説明

放射温度測定装置、光源温度制御装置、画像投影装置および放射温度測定方法

【課題】 2色式放射温度測定において、被測定対象の近傍に時間的に変化する明るい迷光源がある場合に、その迷光の影響を取り除き、被測定対象の温度を測定する。
【解決手段】 迷光を含む温度測定対象からの光に対して2波長帯で光強度の時間変化を測定する主検出系と、迷光のみを光強度の時間変化を測定する副検出系とを備え、光源駆動電流に重畳パルスを加えたときの主検出系、副検出系の測定結果のパルス状変化分を抽出し、両測定結果のパルス状変化分の比に基づき迷光寄与分を推定し、2波長帯での光強度測定値から迷光寄与分を除去した後の測定値から2波長式放射温度測定法に基づき温度測定対象の温度を求める演算装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射温度測定方法、放射温度測定装置、光源温度制御装置および画像投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物体から放射される熱輻射光のスペクトルはその物体の温度に依存する。そのスペクトルの変化を利用して温度を計測する方法の一つに2色式放射温度測定法がある。この方法は異なる2つの波長帯における熱輻射光の強度比から温度を求める方法で、物体の熱輻射光の放射率にかかわりなく温度を求めることができる。
【0003】
しかし、物体からの熱輻射光に加えて、他の光が迷光として重畳されると、得られる温度値に誤差が生じる。例えば放電ランプを光源とした場合、光源の発光端である電極部の温度を測定しようとする場合、強力な放電発光が近傍に存在するため、電極部からの熱輻射光に放電発光が迷光として重畳されて測定されることになる。従って、熱輻射光スペクトルに基づく温度測定を行うには、測定値からこの迷光の寄与分を取り除く必要がある。この迷光の寄与分を除去する手段の一つに、特許文献1に記載された発明がある。この発明では、放電発光の寄与分を取り除くために、迷光となる放電発光スペクトルのピークを外した2波長帯を選択して2色式放射温度測定法を適用している。
【0004】
【特許文献1】特許第3233329号(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明のように、放電発光スペクトルのピークを外した波長帯で熱輻射光を測定すれば、迷光の寄与をある程度まで削減することができるが、実際の放電発光スペクトルは線スペクトル以外に広い波長に渡る連続スペクトルを伴っている。一例として超高圧水銀ランプを放電ランプとした場合の放電発光スペクトルを図15に示す。線スペクトルのピークを外した700nm付近でも放電発光が存在していることが分かる。ランプの電極温度を測定する一つの目的として、ランプを長寿命化させるために、ランプの特性を調べるということが挙げられるが、その目的のためには電極の先端部、すなわち強力な放電発光がごく近傍にある部位の温度を測定する必要がある。そのような部位では、仮に上述の従来例のように放電ピークの存在する波長帯を外して2色温度測定をしても、放電発光による迷光成分が大きすぎて、その正確な温度を測定することはできなかった。このように、除去したい迷光のスペクトルが連続成分を多少なりとも持っているために、迷光の寄与を完全には除去できず、残留寄与分が無視できないため、正確な温度が測定できないという問題があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、迷光が重畳された熱輻射光の測定値から迷光成分を除去して温度を測定する方法及び装置を提供することを目的としている。
【0007】
また、従来は、放電ランプの電極温度をリアルタイムで測定する手段がなかったため、電極の温度を制御しながらランプを駆動させることができなかった。
【0008】
さらに、画像投影装置の光源として放電ランプを用いることが一般的であるが、電極温度を一定に制御できなかったため放電ランプの寿命が短く、頻繁に交換を行わなければならないという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる放射温度測定装置は、所定の繰り返し光強度時間変動パターンを有する光源光の発光端から放射される熱輻射光を2波長帯で測定することにより前記発光端の温度を測定する放射温度測定装置において、
前記2波長帯の各々で、前記発光端からの光強度を測定する第1の光測定手段と、前記光源光のみの光強度を測定する第2の光測定手段と、
前記第1の光測定手段及び前記第2の光測定手段からの光強度測定値を入力し、前記各測定手段に対する光強度時間波形データとして測定すると共に、前記光強度時間変動パターンに対応して光強度の異なるタイミング1およびタイミング2での前記各測定手段に対する前記光強度時間波形データ値を求める時間波形測定装置と、
前記タイミング1および前記タイミング2での前記第2の測定手段に対する前記光強度時間波形データ値に基づき、前記タイミング1および前記タイミング2での前記第2の測定手段に対する前記光強度時間波形データ値から前記光源光の寄与分を除去することにより、前記ランプ光源の発光端から放射される前記2波長帯での熱輻射光強度を分離評価し、その結果から前記発光端の温度を算出する温度算定手段とを備えたものである。
【0010】
この発明にかかる光源温度制御装置は、光源の発光端温度を冷却する冷却手段と、前記光源の発光端の温度を測定する放射温度測定装置と、この放射温度測定装置による前記発光端の温度測定結果を入力し、その測定結果に基づき、前記冷却手段の動作を制御する温度制御手段とを備えたものである。
【0011】
この発明にかかる画像投影装置は、光源と、画像表示素子と、前記光源からの光源光を前記画像表示素子に照射して前記画像表示素子上の画像を所定位置に投影する画像投影光学系とを備えた画像投影装置において、前記の光源温度制御装置を備えたものである。
【0012】
この発明にかかる放射温度測定方法は、所定の繰り返し光強度時間変動パターンを有する光源光の発光端から放射される波長帯λ1及び波長帯λ2の光の強度を、光測定手段が、繰り返し光強度時間変動パターンに基づくタイミング1で測定し、その結果a(λ1)、a(λ2)を求める第1のステップと、前記光測定手段が、前記第1のステップと熱輻射条件が同じと見なせる時間幅内にあり、前記光源の繰り返し光強度時間変動パターンに基づき、前記タイミング1に対応する光強度に対して所定時間増加又は減少する光強度に対応するタイミング2で前記発光端から放射される波長帯λ1及び波長帯λ2の光の強度を測定し、その結果b(λ1)、b(λ2)を求める第2のステップと、前記光測定手段若しくは他の光測定手段が、前記第1のステップと熱輻射条件が同じと見なせる時間幅内にあり、前記光源の繰り返し光強度時間変動パターンに基づく前記タイミング1及び前記タイミング2で、光源光のみを測定し、その結果a0、b0を求める第2のステップと、温度算定手段が、前記測定結果a(λ1)、a(λ2)、b(λ1)、b(λ2)、a0及びb0を入力し、次式により波長帯λ1、λ2での熱輻射光測定値の強度比Rを求め、
R=I1/I2
I1=a(λ1)−a0×(b(λ1)−a(λ1))/(b0−a0)
I2=a(λ2)−a0×(b(λ2)−a(λ2))/(b0−a0)
前記算定した強度比Rに基づき、保持している強度比Rと温度との関係を示すデータを参照して光源発光端温度を求める第3のステップとからなるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかる放射温度測定装置によれば、熱輻射光と迷光の時間的な光強度の変化特性の違いを利用して、光強度測定値に混在する迷光の寄与を推定することにより、熱輻射光成分のみを抽出できるので、発光端に大きな迷光発生源がある場合でも、熱輻射光測定原理に基づき、発光端の温度を精度良く測定できる。
【0014】
この発明にかかる光源温度制御装置によれば、熱輻射光と迷光の時間的な光強度の変化特性の違いを利用して、光強度測定値に混在する迷光の寄与を推定することにより、熱輻射光成分のみを抽出でき、発光端に大きな迷光発生源がある場合でも、熱輻射光測定原理に基づき、発光端の温度を精度良く測定できる放射温度測定装置を採用したので、測定した温度値信号を用いてフィードバック制御を行うことにより、光源の発光端温度を一定範囲内に保持することができ、これにより、光源を長寿命化させることができる。
【0015】
この発明にかかる画像投影装置によれば、画像投影装置に使われる光源の発光端温度を一定範囲内に制御する光源温度制御装置を備えたので、光源が長寿命化されることにより、光源寿命に起因する光源の交換頻度を低減でき、保守時間の低減による画像投影装置の利用率の向上、保守経費の節減が期待できる。
【0016】
この発明にかかる放射温度測定方法によれば、熱輻射光と迷光の時間的な光強度の変化特性の違いを利用して、光強度測定値に混在する迷光の寄与を推定することにより、熱輻射光成分のみを抽出できるので、発光端に大きな迷光発生源がある場合でも、熱輻射光測定原理に基づき、発光端の温度を精度良く測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施の形態1
本発明の実施の形態1による放射温度測定装置を図1に示す。図1において、100は放射温度測定装置、200は放射温度測定装置100の温度測定の対象を含む光源部である。以下では光源として放電ランプを例に取り説明する。光源部200は、光源となる放電ランプ1と、光源駆動回路4と、両者をつなぐケーブルとで構成されている。放電ランプ1には、電極2と電極2の先端部である電極先端部3とが対になり対向して配置されている。この対向した電極2若しくは電極先端部3間には光駆動回路4を介して電圧が印加されることにより、対向する電極先端部3間で放電を生じさせ、この放電により発光を生じさせる。従って、電極部2若しくは電極先端部3が光源光として利用される放電光の発光端となり、この部分の温度が本願発明に係る測定対象となる。以下では、温度測定対象となる光源光の発光端は電極部2であるとして説明するが、電極部2は電極先端部3を含む概念である。
【0018】
放射温度測定装置100は、測定対象である電極部2から放出される熱輻射光のスペクトルを計測して2色式放射温度測定法の原理により電極部2の温度を測定するための装置で、光検出部50(図1では符号を付すのを省略した)と時間分解部60と温度値計算部70とで構成される。光検出部50は主検出系51と副検出系52とで構成される。主検出系51は、電極部2からの光を測定対象とする検出系で、空間分解部30と、スペクトル分解部40とで構成される。副検出系52は放電発光のみを測定対象とする検出系で、空間分解部30と後続の光検出器24とで構成される。
【0019】
まず主検出系51について説明する。主検出系51の空間分解部30は、測定対象を放電ランプ1の電極部2からの光に限定するための機能を有する部分で、測定対象となる放電ランプ1のいずれか一方の電極部2からの光を所定の結像面に結像させる投影装置5と、その結像面に設置されたピンホール7を有するスクリーン6とで構成されている。このピンホール7を光の結像点に合わせると、基本的には電極部2からの光がピンホール7を通過して次のスペクトル分解部40に導かれる。電極部2からの光は主に熱輻射光によるものであるが、電極部2の近傍に発生する放電発光も迷光として測定光に混入したものとなっている。なお、電極部2からの光を測定していることは、ピンホール7の位置を光結像位置に合わせる前にスクリーン6上に結像させて、スクリーン6を直接目視して確認できる。また、ビデオカメラでスクリーン6を撮影して確認しても良い。なお、光結像位置をスクリーン6上のピンホール7の位置に合わせる方法として、投影装置5の位置を動かしても良いし、スクリーン6を動かすことによりピンホール7の位置を動かしても良い。
【0020】
スペクトル分解部40は、空間分解部30で測定対象とされた放電ランプ1の電極部2からの光を特定の2波長λ1、λ2で代表される波長帯(以後簡略化のために波長帯λ1、λ2と記載することとする)に分光する2波長分光装置8と、分光された波長帯λ1、λ2の光をそれぞれ高速に測定できる2台の光検出器9(チャンネル1)、10(チャンネル2)とで構成されている。波長帯λ1、λ2の光に対する光検出器9、10の各測定信号は、信号線11、12を介して時間分解部60に導かれる。
【0021】
次に副検出系52について説明する。副検出系52の空間分解部30は、放電発光のみを測定することを目的としたもので、放電ランプ1の対向する電極先端部3間で発生する放電発光のうち、所定の1点からの光を結像面に結像させる投影装置21と、その結像面に設置されたピンホール23を有するスクリーン22とで構成されている。放電発光のみを測定するためには、電極先端部3から離れた位置からの放電発光を測定するように副検出系52の位置又は方向を調整して設置するが、その確認は先に説明したとおり、ピンホール23の位置を光結像位置に合わせる前にスクリーン22上に結像させて、スクリーンを直接目視して確認できる。また、ビデオカメラでスクリーン22を撮影して確認しても良い。光検出器24は、ピンホール23を通過した光を高速に測定するものである。
【0022】
時間分解部60は、主検出系51の光検出器9、10からの波長帯λ1、λ2の光に対する各測定信号、及び副検出系52の光検出器24からの放電発光の測定信号をそれぞれ入力すると共に、ランプ部50の構成要素である光源駆動回路4からトリガー信号を得て波長λ1、λ2の光、及び放電発光の時間変化に対応した光検出器信号の時間波形を測定する時間波形測定装置14を有している。時間波形測定装置14で測定された波長λ1、λ2の光に対する時間波形信号及び放電発光に対する時間波形信号は温度値計算機70に入力され、ここで、これらの信号に基づき最終的な測定対象である電極部2の温度が計測評価される。
【0023】
以下、ランプ部200を構成する放電ランプ1として、交流駆動されている超高圧水銀ランプを例にとって説明をする。超高圧水銀ランプは、光源駆動回路4から図2に示すようにステップ状に変化する交流電流信号が供給され、これにより放電発光が生じる。しかし、このランプでは、短時間で輝度分布が大きく変動するフリッカという現象が発生するため、これを抑制するために、前記ステップ状に変化する交流電流信号にパルスを重畳させてランプに供給するということが良く行われている。ここでは、重畳パルスを使用している放電ランプ1の電極部2の温度を測定する方法及び装置について説明する。
図3に、重畳パルスが加えられた場合の、光源駆動回路4から放電ランプ1に供給される駆動電流の時間波形を示す。電流極性の反転直前にそれぞれの極性で加えられている電流の増加分が重畳パルスによるものである。図4は、重畳パルスが加えられた図3に示す電流時間波形で交流駆動されているランプでの放電発光強度の時間変化を示している。図4から、重畳パルスが加えられている時間に対応して放電発光強度が増大することがわかる。本実施の形態に係る発明は、重畳パルスを加えた場合の発光強度の時間変化を利用することにより、迷光として測定対象光に混入してくる放電発光の寄与分を評価することにより、熱輻射スペクトルの寄与分を分離して評価し、その結果から、電極部の温度を求めるというものである。
【0024】
本実施の形態に係る発明による温度測定の基本原理は次のとおりである。
重畳パルスを電極部2に加えた場合は、放電発光強度が増大するだけでなく電極温度も理論的には増加する。しかし、重畳パルス印加時には放電発光強度は即応して増加するが、電極部2の温度変化の応答性はけた違いに悪く、図3に示すような短パルス低波高の重畳パルスを加えた駆動電流波形の場合、実質的には温度は変化しないとして扱っても良い。例えば、電流の交流周波数を150Hzであるとすると、図4からわかるように、発光強度の1周期は電流の交流周波数の2倍となるので、300Hzとなり、一周期わずか3.3msである。重畳パルスはこれと同じ周期で重畳されるが、その時間幅は更にこの周期の数分の1である。従って、このような短い時間では電極部2の温度は一定と仮定してもよい。図5は、図3、図4と同じ横軸時間スケールで重畳パルスを加えた場合の電極先端部温度の時間変化を示したものである。図5からわかるように、電極部2の温度は放電発光周期の時間オーダーでは、時間によらず一定と見なすことができる。従って、電極部2から発せられる熱輻射光強度及びスペクトルも、放電発光周期の時間オーダーでは時間によらず一定と見なすことができる。
【0025】
所定の時間範囲では放電発光強度は時間的に変化するが、熱輻射光強度は時間的に変化しないということを利用して、主検出系51の光検出器9、10の測定値から放電発光の寄与分を以下の原理で評価し除去し、熱輻射光に起因する信号成分のみを分離する。
光検出器9と10とについては同様の説明となるため、以下では、光検出器9と、光検出器24の時間波形信号について説明する。課題は光検出器9からの信号に混入する放電発光による寄与分を除去し、熱輻射光成分のみを評価することである。
【0026】
図6は、放電ランプ1の交流駆動電流に重畳パルスが加えられている場合について、放電ランプ1の電極部2からの光を光検出器9からの信号を時間波形測定装置14で測定し、波長帯λ1の測定光強度の時間波形として示したものである。この測定値は、時間変化しない熱輻射光と、光検出器9に混入した、時間変化する放電発光による迷光の両測定結果の和に相当する。一方、副検出系52の光検出器24からの信号を時間波形測定装置14で測定したときの測定光強度の時間波形は図4に示す放電発光の時間変化と同様な時間波形となる。両時間波形中、重畳パルスに起因する測定強度の変化分は、いずれも放電発光に起因するものであり、その他の要因を含まない。そのため、測定対象となる場所が同一であれば同じ値になるはずのものであり、測定対象場所が異なる場合は、通常は光強度が異なることになるため、重畳パルスに起因するこの測定値の変化分は光強度の違いに比例したものになる。この測定対象場所の違いによる光強度の違いは重畳パルスの存在とは無関係であるため、測定場所の違いによるそれぞれの重畳パルスによる測定値の変化分の比は、そのまま、重畳パルスが加えられていない場合の、測定場所の違いによる放電発光に起因する光強度測定値の違いの比に等しくなる。
【0027】
以上のことを、図7を使って具体的に説明する。図7は、図3に示すような重畳パルスを加えた交流駆動電流を放電ランプ1に通電したときの放電ランプ1の電極部2からの光と放電発光のみを対象とした測定値のそれぞれの時間変化を示したものである。
【0028】
図7の53、54は、それぞれ主検出系51の光検出器9、10からの信号を時間波形測定装置14で測定して得られた波長帯λ1、λ2における光強度測定値の時間波形(時間変動値)を示し、55は副検出系52の光検出器24からの信号を時間波形測定装置14で測定して得られた光強度測定値の時間波形(時間変動値)を示す。従って、53、54は放電ランプ1の電極部2からの光、即ち放電発光の迷光と熱輻射光とが混合された光強度の時間波形を、55は放電発光のみの光強度時間波形を示している。以下では、53、54を混合光強度時間波形と、55を放電発光強度時間波形と呼ぶこととする。
【0029】
図7の各光強度の時間波形中、光強度が急激に増加している部分が駆動電流に重畳パルスを加えたことに起因したものである。図の時間帯56は、重畳パルスの影響や駆動電流の極性反転による光強度の変動の影響がない時間帯を示し、時間帯57は重畳パルスによる光強度が増加した状態で安定している時間帯を示している。
【0030】
ここで、図7に示すように、混合光強度時間波形53、54及び放電発光強度時間波形55から、時間帯56でのタイミング1で各光強度測定値a1、a2、a0を求め、時間帯57でのタイミング2で各光強度測定値b1、b2、b0を求める。ここで、a1、b1は波長帯λ1に対する測定値、a2、b2は波長帯λ2に対する測定値で、いずれも主検出系51での測定値、a0、b0は副検出系52での測定値である。同じタイミングでの値を求めるためには光源駆動回路4から時間波形測定装置14に入力される駆動電流信号の周期毎に発生するトリガー信号を起点として所定時間経過後の各測定値をサンプリングすればよい。所定時間は予め予備的な計測を行うことにより設定しておく。なお、これらの値は、各時刻での値とする代わりに所定時間の平均値を用いても良い。時間帯56、57それぞれの時間幅内で、統計誤差以外、測定値を大きく変動させる要因がない場合、若しくは変動しても問題ない程度と判断される場合は、時間平均値を採用することにより測定値の統計誤差等を低減することができ、以下で述べる温度測定値の精度の向上を図ることができる。なお、a1、a2、a0の同時性、及びb1、b2、b0の同時性については必ずしも厳密なものでなくても良い。即ち、タイミング1は重畳パルスが加えられていない時間帯であればどこでも良く、タイミング2は重畳パルスが加えられていて光強度が一定値に増加した時間帯であればどこでも良い。更に、光強度の変動周期内でなく、異なる周期内であっても、タイミング1は重畳パルスが加えられていない時間帯、タイミング2は重畳パルスが加えられていて光強度が一定値に増加した時間帯であればよい。即ち、タイミング1、2は上記の拡大された意味を含むものである。
【0031】
時間波形測定装置14で測定された光強度測定値a1、a2、a0及びb1、b2、b0は温度値計算機70に入力され、そこで、以下の原理に基づき温度が求められる。 まず、光強度測定値a1、a2、b1、b2はいずれも主検出系51での測定値であるから熱輻射光に放電発光が迷光として混入したものとなっており、両者の和と考えることができる。以下、a1を例に取り説明する。a2についても同様な解析が成立する。
a1は次式で表現できる。
a1=I1+d1 (1)
ここで、I1は熱輻射光の寄与を、d1は放電発光の寄与を示す。
【0032】
次に、混合光強度時間波形53の場合も放電発光強度時間波形55の場合も、重畳パルスによる発光の増加分は既に説明した通り、放電発光によるものであるから、混合光強度時間波形53から求めた重畳パルスによる光強度測定値の増加分であるb1−a1は放電発光に起因するものである。同じく放電発光強度時間波形55から求めた重畳パルスによる光強度測定値の増加分であるb0−a0も放電発光に起因するものである。両者の違いは、測定対象光に含まれる放電発光の強度の違いに起因することになる。また、放電発光時間波形55中の重畳パルス印加時点の光強度測定値b0と非印加時点の光強度測定値a0との比b0/a0は放電発光強度によらず一定であるはずなので、混合光強度時間波形53に含まれる放電発光寄与分d1についても放電発光強度時間波形55でもとめた当該比b0/a0はそのまま当てはまる。したがって、d1は次式の関係を満たすことになる。
((b1−a1)+d1)/d1=b0/a0 (2)
(2)式から、d1の表式として次式を導くことができる。
d1=a0×r (3)
r=(b1−a1)/(b0−a0) (4)
ここでrは、副測定系52で測定した放電発光強度を基準としたときの主測定系51で
の測定に迷光として混入した放電発光の寄与の割合、即ち放電発光寄与率を示している。
よって、波長帯λ1についての測定値a1に含まれる熱輻射光の寄与分であるI1は下式で求まる。
I1=a1−a0×(b1−a1)/(b0−a0) (5)波長帯λ2についての測定値a2に含まれる熱輻射光の寄与分であるI2も同様に、次式で求めることができる。
I2=a2−a0×(b2−a2)/(b0−a0) (6)
次式に示すとおり、両者の比である強度比Rを求める。
R=I1/I2 (7)
【0033】
ところで、ある部位から放射される熱輻射光のスペクトルは温度に依存する。即ち、波長帯λ1とλ2の発光強度の比率は温度Tに依存する。従って、その測定評価値であるI1とI2との比である強度比Rもまた、電極部2の温度Tと1対1の対応関係を有する。そこで、強度比Rと温度Tの較正データを予め求めておけば、上記(1)から(7)式で算出した強度比Rから電極部2の温度Tを求めることができる。
【0034】
強度比Rと温度Tの較正データの求め方については、放電ランプの代わりに熱輻射光以外、迷光の存在しないハロゲンランプや標準黒体炉などを用いればよい。これらの標準光源に対して別手段で温度Tを測定し、かつ本発明の主測定系51で波長帯λ1、λ2に対する測定値a1、a2を求めてその比を取ると、強度比Rが得られ、強度比Rと温度Tの較正データを得ることができる。その一例を図8に示す。図8は強度比Rと推定温度Tの関係を示したものである。実際の測定例を図9と図10に示す。図9のAからSで示された位置の温度が図10に示されている。このように、本実施の形態に係る発明を使えば、迷光となる明るい放電光がごく近傍に存在しても、光測定値から熱輻射光寄与分を容易に分離評価することができ、この分離評価された光測定値から2色式放射温度測定法の原理により電極上の温度を測定することが可能となる。
【0035】
なお、波長帯λ1、λ2を放電発光スペクトルのピーク波長域外で選択すると放電発光による測定値への迷光寄与分を初めから一定程度低減できるので、本実施の形態に係る発明を適用することにより、更に精度良く発光端の温度を測定することができる。
例えば、2つの測定波長を、λ1=700nmとλ2=800nmの近傍とする。このように2波長を選択すると先に示した図15から分かるように、放電発光スペクトルのピーク領域を外しているので、放電発光の迷光をより小さくできる。もちろんより高波長の波長帯を選択しても良いし、放電ピークの谷間に当たる530nm付近の波長を選択しても良い。但し、光検出器の感度スペクトル特性と、測定対象温度域での温度変化により熱輻射スペクトルの変化の大きな波長帯であるということを考慮する必要もある。これらの点を考慮すると、放電発光スペクトルが図15に示すようなものであれば、近赤外の2波長帯を選ぶのが最善であろう。
【0036】
ここで使用する光検出器としては、重畳パルスを加えた場合の放電発光の変化に高速に応答する必要があるので高速応答性、及び、分光された微弱な光を検出するために光感度が高いことが望まれ、具体的には光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードなどを使用するのが好ましい。
【0037】
実施の形態2
本実施の形態は、実施の形態1で放電発光強度の測定専用に設置した副検出系52の機能を主検出系51で兼ねるというものである。図11は本実施の形態の構成図を示すもので、検出系は主検出系51のみで、その空間分解部30の位置若しくは方向を可変とする駆動機構部20を装備している。この駆動機構部20により、投影装置5での測定対象部位を時間分割することにより電極部2と放電発光部との間で切り替えられるようにしたものである。
【0038】
なお、位置若しくは方向を変える対象として、空間分解部30のみでなく、スペクトル分解部40も併せて可変にしても良い。また、主検出系51は分光測定機能を有し、特定の波長帯での光強度を測定するものであるが、実施の形態1では副検出系52は分光測定機能を有していなかった。しかし、このことは本発明に特に影響するものではない。放電発光のスペクトルは変わらず、強度のみが測定対象部位に応じて変化するものだからである。即ち、分光測定した場合と、分光測定しなかった場合の放電光強度時間波形は同一のものになるので、副検出系52を主検出系51で代替することによる不都合はないことになる。
【0039】
このときの測定は、まず、駆動機構部20を用いて、空間分解部30を動かし、投影装置5の測定対象部位を放電発光部に設定することによりまず迷光源の元である放電発光の時間波形を測定する。その後、駆動機構部20を用いて、再度空間分解部30を動かし、投影装置5の測定対象部位を、本来の被測定対象である電極部2に設定し、電極部2からの発光の時間波形を測定する。なお、投影装置5による光結像位置をスクリーン6上のピンホール7の位置に合わせる方法として、投影装置5の位置を動かしても良いし、スクリーン6を動かすことによりピンホール7の位置を動かすようにしても良い。いずれも駆動機構部20を介して実行することができる。
【0040】
このようにして、駆動機構部20を設け、時間分割により主検出系51の測定対象部位を変えて、副検出系52の機能を兼ねさせるようにしたので高価な測定系を1チャンネル省くことができ、費用の節減、スペースの節約等が可能となる。
【0041】
実施の形態3
本実施の形態は重畳パルスを加えない点に特徴を有する。重畳パルスを加えないランプ駆動法もよく用いられるが、そのような場合でも本実施の形態に記載の発明によれば、実施の形態1又は2に記載の場合と同様に、光強度測定値時間波形から熱輻射に起因する分を分離評価できる。重畳パルスを加えない場合の駆動電流波形は既に説明した通り図2に示すようになっている。図12はそのときの放電ランプ1の、放電発光強度の時間波形を示したものである。図12と図2とは時間スケールを揃えてあり、図12によると、図2に示す電流反転時に放電発光強度が小さくなることがわかる。本実施の形態はこの放電発光強度の時間変化を利用して、電極部の熱輻射スペクトルの測定値寄与分を分離するというものである。
【0042】
図7は重畳パルスを加えたときの光強度測定結果を示すものであるが、重畳パルスの立ち下がり時点、即ち駆動電流の極性反転時に測定値が低減するという点では重畳パルスを加えない場合と同様の傾向を示している。従って、この図7を流用して本実施の形態を説明する。即ち、図7に示すように、駆動電流の極性反転時には、光強度測定値時間波形の谷間(光強度測定値c0、c1、c2として記載したポイント)が生じる。この光強度の時間変化は放電発光の時間変化に起因するものであり、熱輻射光の変化によるものでないことは実施の形態1で説明したとおりである。
【0043】
この谷間での光強度測定値を、図7を流用してc0、c1、c2とする。そして、実施の形態1に記載のb0、b1、b2をこのc0、c1、c2で置き換えることにより、実施の形態1で説明した方法に基づき電極部2の温度Tを測定することができる。
【0044】
b0、b1、b2、c0、c1、c2を測定するタイミングは実施の形態1の記載と同じく光源駆動回路4から時間波形測定装置14に入力されるトリガー信号を起点とすればよい。実施の形態1にかかる発明で要求される測定タイミングの精度に比べると本実施の形態にかかる発明で要求されるタイミングの精度はより厳しくなる点に留意しなければならない。図12又は図7に示すように谷部の持続時間は重畳パルスによる光強度の変化する時間幅に比べて短いので、的確に谷部に対応するタイミングを狙って測定しないと測定値の誤差が大きくなるからである。
【0045】
このように本実施の形態3によれば、放電ランプの駆動電流に重畳パルスを加えなくとも駆動電流の極性反転部での光測定値の変動に着目することにより、簡便に電極部2の温度評価が可能になる。
【0046】
実施の形態4
実施の形態1では同極性の重畳パルスを交流駆動電流に加えていたが、本実施の形態に係る発明は、重畳パルス電流の極性を交流駆動電流の極性と逆にしたものである。従って、重畳パルスを加えた時間帯での放電発光強度は実施の形態1の時とは逆に減少する。この場合でも、実施の形態1と同様の原理により、式(1)から(7)はそのまま成立する。従って、これらの式に基づき放電発光に起因する寄与を除去することができ、電極部の熱輻射光の寄与分を分離評価できる。
【0047】
実施の形態5
本実施の形態に係る発明は、上述の実施の形態1乃至4のいずれかの温度測定装置を用いて、放電ランプ1の電極部2の温度を測定しつつ、その温度をある一定温度範囲内に抑えることを特徴とする光源温度制御装置に関するものである。
図13に本実施の形態に係る装置の構成を示す。本光源温度制御装置はこれまで説明した放射温度測定装置100と、ランプ部200の設置近傍に配置した、冷却ファンなどの放電ランプ電極部2の温度を調節する機能を有する冷却手段80と、この冷却手段80と温度値計算機70とを接続する温度値信号フィードバックケーブル81とで構成されている。
【0048】
本光源温度制御装置の動作は次のとおりである。
まず、温度値計算機70には制御すべき電極部2の温度範囲が設定温度範囲として予め入力されているものとする。そして温度値計算機70では実施の形態1から4に記載のいずれかの装置によって電極部2の温度を測定評価する。温度値計算機70では、測定評価して得られた電極部2の温度が、予め入力されている設定温度範囲内にあるかどうかを判断する。測定評価した温度が設定温度範囲内にあれば温度値計算機70は冷却手段80に対しては何も行わない。従って、冷却手段80は現在の運転状態をそのまま継続する。冷却手段80が冷却ファンである場合は冷却ファンの風量をそのまま維持することになる。
測定評価した温度が設定温度範囲よりも高ければ、温度値計算機70は温度値信号フィードバックケーブル81を介して冷却手段80に対して冷却能力を増強するように制御信号を送る。冷却手段80が冷却ファンである場合は冷却ファンの風量を増強する。一方、測定評価した温度が設定温度範囲よりも低ければ、温度値計算機70は温度値信号フィードバックケーブル81を介して冷却手段80に対して冷却能力を低減するように制御信号を送る。冷却手段80が冷却ファンである場合は冷却ファンの風量を低減する。
【0049】
電極部2の温度範囲の最適な条件は、明るさ、長寿命化、フリッカ対策、等々のいずれを第一優先とするのかによって変わるが、例えばタングステン電極の融点を少し超える範囲である、3700℃±200℃の範囲に制御したい場合などが考えられる。
【0050】
このように、測定した温度値信号を用いてフィードバック制御を行うことにより、最適な電極部温度条件で動作させることができるので、安定した信頼性の高いランプを提供することができ、ひいてはこれにより光源の長寿命化を図ることができる。
【0051】
なお、図13には、放射温度測定装置として実施の形態2に係る放射温度測定装置を使用した場合が示されているが、副検出系を主検出系とは別に備えた実施の形態1に記載の放射温度測定装置を採用しても同様な効果を奏することができる。また、ここでは温度値計算機70を温度制御手段として使用する例を説明したが、冷却手段80により電極部2の温度を制御する機能を温度値計算機70とは別個独立に温度制御手段を設けて実行することもできる。
【0052】
実施の形態6
本実施の形態にかかる発明は画像投影装置で、その構成を図14に示す。図14に示す画像投影装置は、ランプ部200と、ランプの電極部温度を測定し、測定された電極部温度に基づき、電極部温度を所定の温度範囲に制御する実施の形態5に記載の光源温度制御装置と、ランプ部200からの光を画像表示素子に照射投影する画像投影光学系90とで構成される。
【0053】
画像投影光学系90は、通常の画像投影装置に採用されるものであればどのようなものでもよく、例えば、画像表示素子92と、放電ランプ1からの光を画像表示素子92に照射するために、放電ランプ1と画像表示素子92との間に配置する投影レンズ93と、画像表示素子92に照射されて、これを透過した光を結像させるためのコンデンサレンズ91とで構成されているものが考えられる。
【0054】
このように構成された画像投影装置では、最適な電極温度条件で光源が使用されることにより、光源が長寿命化され光源寿命に起因する光源の交換頻度を低減でき、保守時間の低減による画像投影装置の利用率の向上、保守経費の節減が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態1に係る重畳パルスのない交流電流駆動での光源への電流波形
【図3】本発明の実施の形態1に係る重畳パルス交流電流駆動での光源への電流波形
【図4】本発明の実施の形態1に係る重畳パルス電流駆動によって発生する放電発光強度の変化を示す図
【図5】本発明の実施の形態1に係るランプの電極部の温度変化を示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置で測定した測定光強度の時間変化を示す図
【図7】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置の主検出系及び副検出系で測定した測定値の時間変化、および温度算出に使う測定値の抽出タイミングを示す図
【図8】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置に使用する温度校正図
【図9】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置を用いて測定する被対象物であるランプの図
【図10】本発明の実施の形態1に係る放射温度測定装置を用いて測定した結果を示す図
【図11】本発明の実施の形態2に係る放射温度測定装置の構成図
【図12】本発明の実施の形態3に係る重畳パルスのない交流電流駆動によって発生する放電発光強度の変化を示す図
【図13】本発明の実施の形態5に係る光源温度制御装置の構成図
【図14】本発明の実施の形態6に係る画像投影装置の構成図
【図15】従来例に係る放電発光ピーク波長を避けても迷光が存在することを説明するための、放電発光スペクトル図
【符号の説明】
【0056】
1 放電ランプ、2 電極部、3 電極先端部、4 光源駆動回路、5 投影装置、6 スクリーン、7 ピンホール、8 2波長分光装置、9 光検出器(チャンネル1)、10 光検出器(チャンネル2)、11 チャンネル1出力強度信号線、12 チャンネル2出力強度信号線、13 トリガー信号線、14 時間波形測定装置、20 駆動機構部、21 副検出系の投影装置、22 副検出系のスクリーン、23 副検出系のピンホール、24 副検出系の光検出器、25 副検出系の出力強度信号線、30 空間分解部、40 スペクトル分解部、50 検出系、51 主検出系、52 副検出系、53 チャンネル1の測定値時間波形、54 チャンネル2の測定値時間波形、55 副検出系の測定値時間波形、56 タイミング1の設定時間帯、57 タイミング2の設定時間帯、60 時間分解部、70 温度値計算機、80 冷却手段、81 温度値信号フィードバックケーブル、90 画像投影光学系、91 コンデンサレンズ、92 画像表示素子、93 投影レンズ、100 放射温度測定装置、200 ランプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の繰り返し光強度時間変動パターンを有する光源光の発光端から放射される熱輻射光を2波長帯で測定することにより前記発光端の温度を測定する放射温度測定装置において、前記2波長帯の各々で、前記発光端からの光強度を測定する第1の光測定手段と、前記光源光のみの光強度を測定する第2の光測定手段と、前記第1の光測定手段及び前記第2の光測定手段からの光強度測定値を入力し、前記各測定手段に対する光強度時間波形データとして測定すると共に、前記光強度時間変動パターンに対応して光強度の異なるタイミング1およびタイミング2での前記各測定手段に対する前記光強度時間波形データ値を求める時間波形測定装置と、前記タイミング1および前記タイミング2での前記第2の測定手段に対する前記光強度時間波形データ値に基づき、前記タイミング1および前記タイミング2での前記第2の測定手段に対する前記光強度時間波形データ値から前記光源光の寄与分を除去することにより、前記ランプ光源の発光端から放射される前記2波長帯での熱輻射光強度を分離評価し、その結果から前記発光端の温度を算出する温度算定手段とを備えたことを特徴とする放射温度測定装置。
【請求項2】
第1の光測定手段の位置又は方向を変える駆動部を備え、第2の光測定手段は、時間分割使用により、前記駆動部を介して、光源光のみを測定するように位置又は方向が設定され、2波長帯の内の1波長帯を使って光強度を測定する第1の光測定手段で代替し、前記時間分割使用時の時間波形測定装置でのタイミング1及びタイミング2は、それぞれが光源光の有する光強度時間変動パターンの各繰り返し単位内でタイミング1及びタイミング2であることを特徴とする請求項1に記載の放射温度測定装置。
【請求項3】
タイミング1と2とは、光源駆動回路を介して光源に通電されるステップ状に変化する交流駆動電流の極性ごとに同一周期で極性毎に極性が反転する重畳パルスを加えたときと、加えていないときとでそれぞれ選定されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射温度測定装置。
【請求項4】
タイミング1と2とは、光源駆動回路を介して光源に通電されるステップ状に変化する交流駆動電流の極性反転時に光源光の光強度が変動するときと、当該光強度変動のないときとでそれぞれ選定されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射温度測定装置。
【請求項5】
タイミング1及び2での前記光強度時間波形データ値はそのタイミングでの所定時間の測定値の平均値であることを特徴とする請求項3に記載の放射温度測定装置。
【請求項6】
光源の発光端温度を冷却する冷却手段と、前記光源の発光端の温度を測定する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放射温度測定装置と、この放射温度測定装置による前記発光端の温度測定結果を入力し、その測定結果に基づき、前記冷却手段の動作を制御する温度制御手段とを備えた光源温度制御装置。
【請求項7】
光源と、画像表示素子と、前記光源からの光源光を前記画像表示素子に照射して前記画像表示素子上の画像を所定位置に投影する画像投影光学系とを備えた画像投影装置において、請求項6に記載の光源温度制御装置を備えたことを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
所定の繰り返し光強度時間変動パターンを有する光源光の発光端から放射される波長帯λ1及び波長帯λ2の光の強度を、光測定手段が、繰り返し光強度時間変動パターンに基づくタイミング1で測定し、その結果a(λ1)、a(λ2)を求める第1のステップと、前記光測定手段が、前記第1のステップと熱輻射条件が同じと見なせる時間幅内にあり、前記光源の繰り返し光強度時間変動パターンに基づき、前記タイミング1に対応する光強度に対して所定時間増加又は減少する光強度に対応するタイミング2で、前記発光端から放射される波長帯λ1及び波長帯λ2の光の強度を測定し、その結果b(λ1)、b(λ2)を求める第2のステップと、前記光測定手段若しくは他の光測定手段が、前記第1のステップと熱輻射条件が同じと見なせる時間幅内にあり、前記光源の繰り返し光強度時間変動パターンに基づく前記タイミング1及び前記タイミング2で、光源光のみを測定し、その結果a0、b0を求める第2のステップと、温度算定手段が、前記測定結果a(λ1)、a(λ2)、b(λ1)、b(λ2)、a0及びb0を入力し、次式により波長帯λ1、λ2での熱輻射光測定値の強度比Rを求め、
R=I1/I2
I1=a(λ1)−a0×(b(λ1)−a(λ1))/(b0−a0)
I2=a(λ2)−a0×(b(λ2)−a(λ2))/(b0−a0)
前記算定した強度比Rに基づき、保持している強度比Rと温度との関係を示すデータを参照して光源発光端温度を求める第3のステップとからなる放射温度測定方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−70150(P2008−70150A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246773(P2006−246773)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】