放射性物質貯蔵方法および貯蔵施設
【課題】
貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ貯蔵している放射性物質に必要な冷却性能を有する放射性物質貯蔵方法および放射性物質貯蔵施設を提供する。
【解決手段】
放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット2内に放射性物質を収納する収納管4が複数配置され、初めに隣接する収納管4のうち少なくとも1つの収納管4が空の状態のままとなるように放射性物質を収納管4に順に収納し、次に空の状態のままとなっている収納管4に順に収納する。
貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ貯蔵している放射性物質に必要な冷却性能を有する放射性物質貯蔵方法および放射性物質貯蔵施設を提供する。
【解決手段】
放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット2内に放射性物質を収納する収納管4が複数配置され、初めに隣接する収納管4のうち少なくとも1つの収納管4が空の状態のままとなるように放射性物質を収納管4に順に収納し、次に空の状態のままとなっている収納管4に順に収納する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱を伴う放射性物質の貯蔵方法と、その放射性物質貯蔵施設に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で使用された後の使用済燃料集合体は、原子力発電所の燃料貯蔵プール内に所定期間貯蔵保管され、その後に、ウラン及びプルトニウム等の再使用可能な核燃料物質を使用済燃料集合体から回収するために再処理施設で再処理される。
【0003】
この再処理で生じた高レベル放射性廃棄物はガラス固化体に製造されて、最終的には地下に設けられた処分場にて埋設処分される。しかし、そのガラス固化体は、製造直後は発熱量が高いため、数十年間専用の放射性物質貯蔵施設にて冷却しながら貯蔵し、埋設処分可能な発熱量にまで低下した後に埋設処分される。
【0004】
ガラス固化体の貯蔵施設の一例が特許文献1に記載されている。この例のガラス固化体貯蔵施設は、ガラス固化体を収納する複数の収納管を貯蔵ピット内に設置している。通風管が収納管の周囲を同心状に取り囲んでおり、収納管と通風管の間に貯蔵施設外から取り入れた空気を流している。
【0005】
ガラス固化体はこの空気によって冷却される。ガラス固化体を冷却した空気は、暖められて貯蔵施設内に形成される排気通路を通って外部へ排出される。この冷却用の空気は、暖められた空気が上昇する力を利用して、自然循環により貯蔵施設内を流れる。
【0006】
特許文献2も、放射性物質を収納する複数の収納管が貯蔵ピット内に設置された放射性物質貯蔵施設を記載し、その貯蔵施設への放射性物質の貯蔵方法を示している。この例の放射性物質貯蔵方法は、収納管の配置間隔が異なる貯蔵ピットを同じ貯蔵建屋内に備え、発熱量の高い貯蔵開始時点では放射性物質を収納管の配置間隔が大きい貯蔵ピットに収納し、一定期間経過して発熱量が所定の値以下に減衰したら収納管の配置間隔が小さい貯蔵ピットにある収納管に放射性物質を移し変えて貯蔵する。
【0007】
特許文献3は、ガラス固化体を貯蔵施設へと収納する際の方法が記載されており、複数の貯蔵ピットを備えたガラス固化体貯蔵施設に対し、ガラス固化体を1つの貯蔵ピットが満杯になるまで収納してから次の貯蔵ピットに収納するのではなく、複数の貯蔵ピットに分散して収納していくことにより、冷却空気の出口温度を低くする方法が記載されている。また、貯蔵施設の例として、特許文献1,2と同様に、ガラス固化体を収納する複数の収納管を貯蔵ピット内に設置し、通風管が収納管の周囲を同心状に取り囲んでおり、収納管と通風管の間に貯蔵施設外から取り入れた空気を流す貯蔵施設の例が示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−305291号公報
【特許文献2】特開平9−43384号公報
【特許文献3】特開2001−33588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自然循環で放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット内に冷却用の空気を流す場合、その空気の循環流量は貯蔵されるガラス固化体に含まれる放射性物質の発熱量に従って決まるため、空気流量を更に増加させてガラス固化体の冷却性能を向上させることは難しい。
【0010】
そこで、例えば、特許文献1に記載の貯蔵施設では、空気流量を増加せずに冷却性能を向上させるため、通風管を設けて収納管表面の空気流路を絞り込んで流速が増すような構造としている。
【0011】
冷却用の空気を収納管と通風管の間に形成される狭い環状流路に流すことによって、空気流速を増しているため、収納管表面の熱伝達率が大きくなる。このため、この貯蔵施設は、発熱量の大きな放射性物質も貯蔵可能になる。しかしながら、各収納管毎に通風管を設ける必要があり、構造が複雑になるとともに必要な部材量や設備費が増大することとなる。
【0012】
構造簡素化のため通風管を排除した場合、貯蔵ピット内の収納管相互間の広い空間が空気流路となるため、収納管表面での空気流速は遅く、収納管表面の熱伝達率は小さくなる。そのため、除熱量が限られ、通風管を設けた場合に比べ発熱量の大きな放射性物質は貯蔵することができない。
【0013】
一方、放射性物質の発熱量は貯蔵中に減衰していくため、貯蔵開始時点での発熱量に対する冷却性能をもつ設備は、一定期間貯蔵した放射性物質に対しては、過剰な冷却性能をもつ設備となる。そこで、特許文献2のように、発熱量の減衰に応じて冷却性能の異なる設備に放射性物質を貯蔵しようとした場合、設備は合理化が可能であるが、放射性物質を貯蔵中に移し変える作業が新たに必要となる。
【0014】
特許文献3のように、複数の貯蔵ピットに分散させて貯蔵した場合、1つの貯蔵ピットに集中して貯蔵した場合に比べて貯蔵ピット全体の総発熱量は小さくなるため、冷却空気出口温度を低減させることは可能である。しかし、特許文献3に記載されている貯蔵施設構造の例は、特許文献1と同じく収納管の周囲に通風管を設けた構造であり、新規に貯蔵する放射性物質に対して必要な冷却性能は変わらないので、全ての収納管に対して貯蔵開始時点での発熱量に対する冷却性能をもつように、通風管を備えておく必要がある。
【0015】
また、特許文献3は、貯蔵ピット内での放射性物質の収納順は示されていない。そこで、例えば通風管のない貯蔵施設に特許文献3を適用し、貯蔵ピット内の放射性物質の収納順として冷却空気の出口側又は入口側の収納管より順に収納した場合、ほぼ同時期に放射性物質を収納した収納管に周囲を囲まれた収納管が発生する恐れがある。その場合、着目する収納管とその周囲の収納管との温度差がほとんど無く、周囲の収納管への輻射放熱が期待できない状況となる可能性が十分考えられる。
【0016】
従って、本発明の目的は、放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット内の構造を簡素化しつつ、発熱量が高い貯蔵開始直後の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる放射性物質貯蔵方法および貯蔵施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の方法による解決手段は、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納していき、次に、前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0018】
更には、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の低い前記収納管へ前記放射性物質を収納していき、冷却性能の低い前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の高い前記収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0019】
また、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管として、フィンが設けられた複数の収納管と前記フィンの無い収納管とが採用され、前記フィンの無い収納管へ前記放射性物質を収納していき、前記フィンの無い収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記フィンが設けられた収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0020】
また、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管の内、輻射による熱の授受が可能な前記収納管が相対的に多く隣接している第1の前記収納管と相対的に少なく隣接している第2の前記収納管の内、前記第1の前記収納管に前記放射性物質を収納していき、前記第1の前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記第2の前記収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0021】
本発明の施設による解決手段は、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質貯蔵ピットの側壁に直接的に面しているか、あるいは、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【0022】
更には、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であり、前記放射性物質が収納された前記収納管と前記空の前記収納管との間で輻射伝熱が可能とされていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【0023】
また、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記収納管の内、最初に前記放射性物質が収納される第1の前記収納管と、前記第1の前記収納管に隣接する他の前記収納管の少なくとも1つの間に、前記第1の前記収納管と前記他の前記収納管との相互間の熱的輻射を遮断する配置で、且つ前記第1と他の前記収納管に面する両面が前記冷却空気に接するように前記貯蔵ピット内に仕切り部材が配置されていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ発熱量が高い貯蔵開始直後の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の目的を達成するための一実施例における特徴は、初めに放射性物質を、隣接する収納管のうち少なくとも1つが空の状態となるような順に収納管に収納し、最後に、空の状態にある収納管に収納する貯蔵方法にある。
【0026】
このような特徴を備えて、放射性物質を収納する収納管に隣接して空の収納管が在ると、放射性物質から発生した熱は、放射性物質を収納した収納管の表面より冷却空気へと伝わる他に、放射性物質を収納した収納管から隣接する空の収納管へと輻射で伝わった後、空の収納管表面より冷却空気へと伝わることができる。このため、実質的に冷却空気への放熱面積が増大することになり、冷却空気の流速を増加させなくとも、発熱量の高い貯蔵開始時点の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【0027】
また、最後に放射性物質を収納する収納管は、既に隣接する収納管すべてに放射性物質が収納された状態となるが、その場合、隣接する収納管に収納されている放射性物質は最初の方に貯蔵したものであるため、貯蔵開始時点より発熱量の減衰が進んでいるため、その収納管の温度は相当に低下したものとなる。このため、新しく放射性物質を収納した収納管から隣接する温度の低い収納管へと輻射によって熱が伝わるため、実質的に放熱面積が増大する効果が得られ、発熱量の高い貯蔵開始時点の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【0028】
貯蔵ピットに放射性物質を収納していく時、初期は貯蔵ピット内に貯蔵されている放射性物質が少なく、周囲に空の収納管が多いため、周囲の収納管への輻射放熱量を多くすることができるが、満杯に近づくと周囲には既に放射性物質を収納した収納管が多く在り、周囲への輻射放熱量が減衰する。そこで、放射性物質を収納する順番が後となる収納管の除熱性能を、初めのほうに収納する収納管に比べて、あらかじめ高めておくことで、冷却用の設備量を低減させることができる。
【0029】
また、収納管や、隣接する収納管の間に設置する仕切り部材の表面を、塗装や溶射等で輻射率が増加するように表面処理すれば、収納管からの輻射による放熱量をさらに高めることができ、放射性物質の冷却性能を向上することができる。
【0030】
以下に本発明の実施例を一層具体的に説明する。即ち、本発明の好適な一実施例である放射性物質貯蔵施設を以下に説明するとおりである。なお、本例では使用済核燃料の再処理で発生した高レベル放射性廃棄物をガラス固化したガラス固化体を貯蔵することを想定した場合の例を示す。
【0031】
本実施例の放射性物質貯蔵施設1は、貯蔵建屋30を有し、この貯蔵建屋30内に、天井スラブ5によって仕切られた貯蔵ピット2及び搬送エリア6を設けている。上端部が天井スラブ5に取り付けられた複数の収納管4は、貯蔵ピット2内に配置される。
【0032】
ガラス固化体3(放射性物質)が内部に収納されるこれらの収納管4の下面と床スラブ12の間には下部プレナム部13が形成され、収納管4は垂直方向に熱膨張による伸びを吸収する構造となっている。
【0033】
各収納管4の上端部は、プラグ10によって密封される。ガラス固化体3を任意の収納管4に収納,搬出するための移動可能な搬送台車7が、搬送エリア6内に設けられている。
【0034】
本放射性物質貯蔵施設1は、貯蔵ピット2を6つ有する施設であり、各貯蔵ピット2内には、収納管4が縦横ともに3列以上で、具体的には縦7列,横20列にて140本備えられている。さらに1本の収納管にはガラス固化体3を9段収納することができる。なお、図2ないし図3は収納管4の列数を簡略化して図示している。
【0035】
収納管4は、強度と耐熱性から鉄鋼やステンレス鋼等の金属管で構成される。鉄鋼の場合、外表面を塗装やメッキ,溶射等の防食処理が施されている。
【0036】
収納管4内に収納されているガラス固化体3を冷却するための冷却空気を外部より取り入れる吸気通路8、及びガラス固化体3を冷却し温度が上昇した冷却空気を外部へ放出する排気通路9が、貯蔵建屋30内に設けられている。吸気通路8は下部プレナム部13に連絡され、排気通路9は上部プレナム部14に連絡されている。
【0037】
搬送台車7によって他の建屋から貯蔵建屋30に運ばれてきたガラス固化体3は、そのまま搬送台車7によって所定の収納管4の上方に運ばれ、プラグ10が外された収納管4内に収納され貯蔵される。ガラス固化体3を収納した後、搬送台車7によってプラグ10が収納管4の上端部に取り付けられ、収納管4が密封される。
【0038】
冷却空気は、貯蔵建屋30の外部から吸気通路8内に取り込まれ、下部プレナム部13に導かれる。冷却空気は、貯蔵ピット2内の収納管4周囲を上昇しながら収納管4内のガラス固化体3から放出される熱を除去する。ここで、暖められた冷却空気は、上部プレナム部14を通り、排気通路9を経て貯蔵建屋30の外部に放出される。この冷却空気は、暖められた空気が上昇する力を利用して、自然循環により貯蔵建屋30内を流れる。
【0039】
ガラス固化体3は、まず貯蔵ピット2内の収納管4のうち、図1に示すように、縦に7列あるうちの、1列おきの収納管4に収納する。1列おきにガラス固化体3を収納していくため、必ずガラス固化体3を収納した収納管4の両隣の列は、貯蔵ピット2の壁面か、空の収納管4となる。
【0040】
このため、図4に示すように、ガラス固化体3を収納した収納管4の表面から冷却空気へ熱伝達により放熱される他に、隣の列の空の収納管4に輻射で熱が伝わり、空の収納管4の表面から冷却空気へ熱伝達により放熱される。このため、放熱面積が増加する効果が得られ、ガラス固化体3に対する冷却性能が増加する。
【0041】
本発明を適用せず、貯蔵ピット2の端にある収納管4より隣接の収納管4へと順番にガラス固化体3を収納した場合、貯蔵して間もないガラス固化体3が収納された収納管4に周囲を囲まれた収納管4が発生する。その場合、周囲のガラス固化体3との発熱量の差がなくなるため、隣接収納管への輻射がほとんどなく、収納管4の表面から冷却空気への熱伝達のみとなり、冷却性能は小さくなる。
【0042】
本実施例では、収納管4の周囲の流速を増加させる通風管を設置していないため、収納管4の表面から冷却空気への熱伝達率は小さく、貯蔵開始直後の高い発熱量では冷却性能が不足する。しかしながら、収納管4表面からの熱伝達に加えて、隣接する空の収納管4を通じて放熱すれば、通風管を用いて流速を増加させなくとも必要な冷却性能が得られ、通風管の削減による構造の簡素化を図ることができる。
【0043】
放射性物質貯蔵施設1内の全ての貯蔵ピット2に対して、1列おきにガラス固化体3を収納し終えたら、次に、図1の2順目に示す、空の収納管の中央列を除く2列に収納していく。このとき、貯蔵施設1全体の貯蔵容量に対して、4/7の量のガラス固化体が貯蔵されたことになる。仮に、この貯蔵施設1を満杯にするまでの期間を7年とすると、最初のガラス固化体が貯蔵されてから既に4年が経過したことになる。
【0044】
2順目の収納する時には、両側の列の収納管4には、既に1順目でガラス固化体3を収納しているため、空の収納管4に比べて温度が上昇している。しかしながら、1順目で収納したガラス固化体3は4年が経過しているため、発熱量は減衰して貯蔵開始時点よりも小さくなっている。
【0045】
図10にガラス固化体3の貯蔵開始時からの発熱量の減衰の例を示す。図10の減衰の例では、貯蔵してから4年経過した場合、発熱量はほぼ半分にまで減衰している。このため、2順目にガラス固化体3を収納していく時には、1順目に収納した両側の収納管内のガラス固化体3の発熱量もほぼ半分になる。
【0046】
収納管4の温度は、収納しているガラス固化体3の発熱量が大きいほど高くなるため、2順目で新たにガラス固化体3を収納した収納管4よりも、1順目でガラス固化体3を収納した収納管4の方が温度が低い。このため、空の収納管よりは小さいが、2順目に収納した収納管から1順目に収納した収納管への輻射による放熱面積増加のため、新しく収納したガラス固化体3に対する冷却性能が、周囲の収納管への輻射の無い場合に比べて向上する。
【0047】
一方、1順目にガラス固化体3を収納した収納管は、逆に2順目に収納した収納管からの輻射を受けるため、冷却性能が低下することになる。しかしながら、既に発熱量が減少し、ガラス固化体3の制限温度に対して余裕があるため、新しくガラス固化体3を収納した収納管4から輻射を受けて温度が上昇したとしても、制限温度を超えることは無く、問題ない。
【0048】
さらに、2順目の収納管4が満杯になったら、中央列の残りの収納管4に収納していく。このとき、両隣の列の収納管4に収納されたガラス固化体は6年が経過しており、さらに発熱量が減少していることになる。
【0049】
ガラス固化体3の収納順は、放射性物質の発熱量の減衰量や収納管の配列等によって、図1に示す順以外に様々な収納順が考えられる。図5には、他の収納順の例として、1順目は前後左右1つ置きの収納管4に収納し、2順目で残りの収納管4に収納する例を示している。この例では、隣接する4本の収納管への輻射放熱が期待できる。
【0050】
隣接する空や低発熱の収納管4への輻射量は、お互いの収納管外表面の輻射率によって変化する。隣接する収納管への輻射量を増やして冷却性能を上げるには、収納管外表面の輻射率が大きいほうが良い。そこで、例えば収納管表面に塗装やメッキ,溶射等を用いて、輻射率を増加させれば、隣接する収納管4への輻射量が増加して、より冷却性能を向上させることができる。
【0051】
図16は、貯蔵ピット2内に千鳥状に配置した収納管4に本発明を適用した例を示す。収納管4は、貯蔵ピット2内の短辺方向に7本および6本並んだ列がそれぞれ交互に配置されている。まず1順目では、1列に7本ある収納管4Mにガラス固化体3を収納する。ガラス固化体3を収納する収納管4Mの列の間には空の状態の収納管4Nがあるため、収納管4Mより直接空気へと伝わる伝熱経路のほかに、収納管4Mより収納管4Nに放射で熱が伝えられ収納管4Nより空気へと熱が伝わる伝熱経路が加わるため、端の収納管4より順に貯蔵する場合に比べて放熱面積が増えることになり、冷却性能が向上する。
【0052】
貯蔵施設1にある全ての貯蔵ピット2にある収納管4Mにガラス固化体を収納し終えた時点で、この貯蔵施設1を満杯にする期間に対して、およそ0.56倍 の期間が経過していることになる。仮に、この貯蔵施設1を満杯にする期間を10年とすると、5,6年が経過したことになる。
【0053】
続いて2順目で、空いている収納管4Nにガラス固化体を収納していく。今度は、両隣の列の収納管4Mは既に1順目にガラス固化体3を収納し終えているので、中のガラス固化体3からの発熱によって収納管4Mの温度が上昇している。しかし、貯蔵開始直後の収納管4Nのガラス固化体3に比べて、収納管4Mのガラス固化体は少なくとも5,6年経過しているため、仮に図10のように発熱量が減衰するとすれば、収納管4Mの発熱量は収納管4Nのほぼ半分となる。したがって、収納管4Nより収納管4Mへと放射伝熱が起こり、冷却性能が向上する。
【0054】
また、図1や図5に示す方法だけでは冷却性能が足りない場合には、冷却性能をあげるため、図14に示すように、隣接する収納管4の間に仕切り板11を設け、収納管4より仕切り板11へ輻射で熱を伝え、仕切り板11より冷却空気へと放熱させることで冷却性能を向上させることができる。
【0055】
仕切り板11は、収納管4の間を仕切るように設置された板状の構造物で、図14に示すように、両端を貯蔵ピット2の床スラブ12と天井スラブ5に接続された垂直支持柱16や、両端を貯蔵ピット2の両側の壁に接続された水平支持柱17に溶接あるいはボルト止めにより取り付けられる。仕切り板11は十分な強度と耐熱性が必要なことから鉄鋼、あるいはステンレス鋼,アルミ合金等の金属で構成される。また、腐食に対する長期間の耐久性も必要なことから、鉄鋼には塗装や溶射,メッキ,アルミ合金には陽極酸化による表面の防食処理を施している。
【0056】
仕切り板11の役割は、前述のように収納管4の輻射熱を受けて冷却空気へと放熱することであり、冷却空気の流路を完全に分割することではない。このため、放射性物質の冷却に必要な輻射熱を受けることができれば、多少の隙間が空いていても良い。また、形状も、平らな板でなく、湾曲していたり、突起物があっても問題ない。
【0057】
仕切り板11を用いた場合にも、本発明のように、収納管4への収納順を考慮することでさらに冷却性能を向上させることができる。図6にその例を示す。図6の例では、仕切り板11を、3列おきの収納管4に対して2枚設置する。そうすると、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bと、両側で仕切り板11に面した収納管4Cとに大きく分けられる。
【0058】
等発熱量のガラス固化体が全ての収納管に収納されたと仮定した場合、両側で仕切り板11に面している収納管4Cは、片側のみで仕切り板11に面する4Bよりも、仕切り板11を介して放熱する経路が増えるため、冷却性能が高いと言える。
【0059】
そこで、周囲への輻射放熱が多大に期待できる1順目および2順目は、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bに収納し、最後に、貯蔵量が増えて周囲への輻射放熱が小さくなる3順目には、冷却性能の高い両側に仕切り板11に面した収納管4Cに収納することで、効率よく放射性物質の制限温度以下を維持しながら、最低限の部材量で貯蔵可能となる。
【0060】
図11を用いてもう少し詳細に説明する。1順目および2順目は、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bにガラス固化体3Xを収納する。このときガラス固化体3Xからの熱は、収納管4Bの表面より空気へと熱伝達で伝えられる経路と、輻射によって仕切り板11へと伝わり、仕切り板11より空気へと熱伝達で伝えられる経路によって放熱される。
【0061】
仕切り板11は収納管4Bの片側のみであるが、仕切り板11を挟んで隣の収納管4Cにはまだガラス固化体が収納されていないので、仕切り板11は両側から空気に放熱することができる。
【0062】
3順目は、両側に仕切り板11がある収納管4Cにガラス固化体3Yを収納する。このときもガラス固化体3Yからの熱は、収納管4Cの表面より空気へと熱伝達で伝えられる経路と、輻射によって仕切り板11へと伝わり、仕切り板11より空気へと熱伝達で伝えられる経路によって放熱される。
【0063】
ここで1,2順目と異なるのは、仕切り板11を挟んで隣の収納管4Bは空ではなく、既に1,2順目でガラス固化体3Xを収納しているため、仕切り板11から空気への放熱量が1,2順目に比べて少なくなることである。その分、収納管4Cは両側に仕切り板11が設置されているので、ガラス固化体3Yを十分に冷却することができる。
【0064】
収納管4の場合と同様に、仕切り板11表面の輻射率が大きいほど、収納管4から仕切り板11への輻射量も大きくなる。このため、仕切り板11表面の輻射率が大きくなるように仕切り板11表面を加工することで、収納管4の冷却性能をより向上させることができる。例えば、仕切り板表面に対して塗装やメッキ,溶射,陽極酸化等を用いることで、輻射率を増加させればよい。
【0065】
仕切り板11を設置することで、貯蔵ピット2内の構造部材が増加することになる。しかし、各収納管4毎に通風管15を設置する構造に比べて、通風管15と仕切り板11の厚さが同じ場合、部材の量は約35%程度となり、構造簡素化を図ることができる。
【0066】
さらに、通風管のように、板を曲げて管形状を作る必要がなく、板状の部材をそのまま設置するのみで良いので、部材を加工する手間を削減することもできる。
【0067】
図15には、仕切り板11を用いた他の貯蔵例を示す。図15の例では、仕切り板11を、1列おきの収納管4に対して1枚設置する。そうすると、各列の収納管4は両側が仕切り板11に面する。
【0068】
1順目は、仕切り板11で区分された各収納管4の列のうち、貯蔵ピット側壁面31に面した収納管4Hと、各列の中央の収納管4Jに収納する。図15の例では、仕切り板11を挟んで同じ発熱量の収納管4Hないし収納管4Jが並ぶため、仕切り板11は両側の収納管より同量の放射熱を受ける。このため、仕切り板11の反対側の面からの放熱は期待できないが、仕切り板11に平行な側には貯蔵ピットの側壁面31か空の収納管4Kが位置するため、そちらへの放射による放熱は期待できる。
【0069】
2順目は、仕切り板11で区分された各収納管4の列のうち、各列の中央の収納管4Jの両隣の収納管4Lに収納する。収納管4Lは、1順目で既に貯蔵済みの収納管4Jと、空の収納管4Kに隣接する。空の収納管4Kへはもちろんのこと、1順目に収納した収納管4Jも、既に貯蔵施設1が満杯になるまでの期間の3/7の期間が経過し、収納管4Lよりも発熱量が低くなっているため、収納管4Lより収納管4Kおよび収納管4Jへの放射による放熱が期待できる。
【0070】
最後の3順目には、空の状態で残っている収納管4Kに収納する。収納管4Kの両隣は1順目で既に貯蔵済みの収納管4Hと、2順目で既に収納済みの収納管4Lに隣接する。収納管4Hおよび収納管4Lともに収納管4Hよりも貯蔵期間が長いために発熱量は小さく、したがって収納管4Kより収納管4Hおよび収納管4Lへの放射による放熱が期待できる。
【0071】
仕切り板11の代わりに、収納管4にフィンを設ける場合、例えば、図12に示すように、フィンのついた収納管4Dと、フィンの無い収納管4Eを交互に1列ずつ配置する。
【0072】
まず、図12に示すように、冷却性能の低い、フィンのついていない収納管4Eにガラス固化体3を収納する。1列おきにフィンがついた空の収納管4Dが配置されるので、ガラス固化体の収納した収納管4Eから空の収納管4Dへと輻射で熱が伝わり、空の収納管4Dから空気へと放熱される。このため、フィンがなくとも十分な冷却性能を持つことができる。
【0073】
2順目は、既に1順目でガラス固化体が収納された収納管4Eの間に収納していくため、1順目に比べて隣接する収納管への輻射が期待できないが、2順目に収納する収納管4Dにはフィンがついているため、フィンの無い収納管4Eと比べて冷却性能は高く、十分な冷却性能を持つことができる。このように貯蔵することで、フィンのついた収納管4Dの本数を削減することができる。
【0074】
もし、ガラス固化体3の収納順を規定せず、貯蔵ピット2の端の収納管4より順に収納していくなどした場合、隣接の収納管への輻射を確実に期待できないので、全ての収納管4にフィンをつける必要がある。
【0075】
これに対し、本発明を適用することで、フィンのついた収納管4Dの本数を削減することができ、構造簡素化を図ることができる。
【0076】
また、図13に示すように、隣接する収納管の本数の多い収納管より順にガラス固化体を収納する方法もある。図13はこれまでの例と異なり、収納管が貯蔵ピット内に4列×11列配置された場合の例である。
【0077】
図13の1順目に黒で示した収納管4Fは、周囲を他の収納管に囲まれている。そこで、まず周囲を他の収納管で囲まれた収納管4Fより先にガラス固化体を収納すると、片側が貯蔵ピットの壁に面した収納管4Gは空のままなので、輻射によって空の収納管4Gへと熱が伝わり、空の収納管4Gより空気へと放熱される。
【0078】
もし、貯蔵ピットの端の収納管より順に収納していった場合、貯蔵ピットの中ほどにある収納管4Fは、ガラス固化体を既に収納した収納管に周囲を囲まれることになり、他の収納管への輻射が期待できなくなり、その分、冷却性能が小さくなる。
【0079】
周囲を他の収納管で囲まれた収納管4Fに全て収納し終えたら、2順目に片面を貯蔵ピット2の壁面に面した収納管4Gに収納する。片面が壁面に面しているため、壁面への輻射による放熱が期待できることになる。
【0080】
このように、隣接する収納管の本数が多い収納管より先に収納していく方法を用いても、効率よく冷却することが可能となる。
【0081】
これまでに述べたように、貯蔵開始時の発熱量が高い期間には隣接する収納管4や仕切り板11に輻射で熱を伝え、空気へと放熱させることにより高い冷却性能を得る方法は、図4に示すように、隣接する収納管4との間に輻射を遮る構造物がほとんど無い場合か、図7に示すように、隣接する収納管4との間に仕切り板11があり、仕切り板の両面より空気への放熱が可能な構造とすることで大きな効果が得られる。
【0082】
これに対し、図8および図9に示す、収納管4の周囲に通風管15を設置した従来の放射性物質貯蔵施設では、収納管4からの輻射は収納管周囲にある通風管15で遮られてしまう。このため、収納管4が空の場合であっても、発熱量の高いガラス固化体3が収納されていても、隣接する収納管4の冷却性能に影響を及ぼさず、周囲に空の収納管4を配置したとしても冷却性能が向上することは無い。
【0083】
また、本発明は、放射性物質の貯蔵順は規定するが、貯蔵中に放射性物質を移し変える手間を必要とせず、貯蔵中に特別な設備を加えることもなく、貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ発熱量が高い放射性物質に対して効率よく冷却することができる。
【0084】
これまで例に示した貯蔵方法および貯蔵施設は、ガラス固化体ではなく、使用済燃料集合体を貯蔵する場合においても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、原子力発電所で発生する使用済燃料集合体の使用済燃料再処理施設で発生する高レベル放射性廃棄物のガラス固化体等の、発熱を伴う放射性物質を貯蔵するのに好適な放射性物質貯蔵施設に利用分野がある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性物質の貯蔵方法を示す概念図である。
【図2】本発明の好適な一実施例である放射性物質の垂直断面図である。
【図3】図2の水平断面図である。
【図4】図2の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図5】放射性物質の貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図6】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図7】図6での貯蔵ピット内の拡大図である。
【図8】従来の放射性物質貯蔵施設の断面図にして、上図が立て断面を、下図が平断面を表す。
【図9】図8の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図10】放射性物質の発熱量の減衰を示す例である。
【図11】図6での伝熱形態を示す図である。
【図12】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図13】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図14】図6の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図15】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図16】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0087】
1 放射性物質貯蔵施設
2 貯蔵ピット
3 ガラス固化体
4 収納管
5 天井スラブ
6 搬送エリア
7 搬送台車
8 吸気通路
9 排気通路
10 収納管プラグ
11 仕切り板
12 床スラブ
13 下部プレナム部
14 上部プレナム部
15 通風管
16 垂直支持柱
17 水平支持柱
21 冷却流路
30 貯蔵建屋
31 貯蔵ピット側壁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱を伴う放射性物質の貯蔵方法と、その放射性物質貯蔵施設に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で使用された後の使用済燃料集合体は、原子力発電所の燃料貯蔵プール内に所定期間貯蔵保管され、その後に、ウラン及びプルトニウム等の再使用可能な核燃料物質を使用済燃料集合体から回収するために再処理施設で再処理される。
【0003】
この再処理で生じた高レベル放射性廃棄物はガラス固化体に製造されて、最終的には地下に設けられた処分場にて埋設処分される。しかし、そのガラス固化体は、製造直後は発熱量が高いため、数十年間専用の放射性物質貯蔵施設にて冷却しながら貯蔵し、埋設処分可能な発熱量にまで低下した後に埋設処分される。
【0004】
ガラス固化体の貯蔵施設の一例が特許文献1に記載されている。この例のガラス固化体貯蔵施設は、ガラス固化体を収納する複数の収納管を貯蔵ピット内に設置している。通風管が収納管の周囲を同心状に取り囲んでおり、収納管と通風管の間に貯蔵施設外から取り入れた空気を流している。
【0005】
ガラス固化体はこの空気によって冷却される。ガラス固化体を冷却した空気は、暖められて貯蔵施設内に形成される排気通路を通って外部へ排出される。この冷却用の空気は、暖められた空気が上昇する力を利用して、自然循環により貯蔵施設内を流れる。
【0006】
特許文献2も、放射性物質を収納する複数の収納管が貯蔵ピット内に設置された放射性物質貯蔵施設を記載し、その貯蔵施設への放射性物質の貯蔵方法を示している。この例の放射性物質貯蔵方法は、収納管の配置間隔が異なる貯蔵ピットを同じ貯蔵建屋内に備え、発熱量の高い貯蔵開始時点では放射性物質を収納管の配置間隔が大きい貯蔵ピットに収納し、一定期間経過して発熱量が所定の値以下に減衰したら収納管の配置間隔が小さい貯蔵ピットにある収納管に放射性物質を移し変えて貯蔵する。
【0007】
特許文献3は、ガラス固化体を貯蔵施設へと収納する際の方法が記載されており、複数の貯蔵ピットを備えたガラス固化体貯蔵施設に対し、ガラス固化体を1つの貯蔵ピットが満杯になるまで収納してから次の貯蔵ピットに収納するのではなく、複数の貯蔵ピットに分散して収納していくことにより、冷却空気の出口温度を低くする方法が記載されている。また、貯蔵施設の例として、特許文献1,2と同様に、ガラス固化体を収納する複数の収納管を貯蔵ピット内に設置し、通風管が収納管の周囲を同心状に取り囲んでおり、収納管と通風管の間に貯蔵施設外から取り入れた空気を流す貯蔵施設の例が示されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−305291号公報
【特許文献2】特開平9−43384号公報
【特許文献3】特開2001−33588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自然循環で放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット内に冷却用の空気を流す場合、その空気の循環流量は貯蔵されるガラス固化体に含まれる放射性物質の発熱量に従って決まるため、空気流量を更に増加させてガラス固化体の冷却性能を向上させることは難しい。
【0010】
そこで、例えば、特許文献1に記載の貯蔵施設では、空気流量を増加せずに冷却性能を向上させるため、通風管を設けて収納管表面の空気流路を絞り込んで流速が増すような構造としている。
【0011】
冷却用の空気を収納管と通風管の間に形成される狭い環状流路に流すことによって、空気流速を増しているため、収納管表面の熱伝達率が大きくなる。このため、この貯蔵施設は、発熱量の大きな放射性物質も貯蔵可能になる。しかしながら、各収納管毎に通風管を設ける必要があり、構造が複雑になるとともに必要な部材量や設備費が増大することとなる。
【0012】
構造簡素化のため通風管を排除した場合、貯蔵ピット内の収納管相互間の広い空間が空気流路となるため、収納管表面での空気流速は遅く、収納管表面の熱伝達率は小さくなる。そのため、除熱量が限られ、通風管を設けた場合に比べ発熱量の大きな放射性物質は貯蔵することができない。
【0013】
一方、放射性物質の発熱量は貯蔵中に減衰していくため、貯蔵開始時点での発熱量に対する冷却性能をもつ設備は、一定期間貯蔵した放射性物質に対しては、過剰な冷却性能をもつ設備となる。そこで、特許文献2のように、発熱量の減衰に応じて冷却性能の異なる設備に放射性物質を貯蔵しようとした場合、設備は合理化が可能であるが、放射性物質を貯蔵中に移し変える作業が新たに必要となる。
【0014】
特許文献3のように、複数の貯蔵ピットに分散させて貯蔵した場合、1つの貯蔵ピットに集中して貯蔵した場合に比べて貯蔵ピット全体の総発熱量は小さくなるため、冷却空気出口温度を低減させることは可能である。しかし、特許文献3に記載されている貯蔵施設構造の例は、特許文献1と同じく収納管の周囲に通風管を設けた構造であり、新規に貯蔵する放射性物質に対して必要な冷却性能は変わらないので、全ての収納管に対して貯蔵開始時点での発熱量に対する冷却性能をもつように、通風管を備えておく必要がある。
【0015】
また、特許文献3は、貯蔵ピット内での放射性物質の収納順は示されていない。そこで、例えば通風管のない貯蔵施設に特許文献3を適用し、貯蔵ピット内の放射性物質の収納順として冷却空気の出口側又は入口側の収納管より順に収納した場合、ほぼ同時期に放射性物質を収納した収納管に周囲を囲まれた収納管が発生する恐れがある。その場合、着目する収納管とその周囲の収納管との温度差がほとんど無く、周囲の収納管への輻射放熱が期待できない状況となる可能性が十分考えられる。
【0016】
従って、本発明の目的は、放射性物質貯蔵施設の貯蔵ピット内の構造を簡素化しつつ、発熱量が高い貯蔵開始直後の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる放射性物質貯蔵方法および貯蔵施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の方法による解決手段は、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納していき、次に、前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0018】
更には、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の低い前記収納管へ前記放射性物質を収納していき、冷却性能の低い前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の高い前記収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0019】
また、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管として、フィンが設けられた複数の収納管と前記フィンの無い収納管とが採用され、前記フィンの無い収納管へ前記放射性物質を収納していき、前記フィンの無い収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記フィンが設けられた収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0020】
また、冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、前記複数の収納管の内、輻射による熱の授受が可能な前記収納管が相対的に多く隣接している第1の前記収納管と相対的に少なく隣接している第2の前記収納管の内、前記第1の前記収納管に前記放射性物質を収納していき、前記第1の前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、次に、前記第2の前記収納管へ前記放射性物質を収納する過程を有することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法である。
【0021】
本発明の施設による解決手段は、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質貯蔵ピットの側壁に直接的に面しているか、あるいは、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【0022】
更には、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であり、前記放射性物質が収納された前記収納管と前記空の前記収納管との間で輻射伝熱が可能とされていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【0023】
また、貯蔵ピットと、前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、を有する放射性物質貯蔵施設において、前記収納管の内、最初に前記放射性物質が収納される第1の前記収納管と、前記第1の前記収納管に隣接する他の前記収納管の少なくとも1つの間に、前記第1の前記収納管と前記他の前記収納管との相互間の熱的輻射を遮断する配置で、且つ前記第1と他の前記収納管に面する両面が前記冷却空気に接するように前記貯蔵ピット内に仕切り部材が配置されていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ発熱量が高い貯蔵開始直後の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の目的を達成するための一実施例における特徴は、初めに放射性物質を、隣接する収納管のうち少なくとも1つが空の状態となるような順に収納管に収納し、最後に、空の状態にある収納管に収納する貯蔵方法にある。
【0026】
このような特徴を備えて、放射性物質を収納する収納管に隣接して空の収納管が在ると、放射性物質から発生した熱は、放射性物質を収納した収納管の表面より冷却空気へと伝わる他に、放射性物質を収納した収納管から隣接する空の収納管へと輻射で伝わった後、空の収納管表面より冷却空気へと伝わることができる。このため、実質的に冷却空気への放熱面積が増大することになり、冷却空気の流速を増加させなくとも、発熱量の高い貯蔵開始時点の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【0027】
また、最後に放射性物質を収納する収納管は、既に隣接する収納管すべてに放射性物質が収納された状態となるが、その場合、隣接する収納管に収納されている放射性物質は最初の方に貯蔵したものであるため、貯蔵開始時点より発熱量の減衰が進んでいるため、その収納管の温度は相当に低下したものとなる。このため、新しく放射性物質を収納した収納管から隣接する温度の低い収納管へと輻射によって熱が伝わるため、実質的に放熱面積が増大する効果が得られ、発熱量の高い貯蔵開始時点の放射性物質に必要な冷却性能を持つことができる。
【0028】
貯蔵ピットに放射性物質を収納していく時、初期は貯蔵ピット内に貯蔵されている放射性物質が少なく、周囲に空の収納管が多いため、周囲の収納管への輻射放熱量を多くすることができるが、満杯に近づくと周囲には既に放射性物質を収納した収納管が多く在り、周囲への輻射放熱量が減衰する。そこで、放射性物質を収納する順番が後となる収納管の除熱性能を、初めのほうに収納する収納管に比べて、あらかじめ高めておくことで、冷却用の設備量を低減させることができる。
【0029】
また、収納管や、隣接する収納管の間に設置する仕切り部材の表面を、塗装や溶射等で輻射率が増加するように表面処理すれば、収納管からの輻射による放熱量をさらに高めることができ、放射性物質の冷却性能を向上することができる。
【0030】
以下に本発明の実施例を一層具体的に説明する。即ち、本発明の好適な一実施例である放射性物質貯蔵施設を以下に説明するとおりである。なお、本例では使用済核燃料の再処理で発生した高レベル放射性廃棄物をガラス固化したガラス固化体を貯蔵することを想定した場合の例を示す。
【0031】
本実施例の放射性物質貯蔵施設1は、貯蔵建屋30を有し、この貯蔵建屋30内に、天井スラブ5によって仕切られた貯蔵ピット2及び搬送エリア6を設けている。上端部が天井スラブ5に取り付けられた複数の収納管4は、貯蔵ピット2内に配置される。
【0032】
ガラス固化体3(放射性物質)が内部に収納されるこれらの収納管4の下面と床スラブ12の間には下部プレナム部13が形成され、収納管4は垂直方向に熱膨張による伸びを吸収する構造となっている。
【0033】
各収納管4の上端部は、プラグ10によって密封される。ガラス固化体3を任意の収納管4に収納,搬出するための移動可能な搬送台車7が、搬送エリア6内に設けられている。
【0034】
本放射性物質貯蔵施設1は、貯蔵ピット2を6つ有する施設であり、各貯蔵ピット2内には、収納管4が縦横ともに3列以上で、具体的には縦7列,横20列にて140本備えられている。さらに1本の収納管にはガラス固化体3を9段収納することができる。なお、図2ないし図3は収納管4の列数を簡略化して図示している。
【0035】
収納管4は、強度と耐熱性から鉄鋼やステンレス鋼等の金属管で構成される。鉄鋼の場合、外表面を塗装やメッキ,溶射等の防食処理が施されている。
【0036】
収納管4内に収納されているガラス固化体3を冷却するための冷却空気を外部より取り入れる吸気通路8、及びガラス固化体3を冷却し温度が上昇した冷却空気を外部へ放出する排気通路9が、貯蔵建屋30内に設けられている。吸気通路8は下部プレナム部13に連絡され、排気通路9は上部プレナム部14に連絡されている。
【0037】
搬送台車7によって他の建屋から貯蔵建屋30に運ばれてきたガラス固化体3は、そのまま搬送台車7によって所定の収納管4の上方に運ばれ、プラグ10が外された収納管4内に収納され貯蔵される。ガラス固化体3を収納した後、搬送台車7によってプラグ10が収納管4の上端部に取り付けられ、収納管4が密封される。
【0038】
冷却空気は、貯蔵建屋30の外部から吸気通路8内に取り込まれ、下部プレナム部13に導かれる。冷却空気は、貯蔵ピット2内の収納管4周囲を上昇しながら収納管4内のガラス固化体3から放出される熱を除去する。ここで、暖められた冷却空気は、上部プレナム部14を通り、排気通路9を経て貯蔵建屋30の外部に放出される。この冷却空気は、暖められた空気が上昇する力を利用して、自然循環により貯蔵建屋30内を流れる。
【0039】
ガラス固化体3は、まず貯蔵ピット2内の収納管4のうち、図1に示すように、縦に7列あるうちの、1列おきの収納管4に収納する。1列おきにガラス固化体3を収納していくため、必ずガラス固化体3を収納した収納管4の両隣の列は、貯蔵ピット2の壁面か、空の収納管4となる。
【0040】
このため、図4に示すように、ガラス固化体3を収納した収納管4の表面から冷却空気へ熱伝達により放熱される他に、隣の列の空の収納管4に輻射で熱が伝わり、空の収納管4の表面から冷却空気へ熱伝達により放熱される。このため、放熱面積が増加する効果が得られ、ガラス固化体3に対する冷却性能が増加する。
【0041】
本発明を適用せず、貯蔵ピット2の端にある収納管4より隣接の収納管4へと順番にガラス固化体3を収納した場合、貯蔵して間もないガラス固化体3が収納された収納管4に周囲を囲まれた収納管4が発生する。その場合、周囲のガラス固化体3との発熱量の差がなくなるため、隣接収納管への輻射がほとんどなく、収納管4の表面から冷却空気への熱伝達のみとなり、冷却性能は小さくなる。
【0042】
本実施例では、収納管4の周囲の流速を増加させる通風管を設置していないため、収納管4の表面から冷却空気への熱伝達率は小さく、貯蔵開始直後の高い発熱量では冷却性能が不足する。しかしながら、収納管4表面からの熱伝達に加えて、隣接する空の収納管4を通じて放熱すれば、通風管を用いて流速を増加させなくとも必要な冷却性能が得られ、通風管の削減による構造の簡素化を図ることができる。
【0043】
放射性物質貯蔵施設1内の全ての貯蔵ピット2に対して、1列おきにガラス固化体3を収納し終えたら、次に、図1の2順目に示す、空の収納管の中央列を除く2列に収納していく。このとき、貯蔵施設1全体の貯蔵容量に対して、4/7の量のガラス固化体が貯蔵されたことになる。仮に、この貯蔵施設1を満杯にするまでの期間を7年とすると、最初のガラス固化体が貯蔵されてから既に4年が経過したことになる。
【0044】
2順目の収納する時には、両側の列の収納管4には、既に1順目でガラス固化体3を収納しているため、空の収納管4に比べて温度が上昇している。しかしながら、1順目で収納したガラス固化体3は4年が経過しているため、発熱量は減衰して貯蔵開始時点よりも小さくなっている。
【0045】
図10にガラス固化体3の貯蔵開始時からの発熱量の減衰の例を示す。図10の減衰の例では、貯蔵してから4年経過した場合、発熱量はほぼ半分にまで減衰している。このため、2順目にガラス固化体3を収納していく時には、1順目に収納した両側の収納管内のガラス固化体3の発熱量もほぼ半分になる。
【0046】
収納管4の温度は、収納しているガラス固化体3の発熱量が大きいほど高くなるため、2順目で新たにガラス固化体3を収納した収納管4よりも、1順目でガラス固化体3を収納した収納管4の方が温度が低い。このため、空の収納管よりは小さいが、2順目に収納した収納管から1順目に収納した収納管への輻射による放熱面積増加のため、新しく収納したガラス固化体3に対する冷却性能が、周囲の収納管への輻射の無い場合に比べて向上する。
【0047】
一方、1順目にガラス固化体3を収納した収納管は、逆に2順目に収納した収納管からの輻射を受けるため、冷却性能が低下することになる。しかしながら、既に発熱量が減少し、ガラス固化体3の制限温度に対して余裕があるため、新しくガラス固化体3を収納した収納管4から輻射を受けて温度が上昇したとしても、制限温度を超えることは無く、問題ない。
【0048】
さらに、2順目の収納管4が満杯になったら、中央列の残りの収納管4に収納していく。このとき、両隣の列の収納管4に収納されたガラス固化体は6年が経過しており、さらに発熱量が減少していることになる。
【0049】
ガラス固化体3の収納順は、放射性物質の発熱量の減衰量や収納管の配列等によって、図1に示す順以外に様々な収納順が考えられる。図5には、他の収納順の例として、1順目は前後左右1つ置きの収納管4に収納し、2順目で残りの収納管4に収納する例を示している。この例では、隣接する4本の収納管への輻射放熱が期待できる。
【0050】
隣接する空や低発熱の収納管4への輻射量は、お互いの収納管外表面の輻射率によって変化する。隣接する収納管への輻射量を増やして冷却性能を上げるには、収納管外表面の輻射率が大きいほうが良い。そこで、例えば収納管表面に塗装やメッキ,溶射等を用いて、輻射率を増加させれば、隣接する収納管4への輻射量が増加して、より冷却性能を向上させることができる。
【0051】
図16は、貯蔵ピット2内に千鳥状に配置した収納管4に本発明を適用した例を示す。収納管4は、貯蔵ピット2内の短辺方向に7本および6本並んだ列がそれぞれ交互に配置されている。まず1順目では、1列に7本ある収納管4Mにガラス固化体3を収納する。ガラス固化体3を収納する収納管4Mの列の間には空の状態の収納管4Nがあるため、収納管4Mより直接空気へと伝わる伝熱経路のほかに、収納管4Mより収納管4Nに放射で熱が伝えられ収納管4Nより空気へと熱が伝わる伝熱経路が加わるため、端の収納管4より順に貯蔵する場合に比べて放熱面積が増えることになり、冷却性能が向上する。
【0052】
貯蔵施設1にある全ての貯蔵ピット2にある収納管4Mにガラス固化体を収納し終えた時点で、この貯蔵施設1を満杯にする期間に対して、およそ0.56倍 の期間が経過していることになる。仮に、この貯蔵施設1を満杯にする期間を10年とすると、5,6年が経過したことになる。
【0053】
続いて2順目で、空いている収納管4Nにガラス固化体を収納していく。今度は、両隣の列の収納管4Mは既に1順目にガラス固化体3を収納し終えているので、中のガラス固化体3からの発熱によって収納管4Mの温度が上昇している。しかし、貯蔵開始直後の収納管4Nのガラス固化体3に比べて、収納管4Mのガラス固化体は少なくとも5,6年経過しているため、仮に図10のように発熱量が減衰するとすれば、収納管4Mの発熱量は収納管4Nのほぼ半分となる。したがって、収納管4Nより収納管4Mへと放射伝熱が起こり、冷却性能が向上する。
【0054】
また、図1や図5に示す方法だけでは冷却性能が足りない場合には、冷却性能をあげるため、図14に示すように、隣接する収納管4の間に仕切り板11を設け、収納管4より仕切り板11へ輻射で熱を伝え、仕切り板11より冷却空気へと放熱させることで冷却性能を向上させることができる。
【0055】
仕切り板11は、収納管4の間を仕切るように設置された板状の構造物で、図14に示すように、両端を貯蔵ピット2の床スラブ12と天井スラブ5に接続された垂直支持柱16や、両端を貯蔵ピット2の両側の壁に接続された水平支持柱17に溶接あるいはボルト止めにより取り付けられる。仕切り板11は十分な強度と耐熱性が必要なことから鉄鋼、あるいはステンレス鋼,アルミ合金等の金属で構成される。また、腐食に対する長期間の耐久性も必要なことから、鉄鋼には塗装や溶射,メッキ,アルミ合金には陽極酸化による表面の防食処理を施している。
【0056】
仕切り板11の役割は、前述のように収納管4の輻射熱を受けて冷却空気へと放熱することであり、冷却空気の流路を完全に分割することではない。このため、放射性物質の冷却に必要な輻射熱を受けることができれば、多少の隙間が空いていても良い。また、形状も、平らな板でなく、湾曲していたり、突起物があっても問題ない。
【0057】
仕切り板11を用いた場合にも、本発明のように、収納管4への収納順を考慮することでさらに冷却性能を向上させることができる。図6にその例を示す。図6の例では、仕切り板11を、3列おきの収納管4に対して2枚設置する。そうすると、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bと、両側で仕切り板11に面した収納管4Cとに大きく分けられる。
【0058】
等発熱量のガラス固化体が全ての収納管に収納されたと仮定した場合、両側で仕切り板11に面している収納管4Cは、片側のみで仕切り板11に面する4Bよりも、仕切り板11を介して放熱する経路が増えるため、冷却性能が高いと言える。
【0059】
そこで、周囲への輻射放熱が多大に期待できる1順目および2順目は、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bに収納し、最後に、貯蔵量が増えて周囲への輻射放熱が小さくなる3順目には、冷却性能の高い両側に仕切り板11に面した収納管4Cに収納することで、効率よく放射性物質の制限温度以下を維持しながら、最低限の部材量で貯蔵可能となる。
【0060】
図11を用いてもう少し詳細に説明する。1順目および2順目は、片側のみ仕切り板11に面した収納管4Bにガラス固化体3Xを収納する。このときガラス固化体3Xからの熱は、収納管4Bの表面より空気へと熱伝達で伝えられる経路と、輻射によって仕切り板11へと伝わり、仕切り板11より空気へと熱伝達で伝えられる経路によって放熱される。
【0061】
仕切り板11は収納管4Bの片側のみであるが、仕切り板11を挟んで隣の収納管4Cにはまだガラス固化体が収納されていないので、仕切り板11は両側から空気に放熱することができる。
【0062】
3順目は、両側に仕切り板11がある収納管4Cにガラス固化体3Yを収納する。このときもガラス固化体3Yからの熱は、収納管4Cの表面より空気へと熱伝達で伝えられる経路と、輻射によって仕切り板11へと伝わり、仕切り板11より空気へと熱伝達で伝えられる経路によって放熱される。
【0063】
ここで1,2順目と異なるのは、仕切り板11を挟んで隣の収納管4Bは空ではなく、既に1,2順目でガラス固化体3Xを収納しているため、仕切り板11から空気への放熱量が1,2順目に比べて少なくなることである。その分、収納管4Cは両側に仕切り板11が設置されているので、ガラス固化体3Yを十分に冷却することができる。
【0064】
収納管4の場合と同様に、仕切り板11表面の輻射率が大きいほど、収納管4から仕切り板11への輻射量も大きくなる。このため、仕切り板11表面の輻射率が大きくなるように仕切り板11表面を加工することで、収納管4の冷却性能をより向上させることができる。例えば、仕切り板表面に対して塗装やメッキ,溶射,陽極酸化等を用いることで、輻射率を増加させればよい。
【0065】
仕切り板11を設置することで、貯蔵ピット2内の構造部材が増加することになる。しかし、各収納管4毎に通風管15を設置する構造に比べて、通風管15と仕切り板11の厚さが同じ場合、部材の量は約35%程度となり、構造簡素化を図ることができる。
【0066】
さらに、通風管のように、板を曲げて管形状を作る必要がなく、板状の部材をそのまま設置するのみで良いので、部材を加工する手間を削減することもできる。
【0067】
図15には、仕切り板11を用いた他の貯蔵例を示す。図15の例では、仕切り板11を、1列おきの収納管4に対して1枚設置する。そうすると、各列の収納管4は両側が仕切り板11に面する。
【0068】
1順目は、仕切り板11で区分された各収納管4の列のうち、貯蔵ピット側壁面31に面した収納管4Hと、各列の中央の収納管4Jに収納する。図15の例では、仕切り板11を挟んで同じ発熱量の収納管4Hないし収納管4Jが並ぶため、仕切り板11は両側の収納管より同量の放射熱を受ける。このため、仕切り板11の反対側の面からの放熱は期待できないが、仕切り板11に平行な側には貯蔵ピットの側壁面31か空の収納管4Kが位置するため、そちらへの放射による放熱は期待できる。
【0069】
2順目は、仕切り板11で区分された各収納管4の列のうち、各列の中央の収納管4Jの両隣の収納管4Lに収納する。収納管4Lは、1順目で既に貯蔵済みの収納管4Jと、空の収納管4Kに隣接する。空の収納管4Kへはもちろんのこと、1順目に収納した収納管4Jも、既に貯蔵施設1が満杯になるまでの期間の3/7の期間が経過し、収納管4Lよりも発熱量が低くなっているため、収納管4Lより収納管4Kおよび収納管4Jへの放射による放熱が期待できる。
【0070】
最後の3順目には、空の状態で残っている収納管4Kに収納する。収納管4Kの両隣は1順目で既に貯蔵済みの収納管4Hと、2順目で既に収納済みの収納管4Lに隣接する。収納管4Hおよび収納管4Lともに収納管4Hよりも貯蔵期間が長いために発熱量は小さく、したがって収納管4Kより収納管4Hおよび収納管4Lへの放射による放熱が期待できる。
【0071】
仕切り板11の代わりに、収納管4にフィンを設ける場合、例えば、図12に示すように、フィンのついた収納管4Dと、フィンの無い収納管4Eを交互に1列ずつ配置する。
【0072】
まず、図12に示すように、冷却性能の低い、フィンのついていない収納管4Eにガラス固化体3を収納する。1列おきにフィンがついた空の収納管4Dが配置されるので、ガラス固化体の収納した収納管4Eから空の収納管4Dへと輻射で熱が伝わり、空の収納管4Dから空気へと放熱される。このため、フィンがなくとも十分な冷却性能を持つことができる。
【0073】
2順目は、既に1順目でガラス固化体が収納された収納管4Eの間に収納していくため、1順目に比べて隣接する収納管への輻射が期待できないが、2順目に収納する収納管4Dにはフィンがついているため、フィンの無い収納管4Eと比べて冷却性能は高く、十分な冷却性能を持つことができる。このように貯蔵することで、フィンのついた収納管4Dの本数を削減することができる。
【0074】
もし、ガラス固化体3の収納順を規定せず、貯蔵ピット2の端の収納管4より順に収納していくなどした場合、隣接の収納管への輻射を確実に期待できないので、全ての収納管4にフィンをつける必要がある。
【0075】
これに対し、本発明を適用することで、フィンのついた収納管4Dの本数を削減することができ、構造簡素化を図ることができる。
【0076】
また、図13に示すように、隣接する収納管の本数の多い収納管より順にガラス固化体を収納する方法もある。図13はこれまでの例と異なり、収納管が貯蔵ピット内に4列×11列配置された場合の例である。
【0077】
図13の1順目に黒で示した収納管4Fは、周囲を他の収納管に囲まれている。そこで、まず周囲を他の収納管で囲まれた収納管4Fより先にガラス固化体を収納すると、片側が貯蔵ピットの壁に面した収納管4Gは空のままなので、輻射によって空の収納管4Gへと熱が伝わり、空の収納管4Gより空気へと放熱される。
【0078】
もし、貯蔵ピットの端の収納管より順に収納していった場合、貯蔵ピットの中ほどにある収納管4Fは、ガラス固化体を既に収納した収納管に周囲を囲まれることになり、他の収納管への輻射が期待できなくなり、その分、冷却性能が小さくなる。
【0079】
周囲を他の収納管で囲まれた収納管4Fに全て収納し終えたら、2順目に片面を貯蔵ピット2の壁面に面した収納管4Gに収納する。片面が壁面に面しているため、壁面への輻射による放熱が期待できることになる。
【0080】
このように、隣接する収納管の本数が多い収納管より先に収納していく方法を用いても、効率よく冷却することが可能となる。
【0081】
これまでに述べたように、貯蔵開始時の発熱量が高い期間には隣接する収納管4や仕切り板11に輻射で熱を伝え、空気へと放熱させることにより高い冷却性能を得る方法は、図4に示すように、隣接する収納管4との間に輻射を遮る構造物がほとんど無い場合か、図7に示すように、隣接する収納管4との間に仕切り板11があり、仕切り板の両面より空気への放熱が可能な構造とすることで大きな効果が得られる。
【0082】
これに対し、図8および図9に示す、収納管4の周囲に通風管15を設置した従来の放射性物質貯蔵施設では、収納管4からの輻射は収納管周囲にある通風管15で遮られてしまう。このため、収納管4が空の場合であっても、発熱量の高いガラス固化体3が収納されていても、隣接する収納管4の冷却性能に影響を及ぼさず、周囲に空の収納管4を配置したとしても冷却性能が向上することは無い。
【0083】
また、本発明は、放射性物質の貯蔵順は規定するが、貯蔵中に放射性物質を移し変える手間を必要とせず、貯蔵中に特別な設備を加えることもなく、貯蔵ピット内の構造を簡素化し、かつ発熱量が高い放射性物質に対して効率よく冷却することができる。
【0084】
これまで例に示した貯蔵方法および貯蔵施設は、ガラス固化体ではなく、使用済燃料集合体を貯蔵する場合においても同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、原子力発電所で発生する使用済燃料集合体の使用済燃料再処理施設で発生する高レベル放射性廃棄物のガラス固化体等の、発熱を伴う放射性物質を貯蔵するのに好適な放射性物質貯蔵施設に利用分野がある。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の好適な一実施例である放射性物質の貯蔵方法を示す概念図である。
【図2】本発明の好適な一実施例である放射性物質の垂直断面図である。
【図3】図2の水平断面図である。
【図4】図2の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図5】放射性物質の貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図6】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図7】図6での貯蔵ピット内の拡大図である。
【図8】従来の放射性物質貯蔵施設の断面図にして、上図が立て断面を、下図が平断面を表す。
【図9】図8の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図10】放射性物質の発熱量の減衰を示す例である。
【図11】図6での伝熱形態を示す図である。
【図12】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図13】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図14】図6の貯蔵ピット内の拡大図である。
【図15】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【図16】貯蔵建屋の他の構成例での貯蔵方法の他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0087】
1 放射性物質貯蔵施設
2 貯蔵ピット
3 ガラス固化体
4 収納管
5 天井スラブ
6 搬送エリア
7 搬送台車
8 吸気通路
9 排気通路
10 収納管プラグ
11 仕切り板
12 床スラブ
13 下部プレナム部
14 上部プレナム部
15 通風管
16 垂直支持柱
17 水平支持柱
21 冷却流路
30 貯蔵建屋
31 貯蔵ピット側壁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、 前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項2】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の低い前記収納管へ前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
冷却性能の低い前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の高い前記収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項3】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管として、フィンが設けられた複数の収納管と前記フィンの無い収納管とが採用され、
前記フィンの無い収納管へ前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
前記フィンの無い収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記フィンが設けられた収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項4】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管の内、輻射による熱の授受が可能な前記収納管が相対的に多く隣接している第1の前記収納管と相対的に少なく隣接している第2の前記収納管の内、前記第1の前記収納管に前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
前記第1の前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記第2の前記収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項5】
前記貯蔵ピットを複数ピット用意し、全ての前記貯蔵ピットに対して前記第1の過程を実施し、その後に前記第2の過程を実施することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の放射性物質の貯蔵方法。
【請求項6】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質貯蔵ピットの側壁に直接的に面しているか、あるいは、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項7】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であり、
前記放射性物質が収納された前記収納管と前記空の前記収納管との間で輻射伝熱が可能とされていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項8】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記収納管の内、最初に前記放射性物質が収納される第1の前記収納管と、前記第1の前記収納管に隣接する他の前記収納管の少なくとも1つの間に、前記第1の前記収納管と前記他の前記収納管との相互間の熱的輻射を遮断する配置で、且つ前記第1と他の前記収納管に面する両面が前記冷却空気に接するように前記貯蔵ピット内に仕切り部材が配置されていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項9】
前記収納管の外表面には、耐食性および輻射率を増加させ塗装,溶射,メッキのいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項10】
前記仕切り部材が鉄鋼,ステンレス鋼,アルミニウム合金のいずれかを用いて構成され、表面には、耐食性および輻射率を増加させる塗装,溶射,メッキおよび陽極酸化のいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項11】
前記貯蔵ピットを複数ピット備えていることを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項12】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記放射性物質を収納した前記収納管の列と空のままの状態の前記収納管の列が交互に配置された状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項13】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記収納管が貯蔵ピット内に碁盤目状に配置され、
前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管全てが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項14】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
隣接する前記収納管の列と列の間に前記収納管相互間の放射を遮る仕切り部材が設けられた貯蔵ピットが採用され、
前記仕切り部材で区分された前記収納管列の中で、前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項15】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
隣接する前記収納管の列と列の間に前記収納管相互間の放射を遮る仕切り部材が設けられた貯蔵ピットが採用され、
前記仕切り部材で区別された前記収納管列のうち、前記放射性物質を収納した前記収納管列に前記仕切り部材を介して隣接している前記収納管列が空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項16】
前記貯蔵ピットを複数ピット用意し、全ての前記貯蔵ピットに対して前記第1の過程を実施し、その後に前記第2の過程を実施することを特徴とする請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載の放射性物質の貯蔵方法。
【請求項1】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、 前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項2】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の低い前記収納管へ前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
冷却性能の低い前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記複数の収納管の内、相対的に冷却性能の高い前記収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項3】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管として、フィンが設けられた複数の収納管と前記フィンの無い収納管とが採用され、
前記フィンの無い収納管へ前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
前記フィンの無い収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記フィンが設けられた収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項4】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記複数の収納管の内、輻射による熱の授受が可能な前記収納管が相対的に多く隣接している第1の前記収納管と相対的に少なく隣接している第2の前記収納管の内、前記第1の前記収納管に前記放射性物質を収納する第1の過程を実施し、
前記第1の前記収納管の全てに前記放射性物質を収納し終えたら、前記第2の前記収納管へ前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項5】
前記貯蔵ピットを複数ピット用意し、全ての前記貯蔵ピットに対して前記第1の過程を実施し、その後に前記第2の過程を実施することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の放射性物質の貯蔵方法。
【請求項6】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質貯蔵ピットの側壁に直接的に面しているか、あるいは、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項7】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記複数の収納管の内、前記放射性物質が収納された前記収納管は、前記放射性物質が収納された前記収納管に隣接する前記収納管のうち少なくとも1つの前記収納管が前記放射性物質を収納していない空の状態であり、
前記放射性物質が収納された前記収納管と前記空の前記収納管との間で輻射伝熱が可能とされていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項8】
貯蔵ピットと、
前記貯蔵ピット内に冷却空気を導く吸気通路と、
前記貯蔵ピットから前記冷却空気を前記貯蔵ピットの外部に導く排気通路と、
前記貯蔵ピット内に列数が縦横ともに3列以上の碁盤目状に配置され、内部に放射性物質が収納される複数の収納管と、
を有する放射性物質貯蔵施設において、
前記収納管の内、最初に前記放射性物質が収納される第1の前記収納管と、前記第1の前記収納管に隣接する他の前記収納管の少なくとも1つの間に、前記第1の前記収納管と前記他の前記収納管との相互間の熱的輻射を遮断する配置で、且つ前記第1と他の前記収納管に面する両面が前記冷却空気に接するように前記貯蔵ピット内に仕切り部材が配置されていることを特徴とする放射性物質貯蔵施設。
【請求項9】
前記収納管の外表面には、耐食性および輻射率を増加させ塗装,溶射,メッキのいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項10】
前記仕切り部材が鉄鋼,ステンレス鋼,アルミニウム合金のいずれかを用いて構成され、表面には、耐食性および輻射率を増加させる塗装,溶射,メッキおよび陽極酸化のいずれかの表面処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項11】
前記貯蔵ピットを複数ピット備えていることを特徴とする請求項6から請求項10までのいずれか一項に記載の放射性物質貯蔵施設。
【請求項12】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記放射性物質を収納した前記収納管の列と空のままの状態の前記収納管の列が交互に配置された状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項13】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
前記収納管が貯蔵ピット内に碁盤目状に配置され、
前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管全てが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項14】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
隣接する前記収納管の列と列の間に前記収納管相互間の放射を遮る仕切り部材が設けられた貯蔵ピットが採用され、
前記仕切り部材で区分された前記収納管列の中で、前記放射性物質を収納した前記収納管が前記貯蔵ピットの側壁に隣接しているか、前記放射性物質を収納した前記収納管に隣接している前記収納管のうち少なくとも1つが空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項15】
冷却空気が通される貯蔵ピットに設けられた複数の収納管内に放射性物質を収納して前記放射性物質を貯蔵する放射性物質の貯蔵方法において、
隣接する前記収納管の列と列の間に前記収納管相互間の放射を遮る仕切り部材が設けられた貯蔵ピットが採用され、
前記仕切り部材で区別された前記収納管列のうち、前記放射性物質を収納した前記収納管列に前記仕切り部材を介して隣接している前記収納管列が空のままの状態となるように、前記放射性物質を前記収納管に収納する第1の過程を実施し、
前記状態が保てない状態にまで前記放射性物質の前記貯蔵ピット内への貯蔵が進んだ後には、前記貯蔵ピット内に空で残されている前記収納管に前記放射性物質を収納する第2の過程を実施することを特徴とする放射性物質の貯蔵方法。
【請求項16】
前記貯蔵ピットを複数ピット用意し、全ての前記貯蔵ピットに対して前記第1の過程を実施し、その後に前記第2の過程を実施することを特徴とする請求項12から請求項15までのいずれか一項に記載の放射性物質の貯蔵方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−2762(P2009−2762A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163284(P2007−163284)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
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