説明

改良複合製品およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、セルロース繊維、セルロース系小繊維微粒子、および顔料を含む改良複合製品において、顔料の割合を増やし繊維の割合を減らし、曲げ剛性、強度等を向上または保持しつつ、製紙コストを低減することにある。本発明の課題はまた、その改良複合製品を製造する方法にある。
【解決手段】セルロース繊維、セルロース系小繊維微粒子および顔料を含む改良複合製品において、複合製品の主成分が40〜80重量%の顔料であり、セルロース系小繊維微粒子の割合が15〜40重量%およびセルロース繊維の割合が5〜30重量%である。改良複合製品を作る方法は、前記成分を水溶液中で混合し、水溶液を脱水することによって複合製品を製造する工程からなる。各成分は水溶液中で、最終製品中の顔料の割合が40〜80重量%、セルロース系小繊維微粒子の割合が15〜40重量%、およびセルロース繊維の割合が5〜30重量%の比率で混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維、セルロース系小繊維微粒子、および顔料を含む改良複合製品に関する。本発明はまた、改良複合製品を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数百万トンの未コーティング、無木材の上質紙が生産され、コピー紙のような印刷紙として消費されている。上質紙は、通常、化学パルプ繊維およびフィラーとして使用される顔料から作られる。基本的には上質紙は、シート強度、剛性を付与する骨格としてのセルロース繊維およびフィラーからなり、フィラーは繊維と組み合わされて光散乱と紙の孔径に寄与する。主要なフィラーは炭酸カルシウムで、最も頻繁に用いられるのはPCC(沈降性炭酸カルシウム)であり、市場占有率が伸びている。PCCの商業的成功はPCCの付与する嵩高性およびオンライン生産の経済的解決に関係する。
【0003】
顔料は、印刷・筆記用の非被覆の無木材上質紙に不可欠の構成要素である。最も多くの場合、フィラーは粒子径が0.1〜10μmの無機質の鉱物である。プロセス条件、使用する顔料のコスト効果、並びに紙の品質要求によって異なる型の顔料が製紙用に使用される。顔料は製紙コストの低減、湿潤シートの脱水促進、および紙の印刷性の向上のために紙の中間品に添加される。一方で、顔料は紙の強度と剛性を損なうので、従来の上質紙中の顔料の比率が乾燥紙の20〜25重量%に制限される所以である。顔料組成を増やすと、繊維の相対比率が減り、繊維間の結合が低下して紙の強度を損なう。こうして、従来の上質紙は光散乱性と強度が反比例する。
【0004】
フィラーはまた高価な繊維の代替に使用される。原料のコスト節減は明確で、PCC価格はパルプ市場価格の通常僅か20%に過ぎず、フィラーの添加レベルは、増加するフィラーレベルに起因する機械強度の低下によって制限される。フィラー組成が増加すると、紙の引張強度および剛性が明らかに低下し、粉塵の原因にもなる。高いフィラー添加レベルは、湿潤強度が低下する結果、稼働実行性(Runnability)を低下させる。通常上質紙のフィラー組成を増やすための制限因子は剛性、粉塵化、または湿潤強度であるが、他方で多くの用途において引張および引裂き強度は通常十分である。
【0005】
従来の製紙業分野の最近の研究動向は、この障害から脱すること、すなわち従来紙の強度と光散乱を増加することおよび紙中の顔料の割合を増やすことにある。例えば、紙のフィラー添加レベルを上げることができる新しいフィラーを開発する試みがなされて来ている。複合、共構造化、共吸着性の、結着剤を含む顔料が紙の高フィラーレベルを可能にするべく特許請求されている。
【0006】
米国特許4445970は30−70%の無機フィラーを含む複合上質紙を開示する。紙は多量のフィラーおよび良好な保持性と強度を付与すべく選択されたイオン性ラテックス3〜7%を含む中間品(furnish)から製造される。
国際公開公報WO2006120235は、15〜70重量%のフィラーを含む紙製品を開示する。製造工程において、ポリマーが少なくとも3工程においてフィラーおよび繊維からなる中間品に添加される。
【0007】
米国特許US5731080は、拡張比表面積と親水性の複数の繊維からなる繊維ベースの複合材料を開示し、その繊維は表面に微小繊維を有し、バインダーや保持助剤なしに微小繊維に直接グラフトした顆粒のクラスターに本質的に組織化されたPCCの結晶は、PCCと微小繊維の界面に存在し、大部分の結晶は信頼性のある、不安定でない機械的結合によって微小繊維を捕捉する旨開示する。鉱物成分は、複合材料の全固形分に対して40重量%より大であると云われている。
【0008】
国際公開公報WO02090652は、繊維状ウェブを開示し、その内、ウェブ中のフィラーの5−100%がセルロース・フィブリルまたは光散乱材料粒子がその上に被覆されたリグノセルロース・フィブリルから作られている。被覆されたセルロース・フィブリルはウェブ重量の約70%を構成する。とに角、紙中の鉱物顔料量は常に50%未満である。
【0009】
米国特許US6156118は、精製によってパルプ繊維から作られた短毛からなるフィラーおよび短毛と混合した顔料を開示し、短毛繊維を含む短毛は、ワイヤ・スクリーンP50又はそれより細かい粒度分布に相当する。米国特許US6251222は、100メッシュワイヤ通過の篩分けフィブリル仕分け品を供給する木材パルプを精製、篩分けし、フィブリルの表面に沈降した炭酸カルシウムの多孔質凝集物を与えるために、篩分けフィブリル仕分け品の表面に炭酸カルシウムを化学的に沈降させる工程からなるフィラーの製造方法を開示する。何れの場合も、紙中の鉱物顔料量は50%未満である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の一つは、公知技術に関連する欠点を取り除くことである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、低コストで製造可能で、例えば従来の上質紙を代替するために用い得る新製品を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による改良複合製品は、請求項1に記載の事項を特徴とする。
【0013】
本発明による方法は、請求項6に記載された事項を特徴とする。
【0014】
本発明は、紙の構造に新しいモデルを適用することによって着想された。従来の上質紙において、セルロース繊維がその紙の構造を付与する。本発明においては、構造、すなわち紙の嵩は、PCCの如き顔料および繊維の最小篩分け分によって与えられる。セルロース系微小繊維微粒子をセルロース繊維の代わりに用いて、セルロース材料の強度効果が増大する。セルロース系微小繊維微粒子は繊維よりも大きい結合面積と結合強度を与えることが可能である。
【0015】
こうして、本発明は以下の組成を考慮される:多量の、通常50重量%を超える顔料、好ましくは、PCCのような嵩高の鉱物、または合成ケイ酸塩で、微小繊維微粒子によって結合される。制限量の長繊維(例えば、アバカ社の合成または軟質木材パルプ)、通常5〜20重量%を紙の引裂き強度向上のために添加する。このようなシートは従来の未コーティング上質紙に比べて同等または向上した機械的性質を有することが分かる。原料コストは、全体として従来の上質紙よりもかなり低くなるであろう。
【0016】
このように、新規複合製品の主要成分は、40〜80重量%の顔料、15〜40重量%のセルロース系微小繊維微粒子、および5〜30重量%のセルロース繊維である。
【0017】
新規の方法は、複合品の成分を40〜80重量%の顔料、15〜40重量%のセルロース系微小繊維微粒子、および5〜30重量%のセルロース繊維の割合で組み合わせることからなる。
【0018】
有利には顔料の割合は45〜65重量%、好ましくは50〜60重量%であり、セルロース系小繊維微粒子の割合は20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%であり、セルロース繊維の割合は5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%である。
これら3成分に加えて、改良複合製品はさらに、少量の保持助剤、サイズ剤、または糊剤の如き従来の製紙用薬品を含むことができる。
【0019】
複合品の主成分として使用される顔料は、沈降性炭酸カルシウム(PCC)、粉砕炭酸カルシウム(GCC)、粘土、タルク、酸化チタン、ケイ酸塩、有機顔料、並びにその混合物からなる群から選ばれる。PCCは最も好ましい顔料の一つと見做される。
【0020】
セルロース繊維は複合材料の構造を強化するために主に使用され、軟質木材、硬質木材、または非木材繊維材料、合成繊維、ならびにその混合物から作られる化学、化学機械、機械パルプ繊維からなる群から選ばれる。
【0021】
卓越した顔料およびセルロース系小繊維微粒子からシートを作るもう一つの利点は、綿状の塊にならずその結果シートはもっと高い固形分、恐らく20%固形分で形成される。このことは製紙時に水分消費量を減少させる。高固形分の形成は、保持性を劇的に向上し、保持剤の必要性を除去又は少なくとも減少させる。容積、脱水、およびレオロジーが従来の製紙のそれらと全く異なるために、全く異なるウェットエンド(製紙機の薬液仕込み部)および形成部(ワイヤ部)が設計し得る。
【0022】
本発明は、幾つかの画像と実施例の助けと共に、以下に詳細が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】漂白された軟質木材クラフトパルプから得られた小繊維微粒子の陰像対照画像である。
【図2】高倍率による同様の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
セルロース系小繊維微粒子は、また二次微粒子またはミクロ小繊維セルロースとも呼ばれ、75μm直径丸孔または200μmスクリーンの繊維長篩を通過した、繊維から誘導された粒子である。この篩分け分は標準の繊維篩分け分よりも幾分小さく、通200μmより小さい。最小の粒子径は小繊維の性質であり、0.02−0.5μmの範囲の幅を有する。セルロース系小繊維微粒子は紙の密度や強度を顕著に増加させることが分かる。微粒子の強度への寄与はそのソースに大きく依存する。精製をすれば2次細胞壁(S層)から小繊維微粒子がより多くでき、それは1次(P/S層)粒子よりもっと効果的な結合剤である。従来の検討では、貯蔵懸濁液にセルロース系小繊維微粒子を添加すれば上質紙の曲げ剛性と強度が顕著に増加することが示された。近年、ユーカリの繊維ベースの上質紙中間品に化学パルプ微粒子を添加したときに、微粒子がフィラーの保持性と引張強度を向上することが示された。他方で、微粒子の添加で光散乱が減少し得る。
【0025】
図1および2は漂白した軟質木材クラフトパルプをマイクロ微粒子化することによって得られたセルロース系小繊維微粒子の画像である。小繊維微粒子の各粒子は、発達した絡み合わせネットワークからなる。フィブリル(小繊維)は、屈曲性があり、ネットワーク構造の小繊維間の空隙に水を保持する能力を有する。顕微鏡写真によればフィブリルは高アスペクト比を有する。一方で、ネットワーク性は、これら小繊維微粒子の懸濁物の粒径分布の決定のために従来の粒径測定を適用するのを困難にする。
【0026】
セルロース系小繊維微粒子はどの繊維状の有機原料からも、異なる種類の機械および/または化学処理によって製造され得る。木材パルプ、及び非木材パルプに加えて、繊維状の原料は繊維からなる如何なる有機植物質からも構成され得る。また、セルロース系原料および顔料を一緒に精製することによって、小繊維微粒子を作ることも可能である。セルロース系小繊維微粒子の性質および挙動は、機械的処理の前、間、または後に行われる、精製の如き化学処理によって修正され得る。そうしてフィブリル(小繊維)および/または繊維上に顔料を沈降させることも可能である。
【0027】
本発明による方法において、水溶液は主成分として顔料、最終製品において顔料を一緒に結合するセルロース系小繊維微粒子、および顔料とセルロース系小繊維微粒子とからなる構造を強化するセルロース系繊維を混合することによって調製される。新しい複合製品は、たとえば従来の製紙機や改良製紙機によって製造される。各成分を混合した後の水溶液の濃度は0.5〜20%、好ましくは1〜14%、最も好ましくは2〜10%である。
【0028】
新しい組成物を用いて、顔料組成が60重量%のシートが、セルロース繊維と顔料から作られる手抄き紙と比べて、機械的性質に見かけ上の悪影響を与えず製造され得る。新たな複合手抄き紙の剛性は、従来のコピー紙や試験室の参照試料と類似である。想像されるように、光散乱及び不透明性は従来のコピー紙を遥かに超え、そのフォーメーション(繊維の分散状態)も優れている。
【0029】
新複合製品の表面の走査型電子顕微鏡の写真によれば、顔料はセルロース系小繊維微粒子が構成するネットワークに堅固に固定されている。小繊維微粒子は顔料粒子を包囲し、顔料、小繊維微粒子および孔のネットワークを形成する。通常、孔は空隙容積が様々の蜂の巣型構造を有している。このように、新複合製品は、繊維がまき散らされた小繊維微粒子と顔料の連続構造を有することが結論付けられる。
【0030】
一つの興味ある選択肢は、本質的にセルロース繊維からなる少なくとも1層、および本質的に顔料およびセルロース系小繊維微粒子から形成されるネットワークからなる少なくとも1層の層状品を作ることである。好ましい態様では、複合製品は、顔料およびセルロース系小繊維微粒子から形成される2層間に挟まれたセルロース繊維の層からなる。
【0031】
紙状の複合製品は、例えばカレンダー、コーティング、サイジング、またはその他の従来の製紙に関連して用いられるどの方法によっても仕上げ処理され得る。
【0032】
従来の上質紙を代替することができる複合製品を作ることに加えて、新しいタイプの複合製品が電子印刷紙用その他の多くの用途向けに製造し得る。そのような複合製品を作る場合、カーボン・ナノチューブが別途またはセルロース系小繊維および繊維との組合せで用いられ、そして磁性粒子が顔料として用いられる。
【実施例】
【0033】
[実施例1〜7]
90〜95%のセルロース系小繊維微粒子を含む懸濁液が増幸スーパーマス・コロイダー(超微粒摩砕機)を用いて、松とトウヒの同量混合物からなる未乾燥の塩素原子フリー漂白軟質木材パルプから作られた。増幸スーパーマス・コロイダーは、特殊タイプの粉砕機で、繊維の外部フィブリル化を促進する。この装置で炭化ケイ素製の砥粒を有する回転式石と固定石の間で精製が行われる。精製度合いはパルプ懸濁物を再循環することで上がる。
【0034】
実験に使用された松とトウヒの混合物から得られた篩分けされた軟質木材パルプ繊維からなる長繊維は、23°SRに精製され30メッシュ篩を使用して篩分けされる。
【0035】
粒径2.4μmの偏三角面体沈降性炭酸カルシウム(PCC)が顔料として使用された。
【0036】
参照の手抄き紙は硬質木材と軟質の木材パルプの割合が70:30の混合物から作られた。標準の市販コピー紙は70%樺材および30%の松とトウヒの混合軟質木材からなり、もう一つの参照として使用された。
【0037】
実験計画は、表1に示された最小50%のPCCを含むグラム数(grammage,坪量とも云う)80g/mの新規の複合手抄き紙を作成するように立てられた。手抄き紙の系の小繊維微粒子と顔料はシート型のメッシュの頂部にナイロン繊維を有する標準手抄き紙型にて作られた。高PCC組成の手抄き紙を作る間添加剤は添加せず。保持助剤(C−PAM 250g/t)が参照手抄き紙と長繊維および顔料系シートを作成するのに使用された。標準方法に従って加圧・乾燥が行われた。表1は新規複合材サンプルの目標組成を示す。
【0038】
【表1】

【0039】
乾燥手抄き紙が調整された(23℃;50% 相対湿度)表2に手抄き紙の分析に使用された関係試験法が示された。面内引裂強度がMTS400引張試験機にて測定された。PCC組成はマッフル炉中、525℃にて灰化して測定された。
【0040】
【表2】

【0041】
手抄き紙で測定された性状は表3に示した。実施例3と4は50%または60%PCC、30%セルロース系小繊維微粒子および10%セルロース繊維からなる新規複合品を表す。実施例3および4の手抄き紙の厚さ、嵩、剛性及び引張指数、実施例5(繊維と従来割合のPCC)、実施例2(繊維、小繊維微粒子、従来割合のPCC)のそれらに大きな違いはなかった。一方で、光散乱は実施例3、4において他の実施例より著しく高かった。
【0042】
【表3】

【0043】
実験は、セルロースパルプ繊維のかなりの割合をセルロース系小繊維微粒子で置換した場合に、高品質の上質紙が高割合の顔料において作られることを示す。
【0044】
[実施例8〜15]
セルロース系小繊維微粒子含有懸濁物が、前の実施例と同じ超微細摩擦粉砕機を用い、松とトウヒの同量混合物からなる未乾燥の塩素原子フリー漂白軟質木材パルプから作られた。実験に使用された80%の小繊維微粒子は、37μm孔または繊維長分級機の400メッシュ篩を通過する粒子から構成されていた。
【0045】
60%の松と40%のトウヒから作られた、乾燥した軟質木材パルプは、23SRに精製され、30メッシュ篩にて篩分けされ、これら実施例において強化繊維として使用される篩分け軟質木材繊維が得られた。未精製再生セルロースおよび未精製ユーカリ繊維も強化繊維として使用された。
【0046】
従来のラボ参照手抄き紙は、硬質木材と軟質木材パルプ70:30混合物から作られた。250g/t−C−PAMが参照手抄き紙を作る場合の保持助剤として使用された。
【0047】
2.4μmの粒子サイズの偏三角面体のPCCが製紙における顔料として使用された。
【0048】
試験サンプル組成および性状を表4に示す。最小50重量%PCCの80g/mの手抄き紙が作られた。ユーカリの軟質木材パルプ繊維およびセルロース繊維が強化材として複合品の引裂き強度の増大のために使用された。加えて、60g/mと40g/mの手抄き紙で、軟質木材パルプ繊維で強化されたものが作られた。
【0049】
シート型においてメッシュの頂部にナイロン繊維を伴った標準手抄き紙の型で、手抄き紙が作られた。調製中過剰の水も添加剤も添加されず。手抄き紙の脱水時間は、3−4分であった。加圧乾燥が標準法に従って行われた。
【0050】
参照シートは、手抄き紙型で保持助剤を添加してISO5269−1:2005の標準法にて作成された。
【0051】
【表4】

【0052】
乾燥した手抄き紙が調整された(23℃;50% 相対湿度)。実験に使用された関連する試験方法は、表5に示した。測定は各実施例に対して最小6個の試験片で行われた。面内引裂き強度は、TappiJ.83(2000),4,p.83−88に記載された手順にしたがってMTS400引張試験機にて測定した。
【0053】
【表5】

【0054】
グラム数、PCCおよび手抄き紙の厚みを表4に示した。同じ重量ベースで、複合製品も参照サンプルも同じ厚みを示した。一方で、グラム数が減少すると、複合製品の厚みが著しく減少した。
【0055】
種々のPCC組成における手抄き紙のその他の性質が表6及び7で比較される。新規複合製品の嵩は、従来の参照中間品から作られた手抄き紙のそれと同等である。
【0056】
同じグラム数において、小繊維微粒子およびフィラー添加品から作られた新規複合製品(実施例8−10、13および14)の曲げ剛性は、小繊維微粒子を添加してない参照手抄き紙(実施例15)よりも高かった。新規複合製品において小繊維微粒子の割合を30%から15%に減ずると、曲げ剛性が低下する(実施例9および8)。実施例10、11および12を比べると、手抄き紙のグラム数が80g/mから40g/mへ減少すると、新規複合製品の曲げ剛性が著しく低下する。
【0057】
【表6】

【0058】
顔料組成の関数としての手抄き紙の透過率は、また表6に示された。参照の手抄き紙(実施例15)は、繊維とフィラーの開放ネットワークからなり、最大の透過率を示す。小繊維微粒子と顔料のネットワークからなる手抄き紙(実施例8〜14)は、非常に低い空気透過率を示す。新規複合製品の透過率は繊維系のシートに比べて著しく低い。これは、網状構造における曲がりくねった径路と閉鎖した孔に起因し、小繊維微粒子が孔構造の接続性を妨げるマトリクスと密接に結合されていることを示唆している。
【0059】
新規複合製品および参照シートの引張強度と内部結合強度は、表7に示される。新規複合手抄き紙(実施例8−14)は、繊維添加系の参照紙(実施例15)と比べて、著しく高い引張指数及びz−方向結合強度を示す。新規複合サンプルの中で、小繊維微粒子組成および再生セルロース繊維との強化の低下は上質紙の結合強度を悪化させるように思われる。
【0060】
【表7】

【0061】
新規複合製品に対する面内引裂き指数および破壊靭性は、表7に示されるように、従来の繊維添加系参照シートに比べて高い。新規複合品手抄き紙における小繊維微粒子の添加量が30%から15%に低下すると、欠陥個所の破壊を防ぐ能力は低下する。80g/mのグラム数において、新規複合手抄き紙に対する繊維の強化能力は次の順序で低下する:軟質木材>再生セルロース>ユーカリ繊維。
【0062】
新規複合手抄き紙は、繊維添加系参照手抄き紙と比べて著しく高い引張強度を示す。これはマイクロ微細粒子ネットワークのモジュラス、マイクロ微粒子間結合強度、および比結合面積を助長するためである。再生セルロース繊維で強化すると、これら繊維の低いモジュラスと適合性のために複合手抄き紙の引張強度が低下する。一方で、軟質木材長繊維強化は、改良された結合とネットワーク内の繊維の活性化のために、引張強度を増大させる。活性化により、網状構造において負荷を運搬不能の元々縮れたり、曲がったり、変形した繊維のセグメントが、網状構造の積極的に負荷を負う成分へと変性される。
【0063】
複合材料の破壊靭性は繊維長、結合密度、繊維強度および結合強度の関数である。小繊維微粒子および顔料ネットワークにおいて、小繊維微粒子の高いモジュラス、増大した結合面積及び小繊維微粒子間の結合強度は、繊維系のネット枠構造とは対照的に、高い破壊靭性に対して貢献する。しかし乍、新規複合手抄き紙の破壊耐性は、中間品に使用された繊維の特徴およびネットワーク中の小繊維微粒子篩分け分の量に著しく依存する。軟質木材のような結合する適合した長繊維は、高小繊維微粒子割合と同様に、新規複合材料の欠陥破壊抵抗力を改善するのに貢献する。
【0064】
表7はまた、光散乱と白度は、従来の上質紙において高フィラー組成で既に増大しているが、新規複合材料でさらに高いことを表す。新規複合手抄き紙における小繊維微粒子の割合の減少は光散乱に否定的に働く。新規複合手抄き紙の白度および光散乱に顕著な改良は、光学的に活性なマイクロポア(微細孔)の数の増加に起因する。マイクロポアの形成は走査型電子顕微鏡による検討によって確認され得る。統合プロセスにおいて、フィブリル・ネットワークの収縮は抑えられ、外見上光散乱を起こす大きさの多数のマイクロポアの形成を導くように思われる。新規複合手抄き紙における小繊維微粒子の量を減ずると、紙の光散乱性が悪化する。このように、小繊維微粒子の分率は、複合手抄き紙の光散乱能を増大させるに決定的である。
【0065】
本発明は、上記の実施例に限定される意思はなく、以下の請求の範囲に規定された発明の範囲から逸脱しなければ、種々の変更を加えることは可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の主成分が40〜80重量%の顔料、セルロース系小繊維微粒子の割合が15〜40重量%、セルロース繊維の割合が5〜30重量%であることを特徴とする、セルロース繊維、セルロース系小繊維微粒子および顔料を含む改良複合製品。
【請求項2】
主成分が、顔料の割合が45〜65重量%、好ましくは50〜60重量%、セルロース系小繊維微粒子の割合が20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%、セルロース繊維の割合が5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載の複合製品。
【請求項3】
顔料が沈降性炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、粘土、タルク、酸化チタン、ケイ酸塩、有機顔料、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の複合製品。
【請求項4】
セルロース繊維が、軟質木材、硬質木材、或いは非木材系繊維材料、合成繊維、並びにそれらの混合物から作られた化学、化学機械、および機械パルプ繊維からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の複合製品。
【請求項5】
さらに少量の、保持助剤、サイズ剤、または糊剤の如き既存の製紙用薬品の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の複合製品。
【請求項6】
セルロース繊維、セルロース系小繊維微粒子および顔料を水溶液中で混合する工程および水溶液を脱水して複合製品を作る工程を備える上記成分を含む改良複合製品の製造方法であって、最終製品中の顔料の割合が40〜80重量%、セルロース系小繊維微粒子の割合が15〜40重量%、セルロース繊維の割合が5〜30重量%にて水溶液中で各成分を混合することを特徴とする。
【請求項7】
最終製品中の顔料の割合が45〜65重量%、好ましくは50〜60重量%、セルロース系小繊維微粒子の割合が20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%、セルロース繊維の割合が5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%にて水溶液中で各成分を混合することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
顔料が、沈降性炭酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、粘土、タルク、酸化チタン、ケイ酸塩、有機顔料、並びにそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
セルロース繊維が、軟質木材、硬質木材、或いは非木材系繊維材料、合成繊維、並びにそれらの混合物から作られた化学、化学機械、および機械パルプ繊維からなる群から選択されることを特徴とする請求項6〜8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
75μm直径の丸孔または200μmスクリーンの繊維長篩を通過することができる、繊維から誘導された粒子からなるセルロース系小繊維微粒子を使用することを特徴とする請求項6〜9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
木材パルプ、非木材パルプまたは植物質の如きセルロース系繊維材料の機械処理によってセルロース系小繊維微粒子を製造することを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
セルロース系小繊維微粒子を前記機械処理の前、間または後に薬品で処理することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
セルロース繊維と顔料の混合物を機械処理することによって、セルロース系小繊維微粒子を製造することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
既存または改良した紙またはボード製造機において、0.5〜20%、好ましくは1〜14%、さらに好ましくは2〜10%の固形分濃度の水溶液を調製し、前記水溶液を脱水することを特徴とする請求項6〜13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
保持助剤、サイズ剤または糊剤の如き既存の製紙用薬品を少なくとも1種、少量添加することを特徴とする請求項6〜14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
カレンダー、コーティング、サイジングその他の同様な方法によって複合製品を仕上げ処理することを特徴とする請求項6〜15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
印刷または筆記用紙に使用する性質を有する40〜220g/mのグラム数を有する複合製品を製造することを特徴とする請求項6〜16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
本質的にセルロース繊維からなる少なくとも1層および本質的に顔料とセルロース系小繊維微粒子とから形成される網状物からなる1層を含む層状製品を製造することを特徴とする請求項6〜17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
セルロース系小繊維微粒子、カーボン・ナノチューブを単独またはセルロース繊維との組合わせ、および磁性粒子の混合物から電子印刷用紙を製造することを特徴とする請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−530021(P2011−530021A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521608(P2011−521608)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050644
【国際公開番号】WO2010/015726
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(509335384)ウーペーエム−キュンメネ コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】UPM−Kymmene Corporation
【Fターム(参考)】