説明

改質シリカ系ゾルおよびその製造方法

【課題】 硬化性の組成物、被膜形成用組成物またはセラミクス形成用前駆体組成物に高密充填可能であり、充填材としての強度または固有の特性を示す改質シリカ系微粒子である。
【解決手段】 (a)真球度が0.80〜1.00の範囲にあり、(b)ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.00以上、1.20未満の範囲にあり、(c)画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が10〜300nmの範囲にあり、(d)粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(固形分濃度1質量%換算)以下であり、(e)粒子変動係数(CV値)が5%以下である、シリカ系微粒子が溶媒に分散してなる改質シリカ系ゾル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面が改質されたシリカ系ゾルおよびその製造方法に関するものである。
本発明の改質シリカ系ゾルは、粒子表面が平滑なシリカ系微粒子であって、更に粒子径の均一性が高く、実質的に粗大粒子を含まない改質されたシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系ゾルである。
【0002】
本発明の改質シリカ系ゾルは、高機能性のシリカ系ゾルであり、例えば、硬化性樹脂組成物、被膜形成用組成物またはセラミクス形成用前駆体組成物などの成分として、高密度充填が可能な充填材、滑性向上剤、撥水性向上剤あるいは抗菌性向上剤などとして適用可能なものである。また、研磨用組成物またはインク受容層の成分としても適用可能なものである。
【背景技術】
【0003】
シリカゾルの用途は広範に渡っており、例えば、硬化性樹脂組成物、被膜形成用組成物またはセラミクス形成用前駆体組成物の成分として知られている、また、研磨用組成物またはインク受容層の成分などとしても知られている。
【0004】
特許文献1(特開平6−313129号公報)には、(a)重合可能なアクリル基またはメタクリル基をn個(n≧2)有し、分子量がmであって、分子量mをnで除した値Nが120未満であるアクリレート系化合物と、(b)光重合開始剤と、(c)微粉末状無機充填剤とからなることを特徴とする被覆用樹脂組成物に関する発明が開示されており、該微粉末無機充填材の例として、シリカゾルを適用する旨の記載がある。
【0005】
特許文献2(特開平9−241518号公報)には、加熱により液状化し、かつ、架橋して不溶化する高分子物質とシリカゾルからなる多層配線形成用樹脂組成物であって、前記高分子物質が、(RHSiCH2 n (1)(上式中、Rは炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルを表す)で示される珪素重合体である組成物が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2004−217515号公報)には、液状樹脂の粘度を高めることなく高充填でき、充填材としての強度発現が良好であり、また、電子写真用トナー外添剤としても、トナーに良好な流動性を付与することができると共に、トナー樹脂粒子に対して良好な脱落防止性を発揮するシリカ微粒子として、平均粒子径が0.05〜1μmであり、小角X線散乱測定において、解析対象範囲50nm〜150nmのフラクタル形状パラメータα1及び解析対象範囲150nm〜353nmのフラクタル形状パラメータα2が下記式(F1)及び(F2)で示される条件を満足していることを特徴とするシリカ微粒子が開示されている(記式中、Sはシリカ微粒子のBET比表面積(m2/g)を示す。)。
−0.0068S+2.548≦α1≦−0.0068S+3.748 ・・・ F1
−0.0011S+1.158≦α2≦−0.0011S+2.058 ・・・ F2
【0007】
このシリカ微粒子の製造方法については、特に火炎加水分解法などの火炎中における反応により得ることができ、特に火炎中の粒子同士の凝集を調整しながら部分溶着することにより得られるとの記載がある。また、この製造方法において、前記フラクタル形状パラメータの値に特に影響を及ぼす条件の一つはバーナー出口の流速であり、かかる流速は、0.5〜10m/秒の間で調整することが好ましく、更に、フラクタル形状パラメータの値に特に影響を及ぼす条件の他の一つは、原料珪素化合物の濃度、即ち、火炎中におけるシリカ濃度である旨の記載がある。
特許文献3の発明は、火炎中の反応により得られるシリカ微粒子に関するものであり、得られるシリコン微粒子の粒子径も最小で50nmのものであった。
【0008】
一方、研磨用組成物の分野においては、半導体の集積回路付基板の製造において、シリコンウェーハ上に銅などの金属で回路を形成する際に凹凸あるいは段差が生じるので、これを研磨して表面の段差がなくなるように回路の金属部分を優先的に除去することが行われている。また、シリコンウェーハ上にアルミ配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設けると配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨においては、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であることが求められており、また研磨速度が速いことも必要である。
【0009】
さらに、半導体材料は電気・電子製品の小型化や高性能化に伴い高集積化が進展しているが、例えばトランジスタ分離層にNaやK等の不純物等が残存した場合、性能が発揮されず、不具合の原因となることがある。特に研磨した半導体基板や酸化膜表面にNaが付着すると、Naは拡散性が高く、酸化膜中の欠陥などに捕獲され、半導体基板に回路を形成しても、絶縁不良が生じて、回路が短絡することがあり、また誘電率が低下することがあった。このため使用条件によって、或いは使用が長期にわたった場合に前記不具合を生じることがあるので、NaやKなどの不純物を殆ど含まない研磨用粒子が求められている。 研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナなどが用いられている。
【0010】
CMPで使用される研磨材は、通常、シリカ、アルミナ等の金属シリカ系からなる平均粒子径が200nm程度の球状の研磨用粒子と、配線・回路用金属の研磨速度を早めるための酸化剤、有機酸等の添加剤及び純水などの溶媒から構成されているが、被研磨材の表面には下地の絶縁膜に形成した配線用の溝パターンに起因した段差(凹凸)が存在するので、主に凸部を研磨除去しながら共面まで研磨し、平坦な研磨面とすることが求められている。しかしながら、従来の球状の研磨用粒子では共面より上の部分を研磨した際に、凹部の下部にあった配線溝内の回路用金属が共面以下まで研磨される問題(ディッシングと呼ばれている。)があった。
【0011】
このようなディッシング(過研磨)が起きると配線の厚みが減少することにより、配線抵抗が増加する傾向が増大する。また、この上に形成される絶縁膜の平坦性が低下する等の問題が生じるので、ディッシングを抑制することが求められていた。近年は、研磨速度の向上、被研磨面でのスクラッチ(線状痕)発生の抑制および被研磨面の表面粗さの抑制(表面精度向上)の各特性について、優れた効果を発揮する研磨材が求められている。
【0012】
特許文献4(特開2002−338951号公報)には、単分散コロイダルシリカと活性珪酸をSiO2重量比で1:0.03〜1:0.3の割合で混合し、pH8〜11の条件で水熱処理(120〜180℃、0.5〜3時間)することを特徴とする研磨剤用コロイダルシリカ及びその製造方法に関する技術が開示されている。このコロイダルシリカは、単分散のシリカ粒子に活性珪酸を高温高圧下で沈着させることにより表面状態が変化したもので、得られる単分散コロイダルシリカは、半導体素子等の電子材料に対する表面研磨加工時の研磨特性が優れていると記載されている。
【0013】
特許文献5(特開2003−109921号公報)には、平均粒子径が5〜300nmの範囲にあるシリカ粒子が分散した研磨用シリカ粒子分散液であって、該シリカ粒子中のNaイオン含有量が100ppm以下であり、Naイオン以外のイオン含有量が300ppm〜2重量%の範囲にあることを特徴とする研磨用シリカ粒子分散液に関する発明が開示されている。また、この研磨用シリカ粒子分散液の製造方法の一部として、シリカ粒子分散液をオートクレーブにて150℃で11時間水熱処理する例が記載されている。
【0014】
特許文献4の研磨剤用コロイダルシリカまたは特許文献5の研磨用シリカ粒子分散液によれば、研磨速度および被研磨基材の表面粗さについては、実用的なレベルが見られたものの、被研磨基材上の線状痕の抑制については、充分なレベルに達していなかった。
【特許文献1】特開平6−313129号公報
【特許文献2】特開平9−241518号公報
【特許文献3】特開2004−217515号公報
【特許文献4】特開2002−338951号公報
【特許文献5】特開2003−109921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は硬化性の組成物、被膜形成用組成物またはセラミクス形成用前駆体組成物に高密充填でき、充填材としての強度または固有の特性を示すシリカ系微粒子、あるいはそのようなシリカ微粒子を分散質として含むシリカ系ゾルを得ることを課題とする。また、研磨特性、被研磨基材の表面粗さおよび線状痕の抑制についてバランスのとれた性能を示す研磨用微粒子を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の改質シリカ系ゾルは下記条件(a)〜(e)を満たす改質シリカ系微粒子が溶媒に分散してなることを特徴とする。
(a)真球度が0.80〜1.00の範囲にあること
(b)ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.00以上、1.20未満の範囲にあること
(c)画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が10〜300nmの範囲にあること
(d)粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(固形分濃度1質量%換算)以下であること
(e)粒子変動係数(CV値)が5%以下であること
【0017】
前記改質シリカ系微粒子は、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリアまたはシリカ−チタニアを含有するものであることが好ましい。
【0018】
本発明の改質シリカ系ゾルの製造方法は、シリカ系微粒子分散液を、130〜300℃の温度範囲で3〜20時間水熱処理し、次いで、遠心分離処理して平均粒子径800nm以上の粗大粒子を除去することを特徴とする。
【0019】
前記シリカ系微粒子分散液は、シリカ微粒子、シリカ−アルミナ複合微粒子、シリカ−ジルコニア複合微粒子、シリカ−セリア複合微粒子、またはシリカ−チタニア複合微粒子の分散液であることが好ましい。
前記シリカ系微粒子分散液のpHは8〜12に調整されたものであることが好ましい。
【0020】
本発明は前記改質シリカ系ゾルからなる充填材用シリカ系ゾルを提供する。また、本発明は前記改質シリカ系ゾルを含む研磨用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は、球状で表面の平滑性が高い微粒子であり、更に該改質シリカ系ゾルは、粒子径分布が狭く、実質的に粗大粒子を含有しない均一なものである。このため該改質シリカ系微粒子は単位容積当たりの充填率に優れるものとなる。この改質シリカ系微粒子は、被膜形成用組成物、硬化性樹脂組成物、セラミクス形成用前駆体組成物などの各種硬化性組成物に、高い効率で充填可能となり、該改質シリカ系微粒子に基づく特性(滑性、撥水性、抗菌性など)が促進される。
【0022】
また、本発明の改質シリカ系ゾルは、研磨用組成物の成分として使用した場合、優れた研磨特性を示すものであり、特に研磨速度、被研磨基材の表面粗さおよび被研磨基材表面上の線状痕発生抑止においてバランスのとれた性能を示すものである。
本発明の改質シリカ系ゾルの製造方法により、前記各性能を示すことのできる改質シリカ系ゾルを調製することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[改質シリカ系ゾルの製造方法]
本発明の改質シリカ系ゾルは、原料として、シリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物との複合ゾルから選ばれるシリカ系微粒子分散液を用い、これを水熱処理し、更に遠心分離処理することにより調製することができる。本発明のシリカ系ゾルの製造方法について、以下に説明する。
【0024】
シリカ系微粒子分散液
本発明の改質シリカ系ゾルの製造方法においては、原料のシリカ系微粒子分散液として、シリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物との複合ゾルが使用される。ここで使用されるシリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物の複合ゾルについては、公知の製造方法により調製されたものを使用することができる。
前記シリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物の複合ゾルについては、本発明の製造方法に適用して、前記(a)〜(e)の条件を満たすシリカ系微粒子が溶媒に分散してなるシリカ系ゾルが得られるものが求められる。この様なシリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物の複合ゾルとしては、例えば、画像解析法により測定される平均粒子径が10〜300nm、真球度0.80〜1.00の微粒子が溶媒に分散してなるゾルが好適に使用される。また、当該シリカ系微粒子は単分散状態であることが好ましい。
【0025】
前記シリカゾルまたはシリカと他の無機酸化物との複合ゾルとしては、シリカゾル、シリカ−アルミナ複合ゾル、シリカ−ジルコニア複合ゾル、シリカ−セリア複合ゾル、シリカ−チタニアゾルなどが使用される。
【0026】
シリカ系微粒子分散液の調製方法
シリカ系微粒子分散液の製造方法としては、次の(1)〜(4)の製造方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
(1)アルカリ金属珪酸塩、第3級アンモニウム珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩またはグアニジン珪酸塩から選ばれる水溶性珪酸塩を、脱アルカリすることにより得られる珪酸液をアルカリ存在下で加熱することにより珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法の例としては、珪酸アルカリ水溶液をシリカ濃度3〜10重量%に水で希釈し、次いでH型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、必要に応じてOH型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて脱アニオンし、活性珪酸を調製する。pHが8以上となるようアルカリ物質を加え、50℃以上に加熱することにより平均粒子径60nm以下のシリカゾルを製造する方法を挙げることができる。
【0028】
(2)核粒子分散液に酸性珪酸液を添加することにより、核粒子の粒子成長を行うシリカゾルの製造方法
この製造方法において、核粒子分散液としては、核粒子として機能すれば特に制限はなく従来公知のシリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリア、シリカ−チタニア等の微粒子の分散液を用いることができる。なかでも、本願出願人による特開平5−132309号公報、特開平7−105522号公報等に開示したシリカゾル、シリカ系複合酸化物ゾルは粒子径分布が均一であり、均一な粒子径分布の研磨用シリカ粒子が得られるので好ましい。
【0029】
核粒子分散液には酸性珪酸液の添加前に珪酸アルカリが加えられていることが好ましい。珪酸アルカリが添加されていると、次に粒子成長用の酸性珪酸液を加える際に、分散媒中に溶解したSiO2 濃度が予め高くされているので核粒子への珪酸の析出が早く起こり、また分散液のpHを概ね8〜12、好ましくは9.5〜11. 5に調整することができる。此処で用いる珪酸アルカリとしては、ケイ酸カリウム(カリ水硝子)等、ケイ酸ナトリウム(ナトリウム水硝子)以外の珪酸アルカリあるいは4級アミンなど有機塩基にシリカを溶解した溶液を用いることが好ましい。また、必要に応じてNaOH以外のアルカリ金属水酸化物、アンモニウム、4級アンモニウムハイドライドを添加することができる。さらにMg(OH)2 、Ca(OH)2 、Sr(OH)2 、Ba(OH)2 等のアルカリ金属水酸化物なども好適に用いることができる。
【0030】
予め核粒子が分散していなくても、珪酸アルカリ水溶液に後述する酸性珪酸液を加えていくとシリカ濃度が高くなったところで核粒子が発生するので、このような核粒子分散液も好適に用いることができる。核粒子分散液の濃度は核粒子の大きさによっても異なるが、SiO2 として0. 005〜20重量%、さらには0. 01〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0031】
核粒子の濃度が0. 005重量%未満の場合は、粒子成長を行うために温度を高めた場合核粒子の一部または全部が溶解することがあり、核粒子の全部が溶解すると核粒子分散液を用いる効果が得られず、核粒子の一部が溶解した場合は得られるシリカ粒子の粒子径が不均一になる傾向があり、同様に核粒子分散液を用いる効果が得られないことがある。一方、核粒子の濃度が20重量%を越えると、核粒子当たりの酸性珪酸液の添加割合を低濃度の場合と同一にするには珪酸液の添加速度を速めることになるが、この場合、酸性珪酸液の核粒子表面への析出が追随できず、酸性珪酸液がゲル化することがある。
核粒子の平均粒子径は前記したシリカ粒子が得られれば、特に制限はない。
【0032】
(3)珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加した後、加熱することによりシリカヒドロゲルを解膠する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法は解膠法と呼ばれるもので、通常は、珪酸塩の水溶液を酸で中和して、シリカヒドロゲルを調製し、化学的手段または機械的な手段にて、シリカヒドロゲルをスラリー状ないしは分散溶液にする方法として知られている。
ここで、化学的手段としては、シリカヒドロゲルにアルカリを添加し、所望により加熱する方法が挙げられる。また、機械的手段としては、攪拌器などの装置を使用する方法を挙げることができる。これらの化学的手段と機械的な手段は併用されても差し支えない。
【0033】
具体的には、珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加し、60〜200℃の範囲に加熱することにより、シリカヒドロゲルを解膠して、シリカゾルを調製する。
この製造方法で原料として使用する珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、アンモニウム珪酸塩および有機塩基の珪酸塩から選ばれる1種または2種以上の珪酸塩が好ましい。アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができ、アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0034】
(4)加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解して、得られた珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法の例としては、シ−ド粒子が分散された水−有機溶媒系分散液にテトラエトキシシランを添加して該テトラエトキシシランを加水分解し、前記シ−ド粒子上にシリカを付着させて粒子成長を行わせて単分散したシリカ粒子を製造方法などが知られている。
原料となるシリカ系ゾルの固形分濃度については、10〜50質量%の範囲のものが使用される。
また、シリカ系ゾルについては単分散状態にあるものが、後の工程で粒子径を均一化させる上で好ましい。なお、原料として市販のシリカゾルを適用することも勿論可能である。その場合、市販品はシリカ濃度20〜50%の高濃度のものを使用するのが経済的である。また、使用前に、所望により、イオン交換、濾過、濃度調整などを行っても良い。
【0035】
水熱処理
前記シリカ系微粒子分散液を固形分濃度10〜25質量%に調整し、温度130〜300℃で3〜20時間の範囲で、水熱処理を行う。水熱処理を行うことにより、凹凸な状態にある粒子表面において、シリカ表面の溶解と珪酸オリゴマーの析出が生じるため、表面が改質され、平滑化が促進される。また、併せて、粒子の真球化も促進される。
【0036】
ここで使用するシリカ系微粒子分散液の固形分濃度については、10〜25質量%の範囲が好ましい。10質量%未満では、処理が効率的ではなく、25質量%を超える場合は、ゲル化を招き易く好ましくない。
加熱温度については、130℃未満では、上記溶解または析出の作用が生じ難く、実用的な条件で平滑化させることが容易ではなくなる。300℃を超える場合は、シリカの溶解度が著しく高まり、析出に伴う粒子表面の平滑化が生じ難くなる。また、新たな核粒子が生成する場合もあり望ましくない。加熱温度については、好適には140℃〜270℃の範囲で行うことが、粒子表面の平滑化効率および加熱効率の面から見て好ましい。
【0037】
加熱時間については、前記加熱温度または原料の表面状態によって必要となる加熱時間が定まるものであるが、通常は、3〜20時間の範囲で行なわれる。3時間未満では、加熱温度によらず、平滑化処理が不十分な場合がある。20時間を越える場合は、生産効率が低下するため好ましくない。水熱処理については、通常はオートクレーブを使用して行なわれる。
水熱処理を行う際には、粒子の安定性を維持するために、必要に応じてシリカ系微粒子分散液のpHを8〜12に調整して行うことが好ましい。pH8未満では、粒子が凝集し易くなり、pH12を超えると粒子が溶解する傾向が強まる。pH調整に使用する酸またはアルカリの種類については、格別に制限されるものではないが、塩酸水溶液、硫酸水溶液、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などを挙げることができる。
【0038】
遠心分離処理
水熱処理を終了した改質シリカ系微粒子分散液について遠心分離処理を行い、粗大粒子の除去および粒子径の均一化を図る。遠心分離処理条件については、a)粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(無機酸化物濃度1質量%換算)以下、および、b)粒子分布における粒子変動係数が5%以下、となるような処理が行われる限り、格別に限定されるものではない。
通常は、改質シリカ系微粒子分散液の固形分濃度が1〜50質量%、遠心力が500〜20000Gの範囲が推奨される。水熱処理により、粒子の凝集が生じ易いため、そのような凝集粒子を除去するためにも、遠心分離処理は、少なくとも前記水熱処理後に行う必要がある。遠心分離処理を行うことにより本発明の改質シリカ系ゾルが得られる。
【0039】
[改質シリカ系ゾル]
本発明の改質シリカ系ゾルは、粒子表面の平滑性が高い球状の改質シリカ系微粒子が溶媒に分散してなるものであって、粒子径の均一性が高く、実質的に粗大粒子を含まないものである。
本発明の改質シリカ系ゾルは、平均粒子径10〜300nm、真球度0.80〜1.00の範囲にある球状のシリカ系微粒子であって、その表面については、表面粗度(ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの(SA1)/(SA2)で表される)が1.00以上、1.20未満の範囲にあり、表面が平滑化されてなるものである。
【0040】
本発明の改質シリカ系ゾルは、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(固形分濃度1質量%換算)以下、粒子変動係数(CV値)が5%以下のレベルにあり、粒子径の大きさが均一であり、粗大粒子を実質的に含有しないものである。
前記改質シリカ系微粒子については、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリアまたはシリカ−チタニアから選ばれる改質シリカ系微粒子が工業的には好ましい。
【0041】
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は、その形状が球状であって、粒子表面が平滑なものである。粒子表面の平滑性については、表面粗度によりその範囲が規定される。本発明において表面粗度は、微粒子について、ナトリウム滴定法(または窒素吸着法)により測定される比表面積(単位質量当りの表面積)の値を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積の値を(SA2)としたとき、表面粗度=(SA1)/(SA2)として定義される。
【0042】
ここで、ナトリウム滴定法により測定される比表面積(SA1)は、シリカゾルに対して水酸化ナトリウム溶液を滴定したときの水酸化ナトリウム溶液の消費量からシリカ微粒子の比表面積を求めるものであり、実際の表面積を反映したものと言える。具体的には、微粒子表面が起伏または疣状突起などに富むものである程、比表面積(SA1)の値は大きくなる。なお、ナトリウム滴定法に代えて、窒素吸着法により測定された比表面積を使用しても差し支えない。
【0043】
また、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算された比表面積(SA2)については、透過型電子顕微鏡により、試料シリカ系ゾルを写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定したときの平均値を平均粒子径(D2)とし、次に試料シリカ系ゾルに分散するシリカ系微粒子を理想的な球状粒子と仮定して、次式(1)より比表面積(SA2)が算定される。
SA2=6000/(D2×ρ) ・・・ (1)
【0044】
ただし、式(1)において、ρは試料粒子の密度で、シリカの場合2.2である。シリカ−アルミナ複合微粒子、シリカ−ジルコニア複合微粒子、シリカ−セリア複合微粒子またはシリカ−チタニア複合微粒子などの複合微粒子の場合は、それぞれの酸化物の密度(アルミナ3.3〜4.0、ジルコニア5.49、セリア7.3、チタニア4.6)と、それぞれの試料粒子における各酸化物の重量比から算定される。
この関係式は、前記仮定に基づくものであるので、この比表面積(SA2)の値は、粒子が球状である場合の比表面積に対応するものと言える。
比表面積は単位質量当りの表面積を示すものであるので、表面粗度(SA1)/(SA2)の値については、粒子が球状であって、粒子表面が平滑であるほど、(SA1)/(SA2)の値は小さくなり、その値は1に近づく。
【0045】
本発明において、改質シリカ系微粒子の表面粗度は1.00以上、1.20未満の範囲にある。表面粗度が1.20以上の場合、粒子表面は起伏に富んだ構造となり、所謂金平糖状となる傾向が強まる。他方、表面粗度が1.00に近づく程、球状微粒子に近いものとなる。
また、本発明の効果を得るためには、前記範囲の表面粗度であることが求められる。粒子表面の平滑性が高いことは、改質シリカ系微粒子表面の撥水性向上や滑性に寄与し、粒子自体の流動性向上にも寄与するものである。また、粒子表面が平滑な改質シリカ系ゾルは、被研磨基材表面における線状痕発生を抑止することに寄与する。改質シリカ系微粒子の表面粗度の範囲として好適には1.00〜1.16の範囲が推奨される。
【0046】
前記改質シリカ系微粒子は、球状であることが必要であり、棒状、勾玉状、細長い形状、数珠状、卵状など、異形粒子を含まない。本発明において球状とは、真球度が0.80〜1.00の範囲にあるものを言う。
ここで真球度とは、透過型電子顕微鏡により写真撮影して得られる写真投影図における任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)の平均値を意味する。真球度が0.80未満の場合は、改質シリカ系微粒子が球状であるとは云えず、前記の異形粒子に該当する場合が生じる。真球度が0.80未満の場合は、改質シリカ系微粒子を研磨材として使用した場合に、被研磨基材上に線状痕の発生が増大し易くなる。また、本発明の改質シリカ系微粒子に見られるような充填密度のレベルに及ばなくなる。真球度については、好適には0.85〜1.00の範囲が推奨される。
【0047】
本発明に係る改質シリカ系微粒子は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)の値が10〜300nmの範囲にある。平均粒子径10nm未満の改質シリカ系微粒子を調製することは容易ではない。他方、平均粒子径300nmを超える改質シリカ系微粒子についても、調製が容易ではない。また、本発明の効果を得るには前記範囲の平均粒子径であれば充分な効果が得られる。改質シリカ系微粒子の平均粒子径(D2)については、用途によっては異なるものの、充填材用途または研磨材用途においては、10〜100nmの範囲が推奨され、更に好適には10〜40nmの範囲が推奨される。
【0048】
本発明の改質シリカ系ゾルは、粒子自体に関する真球度、表面粗度、平均粒子径に関する前記要件に加えて、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(無機酸化物濃度1質量%換算)以下であり、かつ、粒子分布における粒子変動係数が5%以下であることが必要である。
本発明の改質シリカ系ゾルを充填材として使用した場合、粗大粒子の存在は充填率に影響するためできるだけ除去されることが必要である。また、本発明の改質シリカ系ゾルを研磨剤として使用した際に、粗大粒子の存在は被研磨基材にスクラッチを発生させる原因となる。
そのため、その存在量はできるだけ少ないことが望ましい。具体的には、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(無機酸化物濃度1質量%換算)であることが求められる。該粗大粒子の量が、1000個/mLを超える場合は、充填率に影響する場合があり、また、被研磨基材表面でのスクラッチ発生が顕著となる。粗大粒子の個数としては、好適には900個/mL以下が推奨される。
【0049】
また、本発明の改質シリカ系ゾル中における、改質シリカ系微粒子の粒子分布において、粒子変動係数(CV値)は5.0%以下であることが必要である。粒子変動係数(CV値)は、変動係数(CV値)=(粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn))×100の関係式から求められる。
改質シリカ系微粒子の粒子径分布が均一であるほど、粒子変動係数(CV値)は小さくなる。改質シリカ系ゾルの粒子径分布が均一であることにより、例えば、その様な本発明の改質シリカ系ゾルを含む研磨用組成物によって、研磨される基板の面精度は良好となり、基板でのスクラッチ(線状痕)の発生を大幅に抑制することができる。また、粒子変動係数(CV値)が小さい程、粒子の充填率は向上する。粒子変動係数(CV値)については、好適には4.5%以下が推奨される。
【0050】
表面粗度、真球度、平均粒子径、粗大粒子数および粒子変動係数に係る前記要件を満たした本発明の改質シリカ系ゾルは、球状で粒子表面が平滑な微小粒子であって、粗大粒子を実質的に含まず、更に粒径分布も極めて均一なものである。
本発明の改質シリカ系ゾルについては、原料の選択により、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリアまたはシリカ−チタニアから選ばれる改質シリカ系ゾルとすることができる。具体的には、シリカゾル、シリカ−アルミナ複合ゾル、シリカ−ジルコニア複合ゾル、シリカ−セリア複合ゾル、シリカ−チタニア複合ゾルを挙げることができる。このうちシリカゾルまたはシリカ−アルミナ複合ゾルが特に好ましい。
本発明の改質シリカ系ゾルの溶媒については、水、有機溶媒、またはこれらの混合溶媒のいずれであっても良い。
【0051】
[研磨材および研磨用組成物]
本発明の改質シリカ系ゾルはそれ自体で研磨材として適用可能なものであり、更には、他の成分(研磨促進剤等)とともに通常の研磨用組成物を構成することも可能である。
本発明の改質シリカ系ゾルは、研磨用組成物の成分として配合されて、優れた研磨効果を発揮するものであり、例えば、アルミニウムディスク(アルミニウムまたはその基材上のメッキ層)や半導体多層配線基板のアルミニウム配線、光ディスクや磁気ディスク用ガラス基板、液晶ディスプレイ用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、ガラス質材料の鏡面加工などへの研磨用途に適用する研磨用組成物の成分として使用することができる。
【0052】
研磨用組成物の組成については、本発明の改質シリカ系ゾル(水系)を濃縮または、希釈して、更に必要に応じて他の成分を配合し、所望によりスラリー状にすることにより調製される。ここで、添加される他の成分としては、研磨促進剤、界面活性剤、緩衝剤、安定剤、水系媒体などが挙げられる。
シリコンウェーハ、アルミニウムディスク、ガラスディスクなどを対象とする研磨用組成物の場合、上記他の成分としては、研磨促進剤として、アルカリ系では、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの金属炭酸塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ピペラジンなどのアミン類、テトラメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム水酸化物など、酸化物系では、過酸化水素、塩素化合物などが挙げられる。
【0053】
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性の界面活性剤を使用することができる。
緩衝剤として利用されるイオンとしては、調整するpH範囲にもよるが、陽イオンが第四級アンモニウムイオン及びアルカリ金属イオンの少なくとも1種以上であり、陰イオンが炭酸イオン、炭酸水素イオン、ホウ酸イオン、及びフェノールの少なくとも1種以上であることが好ましい。特に好適なのは炭酸イオンと炭酸水素イオンの混合物、あるいはホウ酸イオンなどを挙げることができる。
【0054】
安定剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース類、ポリビニルアルコールのような水溶性高分子類、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンのような水溶性アルコール類、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤、ポリアクリル酸塩のような有機系ポリアニオン系物質、塩化マグネシウム、酢酸カリウムのような無機塩等を挙げることができる。
研磨用組成物における、SiO2濃度は、通常は3〜25重量%で使用されるが、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
【0055】
[充填材]
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は、前記の通り、球状で粒子表面が平滑な微小粒子であって、粗大粒子を実質的に含まず、更に粒径分布も極めて均一なものである。このため該改質シリカ系微粒子は、極めて充填効率の優れたものとなる。
具体的には、本発明の改質シリカ系ゾルと同等の平均粒子径のシリカゾルをそれぞれ、同じ条件で加熱成型して得られた成型体について、細孔容積を測定した場合、平均粒子径の大きさにも依存するものの、本発明の改質シリカ系ゾルによる場合は、同等の平均粒子径のシリカゾルによる場合に比べて、概ね90%以下となるものである。
【0056】
このため、被膜形成用組成物または樹脂組成物に充填剤として、添加した場合、従来のシリカ微粒子などに比べて、充填率を上げることが可能となるので、添加された改質シリカ系微粒子に固有の効果を強く付与することが可能となる。特に、本発明の改質シリカ系ゾルが添加された被膜形成用組成物または樹脂組成物は、何れも硬化して表面に滑性、撥水性または抗菌性などが付与される。また、本発明の改質シリカ系ゾルは、粒子径が揃ったものであるので、被膜形成用組成物に添加されて、均一な被膜を形成する傾向が強まる。
【実施例】
【0057】
[実施例および比較例で用いた分析および試験方法]
以下に本発明の好適な実施例および比較例を述べるが、その[1]画像解析法により測定される平均粒子径(D2)から算定される比表面積(SA2)の算定方法、[2]ナトリウム滴定法により測定される比表面積(SA1)測定、[3]窒素吸着法による比表面積測定、[4]真球度の測定方法、[5]粗大粒子数の測定方法、[6]粒度分布の測定方法、[7]pH測定については特に断りのない限り、それぞれ次の分析方法[1]〜[7]に従って測定または算定し、その結果を表1または表2に記した。
また、各実施例および比較例において得られたシリカゾルについて研磨試験を行い、次の[8]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0058】
[1]画像解析による平均粒子径(D2)の測定方法および比表面積(SA2)の算定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径(DL)を測定し、その平均値を平均粒子径(D2)とした。また、平均粒子径(D2)の値を前記式(1)に代入して、比表面積(SA2)を求めた。
【0059】
[2]ナトリウム滴定法による比表面積(SA1)と平均粒子径(D1)の測定
1)SiO2として1.5gに相当する試料をビーカーに採取してから、恒温反応槽(25℃)に移し、純水を加えて液量を90mlにする。以下の操作は、25℃に保持した恒温反応槽中にて行った。
2)pH3.6〜3.7になるように0.1モル/L塩酸溶液を加える。
3)塩化ナトリウムを30g加え、純水で150mlに希釈し、10分間攪拌する。
4)pH電極をセットし、攪拌しながら0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液を滴下して、pH4.0に調整する。
5)pH4.0に調整した試料を0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pH8.7〜9.3の範囲での滴定量とpH値を4点以上記録して、0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量をX、その時のpH値をYとして、検量線を作る。
6)次の式(2)からSiO21.5g当たりのpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の消費量V(ml)を求め、次の〔a〕または〔b〕に従って比表面積SA1[m2/g]を求める。
【0060】
〔a〕 実験式(3)にて、SA1の値を求め、その値が80〜350m2/gの範囲にある場合は、その値をSA1とする。
〔b〕 実験式(3)によるSA1の値が350m2/gを超える場合は、改めて実験式(4)にて、SA1を求め、その値をSA1とする。
また、平均粒子径D1(nm)は、式(5)から求める。
【0061】
V=(A×f×100×1.5)/(W×C) ・・・ (2)
SA1=29.0V−28 ・・・ (3)
SA1=31.8V−28 ・・・ (4)
D1=6000/(ρ×SA1) ・・・ (5) (ρ:試料の密度)
但し、上記式(2)における記号の意味は次の通りである。
A:SiO21.5g当たりpH4.0〜9.0までに要する0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の滴定量(ml)
f :0.1モル/L水酸化ナトリウム溶液の力価
C :試料のSiO2濃度(%)
W :試料採取量(g)
【0062】
[3]窒素吸着法による比表面積測定
シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
【0063】
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカゾルの比表面積を算出した。また、平均粒子径D1(nm)は、前記式(5)から求める。
【0064】
[4]真球度の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれその最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)との比(DS/DL)を測定し、それらの平均値を真球度とした。
【0065】
[5]粗大粒子数の測定
粗大粒子数の測定については、パーティクルカウンター方式の粒度解析装置(パーティクルサイジングシステムズ社製、型式:アキュサイザー780APS)を用いて測定した。
この測定器は、光遮断方式と光散乱方式の原理に基づき、測定センサを通過する粒子から発生するパルスの数を計測することによって、粒子数を求めるものであり、Loop:0.5mL、Syringe:2.5mL、DF2:200(装置内での2次希釈、希釈倍率200倍)、 測定時間:120秒以下、の測定条件にて実施した。
測定試料には、シリカ濃度15質量%に純水で希釈したシリカゾル0.5mLを使用して測定し、シリカ濃度1.0質量%のシリカゾル1mL中に含まれる800nm以上の粗大粒子の個数に換算して表1に記した。
【0066】
[6]粒度分布の測定
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製:JSM−5300型)を用いて粒子を撮影(倍率250,000倍)し、この画像の250個の粒子について、画像解析装置(旭化成株式会社製:IP−1000)を用いて、平均粒子径を測定し、粒子径分布に関する変動係数(CV値)を算定した。
具体的には、粒子250個について、それぞれの粒子径を測定し、その値から平均粒子径および粒子径の標準偏差を求め、下記式(6)から算定した。
変動係数(CV値)=(粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn))×100 ・・・ (6)
【0067】
[7]pH測定
水熱処理を行う前のシリカゾルのpH測定については、測定用サンプル約50gをポリエチレン製のサンプル瓶に採取し、これを25℃の恒温槽に30分以上浸漬した後、pH4、7および9の標準液で更正が完了した株式会社堀場製作所製のpHメータF22のガラス電極を挿入して実施した。
【0068】
[8]アルミニウム基板に対する研磨特性の評価方法
研磨用スラリーの調製
各実施例および各比較例で得たシリカ濃度20質量%のシリカ系ゾルに、H22、HEDP(1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジスルホン酸)および超純水を加えて、シリカ9質量%、H220.5質量%、HEDP0.5質量%の研磨用スラリーを調製し、さらに必要に応じてHNO3を加えて、pH2の研磨用スラリーを調製した。
【0069】
被研磨基板
被研磨基板として、アルミニウムディスク用基板を使用した。このアルミニウムディスク用基板は、アルミニウム基板にNi−Pを10μmの厚さに無電解メッキ(Ni88%とP12%の組成の硬質Ni−Pメッキ層)をした基板(95mmΦ/25mmΦ−1.27mmt)を使用した。なお、この基板は一次研磨済みで、表面粗さ(Ra)は0.17nmであった。
【0070】
研磨試験
上記被研磨基板を、研磨装置(ナノファクター(株)製:NF300)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「アポロン」)を使用し、基板荷重0.05MPa、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度を計算した。具体的には、研磨前後の基板の重量差(g)を比重(8.4g/cm3)で割り、さらに基板の表面積(65.97cm2)と研磨時間で割ることにより、単位時間当たりの研磨量(nm/min)を算出した。
【0071】
スクラッチ発生
スクラッチの発生については、アルミニウムディスク用基板を上記と同様に研磨処理した後、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cm2に相当する研磨処理された基板表面のスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計した。
【0072】
面精度
ここで面精度は、被研磨面の表面粗さを意味する。面精度の測定には、原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメント社製:AFM、NanoScope IIIa)を使用した。上記研磨基板の表面粗さをScan rate1.0Hz、Scan area 2.0×2.0μmで測定し、その値を面粗度Ra(nm)として求めた。
【0073】
実施例1
〔珪酸液の調製〕
4.7%濃度の珪酸ナトリウム(3号水硝子)の14,000gを限外モジュール(旭化成(株)製、SIP−1013)に通液し濾水を回収し精製水硝子を得た。この精製水硝子のシリカ濃度が5%になるように純水を添加した。そして、このシリカ濃度5%の水硝子13000gを強酸性陽イオン交換樹脂 (三菱化学(株)製、SK1BH)2.2Lに空間速度3.1で通液させることで珪酸液13300gを得た。得られた珪酸液のシリカ濃度は4.7重量%であった。
【0074】
〔原料シリカ系微粒子分散液(シリカゾル)の調製〕
珪酸ナトリウム(3号水ガラスSiO2濃度24.68%)67.2gに純水839.5gを添加してシリカ濃度1.8重量%の希釈水ガラスを調製した。ついでシリカ濃度4.7重量%の珪酸液264.1gを添加して攪拌した後、79℃に昇温した。この温度のまま79℃で30分保持し、さらにシリカ濃度4.7質量%の珪酸液8162.9gを11時間かけて添加した。添加終了後さらに79℃のままで1時間保ち、その後室温まで冷却した。得られたシリカゾルを、限外濾過膜(SIP−1013、旭化成(株)製)を用いてシリカ濃度が12重量%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20重量%まで濃縮した。
【0075】
こうして得られたシリカゾル(Z10)は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)15nm、D2から換算された比表面積181.8m2/g、ナトリウム滴定法による比表面積は247.9m2/g、真球度0.88、表面粗度1.364、粒子変動係数(CV値)3.82%、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が5000個/mL、シリカ濃度20質量%のシリカゾルであった。このシリカゾルのpH測定結果を表1に示した。(以下、実施例2〜5および比較例5、6も同様。また実施例6および比較例8については表2に示した。)
【0076】
〔シリカゾルの処理〕
前記シリカゾル(Z10)をオートクレーブにて150℃で5時間水熱処理した。
次に、このシリカ濃度20質量%のシリカゾル5Lを遠心分離機(KOKUSAN製、H−660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
【0077】
得られた改質シリカゾル(Z1)について、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)、D2から換算された比表面積(S2)、ナトリウム滴定法による比表面積(S1)、真球度、表面粗度、粒子変動係数(CV値)、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数、等の値を測定した。また、改質シリカゾル(Z1)についてアルミニウム基板に対する研磨試験を行った。
【0078】
実施例2
〔原料シリカ系微粒子分散液(シリカゾル)の調製〕
珪酸ナトリウム(3号水ガラスSiO2濃度24.28%)67.2gに純水839.5gを添加してシリカ濃度1.8重量%の希釈水ガラスを調整した。ついで実施例1で調製したものと同様なシリカ濃度4.7質量%の珪酸液37.24gを添加して攪拌した後、79℃に昇温した。この温度のまま79℃で30分保持し、さらにシリカ濃度4.7重量%の珪酸液6386.4gを11時間かけて添加した。添加終了後さらに79℃のままで1時間保ち、その後室温まで冷却した。得られたシリカゾルを、限外ろ過膜(SIP−1013、旭化成(株)製)を用いてシリカ濃度が12%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで濃度20重量%まで濃縮した。
【0079】
得られたシリカゾル(Z20)は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)19nm、D2から換算された比表面積143.5m2/g、ナトリウム滴定法による比表面積は151.2m2/g、真球度0.96、表面粗度1.26、粒子変動係数(CV値)5.43%、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が5000個/mL、シリカ濃度20質量%のシリカゾルであった。
【0080】
〔シリカゾルの処理〕
前記シリカゾル(Z20)を実施例1と同様に水熱処理し、遠心分離処理して、改質シリカゾル(Z2)を調製した。
改質シリカゾル(Z2)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0081】
実施例3
〔原料シリカ系微粒子分散液(シリカゾル)の調製〕
珪酸ナトリウム(3号水ガラスSiO2濃度24.28重量%)67.2gに純水839.5gを添加してシリカ濃度1.8重量%の希釈水ガラスを調整した。ついで実施例1で調製したものと同様なシリカ濃度4.7質量%の珪酸液12.9gを添加して攪拌した後、79℃に昇温した。この温度のまま79℃で30分保持し、さらにシリカ濃度4.7重量%の珪酸液6414.5gを15時間かけて添加した。添加終了後さらに79℃のままで1時間保ち、その後室温まで冷却した。得られたシリカゾルを限外ろ過膜(SIP−1013、旭化成(株)製)により、シリカ濃度が12%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターでシリカ濃度20重量%まで濃縮した。
【0082】
得られたシリカゾル(Z30)は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)36nm、D2から換算された比表面積75.8m2/g、ナトリウム滴定法による比表面積は97.4m2/g、真球度0.9、表面粗度1.286、粒子変動係数(CV値)5.32%、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が3500個/mL、シリカ濃度20質量%のシリカゾルであった。
【0083】
〔シリカゾルの処理〕
前記シリカゾル(Z30)を実施例1と同様に水熱処理し、遠心分離処理して、改質シリカゾル(Z3)を調製した。
改質シリカゾル(Z3)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0084】
実施例4
実施例2と同様にして、原料シリカゾル(Z20)を調製した。
前記シリカゾル(Z20)に対して、200℃で15時間の水熱処理をした以外は実施例2と同様に処理し、次いで実施例2と同様に遠心分離処理して、改質シリカゾル(Z4)を調製した。
改質シリカゾル(Z4)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0085】
実施例5
実施例3と同様にして、原料シリカゾル(Z30)を調製した。
前記シリカゾル(Z30)に対して、200℃で15時間の水熱処理をした以外は実施例3と同様に処理し、次いで実施例3と同様に遠心分離処理して、改質シリカゾル(Z5)を調製した。
改質シリカゾル(Z5)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0086】
比較例1
実施例1と同様にして、原料シリカゾル(Z10)を調製した。
このシリカゾル(Z10)について、水熱処理及び遠心分離処理を行うことなく、実施例1と同様の研磨試験を行った。
【0087】
比較例2
実施例2と同様にして、原料シリカゾル(Z20)を調製した。
このシリカゾル(Z20)について、水熱処理及び遠心分離処理を行うことなく、実施例1と同様の研磨試験を行った。
【0088】
比較例3
実施例3と同様にして、原料シリカゾル(Z30)を調製した。
このシリカゾル(Z30)について、水熱処理及び遠心分離処理を行うことなく、実施例1と同様の研磨試験を行った。
【0089】
比較例4
珪酸ナトリウム(3号水硝子、SiO2濃度24.28質量%)46.5gに純水705.9gを添加してシリカ濃度1.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液752.4gを調製した。この珪酸ナトリウム水溶液に、実施例1で調製したものと同様な珪酸液12.9gを添加し、攪拌した後に、83℃に昇温し、83℃にて、30分間保持し、核粒子分散液とした。
次に、18℃に冷却した前記実施例1で調製したものと同様な珪酸液917.3g(シリカ換算363質量部)を添加速度5.1g/分(シリカ換算2.0質量部/分)にて、3時間かけて連続的に添加した。続いて、18℃に冷却した前記実施例1で調製したものと同様な珪酸液5497.2g(シリカ換算2173質量部)を添加速度7.6g/分(シリカ換算で3.0質量部/分)にて、12時間かけて連続的に添加した。添加終了後、83℃にて1時間保った後、室温まで冷却した。
【0090】
得られたシリカゾルを限外濾過膜(製品名:SIP-1013、旭化成(株)製)を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20%濃度まで濃縮した。
得られたシリカゾル(Zr40)は、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が36nm、D2から換算された比表面積75.8m2/g、ナトリウム滴定法による比表面積は96m2/g、真球度0.9、表面粗度1.27、粒子変動係数(CV値)5.3%、粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が3500個/mL(シリカゾルのシリカ濃度1質量%換算)のシリカ微粒子が水に分散してなるシリカゾルであった。
【0091】
前記シリカゾル(Zr40)に対して水熱処理することなく、実施例1と同様に遠心分離処理して、シリカゾル(Zr4)を調製した。
シリカゾル(Zr4)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0092】
比較例5
実施例3と同様にして、原料シリカゾル(Z30)を調製した。
このシリカゾル(Z30)に対して、130℃で5時間の水熱処理をした以外は実施例3と同様に水熱処理し、遠心分離処理をせずに、シリカゾル(Zr5)とした。
シリカゾル(Zr5)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0093】
比較例6
実施例3と同様にして、原料シリカゾル(Z30)を調製した。
このシリカゾル(Z30)に対して、実施例3と同様に水熱処理した後、遠心分離処理をせずに、シリカゾル(Zr6)とした。
シリカゾル(Zr6)について、実施例1と同様の分析および試験を行った。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例6
実施例3と同様にして、平均粒子径38nmの改質シリカゾル(Z3)を得た。改質シリカゾル(Z3)について実施例1と同様の分析を行い、結果を表2に示した。
この改質シリカゾル(Z3)を陽イオン交換処理した後、凍結乾燥(−5℃、20時間)して粉末を得た。この粉末を横半径1cmで縦3cmの円筒形に注ぎ、ラム型プレス成形機にて、100Kg/cm2の圧力で成形し、300℃で焼成した。
この成形体中の細孔容積(PV)を測定したところ、0.29ml/gであった。
【0096】
比較例7
市販のシリカゾル(触媒化成工業(株)製、カタロイドSI−45P、平均粒子径38nm)をシリカゾル(Zr7)とし、シリカゾル(Zr7)について実施例1と同様の分析を行い、結果を表2に示した。
次いで実施例6と同様にして、シリカゾル(Zr7)を陽イオン交換、凍結乾燥して、粉末を得、更に、成形、焼成を行った。この成形体中の細孔容積(PV)を測定したところ、0.34ml/gであった。
【0097】
比較例8
市販のシリカゾル(触媒化成工業(株)製、カタロイドSI−45P、平均粒子径38nm、シリカ濃度20質量%)を実施例1と同様の条件で水熱処理した後、遠心分離処理をせずに、シリカゾル(Zr8)とした。シリカゾル(Zr8)について実施例1と同様の分析を行い、結果を表2に示した。
次いで、実施例6と同様にして、シリカゾル(Zr8)を陽イオン交換、凍結乾燥して、粉末を得、更に、成形、焼成を行った。この成形体中の細孔容積(PV)を測定したところ、0.31ml/gであった。
【0098】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は充填密度が高いので、該改質シリカ系微粒子を配合した被膜形成用組成物は、均一な被膜を形成し易い。従って、絶縁用被膜または光学用被膜として良好な性能を示すことが期待される。
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は流動性に富むので、該改質シリカ系微粒子を充填剤として含有する樹脂成型物においては、成型物表面に滑性が付与される。従って、コンピュータのバックアップ用磁気テープ、8ミリ撮影装置用の磁気テープ、録音用のアラミド製テープなどに充填剤として適用され得る。
【0100】
本発明の改質シリカ系ゾルの分散質である改質シリカ系微粒子は撥水性被膜形成用組成物の充填剤として適用可能であり、また、該改質シリカ系微粒子自体を焼付けることにより撥水性のある表面を形成させる用途にも適用可能である。
この他、インク受容層用の添加剤、撥水性に基づく抗菌性のある添加剤、塗料添加剤、トナー成分など広範な用途に適用可能である。
また、本発明の改質シリカ系ゾルは研磨用組成物の成分として適用することにより、研磨速度、被研磨基材の表面粗さまたは被研磨基材上における線状痕の発生抑止などにおいて優れた効果を示すので、特にアルミニウム基板、ガラス基板、銅基板またはシリコン基板等に対する研磨材として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(a)〜(e)を満たす改質シリカ系微粒子が溶媒に分散してなる改質シリカ系ゾル。
(a)真球度が0.80〜1.00の範囲にあること
(b)ナトリウム滴定法により測定される比表面積を(SA1)とし、画像解析法により測定された平均粒子径(D2)から換算した比表面積を(SA2)としたときの表面粗度(SA1)/(SA2)の値が、1.00以上、1.20未満の範囲にあること
(c)画像解析法により測定された平均粒子径(D2)が10〜300nmの範囲にあること
(d)粒子径が800nm以上の粗大粒子の個数が、1000個/mL(固形分濃度1質量%換算)以下であること
(e)粒子変動係数(CV値)が5%以下であること
【請求項2】
前記改質シリカ系微粒子が、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリアまたはシリカ−チタニアを含有するものである請求項1記載のシリカ系ゾル。
【請求項3】
シリカ系微粒子分散液を、130〜300℃の温度範囲で3〜20時間水熱処理し、次いで、遠心分離処理して平均粒子径800nm以上の粗大粒子を除去することを特徴とする改質シリカ系ゾルの製造方法。
【請求項4】
前記シリカ系微粒子分散液が、シリカ微粒子、シリカ−アルミナ複合微粒子、シリカ−ジルコニア複合微粒子、シリカ−セリア複合微粒子、またはシリカ−チタニア複合微粒子の分散液である請求項3記載の改質シリカ系ゾルの製造方法。
【請求項5】
前記シリカ系微粒子分散液のpHが8〜12に調整されたものである請求項3または請求項4記載の改質シリカ系ゾルの製造方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の改質シリカ系ゾルからなる充填材用シリカ系ゾル。
【請求項7】
請求項1または請求項2の改質シリカ系ゾルを含むことを特徴とする研磨用組成物。

【公開番号】特開2008−273780(P2008−273780A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119026(P2007−119026)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】