説明

改質食塩の製造方法

【課題】潮解性によるべたつきがなく、好ましい塩味を感じさせる改善された食塩を簡便に提供することができる改質食塩の製造方法を提供する。
【解決手段】改質食塩の製造方法において、カルシウム塩を含む溶媒にマイクロ波を照射する照射工程S11と、照射工程を経た溶媒と食塩とを混合した混合物を得る混合工程S12と、この混合物を加熱して水分を除去する水分除去工程S13と、水分除去工程における加熱によって高温となっている食塩を急速に冷却する急冷工程S14と設け、カルシウム塩を含む溶媒として、温泉水又は温泉水を含む溶媒を用い、前記溶媒と食塩との混合は、シャーベット状の混合物が得られるように行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉水等を利用して改質した食塩を製造する改質食塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常の食生活と密接に関係する市販の調理用食塩は、純度が99.5%で、pHが7.0程度の高純度のものである。このような市販の調理用食塩は、ナトリウム以外のミネラルの含有量が少なく、その味は好ましいものではない。そこで、このような調理用食塩には飽き足らず、ナトリウム以外のミネラルが豊富な自然塩や天然塩と呼ばれている食塩が求められている。
【0003】
このような多種のミネラルを含む食塩の製造方法として、たとえば特許文献1には、専売塩に水と水溶性ミネラル含有液を加えて専売塩を溶解し、この混合溶液を所定期間熟成して醗酵させ、この醗酵熟成混合塩を脱水して微粉化する食塩の製造方法が記載されている。この食塩には、水に溶解するカルシウムなどのミネラルが含まれるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−280355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の熟成と醗酵を経て食塩を製造する方法によれば、熟成及び醗酵に極めて長期間を要する。また、醗酵タンク等の大掛かりで複雑な設備も必要とする。また、自然塩や天然塩等に含まれる塩化カルシウムや塩化マグネシウム等のミネラルは、潮解性を有しており、湿気等により自然にべたついたり、容易に固化したりする。さらに、人に塩味を感じさせ、喉越しに刺激性と苦味を与えるのは、基本的には塩化ナトリウムである。
【0006】
そこで、本発明は、潮解性によるべたつきがなく、好ましい塩味を感じさせる改善された食塩を簡便に提供することができる改質食塩の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、温泉水等を利用し、それに含まれるカルシウム塩に由来して析出する炭酸カルシウムが、食塩の改善に効果的に作用することを知見して、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、第1の発明に係る改質食塩の製造方法は、カルシウム塩を含む溶媒にマイクロ波を照射する照射工程と、前記照射工程を経た溶媒と食塩とを混合した混合物を得る混合工程と、前記混合物を加熱して水分を除去する水分除去工程とを具備することを特徴とする。
【0009】
これによれば、マイクロ波の照射により溶媒についての殺菌や、滅菌、脱臭が行われると同時に、カルシウム塩に基づいて析出した炭酸カルシウムが塩化ナトリウムの結晶の周りに付着した食塩が得られる。これにより、潮解性が低減してべたつきや固化が少なく、かつ味覚が向上した改質食塩を得ることができる。
【0010】
第2の発明に係る食塩の製造方法は、カルシウム塩を含む溶媒と食塩とを混合した混合物を得る混合工程と、前記混合物にマイクロ波を照射する照射工程と、前記照射工程を経た混合物を加熱して水分を除去する水分除去工程とを具備することを特徴とする。
【0011】
これによれば、第1発明の場合と同様に、べたつきや固化が少なく、味覚の向上した改質食塩を得ることができる。
【0012】
第3の発明に係る食塩の製造方法は、第1又は第2発明において、前記水分除去工程における加熱によって高温となっている食塩を急速に冷却する急冷工程を備える。これによれば、乾燥した砂のようなさらさらした状態の改質食塩を得ることができる。なお、急速に冷却する代わりに自然に冷却させた場合には、得られる食塩は固まった状態となるので、その後、固まった食塩を粉砕する必要がある。
【0013】
第4の発明に係る食塩の製造方法は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記カルシウム塩を含む溶媒は、温泉水又は温泉水を含む溶媒であることを特徴とする。これによれば、温泉水に含まれる各種成分も併せて析出し、塩化ナトリウム結晶のまわりに付着するので、使用する温泉水に応じた各種の味覚や性質を有する改質食塩を得ることができる。
【0014】
第5の発明に係る食塩の製造方法は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記混合物はシャーベット状の半固形物であることを特徴とする。これによれば、食塩が溶媒に溶解している混合物の場合よりも、水分除去工程に要する時間を低減させることができる。ただし、溶媒に含まれるカルシウム塩の割合が少ない場合には、炭酸カルシウムの析出量も少なくなるので、溶媒の種類によっては、食塩に対する溶媒の比率を高める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る食塩の製造工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施に使用することができる加熱用の容器を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る食塩の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る食塩の製造工程を示す。同図に示すように、この製造工程は、所定の溶媒にマイクロ波を照射する照射工程S11と、照射工程S11を経た溶媒に対し原料となる食塩を溶解させて半固形物を生成する溶解工程S12と、この半固形物を加熱して水分を除去する水分除去工程S13と、水分除去工程により高温状態となっている食塩を急速に冷却する急冷工程S14とを備える。
【0017】
照射工程S11における所定の溶媒としては、カルシウム塩を含む溶媒が用いられる。たとえば、カルシウム塩が含まれる温泉水や、カルシウム塩が含まれる水道水が該当する。より具体的には、函館の湯の川温泉や、白老温泉の温泉湯、函館市の水道水が該当する。ちなみに、湯の川温泉の温泉水には、カルシウムイオンが600mg/kg程度含まれている。また、函館市の水道水には、カルシウムやマグネシウム等が、硬度で表して、18〜27mg/L程度含まれている。
【0018】
マイクロ波の照射は、たとえば、1Lの溶媒を収容した陶器を電子レンジに配置し、溶媒が常温から85℃に達するまで、電子レンジを15分間程度動作させることにより行われる。このとき、溶媒として上述の温泉湯を用いた場合には、白い析出物が浮遊して沈降する様子を観察することができる。この析出物は、マイクロ波の照射によるエネルギーや、それにより生じるマイクロバブルにより促されて析出した炭酸カルシウムであると考えられる((株)シーエムシー出版発行の「マイクロバブル・ナノバブルの最新技術」等参照)。
【0019】
マイクロ波の照射により、溶媒は減量して濃縮され、0.2L程度となる。なお、マイクロ波の照射により、溶媒のpHの値は、ややアルカリ性の方へ、たとえば0.5程度変化する。
【0020】
溶解工程S12では、照射工程S11を経た溶媒に原料となる食塩が溶解され、シャーベット状の半固形物が生成さる。この原料食塩としては、市販品を使用することができる。一般に市販されている食塩は、塩化ナトリウムの含有量が99.5重量%以上の高純度のものである。
【0021】
たとえば、照射工程S11を経た溶媒を、0.2〜1.4Lの範囲内の量で、加熱用の鍋に投入し、この溶液に、食塩を撹拌しながら溶解させることにより、シャーベット状の半固形物を得ることができる。ただし、1袋の食塩5kgを用いて半固形物を得るのに適した溶媒の量としては、少なくとも0.8L程度以上の量が必要であると考えられる。なお、得られたシャーベット状の半固形物は、放置すると、約5分程度で硬く固まるので、造り貯めや放置をすべきではない。
【0022】
水分除去工程S13では、溶解工程S12で得られたシャーベット状の半固形物を加熱し、水分を除去することにより、高熱の食塩を得る。半固形物の加熱は、該半固形物を生成するために使用され、そのまま半固形物を収容している鍋をコンロ上に配置し、焦げないように半固形物を撹拌しながら加熱し、その後、後の急冷工程S14での急速な冷却を行うのに適した容器に移し変えてさらに加熱することにより行うことができる。
【0023】
具体的には、まず、シャーベット状の半固形物を収容している鍋を、都市ガス用のコンロで「中火」により4分ほど加熱する。このとき、鍋の底部に溶液が下降するので、半固形物の下部は過度に水分の多いシャーベット状態となり、上部は水分が少なく、ざくざくした状態となる。
【0024】
この「中火」による4分の加熱が完了すると、次に、コンロの火力を「強火」とし、半固形物を全体的に撹拌しながら加熱する。強火にしてから1分ほど経過すると、半固形物の下部が85〜95℃となり、底からゴボン・ゴボンと沸騰を開始し、反固形物の粘りが増大し始める。
【0025】
そこで、火力を「中火」に戻し、ヘラにより、鍋内の半固形物に対し、断面がV字状の穴を形成し、その穴に集まってくる溶液を、ヘラでその穴の前後左右の半固形物に掻き揚げながら加熱する。この間、溶液は撹拌され、沸騰しながら蒸発するので、半固形物はさらに粘りを増す。
【0026】
「中火」に戻してから約7分経過すると、粘りのある粘土状の状態から急激に蒸気を発し、半固形物は乾燥状態となる。このとき、乾燥状態となった半固形物の上部における鍋の内壁に接する部分の温度は約65〜70℃程度となる。撹拌している下部の約100℃に温度が分布している鍋の壁面に接する部分では、水分が蒸発してしまい、塩が堅く付着した状態となる。
【0027】
この後、約9分経過すると、コンロを消化し、水分除去工程S13の前半を終える。このように、水分除去工程S13の前半には約20分程度を要する。これにより、半固形物は、湿気を含んだご飯状態のものとなる。次に、この高温のご飯状態となっている半固形物を、急速冷却に適した容器に移し、さらに加熱して水分を除去する水分除去工程S13の後半を行う。
【0028】
図2はこのときに使用される容器の一例を示す。同図に示すように、この容器20は、ステンレス製であり、底が深い横長の形状を有する。すなわち、長さ×深さ×幅が80×25×30cmである。厚さは底部が1.5mm、側面が1.0mmである。容器20は、下部の四隅に4本の足21が設けられており、足21により、コンロ30の上方で支持される。
【0029】
水分除去工程S13の後半では、まず、ご飯状態となった半固形物を容器20に移し、容器20の横中心部分22にコンロ30による直接の火力を供給する。約4分が経過し、半固形物の温度が約85〜95℃になると、蒸発する水分が拡散し易いように、半固形物が容器20の長さ方向に大きく移動するように半固形物を撹拌する。
【0030】
このとき、水分を多く含む部分に応じて撹拌部分を調整しながら撹拌を行う。また、加熱時間が経過するうちに、撹拌の不均衡により塩が焦げ付いた部分が容器20に生じた場合には、水や温泉水等を、その容器20部分の外側に数滴付与し、その容器20部分を収縮させ、内側に付着している塩を剥離させる。このようにして、任意の時間が経過し、水分の除去が完了すると、水分除去工程S13を終了する。
【0031】
なお、途中で半固形物を容器20に移し変えることなく、最初から容器20を用いて水分除去工程S13を行うようにしてもよい。
【0032】
急冷工程S14では、水分除去工程S13での加熱により高温となっている食塩を、強制的かつ急速に冷却する。すなわち、この高温の食塩を保持している容器20を、水槽内の約20℃の水に漬けることにより、容器20内の塩を急速かつ強制的に冷却する。冷却が完了すると、容器20内の食塩は、乾燥した砂のようなサラサラの結晶の状態となる。これにより、水分除去工程S13が終了し、改質食塩を得ることができる。
【0033】
図3は本発明の他の実施形態に係る食塩の製造工程を示す。同図に示すように、この製造工程は、所定の溶媒に対し原料となる食塩を溶解させて半固形物を生成する溶解工程S31と、この半固形物にマイクロ波を照射する照射工程S32と、照射工程S32を経た溶半固形物を加熱して水分を除去する水分除去工程S33と、水分除去工程により高温状態となっている食塩を急速に冷却する急冷工程S34とを備える。
【0034】
図1の製造工程ではマイクロ波の照射を、原料食塩を溶解させる前の溶媒に対して行っているのに対し、図3の製造工程ではマイクロ波の照射を、原料食塩を溶解させて生成した半固形物に対して行うようにしている。そして、半固形物の場合にはマイクロ波が通り難く、対流も起こらないので、照射工程S32においてマイクロ波の照射を行うに際しては、半固形物を時々撹拌し、表面側に位置する部分を交替させながら行う必要がある。その他の点については、図1の製造工程の場合と同様である。
【0035】
次に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例1における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水2Lにマイクロ波を照射したもの」を調整した。
【0036】
この温泉水は、泉質がナトリウム・カルシウム−塩化物泉、中性等張性高温泉であり、主な陽イオンとして、ナトリウムイオンを2016〜2361mg/kg、カリウムイオンを127.4〜154.6mg/kg、マグネシウムイオンを173.0〜191.5mg/kg、カルシウムイオンを603.6〜622.8mg/kg程度含むものである。
【0037】
溶媒の調整に際し、マイクロ波の照射は、該温泉水2Lを陶器に収容し、電子レンジにより常温から約85℃まで昇温させることにより行った。この昇温に15分を要した。昇温に際し、炭酸カルシウムと思われる白い結晶粒が析出して浮遊し、沈降してゆくのが観察された。このとき、水分の蒸発により、溶媒は減量して濃縮され、0.4L程度となった。また、マイクロ波の照射により、溶媒のpHの値は、照射前の7.5から、照射後の7.0〜7.5に変化した。
【0038】
次に、このようにして得られる溶媒0.8L程度を図2の容器20に投入し、該溶媒に対し、塩化ナトリウムの含有量が99.5wt%の原料食塩を溶解させ、撹拌しながら、シャーベット状の半固形物を得た。溶解させる原料食塩の量は、表1の実施例1における「食塩量」の欄に示す5kgとした。
【0039】
次に、この半固形物を、図2のようにコンロ30の上方に配置された容器20内で平らにならし、コンロ30に点火し、容器20の中央部分を強い火力で加熱した。点火から4分ほど経過し、ボコボコと蒸気泡が生じる小さい音が発生し始めると、半固形物の撹拌を開始した。さらに、半固形物内部の温度が約65〜85℃に達すると、水分が容易に蒸発して拡散するように、半固形物を、容器20の長さ方向に大きく移動させながら撹拌した。
【0040】
さらに加熱し、容器20の中央部分が約85〜90℃になると、コンロ30を消化し、乾燥した砂状となった高温の食塩を得た。
【0041】
次に、この約85℃前後の食塩を急速に冷却した。すなわち、容器20を水槽内の約17℃の水に漬けて、容器20内の75〜85℃程度の食塩を撹拌しながら、該食塩の温度を約20℃まで降下させ、乾燥した砂のようにさらさらした状態の改質食塩を得た。この冷却に要した時間は約13分であった。得られた改質食塩は、塩化ナトリウム結晶の周りに炭酸カルシウムその他の析出物が付着し、顆粒状となっていた。
【0042】
【表1】

【0043】
次に、得られた改質食塩について、25人の女性モニタを用い、表2の「味覚区分」の欄における各味覚を感じた人数を調べた。この結果を、表2の「人数」の欄に示す。また、この味覚調査の結果が表2により示されることを、表1の実施例1における「味覚」の欄に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
次に、得られた改質食塩について、男女20人のモニタを用い、財団法人塩事業センター製の食塩との相違を、「水溶解性」、「味覚」、「形容」、及び「潮解性」の各項目について調べた。この結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
[実施例2]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例2における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水1Lにマイクロ波を照射したもの」を調整し、この溶媒に溶解させる原料食塩の量を「食塩量」の欄に示す1kgとした以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0048】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水に溶かし、その水溶液における塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は3.6wt%であり、pHは7.0であった。この結果を、表1の実施例2における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0049】
次に、得られた改質食塩10gを100ccの水に溶かし、その水溶液における塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は7.5wt%であり、pHは7.0であった。この結果を、表1の実施例2における「NaCl濃度」及び「pH」の欄において括弧内に示す。
【0050】
次に、得られた改質食塩の味覚を調べたところ、通常の塩味であった。この結果を表1の実施例2における「味覚」の欄に示す。
[実施例3]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例3における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水2Lにマイクロ波を照射したもの」を調整し、この溶媒に溶解させる原料食塩の量を1kgとした以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0051】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水に溶かし、その水溶液における塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は4.4%であり、pHは8.5であった。この結果を、表1の実施例3における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0052】
次に、得られた改質食塩の味覚を調べたところ、苦みと辛みのある塩味が感じられた。この結果を表1の実施例3における「味覚」の欄に示す。
[実施例4]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例4における「溶媒」の欄に示す「白老温泉の温泉水2Lにマイクロ波を照射したもの」を調整した以外は、実施例1と同様にして改質食塩を得た。なお、白老温泉の温泉湯は、ナトリウム−塩化物・炭酸水素塩泉であり、pHが6.5である。
【0053】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水に溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は1.8%であり、pHは7.5であった。この結果を、表1の実施例4における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0054】
次に、得られた改質食塩について、15人の女性モニタを用い、表4の「味覚区分」の欄における各味覚を感じた人数を調べた。この結果を、表4の「人数」の欄に示す。また、この味覚調査の結果が表4により示されることを、表1の実施例4における「味覚」の欄に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
[実施例5]
溶媒に溶解させる塩化ナトリウムの量を1kgとした以外は実施例4の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0057】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水に溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は2.5wt%であり、pHは7.0〜7.5であった。この結果を、表1の実施例5における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0058】
次に、得られた改質食塩の味覚を調べたところ、人の味覚に合致する塩味であった。この結果を表1の実施例5における「味覚」の欄に示す。
【0059】
[実施例6]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例6における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水1Lにマイクロ波を照射したもの0.8Lと、水道水で薄めてpH4とした食酢0.5Lとを混合した溶媒」を調整した以外は、実施例1と同様にして改質食塩を得た。
【0060】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水道水に溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は3.0%であり、pHは5.5であった。この結果を、表1の実施例6における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
[実施例7]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例7における「溶媒」の欄に示す「水道水1Lにマイクロ波を照射したもの」を調整し、溶媒に溶解させる塩化ナトリウムの量を1kgとした以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。この水道水は、函館市の上水道水であり、8.1mg/Lの塩化物イオンを含むものである。
【0061】
次に、得られた改質食塩5gを100ccの水に溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は3.6%であり、pHは6.5であった。この結果を、表1の実施例7における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0062】
次に、得られた改質食塩10gを100ccの水に溶かし、その水溶液における塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は7.5wt%であり、pHは7.0であった。この結果を、表1の実施例7における「NaCl濃度」及び「pH」の欄において括弧内に示す。
【0063】
次に、得られた改質食塩について、17人の女性モニタを用い、表5の味覚区分の欄における各味覚を感じた人数を調べた。この結果を、表5の「人数」の欄に示す。また、この味覚調査の結果が表5により示されることを、表1の実施例7における「味覚」の欄に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
[実施例8]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例8における「溶媒」の欄に示す「水道水2Lにマイクロ波を照射したもの」を調整し、この溶媒に溶解させる塩化ナトリウムの量を1kgとした以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0066】
次に、得られた改質食塩5gを水道水100ccに溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は2.4wt%であり、pHは5.5であった。この結果を、表1の実施例8における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0067】
次に、得られた改質食塩の味覚を調べたところ、甘みが加わった塩味の味であった。この結果を表1の実施例8における「味覚」の欄に示す。
[実施例9]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例9における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水200ccと、水道水200ccとを混合した溶媒」を調整し、この溶媒に溶解させる塩化ナトリウムの量を1kgとした以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。ただし、ここで使用した湯の川温泉の温泉水は、塩化ナトリウムの濃度が0.4wt%、pHが7.5であった。
【0068】
次に、得られた改質食塩5gをpH6.5の水道水100ccに溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は3.5wt%であり、pHは7.0であった。この結果を、表1の実施例9における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
[実施例10]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例10における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水300ccと、水道水300ccとを混合した溶媒を用いたこと以外は実施例9の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0069】
次に、得られた改質食塩5gをpH6.5の水道水100ccに溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は3.2%であり、pHは7.5であった。この結果を、表1の実施例10における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
[実施例11]
原料食塩を溶解させる溶媒として、表1の実施例11における「溶媒」の欄に示す「湯の川温泉の温泉水500ccと、水道水300ccとを混合した溶媒を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして改質食塩を得た。
【0070】
次に、得られた改質食塩5gをpH6.5の水道水100ccに溶かし、塩化ナトリウムの濃度及びpHを測定した。塩化ナトリウムの濃度は4.2%であり、pHは6.5〜7.0であった。この結果を、表1の実施例11における「NaCl濃度」及び「pH」の欄に示す。
【0071】
以上の表1〜表5の結果からわかるように、溶媒、及び溶媒に溶解させる食塩量に応じて、塩化ナトリウムの濃度及びpHが異なる多様な味覚の改質食塩を得ることができる。ただし、食塩のpH7に近いpHを有するほうが、食塩本来の味覚に近い味覚を得ることができると考えられる(実施例2、4、5、7)。
【0072】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、シャーベット状の半固形物を生成するに際し、溶媒に対して食塩を溶解させるようにしているが、この代わりに、食塩に対し、溶媒を添加し、混合してゆくことにより、シャーベット状の半固形物を生成するようにしてもよい。
【0073】
また、シャーベット状の半固形物を生成する代わりに、溶媒に対して食塩がかなり溶解されている混合物を生成し、この混合物について、水分除去を行い、改質食塩を得るようにしてもよい。これによれば、溶媒が、カルシウム塩の含有量が比較的微量である水道水であるような場合、食塩に対する溶媒の割合を大きくし、食塩に対する炭酸カルシウムの割合を増大させることができる。
【符号の説明】
【0074】
20…容器、30…コンロ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム塩を含む溶媒にマイクロ波を照射する照射工程と、前記照射工程を経た溶媒と食塩とを混合した混合物を得る混合工程と、前記混合物を加熱して水分を除去する水分除去工程とを具備することを特徴とする改質食塩の製造方法。
【請求項2】
カルシウム塩を含む溶媒と食塩とを混合した混合物を得る混合工程と、前記混合物にマイクロ波を照射する照射工程と、前記照射工程を経た混合物を加熱して水分を除去する水分除去工程とを具備することを特徴とする改質食塩の製造方法。
【請求項3】
前記水分除去工程における加熱によって高温となっている食塩を急速に冷却する急冷工程を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質食塩の製造方法。
【請求項4】
前記カルシウム塩を含む溶媒は、温泉水又は温泉水を含む溶媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の改質食塩の製造方法。
【請求項5】
前記混合物はシャーベット状の半固形物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の改質食塩の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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