放射性物質を含む下水汚泥の保管施設
【課題】 放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、短工期で構築することができる施設を提供する。
【解決手段】 放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1と、連結されたボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネル5と、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5の内面に沿って敷設された遮水シート7とからなる。
【解決手段】 放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1と、連結されたボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネル5と、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5の内面に沿って敷設された遮水シート7とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を含む下水汚泥の保管施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波により、福島第1原子力発電所の原子力発電設備が損傷し、その後に起きた同設備の水素爆発等により、放射性物質が建家外に放出されて各地に飛散した。以来、雨水の流れ込む各地の下水処理施設の汚泥から、相次いで放射性物質が検出されている。
【0003】
一般に、下水汚泥は、焼却灰を廃棄したり、高温での焼却で生じた溶融スラグをコンクリート骨材として利用したり(特許文献1)、乾燥させた有機物をコンポストや燃料として利用したり(特許文献2,3)して処理されている。しかし、放射性物質を含む下水汚泥は、健康被害の問題があるため、上記のような一般的な処理は困難である。そのため、現状では、放射性物質を含む下水汚泥の処理方法が明確になっておらず、シート養生等の簡易な養生方法のみで一時的に保管されている。しかし、シート養生等では放射線の遮蔽効果をほとんど見込めず、保管時のみならず運搬作業時にも注意が必要である。
【0004】
平成23年6月16日に原子力災害対策本部が公表した「上下水処理等副次産物(註)の当面の取り扱いに関する考え方」(註:脱水汚泥及び脱水汚泥を焼却、溶融等したものや、それを再利用して生産するもの)では、次のような考え方が示されたが、まだ、引き続き検討しなければならない事項が多い。
・放射性セシウム濃度が10万Bq/kgを超える汚泥等は、県内の適切に放射線を遮蔽できる施設に保管する。具体的な処分の在り方について、引き続き検討する。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg超〜10万Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。個別の安全性評価及び長期的な管理の方法の検討の後、埋立処分できる。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。跡地を居住等に利用しない前提で、埋立処分できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279084号公報
【特許文献2】特開平5−155678号公報
【特許文献3】特開平9−248600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線を遮蔽できるように下水汚泥を保管する方法としては、土中への埋設が考えられる。しかし、この方法では、埋設深さの管理が難しいとか、長期の保管に不安があるとかという問題がある。また、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階で移設させる際に、掘り起こしが必要なため、手間がかかるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできる施設を提供することにある。また、必要な容量の施設を短工期で構築できるようにすることにある。さらに、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結(接合)されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明に係る放射性物質を含む下水汚泥の保管施設の構築方法は、プレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックを開口が側方を向くようにして設置面に設置して長さ方向に連結し、連結したボックスカルバート用ブロックの一端の開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐとともに、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って遮水シートを敷設するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの内部に、容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥を搬入するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの他端の開口に遮水シートを敷設するとともに該開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐステップと
を含むことを特徴とする。
【0010】
上記の各手段において、ボックスカルバート用ブロックの寸法は、特に限定されないが、保管量が大きくできる点では、内断面積の大きいものが好ましく、具体的には内断面積40〜80m2 のものが好ましい。また、このような大型のものを容易に形成しうる分割式のボックスカルバート用ブロックが好ましい。分割式のボックスカルバート用ブロックとしては、次のものを例示できる。
(ア)水平の底版部と垂直の2つの側壁部とからなる仰向けコ字状の底版部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材とに2分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図10参照)。
(イ)水平の底版部と垂直の2つの側壁部とからなる仰向けコ字状の底版部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材と、左側の第1側壁部材と、右側の第2側壁部材とに4分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図11参照)。
(ウ)水平の部分底版部と垂直の側壁部とからなるL形の第1側壁部材と、水平の部分底版部と垂直の側壁部とからなるL形の第2側壁部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材とに3分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図2等参照)。
【0011】
ボックスカルバート用ブロック及び端パネルのコンクリート厚さは、特に限定されないが、放射線量の減衰性能と現実の移動運搬設備で移動運搬するのに適したブロック重量とのバランスからすると、10〜50cmとすることが好ましい。10cm未満では放射線量の減衰性能が低くなり、50cmを超えると放射線量の減衰性能はそれ以上あまり高くならないのに重くなる。例えば、厚さ12cmの場合には放射線量を75%程度減衰させることができ、厚さ15cmの場合には放射線量を80%程度減衰させることができ、厚さ20cmの場合には放射線量を90%程度減衰させることができ、厚さ40cmの場合には放射線量を99%程度減衰させることができる。
【0012】
前記プレキャストコンクリート製の各部材の接合にあたって互いに近接(当接を含む。部材精度の限界上、当接であっても空隙はできる。以下同じ。)した近接面(例えば、長さ方向に連結されたボックスカルバート用ブロックとボックスカルバート用ブロックとの近接面、分割式のボックスカルバート用ブロックの分割された部材と部材との近接面、ボックスカルバート用ブロックと端パネルとの近接面)の間にできる空隙は、全て、部材の内面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で曲がっていることが好ましい。下水汚泥の放射性物質から放射される放射線は、直進する性質があり、該空隙が内面から外面まで一直線となっていると、該空隙を通って外部に漏出するおそれがあるが、該空隙が内面から外面まで一直線とならないようになっていると、必ずコンクリート部分を通過して減衰するからである。
【0013】
遮水シートとしては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂よりなるシート、ポリエチレン系エラストマー等のエラストマーよりなるシートを例示できる。また、遮水シートとして、防水性能及び吸着性能を持つ粘土鉱物(ベントナイト)をシート状に形成したものを用いることもできる。
【0014】
ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内壁に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具を取り付け、遮水シートを、該熱溶着材に溶着固定して敷設することが好ましい。遮水シートのずれや剥離が防止されるからである。
【0015】
本発明の下水汚泥保管施設で保管する放射性物質を含む汚水汚泥の状態は、特に限定されず、脱水した下水汚泥、焼却した下水汚泥の焼却灰、焼却した下水汚泥の溶融スラグのいずれでもよい。また、汚水汚泥は、裸の状態でもよいが、移設の容易性の点からは、容器に入れられたものであることが好ましい。下水汚泥を入れる容器としては、特に限定されないが、袋(トンバッグ、土嚢袋等)、箱(木箱、樹脂箱、プレキャストコンクリート製ボックス等)を例示できる。
【0016】
ボックスカルバート用ブロックを設置する設置面は、保管現場の地面(ブロックの底板部が嵌合するように地面に掘削した溝の底面を含む。)でもよいし、地面下にボックスカルバート用ブロックを収納できるように、地面に掘った凹所の底面でもよい。後者の場合、下水汚泥保管施設の上方を現場の地面の一部として利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできる。また、必要な容量の施設を短工期で構築することができる。さらに、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1において溝を掘削した保管現場の地面を示す斜視図である。
【図2】同実施例においてボックスカルバート用ブロック及び一方の端パネルの設置ステップを示す斜視図である。
【図3】同実施例においてボックスカルバート用ブロックの設置完了を示す斜視図である。
【図4】同実施例において遮水シートを敷設するステップを示し、(a)は同遮水シートの溶着固定の仕方を示す斜視図、(b)は同じく断面図である。
【図5】同実施例においてボックスカルバート用ブロックの内部に汚水汚泥を搬入する途中を示す斜視図である。
【図6】同実施例において、(a)はボックスカルバート用ブロックの内部に汚水汚泥を搬入し終えた状態を示す正面図、(b)は接合部の断面図である。
【図7】同実施例において他方の端パネルの設置ステップを示す斜視図である。
【図8】同実施例において完成した下水汚泥保管施設を示す斜視図である。
【図9】実施例2の下水汚泥保管施設を示す斜視図である。
【図10】実施例3のボックスカルバート用ブロックとその設置ステップを示す斜視図である。
【図11】実施例4のボックスカルバート用ブロックとその設置ステップを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなる。
【0020】
放射性物質を含む下水汚泥の保管施設の構築方法は、プレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックを開口が側方を向くようにして設置面に設置して長さ方向に連結し、連結したボックスカルバート用ブロックの一端の開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐとともに、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って遮水シートを敷設するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの内部に、容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥を搬入するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの他端の開口に遮水シートを敷設するとともに該開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐステップと
を含むことを特徴とする。
【実施例】
【0021】
本発明を具体化した下水汚泥保管施設及びその構築方法の実施例1を、図1〜図8を参照して説明する。本実施例の下水汚泥保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1と、連結されたボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネル5,6と、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6の内面に沿って敷設された遮水シート7とからなる。
【0022】
実施例1に用いるプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1は、図2等に示すように、水平の部分底版部2aと垂直の側壁部2bとからなるL形の第1側壁部材2と、水平の部分底版部3aと垂直の側壁部3bとからなるL形の第2側壁部材3と、水平の頂版部4aと垂直の側壁部4b,4cとからなる伏せコ字状の頂版部材4とに3分割されていて、これらをボックス状に接合するものである。
側壁部材2,3には補強鉄筋(図示略)が埋設されており、特に側壁部2b,3bにはPC鋼材(図示略)により垂直方向のプレストレスが導入されている。
頂版部材4には補強鉄筋(図示略)が埋設されており、特に頂版部4aにはPC鋼材(図示略)により水平方向のプレストレスが導入されている。
ボックスカルバート用ブロック1の寸法を例示すると、長さ方向(連結方向)の長さ100cm、内幅10〜13m、内高さ5〜6m、頂版部4aの厚さ40〜60cm、部分底版部2a,3aの厚さ45〜75cm、側壁部2b,3b,4b,4cの厚さ40〜55cm、側壁部2b,3bの内面から内方への部分底版部2a,3aの突出長100cm、頂版部4aの下面から下方への側壁部4b,4cの突出長100cmである。
【0023】
部分底版部2aと部分底版部3aとの間は、次の3通りのいずれも可能である。
(1)現場打ちコンクリートで底版9を形成する。図示例はこれを採用したものである。コンクリートの打設及び養生に時間を要するが、放射線遮蔽の点で好ましい。
(2)プレキャストコンクリート製の底版部材を連結する。間隔の変更には対応しにくいが、迅速に施工できる点と放射線遮蔽の点で好ましい。
(3)現場の地面材(土石)とする。放射線遮蔽の点では劣るが、迅速に施工できる点とコスト削減の点で好ましい。
【0024】
本実施例に用いる端パネル5,6は、図2、図7等に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐことができる大きさの矩形状を上下に複数に分割(例えば5分割)した横倒し短冊形状をなすものであり、厚さは側壁部2b,2c,4b,4cの厚さと同一(40〜55cm)である。この端パネル5,6を、端のボックスカルバート用ブロック1に連結しつつ、下から上に積むことにより、開口を塞いでいる。
【0025】
図6(b)に示すように、前記プレキャストコンクリート製の各部材の接合にあたって互いに近接した近接面F(具体的には、長さ方向に連結されたボックスカルバート用ブロック1とボックスカルバート用ブロック1との近接面、分割式のボックスカルバート用ブロックの分割された部材1,2,3と部材1,2,3との近接面、ボックスカルバート用ブロック1と端パネル5,6との近接面)の間にできる空隙Gは、全て、部材の内面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で、例えば凹凸の嵌め合いにより曲がっている。これにより、前記のとおり、放射線Rが空隙Gにかかっても必ずコンクリート部分Cを通過して減衰するようなっている。
【0026】
本実施例の遮水シート7は、図3、図4等に示すように、シート固定具10を用いて張られている。すなわち、ボックスカルバート用ブロック1の内面の要所に埋設された、例えば雌ネジよりなるアンカー13には、金属円盤11とその表面に付着された熱溶着材12とを備えたシート固定具10が、例えばボルト14により固定されている。シート固定具10としては、例えばアーキヤマデ社製の商品名「IHディスク」を用いることができる。そして、遮水シート7は、熱溶着材12に溶着固定されている。
【0027】
本実施例の下水汚泥保管施設は、次のステップからなる方法で構築される。
【0028】
(1)図1に示すように、保管現場の地面17を掘削して、部分底版部2a,3aの厚さと同じ深さの溝18を所定の間隔で形成する。本実施例では、溝18の底面が設置面である。
【0029】
(2)図2に示すように、溝18に部分底版部2aが嵌入するようにして第1側壁部材2を設置し、同じく部分底版部3aが嵌入するようにして第2側壁部材3を設置する。部分底版部2a,3aの上面は、地面17と同一レベルになる。第1側壁部材2及び第2側壁部材3の上に頂版部材4を載置し、側壁部2bに側壁部4bを、側壁部3bに側壁部4cをそれぞれ公知の接合具(図示略)で接合する。これにて、1つのボックスカルバート用ブロック1を、開口が側方を向くようにして設置面に設置することができる。
そして、順次、次のボックスカルバート用ブロック1を長さ方向に並べて同様に設置及び組立を行い、ブロック1同士を公知の連結具(図示略)で長さ方向に連結(接合)する。
部分底版部2aと部分底版部3aとの間に、現場打ちコンクリートで底版9を形成する。
連結したボックスカルバート用ブロック1の一端の開口を端パネル5で塞ぐ。
【0030】
(3)図3及び図4に示すように、遮水シート7を、遮水シート7を介して高周波電磁誘導加熱器15を所定時間押し当てて行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具10の熱溶着材12に溶着固定して、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5の内面に沿って敷設する。遮水シート7同士は重ね合わせ部分を溶着して水密に敷設する。
【0031】
(4)図5及び図6に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の内部に、トンバッグ等の容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥25をフォークリフト等の運搬機器28を用いて搬入し、並べるとともに積み上げる。
(5)図7及び図8に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の他端の開口に遮水シート7を敷設するとともに該開口を端パネル6で塞ぐ。
【0032】
以上説明した実施例1によれば、次の作用効果が得られる。
(a)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6を用いるため、コンクリートの現場打ちをしなくてもよく、設備や手間がかからず、短工期での施工が可能であり、コストが低い。
(b)大型の分割型のボックスカルバート用ブロック1を用いることにより、内部容量を十分に確保することができる。
(c)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6により、前述のとおり厚さに応じた減衰性能で放射線量を減衰させることができるため、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができる。前述のとおり接合にあたって近接する箇所においても、空隙が曲がっているため、放射線を確実に遮蔽することができる。また、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6は堅牢であるため、必要に応じて放射性物質を含む下水汚泥を長期に保管することもできる。
(d)遮水シート7により、外部環境と水密に隔てることができ、汚水の漏出を防止できる。
(e)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6が遮水シート7を保護するため、地震等があっても遮水シート7に亀裂が入りにくく、遮水性が維持される。
(f)遮水シート7が、シート固定具10の熱溶着材12に溶着固定されるので、地震等があっても遮水シート7のずれや剥離が起こらず、信頼性が高い。
(g)下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での、移設を容易に行うこともできる。
【0033】
なお、本発明は前記実施例1の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図9に示す実施例2は、地面17に掘った凹所の底面にボックスカルバート用ブロック1等を設置して、地面下に下水汚泥保管施設を収納し、土を埋め戻すとともにさらに芝等の緑化層を敷設し、下水汚泥保管施設の上方を現場の地面の一部として利用できるようにした点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【0034】
(2)図10に示す実施例3は、前記ボックスカルバート用ブロック1に代えて、水平の底版部22aと垂直の2つの側壁部22b,22cとからなる仰向けコ字状の底版部材22と、水平の頂版部23aと垂直の2つの側壁部23b,23cとからなる伏せコ字状の頂版部材23とに2分割されていて、これらをボックス状に接合するボックスカルバート用ブロック21を用いる点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【0035】
(3)図11に示す実施例4は、前記ボックスカルバート用ブロック1に代えて、水平の底版部32aと垂直の2つの側壁部32b,32cとからなる仰向けコ字状の底版部材32と、水平の頂版部33aと垂直の2つの側壁部33b,33cとからなる伏せコ字状の頂版部材33と、左側の第1側壁部材34と、右側の第2側壁部材35とに4分割されていて、これらをボックス状に接合するボックスカルバート用ブロック31を用いる点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【符号の説明】
【0036】
1 ボックスカルバート用ブロック
5 端パネル
6 端パネル
7 遮水シート
9 底版
10 シート固定具
17 地面
18 溝
19 溝
21 ボックスカルバート用ブロック
31 ボックスカルバート用ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質を含む下水汚泥の保管施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びそれに伴う津波により、福島第1原子力発電所の原子力発電設備が損傷し、その後に起きた同設備の水素爆発等により、放射性物質が建家外に放出されて各地に飛散した。以来、雨水の流れ込む各地の下水処理施設の汚泥から、相次いで放射性物質が検出されている。
【0003】
一般に、下水汚泥は、焼却灰を廃棄したり、高温での焼却で生じた溶融スラグをコンクリート骨材として利用したり(特許文献1)、乾燥させた有機物をコンポストや燃料として利用したり(特許文献2,3)して処理されている。しかし、放射性物質を含む下水汚泥は、健康被害の問題があるため、上記のような一般的な処理は困難である。そのため、現状では、放射性物質を含む下水汚泥の処理方法が明確になっておらず、シート養生等の簡易な養生方法のみで一時的に保管されている。しかし、シート養生等では放射線の遮蔽効果をほとんど見込めず、保管時のみならず運搬作業時にも注意が必要である。
【0004】
平成23年6月16日に原子力災害対策本部が公表した「上下水処理等副次産物(註)の当面の取り扱いに関する考え方」(註:脱水汚泥及び脱水汚泥を焼却、溶融等したものや、それを再利用して生産するもの)では、次のような考え方が示されたが、まだ、引き続き検討しなければならない事項が多い。
・放射性セシウム濃度が10万Bq/kgを超える汚泥等は、県内の適切に放射線を遮蔽できる施設に保管する。具体的な処分の在り方について、引き続き検討する。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg超〜10万Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。個別の安全性評価及び長期的な管理の方法の検討の後、埋立処分できる。
・放射性セシウム濃度が8千Bq/kg以下の汚泥等は、住宅地等と適切な距離を保った上で、管理型処分場に仮置きができる。跡地を居住等に利用しない前提で、埋立処分できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279084号公報
【特許文献2】特開平5−155678号公報
【特許文献3】特開平9−248600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線を遮蔽できるように下水汚泥を保管する方法としては、土中への埋設が考えられる。しかし、この方法では、埋設深さの管理が難しいとか、長期の保管に不安があるとかという問題がある。また、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階で移設させる際に、掘り起こしが必要なため、手間がかかるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできる施設を提供することにある。また、必要な容量の施設を短工期で構築できるようにすることにある。さらに、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結(接合)されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明に係る放射性物質を含む下水汚泥の保管施設の構築方法は、プレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックを開口が側方を向くようにして設置面に設置して長さ方向に連結し、連結したボックスカルバート用ブロックの一端の開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐとともに、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って遮水シートを敷設するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの内部に、容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥を搬入するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの他端の開口に遮水シートを敷設するとともに該開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐステップと
を含むことを特徴とする。
【0010】
上記の各手段において、ボックスカルバート用ブロックの寸法は、特に限定されないが、保管量が大きくできる点では、内断面積の大きいものが好ましく、具体的には内断面積40〜80m2 のものが好ましい。また、このような大型のものを容易に形成しうる分割式のボックスカルバート用ブロックが好ましい。分割式のボックスカルバート用ブロックとしては、次のものを例示できる。
(ア)水平の底版部と垂直の2つの側壁部とからなる仰向けコ字状の底版部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材とに2分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図10参照)。
(イ)水平の底版部と垂直の2つの側壁部とからなる仰向けコ字状の底版部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材と、左側の第1側壁部材と、右側の第2側壁部材とに4分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図11参照)。
(ウ)水平の部分底版部と垂直の側壁部とからなるL形の第1側壁部材と、水平の部分底版部と垂直の側壁部とからなるL形の第2側壁部材と、水平の頂版部と垂直の2つの側壁部とからなる伏せコ字状の頂版部材とに3分割されていて、これらをボックス状に接合するもの(図2等参照)。
【0011】
ボックスカルバート用ブロック及び端パネルのコンクリート厚さは、特に限定されないが、放射線量の減衰性能と現実の移動運搬設備で移動運搬するのに適したブロック重量とのバランスからすると、10〜50cmとすることが好ましい。10cm未満では放射線量の減衰性能が低くなり、50cmを超えると放射線量の減衰性能はそれ以上あまり高くならないのに重くなる。例えば、厚さ12cmの場合には放射線量を75%程度減衰させることができ、厚さ15cmの場合には放射線量を80%程度減衰させることができ、厚さ20cmの場合には放射線量を90%程度減衰させることができ、厚さ40cmの場合には放射線量を99%程度減衰させることができる。
【0012】
前記プレキャストコンクリート製の各部材の接合にあたって互いに近接(当接を含む。部材精度の限界上、当接であっても空隙はできる。以下同じ。)した近接面(例えば、長さ方向に連結されたボックスカルバート用ブロックとボックスカルバート用ブロックとの近接面、分割式のボックスカルバート用ブロックの分割された部材と部材との近接面、ボックスカルバート用ブロックと端パネルとの近接面)の間にできる空隙は、全て、部材の内面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で曲がっていることが好ましい。下水汚泥の放射性物質から放射される放射線は、直進する性質があり、該空隙が内面から外面まで一直線となっていると、該空隙を通って外部に漏出するおそれがあるが、該空隙が内面から外面まで一直線とならないようになっていると、必ずコンクリート部分を通過して減衰するからである。
【0013】
遮水シートとしては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等の樹脂よりなるシート、ポリエチレン系エラストマー等のエラストマーよりなるシートを例示できる。また、遮水シートとして、防水性能及び吸着性能を持つ粘土鉱物(ベントナイト)をシート状に形成したものを用いることもできる。
【0014】
ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内壁に、表面に熱溶着材を備えたシート固定具を取り付け、遮水シートを、該熱溶着材に溶着固定して敷設することが好ましい。遮水シートのずれや剥離が防止されるからである。
【0015】
本発明の下水汚泥保管施設で保管する放射性物質を含む汚水汚泥の状態は、特に限定されず、脱水した下水汚泥、焼却した下水汚泥の焼却灰、焼却した下水汚泥の溶融スラグのいずれでもよい。また、汚水汚泥は、裸の状態でもよいが、移設の容易性の点からは、容器に入れられたものであることが好ましい。下水汚泥を入れる容器としては、特に限定されないが、袋(トンバッグ、土嚢袋等)、箱(木箱、樹脂箱、プレキャストコンクリート製ボックス等)を例示できる。
【0016】
ボックスカルバート用ブロックを設置する設置面は、保管現場の地面(ブロックの底板部が嵌合するように地面に掘削した溝の底面を含む。)でもよいし、地面下にボックスカルバート用ブロックを収納できるように、地面に掘った凹所の底面でもよい。後者の場合、下水汚泥保管施設の上方を現場の地面の一部として利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができ、また必要に応じて長期に保管することもできる。また、必要な容量の施設を短工期で構築することができる。さらに、下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での移設を容易に行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1において溝を掘削した保管現場の地面を示す斜視図である。
【図2】同実施例においてボックスカルバート用ブロック及び一方の端パネルの設置ステップを示す斜視図である。
【図3】同実施例においてボックスカルバート用ブロックの設置完了を示す斜視図である。
【図4】同実施例において遮水シートを敷設するステップを示し、(a)は同遮水シートの溶着固定の仕方を示す斜視図、(b)は同じく断面図である。
【図5】同実施例においてボックスカルバート用ブロックの内部に汚水汚泥を搬入する途中を示す斜視図である。
【図6】同実施例において、(a)はボックスカルバート用ブロックの内部に汚水汚泥を搬入し終えた状態を示す正面図、(b)は接合部の断面図である。
【図7】同実施例において他方の端パネルの設置ステップを示す斜視図である。
【図8】同実施例において完成した下水汚泥保管施設を示す斜視図である。
【図9】実施例2の下水汚泥保管施設を示す斜視図である。
【図10】実施例3のボックスカルバート用ブロックとその設置ステップを示す斜視図である。
【図11】実施例4のボックスカルバート用ブロックとその設置ステップを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
放射性物質を含む下水汚泥の保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなる。
【0020】
放射性物質を含む下水汚泥の保管施設の構築方法は、プレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックを開口が側方を向くようにして設置面に設置して長さ方向に連結し、連結したボックスカルバート用ブロックの一端の開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐとともに、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って遮水シートを敷設するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの内部に、容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥を搬入するステップと、
ボックスカルバート用ブロックの他端の開口に遮水シートを敷設するとともに該開口をプレキャストコンクリート製の端パネルで塞ぐステップと
を含むことを特徴とする。
【実施例】
【0021】
本発明を具体化した下水汚泥保管施設及びその構築方法の実施例1を、図1〜図8を参照して説明する。本実施例の下水汚泥保管施設は、開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1と、連結されたボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネル5,6と、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6の内面に沿って敷設された遮水シート7とからなる。
【0022】
実施例1に用いるプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロック1は、図2等に示すように、水平の部分底版部2aと垂直の側壁部2bとからなるL形の第1側壁部材2と、水平の部分底版部3aと垂直の側壁部3bとからなるL形の第2側壁部材3と、水平の頂版部4aと垂直の側壁部4b,4cとからなる伏せコ字状の頂版部材4とに3分割されていて、これらをボックス状に接合するものである。
側壁部材2,3には補強鉄筋(図示略)が埋設されており、特に側壁部2b,3bにはPC鋼材(図示略)により垂直方向のプレストレスが導入されている。
頂版部材4には補強鉄筋(図示略)が埋設されており、特に頂版部4aにはPC鋼材(図示略)により水平方向のプレストレスが導入されている。
ボックスカルバート用ブロック1の寸法を例示すると、長さ方向(連結方向)の長さ100cm、内幅10〜13m、内高さ5〜6m、頂版部4aの厚さ40〜60cm、部分底版部2a,3aの厚さ45〜75cm、側壁部2b,3b,4b,4cの厚さ40〜55cm、側壁部2b,3bの内面から内方への部分底版部2a,3aの突出長100cm、頂版部4aの下面から下方への側壁部4b,4cの突出長100cmである。
【0023】
部分底版部2aと部分底版部3aとの間は、次の3通りのいずれも可能である。
(1)現場打ちコンクリートで底版9を形成する。図示例はこれを採用したものである。コンクリートの打設及び養生に時間を要するが、放射線遮蔽の点で好ましい。
(2)プレキャストコンクリート製の底版部材を連結する。間隔の変更には対応しにくいが、迅速に施工できる点と放射線遮蔽の点で好ましい。
(3)現場の地面材(土石)とする。放射線遮蔽の点では劣るが、迅速に施工できる点とコスト削減の点で好ましい。
【0024】
本実施例に用いる端パネル5,6は、図2、図7等に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の両端の開口を塞ぐことができる大きさの矩形状を上下に複数に分割(例えば5分割)した横倒し短冊形状をなすものであり、厚さは側壁部2b,2c,4b,4cの厚さと同一(40〜55cm)である。この端パネル5,6を、端のボックスカルバート用ブロック1に連結しつつ、下から上に積むことにより、開口を塞いでいる。
【0025】
図6(b)に示すように、前記プレキャストコンクリート製の各部材の接合にあたって互いに近接した近接面F(具体的には、長さ方向に連結されたボックスカルバート用ブロック1とボックスカルバート用ブロック1との近接面、分割式のボックスカルバート用ブロックの分割された部材1,2,3と部材1,2,3との近接面、ボックスカルバート用ブロック1と端パネル5,6との近接面)の間にできる空隙Gは、全て、部材の内面から外面まで一直線とならないように、部材の内面から外面までの途中で、例えば凹凸の嵌め合いにより曲がっている。これにより、前記のとおり、放射線Rが空隙Gにかかっても必ずコンクリート部分Cを通過して減衰するようなっている。
【0026】
本実施例の遮水シート7は、図3、図4等に示すように、シート固定具10を用いて張られている。すなわち、ボックスカルバート用ブロック1の内面の要所に埋設された、例えば雌ネジよりなるアンカー13には、金属円盤11とその表面に付着された熱溶着材12とを備えたシート固定具10が、例えばボルト14により固定されている。シート固定具10としては、例えばアーキヤマデ社製の商品名「IHディスク」を用いることができる。そして、遮水シート7は、熱溶着材12に溶着固定されている。
【0027】
本実施例の下水汚泥保管施設は、次のステップからなる方法で構築される。
【0028】
(1)図1に示すように、保管現場の地面17を掘削して、部分底版部2a,3aの厚さと同じ深さの溝18を所定の間隔で形成する。本実施例では、溝18の底面が設置面である。
【0029】
(2)図2に示すように、溝18に部分底版部2aが嵌入するようにして第1側壁部材2を設置し、同じく部分底版部3aが嵌入するようにして第2側壁部材3を設置する。部分底版部2a,3aの上面は、地面17と同一レベルになる。第1側壁部材2及び第2側壁部材3の上に頂版部材4を載置し、側壁部2bに側壁部4bを、側壁部3bに側壁部4cをそれぞれ公知の接合具(図示略)で接合する。これにて、1つのボックスカルバート用ブロック1を、開口が側方を向くようにして設置面に設置することができる。
そして、順次、次のボックスカルバート用ブロック1を長さ方向に並べて同様に設置及び組立を行い、ブロック1同士を公知の連結具(図示略)で長さ方向に連結(接合)する。
部分底版部2aと部分底版部3aとの間に、現場打ちコンクリートで底版9を形成する。
連結したボックスカルバート用ブロック1の一端の開口を端パネル5で塞ぐ。
【0030】
(3)図3及び図4に示すように、遮水シート7を、遮水シート7を介して高周波電磁誘導加熱器15を所定時間押し当てて行う電磁誘導加熱により溶融させたシート固定具10の熱溶着材12に溶着固定して、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5の内面に沿って敷設する。遮水シート7同士は重ね合わせ部分を溶着して水密に敷設する。
【0031】
(4)図5及び図6に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の内部に、トンバッグ等の容器に入れられた放射性物質を含む下水汚泥25をフォークリフト等の運搬機器28を用いて搬入し、並べるとともに積み上げる。
(5)図7及び図8に示すように、ボックスカルバート用ブロック1の他端の開口に遮水シート7を敷設するとともに該開口を端パネル6で塞ぐ。
【0032】
以上説明した実施例1によれば、次の作用効果が得られる。
(a)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6を用いるため、コンクリートの現場打ちをしなくてもよく、設備や手間がかからず、短工期での施工が可能であり、コストが低い。
(b)大型の分割型のボックスカルバート用ブロック1を用いることにより、内部容量を十分に確保することができる。
(c)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6により、前述のとおり厚さに応じた減衰性能で放射線量を減衰させることができるため、放射性物質を含む下水汚泥を、その放射線を遮蔽して安全に保管することができる。前述のとおり接合にあたって近接する箇所においても、空隙が曲がっているため、放射線を確実に遮蔽することができる。また、ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6は堅牢であるため、必要に応じて放射性物質を含む下水汚泥を長期に保管することもできる。
(d)遮水シート7により、外部環境と水密に隔てることができ、汚水の漏出を防止できる。
(e)ボックスカルバート用ブロック1及び端パネル5,6が遮水シート7を保護するため、地震等があっても遮水シート7に亀裂が入りにくく、遮水性が維持される。
(f)遮水シート7が、シート固定具10の熱溶着材12に溶着固定されるので、地震等があっても遮水シート7のずれや剥離が起こらず、信頼性が高い。
(g)下水汚泥の最終処理方法や搬出先が決まった段階での、移設を容易に行うこともできる。
【0033】
なお、本発明は前記実施例1の構成に限定されず、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図9に示す実施例2は、地面17に掘った凹所の底面にボックスカルバート用ブロック1等を設置して、地面下に下水汚泥保管施設を収納し、土を埋め戻すとともにさらに芝等の緑化層を敷設し、下水汚泥保管施設の上方を現場の地面の一部として利用できるようにした点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【0034】
(2)図10に示す実施例3は、前記ボックスカルバート用ブロック1に代えて、水平の底版部22aと垂直の2つの側壁部22b,22cとからなる仰向けコ字状の底版部材22と、水平の頂版部23aと垂直の2つの側壁部23b,23cとからなる伏せコ字状の頂版部材23とに2分割されていて、これらをボックス状に接合するボックスカルバート用ブロック21を用いる点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【0035】
(3)図11に示す実施例4は、前記ボックスカルバート用ブロック1に代えて、水平の底版部32aと垂直の2つの側壁部32b,32cとからなる仰向けコ字状の底版部材32と、水平の頂版部33aと垂直の2つの側壁部33b,33cとからなる伏せコ字状の頂版部材33と、左側の第1側壁部材34と、右側の第2側壁部材35とに4分割されていて、これらをボックス状に接合するボックスカルバート用ブロック31を用いる点において、第1実施例と相違するものであり、その他は第1実施例と同様である。
【符号の説明】
【0036】
1 ボックスカルバート用ブロック
5 端パネル
6 端パネル
7 遮水シート
9 底版
10 シート固定具
17 地面
18 溝
19 溝
21 ボックスカルバート用ブロック
31 ボックスカルバート用ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなることを特徴とする放射性物質を含む下水汚泥の保管施設。
【請求項1】
開口が側方を向くようにして設置面に設置されて長さ方向に連結されたプレキャストコンクリート製のボックスカルバート用ブロックと、連結されたボックスカルバート用ブロックの両端の開口を塞ぐプレキャストコンクリート製の端パネルと、ボックスカルバート用ブロック及び端パネルの内面に沿って敷設された遮水シートとからなることを特徴とする放射性物質を含む下水汚泥の保管施設。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−57556(P2013−57556A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195095(P2011−195095)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000186898)昭和コンクリート工業株式会社 (13)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000186898)昭和コンクリート工業株式会社 (13)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
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