説明

放射性物質のモニタシステム

【課題】設備費及び保守費を低減し、保守作業を簡便化できる放射性物質のモニタシステムを提供すること。
【解決手段】被検査ガス中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置から流出するサンプルガスを冷却装置により冷却して、このサンプルガスに含まれている放射性ヨウ素を捕集すると共に上記冷却装置による冷却により析出するタール状物質をヨウ素捕集装置により除去し、上記ヨウ素捕集装置から流出する気体の水蒸気密度を水蒸気密度測定装置により測定し、上記水蒸気密度測定装置から流出する気体を試料水捕集装置により冷却して上記気体に含まれていたトリチウムを含む試料水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所、使用済燃料再処理施設等における固体廃棄物の焼却炉施設や溶融炉施設から放出される排気中に含まれる放射性ヨウ素、トリチウム、および放射性希ガスなどの放射能量を監視するための放射性物質のモニタシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や使用済燃料再処理施設などにおいては、それらの最終放出端の排気筒から放出される気体状放射性廃棄物として、放射性ヨウ素が単体ヨウ素や有機ヨウ素の形態で存在するので、それらの放射能量を測定するために上記排気筒から放出されるガスをサンプリングして放射性ヨウ素を捕集剤で捕集し、Ge半導体スペクトルメータで放射性ヨウ素の放射能量をオフラインで測定している。上記捕集剤としては、一般的にトリエチレンジアミンを添着した活性炭、すなわち添着炭が使用されている。
【0003】
一方、発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針では、上記捕集剤の捕集効率は90%以上と規定されている。ところで、上記の焼却炉施設や上記の溶融炉施設の煙突から排気される排気には、酸性ガスが多量に含まれているため、サンプリング配管は酸露点以上の温度を維持するように、例えば180℃程度の高温に保持されていて、上記排気はかかる高温度でヨウ素サンプラに導入される。しかし、上記の添着炭はかかる高温条件では、単体ヨウ素およびヨウ化メチルの捕集効率が低下する。また、酸性ガスが多量に含まれる場合には、単体ヨウ素およびヨウ化メチルの捕集効率が低下する。また、高温条件で単体ヨウ素及びヨウ化メチルを高効率で捕集できる銀ゼオライトも、酸性ガスが多量に含まれる場合には、酸性ガスで捕集効率が低下する。
【0004】
そこで、後記の特許文献1のように、上記の問題を解決するために、高温環境化で酸性ガスを選択的に除去する特性を有するカリゼオライトを銀ゼオライトの前段に配置し、高温でかつ酸性ガスを多量に含むサンプルガスでも単体ヨウ素及びヨウ化メチルを90%以上の捕集効率で捕集できるように構成した放射性ヨウ素サンプラが実用化されており、180℃のサンプルガスをカリゼオライトカートリッジに通して酸性ガスを除去してから、180℃で温度維持したサンプルガスを銀ゼオライトカートリッジに通して単体ヨウ素及びヨウ化メチルを捕集し、カリゼオライトカートリッジと銀ゼオライトカートリッジの両方について、Ge半導体スペクトルメータで放射性ヨウ素をオフラインで測定している。
【0005】
また、後記の特許文献2では上記の問題を解決するために、上記煙突から排気される排気には、気体状放射線廃棄物としてのトリチウム(三重水素T)がHTOやTOの形態で存在し、トリチウムの放射能温度を測定するために、サンプルガスをサンプリングし、トリチウム試料を採取して液体シンチレーションカウンタにてオフラインで測定している。またトリチウム試料を採取する場合、サンプルガスを冷却してトリチウムを含む試料水を採取する冷却凝縮法が採用されている。
【0006】
なお、わが国の原子力委員会が定めた「発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針」においては、上記の冷却凝縮法について、サンプルガス中の水蒸気の一部を捕集して試料水とする場合、試料採取期間におけるサンプルガス中の平均水蒸気密度を測定する必要があるとしている。
【0007】
上記サンプルガス中の平均水蒸気密度は、後記の特許文献2では温湿度または露点を測定して、コントローラで温湿度または露点と水蒸気密度との対照表を照合する等により求めているが、サンプルガス中に酸性ガスを含む焼却炉または溶融炉の排気をサンプリングする場合は、湿度センサーまたは露点センサーが酸性ガスにより腐食するため、運転期間中に湿度センサーまたは露点センサーの校正を頻繁に行い、規格を外れた湿度センサーまたは露点センサーの取替を行う必要があるため、温度センサーと湿度センサーまたは露点センサー、流量計などを試料水捕集装置の下流に設置し、試料水捕集装置で酸性ガスを酸として試料水と共に捕集し、酸性ガスを除去してから温湿度または露点や流量を測定し、試料水捕集装置から採取した試料水の質量を測定し、上記質量と積算流量に基づき捕集水に対応した平均水蒸気密度を求め、温湿度または露点に基づき試料水捕集装置から排出されたサンプルガスの平均残留水蒸気密度を求め、両者を合計してサンプルガス中の平均水蒸気密度を求めるようにし、好適な環境に湿度計または露点計を設置することにより、運転期間中の湿度センサーまたは露点センサーの校正、湿度センサーまたは露点センサーの校正頻度を、装置の定期検査の頻度まで低減している。
【0008】
また後記の特許文献3では、上記煙突からサンプルガスをサンプリングして放射性希ガスを測定する放射性ガスモニタは、放射線検出器及びポンプ等の機器を酸性ガスから保護するために、サンプルガスを周囲温度下限以下に冷却して酸性ガスを酸性ドレンとして除去してからサンプルガス中の希ガスの放射能濃度を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63-256898号
【特許文献2】特開2007−24768号
【特許文献3】特開平6-242291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記した従来の放射性ヨウ素サンプラは、以上のように構成されているので、放射性の単体ヨウ素及び有機ヨウ素を高温で捕集するため、高温仕様の高価な捕集剤を使用せざるを得ず、上記の指針で規定する一週間毎の捕集剤交換に係わる材料費が高価になるという問題があった。また、流量計で流量を測定する際に温度を下げることにより、サンプルガスに含まれるタール状物質が流量計内部に析出して付着するため、測定値の誤差が増大し、毎年の定期検査で流量計を定期交換することになり、更に腐食でポンプの交換周期が短くなるために保守材料費が増大するという問題があった。
【0011】
また、従来のトリチウムサンプラは、試料水捕集装置でサンプルガスを冷却すると、サンプルガスに含まれるタール状物質が冷媒と接してサンプルガスを冷却する冷却フィンまたは細管等の内面に付着し、冷却能力が低下すると共にサンプルガスの通路が閉塞するため、定期検査時にタール状物質を除去するための試料水捕集装置の清掃が必要となり、清掃は、試料水捕集装置を分解し、タール状物質が付着した冷却フィン、細管等を薬剤に浸漬して溶かす工程と高圧フラッシング工程が必要で、多大の保守時間が必要となると共に清掃期間が長くなること、定期点検時は、焼却、溶融する処理物質が増加するので、上記清掃期間が長くなると廃棄物処理の停滞を招くため、保守時間の低減及び保守期間の短縮が課題であった。
【0012】
またさらに、従来の放射性希ガスモニタは、放射線検出器を酸性ガス及びタール状物質から保護するために、サンプルガスを周囲温度以下に冷却して酸性ガスを酸性ドレンとして除去するが、その結果として生成される強酸性の酸性ドレンの中和処理作業を伴うために、保守作業の軽減が課題であった。よって本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、設備費及び保守費を低減し、保守作業を簡便化できる放射性物質のモニタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の放射性物質のモニタシステムは、上記した課題を解決するために開発されたものであって、被検査ガス中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置、酸性ガスが除去された上記被検査ガスを冷却する冷却装置、冷却された上記被検査ガスに含まれている放射性ヨウ素を捕集すると共に上記の冷却により析出するタール状物質を除去するヨウ素捕集装置、タール状物質が除去された上記被検査ガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置、および水蒸気密度の測定後に上記被検査ガスを冷却して上記被検査ガスに含まれているトリチウムを含む試料水を得る試料水捕集装置からなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の他の放射性物質のモニタシステムは、被検査ガス中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置、酸性ガスが除去された上記被検査ガスを冷却する冷却装置、冷却された上記被検査ガスに含まれている放射性ヨウ素を捕集すると共に上記の冷却により析出するタール状物質を除去するヨウ素捕集装置、水蒸気密度の測定後に上記被検査ガスを冷却して上記被検査ガスに含まれているトリチウムを含む試料水を得る試料水捕集装置、およびタール状物質が除去された上記被検査ガスの水蒸気密度を測定する水蒸気密度測定装置からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の放射性物質のモニタシステムは、上記した構成を有することにより、上記酸性ガス除去装置にてサンプルガス中の酸性ガスを除去し、上記ヨウ素捕集装置にてサンプルガス中の放射性ヨウ素を捕集し、更に、上記冷却装置にてサンプルガスを冷却してサンプルガスの温度を水露点以上かつ所定の湿度以下とすることにより、上記ヨウ素捕集装置に一般の捕集剤が使えるようになるため、捕集剤交換に係わる材料費を削減できる。
【0016】
また、上記冷却装置にてサンプルガスを冷却することにより、サンプルガスに含まれるタール状物質を析出させ、上記ヨウ素捕集装置内の捕集剤に付着させて除去することにより、タール状物質が付着しないかつ腐食が発生しない好適な条件で水蒸気密度の測定を行うことができるため、水蒸気密度測定用センサーの交換頻度が長くなり、試料水捕集装置内部にタール状物質が析出して付着することがなくなるため、試料水捕集装置内部の清掃が容易になり、保守費用を低減できる。また、ヨウ素サンプラ、トリチウムサンプラ、放射性希ガスモニタの順に接続し、サンプリング部の計測器センサー及びポンプを共用させることにより、設備費及び保守費を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係わる放射性物質のモニタシステム全体の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る加熱装置の詳細な構成図である。
【図3】実施の形態1に係る冷却装置の詳細な構成図である。
【図4】実施の形態1に係る水蒸気密度測定装置の構成図である。
【図5】実施の形態1に係る試料水捕集装置の構成図である。
【図6】実施の形態1に係る酸性ガス除去フィルタユニットの構成図である。
【図7】実施の形態1に係わるヨウ素捕集フィルタユニットの構成図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係わる放射性物質のモニタシステム全体の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係わる放射性物質のモニタシステムにおける部分の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に就き、図1〜図7を参照して詳細に説明する。図1において、実施の形態1に係わる放射性物質のモニタシステムは、サンプリング配管1に、順次、加熱装置2、酸性ガス除去フィルタユニット3、冷却器4、ヨウ素捕集フィルタユニット5、水蒸気密度測定装置6、コンプレッサ7、試料水捕集装置8、第1の圧力計9、圧力調整弁10、流量計11、第2の圧力計12、および放射性希ガスモニタ13、からなる構成を有する。
【0019】
また上記加熱装置2は、図2に示すように、ヒータ21、温度センサ22、およびコントローラ23とから構成されている。上記冷却器4は、図3に示すように、フィン体配管41、ファン42、およびコントローラ43とから構成されている。水蒸気密度測定装置6は、図4に示すように、温度センサー61、湿度センサー62、圧力センサー63、および演算表示部64とから構成されている。試料水捕集装置8は、図5に示すように、試料水捕集部81、冷却水を試料水捕集部81に循環供給する冷却水供給部82、捕集した試料水を自動排水するオートドレン83、排出された試料水を溜めておく試料水容器84とから構成されていおり、また試料水捕集部81は、図示するように、その内部に複数の細管811を有する。当該細管811は、化学的に安定な樹脂、たとえばテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、あるいは、かかる化学的安定樹脂にて表面がコートされた金属材にて形成されている。
【0020】
上記酸性ガス除去装置3は、図6に示すように、粒子状放射性物質を捕集するダストフィルタ31と、それに続いて酸性ガスを除去するカリゼオライト321を充填した酸性ガス除去フィルタカートリッジ32と、ダストフィルタ31及び酸性ガス除去フィルタカートリッジ32を装着する酸性ガス除去フィルタケース33と、酸性ガス除去フィルタケース33を内包してサンプルガスの温度が酸露点以下にならないように維持する恒温槽34と、酸性ガス除去フィルタケース33の入口と出口に設けられたそれぞれ入口弁35及び出口弁36から構成される。カリゼオライト321は、ゼオライトにカリを担持させた吸着剤であって、特に酸性ガスに有効に作用して効率良く除去する。なお、酸性ガス除去フィルタカートリッジ32は、酸性ガスの濃度に応じて種々の方法で、たとえば複数の上記カートリッジを積み重ねるなどして装填してもよい。ヨウ素捕集フィルタユニット5は、図7に示すように、放射性ヨウ素を捕集する添着炭511を充填した添着炭カートリッジ51を積み重ねて装填収納する添着炭フィルタケース52と、添着炭フィルタケース52の入口と出口に設けられたそれぞれ入口弁53及び出口弁54から構成される
【0021】
次に、実施の形態1の装置の機能を詳細に説明すると、加熱装置2にて酸露点以上の所定の温度に維持され、サンプルガス(図示せず)は、サンプリング配管1から酸性ガス除去フィルタユニット3に導入され、サンプルガスの温度が酸露点以下にならないように維持されながら酸性ガスが除去されて冷却器4に導入される。冷却器4は、サンプルガスをフィン付き配管41に通して空冷で冷却し、ファン42からフィン付き配管41のフィンに送風し、コントローラ43は、後述の湿度計の湿度に基づき水露点以下にならないようにかつ所定の湿度以上にならないように、ファンの回転数を制御またはファンの電源をO
N/OFF制御する。冷却器4から排出されたサンプルガスは、ヨウ素捕集フィルタユニット5に導入され、サンプルガスに含まれる放射性の単体ヨウ素及び有機ヨウ素が捕集されると共に、冷却により析出されたタール状物質が除去される。
【0022】
ヨウ素捕集フィルタユニット5から排出されたサンプルガスは、水蒸気密度測定装置6に導入され、図4に示す温度センサー61で温度が測定され、湿度センサー62で湿度が測定され、圧力センサー63で圧力が測定され、それぞれの測定結果が入力されてサンプリングの開始からの平均水蒸気密度が演算されて演算表示部64に表示される。なお、湿度センサー62は、露点を測定する露点センサーに代えてもよい。
【0023】
コンプレッサ7は、水蒸気密度測定装置6から排出されたサンプルガスを吸引して加圧する。試料水捕集装置8から排出されたサンプルガスは、第1の圧力計9で圧力が測定され、圧力調整弁10で圧力が調整されて減圧して排出される。圧力調整弁10から排出されたサンプルガスについて、流量計11で流量が測定され、第2の圧力計12で圧力が測定され、放射性希ガスモニタ13で希ガスが測定され、サンプリング配管14から排気される。
【0024】
酸性ガス除去フィルタユニット3は、図6に示すように、粒子状放射性物質を捕集するダストフィルタ31と、それに続いて酸性ガスを除去するカリゼオライト321を充填した酸性ガス除去フィルタカートリッジ32と、ダストフィルタ31及び酸性ガス除去フィルタカートリッジ32を装着する酸性ガス除去フィルタケース33と、酸性ガス除去フィルタケース33を内包してサンプルガスの温度が酸露点以下にならないように維持する恒温槽34と、酸性ガス除去フィルタケース33の入口と出口に設けられたそれぞれ入口弁35及び出口弁36から構成される。なお、上記のカリゼオライト321は、ゼオライトにカリを担持させた吸着剤で、特に酸性ガスに有効に作用して効率良く除去する。なお、酸性ガス除去フィルタカートリッジ32は、酸性ガスの濃度に応じて複数個積み重ねて装填してもよい。
【0025】
ヨウ素捕集フィルタユニット5は、図7に示すように、放射性ヨウ素を捕集する添着炭511を充填した添着炭カートリッジ51を複数個積み重ねて装填収納した添着炭フィルタケース52と、添着炭フィルタケース52の入口と出口に設けられたそれぞれ入口弁53及び出口弁54から構成される。捕集された粒子状放射性物質及び放射性ヨウ素は、Ge半導体スペクトルメータで放射能をオフライン測定される。添着炭511は、活性炭に添着剤を添加したもので、添着剤としてはトリエチレンジアミン(TEDA)、ヨウ化錫(SnI2)等があり、添着剤は活性炭に捕集された単体ヨウ素及び有機ヨウ素を活性炭内に固定して離脱を防止し、高効率で捕集する。活性炭を充填した添着炭カートリッジ51は市販されており、容易に入手できて安価である。
【0026】
次に、実施の形態1の効果について説明する。源流点(図示せず)のサンプルガスの酸露点が例えば150℃の場合、サンプルガスは、サンプリング配管1に設置された加熱装置2により露点以上の温度、例えば180℃に維持されて酸性ガス除去フィルタユニット3に導入される。酸性ガス除去フィルタユニット3では、酸性ガス除去フィルタケース33を恒温槽34で保温し、仕様下限周囲温度においてもサンプルガスの温度を酸露点150℃以上に維持しながら、酸性ガス除去フィルタカートリッジ32に充填されたカリゼオライト321でサンプルガス中の酸性ガスを除去する。
【0027】
冷却器4は、源流点のサンプルガスの水露点が例えば40℃の場合、40℃+T1まで冷却する。ヨウ素捕集フィルタユニット5は、冷却器4から排出されたサンプルガスを導入し、添着炭カートリッジ51に充填された添着炭511にてサンプルガスに含まれている放射性の単体ヨウ素及び有機ヨウ素を捕集すると共に、サンプルガスに含まれるタール状物質を除去する。ヨウ素捕集フィルタユニット5から排出されたサンプルガスは、自然放熱で若干温度が下がって水蒸気密度測定装置6に導入されるので、自然放熱を加味して冷却器4の冷却温度40℃+T1を設定する。T1は、サンプルガスの湿度が添着炭521で放射性の単体ヨウ素及び有機ヨウ素が90%以上で捕集されるための好適な湿度条件70%以下になるように設定され、更に、湿度計62の仕様上限温度以下かつ水露点以上になるように設定される。例えば、T1を10℃とすることにより、サンプルガスの温度は50℃となり、その結果、サンプルガスの湿度は約60%RHとなり、流量計の仕様上限温度60℃以下に収めることができる。
【0028】
ヨウ素捕集フィルタユニット5から排出されたサンプルガスは、自然放熱で若干温度が下がっても水露点40℃以上を維持できる。水蒸気密度測定装置6から排出されたサンプルガスは、コンプレッサ7で、例えば3気圧に加圧されると水蒸気密度が3倍になり、加圧されたサンプルガスが試料水捕集装置8で、例えば2℃に冷却されると、大気圧にもどした状態に換算した水露点が0℃まで低下した状態になり、冬季の水露点が低い状態でも試料水が採取可能になると共に、下流の流量計11、第2の圧力計12、放射性希ガスモニタ13を好適な低湿度条件下で動作させることができる。
【0029】
よって以上にように、ヨウ素サンプラ、トリチウムサンプラ、放射性希ガスモニタを単独に設置する場合に対して、サンプリング機能と腐食及びタール状物質から機器を保護するための前処理機能を共用できるため、個々にそれぞれの機能を設置するのに比べて設備費を大幅に低減した放射性ヨウ素トリチウムサンプラ・放射性物質のモニタシステムを提供できる。
【0030】
また、酸性ガス除去フィルタユニット3においてサンプルガスの温度を酸露点以上で維持して酸性ガス除去フィルタカートリッジ32に充填されたカリゼオライト321でサンプルガス中の酸性ガスを除去し、ヨウ素捕集フィルタユニット5の添着炭カートリッジ51に充填された添着炭521が酸性ガスで窒息しないように条件整備を行い、冷却器4でサンプルガスの温度を水露点以上かつ湿度70%RH以下とし、添着炭521が放射性の単体ヨウ素及び有機ヨウ素を捕集するのに好適な条件を整備することにより、安価な市販の添着炭カートリッジ51を使用できるようになり、添着炭カートリッジ51の交換に係わる材料費を大幅に低減することができる。
【0031】
また、ヨウ素捕集フィルタユニット5の添着炭カートリッジ51に充填された添着炭511でタール状物質を除去することにより、水蒸気密度測定装置6の湿度センサー62、試料水捕集装置8の例えばフッ素樹脂製の細管811にタール状物質が付着することによる保守頻度及び交換頻度の増大を防止でき、保守費用が低減される効果を奏する。また、発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針で要求している粒子状放射性核種の定期的なサンプル採取と、放射性希ガス測定の前処理としての粒子状物質の除去について、酸性ガス除去フィルタユニット3に両方の機能を備えるようにしたので、単独でヨウ素サンプラと放射性希ガスモニタを設置する場合に比べて、ダストフィルタに係わる保守費用を大幅に低減できる効果を奏する。
【0032】
実施の形態2
本発明の実施の形態2に就き、図8を参照して詳細に説明する。前記の実施の形態1においては、水蒸気密度測定装置6は、図1に示すように、ヨウ素捕集フィルタユニット5と試料水捕集装置8との間に設置されて前記した機能をなした。これに対して実施の形態2では、当該測定装置6は、図8に示すように、試料水捕集装置8の下流に設置されて、試料水捕集装置8の試料水容器84に溜まった試料水をサンプリング期間積算流量値で割り算した平均水蒸気密度と図8での水蒸気密度測定装置6で求めた平均水蒸気密度の合計をもって源流点の平均水蒸気密度とすることにより、実施の形態1と同様に源流点の平均水蒸気密度を正確に測定できると共に、残留酸性ガスが試料水捕集装置8で除去されてサンプルガス中の酸性ガスは通常の大気中濃度レベルに以下に低下するため、湿度計61を更に好適な環境で動作させることができる効果を奏する。
【0033】
実施の形態3
本発明の実施の形態3に就き、図9を参照して詳細に説明する。実施の形態3は、図9に示すように、実施の形態1及び実施の形態2における酸性ガス除去フィルタユニット3を3aと3bの2系統を並列に備え、それぞれの系統の入口弁35a、35b、及び出口弁36a、36bを片系通、両系通、片系通と順次切換えることによりコンプレッサ7を停止することなくダストフィルタ31及び酸性ガス除去フィルタカートリッジ32を交換でき、ヨウ素捕集フィルタユニット5も5aと5bの2系統を並列に備え、それぞれの系統の入口弁53a、53b及び出口弁54a、54bを、片系通、両系通、片系通と順次切換えることによりコンプレッサ7を停止することなく添着炭カートリッジ51を交換できるため、保守により試料の欠落及び欠測を可能な限り抑制した信頼性の高いヨウ素トリチウムサンプラ・放射性希ガスモニタシステムを提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、原子力発電所、使用済燃料再処理施設等における固体廃棄物の焼却炉施設または溶融炉施設から放出される排気中に含まれる放射性ヨウ素、トリチウム、および放射性希ガスの放射能量を監視するためのモニタシステムとして利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0035】
1:サンプリング配管、2:加熱装置、3:酸性ガス除去フィルタユニット、
4:冷却器、5:ヨウ素捕集フィルタユニット、6:水蒸気密度測定装置、
7:コンプレッサ、8:試料水捕集装置、9:第1の圧力計、10:圧力調整弁、
11:流量計、12:第2の圧力計、13:放射性希ガスモニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査ガス中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置、酸性ガスが除去された上記被検査ガスを冷却する冷却装置、冷却された上記被検査ガスに含まれている放射性ヨウ素を捕集すると共に上記の冷却により析出するタール状物質を除去するヨウ素捕集装置、タール状物質が除去された上記被検査ガスの水蒸気密度を測定する第一水蒸気密度測定装置、および水蒸気密度の測定後に上記被検査ガスを冷却して上記被検査ガスに含まれているトリチウムを含む試料水を得る第一試料水捕集装置を備えたことを特徴とする放射性物質のモニタシステム。
【請求項2】
被検査ガス中の酸性ガスを除去する酸性ガス除去装置、酸性ガスが除去された上記被検査ガスを冷却する冷却装置、冷却された上記被検査ガスに含まれている放射性ヨウ素を捕集すると共に上記の冷却により析出するタール状物質を除去するヨウ素捕集装置、水蒸気密度の測定後に上記被検査ガスを冷却して上記被検査ガスに含まれているトリチウムを含む試料水を得る試料水捕集装置、およびタール状物質が除去された上記被検査ガスの水蒸気密度を測定する第二水蒸気密度測定装置を備えたことを特徴とする放射性物質のモニタシステム。
【請求項3】
上記酸性ガス除去装置は、酸性ガスを除去するカリゼオライトを充填した酸性ガス除去フィルタカートリッジと、上記酸性ガス除去フィルタカートリッジを装着する酸性ガス除去フィルタケースと、上記酸性ガス除去フィルタケースを内包してサンプルガスの温度が酸露点以下にならないように維持する恒温槽を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射性物質のモニタシステム。
【請求項4】
上記ヨウ素捕集装置は、放射性ヨウ素を捕集する添着炭を有する添着炭カートリッジと上記添着炭カートリッジを装着する添着炭フィルタケースとを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の放射性物質のモニタシステム。
【請求項5】
上記酸性ガス除去装置は、粒子状放射性物質を捕集するダストフィルタを備え、上記サンプルガスが上記ダストフィルタを経由して上記酸性ガス除去フィルタカートリッジを通過するようにされていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の放射性物質のモニタシステム。
【請求項6】
上記酸性ガス除去装置及び上記ヨウ素捕集装置をそれぞれ2系統並列に備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の放射性物質のモニタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−220923(P2011−220923A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92178(P2010−92178)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】