説明

改良飲料

【課題】本発明は、カテキンを含む飲料に関する。とりわけ本発明は、カテキンを含む改良飲料を提供するための水溶性ゴムの使用に関する。
【解決手段】本発明は、飲料の0.01から1重量%の量のカテキンであって、少なくとも81重量%のエピカテキンを含むカテキン;及びアミン基を含むポリマー、を含む飲料であって、前記ポリマーが水溶性ゴムを含むことを特徴とする、飲料を提供する。水溶性ゴムの使用は、健康上の利益の達成のために必要とされるカテキンの毎日の取り込みを消費者に適合することを可能にし、優れた外観及び/または味の特性を有する飲料の形成を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテキンを含む飲料に関する。とりわけ本発明は、カテキンを含む改良飲料を提供するための水溶性ゴムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は2000年に亘り飲料としてよく消費されており、水を除いて人類に消費される最も一般的な飲料である。茶は非常に新鮮であり、温めても冷やしても給仕でき、多年に亘り市場で入手可能となっている。例えばLipton(登録商標)は、茶の世界的なリーディングブランドであり、Uniliver社により110カ国を超えて入手可能となっている
【0003】
通常、茶は血管機能の改善、疲労防止、コレステロール濃度の低下、及び精気の増大の機能を果たすと報告されている。茶の健康上の利益は、フラボノイドとして既知である高濃度の天然の抗酸化剤の存在に大きくよるものであると解される。緑茶と紅茶の両者が、カテキン、フラボノール、及びテアフラビンを含むことができるフラボノイドに富んでいる。
【0004】
最近、過度の実験室での研究と疫学的研究により、茶に存在する抗酸化剤が、各種の疾患の危険を減少するであろうことが示されている。特に、茶に見出されるエピガロカテキンガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECG)、及びエピガロカテキン(EGC)を含むカテキンが、生理学的な機能にポジティブに働くことが示されており、抗アレルギー剤及び脳機能の活性剤としてのその使用が提案されている。
【0005】
茶の健康上の利益のあるものは、一日当たり三杯程度の低さの消費割合で明らかである(例えば、U.Peters等, “Does tea affect cardiovascular disease? A meta-analysis.” American Journal of Epidemiology, 2001, 154: pp. 495-503)が、多くの人は、長期間の基準でこの穏やかな消費割合を達成していない。
【0006】
カテキンの濃度を増大した飲料を提供するいくつかの試みがなされている。しかしながら残念なことに、飲料中のカテキンの量を増大すると、安定性、見掛け、及び味の特性が劣った製品を導くことになる。
【0007】
WO2009/016018A1(Unilever)として出版された国際特許出願は、アミン基を含むポリマーで錯体形成することによって安定化された高濃度のポリフェノール(カテキンを含む)を含む組成物(飲料を含んでも良い)を開示し、それによってカテキンの苦味及び/または渋みを減少または除去した。しかしながら、結果として生ずる錯体は粒子の形態で存在し、沈殿しやすく及び/または濁った外観を有する飲料を生じてしまい、それは消費者のあるものには所望されないであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2009/016018A1(Unilever)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】U.Peters等, “Does tea affect cardiovascular disease? A meta-analysis.” American Journal of Epidemiology, 2001, 154: pp. 495-503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして本出願人は、高濃度のカテキンの利益を送達し、特に苦味に関して改良された味を有し、沈殿物を形成せず、または濁った外観を有さない飲料を提供する必要性が存在することを認識していた。本出願人は、これらの必要性の一つ以上が、カテキンと可溶性の錯体を形成するゴムに基づく特別なクラスの錯化剤を使用することによって満たされるかもしれないということを見出した。驚くべきことに可溶性ゴムの使用は、高濃度のカテキンが取り込まれた際であっても、優れた外観及び/または味の特性を有する飲料の形成を可能にする。
【0011】
試験及び定義
飲料
ここで使用される用語「飲料」は、ヒトの消費に適した実質的に水性の飲むことができる組成物を指す。好ましくは飲料は、前記飲料の少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは95から99.9重量%の水を含む。
【0012】
茶ベースの飲料
ここで使用される用語「茶ベースの飲料」は、前記飲料の少なくとも0.01重量%の茶固形分を含む飲料を指す。好ましくは茶ベースの飲料は、0.04から3%、より好ましくは0.06から2%、最も好ましくは0.1から1%の茶固形分を含む。
【0013】
茶固形分
ここで使用される用語「茶固形分」は、Camellia sinensis var. sinensis及び/またはCamellia sinensis var. assamica植物の葉から抽出可能な乾燥材料を指す。前記葉は、それらが「紅茶」製造の初期工程の間で放出される特定の内因性酵素によって酸化される「発酵」工程と称される工程に供される。この酸化は、オキシダーゼ、ラッカーゼ、及びペルオキシダーゼといった内因性酵素の作用によって補われて良い。別法として前記葉は、一部が発酵されてもよく(「ウーロン茶」)または実質的に発酵されないまま維持されても良い(「緑茶」)。
【0014】
茶抽出物
ここで使用される用語「茶抽出物」は、茶材料の抽出から得られる溶液を指し、濃縮または乾燥されている溶液を包含する。好ましくは茶抽出物は水溶液である。
【0015】
カテキン
ここで使用される用語「エピカテキン」は、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、及びそれらの混合物を指す。用語「非エピカテキン」は、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、及びそれらの混合物を指す。用語「カテキン」は、エピカテキン、非エピカテキン、及びそれらの混合物に対する一般的な用語として使用される。
【0016】
ゴム
ここで使用される用語「ゴム」は、溶液の流動学的特性を改変可能であるタンパク質−ポリサッカリド接合体を指す。ゴムが合成タンパク質−ポリサッカリド接合体を含むことは、本発明の範囲内にある。しかしながら、ゴムは天然ゴムであることが好ましく、より好ましくは植物ゴムである。
【0017】
植物ゴム
ここで使用される用語「植物ゴム」は植物由来のゴムを指し、天然ゴムまたは変性天然ゴムであって良い。そのようなゴムは、植物の木材エレメントまたは種子の被覆でほとんど見出される。
【0018】
水溶性ゴム
ここで使用される用語「水溶性ゴム」は、水中でコロイド溶液または分散物を形成できるゴムを指す。
【0019】
アラビアゴム
ここで使用される用語「アラビアゴム」は、Acacia属の木、特にAcacia Senegal及びAcacia seyalの茎及び枝から得られる食用の乾燥滲出物を指す。アラビアゴム(INS No. 414, E414)は、複雑な化学的組成を有する高度に不均一なタンパク質性ポリサッカリドであり、アラビノガラクタン分画、アラビノガラクタン−タンパク質分画、及び糖タンパク質分画を含むいくつかの分画からなることが示されている。アラビアゴムの主たる構造的特徴は、1,6−結合によって主鎖に結合している2から5の1,3−結合したβ−D−ガラクトピラノシルの側鎖を有する、1,3−結合したβ−D−ガラクトピラノシル単位の骨格である。主鎖と側鎖の両者は、アラビノース、ガラクトース、ラムノース、グルクロン酸残基を含む。側鎖はほとんどグルクロン酸または4−O−メチルグルクロン酸残基の末端を有する。更に、前記構造の内部部分を形成する材料内に存在する少量のタンパク質がある。
【0020】
他の用語
ここで使用される用語「〜を含む」は、「本質的に〜からなる」及び「〜からなる」の用語を包含する。ここに含まれる全てのパーセンテージは、他に記載がなければ重量基準で計算される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
第一の特徴点では、本発明は、
飲料の0.01から1重量%の量のカテキンであって、少なくとも81重量%のエピカテキンを含むカテキン;及び
アミン基を含むポリマー
を含む飲料であって、前記ポリマーが水溶性ゴムを含むことを特徴とする、飲料を提供する。
【0022】
本出願人は、水溶性ゴムの使用が、健康上の利益の達成のために必要とされるカテキンの毎日の取り込みを消費者に適合することを可能にし、優れた外観及び/または味の特性を有する飲料の形成を可能にすることを見出した。
【0023】
カテキンの天然の供給源(例えば茶葉、ココア豆)は、主としてエピカテキンを含む。それ故、本発明に係る飲料では、そこに含まれるカテキンの少なくとも81重量%がエピカテキンを含む。好ましくはカテキンの少なくとも82重量%がエピカテキンを含み、より好ましくはカテキンの少なくとも84重量%がエピカテキンを含む。
【0024】
さらなる特徴点では、水溶性ゴムを含む物質とカテキンを含む物質とを組み合わせる、飲料の製造方法を提供する。
【0025】
そのような方法は、実質的に透明で沈殿物が存在しない飲料の形成を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る飲料は、溶解形態で維持された高濃度のカテキンを含む。理論的に裏付けられることを望まないが、水溶性ゴムはカテキンと相互作用し、可溶性の錯体を形成すると推測される。
【0027】
欧州特許EP1361798B1(Kao Corporation)は、水溶性ポリマーの添加が、高濃度の非エピカテキンを含む飲料の苦味と渋みを低減できることを開示している。しかしながら、カテキンの健康上の利益をサポートするデータを提供する研究は、典型的に主としてエピカテキンを含むカテキンの供給源(たとえば緑茶飲料)をフォーカスする傾向にある。それ故本発明の飲料はエピカテキンと非エピカテキンとを含み、非エピカテキンの量は前記飲料の0.014重量%未満である。より好ましくは非エピカテキンの量は前記飲料の0.0135重量%未満である。
【0028】
好ましくは水溶性ゴムは一つ以上の植物ゴムを含み、より好ましくは前記ゴムは種ゴム及び/または滲出物ゴムを含み、最も好ましくは滲出物ゴムを含む。典型的な植物ゴムの例として、アラビアゴム、ガッティ(ghatti)ゴム、トラガカントゴム、カラヤゴム、メスキートシードゴム、ニームゴム、ピーチゴム、またはそれらから由来するゴムの一つ以上が含まれる。水溶性ゴムがアラビアゴムを含むことが特に好ましい。
【0029】
前記飲料の全カテキン含量は好ましくは、消費者が一度または二度の給仕で健康上の利益を達成するのに必要とされるカテキンの毎日の取り込みに適合できるようなものである。かくして、前記飲料の給仕は少なくとも50mgのカテキンを含むことが好ましく、より好ましくは150mg、最も好ましくは300mgから1gのカテキンを含む。輸送と扱いの簡便性のため、前記飲料は500g未満の重量を有することが好ましい。
【0030】
高濃度のゴムは、所望されない粘性の飲料を生ずるかもしれない。良好な口当たりの飲料を達成するために、ゴムは前記飲料の重量の0.01%から1%を占めることが好ましく、好ましくは0.05から0.5%、より好ましくは0.05から0.3%、最も好ましくは0.1から0.2%を占める。
【0031】
本出願人は、カテキンと組み合わせた水溶性ゴムの使用が、苦味のない茶ベースの飲料を送達するのに良く適していることを見出した。かくして前記飲料は茶ベースの飲料であることが好ましく、より好ましくは緑茶ベースの飲料である。
【0032】
微視的安定性及び味の観点から、前記飲料は酸性のpHを有することが好ましい。特にpH(20℃で)は2から7、好ましくは2から5、より好ましくは2.5から4.5、最も好ましくは3から4であって良い。
【実施例】
【0033】
本発明は、以下の非制限的な実施例を参考にしてここで説明されるであろう。
【0034】
実施例1
本実施例では、実質的に透明で沈殿物を含まない飲料を生産する能力について、いくつかの候補ポリマーを評価した、選択したポリマーを更に、カテキンの苦味をマスクする能力についても試験した。Premium Exports Ltd社(スリランカ)製のCeytea(登録商標)を、全てのサンプルを処方するために使用した。Ceytea(登録商標)は、270mg/gの典型的なカテキン含量を有する緑茶パウダーである。
【0035】
苦味と渋みの評価
等量のカテキンを含む四種のサンプル(アラビアゴム、WPI、WPI+ペクチン、ペクチン)の苦味を、提示されたサンプルの組成を知らされていない8人の訓練を受けていない被験者によって測定した。その苦味と渋みについてサンプルを定性的に評価した。その結果が表1に示されている。
【0036】
【表1】

【0037】
表1におけるデータから観察できる通り、試験されたポリマーのいくつかは、カテキンと相互作用して不溶性の錯体を形成し、非所望の乳白色の外観及び/または沈殿物を有する製品を生ずることが見出された。ペクチン(アミン基を含まないポリマー)とアラビアゴムは、沈殿物も乳白色の外観も有さない許容可能な製品を形成した。しかしながら、ペクチンを使用した場合、製品は顕著に粘性であり、わずかに苦味と渋みを維持した。苦味と渋みをマスクする最大の能力はアラビアゴムで観察され、このポリマーを使用して調製された製品は、粘度にネガティブな影響を有さないまろやかな口当たりを更に有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料の0.01から1重量%の量のカテキンであって、少なくとも81重量%のエピカテキンを含むカテキン;及び
アミン基を含むポリマー
を含む飲料であって、前記ポリマーが水溶性ゴムを含むことを特徴とする、飲料。
【請求項2】
前記カテキンがエピカテキンと非エピカテキンとを含み、非エピカテキンの量が飲料の0.014重量%未満である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
前記水溶性ゴムが一つ以上の植物ゴムを含む、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記水溶性ゴムがアラビアゴムを含む、請求項3に記載の飲料。
【請求項5】
前記水溶性ゴムがアラビアゴムである、請求項3に記載の飲料。
【請求項6】
前記ゴムが飲料の0.01から1重量%を占める、請求項1から5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
茶ベースの飲料である、請求項1から6のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
2から7のpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項9】
前記水溶性ゴムを含む物質とカテキンを含む物質とを組み合わせる、請求項1から8のいずれか一項に記載の飲料の製造方法。
【請求項10】
前記カテキンを含む物質が茶抽出物である、請求項9に記載の方法。