説明

放圧板とそれを用いた放圧装置およびガス絶縁開閉装置

【課題】 屋外に設置された従来のガス絶縁開閉装置は、その構成部品である放圧装置の放圧板が雨や湿気の進入より濡れて腐食劣化したり、その濡れが氷結することで膨張し、その部分の強度劣化を促進させたりするため、長期間の信頼性に課題を有していた。
【解決手段】 ガス絶縁開閉装置に開けられた放圧孔を閉塞する放圧板の大気側表面に疎水性の合成樹脂を密着させ、その放圧板表面への雨や湿気の進入を防ぐことにより腐食劣化や強度劣化の促進を抑え、ガス絶縁開閉装置の長期間の信頼性を確保した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばガス絶縁開閉装置等の密閉容器中で発生する急激な圧力上昇を防ぐため前記密閉容器に取付けられ放圧板と、それを用いたる放圧装置およびガス絶縁開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス絶縁開閉装置の密閉容器に取付けられる放圧装置は、密閉容器に開けられた放圧孔を閉塞し、その密閉容器内の圧力が所定の圧力に上昇した時点で破裂する放圧板と、前記放圧板を大気側から覆い放圧時に離脱する保護シ−トと、前記放圧板と保護シ−トの離脱飛散を防ぐ保護カバ−から構成されている。また、前記放圧板の中央部は、前記容器の内方に向かって湾曲し、その大気側の表面に切込み溝が放射状に設けられ、所定の圧力で破裂するようになっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−140230号公報(段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放圧装置に用いられる保護シ−トには、外気温の変化に伴う放圧板と保護シ−ト間の圧力変化を緩和するための小孔が設けられ、また、保護カバ−にはガス放出用の開口部が設けられている。そのため、放圧板の大気側表面は外気にさらされており、特にガス絶縁開閉装置を屋外に設置する場合には、雨水や湿気等の進入により濡れやすくなっている。例えば、前記小孔や開口部から進入した雨水や湿気等によって放圧板の表面が濡れると、その濡れた部分の腐食が進行したり、さらにその濡れが氷結することで膨張し、その部分の機械的強度が劣化したりするため、放圧装置の長期的な信頼性に課題を有している。
【0005】
本発明は上記の課題を解決し、例え屋外に設置する場合であっても、放圧板が腐食したり、その機械的強度が劣化したりしない放圧装置ならびにガス絶縁開閉装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放圧装置は、密閉容器に形成された放圧孔を閉塞し、前記密閉容器内の圧力が所定値に上昇した時に破裂して放圧する放圧板と前記密閉容器への取付手段を備えた放圧装置であって、前記放圧板の表面に疎水性の合成樹脂を密着させた点を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された本発明の放圧装置は、放圧板の表面に疎水性の合成樹脂を密着させたため、その放圧板の表面が外気に直接さらされることはなくなる。従って、放圧板の表面が雨水や湿気により腐食したり氷結したりしなくなり、機械的強度の劣化のない放圧装置ならびにガス絶縁開閉装置を得ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
以下、図面に基づき本発明の実施の形態1について詳細に説明する。図1は本発明の放圧装置を用いたガス絶縁開閉装置の構成を示す断面図である。図2は本発明の放圧装置に用いた放圧板の概略図である。図3は本発明の実施の形態1の放圧装置をガス絶縁開閉装置の密閉容器に取付けた概略図である。なお、図1ないし図3中において、同一部分ないし相当部分には同一符号を付与している。
【0009】
図1に示すように本発明のガス絶縁開閉装置100は、ベ−ス1上に盤2と架台3を介してガス絶縁開閉装置本体4を設置したものである。ガス絶縁開閉装置本体4は複数の密閉容器5に複数の区分スペ−サ6で仕切られ、この中に図示しない断路器、接地開閉器、ガス遮断器、母線等がそれぞれの所定の位置に収容されている。また、それぞれの密閉容器5の外壁である密閉容器板7には図示しない放圧孔8が開けられ、この放圧孔8を閉塞するように放圧装置9が取付けられている。
【0010】
図2(a)の側断面図に示すように本発明の放圧装置9に用いた放圧板91は、ひさし部(ブリム)91aと中央部が湾曲したクラウン部91bを有するハット形状であり、図2(b)の上面図に示すようにクラウン部91bの窪み側表面にはV字状の断面をした溝12が4箇所に設けられ、放圧装置9に加わる圧力が所定値となった時にこの溝12を起点として破れるようになっている。なお、加わる圧力が所定値となった時とは、たとえばガス絶縁開閉装置100の密閉容器5中の圧力が地絡放電等に伴い急激に上昇し、その密閉容器5に取付けた放圧装置9を破裂させる圧力になった時をいう。また、放圧板が破れる圧力は、放圧装置に求められる仕様に応じて予め設計された所定の値である。そのため、放圧板のクラウン部91bの窪み側表面に設けられた溝の断面形状はV字状である必要性はなく、いかなる断面形状であってもよく、また、その設けられる溝の数も4箇所である必要性はなく、適宜仕様に基づき設計される。
【0011】
図3(a)の側断面図に示すように本発明の放圧装置9は、密閉容器5の外壁である密閉容器板7に開けられた放圧孔8を塞ぐため、その大気側周縁部に取付けられている。放圧孔8の周縁部となる密閉容器板7の大気側表面には、Oリング92が配置され、このOリング92上に放圧板91のひさし部91aが載せられ、そのクラウン部91bの山側は放圧孔8に挿入されている。さらにそのひさし部91aの大気側上には環状の取付板93の縁部93aが配置され、この縁部93aに開けられた孔にボルト94を通すことで、放圧板91を挟み込むことで密閉容器板7に固定している。なお、ボルト94による固定は図3(b)の上面図に示すよう、縁部93aに開けられた6箇所の孔に6本のボルト94を通し、密閉容器板7に開けられた孔にそのボルト94を締め付けたものである。このとき、前記放圧板91のクラウン部91bの窪み側は取付板93の中空部93bと対面の関係にある。そして、そのクラウン部91bの窪み側の表面には、疎水性の合成樹脂であるシリコ−ン樹脂95がコーティングされ密着している。なお、クラウン部91bの窪み側の表面と取付板93の縁部93aの内側端面を同時に疎水性の合成樹脂であるシリコ−ン樹脂95でコーティングすることで、合成樹脂をクラウン部91bとともに切れることなく放圧板91に密着させてもよい。この場合、クラウン部91bに対する合成樹脂の密着被覆がより確実になるとともに、コーティング作業が容易になる。
【0012】
上記のように構成された本発明の実施の形態1の放圧装置は、その放圧板91のクラウン部91bの窪み側の表面をシリコ−ン樹脂95でコーティングし、それを密着させているので、クラウン部91bの窪み側の表面への雨水や湿気侵入がなくなり、その結果、雨水や湿気の影響がなくなり、腐食や氷結に伴う機械的強度の劣化等を起こさない信頼性の高い放圧装置となる。従って、本発明の実施の形態1の放圧装置を備えたガス絶縁開閉装置も雨水や湿気ならびに氷結による腐食や機械的強度の劣化を起こしにくい信頼性の高いガス絶縁開閉装置100となる。なお、本発明の実施の形態1において用いた疎水性の合成樹脂は必ずしもシリコ−ン樹脂である必要性はなく、フッ素を含むフッ素樹脂やフッ素ゴム等の合成樹脂であっても良い。また、これらの合成樹脂の表面エネルギ−は特に小さく、非常に滑りやすく、柔らかいという格別な特徴を有しているため、放圧板91のクラウン部91bにコーティングし密着させてもその放圧板91の破れる圧力に影響を与えることはなく、即ち、密閉容器5に取付けた放圧装置9は破裂すべき圧力になった時に速やかに破れるという特徴を有している。
【0013】
なお、実施の形態1では、シリコ−ン樹脂を溶媒等に溶かして放圧板91の窪み側表面にコーティング処理することにより、シリコ−ン樹脂95を放圧板91の表面に密着させたが、シリコ−ン樹脂等の合成樹脂を放圧板の表面に密着させる方法は、コーティング処理に限られるものではない。例えば、疎水性の合成樹脂製のシートを放圧板の表面に熱溶着したり、あるいは接着剤を用いて貼り付けることで密着させたりしてもよく、要するに放圧板の表面に疎水性の合成樹脂のブロック膜等の保護層を密着形成できる方法でありさえすればよい。
【0014】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2について詳細に説明する。本発明の実施の形態2の放圧装置は、実施の形態1で実施した放圧装置のクラウン部91bの窪み側の表面全面をシリコ−ン樹脂95でコ−ティングした代わりに、クラウン部91bの窪み側表面の溝12を埋めるようその溝とその周辺部にのみシリコ−ン樹脂95をコ−ティングした点において、実施の形態1の放圧装置と異なっている。
【0015】
上記のように構成された本発明の実施の形態2の放圧装置は、その放圧板91のクラウン部91bの窪み側表面の溝12を埋めるようにその溝12とその周辺部のみをシリコ−ン樹脂95でコ−ティングし密着させているので、最も劣化が進みやすい放圧板91の溝12の中とその周辺部は、雨水や湿気ならびに氷結の影響を受けなくなり、腐食や機械的強度の劣化を起こさなくなる。そのため溝12とその周辺部をシリコ−ン樹脂95でコ−ティングし密着させた放圧装置は、シリコ−ン樹脂95を密着していない放圧装置に比べ、信頼性の高い放圧装置になる。従って、本発明の実施の形態2の放圧装置を備えたガス絶縁開閉装置も雨水や湿気ならびに氷結による腐食や機械的強度の劣化を起こしにくい信頼性の高いガス絶縁開閉装置となる。また、実施の形態2の放圧装置はシリコ−ン樹脂95で放圧板91の溝12とその周辺部をコ−ティングしたので、高価な樹脂の使用量を実施の形態1と比べて少なくでき、より安価で軽量な放圧装置を得ることが可能になるという効果を有している。なお、本発明の実施の形態2において用いた疎水性の合成樹脂は必ずしもシリコ−ン樹脂である必要性はなく、フッ素を含むフッ素樹脂やフッ素ゴムであっても良い。また、コ−ティングした疎水性の合成樹脂の厚さは薄くても厚くても効果は得られるが、合成樹脂中を浸透する湿気の進入を考慮すると、1マイクロメータ以上あった方が長期間の信頼性が良く、特に50マイクロメータから2000マイクロメータがよかった。また、疎水性の合成樹脂製のシートを放圧板91の溝12とその周辺部の表面に熱溶着したり、あるいは接着剤を用いて密着させたりしてもよい。
【0016】
実施の形態3.
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態3について詳細に説明する。図4は本発明の実施の形態1の放圧装置をガス絶縁開閉装置の密閉容器5の外壁である密閉容器板7に取付けた概略図である。なお、図4中の各部位において、図1ないし図3と同一部分ないし相当部分には同一符号を付与している。
【0017】
図4に示すように本発明の実施の形態3の放圧装置は、実施の形態1で用いた放圧装置に放圧カバ−96を取付けた点において異なっている。
【0018】
図4(a)の側断面図に示すように本発明の放圧装置9に用いた放圧カバ−96は、取付板93の上に取付けられ(コ−ティングし密着させたシリコ−ン樹脂95と対面状態で、そのシリコ−ン樹脂95を覆うように取付けられ)、図4(b)の上面図に示すように取付板93とともに2本のボルト94で密閉容器板7にボルト締め固定されている。また、放圧カバ−96の側面の少なくとも1面には、放圧装置9の破裂に伴う密閉容器5内の高圧ガスを放出させるための孔96aが設けられている。なお、側面に設けた孔96aの代わりに孔を設けた側面そのものをなくしてもよい。
【0019】
上記のように構成された本発明の実施の形態3の放圧装置には、高圧ガス放出用の孔96aを設けた放圧カバ−96が取付けられているため、放圧装置9の破裂時には、放圧ガス流とともに放圧板91の破片やシリコ−ン樹脂95等が孔96aから制限されて飛び出す。また、孔96aを網目状あるいは、孔96aに網目状のフィルタ−等を設置しておくことで、放圧板91の破片やシリコ−ン樹脂の飛散を抑制し、直接放圧装置9の外に飛び出させないようにすることも可能である。従って、放圧装置9の破裂時に発生する放圧板91の破片やシリコ−ン樹脂95の飛散による周囲への不具合を回避できるようにすることも可能である。
【0020】
以上詳細に説明したように本発明の実施の形態1ないし3の放圧装置は、いずれもガス絶縁開閉装置の放圧孔を閉塞するために、放圧板を取付板と前記ガス絶縁開閉装置の密閉容器との間に配置し、その取付板をその密閉容器に複数のボルトを用いて固定するものである。しかし、ガス絶縁開閉装置の密閉容器への放圧板の取付けに、必ずしも複数のボルトや取付板を用いる必要性はなく、直接的にあるいは間接的に放圧板が外れないよう密閉容器に取付けられてもよい。例えば、密閉容器の放圧孔の周辺を閉塞するよう、ろう付けや接着剤により放圧板を直接的に取付けても良いし、取付板を密閉容器にろう付けすることで、放圧板を間接的に取付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のガス絶縁開閉装置の断面図である。
【図2】本発明の放圧装置に用いられる放圧板の概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1の放圧装置を密閉容器に取付けた概略図である。
【図4】本発明の実施の形態4の放圧装置を密閉容器に取付けた概略図である。
【符号の説明】
【0022】
5 密閉容器
8 放圧孔
9 放圧装置
91 放圧板 91a ひさし部
93 取付板
94 ボルト
95 シリコ−ン樹脂(疎水性の合成樹脂)
100 ガス絶縁開閉装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器に形成された放圧孔を閉塞し、前記密閉容器内の圧力が所定値に上昇した時に破裂して放圧する放圧板であって、
前記放圧板の表面に疎水性の合成樹脂を密着させたことを特徴とする放圧板。
【請求項2】
密閉容器に形成された放圧孔を閉塞し、前記密閉容器内の圧力が所定値に上昇した時に破裂して放圧する放圧板であって、
前記放圧板はひさし部と破裂用の溝を設けたクラウン部とからなるハット形状であり、
前記放圧板の表面に疎水性の合成樹脂を密着させたことを特徴とする放圧板。
【請求項3】
放圧板のクラウン部に設けた溝とその溝の周辺部に疎水性の合成樹脂を密着させたことを特徴とする請求項2記載の放圧板。
【請求項4】
疎水性の合成樹脂が、シリコ−ン樹脂またはフッ素を含む樹脂のいずれかを含有する合成樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放圧板。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放圧板と、この放圧板を密閉容器に取付けるための取付手段とを備えたことを特徴とする放圧装置。
【請求項6】
密閉容器を備えたガス絶縁開閉装置であって、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放圧板を前記密閉容器に取付けたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。
【請求項7】
密閉容器を備えたガス絶縁開閉装置であって、請求項5に記載の放圧装置を前記密閉容器に取付けたことを特徴とするガス絶縁開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−4656(P2010−4656A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161471(P2008−161471)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】