説明

改良型カニューレ

血液輸送用のカニューレ(3)は、第一端部と第二端部との間にある血液経路(5)を定め、細長く柔軟性を有するチューブ状の軸部(2)を備えている。この軸部は、上記軸部が実質的に損傷することなく、血液経路(5)を閉塞ように固定されるようになっている。この軸部は、ねじれによる応力に対して抵抗性を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明はカニューレ・アセンブリに係り、特に血液輸送、好ましくは、患者の心臓あるいは循環器系と、埋込型の血液ポンプ機器との間の血液輸送に適したカニューレ・アセンブリに係るものである。
【0002】
〔発明の背景〕
血液ポンプは、通常、うっ血性心不全および患者の循環器系に関わるその他の疾患を治療するために使用される。血液ポンプは、一般的に、カニューレを介して、心臓および循環器系に接続される必要がある。
【0003】
これらのカニューレが有効であるためには、カニューレが、多くの物理的特性を有している必要がある。例えば、ねじれずに曲がる機能や、また特に、血液ポンプによってカニューレ内に生じる部分的減圧(partial vacuum)によるつぶれ(collapse)に対する抵抗性などである。
【0004】
さらに、カニューレは、血液経路が閉塞されるように固定されることが好ましい。これは、カニューレを固定することによって、接続されている血液ポンプへの経路が制限されるため、医療器具を取り付けている間はとくに有効である。カニューレは、カニューレ自体が損傷することなく、あるいは、カニューレ内の血液経路が破裂することなくこの固定されることが好ましい。
【0005】
一般的に現在のカニューレには、内部血液経路または内腔が形成されている。この内腔は、補強スプリングまたはスプリング様の層(sheath)により覆われている。このスプリング様の層は、このような種類のカニューレの固定に問題がある。
【0006】
さらに、上記スプリング様の層がカニューレの内部に配置されている場合、このスプリング様の層により、血栓形成の可能性が高まることがある。これは、スプリング様の層が、カニューレの内腔内で途切れ(discontinuties)として作用し、その途切れ部位が、
血栓形成部位となるからである。
【0007】
米国特許第4、086、665号には、カニューレの胴体部が、螺旋状の壁構造を有する、柔軟性のあるポリエステル繊維チューブを備えたカニューレが記載されている。このカニューレは、ねじれずに曲がることが可能である。しかし、該ポリエステル繊維チューブは、連続する、硬いリングおよび外部不浸透性リューブによって包囲され、支持されている。また、該カニューレには、連続的な(途切れなく)、金属補強が施されている。この補強によって、カニューレを埋め込む際に、カニューレが損傷することなく、カニューレを自由に固定できないという問題が生じる。
【0008】
米国特許第6、001、056号には、カニューレの胴体部が、血液経路を形成する柔軟性を有するチューブ状の内壁部材を有し、さらに比較的硬い囲い(cage)で覆われているカニューレが記載されている。この比較的硬い囲いは、上記血液経路に吸引力(suction force)が加えられたときに、カニューレ構造を支え、カニューレがつぶれるのを防いでいる。また、この比較的硬い囲いは、形状に応じて屈曲あるいは変形するために、十分な柔軟性をカニューレに与えている。しかし、このカニューレの胴体部は、カニューレに大きな損傷を与えることなく固定することができないため、カニューレ・アセンブリを埋め込む際の深刻な問題となっている。
【0009】
従って本発明は、前述した問題の少なくとも1つに対処すること、または、それら少なくとも1つの問題を改善することを目的としている。
【0010】
〔発明の簡単な説明〕
本発明の1つの広義の形態のカニューレは、以下のような血液輸送用カニューレである。すなわち、該カニューレは、第一端部と第二端部との間の血液経路を定める、細長く柔軟性を有するチューブ状の軸部を備え、上記軸部は、上記軸部が実質的に損傷することなく、上記血液経路を閉塞するように固定されるようになっているとともに、ねじれ応力に対して抵抗性を有するものである。
【0011】
上記柔軟性を有するチューブ状の軸部の外側部は、50〜65ショア(Shore)の硬度を有するものであってもよい。上記チューブ状の軸部の外側部が外層であり、上記柔軟性を有するチューブ状の軸部は、さらに、上記外層よりも実質的に硬度が低い内層を有していてもよい。上記内層は、約35ショアの硬度を有するものであることが好ましい。
【0012】
本発明の実施形態について、添付図を参照して以下に説明する。図1は、本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第1の好ましい実施形態を示した側面図である。図2は、本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第2の好ましい実施形態を示した側面図である。図3は、本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第3の好ましい実施形態を示した側面図である。図4は、本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第4の好ましい実施形態を示した透視図である。図5は、図4に示されている第4の好適な実施形態の生体内での位置を示した図である。図6は、図4に示されている第4の好適な実施形態の生体内での位置の拡大図である。図7は、本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第5の好ましい実施形態を示した側面図である。図8は、図1に示されている好ましい実施形態において、カニューレが血液ポンプ栓に取り付けられている実施形態を示した拡大断面図である。図9は、さらに別の好適な実施形態の一部を示した透視図である。
【0013】
〔好ましい形態の詳細な説明〕
本発明に係る第一の好適な実施形態は、左心室と血液ポンプとをつなぐ、脱血カニューレ(inflow cannula)である。下記にこの実施形態について、複数の図を参照して説明する。
【0014】
図1を参照すると、カニューレ・アセンブリ3は、ほぼ漏斗状(またはフレア形状)の端部を有するアダプタ1、血液ポンプコネクタ4、および、カニューレ・アセンブリ3を貫通する血液経路を定める厚い内腔2を有する細長いチューブ状の軸部を含んでいる。アダプタ1は、ほぼ漏斗状の端部ではなく、代わりに、直線状の壁に囲まれた端部を有していてもよい。しかしながら、アダプタ1は、上記漏斗状の端部を有することが好ましい。アダプタ1における漏斗状の端部の内側は、凸面を有するように示されているが、図示しない実施形態では、凸面以外であってもよい。
【0015】
アダプタ1および厚い内腔2は、Nusil(登録商標)のような、医療用のシリコーン・ゴムから、一体成形されていることが好ましい。アダプタ1は、柔軟性および弾力性(pliable)を有しており、患者の心臓の中空穴(cored hole)を通じて挿入する際に変形可能となっている。この中空穴は、左心室の尖部(左心尖部)に形成されることが好ましい。
【0016】
厚い内腔2は、成型過程で形成される複数の屈曲部を有していると好適である。これらの屈曲部によって、細長いチューブ状の軸部を注文に応じて成型し、各患者の要求に応じたカニューレの調整が容易になる(この特徴については添付図には示されていない)。説明を明確かつ容易にするために、添付図中の細長いチューブ状の軸部は、ほぼ直線状あるいは直線状に示されている。
【0017】
厚い内腔2の外面は、実質的な長さ方向に沿って硬度を有しており、その硬度は、デュロメーターで表すと、50〜65ショアの範囲であることが好ましい。これによって、カニューレ・アセンブリの細長いチューブ状の軸部は、破損することなく固定され、しかも、カニューレがねじれることなく、カニューレをある程度屈曲することが可能となる。
【0018】
図2は、内層(innner sheath)32および外層(outer sheath)7を有する内腔2aを含むカニューレ・アセンブリ6を示している。内層32の硬度は、相対的に、アダプタ1の硬度よりも高いことが好適である。内層32および外層7の硬度は、成型時に選択可能である。異なる硬度を有する成型可能な材料を選択することにより、内層32および外層7の硬度を任意に変えることができる。例えば、内層32および外層7ともにシリコーン・ゴムからなるものであってもよいが、内層32に使用される材料の硬度は、外層7に使用される物質の硬度よりも大きい。
【0019】
カニューレ・アセンブリ6は、シリコーン製の内層32に、シリコーン製の外層7を成型したものである。この構成では、外層7の硬度は内層32の硬度よりも低い。デュロメーターで表すと、内層32の硬度は約65ショア、外層7の硬度は約35ショアであることが好ましい。一般的に、カニューレ・アセンブリの軸部を形成する内層32および外層7の硬度の合計は、50〜65ショアであることが好ましい。
【0020】
内層32の外面と外層7の内面とは、別々の工程で成型されるが、互いに、自発的に結合する。例えば、使用時に、内層32の外面と外層7の内面との隣接面が、動くこともないし、剥離しやすくなることもない。このような、硬い内層32と柔らかい外層7との積層構造によって、カニューレが、ねじれることなく、十分な柔軟性を持つようになる。また、この特徴によって、本実施形態では、カニューレ埋め込み時に、必要に応じて、細長いチューブ状の軸部の長さ方向に沿った任意の位置で、カニューレを固定することができる。このカニューレ・アセンブリは、長寿命で、患者の体内で化学分解されず、血液経路に陰圧が加えられても破損しないことが好ましい。
【0021】
内層32は、平坦で、屈曲していない(non-convoluted)内壁あるいは表面を有することが好ましい。この内面は、生体内で血液と接触する。この内面は、比較的平坦な血液経路の壁面も形成する。これにより、血栓形成または血餅形成の危険性を、防止または低減することが可能となる。
【0022】
アダプタ1の外面は、テクスチャード加工(textured)が施されていてもよい(添付図には示されていない)。アダプタ1の外面がテクスチャード加工されていると、アダプタ1が埋め込まれたときに、組織が内部に成長していく(内殖する(ingrowth))ことができる。内部に成長する組織により、患者とカニューレとがより結合することが可能となる。また、感染の危険性を減少させることが可能となる。テクスチャード加工は、アダプタ1の外面に限定されるものではなく、該カニューレの軸部の少なくとも一部の外面に、施されていてもよい。
【0023】
図2に示されているように、アダプタ1の外面は、種々の心筋の厚さに対応するように形成されいる。また、アダプタ1の端部の環状形状および弾性力は、心筋ステントを用いることができるようになっている。
【0024】
血液ポンプコネクタ4は、成型によって内腔2aに取り付けられていることが好ましい。成型工程では、内層32の内面が、コネクタ4の円筒部を経由して、保持用肩部(retaining shoulder)9の外面近傍まで伸びるように、配置される。従って、内層32の内面は、コネクタ4の外面の端部からアダプタ1まで、一続きになっている(連続的である)。このため、血栓形成の要因となりうる途切れが、最小限にとどめられている。
【0025】
上記カニューレ・アセンブリは、2つの工程で成型されてもよい。図3に示されている、本発明に係る他の好適な実施形態を参照してみると、内腔2aには、螺旋状に柔軟性を有する補強材12が行き渡っている(impregnated)。柔軟性を有する補強材12は、固定可能である内腔2aの内側に、一体成型されている。この柔軟性を有する補強材は、Kevlar(登録商標)などの物質で構成されることが好ましい。本発明のさらに好適な実施形態に用いる製造方法は、射出成型方式である。この実施形態では、内層32およびアダプタ1を形成する第1の工程を特徴付ける多数の空洞に、加圧下で、加硫されていないシリコーン・エラストマーを、充填することが好ましい。第1成型工程の生成物は、加硫後、第2工程(好ましくは、外層7を成型するための複数取り射出金型)へ移行する。
【0026】
また、他の好適な実施形態において、軸部が2層の内腔を有する場合、外層の第2成型を行う前に、内層の外面を、柔軟性を有する補強材によって覆ってもよい。これにより、この実施形態の軸部に含まれる層間に、柔軟性を有する補強材が組み込まれる。
【0027】
図4のさらに別の実施形態のカニューレ・アセンブリ33では、ロックナット16および継ぎ目リング(sewing ring)14が、該カニューレ・アセンブリ上に、スライド可能に取り付けられていてもよい。該カニューレを心臓へ取り付けるためには、まず左心尖部または他の適切な部位に、適切な大きさの穴を貫通させる。次に、そこから約20mm離れた心臓に、漏斗状の端部1を挿入する、または、必要に応じて外科手術によって心臓に挿入する。次に、カニューレの軸部周囲をとらえ(snared)心臓に接触するまで、継ぎ目リング14を、カニューレの上方にスライドさせる。次に、継ぎ目リング14を、心室基部周囲に配置された、綿撒糸のリングへ縫合する(sewn to a ring of pledgets.)。速硬性の生体接着剤の使用により、このガーゼの心筋への接着性を高めてもよい。
【0028】
継ぎ目リング14は、ベロア(velour)あるいはプラスチックから構成されることが好ましい。継ぎ目リング14が、比較的硬い物質、あるいは、比較的剛性のある物質(例えば、比較的剛性のあるプラスチック)で構成されている場合、継ぎ目リング14は縫合穴を有していてもよい(図には示されていない)。継ぎ目リング14が、例えばポリエステル・ベロアのような柔軟性を有する物質から構成されている場合、縫合穴は不要である。継ぎ目リング14は、継ぎ目リング14をはめ込む心臓の対応面に適応した尖形を形成できることが好ましい。
【0029】
また前述した実施形態のカニューレは、心臓および血液ポンプに取り付けられることが好ましい。図5は、図4の実施形態を示しており、アダプタ1は、左心室19の心尖部から血液を受け取ることができる適切な部位に、固定可能に挿入される。カニューレの末端は、血液ポンプ17に固定的に接続されており、ロックナット16により固定されている。送血カニューレ18は、血液ポンプ17に接続される。この血液ポンプは、非拍動性または連続流動性の心臓補助装置であることが好ましい。一般的に、このような心臓補助装置は、比較的一定の血流および/または血圧を必要とする。このため、心臓補助装置に接続されるカニューレは、比較的一定の血流および/または血圧下で、つぶれない(not to collapse)ように設計してもよい。
【0030】
アダプタ1は、患者の心室へ埋め込まれる際に、カニューレ・アセンブリ33の挿入口から離れた心室の内壁を、広げる効果がある。従って、アダプタ1は、左心室19の中隔がつぶれる可能性、および、カニューレが閉塞する可能性を、実質的に防ぐまたは低減する。アダプタ1は、カニューレによって心室に吸引力が加えられた場合に、心室が衰弱(collapse)する危険性を防ぐ、または、少なくとも減少させる。
【0031】
アダプタ1は、心室の中心に近接した血液に入る(access)ように配置されることが好ましい。このような好ましい配置により、挿入側の端部1の外面が、新鮮な血液で洗浄される。これにより、血栓形成が予防される。さらにカニューレは、心臓へ挿入されるときに、患者の心臓弁に、特に僧帽弁、および/または心臓の中隔壁に、干渉しないことが好ましい。
【0032】
アダプタ1は、左心室または右心室のいずれかに接続して使用することができるが、左心室に接続することが好ましい。さらに、アダプタ1は、漏斗形状を有していてもよい。ここで、この漏斗形状の一方の辺は、対辺よりも相対的に長い(添付図には示されていない)。この漏斗形状の相対的に長い辺は、中隔への支持を強化するため、および、心臓の一部が部分的または完全に衰弱(collapse)する危険性を減少するために、中隔壁に埋め込まれることが好ましい。
【0033】
アダプタ1は、心室に挿入される漏斗部分の土台の周囲に、複数の穴を有していてもよい。これらの穴によって、上記の漏斗部分の周辺への、血栓形成または血餅形成の危険性を、防止または低減することが可能となる。
【0034】
さらに、心室のほぼ中央から血液を除去するように漏斗を配置することができるため、心室内へのアダプタ1の配置が、容易となる。
【0035】
図5は、図4に示されているカニューレ33のアダプタ1が、心臓20の中空穴21へ挿入されている図である。このカニューレ・アセンブリは、心臓20の左心室19の心尖部に挿入されることが好ましい。図6は、本発明に係るこの好適な実施形態のカニューレ・アセンブリを示しており、縫合糸22によって、周囲を固定されたアダプタ1が、
中空穴21内に固定されている。
【0036】
さらに、この好適な実施形態では、カニューレ33は、継ぎ目軸つば(sewing collar)15内部に取り付けられた、ねじ筋(図示せず)とかみ合うねじ筋13を有しており、この継ぎ目軸つば15は継ぎ目リング14に接続されている。このようなかみ合わせにより、継ぎ目リング14の位置を調節することができる。図4に示す実施形態では、継ぎ目リング14が、カニューレのアダプタ1から比較的遠位に位置している。
【0037】
他の実施形態ではまた、ねじ筋13およびそれとかみ合う継ぎ目軸つば15上のねじ筋の代わりに、シリコーン接着剤を使用することもできる。これにより、継ぎ目軸つば15が、カニューレの軸部に沿って、より容易にスライドできるようになる。継ぎ目軸つば15が任意の位置まできたら、その位置で接着剤を用いて接着することができる。
【0038】
図7は、本発明に係るさらに別の実施形態24を示している。この実施形態においては、位置決め用ストリップ(strip)23が、内腔2に、取り付けられる、または、一体化して挿入されることが好ましい。このストリップ23によって、カニューレの埋め込み時に、カニューレの配置を決定することができる。また、この位置決め用ストリップ23を、放射線不透過部位に置き換えることもできる。これにより、放射線学的に、カニューレの配置および位置を決定することも可能である。
【0039】
図7に示されているカニューレ24は、内腔2に、センサー25を有していることが好ましい。センサー25は、カニューレの軸部内の、血流速度および/または血圧を、検出および/または測定する機能を有している。センサー25は、この実施形態におけるチューブ状の軸部内の血圧および/または血流を測定するための、圧電検出器、または、超音波検出器を有することが好ましい。センサー25は、血流に接触しないように、内腔2内に封入されていることが好ましいことは留意すべきである。
【0040】
上記実施形態では、カニューレの内腔2(または軸部)内に、弾力性および柔軟性を持つ少なくとも1つのストリップを有していてもよい。このストリップにより、カニューレの柔軟性が維持され、また変形した形状も維持することができる。
【0041】
図8は、本発明に係るさらに別の好適な実施形態を示しており、カニューレ・アセンブリは、血液ポンプに接続されている。ロックナット16は、血液ポンプ詮35にある、ロックナット16にかみ合う雄ネジ(external thread)にねじ込まれている。これにより、血液ポンプコネクタ4の「O」リング溝と血液ポンプ栓35の環状の外面との間に、シリコーン「O」リング34が押し付けられる。
【0042】
血液ポンプコネクタ4のバレル部50は、複数の環状リブ51、および、放射状に配置された複数の穴52を有することが好ましい。リブ51および穴52は、内腔2とバレル部50との機械的な結合を、向上させる。バレル部50は、チタンなどの電解腐食を防ぐ物質から製造されることが好ましい。さらに、バレル部50の全壁面の厚さは、内腔2の壁面の厚さよりも小さくてもよい。例えば、血液ポンプコネクタ4の円筒状のバレル部50は、内腔2の円筒端部内に、完全に囲まれていることが好ましい。
【0043】
内腔2の内面は、血液ポンプ栓35の内面と、連続する面を形成していてもよい。内腔2の内面は、栓35の先端部53で終端となっていることが好ましい。バレル部50は、内腔2に覆われていることが好ましい。これにより、血液経路5が、断絶あるいは中断されない。血液経路が断絶あるいは中断されないことにより、血液経路5での血栓形成を最小限にすることができる。
【0044】
本発明に係るさらに他の好適な実施形態においては、血液ポンプ栓に取り付けられるカニューレの端部は、一体化して取り付けられたロックナット肩部および、ポンプの密閉手段に設けられた「O」リング構造を有するように形成されている。
【0045】
また、血液ポンプコネクタ4は、内腔を有している。この内腔は、血液ポンプコネクタ4の縁を超えて伸び、一体化して取り付けられた「O」リングを形成している。この「O」リングは、血液ポンプに接続されたときに、カニューレの内部を密閉する機能を有する(この特徴については添付図には示されていない)。
【0046】
また、ロックナット16を、バネ錠コネクタ(snap lock connector)のような他の留め具に置き換え、血液ポンプ栓に、対応するバネ錠装置を接続してもよい。
【0047】
前述した実施形態のいずれか1つにおいて、軸部が、シリコーン・ゴムで構成されていることが好ましい。軸部がシリコーン・ゴムで構成されている場合、その軸部の全壁面の厚さは、2〜4mmであることが好ましく、約3mmであることが最も好ましい。
【0048】
図9に示されているさらに別の好適な実施形態においては、別のロックナット37は、カニューレの端部に接続されてもよい。ロックナット37に関するこの実施形態では、軸方向にリブ(ribbing)41を有している。このリブは、ナット37の外面を覆っており、ポンプ栓35の表面に取り付けられた第二コネクタ40に、ナット37をはめ込む際に、グリップとなる。このロックナット37によって、使用時に、カニューレが第二コネクタ40から外れることを防ぐことができる。
【0049】
図9に示されている好適な歯止め装置(ratchet system)は、第二コネクタ40の外面に配置された雄部39、および、ロックナット37の外面に配置された雌部38を有している。この雌部は、波形の面を有することが好ましい。この波形の面は、上記歯止め装置の雄部37に、接続される。雄部37への接続は、ロックナット37が第2コネクタ40に、はめ込まれるときに、ロックできるように行われる。この処理によって、ナットを堅く締めることができ、フランジ39がたわまず、外れることがない。
【0050】
また、上記雄部がロックナット37の外面に配置され、上記雌部が第二コネクタ40の外面に配置されていてもよい。この構造により、前述した実施形態と同様の結果を得ることができる。上記ロックシステムは、特殊な取り外し工具(添付図には示されていない)を用いて外すことができる。この工具は、ロックシステムをはめ込み、雄部39をたわませるようになっている。この処理によって、ロックナット37を取り外すことができる。
【0051】
図示しないさらに他の実施形態においては、図3に示されている柔軟性を有する補強材12と類似した柔軟性を有する補強材が、図1に示されているものと同様に、単層の内腔に封入され、一体化して成型されていてもよい。
【0052】
前述したこれらの実施形態は本発明に係るごく一部の実施形態であって、当業者には明らかなように、本発明の範囲および精神から逸脱することなく変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第1の好ましい実施形態を示した側面図である。
【図2】本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第2の好ましい実施形態を示した側面図である。
【図3】本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第3の好ましい実施形態を示した側面図である。
【図4】本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第4の好ましい実施形態を示した透視図である。
【図5】図4に示されている第4の好適な実施形態の生体内での位置を示した図である。
【図6】図4に示されている第4の好適な実施形態の生体内での位置の拡大図である。
【図7】本発明に係るカニューレ・アセンブリの、第5の好ましい実施形態を示した側面図である。
【図8】図1に示されている好ましい実施形態において、カニューレが血液ポンプ栓に取り付けられている実施形態を示した拡大断面図である。
【図9】さらに別の好適な実施形態の一部を示した透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部と第二端部との間の血液経路を定める、細長く柔軟性を有するチューブ状の軸部を備え、
上記軸部は、
上記軸部が実質的に損傷することなく、上記血液経路を閉塞するように固定されるようになっているとともに、
ねじれ応力に対して抵抗性を有するものである血液輸送用カニューレ。
【請求項2】
上記柔軟性を有するチューブ状の軸部の外側部は、50〜65ショアの硬度を有するものである請求項1に記載のカニューレ。
【請求項3】
上記チューブ状の軸部の外側部が外層であり、
上記柔軟性を有するチューブ状の軸部は、さらに、上記外層よりも実質的に硬度が低い内層を有する請求項2に記載のカニューレ。
【請求項4】
上記内層は、約35ショアの硬度を有するものである請求項3に記載のカニューレ。
【請求項5】
第1端部が、心臓に接続するアダプタを備えており、
第2端部が、血液ポンプに接続されるようになっている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項6】
上記アダプタは、ほぼ漏斗形である請求項5に記載のカニューレ。
【請求項7】
上記アダプタが、柔軟性を有するものであるとともに、心臓の中空穴に挿入されるようになっている請求項5または6に記載のカニューレ。
【請求項8】
上記アダプタは、テクスチャード加工された物質を有しており、
上記物質は、そのアダプタの外面に組み込まれている請求項5に記載のカニューレ。
【請求項9】
上記軸部が、少なくとも1つの位置決めストリップを有する請求項1に記載のカニューレ。
【請求項10】
上記軸部が、少なくとも1つの放射線不透過性領域を有する請求項1に記載のカニューレ。
【請求項11】
上記軸部が、その長さ方向に沿って連続するマーキングを有しており、埋め込み時に心臓内に挿入される軸部の長さを決定できるようになっている請求項5に記載のカニューレ。
【請求項12】
上記軸部が、弾力性および柔軟性のあるストリップを有しており、軸部変形後の形状を維持できるようになっている請求項1に記載のカニューレ。
【請求項13】
上記軸部が、カニューレ使用時に、カニューレ内の血流および/または血圧を、検出および/または測定するための少なくとも1つの検出器を有する請求項1に記載のカニューレ。
【請求項14】
上記第二端部が、ロックナットを有するコネクタを備えており、
上記ロックナットの外面は、血液ポンプ上の対応するコネクタに、取り外し可能にかみ合うようになっている請求項5に記載のカニューレ。
【請求項15】
上記柔軟性を有するチューブ状の軸部の外側部が、シリコーンからなるものである請求項2に記載のカニューレ。
【請求項16】
上記柔軟性を有するチューブ状の軸部の内部に、柔軟性を有する補強材が一体成形されている請求項1に記載のカニューレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−520621(P2006−520621A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503969(P2006−503969)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000340
【国際公開番号】WO2004/082742
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505355782)ヴェントラコー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】