説明

改装ドア

【課題】 断面L字状段部をなす軸支スペースが存在し且つ左右縦枠が異なる見込幅と異なる断面形状を有する既設ドア枠を改装対象としてカバー工法の改装をなし得るようにした改装ドアを提供する。
【解決手段】 既設ドア枠1に固定した取付下地を介して、該既設ドア枠1に矩形一体の新設ドア枠2をネジ5止めして改装を行うとともに取付下地を、既設ドア枠1の戸先側縦枠11、上枠14及び下枠15用の断面S字状又は断面L字状をなす板状部材3aと、既設ドア枠1の吊元側縦枠用12の上記軸支スペース13を埋めてこれに収容した柱状部材3bとの異形状2種のものとすることによって、該取付下地を配置した状態で嵌め込み配置した新設ドア枠2の背面に沿う形状として、該新設ドア枠2をネジ5止めによって固定する。柱状部材3bは断面C字状に形成するとともにその長手方向に所定ピッチの板状補強部材38を嵌合して溶着することによって、その強度を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設のドアを撤去した既設ドア枠にカバー工法によって新設ドア枠を配置し且つ該新設ドア枠に新設ドアを吊支持して改装した改装ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
この種カバー工法による改装ドアとして、下記特許文献が知られており、これによれば、例えば、断面形状を、室内側見付面と室外側見付面を、その見付方向中間位置のドア戸当部を介して段差状に配置して左右対称の吊元側と戸先側の縦枠及び上下対称の上枠と下枠を備えた建物設置の既設ドア枠に対して、同じく左右の縦枠、上枠及び下枠を備えた新設ドア枠を被覆し且つその吊元側縦枠にヒンジを介して新設ドアを吊支持して改装したものとされ、このとき該新設ドア枠は、その左右の縦枠、上枠及び下枠を、室内側見付面、室内側見込面及びこれらの間の気密材受溝を一体に配置してその縦枠及び上枠を同一断面形状とし、下枠をこれに類似断面形状とする一方、その固定を、縦枠及び上枠において既設ドア枠の縦枠及び下枠に対して取付下地を介して、下枠において既設ドア枠の下枠に直接にそれぞれ固定したものとし、該上記縦枠及び上枠の取付下地は、既設ドア枠の縦枠及び上枠の室内側見付面、室内側見込面、戸当段部、室外側見込面に沿うとともに室外側見付面に至り且つ室内側見付面の位置において新設ドア枠の縦枠及び上枠の背面に弾発的に対接する弾発対接片を傾斜配置した金属製のものとされる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−323734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、ドア改装を必要とする多くの現場に対応して、カバー工法でありながら、比較的簡易な工事により工事期間を短縮したドア改装を行なうことができるとともに、カバー工法の欠点であるドア開口の狭小化を可及的に抑制し、例えば縦枠が傾斜して既設ドア枠に歪みが生じている場合にも高機能化ドアを確実に設置した好ましい改装ドアとすることができる。
【0005】
しかし乍ら、ドア改装を必要とする現場は、常に上記のような比較的断面形状がシンプルな既設ドア枠が設置されているとは限らず、例えば、左右の吊元側と戸先側の縦枠、上枠及び下枠を備え且つ上記左右の縦枠のうち吊元側の見込面を戸先側の見込面より短寸化するとともに該見込面の室外側に断面L字状段部をなすようにドア本体を回動自在に軸支してその吊元側端部を受入れ支持した軸支スペースを配置することによって該左右の吊元側と戸先側で異なる見込幅にして異なる断面形状を有するものがあり、このような既設ドア枠は、特に断面L字状段部をなす軸支スペースが存在すること、左右縦枠が異なる見込幅と異なる断面形状を有することによって、上記カバー工法の構造では、これらに対応することが不可能であり、従ってその改装をなし得ないという結果になる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、このように断面L字状段部をなす軸支スペースが存在し且つ左右縦枠が異なる見込幅と異なる断面形状を有する既設ドア枠を改装対象として、カバー工法のメリットを維持しながら可及的簡易に該カバー工法の改装をなし得るようにした改装ドアを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に沿って本発明は、既設ドア枠に固定した取付下地を介して、該既設ドア枠に矩形一体の新設ドア枠を嵌め込むように配置してネジ止めすることによって、その改装を行うようにするとともに取付下地を、既設ドア枠の戸先側縦枠、上枠及び下枠用の断面S字状又は断面L字状をなす板状部材と、既設ドア枠の吊元側縦枠用の上記軸支スペースを埋めてこれに収容した柱状部材との異形状2種のものとすることによって、該取付下地を配置した状態で嵌め込み配置した新設ドア枠の背面に沿う形状として、その可及的に安定且つ確実な取付けをなし得るようにしたものであって、即ち請求項1に記載の発明を、左右の吊元側と戸先側の縦枠、上枠及び下枠を備え且つ上記左右の縦枠のうち吊元側の見込面を戸先側の見込面より短寸化するとともに該見込面の室外側に断面L字状段部をなすようにドア本体を回動自在に軸支してその吊元側端部を受入れ支持した軸支スペースを配置することによって該左右の吊元側と戸先側で異なる見込幅にして異なる断面形状を有する建物設置の既設ドア枠に対して、該既設ドア枠を覆うように固定した取付下地を介して、同じく左右の吊元側と戸先側の縦枠、上枠及び下枠を備えた新設ドア枠を被覆し且つその吊元側縦枠に新設ドア本体をヒンジによって吊支持することによってカバー工法の改装を行った改装ドアであって、該新設ドア枠を、室内外の見込面とこれらの間の気密材受溝を備えた左右の縦枠、上枠及び下枠によって矩形一体に形成し、上記取付下地を、既設ドア枠の戸先側縦枠、上枠及び下枠においてその室内側見込面又は室外側見付面に固定することによってそれぞれ室外側見付面の中間位置から室外側に向けて突出した断面S字状乃至断面L字状の板状部材によるものとする一方、吊元側縦枠において既設ドア枠の吊元側縦枠の見込面から既設ドア枠面内方向に上記気密材受溝幅に応じた凹陥スペースを残して上記軸支スペースを埋めるように該軸支スペースに収容した柱状部材によるものとし、これら板状部材及び柱状部材の取付下地に対して上記新設ドア枠をネジ固定してなることを特徴とする改装ドアとしたものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、室内側見付面に見切り処理を施すことによって仕上りを可及的良好として改装ドアとしての品質を向上するように、これを、上記新設ドア枠の吊元側と戸先側縦枠及び上枠に、既設ドア枠の吊元側及び戸先側縦枠の見込面にこれら吊元側と戸先側縦枠及び上枠とともにネジ固定して室内側見付面をそれぞれ被覆する見切り用のアングル材を追加的に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアとしたものである。
【0009】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記既設ドア枠の吊元側縦枠に用いる取付下地を、可及的に簡易な構造にして新設ドア枠の取付下地として強度に優れたものとするとともに該取付下地を室内側に開口を備えたものとすることによって、例えば既設ドア枠の吊元側縦枠に該開口を用いてネジ止め、溶着等による取付下地の固定をなし得るようにして、改装作業の作業性を確保したものとするように、これを、上記柱状部材による取付下地を、既設ドア枠面内側開口の室外端に室内側に向けた折返し条を備えて既設ドア枠の見込面の室外側に面内方向に開口した凹陥スペースを備えた断面C字状に形成し、上記折返し条を、新設ドア枠における吊元側縦枠のネジ固定部位としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドアとしたものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記開口を用いた取付下地の固定をなし得るようにして、改装作業の作業性を損なうことなく、上記断面C字状とした柱状部材の強度を更に可及的に向上したものとするように、これを、上記断面C字状の柱状部材による取付下地を、該柱状部材を補強するように長手方向所定ピッチの補強部材を配置して形成してなることを特徴とする請求項3に記載の改装ドアとしたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、該補強部材による補強効果を可及的高度に確保するとともに上記新設ドア枠の気密材受溝との衝接を可及的簡易に回避して、良好な納まりを確保したものとするように、これを、上記補強部材を、上記柱状部材の断面に沿うとともに既設ドア枠面内側に凹陥スペースを残すように室内外の見付幅を異にする板状補強部材としてなることを特徴とする請求項4に記載の改装ドアとしたものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、取付下地を躯体側に押圧し、その状態で凹陥スペースから該ナットを連結片に対して溶着し、該取付下地を躯体との間で突っ張り状態として、ヒンジを介した新設ドア本体の荷重によって該ヒンジ位置が捩れたり歪んだりすることなく、新設ドア本体の吊支持を安定且つ確実に行って、捩れや歪による新設ドア本体の開閉不良等の可能性を解消するものとするように、これを、上記取付下地を、その新設ドア本体を吊り支持した新設ドア枠の吊元側縦枠のヒンジ位置又はその近傍位置において、該取付下地を貫通するボルトに螺装したナットを取付下地に溶着することによって、該ヒンジ位置又はその近傍位置を躯体との間で突っ張り状態としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の改装ドアとしたものである。
【0013】
本発明は、これらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、既設ドア枠に固定した取付下地を介して、該既設ドア枠に矩形一体の新設ドア枠を嵌め込むように配置してネジ止めすることによって、その改装を行うようにするとともに取付下地を既設ドア枠の戸先側縦枠、上枠及び下枠用の断面S字状又は断面L字状をなす板状部材と、既設ドア枠の吊元側縦枠用の上記軸支スペースを埋めてこれに収容した柱状部材との異形状2種のものとすることによって、該取付下地を配置した状態で嵌め込み配置した新設ドア枠の背面に沿う形状として、その可及的に安定且つ確実な取付けをなし得るようにして、上記断面L字状段部をなす軸支スペースが存在し且つ左右縦枠が異なる見込幅と異なる断面形状を有する既設ドア枠を改装対象として、カバー工法のメリットを維持しながら可及的簡易に該カバー工法の改装をなし得るようにした改装ドアを提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、室内側見付面に見切り処理を施すことによって仕上りを可及的良好として改装ドアとしての品質を向上したものとすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記既設ドア枠の吊元側縦枠に用いる取付下地を、可及的に簡易な構造にして新設ドア枠の取付下地として強度に優れたものとするとともに該取付下地を室内側に開口を備えたものとすることによって、例えば既設ドア枠の吊元側縦枠に該開口を用いてネジ止め等による取付下地の固定をなし得るようにして、改装作業の作業性を確保したものとすることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記開口を用いた取付下地の固定をなし得るようにして、改装作業の作業性を損なうことなく、上記断面C字状とした柱状部材の強度を更に可及的に向上したものとすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、該補強部材による補強効果を可及的高度に確保するとともに上記新設ドア枠の気密材受溝との衝接を可及的簡易に回避して、良好な納まりを確保したものとすることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、取付下地を躯体側に押圧し、その状態で凹陥スペースから該ナットを連結片に対して溶着し、該取付下地を躯体との間で突っ張り状態として、ヒンジを介した新設ドア本体の荷重によって該ヒンジ位置が捩れたり歪んだりすることなく、新設ドア本体の吊支持を安定且つ確実に行って、捩れや歪による新設ドア本体の開閉不良等の可能性を解消するものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、Aは改装ドアであり、該改装ドアAは、建物設置の既設ドア枠1に対して、該既設ドア枠1を覆うように固定した取付下地3a、3bを介して新設ドア枠2を被覆し且つその吊元側縦枠22に新設ドア本体6をヒンジ61によって吊支持することによってカバー工法の改装を行ったものとしてある。
【0021】
このとき既設ドア枠1は、左右の吊元側と戸先側の縦枠11、12、上枠14及び下枠15を備え且つ上記左右の縦枠11、12のうち吊元側の見込面を戸先側の見込面より短寸化するとともに該見込面の室外側に断面L字状段部をなすようにドア本体、即ち既設ドア本体を回動自在に軸支してその吊元側端部を受入れ支持した軸支スペース13を配置することによって該左右の吊元側と戸先側で異なる見込幅にして異なる断面形状を有するものとしてある。
【0022】
即ち、既設ドア枠1は、図3及び図4の如くに、その吊元側縦枠12を、見込面と室内側見付面をなし且つ見込面の室外端に見付方向に突出した突条122を備えて断面C字状をなすC字部材121と、該C字部材121の背面に先端を室外側に向けて折曲した折曲片を重合し、該折曲片から建物躯体側に突出するように断面L字状をなし、室外側先端を上記C字部材より室外側に突出するとともにその室外端を更に逆L字状に折曲して室外側見切りとした断面L字状をなすL字部材123とを一体化して、上記C字部材121の突条122と該断面L字部材123によって区画して、上記断面L字状の段部をなすように軸支スペース13を配置したものとしてある。戸先側縦枠11、上枠14は、その見込寸法を共通とするそれぞれ矩形断面のものとする一方、下枠15は上面を平坦として見込寸法を戸先側縦枠11乃至上枠14より小さく、略1/2程度とした断面C字状のものとしてある。このとき該戸先側縦枠11、上枠14は、その室外側見付面を、上記吊元側縦枠12の上記室外側見切りと同一面をなすようにその配置を行い、これら戸先側縦枠11、上枠14と上記下枠15は、その室内側見付面を、上記吊元側縦枠12の室内側見付面と同一面をなすようにその配置を行ってあり、従って既設ドア枠1は、その横断面において、吊元側縦枠12の室外側見付面を、上記C字部材121の突条122とするのに対して、戸先側縦枠11の室外側見付面は、上枠14とともに該突条122より室外側に突出、例えば2cm程度突出し、これによって上記軸支スペース13は、既設ドア枠1の室外側見付面より該突出幅に応じて凹陥するとともに上記C字部材121の突条122の位置からやや室内側に凹陥した凹陥部を備えた、上記断面L字状の段部をなすようにしたものとしてある。図中131は、該軸支スペース13に存在し、ドア改装時に既設ドア本体の撤去後に切断した撤去した該既設ドア本体の支軸である。
【0023】
該既設ドア枠1を被覆した新設ドア枠2は、同じく左右の吊元側と戸先側の縦枠21、22、上枠23及び下枠24を備えたものとしてあり、このとき該新設ドア枠2は、これを、室内外の見込片25と、これらの間の気密材受溝26を備えた左右の縦枠21、22、上枠23及び下枠24の各突合せ部を溶着して矩形一体に枠組み形成したものとしてある。
【0024】
本例にあって新設ドア枠2は、例えば鋼材に曲げ加工を施して形成した鋼製のものとして、吊元側縦枠22を、室内外の見込面とこれらの間の上記気密材受溝26による断面S字状に配置するとともに上記軸支スペース13を覆う程度の幅広の室外側見付片27を配置したものとし、戸先側縦枠21、上枠23及び下枠24を、該吊元側縦枠22の該室外側見付片27を除いた、室内外の見込片25と気密材受溝26によるそれぞれ断面S字状をなすものとしてあり、本例にあって該戸先側縦枠21、上枠23及び下枠24は、これらを断面を共通とした共通部材によるものとしてある。気密材受溝26には気密材261を配置し、該気密材261が後述の新設ドア本体6の外周の室内側に対接することによって新設ドア枠2における同一の気密面をなすようにしてある。
【0025】
このとき本例の新設ドア枠2は、その吊元側と戸先側縦枠22、21及び上枠23に、既設ドア枠1の吊元側及び戸先側縦枠12、11の見込面にこれら吊元側と戸先側縦枠22、21及び上枠23とともにネジ5固定して室内側見付面をそれぞれ被覆する見切り用のアングル材28を配置したものとしてあり、該アングル材28は、同じく鋼製のものとし、L字状一方の突片を既設ドア枠1におけるこれら縦枠及び上枠の室内側見込面に重合し、L字状他方の突片をこれら縦枠及び上枠の見付面の室内側に重合して、その配置を行ってあり、該配置は、後述の新設ドア枠2の固定、本例にあってはネジ5固定とともに見付面に固定するものとしてある。
【0026】
上記取付下地は、板状部材3aと柱状部材3bの異形状2種のものとしてあり、即ち取付下地3a、3bは、これを、既設ドア枠1の戸先側縦枠11、上枠14及び下枠15において室内側見込面又は室外側見付面に固定することによってそれぞれ室外側見付面の中間位置から室外側に向けて突出した断面S字状乃至断面L字状の板状部材3aによるものとする一方、吊元側縦枠12において既設ドア枠1の吊元側縦枠12の見込面から既設ドア枠1面内方向に上記気密材受溝26幅に応じた凹陥スペースを残して上記軸支スペース13を埋めるように該軸支スペース13に収容した柱状部材3bによるものとし、これら板状部材3a及び柱状部材3bによる取付下地に対して上記新設ドア枠2をネジ5固定してある。
【0027】
本例にあって既設ドア枠1の戸先側縦枠11及び下枠15における取付下地は、該戸先側縦枠11乃至下枠15の見込面の見込方向中間位置から室外側を覆う室内側の取付片31と、その室外側先端を戸先側縦枠11乃至下枠15の室外側見付面に沿って、新設ドア枠2の上記気密材受溝26幅に応じた幅とした屈曲片32と、該屈曲片32の幅方向先端から室外側に向けた室外側の突出片33とを備えたそれぞれ断面S字状の板状部材3aとし、また既設ドア枠1の上枠14における取付下地は、該上枠14の室外側見付面に沿う取付片31と、該取付片31の幅方向先端から室外側に向けた突出片33とを備えた断面L字状の板状部材としてあり、このとき該取付下地は、その室外側の突出片乃至突出片33を、上記新設ドア枠1の戸先側縦枠11、上枠14及び下枠15における室外側の見込片25より短寸化するとともに後述の吊元側縦枠22の取付下地より同じく略同寸法を短寸化してある。
【0028】
一方、本例にあって吊元側の上記柱状部材3bによる取付下地は、これを、既設ドア枠1面内側開口の室外端に室内側に向けた折返し片37を備えて既設ドア枠1の見込面の室外側に面内方向に開口した凹陥スペースを備えた断面C字状に形成し、上記折返し片37を、新設ドア枠1における吊元側縦枠22のネジ5固定部位としてあり、このとき該断面C字状の柱状部材3aによる取付下地は、これを、該柱状部材3aを補強するように長手方向所定ピッチの補強部材38を配置して形成したものとし、また該補強部材38は、これを、上記柱状部材3aの断面に沿うとともに既設ドア枠1面内側に凹陥スペースを残すように室内外の見付幅を異にする板状補強部材としてある。
【0029】
即ち、本例の各取付下地は、上記新設ドア枠と同様に鋼材に曲げ加工を施して形成した鋼製のものとしてあり、このとき該吊元側縦枠22における取付下地は、上記既設ドア枠1の該吊元側縦枠12における上記軸支スペース13の凹陥部位の底面、換言すればL字部材123の室外側見付面と同幅乃至やや短寸の室内側の取付片34と、該室内側の取付片34の躯体側先端から直交して室外側に向けた連結片35と、該連結片35の室外側先端を上記室内側の取付片34と平行にして該室内側の取付片34よりやや短寸とし且つ該室内側の取付片34より、上記新設ドア枠1の気密材受溝26の受入れを可能とする1.5〜2cm程度の幅を短寸化した室外側の見付片27と、該見付片27の先端から直交して、該取付下地を塞ぐことなく凹陥スペースを残存形成するように、例えば2〜3cm程度の幅に室内側に向けて突出した上記折返し片37とを備えて、上記断面C字状としたものとしてある。
【0030】
上記補強部材38を備えた本例の取付下地は、その補強部材38を、例えば35〜45cm程度の長手方向所定ピッチで配置したものとしてあり、該補強部材38は、例えば鋼板を、取付下地の上記室内側の取付片34、連結片35、室外側の見付片36及び折返し片37によって、既設ドア枠1面内方向に開口した上記凹陥スペースの形状に合せるとともに、本例にあっては該凹陥スペースに密嵌するようにその内法寸法に合せて切断し且つ開口側を平面ヘ字状とすることによって新設ドア枠2の気密材受溝26との衝接を避けるようにした板状補強部材とし、該板状補強部材38を、取付下地に対して溶着することによって、その上記ピッチによる配置を行ってある。従って取付下地は、その形状を断面C字状としたが、該補強部材38がその補強を行う結果、薄肉の鋼板を用いても、取付下地として、これに捩れや歪が生じるのを可及的に防止して安定且つ確実な下地機能を発揮し得るようにしてある。
【0031】
上記板状部材3aと柱状部材3bの異形状2種の取付下地及び上記構成の新設ドア枠2を用いた本例のドア改装は、例えば既設ドア本体の支軸131の切断、既設ドア本体1の撤去により軸支スペース13を開放し、残存した既設ドア枠1に取付下地を固定し、該取付下地に対して新設ドア枠2及び見切り用のアングル材28を設置し、該新設ドア枠2に固定した上下に一対のヒンジ61によって新設ドア本体6を吊り支持することによって、これを行うものとしてある。
【0032】
残存した既設ドア枠1には、個別の取付下地を、または溶着等によって矩形一体に枠組み形成した取付下地を既設ドア枠1の対応する枠に対して対接し、それぞれ複数箇所で、例えば皿ネジを用いてネジ5止めすることによって、その固定を行うものとしてある。
【0033】
即ち、上記断面S字状の取付下地は、その室内側の取付片31を既設ドア枠1の戸先側縦枠11及び下枠15の室外側見付面に、屈曲片32をこれらの室外側見付面にそれぞれ重合状に対接し、該室内側の取付片31及び屈曲片32側からネジ5止めし、また断面L字状の取付下地は、その取付片31を既設ドア枠1の上枠14の室外側見付面に重合状に対接し、該取付片31からネジ5止めして、それぞれその固定を行ってあり、このときこれら取付下地の室外側の突出片乃至突出片33を、例えば躯体との間にスペーサーをなすように介設した木製下地乃至ライナー39に対して同じく重合状に対接してネジ5止めを行なってある。
【0034】
一方、吊元側の取付下地は、既設ドア枠1の吊元側縦枠12の上記見付方向に突出したC字部材121の突条122に、室内側の取付片34の先端部位を、吊元側縦枠12のL字部材123の見込面に連結片35を重合状に対接することによって、軸支スペース13に収容するように配置し、相互に対接したこれら突条122と室内側の取付片34の先端部位、L字部材123の見込面と連結片35とをそれぞれネジ5止めすることによってその固定を行ってある。
【0035】
このとき該吊元側の取付下地は、これを、その新設ドア本体6を吊り支持した新設ドア枠2の吊元側縦枠22のヒンジ61位置又はその近傍位置において、該取付下地を貫通するボルト4に螺装したナット42を取付下地に溶着することによって、該ヒンジ61位置又はその近傍位置を躯体との間で突っ張り状態としてあり、本例にあっては、上記柱状部材3bの連結片35を貫通するボルト4、例えば全ネジボルトを配置し、その貫通した側の先端を、例えば全ネジボルトに溶着した先端プレート41を介して、躯体に対接するとともに連結片35の正面側、即ち凹陥スペース側に突出した雌ネジ部にナット42を強固に螺装し且つ該強固な螺装状態で凹陥スペースを用いて該ナットを連結片35に対して溶着してあり、これによって該取付下地、本例にあっては柱状部材3bの連結片35を躯体との間で突っ張り状態として、ヒンジ61を介した新設ドア本体6の荷重を受けることによって取付下地の該位置が捩れたり歪んだりすることなく、新設ドア本体6の吊支持を安定且つ確実に行って、捩れや歪による新設ドア本体6の開閉不良等の可能性を解消し得るようにしてある。
【0036】
新設ドア枠2は、上記取付下地によって形成された枠内に室外側から嵌合するように嵌め込み、各取付下地に対応する枠を、該取付下地、本例にあっては該取付下地と既設ドア枠1に対してそれぞれ該新設ドア枠2側からの、例えば皿ネジを用いてネジ5止めすることによって、既設ドア枠1に取付下地を介して、該既設ドア枠2を被覆するように固定するものとしてある。本例の新設ドア枠2のネジ5止めは、各室内側の見込片25を既設ドア枠1の縦枠11、12、上枠14及び下枠15に、室外側の見込片25を、取付下地の、戸先側縦枠11、上枠14及び下枠15にあっては室外側の突出片乃至突出片33に、吊元側縦枠12にあっては取付下地の室内側に向けた折返し片37にそれぞれネジ5止めしたものとしてある。このとき上記見切りをなすアングル材28は、そのL字状一方の突片を、既設ドア枠1と新設ドア枠2の縦枠及び上枠の室内側背面間に挿入状に配置するように設置して、新設ドア枠2の上記室内側の見込片25とともにそのネジ5止めを行って、下枠15を除く既設ドア枠1の縦枠11、12及び上枠15の室内側見込面を被覆してある。
【0037】
新設ドア本体6は、例えば防音断熱材を充填した鋼製の両面フラッシュドアを用いて、新設ドア枠2の吊元側縦枠22に上記ヒンジ6、本例にあっては上下に一対の耐震丁番を用いて常法に従って吊り支持してあり、該吊支持によって新設ドア本体6の室内側外周は、新設ドア枠2の上記同一面に配置した気密材261が圧接するように接触して、該室内側外周の同一面において新設ドア本体6の気密性を確保するようにしてある。
【0038】
図中29は、躯体と新設ドア枠2との間に配置したシーリング剤を示す。
【0039】
図示した例は以上のとおりとしたが、既設ドア枠における吊元側縦枠の取付下地を、中空ホロー材の柱状部材とすること、この場合、その吊元側縦枠への固定を溶着によるものとすること、断面C字状の柱状部材を用いて、これに補強部材を配置するとき、該補強部材を断面コ字状乃至S字状のものとして室内側の取付片と室外側見付片の内側に端部舌片を溶着、ネジ止め等の固定手段によって固定するようにすること、上記ボルトによる突っ張り状態を確保する場合、該ボルトを頭付きボルトとすること等を含めて、本発明の実施に当って、取付下地、新設ドア枠、新設ドア本体等の各具体的形状、構造、材質、これらの関係、これらに対する補強や固定手段の付加等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】新設ドアの横断面図である。
【図2】新設ドアの縦断面図である。
【図3】既設ドア枠の縦枠形状を示す横断面図である。
【図4】既設ドア枠の上枠及び下枠形状を示す縦断面図である。
【図5】戸先側縦枠の取付下地を示す横断面図である。
【図6】上枠の取付下地の形状を示す縦断面図である。
【図7】下枠の取付下地を示す縦断面図である。
【図8】吊元側縦枠の取付下地を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A 改装ドア
1 既設ドア枠
11 戸先側縦枠
12 吊元側縦枠
121 C字部材
122 突条
123 L字部材
13 軸支スペース
131 支軸
14 上枠
15 下枠
2 新設ドア枠
21 戸先側縦枠
22 吊元側縦枠
23 上枠
24 下枠
25 室内外の見込片
26 気密材受溝
261 気密材
27 室外側見付片
28 アングル材
29 シーリング剤
3a 取付下地(板状部材)
3b 取付下地(柱状部材)
31 取付片
32 屈曲片
33 突出片
34 室内側の取付片
35 連結片
36 見付片
37 折返し片
38 板状補強部材
39 木製下地乃至ライナー
4 ボルト
41 先端プレート
42 ナット
5 ネジ
6 新設ドア本体
61 ヒンジ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の吊元側と戸先側の縦枠、上枠及び下枠を備え且つ上記左右の縦枠のうち吊元側の見込面を戸先側の見込面より短寸化するとともに該見込面の室外側に断面L字状段部をなすようにドア本体を回動自在に軸支してその吊元側端部を受入れ支持した軸支スペースを配置することによって該左右の吊元側と戸先側で異なる見込幅にして異なる断面形状を有する建物設置の既設ドア枠に対して、該既設ドア枠を覆うように固定した取付下地を介して、同じく左右の吊元側と戸先側の縦枠、上枠及び下枠を備えた新設ドア枠を被覆し且つその吊元側縦枠に新設ドア本体をヒンジによって吊支持することによってカバー工法の改装を行った改装ドアであって、該新設ドア枠を、室内外の見込面とこれらの間の気密材受溝を備えた左右の縦枠、上枠及び下枠によって矩形一体に形成し、上記取付下地を、既設ドア枠の戸先側縦枠、上枠及び下枠においてその室内側見込面又は室外側見付面に固定することによってそれぞれ室外側見付面の中間位置から室外側に向けて突出した断面S字状乃至断面L字状の板状部材によるものとする一方、吊元側縦枠において既設ドア枠の吊元側縦枠の見込面から既設ドア枠面内方向に上記気密材受溝幅に応じた凹陥スペースを残して上記軸支スペースを埋めるように該軸支スペースに収容した柱状部材によるものとし、これら板状部材及び柱状部材の取付下地に対して上記新設ドア枠をネジ固定してなることを特徴とする改装ドア。
【請求項2】
上記新設ドア枠の吊元側と戸先側縦枠及び上枠に、既設ドア枠の吊元側及び戸先側縦枠の見込面にこれら吊元側と戸先側縦枠及び上枠とともにネジ固定して室内側見付面をそれぞれ被覆する見切り用のアングル材を追加的に配置してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドア。
【請求項3】
上記柱状部材による取付下地を、既設ドア枠面内側開口の室外端に室内側に向けた折返し条を備えて既設ドア枠の見込面の室外側に面内方向に開口した凹陥スペースを備えた断面C字状に形成し、上記折返し条を、新設ドア枠における吊元側縦枠のネジ固定部位としてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドア。
【請求項4】
上記断面C字状の柱状部材による取付下地を、該柱状部材を補強するように長手方向所定ピッチの補強部材を配置して形成してなることを特徴とする請求項3に記載の改装ドア。
【請求項5】
上記補強部材を、上記柱状部材の断面に沿うとともに既設ドア枠面内側に凹陥スペースを残すように室内外の見付幅を異にする板状補強部材としてなることを特徴とする請求項4に記載の改装ドア。
【請求項6】
上記取付下地を、その新設ドア本体を吊り支持した新設ドア枠の吊元側縦枠のヒンジ位置又はその近傍位置において、該取付下地を貫通するボルトに螺装したナットを取付下地に溶着することによって、該ヒンジ位置又はその近傍位置を躯体との間で突っ張り状態としてなることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の改装ドア。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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