説明

改良型の体内から熱交換を行う装置およびその方法

【課題】患者の体温を変動させる方法および装置を提供する。
【解決手段】患者の体温を変える方法および装置は、低体温症の状態を誘発することを含んでいる。体温を変える処置は、体内熱交換カテーテルを使って達成されるが、このようなカテーテルの内部には、液状の熱交換媒体が循環している。熱交換カセットがカテーテルの循環導管に取付けられており、熱交換カセットはその寸法が制御装置の内部の空洞に嵌合するように設定されている。制御装置は、熱交換カテーテルの中で循環している液状の熱交換媒体と熱伝達状態にある熱交換器に加熱された液または冷却された液を供給する加熱・冷却装置と、ユーザー入力装置と、肉体およびシステム周辺の多様なセンサーからの入力を受信するように接続されたプロセッサを備えている。体温を上下動させるにあたって、行き過ぎ量が無い程度の温度勾配を生じる温度制御機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は米国特許仮出願連続番号第60/695,800号および第60/594,662号の優先権を主張するものであり、これら出願の内容全体はここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。
【0002】
本発明は、広義には、医療装置および医療方法に関するものであり、特に、プログラム可能な、マイクロプロセッサ主体の制御装置に関連するとともに、患者の肉体の少なくとも一部を冷やすまたは暖める目的で患者の体内に挿入された熱交換器により循環させられる熱交換液の温度と流れを制御する方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
通常の状況では、健康な被検体の肉体の熱調節機構は、肉体を摂氏約37度(華氏約98.6度)に維持するように作用し、このような状態を「正常体温−平熱」と呼ぶ。正常体温を維持するために、被検体の肉体から喪失された熱を体内の代謝活動によって生成された同量の熱に置き換えるように熱調節機構が作用する。寒冷な環境などの極端な環境に晒されたり、疾病または麻酔処置の結果として熱調節能力を喪失したりといったような多様な理由から、被検体は正常体温よりも低い体温しか発生しない、「低体温症」として周知の症状を見せることがある。高温環境に晒されるという極端な状況や熱調節機構に障害が生じた結果として、被検体は正常体温よりも高い、「高体温症」として周知の症状を見せることもあり、後者の事由が引き起こす症状は「悪性高体温症」と呼ばれる症状である。肉体は、正常体温よりも高い設定点体温(すなわち、肉体の熱調節機構が維持するように機能する体温)を確立するが、これは、普通、「発熱」と呼ばれる症状である。本発明は、被検体の体温の少なくとも一部を変動させる必要がある上述のような状況またはそれ以外の状況に対処する。
【0004】
偶発的低体温症は、一般に、生命を脅かすことさえある治療の必要な危険な症状である。例えば、体温が摂氏30度よりも低温に降下した場合のように、酷い場合は、低体温症は、不整脈、血液の正常な凝固能力喪失、または、正常代謝障害などの深刻な結果を生じることがある。低体温症の期間が長引くようであれば、被検体は免疫反応不全に陥って感染発生率が増すような目に遭うこともある。
【0005】
偶発的低体温症を治療する簡単な方法はかなり以前から知られていた。このような方法の具体例として、患者を毛布で包む、経口的に暖かい液体を投与する、患者に温浴させる、といった処置がある。低体温症がそれほど酷くなければ、これらの方法は効果的である。しかしながら、患者を毛布に包む処置は、患者自身の肉体が自らを暖め直すだけの熱を発生する能力が成否を決める。経口的に温かい液体を投与する処置は、患者の嚥下能力次第であり、使われる液体の温度と限られた時間のうちに投与することができる液体の量には限りがある。患者を温浴させる処置は実行できない場合が多く、特に、患者が同時に外科手術やそれ以外の医療処置を受けている場合には実行不能である。
【0006】
最近では、低体温症はより複雑な態様で処置される。加温毛布が患者に供与され、または、患者の皮膚に熱を供給する加温ランプが使われる。しかしながら、患者の皮膚に供給される熱は、熱伝導または熱放射によって皮膚を通して伝達しなければならず、手遅れになって効果が無い場合があり、また、皮膚に向かう血流が肉体の熱調節反応によって遮断される場合もあり、従って、皮膚が温まっても、患者の肉体の芯部に熱を供与するには、このようなメカニズムが有効とはならないことがある。例えば、患者が麻酔措置を受けている最中で、吸気ガスが患者に投与される場合、吸気ガスが加温される場合がある。これにより、熱は比較的早急に患者に伝わるが、患者の肺を損傷せずに投与することができる熱の量は非常に限られている。低体温症患者を暖める代替の方法として、IV注入によって患者に温かい液体を注入する処置があるが、これは、注入することができる液体の量と液体の温度に限りがある。
【0007】
極端な状況では、観血の度合いが大きい方法を採用して低体温症を抑制することができる。血液分流器を患者に設置して、加熱器を備えている心肺バイパス(CPB)装置のような体外装置によって患者由来の血液の経路変更することができる。このように、血液は患者体内から取り出されて、体外で加温されてから患者の体内にポンプで戻すことができる。このような極端な手段は有効性については明らかに有利であるが、観血性については明らかに欠陥がある。血液を処理する体外回路を通して血液をポンプで汲む処理は、一般に、血管を大いに損傷するし、この処置は、高度に熟練した人員が機器類を操作する病院施設環境においてのみ遂行し得るものである。
【0008】
偶発的高体温症も多様な条件が原因で起こる。疾病または麻酔のせいで肉体の正常な熱調節能力が喪失された場合、「悪性高体温症」として知られている、急上昇する高熱を発症する。肉体は正常な設定点よりも高い体温に設定されて発熱することがあるが、これは高体温症の一種である。低体温症と同様に、偶発的高体温症は、場合によっては有害で、致死的となることさえある深刻な症状である。特に、高体温症は神経を破壊することが判明しており、それは、高体温症単独であれ、外傷性脳損傷または心筋梗塞のような他の健康上の諸問題と合併した場合であれ、同じであり、後者の各種疾患は、体温が正常レベルを超過すると、劇的な悪化を生み、死に至ることさえあることが分かっている。
【0009】
高体温症に関しては、症状がそれほど酷くない場合、高体温症を治療するのに、冷水浴や冷却毛布、アスピリンまたはアセトアミノフェンのような非ピリン系薬剤のような簡単な治療法が存在するうえに、より極度な症例に対しては、低温吸気ガス、低温注入、心肺バイパス処置中の血液冷却のような、効果は高いが複雑で観血性が高い手段も存在する。しかしながら、これらの処置法も高体温症に関連して先に説明した制限や合併症に直面する。
【0010】
低体温症と高体温症の両方が有害で、場合によっては治療を必要とするが、特に、低体温処置は治療上有利であったり、または、それ以外の場面で有利となることがあるため、意図的に誘発されることがある。例えば、心臓外科手術において心拍停止期間中または心不全期間中には脳や脊髄に送る血液が不足し、従って、脳損傷またはそれ以外の神経損傷を生じる恐れがある。
【0011】
低体温処置は容認できる神経保護処置として医療界では認識されており、よって、患者が意図的に誘発された低体温状態に保たれるのはよくあることである。同様に、低体温処置はまた、頭部外傷、脊髄外傷、出血性卒中または虚血性卒中などのような或る種の神経学的疾患または障害の望ましくない症候を治療する、または、そのような症候を最小限に抑える有利な保護機能を示す。更に、冠動脈形成術のような血管画像化法の間に用いられるような腎毒性造影剤に晒されたことを原因とする損傷から、低体温処置が腎臓を保護することが分かっている。
【0012】
上述の理由やそれ以外の理由から、心臓切開外科手術、脈瘤修復外科手術、血管内脈瘤修復処置、脊髄外科手術、または、これら以外の各種外科手術で、脳、脊髄、または、各種生体器官に向かう血流を途絶させたり、血流の継続を危うくする恐れのあるような外科手術または介在処置を促進する目的で、または、そのような手術または介在処置の望ましくない効果を最小限に抑える目的で、全身性低体温症または局所性低体温症を誘発するのが望ましい場合がある。低体温症はまた、低体温症は、心筋梗塞(MI)の後で心筋組織を保護するのにも有利であることが分かっている。
【0013】
低体温症を誘発する試みである現在の方法は、大抵、冷却毛布または冷水摩擦による恒常体表冷却処置に関与している。しかしながら、このような冷却方法は極度に厄介であり、体の芯を冷却するには概ね有効とは言えない。体表に供与されたアルコールまたは冷水に対する肉体反応は毛細血管床を通って体表全体に向けて流れる血液の循環を遮断することであり、従って、冷えた体表が体芯を低温化するのを阻止することである。この体表冷却処置が全く問題なくうまくいくとしても、あまりに効き目が遅すぎる。この方法によって患者の体温を高精度に制御するのも不可能である。例えば、細動除去装置やその他のありふれた病院機器類を使って冷水浴を採用する場合には、患者の安全問題も提起される。
【0014】
患者が外科手術環境にある場合、患者は麻酔を受けてから、上述のような心肺バイパスによって冷却される。しかし、大抵は、これは十分な外科手術チームと十分な外科手術室を含む最も極端な状況においてのみ利用できるのであって、重要な点は、ポンプや管から構成された体外回路を通して血液をポンプで汲むことによって生じる血管への損傷のせいで、短時間しか利用できないことである。一般に、外科医は4時間を越える長期間にわたって血液をポンプで汲むのをよしとしないが、卒中や外傷性脳挫傷の場合には、1日を超える長期間にわたって低体温症を誘発するのが望ましい場合がある。大量の血液の温度を直接制御するせいで、この方法は患者の体温をかなり高精度に制御することができる。しかしながら、このように患者の血液を大量に体外で操作することこそ、この処置を長期採用するのが極めて望ましくないものとなっている理由である。
【0015】
体外の機械ポンプを使って血液を汲む処置を含まずに、効果的に体芯に熱を送る方法、または、効果的に体芯から熱を奪う方法が提案されてきた。例えば、患者の血流中に置かれた熱交換カテーテルによって低体温症または高体温症を治療する方法がギンズバーグ(Ginsburg)に交付された米国特許第5,486,208号に記載されており、この特許の開示内容全体は引例に挙げることにおり本件の一部を成すものとする。このようなシステムを制御することにより患者の体温を制御する手段は、これもギンズバーグに交付された米国特許第5,837,003号に開示されており、この特許の開示内容全体は引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。このような抑制された血管内温度制御のまた別なシステムがギンズバーグほかに交付された米国特許第6,620,188号および米国特許第6,849,083号に開示されており、これら特許の開示内容全体はここに引例に挙げることにより本件の一部を成すものとする。上述のような特許とそれらの公開は、熱交換領域を有してバルーンに交換用フィンが設けられた熱交換カテーテルを患者の血流に挿入してから、バルーンを血液に接触させたままでバルーンの中を通して熱交換液を循環させることで血流に熱を供与する、または、血流から熱を奪うことにより低体温症を治療する方法、または、低体温症を誘発する方法を開示している。(本件で使用されるようなバルーンは、圧力下で容易に膨張させられ、真空下で容易に収縮させられるような構造体である。)
【0016】
カテーテルの内部を循環する流体の温度を利用して、カテーテルに隣接している組織を冷却し、または、カテーテルの温度を調節する多数のカテーテルシステムが公開された当該技術で明らかである。このようなカテーテルの或るものは、熱交換液源に好適な貯水槽またはこれに類似するタンクに依存している。例えば、ダツー(Dato)に交付された米国特許第3,425,419号、イムラン(Imran)ほかに交付された米国特許第5,423,811号、ナイルサン(Neilson)ほかに交付された米国特許第5,733,319号、および、フィリップス(Phillips)ほかに交付された米国特許第6,019,783号は、タンクまたは貯水槽からの熱交換液を循環させる処理と組合せたカテーテルを開示している。しかしながら、血流にカテーテルを設置する上述のようなシステムについては、一度使用してから次に使用するまでの間に流体を滅菌するのが困難であるとともに、相当な熱量を有する大量の流体の温度を迅速に変動させるのが困難である。
【0017】
或る状況では現在のシステムを使って利用できる冷却力よりも高い冷却力が必要となることも認識されている。例えば、卒中または心臓の突発的故障の直後に患者の血液を冷却する時間を短くすることで、患者が回復する機会を増やすこと、または、少なくとも、虚血が原因で起こる損傷の程度を緩和することができることが要求される。所望の標的値まで患者の芯部の体温を低下させるのに必要な時間を縮める1つの方法は、患者の血液から熱を奪うのに利用できる冷却力を最大限にすることである。しかしながら、上述のような目下利用できるシステムは供給することのできる冷却力に限界があり、または、体外循環で熱交換する場合には、上述のように観血性が高すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5,486,208号
【特許文献2】米国特許第5,837,003号
【特許文献3】米国特許第6,620,188号
【特許文献4】米国特許第6,849,083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述の理由から、先行技術の方法の不具合を回避しながらも、効果的かつ効率的な態様で患者の体温を制御するために使用されるカテーテルに適した流体源から熱を供与し、または、流体源から熱を奪う、迅速かつ有効な手段が必要となる。このようなシステムは、患者または標的組織の温度の上昇または低下を迅速、効果的、かつ、制御自在に行うことができ、更に、患者または標的組織の温度からのフィードバックに基づいて患者または標的組織の温度を調節することを迅速、効果的、かつ、制御自在に行うことができる。現在のシステムと比較して、より高い冷却力を信頼の置ける態様で供給し、患者の肉体から熱をより良好に奪うことができ、所望の目標温度まで患者の体温を下げるのに必要な時間を短縮し、更に、少なくとも1人の操作者によって病院の外科手術病棟と一般診療病棟の両方に配備することができるシステムを提供することは、特に有利である。本発明はこのような要求とそれ以外の必要を適えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、改良型のシステムを設けることにより先行技術の諸問題の大半を回避しながら、体内のカテーテルの加熱または冷却もしくはその両方を制御する。このシステムは、一般に、体外の制御装置、制御装置から延びている多数の導管、および、導管を介して制御装置と連絡している熱伝達カテーテルを備えている。制御装置は、目標温度達成の行き過ぎを回避するのに有利な制御方法論を利用して、カテーテルの熱伝達領域の温度を変化させる。カテーテルおよび導管は、流体循環経路を画定するのが好ましいが、制御装置は、循環経路の内部の熱伝達液の温度を調節することにより、熱伝達領域の温度を変化させる。制御装置は空洞を画定しており、この空洞の内部に嵌合するカセットに導管が接続され、カセットに設けられた熱交換素子は、その中を通って熱交換液が流動するのが望ましい。
【0021】
本発明の一局面では、回路内の熱交換液の温度および流量を制御する制御装置が設けられる。この回路は、熱交換カテーテル、熱交換器、および、回路の中を通って熱交換液を流動させるポンプを備えているタイプの回路である。制御装置は加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子を備えており、このような素子は、熱交換液を包含している熱交換器と熱伝達接触状態にある。患者センサーは、患者の生体条件を表す信号を生成するように設置されるとともに、そうするように構成されている。制御装置のマイクロプロセッサは、患者センサーからの信号を受信し、加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子を制御することで応答する。制御装置は、導管に備わっているポンプを作動させる機械駆動装置、および、回路内を循環する流体のパラメータを検出し、流体パラメータの存在または不在を表す安全信号を生成する安全センサーを更に備えている。安全信号は、ポンプの動作を制御することで応答するマイクロプロセッサに送信される。センサーは泡検出装置であり、流体パラメータは熱交換液に混入した気体である。これに代わる例として、回路は貯水槽を更に備えており、センサーは、貯水槽内の水位レベルが低レベルであることを検出する流体レベル検出装置である。
【0022】
本発明の更に別な局面では、熱伝達カテーテルシステムは、熱伝達カテーテルを有している熱伝達媒体循環ループ、熱交換素子、および、熱伝達カテーテルおよび熱交換素子に接続されて、両者の間で熱伝達媒体を循環させることができるようにした複数の導管を備えている。このシステムは、中を通って熱伝達媒体を循環させる循環ループの内部の熱伝達媒体と接触しているポンプヘッドを更に備えている。熱交換素子およびポンプヘッドを含んでいるカセットは、制御回路およびポンプモータを格納している制御装置と嵌合し、ポンプヘッドはポンプモータと係合する。ポンプモータが経験する逆回転トルクを検出する電子フィードバックループは制御回路にフィードバックを供与し、制御回路はポンプモータの速度を制御する。
【0023】
また別な局面では、本発明は、熱交換カテーテル、熱交換素子、および、ポンプを有しているタイプの回路の内部の熱交換液の温度と流量を制御する制御装置を提供するが、ポンプは、熱交換液に回路の中を流動させるよう機能する。制御装置は加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子を有しており、このような素子は熱交換素子と熱伝達接触状態にある。機械駆動装置は回路内に含まれているポンプを作動させて、熱交換液を汲出す。制御装置はマイクロプロセッサを有しており、マイクロプロセッサは加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子と機械駆動装置の両方を制御するように接続されている。安全システムは回路の諸問題を検出する目的で設けられている。安全システムは、システムまたは患者、もしくは、その両方のそれぞれのパラメータを表す信号を生成する複数のセンサーを有している。信号はマイクロプロセッサに送信され、マイクロプロセッサは、加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子の動作および機械駆動装置の動作を制御することで応答する。一実施形態では、安全システムは、回路の内部の流体水位を検出するセンサーを有している。また別な実施形態では、安全システムは、患者の体内の部位の温度を検出するセンサーを有しており、更に、患者の体内の部位の温度を検出する冗材センサーを有しており、マイクロプロセッサがこれら2個のセンサーにより検知された患者の体温の差に応答する。更に、安全システムは、回路内の泡を検出するセンサー、加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子の動作ステータスを検出するセンサー、または、機械駆動装置の動作ステータスを検出するセンサーを複数含んでいる。
【0024】
本発明はまた、患者の体温を調節する方法を提供するが、この方法は、中に流体経路が設けられている熱交換カテーテル、熱交換カテーテルに流体を通す様式で接続されている1対の導管、および、導管を介して接続されて、熱交換カテーテルの中を通して熱交換媒体を循環させる熱交換器を有している熱交換カテーテルシステムを設ける工程を含んでいる。この方法は、熱交換カテーテルシステムの熱交換器に連結されるのに適した第1の制御装置を設ける工程を更に含んでおり、第1の制御装置は加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子を有しており、熱交換器の内部の熱交換媒体と第1の割合で熱を交換する。この方法は、熱交換カテーテルシステムの熱交換器に連結するのに適した第2の制御装置を設ける工程を更に含んでおり、第2の制御装置は加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子を有しており、熱交換器の内部の熱交換媒体と第2の割合で熱を交換する。この方法は、熱交換カテーテルシステムを第1の制御装置と連結する工程と、熱交換カテーテルを患者の体内に挿入する工程と、第1の制御装置の加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子と熱交換器との間で第1の割合で熱を交換することにより、患者の体温を調節する工程と、熱交換カテーテルシステムを第1の制御装置から切離す工程と、熱交換カテーテルシステムを第2の制御装置と連結する工程と、第2の制御装置の加熱素子または冷却素子、もしくは、加熱・冷却素子と熱交換器との間で第2の割合で熱を交換することにより、患者の体温を調節する工程とを更に含んでいる。第1の制御装置および第2の制御装置は実際は同じ物理的装置であるが、このように装置を連結し、切離し、更に、実質的に再度連結し直す方法は、例えば、患者が或る場所から別な場所に輸送される場合、または、後段で説明するように、治療処置または診断処置を受けている場合には有益である。
【0025】
この方法は、熱交換カテーテルシステムを第1の制御装置から切離す工程と熱交換カテーテルシステムを第2の制御装置と連結する工程との間に、患者に治療処置または診断処置を施す工程を含んでいる。実際には、第1の制御装置および第2の制御装置は同じ物理的装置である。
【0026】
本発明の更に別な方法では、熱伝達カテーテルおよびこれに付随する制御装置を使って、患者の体温の変化率が制御される。熱伝達カテーテルは表面に熱伝達領域が設けられており、制御装置は導管を介してカテーテルと連絡状態にある。制御装置は、カテーテルの熱伝達領域の温度を体温に相関的に上昇または降下させるのに適している。患者の肉体の空洞内の温度またはそれ以外の部位の体温が検知され、同時に、熱交換領域の温度が決定される。次いで、目標温度が選択される。目標温度は体温とは異なっており、または、正常な患者体温を維持するのが目的である場合には、目標温度は体温と同じである。体温から目標温度まで温度が変化するのに要する時間の割合に等しい変化率が選択される。変化率に基づくカテーテルの熱伝達領域の温度が設定される。変化率に基づくカテーテルの熱伝達領域の温度が設定される。この方法は、目標温度と体温の温度差を監視する工程と、温度差が所定の閾レベルよりも低くなると、変化率を小さくする工程とを含んでいる。熱伝達カテーテルおよび導管はそれぞれの内部に流体循環経路を画定しており、カテーテルの熱伝達領域の温度を設定する工程は、流体循環経路の内部を循環する流体の温度を設定する工程を含んでいるのが望ましい。カテーテルの熱伝達領域の温度を決定する工程は、循環する流体の温度を直接的に、または、間接的に検知する工程を含んでいるのが好ましい。目標温度と循環する流体の温度との比較が行われ、その比較結果は循環する流体の温度を調節するために利用される。
【0027】
また別な局面では、本発明は、制御可能で迅速な態様で患者の体温を低下させることができるシステムを提供する。このシステムは、熱交換器、ポンプ、および、冷却媒体の配置を含んでおり、この配置は、熱負荷が約400ワットから約500ワットの範囲である場合でも、一次冷却液ループの温度を摂氏0度から摂氏5度の範囲に維持することができるようにするのに十分なだけ熱エネルギーを奪うことができる。
【0028】
また別な局面では、本発明は、患者の体温を調節するシステムを含んでおり、このシステムは一次流体回路を備えており、一次流体回路は、一次流体貯水槽と、一次流体回路ラインとを有しており、一次流体回路ラインは一次流体回路ポンプを、一次流体貯水槽に接続し、一次流体貯水槽を加熱・冷却装置に接続して、一次流体貯水槽から加熱・冷却装置に一次流体を給送するとともに、一次流体貯水槽に帰還させて循環させる、途切れることのない流体経路が形成されるようにしている。このシステムは、一次流体回路のアクセスポイントを更に備えており、アクセスポイントは、一次流体回路を熱交換器の一次流体回路側に、流体を通す様式で接続し、熱交換器には二次流体回路側が設けられている。このシステムは、患者の体内に挿入することができる熱交換カテーテルを更に備えており、熱交換カテーテルは患者の体温を上昇させるように構成されているか、体温を降下させるように構成されているか、または、体温を維持するように構成されているか、いずれかである。このシステムは、熱交換器の二次回路側および熱交換カテーテルの中を通して二次流体を流動させる二次流体回路を更に備えており、二次流体回路は二次流体貯水槽と二次流体回路ポンプとを有しており、二次流体回路ポンプは二次熱交換液を二次流体貯水槽から二次流体回路を通して熱交換カテーテルに給送してから、二次流体回路に逆戻りさせてから二次流体貯水槽に帰還させる。このシステムは、一次流体回路および二次流体回路の温度を表す信号を供与するよう構成された、少なくとも1個の流体センサーと、患者の体温を表す信号を供与するよう構成された患者センサーと、制御装置とを更に備えており、制御装置は患者センサーおよび流体センサーから信号を受信してから、これらの信号に応答して加熱・冷却装置を制御することで、一次流体回路および二次流体回路の内部を流動している流体の温度を調節する。また別な局面では、熱交換器が一次流体経路または一次流体回路に接続されると、一次流体経路の容積または一次流体回路の容積は増大する。
【0029】
更に別な局面では、本発明は、制御装置がマイクロプロセッサを含んでいる事例を含んでおり、マイクロプロセッサはセンサーに応答するとともに必要に応じて制御信号を供与することでシステムの動作を制御するよう構成されている。
【0030】
更に別な局面では、本発明は、システムに電力を供給する電源であって、例えば、加熱・冷却装置に電力を供給する電源と、システムの動作を制御する制御装置回路を備えており、制御装置回路は、電源が機能しているうえに適切であると判定されたパラメータの範囲内で作動しているか否かを判定手段と、システムの動作を監視する手段と、監視されているシステムの誤差状態を判定する手段と、誤差状態が存在していることを操作者に警告する手段を有している。
【0031】
また別な局面では、本発明は、制御装置が加熱・冷却装置を制御することで、一次流体回路内の流体の温度を、熱交換器を一次流体回路に流体が通る様式で接続する前の所定の温度に変動させる事例と、制御装置が加熱・冷却装置を制御することで、一次流体回路内の流体の温度を患者の治療を開始する前の所定の温度に変動させる事例とを含んでいる。
【0032】
本発明の更に別な局面では、一次流体回路は、そこに複数の温度センサーが配置されており、温度センサーはアクセスポイントを通って熱交換器の一次流体回路側に流入する一次流体または一次流体回路側から流出する一次流体の温度を表す信号を供与する。これに代えて、熱交換器の一次流体回路側に流入する一次流体と一次流体回路側から流出する一次流体の温度差が、二次流体回路に伝達されている熱交換量に比例するようにし、従って、患者に伝達されている熱交換量を表しているようにしてもよい。また別な代替の局面では、制御装置は温度センサーによって供与された信号に応答して、アクセスポイントに流入している一次流体とアクセスポイントから流出している一次流体の温度差を判定し、判定された温度差が問題のある状態を表している場合には警告を与えるようにしてもよいし、または、制御装置は温度センサーによって供与された信号に応答して、これらの信号が問題のある状態を表している場合には警告を与えるようにしてもよい。
【0033】
本発明のまた別な局面では、二次流体貯水槽は、この流入口と二次流体回路ポンプとの間に空気トラップが配置されている。一局面では、空気トラップは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようになっており、更に、また別な局面では、空気トラップは発泡材から形成されている。
【0034】
本発明の更に別な局面では、二次流体回路は微粒子フィルターを含んでいる。一局面では、微粒子フィルターは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようになっており、更に、また別な局面では、微粒子フィルターは発泡材から形成されている、または、スクリーンから形成されている。
【0035】
また別な局面では、本発明はまた、二次流体回路に配置されて二次流体回路内の流体水位を検出するレベル検出装置を含んでおり、レベル検出装置は二次流体回路の流体水位を表す信号を制御装置に供与する。一局面では、レベル検出装置は二次流体貯水槽と協働関係に配置され、二次流体貯水装置内の流体水位を検出する。
【0036】
本発明のまた別な局面では、レベル検出装置は泡検出装置であってもよいし、または、ライン内空気の検出装置であってもよい。
【0037】
本発明のまた別な局面では、制御装置は、レベル検出装置から得られた所定の流体水位を表す信号に応答して、二次流体ポンプに開始信号を送信する。これに代わる例として、制御装置は、レベル検出装置から得られた所定の低水位を表す信号に応答して、二次流体ポンプに停止信号を送信するようにしてもよい。
【0038】
本発明の一局面では、二次流体回路ポンプ、二次流体貯水槽、および、熱交換器がカセットに包含されており、カセットは無菌状態で操作者に提供される構成になっている。更に別な局面では、本発明は再利用できる格納庫を含んでおり、この格納庫の中に配置されているのは、流体貯水槽、一次流体回路ポンプ、マイクロプロセッサ、および、二次流体回路ポンプモータであり、格納庫は、そこにカセットを着脱自在に受容することで、二次流体回路ポンプが二次流体回路ポンプモータに離脱可能に係合するような構成になっている。
【0039】
本発明のまた別な局面では、アクセスポイントは熱交換器を一次流体回路に取り外しできるように連結する着脱自在な連結部材を含んでいる。一局面では、着脱自在な連結部材は、一次流体回路に接続されていない場合には、液体封鎖状態を設け、熱交換器の一次流体回路側および一次流体回路からの一次流体の喪失を最小限に抑えている。
【0040】
一局面では、本発明は即時接続用の連結部材を含んでおり、この即時接続用の連結部材は、熱交換器の着脱自在な連結部材が係合状態になるのとほぼ同時に、センサーラインを制御装置に電気接続することができるように構成されている。これにより、熱交換器の設定をより容易でより迅速に行えるようにし、緊急事態に有益となるようにしている。この配置はまた、システムを起動する前に介護者がセンサーラインの接続を怠った場合に起こる恐れのある誤操作を防ぐ。
【0041】
本発明の更に別な局面では、一次流体回路は、その内部の流体圧を制御する逆止弁を更に含んでおり、流体圧が所定値を超過しないように図っている。また別な局面では、カセットおよびカテーテルは一次流体回路から切断されてからまた別な一次流体回路に接続することができるが、カセットおよびカテーテルを含んでいる二次流体回路の無菌性または流体隔絶状態を危うくすることはない。
【0042】
本発明のまた別な局面では、検知温度が所定の範囲内である場合には、加熱・冷却装置のファン・ブロワー出力が低下させられる。また別な局面では、検知温度が所定の期間に亘って所定の範囲内にあると制御装置が判定した場合には、加熱・冷却装置のファン・ブロワー出力が低下させられる。更に別な局面では、検知温度が所定の範囲内であると制御装置が判定した場合には、一次流体ポンプの出力または二次流体ポンプの出力もしくはその両方のポンプの出力が低下させられる。更に別な局面では、患者の体温変化の要求量が低減したと制御装置が判定した場合には、一次流体ポンプの出力または二次流体ポンプの出力もしくはその両方のポンプの出力が低下させられる。
【0043】
本発明のまた別な局面では、一次流体回路は、熱交換器と一緒に包含されている一次流体の体積の大半が、熱交換器を一次流体回路から切離す前に、一次流体貯水槽に戻されるように構成されている。
【0044】
本発明のまた別な局面では、熱交換器は、一次流体側に一次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される。また別な局面では、熱交換器は、二次流体側に二次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される。
【0045】
本発明の一局面では、熱交換器は、接続されると、加熱・冷却装置からも一次流体ループの各種構成部材への電気入力からも、電気絶縁状態に維持される。
【0046】
本発明のまた別な局面では、一次流体回路は、所定の値よりも低いレベルに導電性を維持する手段を含んでいる。本発明のまた別な局面では、この手段は、一次流体回路内の流体の電気特性を検知するよう構成されたセンサーを含んでいる。
【0047】
また別な局面では、本発明は、二次熱交換液を二次流体回路に供給する注入液回路を含んでいる。更に別な局面では、注入液回路は注入ラインおよび換気ラインを含んでおり、注入ラインと換気ラインのうちの少なくとも一方に弁が設けられており、注入液回路は、二次回路に液が十分に充填されたと判定する、少なくとも1個のセンサーを更に含んでいる。更に別な局面では、注入ラインおよび換気ラインに設けられた弁のうち少なくとも1個は、ラインに係合してラインの内部の液体の流れを閉鎖するクランプである。また別な局面では、注入ラインおよび換気ラインに設けられた弁のうち少なくとも1個は、二次流体回路への二次流体の注入を開始して完全に充満させるように、制御装置によって制御される。
【0048】
本発明のまた別な局面では、アクセスポイントは、一次流体貯水槽に充填される一次回路液を受容する構成になっている。更にまた、カセットが取り外しできるように格納庫に受容されると、流体ラインのうちの少なくとも1本はカセットの流体ラインのうちの少なくとも1本と係合する。
【0049】
本発明のまた別な局面では、制御装置は、二次流体回路内の二次流体が凍結するのを防ぐのに十分なレベルの温度に一次流体回路を制御する。
【0050】
本発明のまた別な局面では、熱交換器は1対の中間流体経路を含んでいる。2本の中間流体経路は、一次中間流体経路および二次中間流体経路であり、物理的には互いから分離状態にあるが、互いに熱伝達状態にある。これにより、2本の中間流体経路の間で熱エネルギーの交換が行われるが、その間、一次回路液が生体適合性であるにせよ、生体適合性ではないにせよ、患者の肉体に流入する二次熱交換液を一次回路液で汚染する恐れがないようにしている。更に別な局面では、2本の中間流体経路を物理的に互いから分離することで、二次流体回路に血液またはそれ以外の体液が侵入しても、一次流体回路は汚染されないことが確実になる。更に別な局面では、2本の中間流体経路は、それぞれの一次流体回路または二次流体回路に接続されると、これら回路の容積を増大させる。
【0051】
本発明の上記以外の特長および利点は、添付の図面と関連付けて理解されれば、後段の詳細な説明から明らかになるが、添付の図面は本発明の各種特長を具体例として図示しているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるシステムを使用した治療を患者が受けているのを例示した斜視図である。
【図2】使い捨てできる熱交換カセットが熱交換カテーテルおよび体外流体源に取付けられ、本発明の再利用可能な制御装置に設けられた好適な開口部に挿入するように設置されているのを例示した概略図である。
【図3A】本発明の熱交換システムの制御機構のフロー図である。
【図3B】本発明の熱交換システムの制御機構のフロー図である。
【図4】図3Aから図3Bの制御機構の影響下における或る経過時間に亘る、標的組織または体液の検知温度のグラフである。
【図5A】本発明の具体的な再利用可能な制御装置を例示した斜視図である。
【図5B】図5Aの制御装置の上部を例示した斜視図である。
【図5C】図5Aの制御装置の具体的な制御パネルを例示した平面図である。
【図6】本発明のシステムの一実施形態において、熱交換器が一次流体回路ポンプの正圧側と流体連絡状態にあるのを例示した概略図である。
【図7】本発明のシステムのまた別な実施形態であって、熱交換器が一次流体回路ポンプの負圧側と流体連絡状態にあるのを例示した概略図である。
【図8】本発明の具体的な各種構成部材が相互伝達および相互フィードバックのために相互接続されているのを例示した概略図である。
【図9】本発明の熱交換カセットの一実施形態を例示した分解図である。
【図10】図9の実施形態の斜視図である。
【図10A】図10の実施形態の一部を例示した拡大斜視図である。
【図11A】図9の実施形態のカセット部の外面を例示した分解斜視図である。
【図11B】図9の実施形態のカセット部の内部構造を例示した分解斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態の熱交換(電力)能力を一次流体温度の関数として例示したグラフである。
【図13】本発明の実施形態の温度低下能力が先行技術のシステムの温度低下能力と比較されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は主として、患者の体温を調節するために患者の血流に設置されるカテーテルを含んでいることを意図しているが、当業者には分かることだが、それ以外にも本発明のシステムに好適な多様な応用例を考えることができる。実際に、本発明は内奥の体液の温度を制御するに止まらない優れた応用例を含んでおり、特許請求の範囲はそのような優れた応用例をも網羅する。好ましい応用例では、本発明の1本以上の熱交換カテーテルが患者の脈管内に設置され、血液を利用して熱交換を行い、体温全体を調節するか、または、患者の肉体の局所領域の温度を調節する。次に、熱交換液がカテーテルの中を通って循環させられ、血液と熱交換液との間で熱交換を行い、また、制御装置がシステムの機能実行を管理する。例えば、カテーテルは脳に流入して脳を冷却する動脈血と熱交換するのに好適であるようにしてもよく、従って、卒中またはそれ以外の損傷が原因で別途起こる可能性のある脳組織への損傷を防止することができ、或いは、心臓に流入する静脈血を冷却して心筋の温度を低下させるのに好適であるようにすることで、心筋梗塞またはそれ以外の類似する突発的故障の後に続いて別途起こる可能性のある組織損傷を防止することができる。
【0054】
一般に、本発明は、患者の体温を制御する目的で使用される熱伝達カテーテルに好適な熱伝達液の温度と流れを制御する、好ましい制御装置とその方法を提供する。制御装置は、初期段階では、熱伝達液を自動的に熱伝達カテーテルに供給し、熱交換カテーテルに液を注入して使用に備える。制御装置はユーザーからの入力も受信し、患者の体温情報を検知したセンサーから体温情報も受信し、更に、それら受信情報に基づいて、熱伝達液の温度と流れを自動制御する。更に、熱伝達液を保有しているカセット内のポンプからのフィードバックに基づいて、制御装置は比較的一定の圧力で熱伝達液を供給する。カセットおよび制御装置は、協働しながら、潜在的に危険であると思われる状況をユーザーに警告する幾つかの警告状態すなわちアラーム状態を示し、その態様としては、例えば、カセット内の流体レベルが容認し難いほど下がった場合に、ポンプモータを遮断して、ユーザーに通告するというやり方がある。
【0055】
<熱交換システム概観>
患者の体温を調節するのに好適であれば、どのような熱交換カテーテルを熱交換システムで利用してもよく、また、どのような熱交換カテーテルが本件に開示されているような制御装置によって制御されるようにしてもよい。本件に開示されているカテーテルに加えて、限定するのではなく例示を目的として、本発明で利用することができるカテーテルは次に列挙する文献に開示されているカテーテルである。すなわち、ギンズバーグに交付された米国特許第5,486,208号、ギンズバーグに交付された米国特許第5,837,003号、ケラーほかに交付された米国特許第6,610,083号、ケラーほかに交付された米国特許第6,702,840号、キャリスターに交付された米国特許第6,752,786号、ギンズバーグほかに交付された米国特許第6,620,188号、ギンズバーグに交付された米国特許第6,849,083号、サーブ(Saab)に交付された米国特許第5,624,392号、サーブに交付された米国特許第5,624,392号、および、サーブに交付された米国特許第6,440,158号に開示されているカテーテルが利用することができるが、これら特許の各々の開示内容全体はここに引例に挙げることにより完全に本件の一部を成すものとする。本発明の多様な実施形態を利用して可能となる速度で患者に熱交換を施す目的では、十分な熱交換力を備えているカテーテルを採用しなければならないことを、当業者なら理解するだろう。
【0056】
本発明のシステムおよび方法の多様な実施形態をカテーテル内部で循環させるのに好適な冷却液源または加温液源を設けることに言及しながら説明してゆくが、患者の体温を変動させるよう設計された上記以外の各種装置によって流体を循環させることもできることを、当業者なら理解するだろう。例えば、カテーテルの代わりに、加温パッドまたは冷却パッド、もしくは、患者の体外で使用される設計の毛布の中を通して流体を循環させるようにしてもよい。
【0057】
上述のような熱交換カテーテルシステム20の一例が図1に例示されており、制御装置22、および、少なくとも1個の熱伝達部44が形成された熱交換カテーテル24を備えている。1個または複数個の熱伝達部が患者の体内に挿入されたカテーテル24の該当部分に配置され、この部分は図面では参照番号26と示されている。このような挿入部はカテーテルの全長よりも短く、カテーテルが完全に挿入された場合、患者の体内のカテーテル上にあたる位置からカテーテルの遠位端まで延在する。制御装置22は、カテーテル24の内部で熱交換液または熱交換媒体を循環させる流体ポンプ28と、熱伝達システム20の内部で循環する流体を加熱し、または、流体を冷却し、もしくは、加熱と冷却の両方を行う熱交換器部材を備えている。貯水槽または流体嚢30は制御装置22に接続されて、生理食塩水、血液代用液、または、それ以外の生体適合液のような熱伝達液の液源を供与する。カテーテル内部の循環性熱交換流路はポンプ28の入口導管32および出口導管34のそれぞれに接続されて、バルーンの中を通して熱伝達液を循環させることで、選択された肉体領域内の血液のような体液の流れを冷却することができる。同様の配置は、システムの冷却用部材を用いて、複数の選択された肉体領域を同時に、または、互いに個別に加熱する目的で実現されてもよい。
【0058】
更に、制御装置22は、例えば、カテーテルからのフィードバックを行うことができる固相熱電対のような多様なセンサーや肉体の芯部の温度または選択された器官または部位の温度を示す患者の体温情報を供与する多様なセンサーからデータを受信することができる。例えば、センサーには、脳または頭部領域に適した温度計測探針36、直腸温度計測探針38、耳温度計測探針40、食道温度計測探針(図示せず)、膀胱温度計測探針(図示せず)などが含まれている。これに代わる例として、温度計測探針が熱伝達バルーンに隣接した位置で患者の血管内に設置されてもよい。また別な実施形態では、温度計測探針は熱伝達バルーンより遠位で血流に設置されてもよい。
【0059】
検知温度および検知条件に基づいて、制御装置22はカテーテルを加熱するまたは冷却する指示を応答として与える。制御装置22は第1検知温度で熱交換器を作動させて流体を加熱し、加熱された流体はバルーンの中を循環させられることになり、また、制御装置22は第2検知温度で熱交換器を作動停止させるが、この第2検知温度は第1検知温度またはそれ以外のどの所定の温度よりも比較的高温または比較的低温である。これに代わる例として、制御装置22は熱交換液を能動的に冷却することでバルーンを冷却することができる。制御装置22は多数の熱伝達装置を作動させて、互いに異なる選択された熱伝達部を個別に加熱または冷却することで、複数の肉体領域で所望の温度または予め選択された温度を達成することができる。同様に、制御装置22は、患者の肉体の複数の特定領域の温度を制御するように、2個以上の熱交換器を作動させることができる。制御装置22はまた、各種検知温度に応答して、体外加温毛布のようなまた別な装置を作動させたり、作動停止させたりするようにしてもよい。
【0060】
熱伝達カテーテルまたはそれ以外の各種装置は単純なオン・オフ制御装置であってもよいし、または、相当により精巧な制御機構であって、加熱の程度または冷却の程度の調節、温度上昇率または温度下降率の調節、熱交換領域の温度または患者の体温が目標温度に近づく時の比例・積分・微分(PID)制御または非線形制御などのうちのいずれかを含んでいる制御機構であってもよい。
【0061】
制御装置22は熱電冷却・加熱装置(および、これに付随する複数の流体導管)を更に備えており、これらは選択的に作動されて、閉ループカテーテルシステム内で同じ熱伝達媒体または異なる熱伝達媒体を使って加熱機能と冷却機能の両方を実施する。例えば、少なくとも1本の温度調節カテーテル24の挿入部26に配置された第1の熱伝達部42は、直接加熱領域内で低温液を循環させることができ、またこれに代わる例として、頸動脈またはそれ以外の脳に通じる血管の内部で低温液を循環させてもよい。頭部体温は頭部に比較的近接した患者の体表に設置された温度センサー36、または、選択された肉体領域内に設置された温度センサー36を使って局所的に監視される。挿入部26に配置されているカテーテル24のまた別な熱伝達部44が、収縮自在なバルーンの内部の加熱された溶液を循環させるようにしてもよいし、またそうでなければ、本発明の別な各局面に従って記載されている加熱素子またはそれ以外の各種メカニズムにより、他の肉体部位に熱を供与するようにしてもよい。熱交換カテーテル24は神経保護のために脳領域に局所低体温処置を供与することができるが、肉体の残りの各部は比較的温かく保たれて、不快、震え、血液凝固、免疫不全などの望ましくない副次効果を回避する、または、最小限に抑えることができるように図っている。更に、頚部より概ね下の肉体を暖めることは、頚部より上の頭部領域を低温に保ちながら、下半身側の肉体を隔離することにより、または、下半身側の肉体を加温パッドまたは加温毛布46で包むことによって達成されてもよい。勿論、カテーテル24の多数の熱交換部を修正して、身体全体の冷却処置または加温処置を施すことで体芯温度に作用するようにしてもよい。
【0062】
<具体的な熱交換システム>
本発明は、加熱・冷却装置を備えている再利用可能な制御装置または制御コンソールの使用を思量しており、この加熱・冷却装置は複数の導管を介して遠位の体内熱交換カテーテルに接続されている使い捨て可能な熱交換素子を受容する。より詳細に説明すると、制御装置は、熱交換素子を受容する開口部またはスロットが設けられた外側格納庫を備えているのが望ましく、格納庫の開口部は加熱・冷却装置の近位に熱交換素子を信頼をもって確実に設置できるようにする。この態様で、システムの設定は容易にされるが、それは、システムの再利用可能で使い捨てできる部分を接続するのに、操作者が熱交換素子を制御装置の開口部に完全に挿入して載置するだけでよいからである。
【0063】
具体的な実施形態では、図2は、再利用可能な制御装置50および複数の使い捨てできる構成部材を備えている熱交換カテーテルシステムを例示しているが、使い捨てできる構成部材としては、熱交換カテーテル52、熱交換カセット54、生理食塩水嚢56、および、熱交換カセット54から遠位方向に延びている複数の液流導管74がある。再利用可能な制御装置50は外側格納庫64を備えており、この内部には加熱・冷却装置、一次流体回路貯水槽、一次流体回路ポンプ、制御装置プロセッサと多様な制御ケーブル、ポンプと流量制御装置が設けられているが、これらはいずれも図示されていない。制御装置50の内部にはポンプ駆動モータ68、光学ビーム源93、および、光ビームセンサー94も設置されており、モータ68はソレノイドにより駆動される係合スイングアームおよび接続部(図示せず)により熱交換カセット54の内部に配置された二次流体回路ポンプを駆動し、光ビームセンサー94は熱交換カセット54の内部の流体レベルを判定するために使用される。更に、グラフィカル・ユーザー・インターフェイスを利用した手動入力装置(図示せず)により、オペレータは制御装置の望ましい動作パラメータ、例えば、脳について予め選択された温度のパラメータを入力することができるようになる。制御装置50の内部に設けられた電子装置は各々が好適な配線により通信し合っている。熱交換カセット54は一次流体回路導管またはアクセスポイント67、69によって一次流体回路と流体連絡状態にあり、従って、一次流体回路貯水槽、一次流体回路ポンプ、および、熱交換カセット54を備えている閉流体回路を形成する。
【0064】
熱交換カテーテル52にはカテーテル導管74と熱交換器76が形成されており、熱交換器76は、例えば、熱交換媒体として作用する生体適合性流体の閉ループ流を利用して作動される熱交換バルーンであってもよい。カテーテル52には、各種薬剤や放射線透視染料などを注入するとともに、患者の体内の適切な部位にカテーテルを設置する際に使用されるガイドワイヤ78を受容するための作業管腔(図示せず)が設けられている。センサー80は熱交換器76よりも遠位でカテーテル52に設置されて、熱交換バルーンの温度を監視することができるようにしており、また、それ以外のセンサー(図示せず)を所望に応じて設けることで、カテーテル遠位先端部、バルーンの近位先端部、または、それ以外の、カテーテル沿いの望ましい位置で、血液温度を監視することができるようにしている。
【0065】
熱交換カセット54は、熱交換器96と、二次流体回路ポンプを格納している流体貯水槽小室を有している。好ましい実施形態では、二次流体回路は熱交換器96によって一次流体回路から物理的に隔絶された、閉じたシステムであるが、二次流体回路と一次流体回路は熱交換器によって熱交換連絡状態にある。この配置が有利なのは、一次流体回路に必ずしも生体適合性ではない異なる複数の流体を使い、患者に加熱処置または冷却処置を施している間、熱交換器96の効率を最大限に高めることができる点である。
【0066】
図2で分かるように、カテーテル導管74の近位端は多数アームアダプタ82に接続されて、カテーテル52の多様な流路に別々に接近することができるようにしている。例えば、第1アーム84は、ガイドワイヤ78の挿入に備えて熱交換カテーテル52の作業管腔に接近することができるようにし、熱交換カテーテル52を所望の位置へ操舵することができるようにしている。第1アーム84はまた、温度計測探針を血流に接近させることができるようにするために使われて、制御入力用に血液温度を探針で監視することができるようにしている。
【0067】
熱交換器76が二次流体の閉ループ流に好適な熱交換バルーンである場合、アダプタ82はその第2アーム86が流入ライン88に接続され、第3アームが流出ライン92に接続されている。よって、流入ライン88と流出ライン92は、導管74および熱交換器96に設けられたそれぞれの流入水路および流出水路(図示せず)と流体連絡状態に設置されている。この点について、流入ライン88および流出ライン92が合流して、熱交換カセット54に接続された2重流路導管62を形成するようにしてもよい。
【0068】
弁63が設けられた換気管61を使って、二次流体回路に液を注入するのを支援することができる。更に、生理食塩水嚢56のような体外の生体適合性流体源は、好適なコネクタを用いて、二次流体回路と流体連絡状態に設置される。更に後段で説明するが、体外の流体源56は二次流体回路に液を注入するために使用されるが、二次流体回路は閉ループ熱交換バルーンシステムを含んでいる。
【0069】
更に図2を参照すると、上述のように、この実施形態における例示の熱交換カセット54は熱交換器96および流体の貯水槽小室98を備えているのが望ましく、この貯水槽小室98は二次流体ポンプを備えている。貯水槽小室98の二次流体回路ポンプは二次流体回路を流れる熱交換液を汲出して熱交換器96に通し、更に、これに付随する導管とカテーテル52に通す。上述のように、熱交換カセット54は制御装置50に取付けられる構成になっている。この点で、熱交換カセット54は制御装置格納庫64に設けられた細長いスロット102の中にぴったり合う寸法に設定されるのが望ましい。カセット54は、挿入が完了すると、ポンプ駆動モータ68に近接して設置され、モータと係合させられる。熱交換器96は、流入導管および流出導管を使って、または、アクセスポイント67、69を利用して一次流体回路に接続されている。
【0070】
熱交換器カセット54が制御装置50に適切に取付けられると、加熱・冷却装置は一次熱交換液を加熱または冷却するように作用するが、これは、この一次流体が熱交換器96の二次流体と熱交換できる態様で接触することによって循環させられるせいである。二次流体は、加熱中であれ、冷却中であれ、または、熱交換器96内の一次流体と熱交換できる態様で接触することによって一定温度に保たれているのであれ、いずれにせよ、体内熱交換器76に通じる導管を通して汲出される。熱交換液は、患者の体内に配置されている熱交換器76を通して循環させられると、肉体に熱を供給するように作用するか、または、肉体から熱を奪うように作用することができる。このようにして、制御装置50は、必要に応じて、患者の血液温度を調節する。
【0071】
固相熱電式の加熱・冷却装置を使って、一次流体回路を加熱または冷却することができるが、このような用途が有利であるのは、この同じ装置が、装置を作動させる電流の極性を変えることによって、熱を発生したり、熱を奪ったりすることができるからである。よって、加熱・冷却装置は、2個の別個の装置を必要としないうえに、熱交換カセットまたは熱交換カテーテルの交換もしなくても、システムからの熱を供給したり熱を奪ったりするように便利に制御することができる。また別な実施形態では、可変速蒸気圧縮装置・熱ポンプを加熱・冷却装置として使用することもできる。これに代わる例として、抵抗加熱装置を変速圧縮冷却装置または定速圧縮冷却装置と組合せて使用するようにしてもよい。
【0072】
加熱・冷却装置およびポンプ駆動モータ68は制御装置プロセッサに応答し、プロセッサは多数のセンサーとの電気接続によってデータ入力を受信するが、これらセンサーには例えば、患者体内の多様な部位における体温を検知するように設置された体温センサーが含まれる。具体例を挙げると、温度は、必要に応じて、患者の耳、脳領域、膀胱、直腸、食道、または、それ以外の適切な部位で操作者によって検知される。また、上述のように、センサー80は熱交換器76より遠位の位置の体温を監視するようにしてもよいし、更に、カテーテル52沿いに設置されたそれ以外の各種センサーが制御装置プロセッサに入力を送信するようにしてもよい。これに加えて、手動入力装置により、操作者は動作パラメータを制御システムに供与することができるようになるが、例えば、患者の脳または全身もしくはその両方について予め選択された温度のパラメータを供与することができる。操作者が入力するパラメータは適切な配線によって、制御装置プロセッサに送信される。
【0073】
制御装置プロセッサは受信された多様なデータを調整したうえで幾つかの動作サブシステムを選択的に作動させることで、所望の結果を達成して維持する、すなわち、患者の体温の適切な調節を行う。例えば、現実の体温が指定された温度よりも高い場合には、システムが奪うことになる熱の量を増大させるために、プロセッサが加熱・冷却装置を作動させ、または、現実の体温が指定された温度よりも低い場合には、システムが奪うことになる熱の量を減少させる。これに代わる例として、検知体温または検知領域温度が所望の温度に達すると、プロセッサは一次熱交換液または二次熱交換液もしくはその両方の汲出し速度を低下させるか、または、汲出しを停止するようにしてもよい。
【0074】
動作時に、加熱・冷却装置は、上述の温度センサーから受信された温度信号に応答して、一次流体回路の流体を加温または冷却して、必要に応じて、患者の体温を変動させ、または、患者の肉体の一部の温度を変動させる。一次流体回路の温度変化は、当業者に周知の態様で、熱交換器96を使って二次回路内を循環している流体に伝達される。従って、加熱・冷却装置を使って、二次流体回路内を循環している流体を加熱または冷却することにより、患者の体温または患者の肉体の一部の温度に間接的に作用する結果となる。
【0075】
更に図2を参照すると、この実施形態の熱交換カセット54は熱交換カテーテル52に装着されているように図示されており、体外の流体源56は好適な再利用可能な制御装置50と協働する状態に設置されているのが分かる。治療を開始する前に、熱交換装置54は再利用可能な制御装置50に挿入され、体外の流体源56が注入ポートに装着され、ポンプ68に自動的に、または、受動的に液体注入され、使い捨てできるシステムに液が充満した後で、カテーテルは、例えば、下位大静脈または頸動脈などの患者の脈管への挿入準備が完了する。例えば、二次回路に充填されている生理食塩水のような低温生体適合性流体または加温生体適合性流体が閉回路カテーテルに汲出され、このカテーテルによって患者の血液と直接的に熱が交換される。制御装置は患者の体温を自動制御するように機能する。カテーテルを使った治療が完了した後、カテーテルは患者から取り外され、カセットは再利用可能な制御装置から取り出される。その後、カテーテルとカセットの両方が廃棄処分される。しかしながら、再利用可能な制御装置は、二次熱交換液と直接的に接触状態になることは決してなく、新しいカセット、新しいカテーテル、および、新鮮な体外流体源と一緒に、別な患者を治療するのに即時使用する準備が完了する。これに代わる例として、熱交換器96はカセット54からは分離され、洗浄され、滅菌され、カセットは廃棄処分される。また別な代替例では、別な患者に使用できるように、熱交換カセット54の全体が好適に状態回復される。
【0076】
<具体的な治療制御方法>
図3Aおよび図3Bで明らかなフロー図は、システムの制御装置プロセッサが患者の体温調節中に調整する具体的な一連の工程を例示している。まず、工程110では、標的組織(全身の場合もある)の目標温度が選択されるが、大抵はユーザーの入力によって行われる。目標温度は体温とは異なっていてもよいし、正常な患者の体温維持が達成目標である場合には、目標温度は体温と同じであってもよい。工程112aおよび工程112bは、高いほうの偏差設定点および低いほうの偏差設定点をそれぞれ決定することに関与している。これは、概ね、制御装置プロセッサに組み込まれる目標温度、または、プログラムされる目標温度よりも高いレベルと低いレベルの予備設定緩衝範囲のことである。これらの偏差設定点は目標温度にまたがって分布し、温度の緩衝範囲を設けるが、この範囲内で制御装置が作動することになる。
【0077】
より詳細に説明すると、標的組織の検知温度が得られるのは工程114であり、その前または後に工程116が実行されるが、工程116では、体液を加熱することができる、または、体液を冷却することができる熱交換器が体液の近位に設置され、加熱後の体液または冷却後の体液は続いて標的組織に流入する。ユーザー入力に基づいて、または、目標温度と検知組織温度との間の比較に基づいて、工程118では、熱交換器が冷却モードで作動するのか、加熱モードで作動するのか、または、維持モードで作動するのかに関して決定が行われる。すなわち、目標温度が組織温度に等しい場合には、初期段階で体液を加熱する必要も冷却する必要も無く、制御装置は熱交換器を制御して、目標温度に組織温度または血液温度を維持することになる。
【0078】
この決定工程118は、システムが冷却動作するのか、加熱動作するのか、切断されるのか次第で、システムの3種類の異なる動作モードに進む。このような動作モードは工程120a、工程120b、および、工程120cに対応しており、これらは図3Aおよび図3Bの両方で明らかになる。
【0079】
システムが冷却モードである場合、フロー図の論理は、検知された組織温度を予め選択された目標温度と比較する工程120aに進む。組織温度が目標温度よりも高い場合には、システムは工程122で示されているように冷却を継続し、プロセッサは決定工程118から再開される。他方で、検知された組織温度が目標温度に等しいか、または、目標温度よりも低い場合は、熱交換器は、工程124に示されているように、切断モードに変換され、プロセッサは決定工程118から再開される。
【0080】
システムが加熱モードである場合は、フロー図の論理は工程120bに進み、ここでも、検知された組織温度を予め選択された目標温度と比較する。組織温度が目標温度よりも低い場合は、システムは、工程126に示されているように、加熱を継続し、プロセッサは決定工程118から再開される。他方で、組織温度が目標温度に等しい、または、目標温度よりも高い場合は、熱交換器は、工程128に示されているように、切断モードに変換され、プロセッサは決定工程118から再開される。
【0081】
システムが切断モードである場合は、フロー図の論理は工程120cに進み、この工程では、検知された組織温度を高いほうの偏差温度設定点と比較する。次に、検知された組織温度が高いほうの偏差設定点よりも高い場合には、システムは、工程130に示されているように、冷却モードに変換され、プロセッサは決定工程118から再開される。組織温度が高いほうの偏差設定点よりも低い場合は、プロセッサはフロー図の論理を工程132まで継続して実行し、組織温度が低いほうの偏差設定点に等しいか否か、または、低いほうの偏差設定点よりも低いか否かを判定することにより、システムは加熱モードに変換され、プロセッサは決定工程118から再開される。最終的に、組織温度が高いほうの偏差設定点と低いほうの偏差設定点の間である場合には、システムは、工程134に示されているように、何も実行せず、プロセッサは決定工程118から再開される。
【0082】
図4は、目標温度および偏差設定点に関して、或る期間に亘って変動する検知組織温度をグラフ表示した図である。この具体例では、目標温度は摂氏31度に設定されており、これを基準にして、高いほうの偏差設定点と低いほうの偏差設定点はそれぞれ+1/2度と−1/2度の偏差を示している。最初、検知された組織温度は目標温度よりも高く、具体的には、熱交換カテーテルが摂氏37度の血液と接触状態に設置されている場合がそうである。このシステムは、まず、冷却モードに設定されて、検知組織温度は、参照番号136と標識化された目標温度に等しくなるまで、低下させられるが、これは図3Aの工程120aおよび工程124に対応している。工程124では、熱交換器は切断モードに変換され、その結果として、検知組織温度は、参照番号138と標識化された点の高いほうの偏差設定点に達するまで、上昇することになるが、これは図3Bの工程130に対応しており、この時点で、システムは冷却を再開する。この周期は参照符号Aで標識化されている領域で反復される。
【0083】
最終的に、参照符号Bと標識が付された領域の温度プロファイルによって例示されているような目的温度ですら、患者は維持できなくなる。例えば、検知された組織温度が参照番号140と標識が付された点の目標温度に達した後で、尚且つ、熱交換機が切断状態になってから、検知目標温度は、参照番号142と標識が付された点の低いほうの偏差設定点に達するまで、継続してゆるやかに下降する。制御装置の論理は図3Bの工程132でこれを検知し、システムを加熱モードに変換する。この後、検知組織温度は参照番号144と標識が付された点の目標温度まで上昇し、システムは、再度、切断状態になるが、これは図3Bの工程120bおよび工程128に対応している。これに代わる例として、患者と状況次第で、検知された組織温度が目標温度に達した後で、尚且つ、熱交換器が切断状態になってから、患者の体温が上昇し始めて、高いほうの偏差設定点の温度に達するまで継続して上昇することがあり、高いほうの偏差設定点に達した時点で、工程130で説明されているように、熱交換器は冷却を開始する。検知組織温度はこの態様で高いほうの偏差設定点と低いほうの偏差設定点の間を上下に変動し続けるのは、見て分かるとおりである。
【0084】
本発明のシステムに供与されるような制御機構は、操作者が所望の温度を本質的に入力することができるという利点を有しており、操作者の温度入力の後で、システムは、目標温度に達するまで組織温度を自動制御し、その目標温度に組織温度を保つことになる。高いほうの偏差設定点と低いほうの偏差設定点によって設けられた緩衝範囲は、電子装置に潜在的に損傷を与える可能性のある迅速な連続動作で、制御装置が加熱・冷却装置のスイッチを接続および切断するように切り替えるのを阻止し、または、一次ポンプまたは二次ポンプを作動および停止させるのを阻止する。更に、加熱・冷却装置の冷却出力または加熱出力を調節するのに制御装置が利用する上下偏差設定点およびそれ以外の各種パラメータは、選択された患者体温を変動させる処置の途中で、または、特定の治療状況に対処するのに必要とされるような温度上昇率または温度降下率を変動させる処置の途中で、操作者が変えることができる。より精巧な制御機構で、例えば、後段で説明するようなPID機構のようなものを採用してもよい。
【0085】
<具体的な制御装置>
図5Aから図5Cは、患者の迅速な体温調節に特に好適な、本発明の具体的な熱変換制御装置150を例示した多様な図である。
【0086】
これらの図で分かるように、制御装置150は垂直配向の体外格納庫を備えており、格納庫は下部152と上部154が、装置の頂面に近い位置にある概ね水平の分割線156で分離している。制御装置150は運び易くするために車輪158の上に載せられており、これらの車輪は足で操作するロックが設けられた回転式ホイールである。使い易くするために、上部と下部は背面で蝶番155によって一緒に接合されており、上部を持ち上げて後ろに回転させることで装置の内部を開いて見せることができるようになっている。具体的な実施形態では、制御装置150の高さは、操作者がそれほど屈まなくても上位制御パネル160に容易に手が届く高さである。例えば、制御装置150は合計の高さが約2フィート(約61 cm)から3フィート(約91 cm)の間であり、約32インチ(約81 cm)であるのが好ましい。制御装置150の大半の部分の実質的に水平な断面の幅は1フィート(約30 cm)から2フィートの間であるが、下部152の幅は、安定性を高めるように下の四隅に車輪158が取付けられている下端では、もっと広くなっているのが好ましい。
【0087】
図5Aは、制御装置150を例示した正面図および右側面図であり、制御パネル160は上部154の角度付けした上パネル162が全面に見える。角度付けした上パネル162はまた、制御パネル160に隣接した位置に流体容器受容空洞部164を画定している。更に、制御装置150の操作を助けるために、複数のハンドル166が設けられている。
【0088】
制御装置150の前面パネル169の、水平分割線156の真下の位置には、熱交換カセット受容開口部168も設けられている。後段で説明するが、開口部168は本発明のカセットを受容する寸法および形状に設定されており、図2に例示されている熱交換カセット受容開口部102に似ている。同様に、制御装置150は、図2の制御装置50について先に説明された諸機能を全て備えており、例えば、カセット内の流体を加熱または冷却するための機器類、ポンプ駆動装置、制御装置プロセッサ・マイクロプロセッサ、手動入力装置すなわち制御パネル160などが含まれる。
【0089】
図5Aには、アクセスポイント165、167が例示されている。これらアクセスポイントは、流体を通す様式で熱交換器を一次流体回路に接続するために利用される。アクセスポイントは可撓性管材として構成されて、アクセスポイントをカセットに迅速に着脱することができるようにした即時接続用の連結部材で終端している。連結部材は切離すと封鎖されるような構成になっており、従って、一次流体回路から一次流体が損失するのを防いでいる。更に、これらに対応する、カセットに配置された即時接続用の連結部材も、アクセスポイントが離脱されると、カセット内の熱交換器の一次流体側から一次流体が失われるのを防止する構成になっている。これに代わる例として、即時接続用の連結部材の構成は、スロット168にカセットを挿入することでカセットに配置されている即時接続用の取付け具が自動的に格納庫内の即時接続用取付け具と係合して流体連絡状態で連結することで一次流体回路の流体経路を完備させるよう設定されているため、一次流体がカセット内の熱交換器の一次流体側を通って循環させられる。
【0090】
加熱および冷却を行う容量が比較的大きいせいで、制御装置の格納庫の下部152には複数個の換気孔170が設けられており、格納庫の内部と周囲環境との間の対流式熱交換を促進するとともに、排気がユーザーや患者から遠ざかる方向に向かうように図っている。制御装置の格納庫は多種類の好適な硬度の腐食防止素材から製造することができるが、そのような素材の例として、ステンレス鋼、アルミニウム、成形可塑材などのうちのいずれかが含まれる。制御装置150の各種構成部材は、例えば、カテーテル法実施実験室向け電力差込口から得られる従来の電力で作動するようになっているのが望ましい。
【0091】
本発明はまた、必要に応じて、2個の異なる制御装置を連続使用することも思量している。例えば、図5Aから図5Cの制御装置150で、比較的大きい熱伝達容量と大型格納庫を備えているものを初期段階で使用して、患者の体温を迅速に変動させることができる。この後、使いやすさと経済性を考慮して、内部バッテリー電源を有している小型装置で代用することができる。大型制御装置と小型制御装置の両方が、本発明のカセットを受容するのに適した同一寸法で同一形状の空洞を画定しているのが望ましい。この態様で、カセットは一方の装置から切離され、この最初の装置を伴わずに、カセットを適所に保持したまま患者を輸送し、その後の手術や治療のための別な装置にカセットを接続する。本発明はまた、カセットが最初の装置から切離されてから、同じ寸法の次の装置に接続される状況を踏まえている。これで、患者と一緒に制御装置を輸送する必要を簡単に回避することができる。
【0092】
<具体的な制御パネル>
図5Bおよび図5Cは、制御装置150の上部154をより詳細に例示しており、特に、制御パネル160の細部を図示している。図5Bは制御パネル160から分解された前面部172を例示しており、図5Cに例示されている前面部は、多用な表示器具やボタンに対応して指示書が印字されている。(図5Cの制御パネル160は、残りの図面に例示されている制御パネルの代替の実施形態であり、幾つかの余分な機能の他にも、複数のボタンまたは表示器具もしくはその両方の配置が少しだけ異なっていることに気づく)。ここより後段は、制御パネル160の物理的特性の説明であって、その説明の後半に、制御パネルの具体的使用方法の説明が続く。
【0093】
図5Cの具体的な制御パネル160は多数の視覚表示装置を備えており、例えば、中心線沿いの最上部から最下部までの間に、患者体温表示装置174、目標温度表示装置176、温度変化率表示装置178、および、システムフィードバック・システムステータス表示装置180を含んでいる。これ以外の望ましい情報はまた別な表示装置を使って表示するようにしてもよいし、または、本件に例示されているスクリーンのうちの1個に情報が表示されるような代替例を利用してもよいし、もしくは、本件に例示されているスクリーンのうちの1個に基づいてユーザーが要求を伝えることで表示するようにしてもよい。例えば、患者に加温処置または冷却処置を施す温度変化速度がユーザーによって設定される場合は、または、制御マイクロプセッサによって算定されるのであれば、目標温度に達するまでの予測時間が算出され、そのような値が表示されるようにするとよいが、これは具体例にすぎず、これらに限るものではない。英数文字表示用の大型表示装置は液晶表示装置(LCD)であるのが好ましいが、幾つかの発光ダイオード(LED)によるステータス表示装置も設けられているのが好ましい。上位3つのLCD表示装置174、176、178に隣接して置かれた幾つかの図柄のアイコンは、それぞれの表示機能を示すものである。特に、患者体温アイコン182a、目標温度LED182b、および、温度変化率LED182cが設けられている。温度変化率LED182cの真下には、動作モードLED182dとそれに付随する縦方向に連続する3種のモード表示装置184が設けられている。システムが冷却モードであるのか、加熱モードであるのか、または、一定温度維持モードであるのかに依存して、1度に表示装置184のうちの1個のみが点灯する。モード表示装置184の代わりに、表示装置180は「患者を冷却中」「患者を加温中」または、「温度維持」のメッセージを示し、操作者が制御装置を機能させているモードを容易に認識できるようにしてもよい。患者体温アイコン182は1個だけで、装置が加温処理中である場合には上向きに流れる1本の光の線を示し、装置が冷却処理中である場合には下向きに流れる1本の光の線を示し、また、装置が温度維持処理中である場合には静止位置で明滅する1本の光の線を示すようにしてもよい。最後に、電源の接続・切断表示装置LEDが制御パネル160の下位左隅に設けられる。
【0094】
制御パネル160はまた、多数の入力ボタンを展開しており、例えば、制御パネルの右側には下降順に、摂氏・華氏温度表示装置トグル190、1対の目標温度調節ボタン192、1対の温度変化率調節ボタン194、多機能・確定ボタン196、および、弱音聴取可能アラームボタン198が含まれている。弱音聴取可能アラームボタン198はLEDアラーム表示装置200の内部に収まっている。最後に、制御パネル160の下位中央部では、停止システム作動ボタン202がシステムの瞬間的遮断を行えるようにする。
【0095】
再度、図5Aおよび図5Bを参照すると、格納庫には、内部空洞242を含んでいるカセット受口168が設けられており、この内部空洞の中に、本発明の熱交換カセットが挿入される。好ましい実施形態では、後段でより詳細に説明するように、熱交換器と流体連絡状態にある貯水槽部を備えているカセットが設けられている。図示されてはいないが、スロット168にはマイクロスイッチが設けられており、このスイッチはカセット受口の空洞の壁面のうちの1つに取付けられて、熱交換カセットが内部空洞242に完全に挿入が完了し、空洞内部に嵌合してシステムが適切に作動する準備ができたことを示すようにするのが望ましい。図示されてはいないが関連技術では周知である、圧力ピンまたはボールのような調節手段と嵌合戻り止めとが制御装置とカセットのそれぞれに設けられて、カセットと制御装置との間で正確に相関的な設置を行うのを助けるようにするとよい。この配置はまた、或る実施形態では、モータおよび流体接続部をカセットに同時係合させるのに備えており、カセットを容易に挿入して容易に据付けが行えるようにしている。
【0096】
ここで図6を参照しながら、本発明の好ましい実施形態によって利用される一次冷却回路および二次冷却回路をここで説明する。図示されている実施形態では、一次流体回路215は、一次回路貯水槽219から一次回路液を汲出すポンプ217を備えている。一次回路液は圧力下で汲出されてライン218を通り、一次回路熱交換器221に通される。上述のように、一次回路熱交換器は、一次回路液を加熱または冷却することを目的とした、熱電加熱・冷却装置のおうな加熱・冷却装置を備えている。加熱・冷却装置によって生成される過剰な熱を除去するのを助けるように、または、加熱・冷却装置の適切な動作を必要とする熱勾配を供与するように、ブロワー223が含まれている。これに代わる例として、一次回路液を加熱または冷却するまた別な手段が利用されるが、例えば、必要に応じて加温処置または冷却処置を施すことができる水浴、または、当業者には馴染みのある冷却周期を生じる好適な圧縮装置を使うといった手段がある。例えば、一次流体を低温化する冷却処理を利用することで、一次流体を加熱する何らかの方法が必要となるが、例えば、ヒートポンプ、抵抗加熱、高周波(RF)、マイクロ波、または、それ以外の好適な加熱法が含まれる。同様に、一次回路を冷却する処置は、氷浴またはそれ以外の好適な、圧縮ガス、液化ガス、または、吸熱反応性化学物質のような保存型エネルギー源によって供与される。一次流体回路は、何であれ、好適な液体または気体であればよく、また、生体適合性である必要はない。また別な例では、一次流体回路は生体適合性があり、例えば、生理食塩水が挙げられる。流体はまた、好適なスラーリであってもよく、例えば、塩性溶液の軟氷またはそれ以外の液体の軟氷が含まれる。
【0097】
熱交換器221の下流側の一次流体回路ライン内を循環する流体の温度は、好適な温度センサーを利用して検知されるが、このような温度センサーの具体例として、例えば、熱電制御装置235に温度信号を供与する熱電対またはサーミスタ224、273が含まれる。これに代わる例として、温度信号はシステム制御装置237に送信されてもよい。熱電制御装置235の機能は、システム制御装置237によって実行される諸機能に含まれ、従って、本発明の範囲は別個の熱電対制御装置を必要とはしないことを、当業者なら理解するだろう。
【0098】
この実施形態では、温度センサー273は貯水槽219に帰還する一次流体の温度を監視する。このセンサーからの信号は、伝搬されている冷却力または加熱力を継続して監視して算定するために利用される。このような力が算定される理由は、熱交換器229への流入時温度が温度センサーによって測定され、ポンプ速度、従って、熱交換器を通る液体の流速も分かるからである。このような各種値の算出は当業者には周知である。このような力は、一次ループであれ、二次冷却ループであれ、そのような力の変動が或る問題を示すので有用である。具体例を挙げると、一次流体回路が液体流量の降下を経験した場合、または、熱交換の減少を経験した場合、温度センサー224で検知される一次回路の温度は、冷却中には減少し、加熱中には上昇する。センサー224からの温度信号を受信すると、制御装置は多様な活動を起こすことで、患者の安全を確保することができる。例えば、制御装置はポンプを停止させ、アラーム音を発生させることができる。
【0099】
図示されている実施形態では、一次流体回路215は、一次流体槽内で循環する流体の経路を制御するための弁225および弁227を備えている。この実施形態では、弁225は常態では閉鎖しているソレノイド弁であり、弁227は常態では開放しているソレノイド弁である。弁225と弁227の両方とも、制御装置237からの信号によって制御される。この配置では、一次熱交換器221から外へ出た流体は、弁225によって分流されて締切りライン226に流入し、締切りライン226において、常態では開放している弁227が循環中の流体がライン239を通って一次流体槽219に帰還するための経路を開く。この態様で、本発明は、熱交換器229がシステムに接続されていない場合には、一次回路液を継続的に汲出して一次熱交換器221を通してから一次流体槽219に流入させることができる閉ループを設け、必要に応じて一次流体回路215の温度を上昇または降下させてから或る温度に維持することができるようにし、操作者がシステムを制御することにより患者の血液の温度を上昇または降下させる際に、加熱または冷却を量的に大規模に保存しておく準備ができるようにしている。このようなシステムの利点は、後段でより詳細に論じてゆく。
【0100】
一次流体回路215と二次流体回路255の間の界面は、熱交換器229によって設けられる。図示のように、熱交換装置229は、加熱モードと冷却モードのいずれのモードであれ、一次流体回路215と二次流体回路255の間で熱エネルギーを伝達する手段を設けている。
【0101】
熱交換器229は1対の流体経路を有しており、この経路は中間流体経路であると見なされる。このような2本の中間経路、すなわち、1本の一次中間流体経路と1本の二次中間流体経路は、物理的に互いから分離してはいるが、互いに熱伝達関係にある。これは、2本の中間流体経路相互の間における熱エネルギーの交換に備えていると同時に、一次流体回路液が生体適合性であるにせよ、生体適合性でないにせよ、そのような流体で、患者の体内に流入する二次熱交換液を汚染する可能性を阻止している。同様に、一次中間流体経路と二次中間流体経路を物理的に分離することによっても、血液またはそれ以外の体液が二次流体回路に浸潤した場合に、一次流体回路の汚染を素子することができる。
【0102】
このような2本の中間流体経路は、それぞれの一次流体回路または二次流体回路に接続されると、これら回路の容積を増大させる。これにより、後段でより詳細に論じてゆく幾つかの利点が得られる。
【0103】
二次流体回路255にはカセット257が設けられており、カセットは熱交換器229、二次流体回路貯水槽259、および、二次流体回路ポンプ261を含んでいる。二次流体回路255内に包含されている流体は、ポンプ261によって貯水槽259から汲出されてから、供給ライン265に強制的に給送されてから熱交換器263に至るが、熱交換器の具体例としては、先に説明したように、患者の血管の内部に設置されたカテーテルの遠位端に取付けられているバルーンなどが挙げられる。二次流体が熱交換器263を通過した後で、流体は帰還ライン267を通って熱交換器229に流入してから、更に貯水槽259内に帰還し、二次流体回路25の閉ループを完成する。代替の実施形態では、熱交換器263と熱交換器229の順番が逆転され、そのため、ポンプ261が強制的に流体に熱交換器229の二次側を通過させてから供給ライン265に流入させ、帰還ライン267によって貯水槽259の中に流体を排出させる。二次流体回路に液を注入するためならば、または、患者の治療中に不測の事態で喪失した二次流体を補給するためであれば、生理食塩水の嚢などの、別個の流体供給源269も、適切なラインと弁によって二次流体回路と流体連絡状態になることでもう1つの二次流体源を供与することができる。流体供給源269および貯水槽259は、流体回路を加熱および冷却したことが原因で流体回路の容積が変動したのに順応するように、二次流体回路に柔軟性を与える。同様に、一次流体槽219は一次流体回路に柔軟性を与える。
【0104】
二次流体回路を通って循環する二次流体の温度は、センサー270、271のような、出力信号が制御装置237に送信される温度センサーを使って測定される。このような信号も更に別な信号も制御装置237が利用して、一次流体回路の加熱と冷却を制御することにより患者の体温上昇および体温降下を制御することが可能となり、または、センサー270、271によって検知された信号の値によって装置が適切に機能していないことが示されていた場合には、アラームを発令し、または、それ以外の動作を行うことが可能となる。これに加えて、制御装置237はポンプ261の速度を独立制御し、または、熱交換器221の制御と連携して制御し、所望の温度変化速度で所望の温度まで患者の体温を上昇または下降させることができる。
【0105】
熱交換器229の一次流体回路側は、即時接続・即時遮断弁231、233を利用して、一次流体回路に着脱自在に接続される。このような即時接続を採用することで、一次流体回路液を実質的に喪失せずに、熱交換器229を一次流体回路から取り外すことができるようになる。更に、制御装置237が常態では閉じている弁225に弁開放信号を送信しない限り、一次回路の流体は熱交換器229流入することはない。当業者には明らかだが、制御装置237が常態では閉鎖している弁225に弁開放信号を送信すると、制御装置237も、締切りライン226に配置されている常態で開放している弁227に弁閉鎖信号を送信し、一次流体回路から締切りライン226を遮断し、一次回路の流体は全部が熱交換器229を通るように方向づけられる。
【0106】
上段で既に注目したように、この配置が有利なのは、一次流体回路215の内部で継続して一次流体を循環させるせいであり、それにより、一次流体回路215の温度を所望の温度まで上昇または降下させることができるようになるとともに、その後も、患者が治療を受けていない場合でも、所望した温度に維持することができる。これは、患者が迅速な体温上昇または体温降下を必要とする場合には特に有益である。或る先行技術のシステムでは、止むを得ず、患者の体温を低下させるために使用される冷却媒体は、治療の開始時には室温であった。従って、患者の体温上昇速度または体温降下速度は、システムが冷却媒体に熱を付与する能力次第であり、または、冷却媒体から熱を奪う能力次第であった。これは、患者の体温を迅速に低下させるのが望ましい場合には問題であり、といのも、大抵の場合、所望の体温降下速度を達成するのに十分な割合で患者の血液から熱を奪うことができなかったからである。
【0107】
本発明のシステムは、既に冷却済みの(または、火急の用に応じて、加熱済みの)一次回路液の貯水槽を設けることにより、上述の必要に対処している。一次流体は既に冷却済みであるため、温度降下速度は、最早、加熱・冷却装置221の冷却能力のみで決まることはなく、むしろ、予め冷却された流体と加熱・冷却装置221の組み合わされた冷却能力に依存することになる。実際、本発明のこの実施形態は、より高い治療効果を得るために患者が迅速に体温降下または体温上昇される必要がある場合に有用となるシステムの加熱・冷却能力について、本件発明者が「強力な立ち上がり」と認めた能力を提供する。「強力な立ち上がり」の相対量は、一次流体貯水槽内の一次流体の温度を調節することにより、または、一次流体貯水槽219の寸法を増大させることにより、もしくは、その両方を行うことにより、調節することができる。
【0108】
代替の実施形態では、供給ライン265および帰還ライン267は、ルアーロック取付け具275、277のような連結部材を備えているようにしてもよい。このような配置が有利なのは、この配置により、必要ならば、患者の治療中にカセットをカテーテル263から切離すことができる点である。また別な実施形態では、熱交換器は、カテーテルに付随する複数のセンサーからのセンサーラインを接続する接続部材を備えており、アクセスポイントが接続されているのと同時に、または、ほぼ同時に、センサーラインは指令処理装置に接続され、従って、システムの迅速な設定を促進している。
【0109】
また別な代替の実施形態では、一次流体回路におけるアクセスポイントにより、一次流体貯水槽には容易に一次流体を充満させることができるようになる。更に、アクセスポイントは一次流体の一次流体貯水槽から液体を排出させることができるようにするため、便宜上または安全面から必要と思われるという理由による貯水槽の取替や装置の発送を容易にする。
【0110】
また別な実施形態では、一次流体回路は、一次流体の電気抵抗を所定の閾値より高いレベルに維持することで一次流体回路の絶縁状態と患者の安全が確保できるようにすることを確実にする手段を有しているようにしてもよい。これを達成する手段の一例は、一次流体回路内に好適なイオン交換樹脂を保有する、脱イオン化カートリッジ282を設けることである。脱イオン化カートリッジの中を通る液流を制御することで、一次流体回路内を循環する流体全部にカートリッジ282の中を流動させることができるようになり、または、一次ループを通って帰還して一次流体槽219に流入する流体の一部のみを処理することができるようになる。
【0111】
また別な実施形態では、電力不測やそれ以外の問題が起きた場合に、アクセスポイントにより、熱交換器は容易かつ迅速に一次流体回路から切離すことができる。この態様で、例えば、熱交換器の一次流体側を通して氷水を循環させるのに、これを遂行するのに好適な構成のシステムを利用するといったような、一次流体を供給する代替の方法が採用される。
【0112】
弁225および弁227の両方ともが閉鎖している場合の過負荷から一次流体回路215およびポンプ217を保護するために、内部バイパスループ284が一次流体回路に配置される。バイパスループ284は、ポンプに対する損傷を防止するのに十分なだけ低いレベルの所定の圧力で開くように設定された逆止弁286を備えている。また、熱交換器229を損傷する恐れがある程度まで上昇した一次回路内の圧力が原因で熱交換器229が遮蔽し、または、即時連結部材231または233の不測の分離をすることも、逆止弁286を開くための圧力を適切なレベルに設定することにより緩和することができるという点で、バイパスループを備えていることは有利である。
【0113】
能動換気弁または受動換気弁280が二次流体回路に含まれているようにしてもよい。この弁を備えていることは、二次流体回路から空気を換気して、カセットを使用する前に二次回路液を二次回路に注入するのを助ける際に有用となる。
【0114】
代替の実施形態では、このシステムの性能の監視および制御は、一次流体回路内の温度を監視するだけで実行することができる。一次回路の温度を監視することで、一次流体回路に加算する必要がある熱エネルギー量、または、そこから減算する必要がある熱エネルギー量を算定するために利用することができる制御装置に情報を供給し、二次流体回路が患者の組織または血液の温度を変動させる熱交換能力を駆使するようにしている。
【0115】
図7は、本発明のシステムの代替の実施形態を例示している。この実施形態では、一次流体回路310および二次流体回路312を通る流れが変えられる。図示のように、一次流体回路ポンプ217は、ここでは、図6に例示されているように熱交換装置229により流体をポンプで汲出すのではなく、熱交換装置229により吸引する。更に、常態で閉鎖している弁225が貯水槽219と熱交換器229の間に配置される。従って、熱交換器229はポンプ217の負圧側に配置される。同様に、一次流体回路の流動方向を帰ることにより、熱交換器229を通る二次流体の流れは逆転されるのを余儀なくされる。能動換気弁または受動換気弁313、換気ライン314、および、換気フィルター315は、ポンプ217の負圧側の一次流体回路とも流体連絡状態にある。
【0116】
この配置には幾つかの利点がある。着脱自在な熱交換器229を利用することにより提起される不都合の1つは、熱交換器229が一次流体回路から切離された場合に、一次回路液の熱交換器229を空にする必要性である。この配置はそのような不都合に対処する手段として、熱交換器が切離される前に、一次流体回路の熱交換器229をポンプで空にするという手段を採用している。例えば、患者に治療を施した後で熱交換器が切離されなければならない場合、操作者は、手動入力装置(図5)を使って、弁225および弁227に弁閉鎖信号を送信し、更に、換気弁313に弁開放信号を送信するように制御装置237に指示を出すことができる。これで一次流体源を貯水槽給水ポンプ217から効果的に遮断しながら、換気弁313、換気ライン314、および、換気フィルター315を通る空気の経路を開く。これにより、ポンプは熱交換器229から一次流体を吸い上げ、流体を汲出して貯水槽219に流入させて保存することができるようになる。熱交換器229の一次側から一次流体が汲み干されてしまった場合、制御装置237は、流体が枯渇していることを自動で検出したのであれ、または、操作者からの手動指令を受信した後であれ、いずれにせよ、換気弁313には弁閉鎖信号を送信し、弁227には弁開放信号を送信し、弁ラインを遮断し、締切りライン226を通る流体の流れを回復させる。上述の事柄は多様な弁開放信号および弁閉鎖信号に言及しながら説明してきたが、常態で開放している弁または常態で閉鎖している弁が使用される場合は、これらの弁をそれぞれの常態に置くのにどんな信号も必要ではないことが分かる。それどころか、制御装置は常態以外の別な状態に弁を置く信号を送信するのを止めるだけでよい。代替の実施形態では、換気弁は図6のポンプ217の流入側と連絡状態になるようにしてもよい。このような配置は弁を追加する必要が生じる。しかし、この配置は、うまくいくけれども、好ましいとは言えない。
【0117】
図7に描かれている本発明の実施形態のまた別な利点は、ポンプの負圧側に熱交換器229を置くことで、一次流体回路の圧力に相関的に上昇させられた圧力レベルに二次流体回路を維持するのが容易になることであるが、こうやって一次流体回路が二次流体回路の中へ拡張するのを阻止することにより、熱交換器229の一次流体回路に液の漏出が発生した場合でも、システムの安全性が向上する。これに代わる例として、ポンプで汲出した二次流体に熱交換器229を通過させてからカテーテルに送ることにより、二次回路が一次回路よりも高い圧力を有するように制御するようにしてもよい。
【0118】
<具体的な電子制御回路>
図3Aおよび図3Bならびに図4のグラフを併せて既に説明した制御システムの代替例として、制御装置はカスケードPID制御機構を採用してもよい。このような機構では、制御システムは、2区分に分割されて設けられる。すなわち、(a)患者に関して患者の体温を表している、ユーザーから入力(図示の実施形態では、「温度変化率」および「目標温度」)とセンサーからの入力とを受信してから、中間設定点温度(SPI)と一次流体PID制御装置への出力信号を算定する、バルクPID制御部、および、(b)一次流体の温度を表している、バルクPID制御部からの入力とセンサーからの入力とを受信してから、TE冷却装置に入力される電力を変動させることにより、TE冷却装置の温度を制御する信号を生成する、一次流体PID制御部の2区分に分割される。一次流体はTE冷却装置より近位の熱伝達装置内を循環するため、一次流体PIDは本質的に一次流体の温度を制御する。このようにして、制御機構は、患者に設置されたセンサーからの入力と制御装置に組み込まれた論理に基づいて、特定の温度変化速度で特定の目標温度を自動的に達成することができる。これに加えて、この機構により、制御装置は患者の体温を摂氏0.1度づつぐらいの極度な緩慢さで自動的に変動させることで、非常にゆっくりと目標温度を達成するとともに、TE冷却装置への電力の行き過ぎ量または劇的な上下動、および、潜在的に損傷を与える恐れのある波動を回避することができる。目標温度を達成してしまえば、システムは継続して自動的に作動して、目標温度に患者の体温を維持するのに必要な厳密な割合で熱を供給し、または、熱を奪う。
【0119】
特に、このことは、図8に例示されているように達成される。図8は、図5Aの制御装置150で使用するのに特に適しているが、尚且つ、本件に記載されているどの制御装置にでも適用することができる、本発明の構成部材を例示した具体的な制御の概略である。これらの構成部材のうちの幾つかは先に識別された構成部材と一致しており、従って、適切であれば、明瞭にするために同じ参照番号が繰返し使用されている。一般に、制御回路は、破線322の内側に示された多数の論理構成部材を有している制御盤、ユーザ入力装置324、表示出力装置326、複数のセンサー328、枠330の内側に示された電子ハードウエアの多数の素子、および、安全システム332を備えている。ユーザー入力324および表示出力装置326は、図5Cの制御パネル160に関して既に説明した。この実施形態の制御回路に適用することができる2個のユーザー入力装置324は目標温度調節ボタン192および温度変化率調節ボタン194である。制御回路に適用することができる表示出力装置326は患者体温表示装置174およびアラーム表示装置200であるが、ユーザーに多様なフィードバックを与える、上記以外の多数の表示装置を含んでいてもよい。複数のセンサー328が設けられており、例えば、患者の実際の体温を検知するとともにライン326によって表される信号を生成する、少なくとも1個のセンサー327、および、一次流体の温度を直接的にまたは間接的に検知するとともに代表信号331を生成するセンサー329が含まれる。
【0120】
システムに液が注入された後で、入力として目標温度および所望の温度変化率を利用する設定点計算機334を用いて、設定点温度(SPI)が決定される。この設定点温度は、初期の患者体温で開始して、所与の時間にシステムが達成する仮の目標温度を表しており、例えば、温度変化率が1時間あたり摂氏1度である場合には、6分ごとに摂氏0.1度である。このような設定点温度は制御盤のバルクPID制御部336に伝達される。バルクPID制御部336はまた、肉体温度センサー327からの入力を受信する。
【0121】
設定点温度(SP1)および実際の体温との間の差があるとすれば、その差に基づいて、バルクPID制御部336は、二次流体回路を通して循環される熱交換液について指定された温度を上げ下げすることで、特定の温度変化率において患者体温に変化を誘起する。すなわち、所望の一次流体温度の値、または、また別な第2の設定点温度(SP2)は、一次流体PID制御装置338に参照番号337で標識を付して例示されているように伝達される。一次流体PID制御装置338はまた、一次流体の温度センサー329からの入力を参照番号333で標識を付して例示されているように受信する。一次流体PID制御装置338は、検知された一次流体温度をバルクPID制御部から伝達された所望の一次流体温度と比較し、差があるようであれば、その差を定める。この差に基づいて、一次流体PID制御装置338は参照番号340で例示されているように、ディジタル信号を「H-ブリッジ」極性切替装置342に送信し、この極性切替装置が適切な大きさと極性の電力をTE冷却装置348に指示し、TE加熱・冷却装置を加熱または冷却することで、二次流体の温度を制御するのに適切なレベルまで一次流体の温度を制御し、患者の組織または血液の温度を上昇または降下させて所望の温度にし、または、所望の温度に維持する。
【0122】
極性切替装置342は電源344から電力を受けて、一次流体PID制御装置によって要求される適切な大きさと極性まで電力を変換する。電源と極性切替装置との間には安全中継器346が配置されており、この中継器は、安全性を議論すること無く、電源344からの電力を極性切替装置342に伝達する安全システム332によって作動される。安全システム332は、安全性の問題に気づいた場合は、例えば、底流体レベルが検知されると、安全中継器346に指示を与えて、回路を開いて電源344からの電力がTE冷却装置348に向かわないようにすることができる。しかしながら、安全性に疑問が無い場合には、極性切替装置342は、一次流体PID制御装置からの要求に従って、加熱・冷却装置348に電力を伝達する。本発明の多様なサブシステムが入力信号を安全システム332に供与するが、いつ入力が導入されるかについては、後段で説明する。
【0123】
制御回路は、目標温度および検知された体温の格差が比較的大きい場合に迅速な熱交換を許容する論理を含んでおり、これにより、検知体温が目標温度に近づくと、熱交換速度が遅くなる。検知された患者体温およびSPIが極めて近接してくると、バルクPIDは一次流体温度をほんの僅かだけ変動させるように指示することになり、従って、SPIが検知された患者体温により近似するにつれて変化速度は遅くなり、最終的には、変化速度は本質的に存在しなくなる。このようにして、患者体温は、摂氏0.1度づつの非常にゆっくりとした割合で上昇または降下され、体温が目標温度に達した場合に、温度情報から温度降下へ向かう行き過ぎ量すなわち劇的波動を回避する。入力された目標温度に達すると、SPIおよび目標温度は本質的に同じになり、安全システムはTE冷却装置に供与する出力を目標温度に患者体温を保つのに必要な一次流体回路温度を維持するレベルに設定するように作動する。このようにして、安全システムは目標温度を維持するように作動するが、その間、一次流体は本質的に安定した状態として目標温度を維持するのに必要な厳密な割合で熱を供給するのに、または、熱を奪うのに丁度正確な温度に維持されている。
【0124】
一次流体PID制御装置338は1秒あたり10回の割合でそれぞれの入力をサンプリングして、2秒ごとに1回の割合で極性切替装置342に供与する出力を更新し、従って、患者体温を変動させる傾向が継続して監視および調節される。バルクPID制御部336は同じ割合で入力をサンプリングし、従って、新しい目標温度または新しい温度変化率はほぼ即時的なシステム反応でユーザーによって指定される。
【0125】
本発明の制御装置を使って、冷却システムのまた別な各種局面を制御することができる。例えば、一実施形態では、患者の体温が目標温度の0.3度の範囲内に近づくと、制御装置は二次流体回路ポンプの出力を低下させ、一次流体回路ポンプの出力を低下させ、または、一次回路に設けられたファンおよびブロワーの速度を落として装置によって発生するノイズの量を低減し、もしくは、これらの3つの処置のうちの2つ以上を組合わせて一緒に遂行する。
【0126】
<具体的な熱交換装置>
図9は、本発明の熱交換カセット400の具体的実施形態の展開図である。熱交換カセット400は、貯水槽小室、二次回路ポンプ、および、一次流体回路と二次流体回路の間の熱エネルギー交換を行うための熱交換器410を備えている。
【0127】
熱交換器410は、ベースプレート420とカバー425の間に形成されている空洞の内部に配置された熱交換部415を含んでいる。空洞の内部の流体通路を封鎖して熱交換部415の中を流体が容易に流動することができるようにするのに、O字リングのブシュ427が使用される。カバー425はコネクタ430によってベースプレート420に保持されるが、コネクタはネジ加工されたスクリューまたはボルトであり、もしくは、それ以外の、ベースプレートをカバーに取付けることのできる装置であればよい。熱交換器410は全体が、好適なコネクタ435を使って、カセット部405に取付けられる。図9はまた、搭載用カバーを貯水槽小室に着脱自在に取付けるコネクタ440を例示している。
【0128】
ベースプレート420にはまた、2本の流体経路(図示せず)が設けられており、後段でより詳細に論じられる。第1の流体経路の入口は、カテーテルから帰還する二次流体を受け、二次流体経路の入口は、使用前に熱交換器を二次流体で充満させるように注入液を受ける。一次流体経路と二次流体経路の両方の出口は、流体を通す様式で熱交換器の入口429に接続されている。熱交換器出口431は、流体を通す様式でカセット部405の貯水槽に接続されている。
【0129】
また更に、一次流体回路および二次流体回路の流体経路を完備するように、多様な流体コネクタが図9に例示されている。例えば、コネクタ445、450がカバー425に取付けられ、熱交換器415の一次回路側を通って流体を通過させる入力ポートおよび出力ポートとして使用される。同様に、乳嘴状突起455は二次流体回路ポンプの出力流体経路に配置され、患者の血液を加熱または冷却するために使用されるカテーテルのバルーンに二次流体を送る供給ラインへの接続に備えている。乳嘴状突起460は、カテーテルからの帰還ラインを受容し、ベースプレート420に設けられた第1の流体経路を通って熱交換器415の二次側の入口にへの流入端を設けている。
【0130】
二次回路液は、熱交換器415を通って流動した後は、出口431を通って熱交換器415を出てから、乳嘴状突起470から外へ出て、乳嘴突起480を通ってカセット部405の貯水槽へ流入する。乳嘴状突起465、469は二次流体回路へのアクセス路を設けて、二次流体回路に二次流体を注入するようにしており、乳嘴状突起475によりカセット部405の貯水槽は換気を行うことができる。
【0131】
図10および図10Aは、熱交換カセット400に二次回路管材を接続しているのを例示した、具体的な実施形態を描いている。バルーンカテーテルへの供給用管材505は乳嘴状突起455に接続されており(図9)、帰還用管材510は乳嘴状突起460に接続されている。上述のように、乳嘴状突起460はベースプレート420の第1流体経路を介して熱交換器の二次側の入口429に接続されている。流体供給ライン515は、スパイクカバー525によって被覆されたスパイク520を備えており、分流装置ブロック材540に接続される。分流装置ブロック材540には乳嘴状突起550が設けられており、これは長さが短い管材(図示せず)によって乳嘴状突起469に接続されている。低圧逆止弁560は乳嘴状突起545と乳嘴状突起465の間に配置され、これらの間を接続している。乳嘴状突起465は、ベースプレート420に設けられている二次流体経路に流体を通す様式で接続されており、熱交換器の二次側に流体を接近させ、必要ならば、熱交換器に二次回路液を注入することができるようにしている。換気ライン530は、能動または受動換気弁535を備えているが、乳嘴状突起475に接続されている。
【0132】
スパイク520を流体源に挿入することにより、二次流体回路に二次流体が注入される。流体はスパイク520に流入してからライン515を通って、更に、分流装置540に流入するが、ここで流体の流れが分岐される。次に、流体は逆止弁560および乳嘴状突起465を通って熱交換器に流入し、更に、ベースプレート520の二次流体経路に流入してから、最終的には熱交換器の入口429に流入する。これと同時に、流体は、乳嘴状突起469を通ってカセット部の貯水槽に流入する。逆止弁560は、注入中に流体を流すことができるようにするが反対方向の流れは阻止する一方向弁であるが、このような反対方向の流れが発生するとすれば、圧力下にある帰還ラインからの流体が熱交換器の入口付近に存在している場合に、二次流体回路の動作中に起こりそうである。この配置が有益であるのは、貯水槽と熱交換器に同時に液を注入することができる点である。
【0133】
また別な実施形態では、ライン515およびライン530は、二次流体回路に容易に自動的に液を注入することができるようにする、自動作動式にすることができる弁を備えている。好ましい一実施形態では、ライン515、530は電気作動可能なクランプを介して延びている。システムの動作でボタンが押された場合、例えば、制御装置または制御装置表示装置に設けられた「注入」ボタンを押したとすると、制御装置がクランプに開くよう指示を与える。この時点で、流体は流体源から貯水槽に流入し、システムから空気を抜くことができる。通例、流体源からの流体は重力により貯水槽を充たすが、加圧帯またはそれ以外の類似手段を流体源に付与して流量を増大させ、従って、二次流体回路に液を充たすのに必要な時間を低減することができる。貯水槽内のレベルが一杯であると判定されると、前述の検知システムを利用して、制御装置がクランプまたは弁を閉じることで、換気ライン515を通る流れを制御する。ライン530に取付けられたクランプまたは弁は開いたままにされ、作動中に二次流体回路の温度または圧力が変化したせいで起こる容積変化に流体源が順応することができるようにしている。
【0134】
図11Aおよび図11Bは、カセット部405の具体的な実施形態のまた別な詳細を描いている。図11Aを参照すると、カセット部405は、制御装置(図2)に挿入される際の配向とは逆の配向で例示されている。カセット部405はカセットブロック605を含んでおり、この部分は、図11Bで分かるように、貯水槽607を形成している側壁を有している。図11Aのカセットブロック605の底面に見えるのは、貯水槽の中に光ビームを伝達するために設けられたウインドウ615であり、これは貯水槽607の内部の流体レベルを判定する際に利用するためのものである。ポンプ制御装置610もカセットブロック605の底面に配置されており、ポンプ駆動装置68(図2)に接続されて二次流体回路ポンプを駆動する構成になっている。
【0135】
カセットブロック605の頂面はカバー620で閉鎖される。カバー620は、通例は、不透明であり、カバー620の内面にミラー625が配置されている。ミラー625は、貯水槽607の内部の二次回路液のレベルを判定するために使用される流体レベルセンサーの一部を形成している。ポンプ封鎖部630およびポンプシャフトのブシュ635も図示されており、図11Bを参照しながらより詳細にこれらの説明をする。
【0136】
図11Bは、カセット部405の右側を上に向けた配向に描いて、カセット部405の構造および構成部材のまた別な詳細を容易に説明するようにした図である。上述のように、カセットブロック605の側壁およびカバー620はカセット部605の内部の二次流体回路貯水槽607を形成している。上述のレベルセンサーの一部を形成しているプリズム655は、カセットブロックの内面に取付けられており、光を通す様式で、カセットブロック605の頂面に配置されている窓615と連絡し合っている。
【0137】
代替の実施形態では、2個のプリズムを使って冗長システムを設けるようにしてもよい。このような配置では、制御装置には2個のプロセッサが設けられ、その一方は主プロセッサで他方は安全プロセッサにするとよい。主プロセッサは第1プリズムを監視し、安全プロセッサは第2プリズムを監視する。プリズムの監視はプロセッサによってタイミング制御されて、安全プロセッサが異常を検出する前に、主プロセッサが異常を検出するように設定されるとよい。従って、ユーザーに警告が発せられて、ポンプが停止する。この場合、ポンプは再起動することができる。異常が修正されず、安全プロセッサによって検出された場合には、ポンプが停止させられ、治療を進める前に、異常の原因を判断する介入作業を必要とする。これに代わる例として、両方の安全プロセッサが同時に等しい優先度で機能することができるようにすることで、どちらの安全プロセッサによる低レベルの表示装置であれ、ユーザーに対する警告のような信号を誘発するか、または、ポンプを停止させる。
【0138】
二次流体回路ポンプ660が貯水槽607の内部に配置されている。図示されている実施形態では、ポンプ660は1対のポンプ作動用歯車665が設けられたギアポンプであり、歯車は各々がポンプ本体部679の内部に配置されているポンプシャフト677に取付けられている。裏打ちプレート670はポンプ内部の適所にシャフト677を保持しており、更に、裏打ちプレート670とシャフトの端部との間でシャフトに当接させて高さ補正部材675が配置されているが、この補正部材は、通例、シリコンのような生体適合性可塑材などの圧縮可能な素材から形成されている。高さ補正部材は、ポンプ作動用歯車に圧力を加えることで歯車を適所に保持するが、これと同時に、歯車が自由に回転することができるように歯車に何らかの動きを取らせることができる。カバー620は、図11Bでは反転されて例示されているが、カセットブロック605の適所に保持されて、好適な接続部材680を使って貯水槽607を形成している。
【0139】
貯水槽607には空気トラップ685も配置されている。空気トラップ685は多孔性素材から製造されており、この素材は空気トラップを通って二次流体は流動することができるようにするが、空気が流動するのは遮断する。空気トラップ685は、流体は優先的に流動させても空気の流れは遮断することができる素材であれば、如何なる素材から形成されてもよいが、具体的には、半透過性膜または発泡性ブロックなどがある。本発明の幾つかの実施形態では空気トラップは省かれているが、空気トラップ685は、二次回路液が二次回路ポンプに入る前に液中に混入する、大小いずれの気泡でも捕獲する手段となるので、使用するのは有益である。
【0140】
カセット貯水槽が十分に隔絶されている代替の実施形態では、ルアーロック接続部材および逆止弁を利用すれば、カセット貯水槽に二次流体を予備充填することができる。このような予備充填式貯水槽を設けることで、ポンプを作動する前に二次流体回路に二次流体を注入する必要がなくなる。このような配置では、カテーテルの流体経路に充填するのに使用される流体は、必要ならば、流体源に注入ラインを取付けることによって得られる。
【0141】
ポンプ660は熱交換器の二次流体回路の出力側に配置されて、二次流体をカテーテルの中へ押し流させることができるのが分かる。これに代わる例として、ポンプ660は熱交換器の二次流体回路の入口側に配置されてもよい。
【0142】
代替の実施形態では、好適な可撓性を有する冷却用バルーンがカテーテルに取付けられるが、ポンプによって引き起こされる二次流体の拍動の結果としてバルーンが波動するように搭載される。バルーンがこのように波動するのが有利となるのは、バルーンの表面に隣接している血液流に乱れを誘発することにより、患者の血液と冷却液との間により良好な熱伝達を促す点である。
【0143】
<安全システム>
前述のように、貯水槽部には、システム内に存在する熱交換液の量を監視する手段が設けられ、より詳細に説明すると、流体貯水槽の内部に保有される流体のレベルを検出する光学手段を設けることができる。二次流体は生体適合性の液体であり、体外の流体源の容積は約250 mlにすぎないため、患者の体内に液が漏出することが問題となるとは思われない。しかしながら、液体レベルが下がり過ぎて空気が患者体内に汲み入れられるのは望ましくない。よって、本発明の熱交換液供給システムは、システム内の流体のレベルを検出することで、流体レベルが容認できないほど低くなった場合に警告を与える、または、それ以外の方策を取ることができるように設計されている。図11Aおよび図11Bに例示されているように、1対のプリズム655がカセットブロック605に取付けられており、プリズムは各々が対応するビーム源とビームを得ることができ、これらを利用して流体レベルセンサーを形成している。プリズム655は各々に対応するビーム源とセンサーが設けられて、センサーはプリズムに隣接した位置で制御装置に搭載されている。
【0144】
図11Aで分かるように、カセットブロック605の底面に配置されている透明な窓615により、貯水槽607の流体レベルを光学的に監視することができる。隣接して設置されるビーム源およびセンサーは、第2のプリズム655が存在している場合には、この第2のプリズムにも設けられる。
【0145】
通例、ビーム源(1個または複数個)およびセンサー(1個または複数個)は、制御装置の、窓615を通して貯水槽607の内部に接近することができるような位置に設置される。プリズム655は屈折面を有しており、プリズムはポリカーボネートのような素材を使って別個で成形または機械加工されてから、貯水槽部の内部に固着されるようにしてもよいし、または、貯水槽部の一部として機械加工されてもよい。ここでもまた、流体レベル検出法が機能するにはプリズムは1個しか必要ではないが、後段で説明するように、第2の重複プリズムを備えているようにするのが望ましい場合がある。
【0146】
第2のプリズムとそのビーム源およびセンサーは冗材であり、第1のプリズムと同じ流体レベルを監視するよう機能するのであるが、第1のプリズムとそのビーム源およびセンサーが適切に機能し損なった場合の安全機構として作動する。これに代わる例として、プリズムの一方は「高レベル」検知システムを備えており、貯水槽内の流体が或る高レベルに達すると、制御装置に信号を発信するために使うことができる。これは、例えば、弁を設けた注入システムが採用されて、尚且つ、水位が高レベルまたは満杯レベルにならないと弁を作動させて注入シーケンスをいつ停止するかを判定することができない場合には有益である。高水位レベルセンサーと低水位レベルセンサーの両方が各プリズムごとに採用されてもよいが、但し、そうするのが望ましい場合に限られる。このようなセンサーは、光ビームのレベルに流体が存在していること、または、存在していないことのいずれかを示す信号を生成する。光ビーム源およびセンサーが両方とも設置される場合、または、光ビームが貯水槽の最上位付近に向けられる場合、流体が該当レベルに達したことを示すことで制御システムから適切な反応を誘起し、例えば、注入シーケンスを終結させる。他方で、センサーのみが設置される場合、または、光ビームが貯水槽の最下位の流水レベルを検知するように指示される場合には、流体レベル検出装置は、低水位レベルを検出するように構成されて、そのような低レベルを表す信号を生成することができるようにするとよい。次に、制御装置は、貯水槽内の流体が低レベルであることを示す信号に応答する構成になっている。例えば、制御装置はこの信号に反応するように設計されて、低水位レベルが検出された場合には流体の汲出しを停止するように二次回路ポンプを制動することができるようにすることで、熱交換カテーテル内に空気が汲み入れられることがなくなる。更に、低水位レベル状態を操作者に警告するのに、アラームが鳴るようにしてもよいし、更に、図5Cの表示装置200のような警告表示が作動するようにしてもよい。
【0147】
本発明の好ましい実施形態では、システムの障害を防止するとともに、患者への潜在的障害を防ぐために、他段階の安全冗長性が準備される。まず、2個のマイクロプロセッサが設けられて、相互に了解を取り合うために継続して監視が行われる。一方が機能不全に陥ると、システムが警告を発して遮断する。次に、2個以上の患者センサーが設けられて、相互に了解を取り合うために監視が行われる。これらのセンサーからは制御装置によって頻繁にサンプル採取が行われ、それぞれの値が一致していない場合には、マイクロプロセッサを使った場合と同様に、システムが警告を発し、遮断する。同様に、熱交換循環経路専用の2個以上の流体レベルセンサーが相互に了解を取り合って安全冗長性を得るのが望ましい。更にまた、熱交換媒体専用の2個以上の温度センサーが設けられ、相互に了解を取り合うために監視が行われる。簡単に述べると、システム全体の多様な冗長サブシステムによって、適切な動作が行われることを確保し、そこから得られるフィードバックを利用して、必要に応じて、システムを遮断する。
【0148】
本発明のまた別な好ましい実施形態では、貯水槽部607には、貯水槽内の流体水位が低くなり過ぎたことを検出する手段が設けられる。通例は、貯水槽に流体を充満させた後で、光ビーム源が作動開始する。作動時には、光ビーム源は光ビームを生成するが、このビームはプリズムの底面から入射し、プリズム内部の流体との表層界面で、1回以上、内反射されてから、光ビームセンサーに戻される。流体が貯水槽内にある限りは、センサーは反射された光ビームを監視し、ポンプは継続して作動し、熱交換カセットとカテーテルを通して流体を流動させることができる。しかし、流体の水位がプリズムの上位反射表面より下まで降下した場合、従って、プリズム内面の反射率が変動した場合は、センサーは反射された光ビームを観測することはない。このような反射ビームが受光されない場合には、システムが警告音を鳴らし、ポンプ汲出し動作を止める。
【0149】
本発明で思量されているまた別な安全システムは、泡または流体システムに汲み入れられた可能性のある混入空気を検出するための、導管の多様な位置に設置された泡検出装置またはライン内空気検出装置と、システムの一部または流体が容認できないほど高温になった場合、または、低温になった場合に信号を発信する温度監視装置とを備えている。更にまた、泡検出装置またはライン内空気検出装置は、容認できる程度のレベルの流体が流体回路内に存在しているか否かを示す構成であってもよい。流体センサーの光ビーム源が作動しているか否かを示す検出装置を設けるようにしてもよいが、これは例えば、システムが接続状態にされたにも関わらず貯水槽内の流体がビームを屈折させて検出装置に戻すには不十分であるような場合の光ビームを初期検出する検出装置を設置することによって実施される。図1、図2、および、図5に描かれている制御装置は患者体温センサーを多数個、備えている。2個の異なるセンサーからの温度信号に相当な差があって、センサーのうちの一方、多分、システムの制御を遂行しているほうのセンサーの設置場所が悪い、機能していない、脱落してしまっているなどといったような事象を示している場合には、警告音が鳴り、システムは遮断される。これ以外の類似の安全警告システムも本発明のシステムの範囲に含まれる。
【0150】
本発明によれば、制御装置プロセッサは多数のセンサーに同時に反応するよう構成されてもよいし、または、複数の熱交換機のような多様な構成部材を作動または停止するよう構成されてもよいものと理解するべきである。このように、例えば、制御装置が血液の温度を上昇させ、その後で、検知された肉体芯部の体温が肉体芯部の目標温度よりも低い場合には、この検知体温に応答して加熱後の血液に肉体芯部を循環させ、また同時に、第2の熱交換器を作動させて血液を冷却し、検知された脳温度が脳の目標温度よりも高い場合には、この検知体温に応答して冷却後の血液を脳領域に向かわせるようにしてもよい。これはすなわち、検知された体温が目標温度であり、従って、肉体芯部を循環している血液と接触している熱交換器が制御装置によって切断状態になると同時に、制御装置は継続して第2の熱交換器を作動し続けることで、脳領域に送られる血液を冷却することができる、ということである。操作者が想定することができ、かつ、制御装置にプログラムして組み込むことができる多数の制御スキームはいずれも、本発明に含まれる。
【0151】
本発明のシステムの多様な実施形態の利点の1つは、このシステムが患者の血液と冷却回路との間で大量の熱を交換することに備えていることである。患者の体温が出来る限り迅速に降下された後で定温に維持されるのを確実にするために、400ワットを超える熱負荷に対して摂氏0度から5度の範囲の温度に一次流体回路を維持するのが望ましいことが分かっている。しかし、当業者なら理解することであるが。このようなレベルに一次流体温度を維持するのを達成するのは困難である。図12は、本発明の一実施形態が実施されているのをグラフ表示したものである。このグラフの示すところでは、試験された実施形態は、500ワットの電力負荷の下で摂氏1.5度よりも低いレベルに一次流体温度を維持することができた。
【0152】
図13は、患者の体温を低下させるために使用される場合に本発明の位置実施形態を先行技術の冷却システムの性能と比較したのを例示したグラフ表示である。曲線700は本発明の実施形態を利用して得られた結果であり、患者の体温を摂氏33度まで降下させるのに平均19分を要した様子を示している。これを先行技術のシステムと比較した結果は曲線710で描かれており、患者の体温を摂氏33度まで低下させるのに平均して68分を要したことを示している。図13の破線は、曲線700および曲線710を得るのに使用されたデータ周辺の95%の信頼区間を示している。
【0153】
本発明のシステムのまた別な利点は、一次冷却ループから大量の熱を抽出する能力により、システムが患者から大量の熱エネルギーを奪い始めるまでの時間を短縮することができることである。例えば、必要ならば、一次冷却ループは冷却処理されて摂氏3度よりも低い目標温度に達するのに5分未満で実施できる。このような急速冷却は緊急事態に必要となることがあり、例えば、患者の体温を迅速に低下させるのが望ましいが、そのような迅速冷却システムの使用が事前に想定されていなかった場合である。
【0154】
本発明のシステムのまた別な利点は、患者と接触状態にあるシステムの各部が、どの部分も使い捨てできるが、システムの重要な部分や比較的高価な部分は再利用することができることである。従って、カテーテル、熱交換液を滅菌するための流体経路、滅菌した熱交換液そのもの、および、ポンプヘッドは全て、使い捨てできる。熱交換バルーンの破裂により、熱交換液経路が患者の血液と接触する、従って、ポンプヘッドが患者の血液と接触するような事態に陥っても、これら構成部材はどれも使い捨てできるので、複数患者の間で相互感染が起こることはない。しかしながら、ポンプ駆動装置、電子制御機構、熱交換器、および、手動入力装置はどれも再利用可能であって、経済的であるとともに便利である。例示されているように、このような再利用可能な構成部材はどれも、病院またはそれ以外の施療機関の外科手術病棟または一般診療病棟で一人の操作者で作動させることができる単体の制御装置の内部に収納されるのが望ましい。同様に、肉体の周辺とカテーテル沿いに分布させられる多様なセンサーも使い捨てができるが、センサーの付属先である制御装置プロセッサは、滅菌する必要もなく、再利用することができる。
【0155】
本発明のまた別な実施形態では、図6に例示されているように、逆止弁286は一次流体回路内に含まれており、一次流体回路の出口側が切断された場合に、一次流体回路内の圧力を制御することができる。或る実施形態では、一次流体回路ポンプは、予め選択された安全閾レベルを大きく超過した圧力で一次流体を汲出すことができる。例えば、ポンプは50 psiまたはそれを越える圧力に達することができる。患者に更に安全を提供するために、一次流体回路内の逆止弁は、一次回路内の圧力が、安全であると判断される、例えば、35 psiのようなレベルを超過するのを防ぐことができる。これで、熱交換器内部で一次流体回路に障害を引き起こす恐れのある圧力に熱交換器が晒されることが決してないようにすることができる。こうやって患者の安全を向上させることができるのは、圧力制限のおかげで熱交換流体回路に破滅的破断を生じる恐れが無いせいであり、従って、アルコールまたはプロピレングリコールなどのような物質である一次流体が二次流体回路に流入し、カテーテルを通して患者の体内に流入する恐れも無いせいである。
【0156】
流体ライン、接続部材、および、弁の固有の組合せが先行技術のシステムに勝る多数の利点をもたらしている。例えば、カセットの一次流体接続部材が流体を封鎖する着脱自在な連結部材を含んでいる場合は、カセットは、その一次流体回路に一次冷却液が完全に充満された状態で発送することができる。また別な実施形態では、カセットの二次流体回路は二次冷却液で予め充填してから滅菌することができ、従って、二次流体回路に液を注入するのに必要な時間と努力が無用になるか、または、それに要する時間と努力を量的に少なくとも実質的に減らすことができる。
【0157】
本件に記載されているシステムは、無数の代用物を使い、記載にあるものを削除し、または、代替物を利用したうえで、添付の特許請求の範囲に記載されているような発明の真髄から逸脱せずに採用することができることも、当業者なら認識するだろう。具体例を挙げると(といって、その具体例に限定されるわけではない)、熱交換プレートに設けられた一次流体経路および二次流体経路は、蛇腹状、2重管状、ファンを畳み込んだシート状、プレート状、コイル状、または、これ以外の好適な構成であってもよいし、または、センサーが広範で多様な肉体部位を検知するようにしてもよいうえに、更に別な、温度または圧力といったようなパラメータがプロセッサに設けられてもよい。更に、カテーテルの端部の体内熱交換器は、適切であればどんな種類のものであってもよく、例えば、非バルーン式の加熱・冷却素子がその一例である。ねじポンプ、歯車ポンプ、膜板ポンプ、蠕動ローラーポンプ、または、これ以外の、熱交換延期を汲出す好適な手段のいずれかである、適切なポンプが設けられてもよい。当業者にとっては自明である上記代用物またはそれ以外の代用は全て、本発明に含まれる。
【0158】
本発明のまた別な実施形態は、一次流体回路または二次冷却液、もしくは、その両方の冷却処理を補足するために使用することができる補足冷却装置を受容する構成になっている。一実施形態では、補足冷却装置は、両端部が端部キャップで封鎖されている容器を備えている。この容器は円筒状でもよいし、平坦なプレートのような形状であってもよいし、または、それ以外の好適な形状であってもよい。2個の両端キャップの間の容器は小室を画定しており、冷却媒体が充填されるが、そのような冷却媒体は、水やゲルのような液体、或いは、氷またはそれ以外の凍結物質のような固体である。両端キャップのうちの一方の中を通って延びている流入管は、一次流体回路または二次流体回路のような流体源と流入管を着脱自在に流体連絡状態に連結する第1の即時切断用の締切り具を保有しており、両端キャップのうちの残りの一方の中を通って延びている流出管は第2の即時切断用の締切り具によって終端させられており、この即時切断用の締切り具は一次流体回路または二次流体回路と流出管を着脱自在に流体連絡状態に連結している。一次流体回路または二次流体回路からの流体が流入管に入ると、流体の熱エネルギーは冷却媒体によって吸収され、従って、流体回路を通って流れる流体は冷却装置によって更に冷却される。この補足冷却は、患者の体温低下速度を上げることができ、これは或る状況では有益となることがある。更に、所要の冷却量が主要加熱・冷却装置の冷却容量を超過している場合で、補足冷却装置を1台加えても不足している場合には、必要に応じて、もう1台別な補足冷却装置を主要流体回路または二次流体回路に連結することができる。更に、即時切断用の連結部材のおかげで、必要ならば、出来る限り大量の熱エネルギーを既に吸収してしまった補足冷却装置を新たな補足冷却装置と取り替えることができる。これに代わる例として、上記以外の、圧縮ガスまたは液化ガス、もしくは、吸熱反応性化学物質のような保存型エネルギー源を補足冷却源として使用することもできる。更に、TE加熱素子または抵抗加熱素子が単独で供給することができるよりも高速で体温上昇をさせることが患者に必要であるような状況に対処するシステムの加熱能力を増大させる目的で、このシステムは補足加熱源を兼備した構成にしてもよい。
【0159】
本発明の特定の実施形態を例示を目的として説明してきたが、添付の特許請求の範囲に限定されている発明の範囲から逸脱せずに、上述の実施形態に多数の変更を加えることができることが当業者には明らかである。
【0160】
なお、好ましい実施態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 患者の体温を調節するシステムであって、
一次流体回路ポンプ、および、加熱・冷却装置を含んでいる一次流体回路と、
一次流体回路ポンプを加熱・冷却装置に接続して、一次流体をポンプから加熱・冷却装置まで給送してから再度ポンプまで帰還させて循環させる、途切れることのない流体経路が形成されるようにした一次流体回路ラインと、
一次流体回路に設けられ、一次流体回路を熱交換器の一次流体回路側に流体を通す様式で接続するアクセスポイントであって、熱交換器は二次流体回路側を別に有している、そのようなアクセスポイントと、
患者の体内に挿入することができる熱交換カテーテルであって、患者の体温を上昇させるように構成されているか、体温を降下させるように構成されているか、または、体温を維持するように構成されているか、いずれかである、熱交換カテーテルと、
熱交換器の二次流体回路側および熱交換カテーテルの中を通して二次流体を流動させる二次流体回路であって、二次流体回路ポンプを含んでおり、二次熱交換液を二次流体回路を通して熱交換カテーテルに給送してから、二次流体回路に逆戻りさせてから二次流体回路ポンプに帰還させるようにした、二次流体回路と、
一次流体回路および二次流体回路の温度を表す信号を供与するよう構成された、少なくとも1個の流体センサーと、
患者の体温を表す信号を供与するよう構成された患者センサーと、
患者センサーおよび流体センサーから信号を受信してから、これらの信号に応答して加熱・冷却装置を制御することで、一次流体回路および二次流体回路の内部を流動している流体の温度を調節する制御装置とを備えている、システム。
2. 前記制御装置はマイクロプロセッサを有しており、マイクロプロセッサはセンサーに応答するとともに必要に応じて制御信号を供与することでシステムの動作を制御するよう構成されている、上記1に記載のシステム。
3. 前記システムに電力を供給し、例えば、前記加熱・冷却装置に電力を供給する電源と、
システムの動作を制御する制御装置回路であって、電源が機能しているうえに適切であると判定されたパラメータの範囲内で作動しているか否かを判定手段と、システムの動作を監視する手段と、監視されているシステムの誤差状態を判定する手段と、誤差状態が存在していることを操作者に警告する手段を有している、制御装置回路とを更に備えている、上記2に記載のシステム。
4. 前記制御装置は前記加熱・冷却装置を制御することで、前記一次流体回路内の流体の温度を、前記熱交換器を一次流体回路に流体が通る様式で接続する前の所定の温度に変動させるようにした、上記1に記載のシステム。
5. 前記制御装置は前記加熱・冷却装置を制御することで、前記一次流体回路内の流体の温度を患者の治療を開始する前の所定の温度に変動させるようにした、上記1に記載のシステム。
6. 前記一次流体回路は、そこに複数の温度センサーが配置されており、温度センサーはアクセスポイントを通って前記熱交換器の一次流体回路側に流入する一次流体または一次流体回路側から流出する一次流体の温度を表す信号を供与する、上記1に記載のシステム。
7. 前記熱交換器の一次流体回路側に流入する一次流体と一次流体回路側から流出する一次流体の温度差が、前記二次流体回路に伝達されている熱交換量に比例しており、従って、患者に伝達されている熱交換量を表している、上記6に記載のシステム。
8. 前記制御装置は前記複数の温度センサーによって供与された信号に応答して、前記アクセスポイントに流入している一次流体とアクセスポイントから流出している一次流体の温度差を判定し、判定された温度差が問題のある状態を表している場合には警告を与える、上記6に記載のシステム。
9. 前記制御装置は前記複数の温度センサーによって供与された信号に応答して、これらの信号が問題のある状態を表している場合には警告を与える、上記6に記載のシステム。
10. 前記一次流体回路と流体連絡状態にある一次流体貯水槽を更に備えている、上記1に記載のシステム。
11. 前記二次流体回路と流体連絡状態にある二次流体貯水槽を更に備えている、上記2に記載のシステム。
12. 前記二次流体貯水槽は、そこへの流入口と前記二次流体回路ポンプとの間に空気トラップが配置されている、上記11に記載のシステム。
13. 前記空気トラップは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようにした、上記12に記載のシステム。
14. 前記空気トラップは発泡材から形成されている、上記12に記載のシステム。
15. 前記二次流体回路は微粒子フィルターを含んでいる、上記1に記載のシステム。
16. 前記微粒子フィルターは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようにした、上記15に記載のシステム。
17. 前記微粒子フィルターは発泡材から形成されている、上記15に記載のシステム。
18. 前記微粒子フィルターはスクリーンである、上記15に記載のシステム。
19. 前記二次流体回路に配置されて二次流体回路内の流体水位を検出するレベル検出装置を更に備えており、レベル検出装置は二次流体回路の流体水位を表す信号を制御装置に供与する、上記1に記載のシステム。
20. 前記レベル検出装置は前記二次流体貯水槽と協働関係に配置され、二次流体貯水装置内の流体水位を検出する、上記19に記載のシステム。
21. 前記制御装置は、所定の流体水位を表す前記レベル検出装置から得られた信号に応答して、前記二次流体回路ポンプに開始信号を送信する、上記19に記載のシステム。
22. 前記制御装置は、所定の低水位を表す前記レベル検出装置から得られた信号に応答して、前記二次流体回路ポンプに停止信号を送信する、上記19に記載のシステム。
23. 前記二次流体回路ポンプ、前記二次流体貯水槽、および、前記熱交換器はカセットに包含されており、カセットは無菌状態で操作者に提供される構成になっている、上記1に記載のシステム。
24. 再利用できる格納庫を更に備えており、この格納庫の中に配置されているのは、前記流体貯水槽、前記一次流体回路ポンプ、前記マイクロプロセッサ、および、前記二次流体回路ポンプモータであり、格納庫は、そこにカセットを着脱自在に受容することで、二次流体回路ポンプが二次流体回路ポンプモータに離脱可能に係合するような構成になっている、上記23に記載のシステム。
25. 前記アクセスポイントは前記熱交換器を前記一次流体回路に取り外しできるように連結する着脱自在な連結部材を含んでいる、上記1に記載のシステム。
26. 前記着脱自在な連結部材は、前記一次流体回路に接続されていない場合には、液体封鎖状態を設け、前記熱交換器の一次流体回路側および一次流体回路からの一次流体の喪失を最小限に抑えている、上記25に記載のシステム。
27. 前記一次流体回路は、その内部の流体圧を制御する逆止弁を更に含んでおり、流体圧が所定値を超過しないように図っている、上記1に記載のシステム。
28. 前記カセットおよび前記カテーテルは前記一次流体回路から切断されてからまた別な一次流体回路に接続することができるが、カセットおよびカテーテルを含んでいる前記二次流体回路の無菌性または流体隔絶状態を危うくすることはない、上記26に記載のシステム。
29. 検知温度が所定の範囲内である場合には、前記加熱・冷却装置のデューティーサイクルが低下させられる、上記1に記載のシステム。
30. 検知温度が所定の期間に亘って所定の範囲内にあると前記制御装置が判定した場合には、前記加熱・冷却装置のデューティーサイクルが低下させられる、上記6に記載のシステム。
31. 検知温度が所定の範囲内であると前記制御装置が判定した場合には、前記一次流体回路ポンプのデューティーサイクルまたは前記二次流体回路ポンプのデューティーサイクルもしくはその両方のポンプのデューティーサイクルが低下させられる、上記1に記載のシステム。
32. 患者の体温変化の要求量が低減したと前記制御装置が判定した場合には、前記一次流体回路ポンプのデューティーサイクルまたは前記二次流体回路ポンプのデューティーサイクルもしくはその両方のポンプのデューティーサイクルが低下させられる、上記1に記載のシステム。
33. 前記一次流体回路は、前記熱交換器と一緒に包含されている一次流体の体積の大半が、熱交換器を一次流体回路から切離す前に、前記一次流体貯水槽に戻されるように構成されている、上記1に記載のシステム。
34. 前記熱交換器は、一次流体回路側に一次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される、上記1に記載のシステム。
35. 前記熱交換器は、二次流体回路側に二次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される、上記1に記載のシステム。
36. 前記一次流体回路は、所定の値よりも低いレベルに導電性を維持する手段を含んでいる、上記1に記載のシステム。
37. 前記手段は、前記一次流体回路内の流体の電気特性を検知するよう構成されたセンサーを含んでいる、上記34に記載のシステム。
38. 二次熱交換液を前記二次流体回路に供給する注入液回路を更に備えている、上記1に記載のシステム。
39. 前記注入液回路は注入ラインおよび換気ラインを含んでおり、注入ラインと換気ラインのうちの少なくとも一方に弁が設けられており、注入液回路は、前記二次回路に液が十分に充填されたと判定する、少なくとも1個のセンサーを更に含んでいる、上記38に記載のシステム。
40. 前記注入ラインおよび前記換気ラインに設けられた弁のうち少なくとも1個は、ラインに係合してラインの内部の液体の流れを閉鎖するクランプである、上記39に記載のシステム。
41. 前記注入ラインおよび前記換気ラインに設けられた弁のうち少なくとも1個は、前記二次流体回路への二次流体の注入を開始して完全に充満させるように、前記制御装置によって制御される、上記40に記載のシステム。
42. 前記アクセスポイントは、一次流体貯水槽に充填される一次回路液を受容する構成になっている、上記1に記載のシステム。
43. 前記カセットが取り外しできるように前記格納庫に受容されると、前記流体ラインのうちの少なくとも1本はカセットの流体ラインのうちの少なくとも1本と係合する、上記24に記載のシステム。
44. 前記制御装置は、前記二次流体回路内の二次流体が凍結するのを防ぐのに十分なレベルの温度に前記一次流体回路を制御する、上記1に記載のシステム。
45. 前記レベル検出装置は泡検出装置である、上記17に記載のシステム。
46. 前記レベル検出装置はライン内空気の検出装置である、上記17に記載のシステム。
47. 前記熱交換器の一次流体回路側は一次中間流体経路であり、熱交換器の二次流体回路側は二次中間流体経路である、上記1に記載のシステム。
48. 前記一次流体回路は或る容積を有している、この容積は、前記一次中間流体経路が一次流体回路と流体連絡状態に設置されると、増大させられる、上記47に記載のシステム。
49. 前記熱交換機の前記二次流体回路側は複数の着脱自在な連結部材を有しており、中を通して熱交換液を循環させている熱交換カテーテルと熱交換器の二次流体回路側を接続したり、そこから切断することができるようにした、上記1に記載のシステム。
50. 患者の体温を調節する方法であって、
一次流体回路内で一次流体を循環させる工程と、
一次流体回路、および、熱伝達する様式で患者と連結状態にある二次熱交換器と、熱伝達する様式で連結状態にある熱交換器の中を通して二次流体を循環させる工程と、
400ワットから550ワットの範囲の熱負荷の下で目標温度に一次流体の温度を維持する工程とを含んでいる、方法。
51. 前記目標温度は約摂氏0度から摂氏5度の範囲にある、上記50に記載の方法。
52. 前記目標温度は約摂氏1度である、上記50に記載の方法。
53. 患者の体温を摂氏31度から摂氏34度の範囲の温度まで低下させるにあたり、20分よりも短い期間のうちに行う工程を更に含んでいる、上記50に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体温を調節するシステムであって、
一次流体回路ポンプ、および、加熱/冷却装置を含んでいる一次流体回路と、
一次流体がポンプから加熱/冷却装置に至り、そしてポンプへ帰還される、循環する途切れることのない流体経路が形成されるように、一次流体回路ポンプを加熱/冷却装置に接続する一次流体回路ラインと、
一次流体回路に設けられ、一次流体回路を熱交換器の一次流体回路側に接続するアクセスポイントと、を有し、熱交換器は二次流体回路側も有しており、前記アクセスポイントは前記熱交換器を前記一次流体回路に取り外しできるように連結する着脱自在な連結部材を含み、前記着脱自在な連結部材は、前記一次流体回路に接続されていない場合において、前記熱交換器の一次流体回路側および一次流体回路からの一次流体の喪失を最小限に抑えるように、流体を封鎖し、
患者の体内に挿入することができる熱交換カテーテルであって、患者の体温を上昇させるように構成されているか、体温を降下させるように構成されているか、または、体温を維持するように構成されているか、いずれかである、熱交換カテーテルと、
熱交換器の二次流体回路側および熱交換カテーテルの中を通して二次流体を流動させる二次流体回路であって、二次流体回路ポンプを含んでおり、二次熱交換液を二次流体回路を通して熱交換カテーテルに給送してから、二次流体回路に逆戻りさせてから二次流体回路ポンプに帰還させるようにした、二次流体回路と、
一次流体回路又は二次流体回路を流れる流体の温度を表す信号を供与するよう構成された、少なくとも1個のセンサーと、
患者の体温を表す信号を供与するよう構成された患者センサーと、
患者センサーおよび一次流体センサーから信号を受信してから、これらの信号に応答して、一次流体回路および二次流体回路の内部を流れる流体の温度を調節する前記加熱/冷却装置を制御することを含む、前記システムの作動を制御する制御装置と、を備えている、システム。
【請求項2】
さらに、前記加熱/冷却装置を含む前記システムに電力を供給する電源と、
システムの動作を制御する制御装置回路と、を有し、制御装置回路は、電源が機能しているうえに適切であると判定されたパラメータの範囲内で作動しているか否かを判定する手段と、システムの動作を監視する手段と、監視されているシステムの誤差状態を判定する手段と、誤差状態が存在していることを操作者に警告する手段とを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記温度センサーは前記一次流体回路内に配置され、アクセスポイントを通って前記熱交換器の一次流体回路側に流入する一次流体または一次流体回路側から流出する一次流体の温度を表す信号を供与する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置は前記複数の温度センサーによって供与された信号に応答して、前記アクセスポイントに流入している一次流体とアクセスポイントから流出している一次流体の温度差を判定し、判定された温度差が問題のある状態を表している場合には警告を与える、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
更に、前記二次流体回路と流体連絡状態にある二次流体貯水槽と、
前記二次流体貯水槽への流入口と前記二次流体回路ポンプとの間に配置された空気トラップと、を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記空気トラップは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようにした、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記空気トラップは発泡材から形成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記二次流体回路は微粒子フィルターを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記微粒子フィルターは半透過性の膜であり、二次流体の少なくとも一部に半透過性の膜を通過させて流れることができるようにした、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記微粒子フィルターは発泡材から形成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記微粒子フィルターはスクリーンである、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記二次流体回路ポンプ、前記二次流体貯水槽、および、前記熱交換器はカセットに包含されており、カセットは無菌状態で操作者に提供される構成になっている、請求項5に記載のシステム。
【請求項13】
前記一次流体回路は、流体の圧力が所定値を超過しないように、前記一次流体回路の内部の流体の圧力を制御する逆止弁を更に含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記熱交換カテーテルは、前記カテーテルの前記二次流体回路の無菌性または流体隔絶状態を危うくすることなく、前記二次流体回路から取り外され、別の二次流体回路に接続することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記一次流体回路は、前記熱交換器の一次流体の体積の大半が、熱交換器を一次流体回路から切離す前に、前記一次流体貯水槽に戻されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記熱交換器は、一次流体回路側に一次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記熱交換器は、二次流体回路側に二次流体が予め充填された状態で、操作者に提供される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記一次流体回路は、所定の値よりも低いレベルに一次流体の導電性を維持する手段を含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記手段は、前記流体回路内の流体の電気特性を検知するよう構成されたセンサーを含んでいる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
二次熱交換液を前記二次流体回路に供給する注入液回路を更に備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱交換機の前記二次流体回路側は複数の着脱自在な連結部材を有しており、中を通して熱交換液を循環させている熱交換カテーテルと熱交換器の二次流体回路側を接続したり、そこから切断することができるようにした、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図10A】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−17899(P2013−17899A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242582(P2012−242582)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2008−509122(P2008−509122)の分割
【原出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(501076298)レイディアント メディカル インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】RADIANT MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】