説明

改良型MRデバイス

ダンパーデバイス、ロータリーデバイスを含む磁気粘性デバイス、およびこれらのデバイスで構成されるハプティックシステムが開示される。これらのデバイスは、乾燥磁気応答性粒子、またはこの磁気応答性粒子を含むMR流体を含む。軟磁性粒子は、特定のサイズ内で、累積的な10容積%、50容積%、および90容積%のフラクション(すなわち、2μmのD10から5μmのD10以下、8μmのD50から15μmのD50以下、25μmのD90から40μmのD90以下)を有する、アトマイズ化粒子の単プロセス産出物集団により特徴付けられ、そして、0.77以上の、累積容積%フラクションに対する対数正規粒子サイズの最小二乗回帰により特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
「回転運動(rotary-acting)」変化または「直線運動(linear-acting)」変化の磁気粘性(magnetorheological:MR)デバイス(例えば、リニアダンパー、ロータリーブレーキ、およびロータリークラッチ)は、デバイス内の作動ギャップ(working gap)を占める乾燥粒子または流体中に分散させた粒子として、磁気粘性材料を用いる。この粒子は、軟磁性粒子(magneto-soft particle)から構成される。印加される磁場の強度が高い程、磁場内に整列した粒子構造に打ち勝つために必要とされる減衰力もしくは抵抗力またはトルクは大きい。
【0002】
MRデバイスは、「Magnetorheological Fluid Devices And Process Of Controlling Force In Exercise Equipment Utilizing Same」との標題がつけられた米国特許第5,816,372号;「Portable Controllable Fluid Rehabilitation Devices」との標題が付けられた米国特許第5,711,746号;「Controllable Brake」との標題が付けられた米国特許第5,842,547号;「Controllable Vibration Apparatus」との標題が付けられた米国特許第5,878,871号、ならびに、米国特許第5,547,049号、同第5,492,312号、同第5,398,917号、同第5,284,330号、および同第5,277,281号に開示される(これらの全ては、本発明の譲受人に譲渡されている)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、本明細書の以下に開示される磁気制御可能流体を含むハウジングまたはチャンバを備え、そしてこのハウジング内の流体を介する運動のために取り付けられた可動部材(ピストンまたはローター)を備える、ダンパーに関する。ハウジングおよび可動部材の両方は、磁気透過性の磁極片を備える。磁場発生器は、制御可能な流体の所望の領域に磁束を向けるために、両方の磁極片を横切って磁場を生じさせる。このようなデバイスは、精確な公差の構成部品、高価なシール、高価なベアリング、および比較的少容積の磁気制御可能流体を必要とする。これまでに設計されたMRデバイスは、比較的製造費用が高い。可変力および/または可変トルクを提供するための制御可能MRデバイス(controllable MR device)のコストを下げる継続的必要性がある。
【0004】
概ね1〜100μmのオーダーの平均直径の磁気活性微粒子を含む、従来のMR流体は、カルボニル法(この方法により、粒子はペンタカルボニル塩の沈着によって大きくなる)により製造される従来の鉄粒子を用いる。カルボニル粉末のコストは高いことで有名である。磁気粘性流体は、アトマイゼーション法により製造される磁気活性粒子を用いて製造されている。アトマイゼーション法は、溶融金属流を小さな粒子に分割する減少プロセス(reductive process)である。溶融金属流は、高圧の高速流へと送達され、そして高剪断および乱流により分割される(本明細書以下、「アトマイズ化粒子(atomized particle)」とまとめていう)。
【0005】
性能および費用の問題に起因して、これまで、アトマイズ化粒子による高価なカルボニル鉄の適切な代替物は、単純な代替物ではなかった。従来の粒子では、単プロセス流(single process stream)のアトマイズ化粒子は、篩にかけられて、74μmを超える粒子の10〜20%の有意なフラクションを排除していた。他の例では、45μmのサイズよりも大きなアトマイズ化粒子の単プロセス産出物(single process yield)の20〜30+%のより大きなフラクションさえも排除しなければならない。実に90%以下の産出物(yield)を示す、このような使用できない容積フラクション(volume fractions)の除去は、現在非経済的であると考えられている。
【0006】
アトマイズ化粒子をカルボニル鉄粒子とブレンドして、MR乾燥粉末およびMR流体に使用するのに適した粒子サイズ分布を達成する試みがされている。これまで、100%の従来のアトマイズ化粒子が74μmの篩を通過してガウス分布に近づく粒子を提供する試みは、1を超えるプロセス流から粒子をブレンドすることにより達成されている。1つの例は、カルボニル鉄とアトマイズ化粒子のブレンドである。米国特許第6,027,664号(Lord Corporation)は、第2の集団よりも3〜15倍大きな平均粒子直径を有する第1の集団のブレンドを教示する。より小さな平均サイズの粒子はカルボニル鉄であり、そしてより大きなサイズの粒子はアトマイズ化鉄である。このような混合物は、分類または篩分けから継続する産出物の損失、およびブレンドを行うこと自体に関するコストによる経済的な損害を被る。
【0007】
MR流体における使用に関する任意の粒子状の金属の適合性は、1つの観点では、ガウス分布からの偏差を分析することにより決定され、そして回帰分析により例証され得る。当該分野においてこれまでに教示されている2つの異なる集団の混合物は、カルボニル鉄ベースの粒子の分布に近づいたガウス分布とのある程度の適合性を与えた。例えば、カルボニル鉄と水−アトマイズ化粒子との50:50(重量)の混合物(’664号特許の出願日において入手可能)は、0.82の対数正規サイズ分布(log normal size distribution)(R)を示す。技術的には実現可能であるが、これまでに入手可能な粒子ブレンドは、同じ経済的な欠点による損害を被る。従って、この経済的な欠点を克服するために、制御可能粉末を利用するMRデバイス、または、より低コストの単プロセス流の粒子を利用するMR流体を必要とする。制御可能デバイス(controllable device)における経済的要因を改善するために、適切なサイズ集団、およびサイズ分布を示す、磁気応答性粒子(magnetically responsive particles)の単プロセス産出物集団から生じた粒子成分を含む、MR流体を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明に従って、磁気粘性流体(magnetorheological fluid)が提供される。本発明の別の局面では、リニア式またはロータリー式の磁気制御可能デバイス(例えば、ダンパー、クラッチ、ブレーキ)、ならびに、このようなデバイス、および本発明に従う磁気粘性流体または磁気粘性粉末を用いる、ハプティックインターフェースシステム(haptic interface systems)が提供される。これらのデバイスは、2μm、3μm、または4μmの10%容積フラクション(D10)から5μmのD10以下;8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、または14μmの50%容積フラクション(D50直径)から15μmのD50以下;25μmの90%容積フラクション(D90)から40μmのD90以下を有する粒子により規定される、単アトマイゼーションプロセス流集団(すなわち、非混合物)の磁気応答性粒子(軟磁性粒子(magnetically-soft particles))を、作動ギャップまたは作動空間の中に含むことを特徴とし;そして、このアトマイズ化粒子の単プロセス集団は、0.77以上の、累積容積%に対する対数正規粒子サイズからの最小二乗回帰(R)によってさらに特徴付けられる。本発明に従うロータリーデバイスは、磁気粘性流体、または流体キャリアなしの単アトマイゼーションプロセス流集団の磁化可能粒子(magnetizable particles)を用い得る。
【0009】
磁気粘性ダンパーデバイス(ある容積%のキャリア流体、および単アトマイゼーションプロセス流に由来するある容積%の粒子、ならびに、必要に応じて、粒子間の摩擦を軽減する添加剤を含むMR流体を、その作動ギャップ内に含み、ここで、磁気応答性粒子は、2μmのD10から5μmのD10以下、8μmのD50から15μmのD50以下、および25μmのD90から40μmのD90以下を示す)に関するデバイスの1つの実施形態では、アトマイズ化粒子集団はまた、0.77以上の、累積容積%に対する対数正規粒子サイズからの最小二乗回帰(R)によって特徴付けられる。
【0010】
本発明はさらに、キャリア流体と共にまたはキャリア流体なしで、作動ギャップ内に上記の粒子を含む、磁気粘性ローターリーデバイスに関する。本発明はさらに、ハプティックインターフェースデバイスに対する抵抗力を与える、ユーザーにより操作されるハプティックインターフェースシステムに関する。このシステムは、可変の入力信号(variable input signal)を受け取り、そして可変の出力信号(variable output signal)を提供するための、コントローラーを備える。このコントローラーは、可変の入力信号を処理し、そして、それに応じて、可変の出力信号を生じるプログラムを実行するように適合されている。このハプティックインターフェースデバイスは、本明細書中に開示される、少なくとも1つの磁気制御可能デバイスと連絡している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
リニア式またはロータリー式の制御可能デバイスとしては、当該分野で公知である、ブレーキ、ピストン、クラッチ、およびダンパーが挙げられる。磁気粘性流体を含むダンパーの例は、米国特許第5,390,121号および同第5,277,281号に開示される。
【0012】
可変の減衰運動のためのリニア式の制御可能減衰装置は、本明細書中で明記される磁気粘性流体を用い、そして以下の要素を備える:
a)ある容積の磁気粘性流体を含むためのハウジング;
b)流体を含むハウジング内での運動に適合したピストン(ここで、このピストンは、鉄含有金属製であり、ピストンの中および周りに磁束を生じるコイルを規定する、導電性ワイヤーの多数の巻線をその中に組み込んでいる);および
c)磁気粘性流体の運動を制御するための、ハウジングおよびピストンに関連する作動ギャップを有する、バルブ手段。
【0013】
本明細書中のデバイスの例は、流体バルブ、複合構造体および複合構造要素、ショックアブソーバ、ハプティックデバイス、運動器具、電気スイッチ、速硬化ギプスを含む人工補装具、弾性マウント、振動マウント、ならびに、作動ギャップの外側の磁気粘性流体のリザーバ(ここから、粒子が作動ギャップ内へ移動し得る)を介して作動ギャップを占有するために必要とされる本発明の磁気粘性流体の過剰量を含むように構築された、他の類似のデバイスである。
【0014】
本発明の代表的な粒子の例では、磁気粘性流体の第1の部分が、作動ギャップ内に位置付けられ、他方、磁気粘性流体の第2の部分が、作動ギャップの外側に、作動ギャップ内の磁気粘性流体と連絡して(すなわち、流体封入コンパートメント内に)、位置付けられる。外部磁場の印加による磁気粘性流体中の粒子の分極化の際、第2の部分からの粒子が作動ギャップ内へと移動し、これにより、作動ギャップ内の磁気粘性流体の粒子濃度の増加の結果として、磁気粘性流体デバイスの力の出力が増大する。外部磁場の印加の間、磁気粘性流体の第1の部分における粒子容積濃度は、静止時またはオフ状態の総粒子容積濃度よりも高い。静止時またはオフ状態の粒子容積濃度とは、磁場が印加されていない場合の、第1の部分における磁気粘性流体と、第2の部分における制御可能流体との組合せにより示される平均粒子容積濃度を意味する。
【0015】
(制御可能ダンパー)
磁気粘性流体制御可能ダンパーは、固定ハウジング、可動ピストン、および磁場発生装置の必須の構成要素を有する。このハウジングは、所定容積の本明細書中に記載されるMR流体を含む。ダンパーは、2つの原理の作動モードを有する:スライディングプレート(sliding plate)モードおよびフロー(またはバルブ)(flow (or valve))モード。両方のモードの構成要素は、フローモードまたはバルブモードを支配する加圧構成要素(force component)と共に、MRダンパーごとに存在する。
【0016】
このダンパーは、クーロン型ダンパーまたはビンガム型ダンパーとして機能し、ここで発生される力は、ピストン速度と独立して制御可能であり、そして大きな力が低速度またはゼロ速度で発生され得る。この独立性は、ダンパーの制御性を改善し、力を、精密に調節された磁場強度(これは、回路中の電流フローの関数である)の関数にする。
【0017】
図10を参照して、当該分野で周知の、MRデバイスのピストン部分の、横断面の簡単な構造図が図示される(1994年1月11日に発行された、米国特許第5,277,281号において、より十分に例証されている)。ピストンは、ハウジング内に配置される(示さず)。ピストンロッド32上のピストンヘッド30は、ハウジングの内径よりも小さな最大直径で形成される。図10において、図示したピストンの実施形態は、コア要素43の上に巻かれ、そしてカップ部材53内に存在する、コイル40を備える。リードワイヤー(その1つは、ピストンロッド32を通じて延びる導電性ロッドの第1の端部に接続されており、1つは、コイル巻線の第1の端部に接続されたリードであり、そして1つは、このコイル巻線の他の端部からのアース線である)によるピストンロッドを通じるコイルへの電気接続は示していない。ピストンロッド32の上端部(示さず)は、ダンパーへの装着を可能にするためにその上に形成される溝を有する。用途に応じて、12〜24ボルトの電圧で0〜4アンペアの範囲の電流を供給する外部電源が、これらのリードに接続される。
【0018】
カップ部材53は、複数の通路56を有し、その各々は、その中に形成される所定のギャップを有する。他の代表的な実施形態では、このギャップは、アニュラー(annular)で提供される。54におけるような1つ以上のシールが、カップ部材53の外周の周りに広がる。カップ部材53は、ねじ部品によるような、任意の締結手段(示さず)により、コア要素43に装着される。あるいは、コイルは、所望される場合、ハウジングに関連され、より固定されたコイルの可能性を与え得る。本発明のデバイスは、0.1〜0.90mm、そして、好ましくは0.4〜0.6mmの範囲の、所定のアニュラーフローギャップを利用する。このギャップは、望ましくは、比較的高いオン状態の力を発生するコンパクトなMR流体デバイスを提供するために小さい。0.08mm〜0.9mmのデバイスギャップ内に、より詳細には、0.08〜0.75mmの作動ギャップ内に、キャリアおよび上記で開示される単アトマイゼーションプロセス流から得られる磁気応答性粒子を含む、MR流体がある。
【0019】
(制御可能クラッチまたは制御可能ブレーキ)
用語「クラッチ」とは、加速トルクが伝達されるときに用いられる。減速トルクが伝達される場合、用語「ブレーキ」が用いられる。本発明に従うクラッチはまた、ブレーキとしても使用され得る。代表的なMR流体クラッチまたはMR流体ブレーキは、以下を備える:ハウジング(好ましくは、実質的に類似した内部寸法を有する、第1の半分および第2の半分を有する)、好ましくはディスク型ローター、回転シャフト(好ましくは、軟磁性材料から製造され、その中に任意のキースロットを有する)、軟磁性ヨーク(好ましくは、実質的に同一の、第1の磁極片の半分および第2の磁極片の半分を有する)、グリースまたは油を含浸させた多孔性の非磁性ブッシュ(これは、シャフトを半径方向に支持する);エラストマーシール(好ましくは、エラストマークワドリング(quad−ring)の種類のエラストマーシール);ローターを中心に置くためのディスク状スプリング、可変の磁場を発生するためのコイルアセンブリ(これは、ポリマーボビン(例えば、ナイロン)、およびワイヤーコイルを巻く複数のフープを備える)、ならびに電気コネクタおよび電気留め具。各々の磁極片の半分は、その中に形成される溝を有し、これらは、互いに作用してローターの作動部分(working portion)を受容する溝を形成する。この溝にローターを受容することは、十分な容積の本明細書中に明記されるMR流体を含む、作動面(working surface)に隣接する第1のギャップおよび第2のギャップを作り出す。クラッチは、バレルローター型(barrel rotor type)クラッチまたは多板クラッチである。これらのクラッチは周知であり、そして、例えば、米国特許第5,988,366号(本明細書において参考として援用される)に記載される。溝に収容されるMR流体は、乾燥粉末タイプ(流体キャリアを含まない)のものであるか、またはMR流体タイプのものである。作動ギャップに含まれる磁場に応答する粒子は、0.77以上のRを示す集団を有する、アトマイズ化粒子の単プロセス産出物であり、そしてまた、2μmのD10から5μmのD10以下、8μmのD50から15μmのD50以下、および25μmのD90から40μmのD90以下の容積フラクションにより特徴付けられる。
【0020】
本発明に従う例示的な制御可能ブレーキは、以下を備える:
(a)シャフト;
(b)高い磁気透過性の材料から製造されたローター(このローターは、第1および第2のローター面、作動部分、および外周部(outer periphery)(これによって、このローターはシャフトに相互接続されて、それらの間での相対的回転を防止する)を有する);
(c)高い磁気透過性の粉末金属材料から製造される、軟磁性ヨークを備えるハウジング(この軟磁性ヨークは、その中に形成される溝を有し、この溝は、ローターの作動部分を受容し、そして第1のローター面に隣接する第1のギャップ、および第2のローター面に隣接する第2のギャップを形成し、ハウジングは、ヨークを備えるハウジングの部分(part)と比較して、比較的薄く成形された部分(portion)を含み、この部分(portion)は、磁場がシャフトのシール領域において高まるのを防ぐためにシャフトに隣接して形成される);
(d)乾燥粉末としてか、またはキャリア流体中に分散させた、軟磁性粒子(この粒子は、第1のギャップおよび第2のギャップ内に含まれ、そしてこれらのギャップを少なくとも部分的に充填し、この粒子は、0.77以上のRを示す集団を有する、アトマイズ化粒子の単プロセス産出物から得られることで特徴付けられ、そしてまた、2μmのD10から5μmのD10以下、8μmのD50から15μmのD50以下、および25μmのD90から40μmのD90以下の容積フラクションにより特徴付けられる);および
(e)例えば、コイルにより提供され、そして軟磁性ヨークに隣接した可変の磁場を発生する、磁場発生装置(可変の磁場を発生する手段に電圧を印加したときに、第1のギャップおよび第2のギャップ内の軟磁性粒子がレオロジーを変え、それによって、制御可能ブレーキのねじれ抵抗の変化を生じるように可変の磁場が方向付けられる)。
【0021】
より詳細には、制御可能ブレーキのハウジングの半分は、錬鋼、スタンプスチール(stamped steel)、鋳造アルミニウムまたは削り出しアルミニウム、アルミニウム合金、粉末金属などから製造される。最も好ましいハウジング材料は、鋳造アルミニウムまたは亜鉛/アルミニウムの合金である。各々のハウジングの半分は、好ましくは、その中に形成され、そしてシャフト軸から半径方向の外側に向かって間隔を空けて配置された、磁極ポケット(pole pocket)を有する。このポケットは、その中に軟磁性ヨークの環状磁極片(ring-like pole piece)の半分を受容するために、その半径方向の部分の最も外側近くに形成される。シャフトから離して軟磁性ヨークとの間に間隔を空けて配置することにより、シャフトに隣接する領域において漂遊磁場が高まるのを防ぐかまたは最小にすることは、慣習的に教示されている。
【0022】
アルミニウムまたは他の非磁性材料がハウジング内で用いられる場合、シャフトから半径方向の外側に向かって軟磁性ヨークの間隔を空けて配置することは、シャフトシールでのまたはシャフトシール付近の磁場を制限する手段として作用する。同様に、鋼または他の同様の磁性材料がハウジングに用いられる場合、ある厚さを有する磁束飽和帯域は、軟磁性ヨークをシャフトから半径方向の外側に向かって間隔を空けて配置することと組み合わせて、シャフトに隣接する領域に存在する漂遊磁場の量を制限する。ハウジングは、シャフトを支持する機能、およびMR流体封入部の一部を形成する機能を果たす。ハウジングはまた、突出したフランジ部分を備え、好ましくは、このフランジ部分の3または4つの対が存在し、これらは等間隔で配置されており、そしてアセンブリを互いに固定するために、留め具を介して(例えば、ソケットヘッドキャップスクリューおよびナットを用いて)ボルトで締め合わされる。ハウジングはまた、互いに対するおよびハウジングの半分に対する磁極片の半分の回転を防止する手段を備える。1つのこのような防止手段は、回転を防止するためのナブ(nub)および受容溝(receiving groove)である。さらに、この留め具は、磁極片の半径方向の外周部に形成される、その回転を抑制するための、局部的な切り欠き(cutout)または溝と相互に作用し得る。磁極(pole)の間に磁場を誘導することは、分極化しそして第1のギャップおよび第2のギャップを横切って作用する鎖(chain)に整列化する、磁気応答性粒子の構造化を生じる。金属粒子は、約6.4gm/cm〜約7.8gm/cmの密度範囲を有する。磁場の大きさに応じたレオロジー変化は、その作動セクションでのハウジングとローターとの間のねじれ抵抗の増加を生じ、ハウジングに対するシャフトのねじれ回転に対する抵抗の増加を生じる。これは、MRブレーキが用いられるシステムにおいて制御可能な抵抗を提供し、この抵抗は、代表的な実施形態について、約220in.−lb.のトルク出力までの範囲であり得る。
【0023】
(ハプティックインターフェースシステム)
制御可能ダンパーまたは制御可能ブレーキあるいはその両方はまた、本発明に従うハプティックインターフェースシステムの部分(part)として組み込まれ得る。本発明の別の実施形態に従って、ハプティックインターフェースシステムが開示され、これは、オペレーターにより、回転または移動の少なくとも1つの方向に動かすことができる、ハプティックインターフェースデバイスを備え、このハプティックインターフェースシステムが、ハプティックインターフェースデバイスに抵抗力を提供する。このシステムは、可変の入力信号を受け取り、そして可変の出力信号を提供するためのコントローラーを備える。このコントローラーは、可変の入力信号を処理し、そして、それに応じて、可変の出力信号を生じるプログラムを実行するように適合される。このハプティックインターフェースデバイスは、ダンパーのような、少なくとも1つの磁気制御可能デバイスと連絡している。ハプティックインターフェースシステム内に、1を超える類似または異なる制御可能デバイスが存在してもよい。少なくとも1つの制御可能ダンパーデバイスまたは制御可能ブレーキデバイスは、複数の位置を有し、ここで、この複数の位置の間での、ハプティックインターフェースデバイスの運動の緩和(ease)は、MR流体(ダンパーの場合、および粉末の軟磁性材料、またはキャリア流体(MR流体)中に分散された軟磁性粒子のいずれか)を含む制御可能デバイスの可変の抵抗力により制御される。軟磁性(磁気応答性の)粒子は、2μmのD10から5μmのD10以下;8μmのD50から15μmのD50;および25μmのD90から40μmのD90までを有する、単アトマイゼーションプロセス集団から得られ;そして、ここで、単プロセス集団は、0.77以上の、対数正規分布からの最小二乗回帰(R)を示す。粉末またはMR流体は、可変の出力信号を受け取り、そして可変の出力信号の関数として、可変の抵抗力を提供する。この抵抗関数は、コンピューターデータアルゴリズムにより提供される可変の出力信号に正比例し得るか、または、可変の出力信号からの導関数(derivative)であり得る。可変の抵抗力は、力のタイプの中でも、運動の緩和を直接制御する、生じる力をシミュレートする、そして/あるいはハプティックインターフェースデバイスの運動の限界(boundary limit)をシミュレートする出力信号に応じて、MR粉末またはMR流体のレオロジーを変化させることにより提供される。可変の抵抗力は、オペレーターによって、移動の少なくとも1つの方向に誘導される、ハプティックインターフェースデバイスの移動に対する抵抗を提供する。
【0024】
本発明のハプティックインターフェースシステムを組み込み得る乗物および機械の例としては、産業車両、船舶、オーバーヘッドクレーン、トラック、自動車、およびロボットが挙げられる。ハプティックインターフェースデバイスとしては、ステアリングホイール、クランク、フットペダル、ノブ、マウス、ジョイスティック、またはレバーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0025】
詳細には、本発明に従うハプティックインターフェースシステムは、フォースフィードバック感覚を与えるために、インターフェースデバイスに接続された1つ以上のモーターを備える。代表的なモーターとしては、直流(DC)ステッパーモーターおよびサーボモーターが挙げられる。インターフェースデバイスがジョイスティックである場合、ジョイスティックが動かされ得る任意の方向に力を提供するために、モーターを用いて、x軸方向、y軸方向、またはこれらを組合せた方向に力を与える。同様に、インターフェースデバイスがステアリングホイールである場合、時計回りおよび反時計回りの方向に回転力を与えるために、モーターが用いられる。従って、モーターは、インターフェースデバイスが動かされ得る任意の方向に力を与えるために用いられる。
【0026】
単一のモーターを用いるシステムにおいて、モーターは、1つ以上の方向に力を与えるために、ギアトレイン、または他の類似のエネルギー伝達デバイスを通じて、インターフェースデバイスに接続され得る。システムにおいて1つのモーターを使用することを可能にするために、代表的には、可逆モーターが、2つの異なる方向に力を提供するために利用される。さらに、機構は、適当な時間で適当な方向に力を提供するために、種々のギアまたは他のエネルギー伝達デバイスを係合および開放することが必要とされる。反対に、他の代表的なシステムは、要求された方向に力を提供するために、1つ以上のモーターを使用する。従って、現在のシステムは、フォースフィードバック感覚の送達を扱う多数の異なるアプローチを利用する。
【0027】
さらに、コントローラーは、乗物、機械、またはコンピューターシュミレーションの操作を制御するために、センサーおよび他の入力により得られる情報に応じて、乗物、機械、またはコンピューターシミュレーションに信号を送信し得る。一旦、オペレーターの入力および他の入力が、マイクロプロセッサーにより処理されると、フォースフィードバック信号が、磁気制御可能デバイスに送信され、次いで、車両、機械、またはコンピューターシュミレーションの制御を反映するように、ハプティックインターフェース(例えば、ジョイスティック、ステアリングホイール、マウスなど)を制御する。
【0028】
システムはさらに、インタラクティブプログラムを実行するように適合された、コントローラー(例えば、コンピューターシステム)、ならびに、ハプティックインターフェースデバイスの位置を検出し、そしてコントローラーへ対応する可変の入力信号を提供するセンサーを備える。このコントローラーはインタラクティブプログラム、およびセンサーからの可変の入力信号を処理し、そして、インタラクティブプログラムにより計算された触覚をオペレーターに提供する半能動的な可変の抵抗力に対応する、可変の出力信号を提供する。可変の出力信号は、第1および第2の部材に隣接して配置された、磁場発生デバイスに電圧を印加し、可変の抵抗力に比例する強度を有する磁場を生じさせる。この磁場は、第1の部材と第2の部材との間の作動ギャップまたは作動空間に配置される、本明細書中に開示されるMR流体を横切って印加される。印加された磁場は、ハプティックインターフェースデバイスと連絡している、第1の部材と第2の部材との間の相対運動(例えば、直線運動、回転運動、または曲線運動)と関連して、MR流体の抵抗力を変化させる。コントローラーからの可変の出力信号は、印加された磁場の強度(従って、MR流体の可変の抵抗力)を制御する。MR流体にエネルギーを与えることにより提供される抵抗力は、複数の位置の間でのハプティックインターフェースデバイスの運動の緩和を制御する。従って、ハプティックインターフェースシステムは、車両、機械、またはコンピューターシュミレーションのオペレーターに、ハプティックインターフェースデバイスの動きに対向する磁気制御可能デバイスを介して、フォースフィードバック感覚を提供する。
【0029】
ハプティックインターフェースデバイスは、車両、機械、またはコンピューターシステムのオペレーターと作動可能に接触している。磁気制御可能デバイスは、第1の部材と第2の部材との間にMR流体を有利に含み、ここで、第2の部材は、ハプティックインターフェースデバイスと連絡している。本発明のハプティックインターフェースシステムは、車両のステアリング、スロットル、クラッチ、およびブレーキ;コンピューターシミュレーション;機械の運動および機能を制御するために用いられ得る。本発明のハプティックインターフェースシステムを備え得る車両および機械の例としては、産業車両および船舶、オーバーヘッドクレーン、トラック、自動車、およびロボットが挙げられる。ハプティックインターフェースデバイスとしては、ステアリングホイール、クランク、フットペダル、ノブ、マウス、ジョイスティック、およびレバーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0030】
好ましい制御可能デバイスにおいて、本明細書中に記載されるMR流体は、第1の部材と第2の部材との間に配置される吸収要素の周りに分配される。好ましい吸収要素は、網状の多孔性ポリマーマトリクスであり、そして弾力性がある。弾性要素は、好ましくは、静止状態から部分的に圧縮された状態で(好ましくは、静止状態から約30〜70%の圧縮の量で)、デバイス内に位置付けられる。この吸収要素は、MR流体を保持するために開放空間を有するマトリクス構造物として形成され得る。吸収要素に適切な材料としては、とりわけ、ポリウレタン材料などに由来する、オープンセルフォーム(open-celled foam)が挙げられる。好ましいハプティックインターフェースシステムは、米国特許第6,373,465号(本明細書において参考として援用される)に開示される。
【0031】
(粒子成分)
粒子が、5容積%未満、より代表的には2容積%未満、および、より好ましくは、1容積%未満の、特大サイズを含む廃棄物を表す微小フラクションの除去(200メッシュ、170メッシュ、または140メッシュの篩(それぞれ、74マイクロメーター、88マイクロメーター、および105マイクロメーター)を通すような、単一の粗い篩い分け(single coarse screening))以外に分類されていないという事実によって、磁気応答性粒子、またはキャリアおよび応答性粒子を含むMR流体は、固有の粒子分布を有する単アトマイゼーションプロセス流から得られる。本明細書中で用いられる、用語「分類されていない」とは、単一の粗い篩い分け工程以外のさらなる分類がないことを意味すると解釈される。単プロセス流の粒子集団は、特定のマイクロメーター(ミクロン)サイズ以下の累積容積フラクションに基づいて区別される。当該分野で公知の機器分析法は、10%、50%、および90%で、特定の粒子サイズ以下の累積容積%を報告することができ、そしてそれぞれ、D10、D50、およびD90と、当該分野ではいわれる。作動ギャップ内で動作する磁気応答性粒子は、2μmのD10から5μmのD10以下;8μmのD50から15μmのD50以下;および25μmのD90から40μmのD90までにより特徴付けられる。単アトマイゼーションプロセス流からの粒子集団はさらに、0.77以上の、累積容積%フラクションに対する、ミクロンの、対数正規粒子サイズの最小二乗回帰(R)により特徴付けられる。
【0032】
10、D50、およびD90の決定は、当該分野で利用可能な機器を用いて精確に測定される。Malvern Instruments,Ltd.(Malvern,U.K.)のmodel Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18は、粒子容積分布を分析し、そして、D10、D50、およびD90で累積容積%フラクションμmサイズを分析するために、製造業者により適切な機能が備えられている。粒子フラクションデータは、Rの決定のために、Excel(登録商標)のような、代表的な統計ソフトウェアに内蔵された通常の回帰分析技術に入力される。
【0033】
図1を参照すると、図1は、アトマイズ化粒子集団およびアトマイズ化粒子とカルボニル鉄の混合物(コントロール7)と比較した、カルボニル鉄(C−1)の一致性を図で示すために、以下の実施例の各々から得られたデータの対数正規プロットを含む。容積%分布に関して分析した各実施例について、対数正規粒子サイズ(μm)に関する累積容積フラクションデータを、Microsoft(登録商標)Excelの回帰分析ソフトウエアに入力し、そして最小二乗回帰関数を計算した。実施例に関して得られたR値は、対数正規分布に対する一致性の程度を特徴付ける。
【0034】
図2を参照すると、グラフは、コントロール1−カルボニル鉄粒子(R−2430、例、ISP Corp.)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表1のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0035】
【表1】

【0036】
図3を参照すると、グラフは、アトマイズ化粒子(FPI(−325メッシュ)、例、Hoeganes)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表2のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0037】
【表2】

【0038】
図4を参照すると、グラフは、コントロール3のアトマイズ化粒子(FPI グレードII(2)、例、Hoeganes)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表3のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0039】
【表3】

【0040】
図5を参照すると、グラフは、コントロール4のアトマイズ化粒子(FPI グレードII GAF、例、Hoeganes)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表4のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0041】
【表4】

【0042】
図6を参照すると、グラフは、コントロール5のアトマイズ化粒子(Atomet(登録商標)PD3871、例、Quebec Metal Powders)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表5のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0043】
【表5】

【0044】
図7を参照すると、グラフは、コントロール6のアトマイズ化粒子(Atomet(登録商標)PD4155、例、Quebec Metal Powders)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表6のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0045】
【表6】

【0046】
図8を参照すると、グラフは、コントロール7(カルボニル鉄2430とFPI グレードIIとの50:50重量%混合物)に関する、Malvern Mastersizer(登録商標)Sを用いる、表7のデータからの粒子サイズ分布の対数正規プロットを表す。
【0047】
【表7】

【0048】
図9を参照すると、グラフは、本発明に従って用いられるアトマイズ化粒子に関する、表8のデータからの粒子の対数正規プロット累積容積%を表す。
【0049】
【表8】

【0050】
上記から得られる計算されたR値を、高い順に以下に並べる。
【0051】
【表9】

【0052】
作動ギャップ内に乾燥粉末またはMR流体を含む制御可能デバイスに従って、0.77以上のRを示す、コストパフォーマンスが改善された、単プロセス産出アトマイズ化粒子集団が達成される。この単プロセスアトマイズ化粒子はまた、10番目、50番目、および90番目の累積容積百分率(それぞれ、D10、D50、およびD90)内の粒子直径サイズにより特徴付けられる。本発明のMR流体の磁気応答性粒子は、2μmのD10から5μmのD10以下;8μmのD50から15μmのD50以下;および25μmのD90から40μmのD90以下を示す。より好ましい単プロセスアトマイズ化粒子は、2μmのD10から5μmのD10以下;10μmのD50から13μmのD50以下;および28μmのD90から35μmのD90以下により特徴づけられる。
【0053】
本明細書中で利用される粒子集団は、1つ以上のロットのブレンド、または異なるプロセス流からの粒子のブレンドから区別される、単プロセス流からのプロセス産出物を利用する。単プロセス集団が、0.77以上のR、2〜5μm以下のD10、8μmから15μm以下のD50、および25μmから40μm以下のD90を示す、改良が提供される。上記の特性を有する単アトマイゼーションプロセス産出物の粒子を作製する方法は、WO99/11407に記載される。WO99/11407のプロセスは、ハイブリッド型の気体−水アトマイゼーションプロセスであり、これにより、気体(例えば、空気)は、層流として、先細のインレットノズルの入り口へと流れ、そしてノズルの出口付近においてほぼ音速でノズルの外に流れる。ノズルアセンブリは、その中心にオリフィス、逆円錐の形状の、水の噴射のためのノズルの下部側面を取り囲むスリット、ならびに、ノズルの下部表面に対して垂直かつオリフィスに対して同軸であるエジェクターチューブを備える。このノズルの形状は、気体がオリフィスの上部側面から層流で引き出され、気体がオリフィスの狭くなっている領域を通過するにつれて気体の速度が増加して、気体がオリフィスを出る際に、音速に近い速度または音速に等しい速度となるように構築される。ノズル装置は、オリフィスの出口にバッフルプレート/アニュラーリングを備え、これは、オリフィスの出口のアパーチャよりも小さな直径を有するアパーチャを有する。
【0054】
気体の圧力は、ノズルに沿って入り口から出口に向かって低下し、ノズルの出口から出る際に上昇し、そして気体の上昇した圧力は、逆円錐形状のフローの液体ジェットの収束点に到達するまで低下する。オリフィスから現れる気体は、急激に膨張し、そして液体ジェットの壁に衝突し、そして衝突した気体の反射により、膨張波および圧縮波を生じる。液体の壁に対する度重なる反射により、膨張波および圧縮波は、アトマイズ現象が発生する際に、溶融金属の流れに対する分割作用(splittiong action)を生じる。単プロセス産出物および上記の特定のD10、D50、およびD90を提供する市販の製品は、PF−20Eの名称で、Atmix Corpにより販売されている。米国特許第6,254,661号は、本明細書に完全に記載されているかのように、本明細書において参考として援用される。
【0055】
上記のハイブリッド法において調製されるアトマイズ化された軟磁性粒子組成物は、鉄単独、あるいは合金レベルのアルミニウム、シリコン、コバルト、ニッケル、バナジウム、モリブデン、クロム、シリコーン、タングステン、ホウ素、マンガン、および/または銅などと組合せた鉄(例えば、約30:70W/W〜95:5W/W(好ましくは、約50:50〜85:15)の範囲の、鉄:コバルト合金および鉄:ニッケル合金)のような要素から構成される。例示的な鉄−ニッケル合金は、約90:10〜99:1、好ましくは、94:6〜97:3の範囲の、代表的な鉄−ニッケル重量比を有する。合金は、この合金の延性および機械的特性を改善するために、3重量%までの少量の他の元素(例えば、バナジウム、クロムなど)を有利に含み得る。例示的な粒子はまた、酸化鉄、および/または窒化鉄、および/または炭化鉄を含む。酸化鉄は、全ての公知の純粋な酸化鉄(例えば、FeおよびFe34)、ならびに、少量の他の元素(例えば、マンガン、亜鉛、またはバリウム)を含む酸化鉄を含む。酸化鉄の具体例としては、フェライトおよびマグネタイトが挙げられる。好ましくは、使用される磁気応答性粒子は、約0.01%未満の炭素を有する。特に好ましい実施形態では、磁気応答性粒子は、97%〜99%の鉄、および約1%未満の酸素および窒素を含む。
【0056】
MR流体を用いるデバイスでは、粒子成分は、磁気粘性流体の総容積の約5〜約50容積%、好ましくは約15〜40容積%を表す。粒子成分の容積%は、所望される磁気降伏応力(magnetic yield stress)、所望されるMR流体の粘度、および所望される他の設計基準に依存して、特定の範囲内で選択される。磁気応答性粒子の密度は、代表的には、約6.4gm/cm〜約7.8gm/cmの範囲である。粒子の上記容積フラクションに対応する重量%に関して、キャリア流体および磁気粘性流体の粒子が、それぞれ、約0.80と7.8の比重を有する場合、30〜89重量%、好ましくは、約59〜85重量%の粒子が存在する。
【0057】
本発明の制御可能デバイスに含まれる磁気粘性流体の実施形態は、磁気粘性流体組成物を提供するためにキャリア流体中に分散される。このキャリア成分は、代表的には、磁気粘性流体の約50〜約95容積%の量で存在する。磁気粘性流体の実施形態における粒子成分の容積%は、設計された降伏応力レベル、オフ状態での粘度、および、当業者により容易に理解されそして本開示の範囲を超える他の流体またはデバイスの設計因子に依存して、予め選択された任意の範囲である。キャリア成分は、磁気粘性流体の連続相を形成する。本発明の磁気粘性組成物から磁気粘性流体を形成するために用いられるキャリア流体は、磁気粘性流体と共に使用するための公知のビヒクルまたはキャリア流体のいずれかであり得る。磁気粘性流体が水性MR流体として設計される場合、当業者は、本明細書に開示されるどの添加剤が、公開された技術における教示に従うこのような水性システムに適切であるかを理解する。水性キャリアシステムは、例えば、米国特許第5,670,077号(その全体が本明細書において参考として援用される)に記載される。水ベースのシステムが用いられる場合、形成された磁気粘性流体は、必要に応じて、適切なチキソトロープ剤、凍結防止成分、または錆止め剤の1つ以上を、代表的な従来の任意の添加剤として含み得る。
【0058】
好ましい局面では、MR流体を用いる本明細書中に開示されるデバイスは、有機液体であるキャリア流体を利用する。用いられ得る適切なキャリア流体としては、天然の脂肪油、鉱物油、ポリフェニルエーテル、二塩基酸エステル、C−C脂肪族アルコール、C−C脂肪族グリコール、C−C脂肪族ジオール、およびC−C脂肪族よりも高級のポリオール、ネオペンチルポリオールエステル、リン酸エステル、合成シクロパラフィン、および合成ポリα−オレフィン、不飽和炭化水素油、一塩基酸エステル、グリコールエステルおよびグリコールエーテル、ケイ酸エステル、シリコーン油、シリコーンコポリマー、合成炭化水素、過フッ素化ポリエーテルおよび過フッ素化ポリエステル、およびハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物またはブレンドが挙げられる。水、ならびに混和性の有機化合物と混合された水は、有用なキャリア流体である。好ましい水性キャリアとしては、水と、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびブタンジオールのようなC−Cジオールの1つとの混合物が挙げられる。
【0059】
鉱物油、パラフィン、シクロパラフィン(ナフテン系油としてもまた公知)のような炭化水素、および合成炭化水素は、好ましいクラスの有機キャリア流体である。合成炭化水素油としては、ポリブテンのようなオレフィンのオリゴマー化から得られる油、ならびに、8から20個の炭素原子を有するα−オレフィンから、酸触媒二量体化によって、および触媒としてトリアルミニウムアルキル(trialuminium alkyls)を用いるオリゴマー化によって得られる油が挙げられる。ポリ−α−オレフィン油は、特に好ましいキャリア流体である。本明細書中で言及されるキャリア流体は、当該分野で周知の方法により調製され、そしてこのような流体は市販されている。好ましいポリ−α−オレフィンとしては、Durasyn(登録商標)PAOおよびChevron Synfluid(登録商標)PAOのような製品が挙げられる。好ましいポリ−α−オレフィンキャリア流体は、100℃で1〜50センチストークの粘度を示し、そして、より好ましくは、100℃で1〜10センチストークの粘度を有する。
【0060】
磁気粘性流体は、必要に応じて、チキソトロープ剤または粘度調整剤、分散剤または界面活性剤、酸化防止剤、腐食防止剤、および1つ以上の潤滑剤のような他の成分を含み得る。このような任意の成分は、当業者に公知である。例えば、分散剤としては、ステアリン酸リチウム、ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸第一鉄、ナフテン酸第一鉄、ステアリン酸亜鉛、トリステアリン酸アルミニウムおよびジステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸ストロンチウム、およびこれらの混合物のような、カルボキシレートセッケン(carboxylate soap)が挙げられる。
【0061】
酸化防止機能を提供する任意の添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、ヒンダードフェノール(hindered phenols)、芳香族アミン、および硫化フェノールが挙げられる。潤滑剤の例としては、有機脂肪酸およびアミド、ラード油、および高分子量有機リン化合物、リン酸エステルが挙げられる。例示的な合成粘度調整剤としては、オレフィンのポリマーおよびコポリマー、メタクリレート、ジエンまたはアルキル化スチレンが挙げられる。さらに、立体安定化作用を提供する他の任意の添加剤としては、フルオロ脂肪族ポリマーエステル(fluoroaliphatic polymeric esters)、並びに、有機チタネート、有機アルミネート、有機シリコーン、および有機ジルコネートをカップリング剤として含む化学カップリングを提供する化合物が挙げられる。
【0062】
当業者は、特定の処方において所望される、任意の添加剤成分を容易に選択し得る。存在する場合、これらの任意の成分の量は、代表的には、磁気粘性流体の総容積に基づいて、各々、約0.1〜約12容積%の範囲であり得る。好ましくは、利用される任意の成分は、磁気粘性流体の総容積に基づいて、各々、約0.5〜約7.5容積%の範囲で存在する。
【0063】
チキソトロープ剤の任意ではあるが好ましい使用は、チキソトロピックレオロジーを提供する任意のそのような試剤を含む。チキソトロープ剤は、選択したキャリア流体を考慮して選択される。磁気粘性流体が、有機流体であるキャリア流体を用いて形成される場合、このような系と適合するチキソトロープ剤が選択され得る。このような有機流体システムに有用なチキソトロープ剤は、米国特許第5,645,752号(その全体が本明細書において参考として援用される)に記載される。好ましくは、油溶性の金属カルボキシレートなど(まとめてセッケンという、例えば、上記の列挙したカルボキシレートセッケン)が用いられる。利用される場合、チキソトロープ剤は、代表的には、磁気粘性流体の、約0.1〜5.0容積%、好ましくは、約0.5〜3.0容積%の範囲の量で用いられる。好ましいチキソトロープ剤の例としては、セッケン、コロイダルシリカ、および有機粘土(organoclay)が挙げられる。好ましい実施形態は、ベントナイトのような、有機粘土のチキソトロープ剤を含む。ベントナイト粘土は、揺変性およびずり減粘である傾向がある(すなわち、これらは、剪断の適用により簡単に破壊され、そして剪断を止めたときに再形成するネットワークを形成する)。ベントナイト粘土材料は、疎水性有機材料を用いて処理することにより有機修飾(organo-modified)される。ベントナイトといわれる材料は、時折、用語スメクタイトおよびモンモリロナイトと交換可能に言及される。モンモリロナイト粘土は、代表的には、ベントナイト粘土の大部分を構成する。モンモリロナイト粘土は、ケイ酸アルミニウムの大きなフラクションを含む。ヘクトライト粘土は、ケイ酸マグネシウムの大きなフラクションを含む。市販の有機修飾粘土としては、例えば、Southern Clay Products製のClaytone AF、ならびにRHEOX製の有機粘土のファミリーである、Bentone(登録商標)、Baragel(登録商標)、およびNykon(登録商標)が挙げられる。他の適切な粘土としては、Codyらに対する米国特許第5,634,969号に開示されるものである。好ましい有機粘土は、Claytone EMである。
【0064】
本発明の磁気粘性組成物を含む磁気粘性流体のオフ状態の粘度は、主に、粒子成分の容積、およびキャリア流体のタイプに依存する。当業者は、磁気粘性流体について特定された適用に従って、所望の必要な粘度を決定する。
【0065】
本発明の磁気粘性流体はまた、色素または顔料、研磨粒子、潤滑剤、酸化防止剤、pHシフター、塩、脱酸剤、および/または腐食防止剤のような他の任意の添加剤を含み得る。これらの任意の添加剤は、分散物、懸濁物、またはキャリアビヒクルに溶解性である材料の形態であり得る。
【0066】
有機粘土は、MR流体組成物の重量に基づいて、約0.1〜12重量%の間、好ましくは、0.3〜5.0重量%の間の濃度で用いられる。好ましい実施形態では、存在する唯一のチキソトロープ剤は、他のタイプの増粘剤を除いて、ベントナイトである。
【0067】
好ましい実施形態は、これらに限定はされなが、コロイドサイズのシリカ粒子(colloidal sized silica particles)、モリブデン化合物(例えば、有機モリブデン、硫化モリブデンまたは二硫化モリブデン、およびリン酸モリブデン);およびフルオロカーボンポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、ならびにこれらの混合物のような、粒子間の摩擦を低減する化合物(摩擦低減添加剤(friction reducing additive))を含む。好ましい実施形態では、摩擦低減添加剤と共に、極圧添加剤(extreme pressure additive)もまた含まれる。極圧添加剤は、潤滑剤の分野で公知であり、そして、有機リン化合物、ホスホネート化合物、ホスホナイト、ホスフェート、ホスフィネート、ホスフィナイト、ホスファイト、およびこれらのアミド誘導体またはイミド誘導体のような公知の誘導体、チオリン化合物(thiophosphorus compounds)、ならびにチオカルバメートが挙げられる。本明細書中の磁気応答性粒子と共に包含するための例示的な有用な有機リン極圧添加剤は、以下の式により表される構造を有する:
【0068】
【化1】

【0069】
ここで、RおよびRは、各々独立して、水素、アミノ基、または1〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり;X、Y、およびZは、各々独立して、−CH−、窒素ヘテロ原子、または酸素ヘテロ原子であり、ただし、X、Y、またはZの少なくとも1つが、酸素へテロ原子であり;aは0または1であり;そしてnはMの原子価であり;ただし、X、Y、およびZが、各々、酸素ヘテロ原子である場合、Mは、金属イオンまたは以下の式Bのアミンから形成される塩部分であり:
【0070】
【化2】

【0071】
ここで、R、R、およびRは、各々独立して、水素または1〜18個の炭素原子を有する脂肪族基である;X、Y、またはZの少なくとも1つが酸素へテロ原子ではない場合、Mは、金属イオン、非金属部分、および二価部分からなる群より選択され;さらに、ただし、Zが−CH−である場合、Mは二価部分であり、そしてZが窒素ヘテロ原子である場合、Mは式Bのアミンではない。
【0072】
代表的なチオリン極圧添加剤は、以下の式Aにより表される構造を有する:
【0073】
【化3】

【0074】
ここで、RおよびRは、各々独立して、
Y−((C)(R)(R))−(O)
により表される構造を有し、
ここで、Yは水素、または、アミノ、アミド、イミド、カルボキシル、ヒドロキシル、カルボニル、オキソまたはアリールのような官能基を含有する部分であり;nは、2〜17の整数であり、その結果、C(R)(R)は、直鎖脂肪族、分枝脂肪族、ヘテロ環、または芳香族環のような構造を有する二価基であり;RおよびRは、各々独立して、水素、アルキル、またはアルコキシであり得;そしてwは0または1である。
【0075】
好ましい数のチオカルバメート極圧添加剤は、以下の式Bにより表される構造を有する:
【0076】
【化4】

【0077】
ここで、RおよびRは、各々独立して、
Y−((C)(R)(R))
により表される構造を有し、
ここで、Yは、水素、または、アミノ、アミド、イミド、カルボキシル、ヒドロキシル、カルボニル、オキソまたはアリールのような官能基を含有する部分であり;nは、2〜17の整数であり、その結果、C(R)(R)は、直鎖脂肪族、分枝脂肪族、ヘテロ環、または芳香族環のような構造を有する二価基であり;そして、RおよびRは、各々独立して、水素、アルキル、またはアルコキシであり得る。式AまたはBのRは、金属イオン(例えば、モリブデン、スズ、アンチモン、鉛、ビスマス、ニッケル、鉄、亜鉛、銀、カドミウムまたは鉛など)、あるいは、非金属部分(例えば、水素、イオウ含有基、アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、ヒドロキシアルキル、オキシ含有基、アミド、またはアミン)である。式AまたはBの下付文字のaおよびbは、各々独立して、0または1であり、ただし、a+bは少なくとも1に等しく、そして式AまたはBのxは、Rの原子価数に依存して、1〜5の整数である。
【0078】
公知の有機モリブデン化合物は、US−A−4,889,647およびUS−A−5,412,130(これらの両方は本明細書において参考として援用される)に記載される。適切な有機モリブデン錯体は、脂肪油と、ジエタノールアミンと、モリブデン供給源とを反応させることにより調製される。適切なヘテロ環有機モリブデートは、相間移動剤(phase transfer agent)の存在下で、ジオール、ジアミノ−チオール−アルコール、およびアミノアルコール化合物を、モリブデン供給源と反応させることにより調製される。他の適切な有機モリブデンは、US−A−5,137,647(本明細書において参考として援用される)に記載される(例えば、アミン−アミドをモリブデン供給源と反応させることにより調製される有機モリブデン化合物)。モリブデンチアジアゾールは、好ましいモリブデン化合物であり、米国特許第5,627,146号(本明細書において参考として援用される)に記載される。市販のモリブデンチアジアゾールは、Molyvan(登録商標)822およびMolyvan(登録商標)2000の名称で、R.T.Vanderbilt Companyから入手可能である。別の例は、モリブデンヘキサカルボニルジキサントゲンである。ヒドロカルビル置換されたヒドロキシアルキル化アミンを、モリブデン供給源と反応させることにより調製される、US−A−4,164,473(本明細書において参考として援用される)に開示されるような、有機モリブデン;ならびにUS−A−2,805,997(本明細書において参考として援用される)に開示されるようなモリブデン酸のアルキルエステル。好ましい有機モリブデン化合物は、US−A−4,889,647およびUS−A−5,412,130(本明細書において参考として援用される)に従って調製され、そして、特にその1つは、Molyvan(登録商標)855の名称で、R.T.Vanderbilt Inc.から市販されている。
【0079】
有機モリブデン化合物を用いる場合、これらは、周囲温度にて液体状態で利用可能であり、そして、磁気粘性流体の総容積に基づいて、0.1〜12容積%、好ましくは、0.25〜10容積%の範囲の有効使用レベルで、MR流体に導入され得る。
【0080】
本発明に従うデバイスにおいて使用される磁気粘性流体の実施形態は、初めに、スパチュラなどを用いて比較的低い剪断力で手により、成分を混合し、次いで、ホモジナイザー、機械式ミキサーまたはシェイカーを用いて比較的より高い剪断力でさらに徹底的に混合するか、あるいは、ボールミル、サンドミル、アトリターミル(attritor mill)、ペイントミル(paint mill)、コロイドミルなど(これらは周知である)のような、適切なミリングデバイスを用いて、成分を分散させることによって、調製され得る。
【0081】
本発明の磁気粘性流体を利用する、ダンパー、マウント、ブレーキ、およびクラッチのような、種々の特定用途のデバイスの試験は、これらの材料の機械的性能を評価する第2の方法である。制御可能流体含有デバイスは、機械式アクチュエーターと並べて単に配置され、そして、特定の変位および振幅および周波数により操作される。磁場はデバイスに適切に印加され、そして、時間の関数としてプロットされた、結果として生じた膨張/圧縮の波形から出力が決定される。ダンパー、マウント、およびクラッチを試験するために利用される方法論は、振動制御の分野の当業者に周知である。
【0082】
本発明の実施形態に従って用いられる粒子成分は、従来技術の磁気応答性粒子と比較して、比較的低い乾燥粉末流速を示す。シンチレーションバイアルを用いる、種々の粒子タイプの相対粉末流速を決定するための方法を以下に記載する。
【0083】
磁気応答性粒子の例を比較のために以下に記載する。各例において、粒子混合物を示す各粒子群について得られたパーセンテージを、粒子の異なる集団の混合物の総重量に基づいた重量パーセントで表す。
【0084】
(粉末フロー試験)
35gの金属粉末を、20mlのシンチレーションバイアルに置いた。このバイアルを、数回軽く叩き、粉末を平らにし、安定させた。バイアルを、15mmの開口部および60°のテーパ角度を有する先細の漏斗に通した(これを、テレフォンページングデバイス(telephone paging device)を改造した6V振動モーターに装着した)。内容物が空になるまで記録された時間を記録した。新しいサンプルを用いて2〜3回繰り返し、そして平均を得た。種々のグレードの鉄粒子の測定を行い、粉末の流速を比較した。
【0085】
【表10】

【0086】
本発明に従い使用された粒子(実施例1)は、乾燥粉末フロー特性においてより遅く、そして、驚くべきことに、これは、制御可能デバイス内のオリフィスを通る粒子フローからの改善された磁気粘性応答と相関する。
【0087】
(MR流体の実施例)
磁気粘性流体は、20% Atmix(登録商標)PF20 Eアトマイズ化鉄粉末((D10=3.14μm;D50=11.89;D90=31.34μm)(R=0.77)、および99%の鉄、1%未満の酸素、1%未満の窒素、および0.01%未満の炭素を含む)を、1重量%のヒドロキシステアリン酸リチウム、1重量%の二硫化モリブデン、および、ポリ−α−オレフィンから得られ、そしてDurasyn(登録商標)162の名称で販売されている、合成炭化水素油キャリア流体で構成される残存容積物(78%〜100%)と混合することにより調製される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表1〜8のデータから得られた、鉄粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))の曲線のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図2】図2は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表1のデータから得られた、従来技術のカルボニル鉄粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図3】図3は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表2のデータから得られた、従来のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図4】図4は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表3のデータから得られた、従来のアトマイズ鉄粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図5】図5は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表4のデータから得られた、従来のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図6】図6は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表5のデータから得られた、従来のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図7】図7は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表6のデータから得られた、従来のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図8】図8は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表7のデータから得られた、従来のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図9】図9は、Malvern Instruments,Ltd,Mastersizer(登録商標)S,Version 2.18を用いて測定された、表8のデータから得られた、実施例1のアトマイズ化粒子に関する(累積容積%)対(粒子サイズ(μm))のExcel(登録商標)による対数正規回帰プロットである。
【図10】図10は、MRダンパーデバイスのピストン部分の、横断面の簡単な構造図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア流体成分および磁化可能粒子成分を含む磁気粘性流体であって、ここで、該磁化可能粒子成分は、2μmのD10から5μmのD10以下;8μmのD50から15μmのD50以下;25μmのD90から40μmのD90以下により特徴付けられ;そして、0.77以上の、対数正規累積容積%に対する粒子サイズの最小二乗回帰(R)によりさらに特徴付けられる、磁気粘性流体。
【請求項2】
前記キャリア成分が、100℃にて、約1センチストークと約500センチストークとの間の粘度を有する、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項3】
前記キャリア成分が、100℃にて、約10センチストーク未満の粘度を有する、請求項2に記載の磁気粘性流体。
【請求項4】
前記キャリア成分が、磁気粘性流体の約50〜約95容積%の量で存在し、そして前記粒子成分が、磁気粘性流体の約5〜約50容積%の量で存在する、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項5】
前記キャリア成分が、天然の脂肪油、鉱物油、ポリフェニルエーテル、二塩基酸エステル、ネオペンチルポリオールエステル、亜リン酸エステル、合成シクロパラフィン、合成パラフィン、不飽和炭化水素油、一塩基酸エステル、グリコールエステルおよびグリコールエーテル、フッ化エステルおよびフッ化エーテル、ケイ酸エステル、シリコーン油、シリコーンコポリマー、合成炭化水素、過フッ素化ポリエーテルおよび過フッ素化ポリエステル、ハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物および誘導体からなる群より選択される、請求項2に記載の磁気粘性流体。
【請求項6】
前記キャリア成分が、水、グリコール、グリコールエステル、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の磁気粘性流体。
【請求項7】
前記キャリア成分が、分散剤をさらに含む、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項8】
セッケン、コロイダルシリカ、および有機粘土からなる群より選択されるチキソトロープ剤をさらに含む、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項9】
前記チキソトロープ剤が、有機修飾ベントナイトから選択される有機粘土である、請求項8に記載の磁気粘性流体。
【請求項10】
極圧添加剤をさらに含む、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項11】
前記極圧添加剤が、チオリン化合物およびチオカルバメートからなる群より選択される、請求項10に記載の磁気粘性流体。
【請求項12】
前記極圧添加剤が、以下の式を有する有機リン化合物である、請求項11に記載の磁気粘性流体:
【化1】


ここで、RおよびRは、各々独立して、水素、アミノ基、または1〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり;X、Y、およびZは、各々独立して、−CH−、窒素ヘテロ原子、または酸素ヘテロ原子であり、ただし、X、Y、またはZの少なくとも1つが、酸素へテロ原子であり;aは0または1であり;そしてnはMの原子価であり;ただし、X、Y、およびZが、各々、酸素ヘテロ原子である場合、Mは、以下の式Bのアミンから形成される塩部分であり:
【化2】


ここで、R、R、およびRは、各々独立して、水素、または1〜18個の炭素原子を有する脂肪族基であり;そして、X、Y、またはZの少なくとも1つが、酸素へテロ原子ではない場合、Mは、金属イオン、非金属部分、および二価部分からなる群より選択され、そしてZが窒素ヘテロ原子である場合、Mは、式Bのアミンではない。
【請求項13】
前記極圧添加剤が、以下の構造を有する、チオリン化合物である、請求項11に記載の磁気粘性流体:
【化3】


ここで、RおよびRは、各々独立して、
Y−((C)(R)(R))−(O)
により表される構造を有し、
ここで、Yは、水素、または、アミノ、アミド、イミド、カルボキシル、ヒドロキシル、カルボニル、オキソ、またはアリールのような官能基を含有する部分であり;
nは2〜17の整数であり、その結果、C(R)(R)が、直鎖脂肪族、分枝脂肪族、ヘテロ環、または芳香族環のような構造を有する二価基であり;
およびRは、各々独立して、水素、アルキル、またはアルコキシであり得;そして
wは0または1である。
【請求項14】
前記極圧添加剤が、以下の式Bにより表されるチオカルバメートである、請求項11に記載の磁気粘性流体:
【化4】


ここで、RおよびRは、各々独立して、
Y−((C)(R)(R))
により表される構造を有し、
ここで、Yは、水素、アミノ基、アミド基、イミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、オキソ基、またはアリール基から選択され;nは、2〜17の整数であり;RおよびRは、独立して、水素、アルキル基、またはアルコキシ基であり;そして、Rは、金属イオン、非金属部分、および二価部分からなる群より選択され;aおよびbは、各々独立して、0または1であり、ただし、a+bは、少なくとも1に等しく、そして、xは、Rの原子価数に依存して、1〜5の整数である。
【請求項15】
前記粒子成分が、鉄、鉄マンガン、鉄ホウ素、酸化鉄、窒化鉄、炭化鉄、鉄クロム、低炭素鋼、鉄シリコン、鉄ニッケル、鉄コバルト、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項16】
前記粒子成分が、鉄、酸化鉄、鉄ニッケル、鉄コバルト、鉄マンガン、鉄シリコン、および鉄ホウ素からなる群より選択される、請求項15に記載の磁気粘性流体。
【請求項17】
前記分散剤が、オレアート、ナフテネート、スルホネート、リン酸エステル、ステアリン酸、ステアレート、グリセロールモノオレアート、ソルビタンセスキオレアート、ラウレート、脂肪酸および脂肪アルコールから選択される、請求項7に記載の磁気粘性流体。
【請求項18】
前記分散剤が、ステアレートを含む、請求項17に記載の磁気粘性流体。
【請求項19】
モリブデン化合物をさらに含む、請求項1に記載の磁気粘性流体。
【請求項20】
前記モリブデン化合物が、有機モリブデンである、請求項19に記載の磁気粘性流体。
【請求項21】
前記有機モリブデン化合物が、Molyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)2000、およびMolyvan(登録商標)855から選択される、請求項20に記載の磁気粘性流体。
【請求項22】
前記モリブデン化合物が、二硫化モリブデンである、請求項19に記載の磁気粘性流体。
【請求項23】
0.08mm〜0.90mmの設計(作動)ギャップにより特徴付けられる、リニアダンパーデバイスであって、請求項1に記載の磁気粘性流体を含む、デバイス。
【請求項24】
以下を備えるハプティックインターフェースシステム:
オペレーターにより回転または移動の少なくとも1つの方向に移動可能な、ハプティックインターフェースデバイスであって、該ハプティックインターフェースシステムは、該ハプティックインターフェースデバイスに抵抗力を提供する、ハプティックインターフェースデバイス;
可変の入力信号を受け取り、そして可変の出力信号を提供するための、コントローラーであって、該可変の入力信号を処理し、そして入力変量に応じて該可変の出力信号を導き出すプログラムを実行するように適合された、コントローラー;および
該可変の出力信号を受け取り、そして該可変の出力信号の関数として抵抗力を提供する磁気制御可能デバイスであって、該デバイスは、請求項1に記載の磁気粘性流体を含み、ここで、磁化可能流体成分は、該出力信号に応じた粒子成分の秩序化によって可変の抵抗力を提供し、それにより、該ハプティックインターフェースデバイスの変位に抵抗することにより、該ハプティックインターフェースデバイスの運動の緩和を直接制御する、磁気制御可能デバイス。
【請求項25】
前記磁気制御可能デバイスが、ダンパーであり、そして、前記粒子が、水、グリコール、天然の脂肪油、鉱物油、ポリフェニルエーテル、二塩基酸エステル、ネオペンチルポリオールエステル、亜リン酸エステル、合成シクロパラフィン、合成パラフィン、不飽和炭化水素油、一塩基酸エステル、グリコールエステル、グリコールエーテル、フッ化エステル、フッ化エーテル、ケイ酸エステル、シリコーン油、シリコーンコポリマー、ポリ−α−オレフィン、過フッ素化ポリエーテル、過フッ素化ポリエステル、ハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物および誘導体からなる群より選択されるキャリア成分に分散される、請求項24に記載のハプティックインターフェースシステム。
【請求項26】
以下を備える、ロータリー磁気粘性流体デバイス:
(a)シャフト;
(b)磁気透過性の材料から製造されたローターであって、該ローターは、第1および第2のローター面、作動部分、および外周部を有し、該外周部によって、該ローターは該シャフトに相互接続されて、これらの間での相対的回転を防止する、ローター;
(c)高い磁気透過性の粉末金属材料から製造される、軟磁性ヨークを備えるハウジングであって、該軟磁性ヨークは、その中に形成される溝を有し、該溝は、該ローターの作動部分を受容し、そして該第1のローター面に隣接する第1のギャップ、および該第2のローター面に隣接する第2のギャップを形成し、該ハウジングは、ヨークを備えるハウジングの部分と比較して比較的薄く成形された部分を含み、該部分は、磁場がシャフトのシール領域において高まるのを防ぐために、シャフトに隣接して形成される、ハウジング;
(d)請求項1に記載の磁気粘性流体、またはキャリア流体なしの粉末磁化可能粒子であって、該流体、またはキャリア流体なしの粒子は、該第1のギャップおよび第2のギャップ内に含まれ、そして該第1のギャップおよび第2のギャップを少なくとも部分的に充填し、該流体の磁化可能粒子成分、および該粉末磁化可能粒子は、0.77以上のRを示す集団を有する粒子の単アトマイゼーションプロセス産生物により特徴付けられ、そして、2μmのD10から5μmのD10以下、8μmのD50から15μmのD50以下、および25μmのD90から40μmのD90以下の容積フラクションによりさらに特徴付けられる、請求項1に記載の磁気粘性流体、またはキャリア流体なしの粉末磁化可能粒子;および
(e)該軟磁性ヨークに隣接して可変の磁場を提供する、磁場発生装置であって、該磁場発生装置に電圧を印加したとき、該第1のギャップおよび第2のギャップ内の軟磁性粒子がレオロジーを変え、それによって、該ロータリーデバイスのねじれ抵抗の変化を生じるように該可変の磁場が作用する、磁場発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−505957(P2006−505957A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551901(P2004−551901)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2003/035605
【国際公開番号】WO2004/044931
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505127617)ロード コーポレイション (15)
【Fターム(参考)】