説明

放射性物質輸送・保管容器

【課題】放射性物質輸送・保管容器に係わる放射性物質の除染性向上と廃棄物量の低減化をはかる。
【解決手段】所定の放射線遮蔽性能のある容器側板4と容器底板3を有する容器1に、容器側板4との間に隙間を有して内装した上部開放の箱形状をした一体構造の金属ライニング7と、同じく容器側板4との間に隙間を有して外装した上部開放の箱形状をした一体構造の外張り手段9と、金属ライニング7と外張り手段9との各上部縁部と容器側板4との間に施したシール溶接13と、所定の放射線遮蔽性能を有して前記容器側板4の上部を塞ぐ蓋2とを備えた放射性物質輸送・保管容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、もしくは放射性物質で汚染した高線量物を輸送、又は一時保管する容器、即ち放射性物質輸送・保管容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、原子カ発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、若しくは放射性物質で汚染した廃棄物を輸送、又は一時保管する容器は、内包する放射性物質の放射線量、及び、輸送経路、又は一時保管位置の周辺環境の条件に応じて、放射線や放射性物質の遮蔽が必要となる。
【0003】
なお、内包する放射性物質が比較的高線量である場合は、遮蔽効果を有するために容器の厚さを肉厚にした遮蔽容器を使用することが多く、容器が大型、かつ、大重量化する傾向がある。
【0004】
一方、原子力発電所などの点検及び補修作業では、作業対象が放射化されている、又は、放射性物質が付着している場合が多いため、特に高線量物を取り扱う際には、放射線の遮蔽と放射性物質の飛散防止を目的として、水中で作業する場合が多い。
【0005】
その場合、水中には微細な放射性物質が浮遊しているため、水中で使用する放射性物質輸送・保管容器は、使用時間が経過するにつれて、表面及び狭隘部に水中浮遊の放射性物質が付着し、容器の放射線量が増加する。なお、当該容器は、水中で使用後に、気中に引き上げられ、所定の場所に移動もしくは保管のために使用される。
【0006】
また、当該容器に放射性物質による汚染した廃棄物を水中で収納する際、もしくは収納後に移動する際に、廃棄物収納用取扱装置や廃棄物本体が容器内部に接触する可能性もある。
【0007】
従来、水中や気中で使用する機器において、放射性物質の付着を抑制、もしくは使用後の洗浄(除染作業)を容易にするために、あらかじめ機器の表面をシート等で養生、もしくは貼り付けを行い、使用後にシートを剥がすことを実施している。また、あらかじめ機器本体へ剥離性の高い塗装を施し、機器の使用後に塗装自体を剥がすことにより除染している場合もある。
【0008】
しかしながら、シートによる養生や、塗装は物理的な付着強度が弱いため、物が接触することにより、シートが破れもしくは剥がれたり、塗装が剥難したりして、その部分から放射性物質が入り込み、より汚染の密度が集中して放射性物質の汚染度合いが高くなったり、線量当量率が増加する可能性も否定できない。
【0009】
なお、機器の表面を強固に保護するための方法として、従来の技術としてはライニング技術が存在する。但し、従来のライニング構造は、表面を保護する部分に他の材料を接着することにより貼り付けて保護膜を形成するものである。従って、物理的な強度は前述のシートや塗装に比較して十分大きいが、逆に取り外し性に難がある。また、原子力関連設備等のライニングの例として使用済燃料プールや、原子炉内の機器を移動するための機器プール等へのライニング技術があるが、施工方法は、複数のライニングプレートを溶接により保護対象の表面の広範囲に固定する方法であってライニングプレートを取り外すことを意図していないものである。当該方法についてもライニングプレートの溶接部が広範囲に多数あるため、ライニングプレートの取り外しには難がある。
【0010】
このように従来の技術を比較的大型で大重量物である、放射性物質輸送・保管容器に適用した場合、点検及び補修作業途中や、全作業終了後、容器を除去する際に、輸送・保管容器の除染作業、分解作業に非常に時間を要し、作業員の放射線被ばく線量増加の間題が生じる。
【0011】
また、容器に付着した放射性物質を完全に除去することは非常に難しいため、使用済の容器全体を汚染物として廃棄することになって、廃棄物量増大の間題が生じてくる。
【0012】
なお、従来の技術では、特許第3009359号公報のように、放射性物質の輸送及び保管する手順や、特開平2−264900号公報のように、容器を二重化することにより外側容器の汚染防止を目的とする容器などの公知例があるが、放射性物質と直接接触する容器の除染性向上、使用後の廃棄物量低減などについては、言及していない。
【0013】
一方、原子カ発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、若しくは放射性物質で汚染した高線量物の輸送・保管容器を効率よく除染可能にする一手法として、放射性物質と接触する可能性がある容器表面を円滑にして、ジェット水を吹き付けて洗浄を行う際に、放射性物質が除去されやすいようにする方法がある。なお、ここで言う表面円滑の程度は、放射性物質の付着防止においては表面磨き処理が施されていることにこしたことは無いが、通常のステンレス材の地肌程度、もしくは光沢が有る程度を言い、ステンレス材表面の仕上げをしたり、研磨したりすることは必要ない程度を表すものとする。
【0014】
ただし、高線量物の輸送・保管容器は、遮蔽を目的として、容器厚さを肉厚にする必要上、鋳造構造、又は厚板の溶接構造となることが多い。また、当該容器は遮蔽を目的としているため、製作コストとの兼ね合いから炭素鋼相当材が使用される。さらに炭素鋼材料の場合は、材料表面の錆びを防止するために材料表面上に塗装が施されるのが通例である。
【0015】
一般的に、鋳造構造では容器内外面に微細な凹凸が生じやすく、その凹凸に放射性物質が溜まりやすくなる。この場合、狭隆部の奥に放射性物質が溜まるため、ジェット水除染などの除染で除去するのは非常に困難である。溶接構造物でも、接合部を全て溶接しなかったり、継手部の溶接に不良があったりする場合や炭素鋼相当材への塗装部分が剥離して当該部分に錆びが発生した場合に、その箇所に放射性物質が溜まりやすくなり、同様の課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3009359号公報
【特許文献2】特開平2−264900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、放射性物質輸送・保管容器の除染性の向上と廃棄物量の低減とにある。
【0018】
これらの課題を解決するため、本発明の目的とするところは、放射性物質と接触する放射性物質輸送・保管容器の表面を金属ライニングで覆い、且つその金属ライニングを放射性物質輸送・保管容器から一体にて取り外すことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するための手段は、放射化もしくは放射性物質で汚染した物を内包して輸送又は一時保管する容器において、前記容器の表面を、前記容器から一体にて取り外しできるようにした金属ライニングで覆ってあることを特徴とする放射性物質輸送・保管容器である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、放射性物質輸送・保管容器への放射性物質の付着が金属ライニングとなるので、そのライニングを放射性物質輸送・保管容器から一括して取り除くことで、放射性物質輸送・保管容器の全体を廃棄物として処理せずに済み、放射性物質輸送・保管容器の除染性の向上と廃棄物量の低減とを成し遂げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施例による放射性物質輸送・保管容器の断面図である。
【図2】本発明の第2実施例による放射性物質輸送・保管容器の断面図である。
【図3】本発明の第3実施例による放射性物質輸送・保管容器の断面図である。
【図4】本発明の第4実施例による放射性物質輸送・保管容器の断面図である。
【図5】本発明の第5実施例による放射性物質輸送・保管容器の断面図である。
【図6】本発明を採用した放射性物質輸送・保管容器からの金属ライニングと外張り手段とを取り外す手順を説明するための概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例では、原子カ発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、若しくは放射性物質で汚染した高線量物を輸送、又は一時保管する放射性物質輸送・保管容器(以下、単に、容器ということもある。)において、内包する放射性物質の遮蔽を担当する厚板部の内側に容易に取り外しが可能な、表面が円滑な金属ライニングを有する。ここで言う表面が円滑である程度は、放射性物質の付着防止においては金属ライニング材に表面磨き処理が施されていることにこしたことは無いが、通常のステンレス材の地肌程度、もしくは光沢が有る程度を言い、ステンレス材表面の仕上げをしたり、研磨したりすることは必要ない程度を表すものである。
【0023】
なお、金属ライニングは、遮蔽を担当する厚板部の全てに板を貼り付けるものでは無く、金属板を箱状の上部開放形状の一体構造で構成し、容器の厚板部の一部にその箱状の金属ライニングを箱形状を保って取り付ける構造とする。また、箱状の金属ライニングは厚板部で構成される内寸より側面方向はやや小さな大きさとし、一体で上方向に引き抜ける構造を有する。なお、箱状の金属ライニング内に放射性物質を入れるため、金属ライニングを変形させないことが必要であり、容器の厚板部上面とライニング下面とは金属ライニングが接している構造となる。
【0024】
このような構造によれば、放射性物質が直接接触する容器内側に表面が円滑な金属ライニング(上方が開放の箱状)を有することで、放射性物質の付着が金属ライニングの面のみとなり、容器の除染性が向上する。また、容器本体(厚板部)は、直接放射性物質と接触することが無いため、容器の除去時には厚板部に取り付けられた金属ライニング部分を箱状の一体構造のまま一括して取り外し、汚染している金属ライニングのみ廃棄すれば良く、厚板の容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。また、取り外し部分も限定されるため、一体構造で取り外し作業が可能となり、作業者の被ばく量低減にも効果がある。
【0025】
次に放射性物質輸送・保管容器において、内包する放射性物質の遮蔽を担当する厚板部の外側に容易に取り外しが可能な表面が円滑な金属板による金属外張り手段を有する実施例について説明する。
【0026】
その金属外張り手段も金属ライニングと同様、遮蔽を担当する厚板部の全てに金属板を貼り付けるものでは無く、金属板を箱状の一体構造で構成し、厚板部の一部に外張り(上方が開放形状の箱)を取り付ける構造とする。また、箱状の金属外張り手段の側面は厚板部で構成される外寸よりやや大きな大きさとし、厚板部で構成された容器本体部分を一体で上方向に引き抜くことにより分離,取り外しが可能な構造とする。なお、厚板部の容器本体の荷重が直接溶接部に加わらないように、容器本体の下面と金属外張りの下内面は接触した構造となる。
【0027】
このような構造の容器は、密封線源等表面に汚染が無い放射性物質を容器内に保管している状態で、かつ高い線量を持っているため、保管場所が限定され、汚染しているようなエリアまたは汚染する可能性があるエリアに置く場合に有効である。当該容器は、汚染した放射性物質と直接接触する容器外側に表面が円滑な金属外張りを有することで、放射性物質の付着が金属外張りのみとなり、容器の除染性が向上する。また、容器本体(厚板部)は、直接汚染した放射性物質と接触することが無いため、容器の除去時には金属外張りを取り外し、汚染している金属外張りのみ廃棄すれば良く、容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。その外張り手段を成す金属板面は金属ライニングと同様に表面が円滑であることが好ましい。
【0028】
このような容器外側面を覆う表面が円滑な外張り手段と冒頭に説明した容器内側面を覆う表面が円滑な金属ライニングとを容器に同時に有することであっても良い。
【0029】
このような実施例によれば、放射性物質と直接接触する容器内面に表面が円滑な金属ライニング、容器外側に表面が円滑な金属外張り手段を有することで、放射性物質の付着が金属ライニング、及び金属外張り手段のみとなり、容器の除染性が向上する。また、容器本体(厚板部)は、直接放射性物質と接触することが無いため、容器の除去時には、金属ライニング、及び金属外張り手段を容器から取り外し、汚染している金属ライニング、及び金属外張り手段のみ廃棄すれば良く、容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0030】
放射性物質輸送・保管容器の遮蔽を担当する厚板部に金属ライニング(上方が開放形状の箱)、金属外張り(上方が開放形状の箱)の一部である縁部をシール溶接で固定することで放射性物質が容器の厚板部と金属ライニング又は外張り手段との間に侵入して蓄積することを防ぐとともに、容器への金属ライニング又は外張り手段の取り付け手段として兼用する。なお、シール溶接部は作業員が施工可能な容器の上部とすることで、より取り外し(溶接部のグラインダー等によるはつり作業実施)時の作業性の向上が図られる。
【0031】
このような場合には、容器の除去時に金属ライニング、金属外張り手段を取り外す際、シール溶接部のみグラインダー等によるはつり作業の実施で除去すれば、箱状の金属ライニングと外張り手段を個々に一体で取り外すことが可能となり、容器の除去作業時における作業員の被ばく線量が低減される。シール溶接除去後の容器と金属ライニング、金属外張り手段との分離、取り外し作業自体は既述と同様である。
【0032】
放射性物質輸送・保管容器の遮蔽機能を大幅に担う厚板部に、金属ライニング(上方が開放の箱形状である。)、金属外張り手段(上方が開放の箱形状である。)の上部縁部を、シール溶接に代えてボルトで締結することで相互を固定しても良い。
【0033】
この場合、容器の除去時に金属ライニングや金属外張り手段を容器から取り外す際、ボルトを緩め、一番内側の金属ライニングを引き上げ、その後に容器の厚板部を引き上げることで、金属外張り手段と分離して取り外すことが可能となり、容器の除去作業時における作業員の被ばく線量が低減される。
【0034】
以下では、本発明の実施例について図面を参照して一層詳細に説明する。
【0035】
図1に示す第1実施例は、次のとおりである。即ち、放射性物質輸送・保管容器1(以下、容器1ともいう。)には表面が汚染した放射性物質6が内包されている。その容器1は、箱状の側板4と、その側板4の底部は底板3によって閉鎖されている。
【0036】
側板4は蓋2が組み込まれる部分に比較して厚くされ、放射性物質からの放射線を遮蔽するに十分な厚板部とされている。
【0037】
容器1の厚板部の内側には、容器に対して取り外しが可能な表面が円滑で上方が開放の箱形状の金属ライニング7を有する。容器1の内部には、表面が汚染した放射性物質6が内包されるが、具体的には、金属ライニング7の箱内に放射性物質6が置かれる。
【0038】
放射性物質6が収められている容器1を輸送する時には、又は一時保管する時には、容器1に蓋2をボルトで取り付けて、容器1及び蓋2の厚板部による遮蔽効果により、周辺環境の雰囲気線量が抑えられる。
【0039】
図1では、容器1は底板3と側板4からなる溶接構造物である例を示す。金属ライニング7が無い場合、底板3と側板4との接合部を全て溶接しなかったり溶接継手部の溶接に不良があったりする場合、底板3と側板4との隙間5に微細な放射性物質が溜まり、除去できなくなる恐れがあるが、本実施例のように、金属ライニング7がある場合は、放射性物質が隙間5に浸入する可能性が低減される。
【0040】
また、底板3及び側板4の表面や隙間5に付着した汚染を除去するより、表面が円滑な金属ライニング7の表面に付着した汚染の方が、容易に除染可能となる。
【0041】
更に、容器除去時には、放射性物質と直接接触し、汚染した金属ライニング7を容器1内から上方に引き上げ、容器1から取り外すことで、底板3と側板4からなる容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0042】
金属ライニング7は、上部開放の箱形状であり、全体が一体構造にて製作されている。その金属ライニング7は底部が容器1の底板3に接して放射性物質6の重量を底板3へ伝え、金属ライニング7自体が単体でその重量を支える機能は行わず、ライニングとしての機能を行う。その金属ライニング7の大きさは、図1のように、側板4の厚板部との間で隙間が存在し密着しないように決定される。また、その金属ライニング7は、その上部縁部が外側に折り曲げられた断面形状を有している。このような大きさの決定により、箱形状の金属ライニングは、箱形状を保ったまま全体が一括して容器1内から引き抜くことが容易にできる。
【0043】
図2に示す第2実施例は、容器1に内包する放射性物質10の遮蔽を担う厚板部を有する側板4の外側面を覆うようにして表面が円滑な金属板を外張り手段9として有する。この外張り手段9も、上部開放の箱形状であり、全体が一体構造にて製作されている。
【0044】
その外張り手段9も、側板4の外表面との間に密着しないように隙間を有する大きさとされ、その底部内面が底板3の底部外面と接している。外張り手段9の上端縁部は内側に折られている断面形状を有している。
【0045】
周辺環境が水中、若しくは微細な放射性物質で汚染している場合、底板3と側板4の隙間5に外側から放射性物質が浸入する恐れがあるが、外張り手段9を有することで放射性物質がそこへ浸入する可能性が低減される。
【0046】
また、周辺環境により容器外面が汚染した場合、底板3及び側板4の表面や隙間5に付着した汚染を除去するより、表面が円滑な金属板からなる外張り手段9の表面に付着した汚染の方が、容易に除染可能となる。
【0047】
更に、容器除去時には、放射性物質と直接接触し、外張り手段9の内側から容器1を上方に引き上げることで、汚染した外張り手段9を容器1から取り外すことで、底板3と側板4からなる容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0048】
なお、図2の実施例の場合、内包する放射性物質10の表面は汚染しておらず、容器1の内側から放射性物質が隙間5等に浸入する恐れが無い条件とする。このような赦射性物質の例としては、密封されている放射線源がある。その他の内容については第1実施例と同様である。
【0049】
図3は、第3実施例を示している。即ち、容器1の内面を覆うように既述の第1実施例で説明した金属ライニング7を容器に内装し、容器1の外側面を覆うように既述の第2実施例で説明した外張り手段9を容器に外装する。
【0050】
容器1に内装された金属ライニング7の上部縁部分は縁の全周囲に渡ってシール溶接13が側板4との間で施工され、容器1と金属ライニング7との隙間が密封される。このシール溶接13により、金属ライニング7は容器1に固定される。その他に金属ライニング7が容器1に固定される部分は無い。
【0051】
容器1に外装された外張り手段9の上部縁部分は、その縁の全周囲に渡って、側板4との間でシール溶接13が施され、容器1と外張り手段9との隙間が密封される。このシール溶接13により、外張り手段は容器1に固定される。その他に外張り手段9が容器1に固定される部分は無い。
【0052】
このようにして、容器1に内包する放射性物質6の遮蔽を担う側板4の厚板部の両側に表面が円滑な金属ライニング7、金属の外張り手段9を有する構成とする。
【0053】
容器1の内部には、表面が汚染した放射性物質6が内包され、容器1の周辺環境は水中、若しくは微細な放射性物質で汚染している場合、底板3と側板4との隙間5に内側と外側とから放射性物質が浸入する恐れがあるが、金属ライニング7や外張り手段9を有することで隙間5に放射性物質が侵入する可能性が低減される。
【0054】
また、容器1の内面や外面が汚染した場合、底板3及び側板4の表面や隙間5に付着した汚染を除去するより、表面が円滑な金属ライニング7や表面が円滑な外張り手段9の表面に付着した汚染の方が、容易に除染可能となる。
【0055】
第3実施例では、容器除去時には、汚染した金属ライニング7と外張り手段9の各シール溶接13の部分のみをグラインダー等で削り除去し、その後に第2実施例と同様に金属ライニング7と外張り手段9とを容器1から取り外して廃棄する。汚染した金属ライニング7と外張り手段9を取り外すことにより、底板3と側板4からなる容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。その他の内容は第1実施例と同様である。
【0056】
図4は、第4実施例を示している。即ち、容器1の内面を覆うように既述の第1実施例で説明した金属ライニング7を容器に内装する。容器1に内装された金属ライニング7の上部縁部分は縁の全周囲に渡ってシール溶接13が側板4との間で施工され、容器1と金属ライニング7との隙間が密封される。このシール溶接13により、金属ライニング7は容器1に固定される。その他に金属ライニング7が容器1に固定される部分は無い。
【0057】
このようにして、内包する放射性物質6の遮蔽を担う側板4の厚板部の内側面を表面が円滑な金属ライニング7で覆い、シール溶接13で側板4に金属ライニング7を固定した。
【0058】
第4実施例では、容器除去時にはシール溶接部13のみをグラインダー等で削り除去し、汚染した金属ライニング7のみを容器1内から上方に引き上げ、容器1から金属ライニング7を箱形状の一体構造のまま取り外す。このように金属ライニング7を一括して取り去れば作業員の被ばく線量が低減される。その他の内容は第1実施例と同様である。
【0059】
図5は、第5実施例を示している。即ち、容器1に内装される金属ライニング7は、その上部縁部分がボルト15を締めることにより側板4に固定される。その固定に際しては、側板4の厚板部上面にパッキン16を金属ライニングの縁の全周囲に沿って置き、ボルト15を締める際の力でパッキン16を側板4と金属ライニング7との間で強く挟み込む。
【0060】
このようにすることにより、金属ライニング7と側板4との間の隙間はパッキン16で密封され、金属ライニング7と側板4との間のシールはパッキン16で担保する。
【0061】
第5実施例では、容器除去時にはボルト15を緩め、汚染した金属ライニング7,パッキン16、及びボルト15を容器1側から取り外すことが可能となり作業員の被ばく線量が低減する。その他の内容は第1実施例と同様である。
【0062】
図6は、各実施例における金属ライニング7及び外張り手段9の容器1からの取り外しに係る具体的実施例を示している。即ち、先んず、表面が汚染した放射性物質6や、その他水中で作業した際の残りの水は、あらかじめ取り去っておく。
【0063】
金属ライニング7が採用され、外張り手段9が採用されていない場合には、まずは側板4と蓋2との締結用ボルトを緩めて取り去り、クレーンで操作されるワイヤー20を蓋2に掛けて蓋2を吊り上げることにより、蓋2を容器1から取り去る。
【0064】
次に、金属ライニング7と図4に示す側板4との間のシール溶接13を削り去っておく。金属ライニング7と側板4との間のシールが図5に示すパッキン16とボルト15により担保されている場合には、そのボルト15を緩めて取り去っておく。更には、金属ライニング7の上部水平折り曲げ部分にアイボルト18を溶接で固定する。
【0065】
なお、本実施例ではアイボルト18を溶接する例であるが、金属ライニング7にあらかじめナット等を溶接しておき、そのナットに吊り上げが必要な時にアイボルトをねじ込む構造でもかまわない。その場合はナットのめねじ部の狭隆部に放射性物質が入り込まないように、ナット上部の開放部またはナット本体全部をゴムまたは樹脂等のキャップ等で被い、養生することで無用な放射性物質の付着を抑制することが可能となる。
【0066】
次に、金属ライニング7を吊り上げるのであるが、その場合、まずはアイボルト18にクレーンで巻取り繰り出し操作できるワイヤー19を掛ける。次に、ワイヤー19を上方向へ巻き取ることで容器1から金属ライニング7を引き上げる。このことにより、容器1の側板4内から金属ライニング7を引き抜いて分離することが可能となる。
【0067】
次に、金属ライニング7が採用されずに、外張り手段9のみが採用されている場合について、容器1からの金属の外張り手段9の取り外しについて説明する。即ち、先んず、表面が汚染した放射性物質6や、その他水中で作業した際の残りの水は、あらかじめ取り去っておく。
【0068】
次に、図4に示す側板4と外張り手段9とのシール溶接13の部分を削り去っておく。その後に、蓋2に設定されている吊り金具部にワイヤー20を掛けてクレーンで引き上げる。このようにすると、箱状の外張り手段9内から容器1が蓋2ごと抜き出されて、容器1から外張り手段9が取り外される。なお、ワイヤー20は蓋2を側板4に取り付ける際に使用することも可能である。またワイヤー20の取り付け位置は蓋2に拘らず、容器1のいずれかの部分に吊り金具を設置して当該吊り金具にワイヤー20を取り付けることも可能である。
【0069】
金属ライニング7と外張り手段9とが同時に容器1に採用されている場合には、先んず、既述の要領で外張り手段9を容器1から取り去り、次に、既述の要領で金属ライニング7を容器1から取り去ることが好ましいが、その逆であっても良い。
【0070】
以上説明したように、金属ライニング7を採用した容器1によれば、次の効果が得られる。放射性物質6と直接接触する容器内側に表面が円滑な金属ライニング7を有することで、放射性物質6の付着が金属ライニング7のみとなり、容器1の除染性が向上する。
【0071】
なお、金属ライニング7が施されていない容器上部も放射性廃棄物が接触し、容器本体材料に傷等が付き汚染することが懸念されるが、作業時に、容器本体のライニング未施工部分に、放射性物質の接触防止のために補助的にカバーを設定することで、放射性廃棄物の接触による、表面傷発生に起因するような汚染を防止することが可能となる。
【0072】
また、容器1の側板4の厚板部は、直接放射性物質と接触することが無いため、容器1の除去時には金属ライニング7を取り外し、汚染している金属ライニング7のみ廃棄すれば良く、容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0073】
放射性物質と直接接触する容器1の外側表面が円滑な金属の外張り手段9で覆われる例では、放射性物質の付着が金属の外張り手段9のみとなり、容器の除染性が向上する。また、側板4の厚板部は、直接放射性物質と接触することが無いため、容器1の除去時には金属の外張り手段9を取り外し、汚染している金属の外張り手段9のみ廃棄すれば良く、容器1の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0074】
放射性物質6と直接接触する容器1の内表面が円滑な金属ライニング7で、容器1の外側表面が円滑な金属の外張り手段9で覆われる例では、放射性物質の付着が金属ライニング7、及び金属の外張り手段9のみとなり、容器の除染性が向上する。
【0075】
また、側板4の厚板部は、直接放射性物質と接触することが無いため、容器の除去時には金属ライニング7、及び金属の外張り手段9を取り外し、汚染している金属ライニング7、及び金属の外張り手段9のみ廃棄すれば良く、容器本体の再利用が可能となり、廃棄物量が低減される。
【0076】
容器1に金属ライニング7をシール溶接13で固定する例では、容器1の除去時に金属ライニング7,金属の外張り手段9を取り外す際、シール溶接13部のみ除去すれば、容易に金属ライニング7,金属の外張り手段9を取り外すことが可能となり、容器の除去作業時における作業員の被ばく線量が低減される。
【0077】
また、容器1に金属ライニング7をボルト15で固定する例では、容器1の除去時に金属ライニング7を取り外す際、ボルト15を緩めることで容易に取り外すことが可能となり、容器1の除去作業時における作業員の被ばく線量が低減される。
【0078】
これらの発明により、原子力発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、若しくは放射性物質で汚染した高線量物を輸送、又は一時保管する容器1において、除染性の向上、及び除去する際の廃棄物量の低減,作業員の被ばく線量の低減を達成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、原子力発電所などの点検及び補修時に発生する放射化した、若しくは放射性物質で汚染した高線量物を輸送、又は一時保管する容器に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0080】
1 放射性物質輸送・保管容器(容器)
2 蓋
3 底板
4 側板
5 隙間
6 表面が汚染した放射性物質
7 金属ライニング
9 外張り手段
10 放射性物質
13 シール溶接
15 ボルト
16 パッキン
18 アイボルト
19,20 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射化もしくは放射性物質で汚染した物を内包して輸送又は一時保管する容器において、
前記容器の表面を、前記容器から一体にて取り外しできるようにした金属ライニングで覆ってあることを特徴とする放射性物質輸送・保管容器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射性物質輸送・保管容器において、
前記容器の内側の面を、前記容器から一体にて取り外しできるようにした金属ライニングで覆ってあるとともに、前記容器の外側の面を、前記容器から一体にて取り外しできるようにした金属板による外張り手段で覆ってあることを特徴とする放射性物質輸送・保管容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の放射性物質輸送・保管容器において、
前記金属ライニング又は/及び前記外張り手段は上部開放形状の一体構造にて作られていて、前記容器と前記金属ライニングとの縁部又は/及び前記外張り手段の縁部との間に、シール溶接を施してあることを特徴とする放射性物質輸送・保管容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の放射性物質輸送・保管容器において、
前記金属ライニング又は前記外張り手段は上部開放形状の一体構造にて作られていて、前記容器と前記金属ライニングとの間にパッキンを施し、前記容器に、前記金属ライニングを、ボルトで固定してあることを特徴とする放射性物質輸送・保管容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−169456(P2010−169456A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10487(P2009−10487)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)