説明

放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒、及びその製造方法

【課題】放射性気体廃棄物処理施設の再結合器において、長時間使用しても触媒性能が劣化しない、新規な再結合器用触媒を提供する。
【解決手段】原子力発電所で炉水の放射線分解により発生する放射性気体廃棄物に含まれる水素と酸素とを再結合させる放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒であって、 前記触媒は、触媒担体と触媒金属とを含み、前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さを350μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒は、例えば原子力発電プラントなどにおいて、炉水の放射線分解により発生する放射性気体廃棄物に含まれる水素と酸素とを再結合させて水蒸気を生成するために使用される。なお、生成された水蒸気は、放射性気体廃棄物から分離除去され、放射性気体廃棄物中に放射性気体のみが残存するようにする。したがって、残存する放射性気体は水素及び酸素からなる爆鳴気を含まなくなるので、後の処理を容易かつ安全に実施することができるようになる。
【0003】
再結合器は、プラント運転中の再結合器反応温度と、再結合器出口水素濃度とを監視することで、再結合器用触媒の性能を監視しているほか、定期的に触媒を取り出して触媒強度を計測し、触媒強度からその後の触媒使用可否を簡易的に求めている。
【0004】
触媒の寿命は、機械的損傷、触媒被毒、触媒剥離などが無い場合には半永久的に使用できるものであるが、毎年行われるプラント定期検査による被毒物質の混入、プラント起動時の過度条件運転、蒸気凝縮などによる触媒の流れ出しによって、徐々に触媒性能は劣化する。したがって、通常は、上述した原因による触媒性能の劣化を予め考慮し、本来的に必要な触媒の量に対して余剰の触媒量を準備し(余裕率)、このような量の触媒を再結合器内に収納することによって、触媒性能が低下してもプラントの運転に支障がないようにしている。
【0005】
但し、この余裕率についてはプラントの状態により変化する可能性があり、プラント定期検査終了後の異物混入による被毒、プラント起動時における過度条件などが長引くなどした場合には、触媒被毒と相まって余裕率は減少する。また、プラント延命化に伴い、定期検査の回数を重ねることによる触媒寿命もさらに悪化する可能性が高い。このため、余裕率による触媒性能の保持に代えて、触媒自体の長寿命化が望まれている。
【0006】
特許文献1には、表面積が150m/g程度のγ-アルミナを触媒担体として準備し、この触媒担体に触媒全量に対して0.5質量%程度のパラジウムを触媒金属として担持させてなる触媒が開示されており、さらに、触媒担体としてγ-アルミナの代わりにα−アルミナを用いることにより長寿命化を図っている。しかしながら、近年においては、プラントの運転時間を60年にまで延長させることが提案されており、これに伴って、上記再結合器に使用する触媒にもさらなる長寿命化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2680489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器において、長時間使用しても触媒性能が劣化しない、新規な再結合器用触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、原子力発電所で炉水の放射線分解により発生する放射性気体廃棄物に含まれる水素と酸素とを再結合させる放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒であって、前記触媒は、触媒担体と触媒金属とを含み、前記触媒担体は多孔質であって、前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さを担体表面より350μm以下の範囲としたことを特徴とする、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器において、長時間使用しても触媒性能が劣化しない、新規な再結合器用触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態における沸騰水型原子力発電所の放射性気体廃棄物処理施設のフローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施形態における沸騰水型原子力発電所の放射性気体廃棄物処理施設のフローである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、原子炉11に対して主復水器12及び空気抽出器13が順次に接続されている。また、空気抽出器13に対して、バルブ19を介して予熱器14及び再結合器15が順次に接続されている。さらに、再結合器15に対して、バルブ20を介して復水器16、活性炭吸着塔17及び排気筒18が順次に接続されている。
【0015】
原子炉1内の炉水は、炉心において放射線分解によって水素と酸素とを発生する。この水素と酸素を含む主蒸気は、タービンで仕事をした後、他の放射性気体廃棄物と一緒に主復水器12に送られ、ここで主蒸気が冷却されて飽和水となり、給水として再度原子炉1内に導入される。この主復水器12で凝縮されなかった非凝縮性ガスは、水素、酸素を含んだ放射性気体廃棄物となり、空気抽出器13により抽気され、空気抽出器13の駆動蒸気により爆鳴気限界以下に希釈される。その後、予熱器14で温度調節され、再結合器15内の触媒により水素と酸素とは水蒸気となる。水蒸気は復水器16により駆動蒸気と共に凝縮され除去される。水素、酸素および水蒸気を除去した、放射性気体廃棄物、すなわち放射性気体は活性炭吸着塔17により減衰された後、排気筒18により大気放出される。
【0016】
上述のように、再結合器15は水の放射線分解などで生じた水素と酸素とを結合させて水蒸気に変える装置であり、再結合器15内には、触媒担体に触媒金属が担持されてなる触媒が所定量充填されている。なお、触媒の量は、放射性気体廃棄物処理施設の規模、及び再結合器15の運転時間等に依存して適宜決定する。
【0017】
触媒担体としては、腐食ガスに対して高い耐性を有するアルミナ等を用いることができる。γ−アルミナは大きな比表面積を有するので、より多くの触媒金属をその表面に担持することができ、高い触媒性能を発揮することができる。しかしながら、γ−アルミナは、水素と酸素とが結合して生成した水蒸気下で、長時間高温に晒されるとα化してしまい、このときの相転移に伴って強度が劣化し、粉化してしまう場合がある。したがって、再結合器15内で触媒を長時間に亘って使用するのには適してしない。
【0018】
一方、α−アルミナは、水蒸気下で長時間高温に晒されても、上述のような相変態を生じないので、γ−アルミナのような強度劣化を生じることはない。したがって、再結合器15内で触媒を長時間に亘って使用するという観点からは、触媒担体としてα−アルミナを使用することが好ましい。また、触媒金属としては、白金、パラジウム、及びこれら合金等の、触媒金属として汎用されている白金族系の金属を用いることができる。
【0019】
本実施形態においては、触媒金属の触媒担持深さが担体表面より350μm以下、好ましくは300μm以下となるようにする。これによって、再結合器15内に充填した触媒の触媒性能が向上するようになるので、再結合器15を長時間使用した場合においても、充填した前記触媒の性能が劣化しないようにすることができる。触媒下における水素と酸素の再結合反応は、拡散律速であるとされており、表面に近いほど反応は促進されるものの、担持深さが350μm以下においても十分活性であることが求められている。また、表面近傍だけ担持された触媒は運転期間に応じて減少する事も知られていることから、表面より350μmに触媒を配置する事が必要となっている。
【0020】
なお、触媒担持深さとは、触媒担体の表面から、触媒担体の細孔中に実際に触媒金属が浸透した距離によって規定されるものであり、触媒の断面をEPMA分析する事によって測定することができる。
【0021】
触媒金属担持深さの下限値については特に限定されるものではないが、例えば10μmとすることができる。触媒金属の担持深さが10μmよりも小さくなると、担持した触媒粒子の大きさとほぼ同等なり、触媒同士の接触でも脱落する可能性があるため、触媒全体における触媒金属の担持量が減少するので、再結合器15内に充填した場合の触媒性能が低下し、その作用効果を十分に奏することができない場合がある。
【0022】
また、触媒金属の、触媒担体に対する担持量は、触媒全体の0.35質量%〜0.65質量%、特に0.45質量%〜0.6質量%であることが好ましい。触媒担持深さが上述のような要件を満足したとしても、触媒担体全体に対する触媒金属の担持量が少なく、例えば0.20質量%未満となれば、触媒はその本来的な機能、すなわち再結合器15内に触媒を充填した際に、水素及び酸素を結合させて水蒸気を生成するという本来的な機能を奏することができない場合がある。一方、触媒担持量が多くなりすぎ、例えば1.5質量%を超えるような場合においては、水素と酸素の反応熱によるシンタリングにより触媒の実質的な表面積が減少してしまう様になり、上記同様に当該触媒の本来的な機能を奏することができない場合がある。
【0023】
したがって、触媒がその本来的な機能を奏することができるという前提条件を満足した上で、上述のような触媒担持深さの要件を満足することにより、再結合器15内に充填した触媒の触媒性能をより向上させることができ、再結合器15を長時間使用した場合においても、充填した前記触媒の性能をより確実に劣化しないようにすることができる。
【0024】
なお、触媒金属の担持量は、触媒金属を含む分散媒を準備し、触媒担体を分散媒中に浸漬させた前後の触媒金属の濃度を例えばICP,X線分析によって計測し、同様に分散媒の重量を天秤によって計測した後、その差分を求めることによって導出することができる。
【0025】
次に、上述した本実施形態の触媒、すなわち再結合器15用触媒の製造方法について説明する。
【0026】
触媒金属を触媒担体に担持させるには、最初に、触媒担体を第1の圧力下で第1の液体中に浸漬させる。浸漬時間は、第1の圧力の値等に依存するが、例えば数分から数時間のオーダーである。これによって、触媒担体の細孔内に第1の液体が注入されるようになり、細孔のある程度の部分が第1の液体で満たされるようになって、細孔の実質的な深さが減少する。
【0027】
第1の液体は、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールや、アセトン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソブタノール、イソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、キシレン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、ジオキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、ジブチルエーテル、ジメチルアニリン、テトラヒドロフラン、トルエン、ブタノール、フロン、ヘキシルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの汎用の溶媒とすることができる。
【0028】
また、第1の圧力は、例えば12Pa〜17Paとすることができる。
【0029】
次いで、第1の液体から触媒担体を取り出した後、触媒金属を含む第2の液体を準備し、第2の圧力下、第2の液体中に触媒担体を浸漬する。浸漬時間は、第2の圧力の値等に依存するが、例えば数分から数時間のオーダーである。この場合、触媒担体の細孔内には、予め第1の液体がある程度の割合で満たされているので、細孔内に入り込む第2の液体の割合が制限される。したがって、触媒担体に担持される触媒金属の担持深さを制御することができる。
【0030】
なお、第2の液体を構成する溶媒は、上記第1の液体を構成する溶媒と同様のものを使用することができる。
【0031】
触媒担体に担持させる触媒金属の担持深さは、触媒担体を第1の液体中に浸漬させる際の第1の圧力と、触媒担体を第2の液体中に浸漬させる際の第2の圧力とを制御することによって調整することができる。本実施形態では、これらの圧力を適宜に調整することによって、触媒担体に対する触媒金属の担持深さが350μm以下、好ましくは300μm以下となるようにする。
【0032】
上述した要件を満足するには、第2の圧力を第1の圧力と比較して高く設定する必要があるが、第1の圧力を例えば上述のような範囲に設定した場合において、第2の圧力は例えば20Pa〜30Paとすることができる。
【0033】
なお、第1の圧力及び第2の圧力は、第1の液体及び第2の液体の粘度の他、触媒担体の細孔径等にも依存する。
【0034】
また、第1の液体及び第2の液体それぞれに第1の圧力及び第2の圧力を印加するに際しては、例えば圧力容器に触媒担体と第1の液体を入れた後、不活性ガスにより圧力負荷を掛け、一定時間後排水した後、第2の触媒金属溶液を入れて不活性ガスによる圧力負荷を掛ける。このような手法を用いて行う。
【0035】
さらに、触媒担体を第2の液体に浸漬させて触媒金属を担持させるに際しては、触媒担体を、第2の液体中に分散させた状態において、第2の液体に対して超音波を印加することが好ましい。これによって、触媒金属の第2の液体中での分散性が向上し、触媒金属が触媒担体の表面の全体に亘って均一に付着するようになるので、触媒金属の担持を触媒担体の表面の全体に亘って均一に行うことができるようになる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
触媒担体として平均粒径5mmφ、比表面積20m/gに焼成したα−アルミナ1000gを用い、これを15Paの下、1000mlの有機酸溶媒中に0.5時間浸漬させた。その後、有機溶媒を排水した後、パラジウム濃度5g/lを含む1000mlのPdCl有機溶媒中に、30Paの下1時間浸漬させ、排水した後500℃で還元焼成する事で平均粒径80Åのパラジウム金属担持触媒を生成した。
【0037】
なお、パラジウム担持量を上述した方法によって測定した結果、触媒全体に対し0.6質量%であることが判明した。また、上述した方法によって触媒担持深さを測定したところ、350μmであることが判明した。
【0038】
次いで、このようにして得たパラジウム担持触媒の400gを再結合器内に充填し、水素ガスを10l/分、酸素ガスを4.5l/分(水素ガス/酸素ガスの流量比1.85)で流し、水蒸気を300l/分で流して、水素ガス及び酸素ガスを結合させ、水蒸気を生成した。これらガスの結合量、すなわち触媒性能を評価するために、パラジウム担持触媒による水素除去性能を測定したところ、約200%であることが判明した。なお、水素除去性能100%とは、触媒400gを使用して水素入口/出口比が“1000”のことを意味する。
【0039】
したがって、本実施例で得た触媒は高い触媒性能を示し、長期に亘って使用し、たとえその性能が劣化したとしても十分使用に耐えうる触媒性能を呈することが分かる。実際、本触媒を、450℃の高温に設定し、水素ガス及び酸素ガスを上記条件で流した加速試験において、10000時間経過後においても良好な触媒性能を呈することが判明した。また、現在使用される触媒の性能に対して2倍の性能を有することから、本触媒は、沸騰水型原子力発電所の通常の運転状態においては、約60年に亘って十分な触媒性能を維持したまま使用できることが分かる。
【0040】
(実施例2)
触媒担体として平均粒径5mmφ、比表面積20m/gに焼成したα−アルミナ1000gを用い、これを15Paの下、1000mlの有機酸溶媒中に0.5時間浸漬させた。その後、有機溶媒を排水した後、パラジウム濃度5g/lを含む1000mlのPdCl有機溶媒中に、25Paの下1時間浸漬させ、排水した後500℃で還元焼成する事で平均粒径80Åのパラジウム金属担持触媒を生成した。
【0041】
なお、パラジウム担持量を上述した方法によって測定した結果、触媒全体に対し0.48質量%であることが判明した。また、上述した方法によって触媒担持深さを測定したところ、300μmであることが判明した。
【0042】
次いで、このようにして得たパラジウム担持触媒の400gを再結合器内に充填し、水素ガスを10l/分、酸素ガスを4.5l/分(水素ガス/酸素ガスの流量比1.85)で流し、水蒸気を300l/分で流して、水素ガス及び酸素ガスを結合させ、水蒸気を生成した。これらガスの結合量、すなわち触媒性能を評価するために、パラジウム担持触媒による水素除去性能を測定したところ、約240%であることが判明した。したがって、本実施例で得た触媒は高い触媒性能を示し、長期に亘って使用し、たとえその性能が劣化したとしても十分使用に耐えうる触媒性能を呈することが分かる。
【0043】
実際、実施例1同様にして、加速試験を実施したところ、1000時間経過後においても良好な触媒性能を呈することが判明した。また、現在使用される触媒の性能に対して2倍以上の性能を有することから、本触媒は、沸騰水型原子力発電所の通常の運転状態においては、約60年に亘って十分な触媒性能を維持したまま使用できることが分かる。
【0044】
(実施例3)
触媒担体として平均粒径7mmφ、比表面積20m/gに焼成したα−アルミナの1000gを用い、これを15Paの下、1000mlの有機酸溶媒中に0.5時間浸漬させた。その後、有機溶媒を排水した後、パラジウム濃度5g/lを含む1000mlのPdCl有機溶媒中に、20Paの下1時間浸漬させ、排水した後500℃で還元焼成する事で平均粒径80Åのパラジウム金属担持触媒を生成した。
【0045】
なお、パラジウム担持量を上述した方法によって測定した結果、触媒全体に対し0.45質量%であることが判明した。また、上述した方法によって触媒担持深さを測定したところ、250μmであることが判明した。
【0046】
次いで、このようにして得たパラジウム担持触媒の400gを再結合器内に充填し、水素ガスを10l/分、酸素ガスを4.5l/分(水素ガス/酸素ガスの流量比1.85)で流し、水蒸気を300l/分で流して、水素ガス及び酸素ガスを結合させ、水蒸気を生成した。これらガスの結合量、すなわち触媒性能を評価するために、パラジウム担持触媒による水素除去性能を測定したところ、約250%であることが判明した。したがって、本実施例で得た触媒は高い触媒性能を示し、長期に亘って使用し、たとえその性能が劣化したとしても十分使用に耐えうる触媒性能を呈することが分かる。
【0047】
実際、実施例1同様にして、加速試験を実施したところ、1000時間経過後においても良好な触媒性能を呈することが判明した。また、現在使用される触媒の性能に対して2倍以上の性能を有することから、本触媒は、沸騰水型原子力発電所の通常の運転状態においては、約60年に亘って十分な触媒性能を維持したまま使用できることが分かる。
【0048】
(比較例1)
触媒担体として平均粒径7mmφ、比表面積20m/gに焼成したα−アルミナの1000gを用い、これを10Paの下、1000mlの有機酸溶媒中に0.5時間浸漬させた。その後、有機溶媒を排水した後、パラジウム濃度5g/lを含む1000mlのPdCl有機溶媒中に、35Paの下1時間浸漬させ、排水した後500℃で還元焼成する事で平均粒径80Åのパラジウム金属担持触媒を生成した。
【0049】
なお、パラジウム担持量を上述した方法によって測定した結果、触媒全体に対し0.65質量%であることが判明した。また、上述した方法によって触媒担持深さを測定したところ、400μmであることが判明した。
【0050】
次いで、このようにして得たパラジウム担持触媒の400gを再結合器内に充填し、実施例1と同様にして、触媒性能を評価したところ、パラジウム担持触媒による水素除去性能は、約95%であることが判明した。したがって、本実施例で得た触媒の触媒性能はさほど高くはなく、長期に亘って使用した場合に触媒性能が劣化して、十分使用に耐えうるものではないことが判明した。
【0051】
実際、実施例1同様にして、加速試験を実施したところ、1000時間経過後において触媒性能が劣化することが判明した。このことから、本触媒は、沸騰水型原子力発電所の通常の運転状態においては、約25年程度しか触媒性能を維持できないことが分かる。
【0052】
(比較例2)
触媒担体として平均粒径7mmφ、比表面積20m/gに焼成したα−アルミナ1000gを用い、これを25Paの下、1000mlの有機酸溶媒中に0.5時間浸漬させた。その後、有機溶媒を排水した後、パラジウム濃度5g/lを含む1000mlのPdCl有機溶媒中に、40Paの下1時間浸漬させ、排水した後500℃で還元焼成する事で平均粒径80Åのパラジウム金属担持触媒を生成した。
【0053】
なお、パラジウム担持量を上述した方法によって測定した結果、触媒全体に対し0.7質量%であることが判明した。また、上述した方法によって触媒担持深さを測定したところ、500μmであることが判明した。
【0054】
次いで、このようにして得たパラジウム担持触媒の400gを再結合器内に充填し、実施例1と同様にして、触媒性能を評価したところ、パラジウム担持触媒による水素除去性能は、約80%であることが判明した。したがって、本実施例で得た触媒の触媒性能は低く、長期に亘って使用した場合に触媒性能が劣化して、十分使用に耐えうるものではないことが判明した。
【0055】
実際、実施例1同様にして、加速試験を実施したところ、1000時間経過後において触媒性能が劣化することが判明した。このことから、本触媒は、沸騰水型原子力発電所の通常の運転状態においては、約24年程度しか触媒性能を維持できないことが分かる。
【0056】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されるこきる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
11 原子炉
12 主復水器
13 空気抽出機
14 予熱器
15 再結合器
16 復水器
17 活性炭吸着塔
18 排気筒
19,20 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所で炉水の放射線分解により発生する放射性気体廃棄物に含まれる水素と酸素とを再結合させる放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒であって、
前記触媒は、触媒担体と触媒金属とを含み、前記触媒担体は多孔質であって、前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さを担体表面より350μm以下としたことを特徴とする、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒。
【請求項2】
前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さが300μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒。
【請求項3】
前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持量が、前記触媒全体の0.5質量%〜0.6質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒。
【請求項4】
前記触媒担体は、α−アルミナを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒。
【請求項5】
原子力発電所で炉水の放射線分解により発生する放射性気体廃棄物に含まれる水素と酸素とを再結合させる放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法であって、
前記触媒を構成する触媒担体を第1の圧力下で第1の液体中に浸漬させる工程と、
前記触媒担体から前記第1の液体を取り出して、第2の圧力下で、前記触媒を構成する触媒金属を含む第2の液体中に浸漬させる工程とを具え、
前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さを350μm以下とすることを特徴とする、放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持深さを300μm以下とすることを特徴とする、請求項5に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記触媒金属の、前記触媒担体に対する担持量を、前記触媒全体の0.5質量%〜0.6質量%とすることを特徴とする、請求項5又は6に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記触媒担体は、α−アルミナを含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第2の液体中に超音波を印加した状態で、前記第2の液体中に前記触媒担体を浸漬させることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一に記載の放射性気体廃棄物処理施設の再結合器用触媒の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−108000(P2012−108000A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257229(P2010−257229)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】