】
圧縮強度
表1に示す配合で、水分8%に調整し、成型圧力50kgf/cmで直径5cm、高さ5cmの円柱体を作成し、常温で1ヶ月放置して乾燥し、圧縮試験機を用い、スピード5mm/minで圧縮した。
【0039】
乾燥収縮率
表1に示す配合にて、水分8%に調整し、成型圧力50kgf/cmで直径5cm、高さ5cmの円柱体を2個作成し、ただちにノギスで試験体にマークを付け、高さ方向の長さを測定し、測定後、室内で24時間以上乾燥させた後、空気乾燥器で100±5℃で7時間以上乾燥した。室温まで冷却後、ノギスで乾燥後の試験体のマークの位置を0.05mmの単位で計測し、数1で示す式にて乾燥収縮率を算出し、2個の平均値を出した。
【数1】

【0040】
作業性
混合状態を確認し、スムーズに行へ良好なものを◎、普通を○、混合するのにやや時間のかかったものを△、混合するのに相当時間を要し作業性が悪いものを×とした。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設残土および/または山砂等に、接着剤の凝集沈殿汚泥を含んでなることを特徴とする改良土。
【請求項2】
該建設残土および/または山砂等100重量部に対して、該接着剤の凝集沈殿汚泥の配合割合が0.01〜50重量部であることを特徴とする請求項1記載の改良土。

【公開番号】特開2006−1950(P2006−1950A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176367(P2004−176367)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(304030877)
【Fターム(参考)】