説明

改質土

【課題】土構造物の強度や靱性を十分に向上させることができる改質土を提供する。
【解決手段】改質土は、盛土4など土構造物5用の土13と、セメント14と、木材17を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された木質細長片15とを含有する。木質細長片15の平均的な寸法を、断面積Sが0.01〜10.0mm、長さLが1〜30mmとする。土13に対するセメント14の含有量を30〜150kg/mとし、土13に対する木質細長片15の含有量を体積比で0.1〜20%とする。木材17を粗砕機21により破砕して、木質細長片15が、その木質繊維に沿って細長く延びる形状となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土などの土構造物に廃材などを原料とする木質細長片を含有させ、廃材の利用を可能にすると共に、上記土構造物の強度や靱性を向上させるようにした改質土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
改質土には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、改質土は緑化基盤材であって、土と、セメントと、廃材を原料とした粉砕木質チップとを含有しており、この木質チップは、10〜70mmの木質塊状体とされている。
【0003】
そして、上記緑化基盤材を用いて緑化基盤が形成され、これが植生に供されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−325527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記緑化基盤は、植生を可能にする上で、保水性や通気性が要求されるものであって、大きい強度や靱性が要求されるものではない。このため、耐震向上を図る上で、大きい強度や靱性が要求される盛土や橋台基礎への埋め戻し土など土構造物の形成に、上記緑化基盤材を用いたとすると、この土構造物には強度や靱性が大きく不足するおそれが生じて好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、土構造物の強度や靱性を十分に向上させることができる改質土を提供することである。
【0006】
請求項1の発明は、盛土4など土構造物5用の土13と、セメント14と、木材17を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された木質細長片15とを含有したことを特徴とする改質土である。
【0007】
請求項2の発明は、上記木質細長片15の平均的な寸法を、断面積Sが0.01〜10.0mm、長さLが1〜30mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の改質土である。
【0008】
請求項3の発明は、上記土13に対するセメント14の含有量を30〜150kg/mとし、上記土13に対する上記木質細長片15の含有量を体積比で0.1〜20%としたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の改質土である。
【0009】
請求項4の発明は、上記木材17を粗砕機21により破砕して、上記木質細長片15が、その木質繊維に沿って細長く延びる形状となるようにしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の改質土である。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、盛土など土構造物用の土と、セメントと、木材を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された木質細長片とを含有している。
【0013】
このため、上記改質土を盛土など土構造物の形成に用いれば、廃材とされる木材が上記改質土における木質細長片の原料として有効利用可能とされる。
【0014】
そして、上記木質細長片は細長形状であるために、木質塊状体や木質粉粒体に比べ、土とセメントとの混合物の各粒子同士を、より強固に結合させる点で優れている。また、上記したように木質細長片は細長形状であるために、可撓性や多少の弾性を有している。このため、この木質細長片を含有する改質土を土構造物の形成に用いれば、この土構造物の強度、靱性を十分に向上させることができる。
【0015】
請求項2の発明は、上記木質細長片の平均的な寸法を、断面積が0.01〜10.0mm、長さが1〜30mmとしている。
【0016】
ここで、上記木質細長片の断面積が0.01mm未満であると、この木質細長片の強度が不足しがちとなり、断面積が10.0mmを越えると、この木質細長片の可撓性、弾性が不足しがちとなって脆性が増し、外力によって折れ易くなる。また、上記木質細長片の長さが1mm未満であると、土とセメントとの混合物の各粒子同士を結合させる機能が不十分になり、長さが30mmを越えると、上記破砕による形成がし難くなる。そこで、上記断面積と長さとをそれぞれ上記範囲としたのである。
【0017】
請求項3の発明は、上記土に対するセメントの含有量を30〜150kg/mとし、上記土に対する上記木質細長片の含有量を体積比で0.1〜20%としている。
【0018】
ここで、上記セメントの含有量が30kg/m未満であると、土構造物の強度が不足しがちとなり、上記セメントの含有量が150kg/mを越えると、土構造物の形成が高価となる。また、上記木質細長片の含有量が0.1%未満であると、廃材である木材の利用が不十分になり、上記木質細長片の含有量が20%を越えると、土構造物の強度が不足しがちとなる。そこで、上記土に対するセメントと木質細長片との各含有量をそれぞれ上記範囲としたのである。
【0019】
請求項4の発明は、上記木材を粗砕機により破砕して、上記木質細長片が、その木質繊維に沿って細長く延びる形状となるようにしている。
【0020】
このため、上記改質土における木質細長片の木質繊維が有効利用される。よって、この改質土を用いて形成される土構造物の強度や靱性はより確実に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の改質土に関し、土構造物の強度や靱性を十分に向上させることができる改質土を提供する、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、改質土が、盛土など土構造物用の土と、セメントと、木材を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された木質細長片とを含有する、というものである。
【実施例】
【0022】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0023】
図1において、符号1は傾斜地盤であり、2は上記傾斜地盤1の下部に連なる水平地盤である。この水平地盤2上にコンクリート製の壁体3が立設され、上記傾斜地盤1と壁体3との間に拡幅盛土4が施工され、これが土構造物5とされている。また、上記傾斜地盤1と盛土4との各上面は面一とされて、アスファルトなどの舗装材6が敷設されている。上記土構造物5は耐震性の向上を図る上で、改質土11が用いられており、これにより、土構造物5の強度や靱性が向上させられている。
【0024】
上記改質土11は、土13と、セメント14と、木質繊維に沿って細長く延びた形状の木質細長片15とを含有し、これら13〜15を水分と共に混練機16により混練することにより上記改質土11が形成される。
【0025】
上記土13は、現地ので発生土、客土のいずれであってもよい。また、上記セメント14はJISセメントを用いればよい。上記木質細長片15の材料としては、廃材である木材17が用いられ、これには、間伐材18や建築廃材が挙げられる。また、木材17は主に檜、杉、松である。
【0026】
上記木材17は、一旦、ある大きさの木質塊状片19となるよう切断や破砕される。そして、この木質塊状片19がカッターミルなどの粗砕機21によって、粗く破砕され、所定粗さの上記木質細長片15が形成される。上記粗砕機21により木質塊状片19を破砕する過程において、上記所定粗さを越えているものは、篩装置22により上記粗砕機21に戻されて再度破砕される。
【0027】
上記粗砕機21のカッター刃24の回転速度は、木質塊状片19を粉粒状に粉砕する速さよりも遅くされている。このため、上記木質塊状片19の木質繊維が短く破断させられることは、この木質繊維が有する強度によって抑制される。この結果、上記のように木質塊状片19を破砕することにより形成される木質細長片15は、平均的に、その木質繊維に沿って細長く延びる形状とされる。なお、この木質細長片15の延びる方向は、その木質繊維の延びる方向と完全に一致している必要はないが、木質繊維にできるだけ沿っていることが好ましい。
【0028】
上記木質細長片15の所定粗さとは、その平均的な寸法として、断面積Sが0.01〜10.0mm、長さLが1〜30mmに相当するものである。
【0029】
上記土13に対するセメント14の含有量は30〜150kg/mとされている。また、土13に対する上記木質細長片15の含有量は体積比で、0.1〜20%とされている。
【0030】
なお、以上は図示の例によるが、上記改質土11は、道路や崖などの盛土4や法面に用いてもよく、橋台基礎への埋め戻し土9に用いてもよく、また、産業廃棄物、一般廃棄物を含む各種廃棄物の廃棄処分場としての埋立地の堤防に用いてもよい。また、上記粗砕機21は、ハンマークラッシャーなどの回転衝撃式粗砕機や、2つのロールを互いに逆回転させ、これら両ロールの間に上記木質塊状片19を挟み付けて圧砕することにより破砕する直圧式粗砕機であってもよい。
【0031】
上記構成によれば、盛土4など土構造物5用の土13と、セメント14と、木材17を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された形状の木質細長片15とを含有している。
【0032】
このため、上記改質土11を盛土4など土構造物5の形成に用いれば、廃材とされる木材17が上記改質土11における木質細長片15の原料として有効利用可能とされる。
【0033】
そして、上記木質細長片15は細長形状であるために、木質塊状体や木質粉粒体に比べ、土13とセメント14との混合物の各粒子同士を、より強固に結合させる点で優れている。また、上記したように木質細長片15は細長形状であるために、可撓性や多少の弾性を有している。このため、この木質細長片15を含有する改質土11を土構造物5の形成に用いれば、この土構造物5の強度、靱性を十分に向上させることができる。
【0034】
また、前記したように、木質細長片15の平均的な寸法を、断面積Sが0.01〜10.0mm、長さLが1〜30mmとしている。
【0035】
ここで、上記木質細長片15の断面積Sが0.01mm未満であると、この木質細長片15の強度が不足しがちとなり、断面積Sが10.0mmを越えると、この木質細長片15の可撓性、弾性が不足しがちとなって脆性が増し、外力によって折れ易くなる。また、上記木質細長片15の長さLが1mm未満であると、土13とセメント14との混合物の各粒子同士を結合させる機能が不十分になり、長さLが30mmを越えると、上記粗砕機21によっての破砕による形成がし難くなる。そこで、上記断面積Sと長さLとをそれぞれ上記範囲としている。
【0036】
また、前記したように、土13に対するセメント14の含有量を30〜150kg/mとし、上記土13に対する上記木質細長片15の含有量を体積比で0.1〜20%としている。
【0037】
ここで、上記セメント14の含有量が30kg/m未満であると、土構造物5の強度が不足しがちとなり、上記セメント14の含有量が150kg/mを越えると、土構造物5の形成が高価となる。また、上記木質細長片15の含有量が0.1%未満であると、廃材である木材17の利用が不十分になり、上記木質細長片15の含有量が20%を越えると、土構造物5の強度が不足しがちとなる。そこで、上記土13に対するセメント14と木質細長片15との各含有量をそれぞれ上記範囲としている。
【0038】
また、前記したように、木材17を原料とした木質塊状片19を粗砕機21により破砕して、上記木質細長片15が、その木質繊維に沿って細長く延びる形状となるようにしている。
【0039】
このため、上記改質土11における木質細長片15の木質繊維が有効利用される。よって、この改質土11を用いて形成される土構造物5の強度や靱性はより確実に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】土構造物と、その土構造物用の改質土を形成する際のフローシート図である。
【符号の説明】
【0041】
4 盛土
5 土構造物
11 改質土
13 土
14 セメント
15 木質細長片
17 木材
19 木質塊状片
21 粗砕機
24 カッター刃
S 断面積
L 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土など土構造物用の土と、セメントと、木材を原料としてそれぞれが細長く延びるよう形成された木質細長片とを含有したことを特徴とする改質土。
【請求項2】
上記木質細長片の平均的な寸法を、断面積が0.01〜10.0mm、長さが1〜30mmとしたことを特徴とする請求項1に記載の改質土。
【請求項3】
上記土に対するセメントの含有量を30〜150kg/mとし、上記土に対する上記木質細長片の含有量を体積比で0.1〜20%としたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の改質土。
【請求項4】
上記木材を粗砕機により破砕して、上記木質細長片が、その木質繊維に沿って細長く延びる形状となるようにしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の改質土。

【図1】
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【公開番号】特開2010−65503(P2010−65503A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235156(P2008−235156)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(508155882)株式会社三木地盤環境工学研究所 (3)
【出願人】(508276383)
【Fターム(参考)】