説明

改良型航空機エンジン一次ストラット構造体

本発明が対象とするのは、金属ロンジロン(1、2)および金属パネル(3、4)に代るものとしてのシングルブロック複合パネル(1a、2a、3a、4a)を含み、前記複合パネルが、ファイバーをクロス方向に向けて行うこれらのファイバーのレイアップ(12)を含み、その結果、金属ロンジロンおよび金属パネルの縦補剛材(13)および横補剛材(14)にとって代る格子構造がパネルのスキンの厚さ方向に組み込まれることを特徴とする、航空機エンジンの一次ストラット構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成部品点数が少ないこと、ならびに複合材料を使用することにより前記部品の質量自体も少ないことを特徴とする、改良型航空機エンジン一次ストラット構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンストラットは、航空機のエンジンと翼との連結を行うものである。
【0003】
ストラットは、エンジンと翼との間で応力の伝達を行う一次構造体を含む。この構造体は静力学および疲労を考慮して設計されなければならないが、エンジンの高温ゾーンに接触し著しい腐食リスクにさらされるため大きな熱的応力を受ける。
【0004】
またこの構造体の幅および深さは飛行機の空力性に直接影響を及ぼす。
【0005】
またストラットは、一次構造体を補完するが応力を受け入れない二次構造体も含む。この二次構造体は、エンジンの前縁と翼との空力的フェアリングの機能を果たし、油圧系、電気系、燃料、空調、その他、ストラット内を通過するものの保護および分離を行い、エンジンのカウルおよびナセルを支持する。
【0006】
通常、一次構造体は、フロントアッパーロンジロン、リアアッパーロンジロン、ローワーロンジロン、リブ、および2つのサイドパネルで構成される。
【0007】
通常、構造上の連結は、翼については3つの固定具、すなわちフロント固定具、リア固定具、およびスピゴットと呼ばれるアッパー固定具で行われ、エンジンについては2つの固定具、すなわちピラミッドの頂上部に配置されたフロント固定具とリア固定具で行われる。
【0008】
ピラミッドにより、翼に対するエンジン位置を前進させることができる。
【0009】
先行技術によれば、固定具はロンジロンおよびパネルのとは別の部品である金具で構成される。
【0010】
またこれらのパネルは、長手方向およびクロス方向にスティフナーを具備する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこの構造体を単純化かつ軽量化することを目的とし、そのために、金属ロンジロンおよび金属パネルに代るものとしてのシングルブロック複合パネルを含み、前記複合パネルが、ファイバーをクロス方向に向けて行うこれらのファイバーのレイアップを含み、その結果、金属ロンジロンおよび金属パネルの縦補剛材および横補剛材にとって代る格子構造がパネルのスキンの厚さ方向に組み込まれることを特徴とする、航空機エンジンの一次ストラット構造体に関する。
【0012】
本発明によりスティフナーをなくすことができ、応力取り込みゾーンのレイアップをストラットの構造部品に適合させることにより作製時の柔軟性が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の特徴および長所は、添付の図面を参照して行う本発明の一実施例についての説明を読むことにより、よりよく理解されよう。
【0014】
航空機の翼の下にエンジンを固定する場合、リフトストラットを使用する。図6はこのような固定の概略を示したものであり、エンジン9、エンジンのファンのフェアリング19、翼10、エンジンのリフトストラットのフェアリング11、およびこの一次ストラット構造体20が示してある。
【0015】
図において黒く塗りつぶした一次構造体20は翼へのエンジンの固定具を含み、エンジンの支持、エンジンのトラクション応力の通過、振動の伝達防止の役割を果たす。
【0016】
この構造体は、エンジン固定点および翼への固定点を含む。
【0017】
先行技術の一次構造体を図1に示す。
【0018】
図1の一次構造体は、金属製の上下ロンジロン2および4ならびに金属製のサイドパネル1、3で構成される。ストラットアセンブリーの内部では、補強フレームにより構造の剛性が確保される。
【0019】
同じく先行技術によれば、金属製ロンジロンは縦補剛材13および横補剛材14を具備する。作製される部品は切削加工された複雑な金属部品であり、全体の質量は高いままである。
【0020】
本発明によれば、航空機のエンジン9のストラット11の一次構造体は、金属ロンジロン1、2および先行技術の一次構造体の金属パネル3、4に代るものとしてのシングルブロック複合パネル1a、2a、3a、4aを含む。
【0021】
本発明による複合パネルは、ファイバーをクロス方向に向けて行うこれらのファイバーのレイアップ12により作製され、その結果、金属ロンジロンの縦補剛材13および横補剛材14にとって代る格子構造が、パネルのスキンの厚さ方向に組み込まれる。
【0022】
図3は、特に点検口8a、8b、8cのレベルに加えられる応力に関する構造体の複合サイドパネル1a、3aをより詳細に示したものであり、複合サイドパネルのレイアップ部には、点検口の周囲の補強ゾーン15が含まれる。
【0023】
これらの複合パネルのレイアップは、パネルの材料内に応力が均一に分散するよう準等方(25/25/25/25)タイプのレイアップである。
【0024】
図1を参照すると、航空機のエンジンの一次ストラット構造体は、ストラットへのエンジンの固定金具および航空機の翼10へのストラットの固定金具を含む。
【0025】
先行技術では、これらの金具6、7、71、61は、一次構造体に付加される部品で構成される。
【0026】
本発明の特定の実施形態を示す図2によれば、金具のうちのいくつか、特に翼10へのストラットの固定具である金具7aは、複合サイドパネル1a、3aに組み込まれる。
【0027】
この実施形態は、一次構造体を構成するストラットアセンブリーへの統合性が高く、固定時の応力は直接パネルに付加される。
【0028】
一次構造体を構成するストラットアセンブリーを作製するために、アッパーロンジロン2aは、サイドパネル1a、3aとの接続用フランジ16、17を具備する。
【0029】
これらのフランジ16、17は、アッパーパネルおよびサイドパネルの固定がストラットアセンブリーの外側から容易に行えるよう、構造体の外側に向いている。また、この固定方法によりアセンブリーの剛性が増す。
【0030】
アッパーロンジロン2aは、長手方向において高い剛性をもたらす配向性が高いタイプ(50/20/20/10)のレイアップにより作製された複合ロンジロンである。
【0031】
本発明の有利な実施形態によれば、前記アッパーロンジロン2aのレイアップは、応力導入ゾーン18内、特に、サイドパネル内に作製された金具に隣接するゾーン内において補強される。
【0032】
エンジンのフロント固定は、エンジン9へのストラットのフロント固定具6を支持するピラミッド5aの端部に位置する金具により行われる。
【0033】
本発明の有利な実施形態によれば、ピラミッドの少なくともビームが複合材料で作製される。
【0034】
本発明は図示例に限定されるものではなく、特に、一次ストラット構造体と翼の間のリア固定金具71はサイドパネルに組み込むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】先行技術の一次ストラット構造体の斜視図である。
【図2】本発明による構造体の斜視図である。
【図3】図2の構造体のサイドパネルの側面図である。
【図4A】図3の詳細図である。
【図4B】図3の詳細図である。
【図4C】図3の詳細図である。
【図5】本発明によるパネルの組み付けの略図である。
【図6】航空機の浴に固定されたエンジンの全体図である。
【符号の説明】
【0036】
1、2 金属ロンジロン
3、4 金属パネル
1a、2a、3a、4a シングルブロック複合パネル
1a、3a サイドパネル
2a 複合アッパーロンジロン
1a、3a 複合サイドパネル
2および4 金属製の上下ロンジロン
5a ピラミッド
6 フロント固定具
6、7、71、61 金具
7a 金具
8a、8b、8c 点検口
9 航空機エンジン
10 翼
11 一次ストラット
12 レイアップ
13 縦補剛材
14 横補剛材
15 補強ゾーン
16、17 接続フランジ
18 応力取り込みゾーン
19 エンジンのファンのフェアリング
20 一次ストラット構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ロンジロン(1、2)および金属パネル3、4に代るものとしてのシングルブロック複合パネル(1a、2a、3a、4a)を含み、前記複合パネルが、ファイバーをクロス方向に向けて行うこれらのファイバーのレイアップ(12)を含み、その結果、金属ロンジロンおよび金属パネルの縦補剛材(13)および横補剛材(14)にとって代る格子構造がパネルのスキンの厚さ方向に組み込まれることを特徴とする、航空機エンジン(9)の一次ストラット(11)構造体。
【請求項2】
構造体のサイドパネル(1a、3a)が複合パネルであることを特徴とする、請求項1に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項3】
ストラットへのエンジンの固定金具および航空機の翼(10)へのストラットの固定金具を含み、金具(7a)のうちの少なくともいくつかが複合サイドパネル(1a、3a)と一体化されることを特徴とする、請求項2に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項4】
複合サイドパネルと一体化された金具(7a)が翼(10)へのストラットの固定具であることを特徴とする、請求項3に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項5】
複合サイドパネルが点検口(8a、8b、8c)を含み、複合サイドパネルのレイアップが点検口の周囲に補強ゾーン(15)を含むことを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項6】
複合サイドパネル(1a、3a)との接続フランジ(16、17)を具備する少なくとも1つの複合アッパーロンジロン(2a)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項7】
作製される複合アッパーロンジロン2aが高方向性(50/20/20/10)タイプのレイアップを含むことを特徴とする、請求項4に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項8】
前記複合アッパーロンジロン(2a)のレイアップが応力取り込みゾーン(18)内で補強されることを含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項9】
エンジン(9)へのストラットのフロント固定具(6)を支持するピラミッド(5a)を含み、ピラミッドの少なくともビームが複合材料で作製されることを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。
【請求項10】
複合パネルのレイアップが準等方タイプであることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の航空機エンジンの一次ストラット構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−502642(P2009−502642A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524468(P2008−524468)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064240
【国際公開番号】WO2007/017339
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)