説明

放出装置

【課題】エアロゾルの挙動を楽しむことができる放出装置を提供する。
【解決手段】放出装置は、滞留空間13と、通路40と、容積可変手段19とを有する。滞留空間13には、煙102および霧を含むエアロゾル、または蒸気が滞留する。通路40は、滞留空間13からエアロゾルまたは蒸気を外界に放出するためのものであって、円筒状に形成されている。通路40は、その一端40aが外界に露出しており、その軸長Lは、少なくともその直径d程度の長さを有している。容積可変手段19は、滞留空間13の容積を変動させることにより、通路40の外界側の一端40aからエアロゾルまたは蒸気を放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾルまたは蒸気を放出し、エアロゾルまたは蒸気の挙動を楽しむことができる放出装置であって、たとえば、お香を焚いた煙および香りを放出する香炉や、霧化された水分を放出する加湿器などとして利用することができる放出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、お香を焚いて香りを楽しむことが見直されている。特許文献1には、全体が横長形状であって、上壁に複数の開口部が設けられた香炉が開示されている。この香炉では、線香を香炉内の底に横置きにした状態で燃焼させ、上壁に設けられた開口部から香りを放出する。
【0003】
また、水を気化あるいは霧化させて吹出口から放出する加湿器が知られている。特許文献2には、充電式の電池電源を備えた加湿器が開示されている。この加湿器は、水槽内の水を気化あるいは霧化させ、送風機により吹出口から放出する。
【0004】
さらに、密閉されたケース内の気体を圧縮して放出口から発射する空気砲と称される技術が知られている。特許文献3には、空気砲に芳香ユニットを接続して、香料を散布する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平10−137109号公報
【特許文献2】特開2003−97830号公報
【特許文献3】特開2004−298607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
香炉や加湿器などのように、煙や霧といったエアロゾルを放出させる装置が日常的に使用されている現在、このような放出装置としては、従来の用途に加えて、新しい楽しみ方を提案できるものが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、煙および霧を含むエアロゾル、または蒸気が滞留する空間と、その滞留する空間からエアロゾルまたは蒸気を外界に放出するための円筒状の通路であって、その一端が外界に露出する通路と、滞留する空間の容積を変動させることにより、通路の外界側の一端からエアロゾルまたは蒸気を放出可能な容積可変手段とを有し、通路は、少なくともこの通路の直径程度の軸長を備えている放出装置である。
【0007】
この放出装置は、空間にエアロゾルまたは蒸気を滞留させ、容積可変手段により、滞留する空間の容積を変動させて円筒状の通路の外界側の一端から、エアロゾルまたは蒸気を外界に放出させるものである。したがって、お香を単に焚いたときの煙、あるいは、加湿器から放出される水蒸気や霧などのように、エアロゾルまたは蒸気を外界に、連続的または継続的に放出する装置とは異なり、エアロゾルまたは蒸気をパルス的に放出する。そして、空間からエアロゾルまたは蒸気を外界に放出するための通路を、少なくともこの通路の直径程度の軸長を備えた円筒状とすることにより、高い確率で、特に、低速で通路から外界に放出されるエアロゾルまたは蒸気を、濃度が均一で、歪みが少ない、円形に近いきれいなリング状(ドーナツ状)の雲のようにすることができる。
【0008】
また、放出装置から放出されるエアロゾルまたは蒸気のリングは、その断面において、内側から外側に向け回転し、その回転速度は円周に沿ってほぼ等速になるため、リング状が長時間にわたり安定する。このため、放出装置により放出されてから長期間、遠くまでリングの形状が残る。したがって、この放出装置によれば、リング状のエアロゾルが放出される確率を高くすることができ、しかも、リング状のエアロゾルの品質(見た目の美しさ)と、存続時間とを向上できる。
【0009】
空気溜まりを形成するケースに放出口を設け、ケース内の空気を圧縮して放出口より特定の個所に向けて放出する空気砲と称される技術は知られている。この空気砲は、目的個所に匂いを拡散することなく到達させることを目的としたものであり、空気砲からリング状あるいはドーナツ状になった気体が放出されるか否かを問題にしていないし、気体が到達する過程を目で見て楽しむようなものでもない。
【0010】
これに対し、香炉あるいは加湿器といった装置は、放出されるエアロゾルあるいは蒸気を、目的個所に到達させるのではなく、周囲に穏やかに放出することを目的としている。本発明の一形態に係る放出装置は、そのような周囲に穏やかに放出されるエアロゾルあるいは蒸気を特定の形をイメージできる塊とし、さらに、そのエアロゾルあるいは蒸気の放出される塊の形状を高い確率で整えることができるものである。空気中に浮遊するエアロゾルまたは蒸気の塊の形状を視覚により楽しもうとしたときに、放出速度はできるだけ遅い方が好ましく、その一方で、放出速度が遅いためか、形状が不安定になることを本願発明者は見出した。そして、そのような条件で放出されるエアロゾルまたは蒸気の形を高い確率で円形に近いリング状にする条件の一つとして、円筒状の通路の軸長を、少なくともこの通路の直径程度の長さにするとよいことを見出した。
【0011】
ソリッドエアロゾルの一例は煙であり、リキッドエアロゾルの一例は霧である。したがって、本発明の一形態には放出装置として、煙や霧などのエアロゾルまたは水蒸気などの蒸気を放出する香炉や加湿器などが含まれる。そして、従来の香炉あるいは加湿器としての用途に加えて、放出されるエアロゾルまたは蒸気の挙動を楽しむという新しい機能が付加された装置を提供することができる。
【0012】
この放出装置によれば、通路の軸長が通路の直径程度の長さ以上であれば、放出されるエアロゾルまたは蒸気の形を高い確率で円形に近いきれいなリング状にすることが可能である。香炉あるいは加湿器としての従来の外観を大幅に変えずに、放出装置を、コンパクトに設計するためには、通路の軸長Lと、通路の直径dとは、以下(1)式の条件を満たすことが好ましい。
d≦L≦2d…(1)
【0013】
ところで、エアロゾルまたは蒸気が外界に放出されると、外界でエアロゾルの分散質や蒸気から変化した霧などの粒子は散逸される。このため、1秒あるいは数秒程度時間が経過すると、エアロゾルの塊は、可視性を失うことが多い。エアロゾルを、可視性を保った状態で断続的に周期的に1つのシリーズとして放出する場合、エアロゾルの塊が散逸して可視性を失う前に、次の塊を放出することが好ましい。
【0014】
一方、空間内に滞留するエアロゾルまたは蒸気の量は、空間の容積に比例する。このため、エアロゾルまたは蒸気の塊を断続的に周期的に放出する場合には、1回に放出されるエアロゾルまたは蒸気を所定の量に抑える必要がある。また、放出される量を抑えることにより放出速度が下がるので、放出されたエアロゾルまたは蒸気の塊を長時間浮遊させることができる。
【0015】
たとえば、1秒程度以下の変動パルス(加圧パルス)で、エアロゾルまたは蒸気の塊を放出する場合、1回に放出されるエアロゾルまたは蒸気の量は、滞留空間の容積に対して最大10%程度であることが好ましい。すなわち、容積可変手段は、1秒程度以下の変動パルスで、滞留空間の容積を最大10%程度で変動させることが好ましく、さらに好ましくは、容積可変手段は、通路の外界側の一端からエアロゾルまたは蒸気を断続的に放出可能なものであるとよい。このようにすることにより、エアロゾルを、可視性を保った状態で断続的に周期的に1つのシリーズとして放出することができる。
【0016】
容積可変手段の一例として、滞留する空間の容積を周期的に変動させる容積変動部材と、この容積変動部材を周期的に動作させる動作手段(駆動機構)とを備えており、動作手段によって容積変動部材の位置を相対的に動かすことにより、滞留する空間の内圧を変動させるものが挙げられる。相対的に動かすとは、滞留する空間を固定し、それに対して容積変動部材、たとえば、ピストン、振動板、あるいは振動膜を動かしても良く、容積変動部材を固定して滞留する空間を形成する容器を動かしても良く、さらに、容器と容積変動部材との双方を動かしても良いことを意味する。相対的に動かす機構は様々なものがあり、メリーゴーランドのようなリンク機構をモータで駆動するもの、電磁石を用いて駆動するもの、流体を用いて駆動するものなどがある。
【0017】
また、滞留する空間にエアロゾルまたは蒸気を補給することにより、より安定した状態のエアロゾルまたは蒸気を放出でき、放出された塊の形状も見え易くなる。したがって、この放出装置は、エアロゾルまたは蒸気を発生させる手段をさらに有することが好ましい。
【0018】
たとえば、この放出装置を香炉に適用する場合、エアロゾルを発生させる手段として、お香を用いることができる。お香から発せられる煙が空気中に分散し、ソリッドエアロゾルとなる。容積可変手段が、1秒程度以下の変動パルスで、滞留する空間の容積を最大10%程度で変動させるような場合であれば、従来知られているお香を用いることで、空間にエアロゾル(お香の煙)を良好に補給することができる。
【0019】
さらに、滞留する空間側の通路の端(他端)はベルマウス状であることが好ましい。通路を通って外界に放出されるエアロゾルおよび蒸気が円形に近いリング状になる確率をさらに向上できる。
【0020】
上記の通路は、容器に直に形成されたものであっても良く、異なるユニットを取り付けることにより形成されても良い。本発明の他の態様は、煙および霧を含むエアロゾル、または蒸気が滞留する空間を形成するための容器に取り付けることにより、滞留する空間からエアロゾルまたは蒸気を外界に放出するための円筒状の通路を形成可能な出口ユニットであって、通路は、その一端が外界に露出し、その軸長は少なくともその直径程度の長さを備えている、出口ユニットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1に、本発明の放出装置の一実施形態としての香炉の斜視図を示してある。図2に、図1に示す香炉の内部の概略構成を断面により示してある。お香は、一般的に、これを燃焼させる(焚く)ことにより、香りおよびエアロゾルの分散媒となる煙が発生する。香炉は、このようなお香を燃焼させることにより、香りおよび煙の供給源とするためのものである。
【0022】
図1および図2に示すように、この香炉1は、縦置き(図1参照)でも横置き(図2参照)でも使用できるようになっている。この香炉1は、上方が開放された偏平な有底円筒状の容器10と、容器10の上方の開口端11を閉塞させる蓋20と、この蓋20の略中央に設けられた小開口21に着脱自在に取り付けられるキャップ(出口ユニット)30とを備えている。容器10および蓋20は、耐熱性の良好なセラミックスで形成されている。なお、容器10および蓋20は、金属、あるいは耐熱性の良好な合成樹脂などによって形成してもよい。
【0023】
キャップ30は、蓋20の小開口21を覆うキャップ本体31と、このキャップ本体31の裏面31aに配置された、お香100を把持するための把持部32とを備えている。キャップ本体31は、そのほぼ中央に、キャップ本体31を貫通するような円筒状の通路40を有しており、その一端40aが外界110に露出している。キャップ本体31からは、弾性変形しながら蓋20の小開口21に入りこむ複数の爪33が下方に向かって突き出ている。把持部32は、通路40の容器10の内側の他端40bの近傍に配置されている。把持部32は、お香100を支持する受け金具34として、断面が略C字状(コ字型)となる部分を含むように金属板を曲げてなる、金属性板バネを備えている。この受け金具(板バネ)34は、断面が略C字状(コ字型)となっている部分に、その開いた側からお香100を挿入することで、これを支持する。キャップ本体31もまた、耐熱性の良好なセラミック、金属、あるいは合成樹脂などによって形成されている。
【0024】
容器10の内部は、この容器10の内部を上下に仕切るように取り付けられた振動膜(振動板)12により上下に2分割されている。振動膜12の上部は、お香100を焚いた香り101および煙102が滞留する空間(滞留空間)13であり、振動膜12の下部は、この振動膜12を駆動させる機構が収納された収納空間14である。したがって、キャップ30の円筒状の通路40は、キャップ30を蓋20の小開口21に取り付けることにより、一端40aが外界110に露出し、他端40bが滞留空間13に繋がり、お香100を供給源とする香り101および煙102を外界110に放出するための通路として機能する。本実施形態の香炉1では、滞留空間13が1000cc程度以下となるような容器10を用いている。
【0025】
容器10の内部を2分割する振動膜12は、ゴムなどの弾性材料からなり、その中央には、プラスチックなどのゴムよりも変形し難い硬質な材料からなる支持板15が貼り付けられている。駆動機構16により振動膜12を周期的に動かすことにより、滞留空間13の容積を変化させ、滞留空間13の圧力を変動することができ、エアロゾル102を、通路40を介して放出できる。
【0026】
収納空間14に収納された駆動機構16は、たとえば、ゼンマイ式のオルゴールである。ゼンマイによりオルゴール16のドラム16aが回転されると音が出ると共に駆動歯車16bが回転されると、この歯車16bにより、先端部が支持板15に固定された連結アーム16cが上下に駆動され、滞留空間13の容積が周期的に変動し、圧力が脈動する。したがって、香炉1からオルゴール16の音が聞こえ、音色に合わせて香り101および煙102が断続的に放出される。この香炉1では、1秒程度以下の変動パルスで、滞留空間13の容積を最大10%程度で変動させるように、駆動機構16、振動膜12、および支持板15を含む容積可変手段19が選択されている。滞留空間13の容積変動をこの程度にすることにより、通路40を介して外界110に対し、特定の目標に向けて到達させるような速度ではなく、吹出された煙102が、香炉1からそれほど遠くない範囲を漂うあるいは浮遊するような速度で煙102を放出できる。
【0027】
なお、駆動機構16は、オルゴールに限定されるものではなく、振動膜12を駆動できるものであれば良い。その駆動機構の動きを振動膜12に伝達する機構も、アームのようなリンク機構に限らず、マグネット式の駆動機構などであっても良い。マグネット式の駆動機構の一例は、電磁コイルを制御ユニットによってオン・オフし、支持板15に取り付けられた鉄片を所望の周波数あるいは周期で揺動(振動)させるものである。この場合、駆動機構内に電源となるバッテリを設置することが望ましい。
【0028】
通路40の直径dと軸長Lとの関係は、以下の(1)式を満たす。
d≦L≦2d…(1)
すなわち、通路40の軸長Lは、直径dと同程度あるいはそれ以上にすることが望ましく、香炉1としてのデザインからは軸長Lは通路40の直径dの2倍程度以下であることが望ましい。
【0029】
この香炉1では、お香100を燃焼させながら、振動膜12を駆動させることにより、滞留空間13の容積を周期的に変動させて、煙102をパルス的に放出でき、放出される煙102の塊が、濃度が均一で、歪みの少ない、円形に近いきれいなリング状の雲のようになる確率が高い。図1に示すように、香炉1を縦置きすれば、リング状の煙102は水平方向にパルス的に放出される。また、図2に示すように、香炉1を横置きすれば、リング状の煙102は上方にパルス的に放出される。
【0030】
したがって、この香炉1によれば、お香100の香り101を楽しむ従来の用途に加え、放出される煙102の挙動を楽しむことができる。特にこの香炉1は、振動板12などを含む容積可変手段19により、1秒程度以下の変動パルスで、滞留空間13の容積を最大で10%程度で変動させる。このため、香炉1から比較的低い速度で煙が放出され、香炉1の近傍でリング状の煙102が形成され、それらが断続的に連なった状態に見え、その後、消えるという状態になることが多い。すなわち、この香炉1から、比較的低い速度で放出された煙102は、その断面において、内側から外側に向けて回転し、その速度もリングの円周方向に沿ってほぼ等速になる。このため、リング状になる確率が高く、しかも、長時間、遠くまでリングの形状が残ることが多い。したがって、存続時間が長く、見た目の美しいリング状の煙102を高い確率で形成することができる。
【0031】
キャップ30と蓋20とは別体になっており、キャップ30にお香100が装着できるので、蓋20を開け閉めしなくてもキャップ30を取り外すだけでお香100を取り替えて着火できる。さらに、通路40を備えたキャップ30を取り付けできる開口を有する容器を備えた香炉であれば、この通路40を備えたキャップ30を取り付けることにより、リング状の煙の塊が形成される確率を向上できる。軸長Lの長い通路によりリング状に煙の塊が形成される確率が向上できる理由として考えられることの1つは、軸長Lを長くすることにより、煙が通路40を流れる際に通路の内壁と接触する長さが増え、通路40の中央の流速と、周囲の流速とに差が生じ易くなり、その速度差がリング状の塊の形成に寄与しているのではないかということである。すなわち、煙102は、内側から外側に向けて回転し、さらにその速度が円周方向に沿ってほぼ等しくなるため、綺麗なリング状になり易いと考えられる。
【0032】
空間13から外界に吹出される煙の速度が大きな場合、例えば、特定の目標に到達するように吹き出す場合は、外界に放出される段階で煙の中心と周囲との速度差は発生し易いと考えられる。これに対し、煙の放出速度が小さく、断続的であると、煙の中心と周囲との速度差を大きくできず、リング状にはなり難いと考えられるが、本例の通路40を採用することにより、煙102は、その断面において、内側から外側に向けてきれいに回転するため、リング状になる確率を大幅に向上できる。
【0033】
図3は、本発明の放出装置の他の実施形態としての香炉1を、通路40の近傍を拡大して示してある。この香炉1では、キャップ30の通路40の滞留空間13の側の出口、すなわち、通路40の他端40bをベルマウス状に形成している。このような形状を採用することにより、さらに煙の放出速度が低いケースでも、リング状の塊を形成し易い。その要因の一つは、煙102の流れが整えられるため、または、煙102と通路40の接触面積が増えるためと考えられるが定かではない。
【0034】
図4は、本発明の放出装置のさらに他の実施形態としての香炉1を、通路40の近傍を拡大して示してある。この香炉1は、蓋20に上記と同様の通路40を形成したものであり、さらに、香炉1の把持部32を蓋20の裏面31aに形成しており、蓋20で直にお香100を保持できるようになっている。なお、この香炉1では、蓋20に形成された通路40の滞留空間13側の他端40bをベルマウス状に形成しているが、通路40の他端40bは直線状であってもよい。
【0035】
なお、本発明の実施形態に含まれる香炉1のデザインは上記に限定されるものではない。例えば、蓋20と容器10とが別体である必要はなく、蓋が容器を兼ねることも可能である。例えば、ドーム型あるいは下側に開放した扁平な筒型の蓋の裏面にお香を保持した状態で机などの上に設置すると、蓋の内部に密閉された空間を形成でき、香炉として使用できる。
【0036】
また、本実施形態では、容器に収納された駆動機構16、振動膜12、および支持板15を含む容積可変手段19を使用しているが、容積可変手段は、これに限定されるものではない。例えば、蓋の一部あるいは全部を弾性部材(エラストマ)とし、指などで外部から叩いた振動により、蓋と容器との間の容積を変動させ、通路40の外界側の一端40aからエアロゾルまたは蒸気を放出させるタイプの容積可変手段を含む放出装置であっても良い。
【0037】
本実施形態では、放出装置として、お香100を焚いた煙102を放出する香炉1を例にとって説明したが、本発明の放出装置は、香炉のほか、霧化された水分を放出する加湿器など、他のエアロゾルあるいは水蒸気を放出する装置を含む。加湿器は、例えば、水を溜めるタンクと、この水を水蒸気または霧にするための超音波振動装置などの装置とを備え、滞留空間内に水蒸気または霧を滞留し、放出するものである。超音波振動により霧化された水を使用する放出装置は、水の供給が容易であること、放出装置が開放系でも安全であること、加湿器として使用できることなど多くのメリットを備えており、本発明の放出装置の望ましい形態の1つである。
【0038】
香炉や加湿器などの用途では、通常、滞留空間が1000cc程度以下と小さい。また、香炉や加湿器などは、圧力容器である必要はなく、容器の壁の厚さも薄い。これに対し、上記の本例においては、壁(蓋、キャップ、上壁など)を厚くしたり、壁とは別に円筒状の通路を設けることにより、形の良いリング状の煙を放出できるようにしている。したがって、本発明は、滞留空間が1000cc程度以下の香炉や加湿器に好適である。
【0039】
また、本発明の放出装置は、ドライアイスから発せられる白煙(ミスト)などから、リング状の煙の塊が飛び出す様子を楽しむようにしてもよい。本発明の放出装置は、インテリアや、音楽と連動して雲からリング状の塊を放出するようなアミューズメント用の機器としてなど、様々な用途に用いることができる。
【0040】
なお、本発明の放出装置において、放出するものの対象は、線香から発せられる煙、霧化された水分、ドライアイスの煙などに限定されるものではなく、たとえば、様々な色の付いた煙であっても良い。また、放出する対象としては、気体中に固体が分散されているソリッドエアロゾルや、気体中に液体が分散されているリキッドエアロゾルといった、エアロゾル全般を挙げることができる。
【0041】
また、蒸気は、気体であり、一部の気体を除き、水蒸気を含めてその多くは透明で不可視であるが、蒸気を外界に放出する場合、この蒸気は、外界の気体によって冷やされてミスト状となって可視となることが多い。このため、本発明の放出装置では、蒸気を放出させるようにしてもよい。さらには、本発明の放出手段では、低温の空気による雲から低温の空気のリングを放出し、その屈折率の相違を影絵のように表したりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の放出装置の一実施形態としての香炉を示す斜視図。
【図2】図1の香炉を示す断面図。
【図3】本発明の放出装置の他の実施形態としての香炉を、通路の近傍を拡大して示す断面図。
【図4】本発明の放出装置のさらに他の実施形態としての香炉を、通路の近傍を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0043】
1 香炉(放出装置)、 13 滞留空間
19 容積可変手段、 30 キャップ(出口ユニット)
40 通路、 41a 通路の一端
41b 通路の他端、 102 煙(エアロゾル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙および霧を含むエアロゾル、または蒸気が滞留する空間と、
前記滞留する空間から前記エアロゾルまたは蒸気を外界に放出するための円筒状の通路であって、その一端が外界に露出する通路と、
前記滞留する空間の容積を変動させることにより、前記通路の前記外界側の一端から前記エアロゾルまたは蒸気を放出可能な容積可変手段とを有し、
前記通路は、少なくとも当該通路の直径程度の軸長を備えている、放出装置。
【請求項2】
請求項1において、前記容積可変手段は、1秒程度以下の変動パルスで、前記滞留する空間の容積を最大10%程度で変動させる、放出装置。
【請求項3】
請求項1において、前記容積可変手段は、前記通路の前記外界側の一端から前記エアロゾルまたは蒸気を断続的に放出可能である、放出装置。
【請求項4】
請求項1において、前記通路の前記滞留する空間側の他端はベルマウス状である、放出装置。
【請求項5】
請求項1において、前記通路の軸長Lと、前記通路の直径dとは、以下の条件を満たす放出装置。
d≦L≦2d
【請求項6】
請求項1において、前記エアロゾルまたは蒸気を発生させる手段をさらに有する放出装置。
【請求項7】
煙および霧を含むエアロゾル、または蒸気が滞留する空間を形成するための容器に取り付けることにより、前記滞留する空間から前記エアロゾルまたは蒸気を外界に放出するための円筒状の通路を形成可能な出口ユニットであって、
前記通路は、その一端が外界に露出し、その軸長は少なくともその直径程度の長さを備えている、出口ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−232258(P2007−232258A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52556(P2006−52556)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(597103067)有限会社エフ・アンド・エフ (18)
【Fターム(参考)】