説明

放射線像変換パネルおよびその製造方法

【課題】 優れた防湿性を有する放射線像変換パネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】
支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルであって、少なくとも前記蛍光体層の非積層面側に金属を含有する金属含有層を少なくとも1層含むコーティング層が形成されていることを特徴とする放射線像変換パネルである。また、支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体層の非積層面側に金属を含有する金属含有層を、CVD法により形成するCVD工程を少なくとも含むことを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
輝尽性蛍光体を利用する放射線像変換方法に用いられる放射線像変換パネルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用途のイメージングプレート(IP)は、取り扱い上の傷やある程度の水滴付着等に対し、十分な耐久性を有することが必要とされる。このような耐久性を有する歯科用途のイメージングプレートについては、これまで種々の研究がなされてきた。
【0003】
特に水滴付着等による劣化を防止するために、輝尽性蛍光体シートのエッジ部と該エッジ部近傍の支持体トレー表面部位とが封止部材でされた放射線像変換パネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、側面が接着樹脂層およびシクロオレフィンコポリマー層によりこの順に被覆された放射線像変換パネルが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、いずれの場合も、有機高分子の主鎖、側鎖の熱運動等に起因する樹脂特有の比較的高い透湿性のためのため、未だ防湿性については十分とはいえない。また、防湿性不足を補うため、封止厚をアップすることによる画像領域狭小化等の弊害もある。
【特許文献1】特開2004−12413号公報
【特許文献2】特開2004−294173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、優れた防湿性を有する放射線像変換パネルおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルであって、少なくとも前記蛍光体層の非積層面側に、金属を含有する金属含有層を少なくとも1層含むコーティング層が形成されていることを特徴とする放射線像変換パネルである。
【0007】
本発明の放射線像変換パネルは、下記第1〜第5の態様のうち少なくとも1の態様を具備することが好ましい。
【0008】
(1)第1の態様は、前記金属含有層が、金属酸化物および金属窒化物の少なくともいずれかを含む態様である。
(2)第2の態様は、前記金属含有層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素および酸化アルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含む態様である。
(3)第3の態様は、前記コーティング層が前記金属含有層と樹脂層とを含み、前記非積層面側から前記樹脂層と前記金属含有層とが順次形成されている態様である。
(4)第4の態様は、前記金属含有層が、CVD法により形成される態様である。
(5)第5の態様は、前記CVD法が、プラズマCVD法である態様である。
【0009】
また、本発明は、支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルの製造方法であって、前記蛍光体層の非積層面側に金属を含有する金属含有層を、CVD法により形成するCVD工程を、少なくとも含むことを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法である。当該CVD工程においては、前記非積層面側全体に前記金属含有層を同時に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた防湿性を有する放射線像変換パネルおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[放射線像変換パネル]
図1に、本発明の放射線像変換パネルの層構成を例示する部分断面図を示す。図1に示すように、本発明の放射線像変換パネルは、支持体10上に蛍光体層12と保護層14とが順次形成されている。そして、蛍光体層12の非積層面である側面に樹脂層20Aと金属含有層20Bとからなるコーティング層20が形成されている。樹脂層20Aだけでは十分な防水性能が得られないが、金属含有層20Bを設けることで、欠陥の少ない緻密な膜となり高い防水効果を発揮することができる。なお、金属含有層20Bだけでも十分な防水効果が得られる。
【0012】
化学的、物理的安定性、膜の緻密性等の観点から、金属含有層20Bは金属酸化物および金属窒化物の少なくともいずれかであることが好ましい。なお、本発明において、金属含有層20Bの金属としては、Siを含むものとする。
【0013】
上記金属酸化物および金属窒化物としては、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化窒化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素および酸化アルミニウム等が挙げられる。なかでも、膜の緻密性、コスト等の観点から、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素および酸化アルミニウムのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
金属含有層20Bの平均厚みは、0.001〜1.0μmであることが好ましく、0.01〜0.5μmであることがより好ましい。金属含有層20Bは、コーティング層20中で2層以上形成してもよいが、その場合は、合計の平均厚みが上記範囲にあることが好ましい。
【0015】
金属含有層20Bが、緻密な膜を形成する観点から、CVD法により形成されることが好ましく、特にプラズマCVD法により形成されることが好ましい。なお、CVD法の詳細については、後述する。
【0016】
コーティング層20中の樹脂層20Aは任意の層ではあるが、金属含有層20Bを形成しやすくし、密着性を向上させるために設けることが好ましい。樹脂層20Aの平均厚みは、0.1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。樹脂層20Aは、コーティング層20中で2層以上形成してもよいが、その場合は、合計の平均厚みが上記範囲にあることが好ましい。
【0017】
樹脂層20Aとしては、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、これらの共重合体等が挙げられる。
【0018】
コーティング層が形成される領域としては、少なくとも蛍光体層の非積層面側(特に、非積層面)であるが、ここでいう「蛍光体層の非積層面」とは、図1の場合のように蛍光体層上に層が形成されていない面、すなわち側面をいう。また、蛍光体層上に保護層が形成されていない場合には、側面および支持体が形成されている面とは反対側の面(上面)をいう。
【0019】
以下、本発明の放射線像変換パネルを構成する各層の材料などについて説明する。
【0020】
(支持体)
支持体は、PET、ポリシクロオレフィン、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PVA(ポリビニルアルコール)、PETとPEI(ポリエーテルイミド)のナノアロイポリマー、透明アラミド等の材料からなるものが好適に用いられる。特に、ガラス転移温度(Tg)が85℃以上、好ましくは100℃以上の基材であることが望ましく、85℃以上のガラス転移温度を有するポリシクロオレフィン、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PVA(ポリビニルアルコール)、PETとPEI(ポリエーテルイミド)のナノアロイポリマー、透明アラミド等の材料からなるものが好ましい。さらに、100℃以上のガラス転移温度を有するポリシクロオレフィン、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PETとPEI(ポリエーテルイミド)のナノアロイポリマー、透明アラミド等の材料からなるものがより好ましい。
【0021】
(蛍光体層)
蛍光体層に用いられる輝尽性蛍光体の例としては、特公平7−84588号等に記載されている一般式(M1-f・MfI)X・bMIIIX3’’:cA(一般式(I)で表される輝尽性蛍光体が好ましい。輝尽発光輝度の点から一般式(I)におけるMIとしては、Rb,Csおよび/またはCsを含有したNa、同Kが好ましく、特にRbおよびCsから選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属が好ましい。MIIIとしてはY,La,Lu,Al,GaおよびInから選ばれる少なくとも一種の三価金属が好ましい。X’’としては、F,ClおよびBrから選ばれる少なくとも一種のハロゲンが好ましい。MIIIX3’’の含有率を表すb値は0≦b≦10-2の範囲から選ばれるのが好ましい。
【0022】
一般式(I)において、賦活剤AとしてはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Ho,Gd,Sm,TlおよびNaから選ばれる少なくとも一種の金属が好ましく、特にEu,Ce,Sm,TlおよびNaから選ばれる少なくとも一種の金属が好ましい。また、賦活剤の量を表すC値は10-6<C<0.1の範囲から選ばれるのが輝尽発光輝度の点から好ましい。
【0023】
また、さらに以下の輝尽性蛍光体も用いることができる。米国特許第3,859,527号明細書に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、ThO2:Er、およびLa22S:Eu,Sm、
【0024】
特開昭55−12142号公報に記載されているZnS:Cu,Pb、BaO・xAl23:Eu(ただし、0.8≦x≦10)、および、MIIO・xSiO2:A(ただし、MIIはMg,Ca,Sr,Zn,Cd、またはBaであり、AはCe,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,BiまたはMnであり、xは0.5≦x≦2.5である)、
【0025】
特開昭55−12143号公報に記載されている(Ba1-x-y,MgX,Cay)FX:aEu2+(ただし、XはClおよびBrのうちの少なくとも一種であり、xおよびyは、0<x+y≦0.6、かつxy≠0であり、aは、10-6≦a≦5×10-2である)、
【0026】
特開昭55−12144号公報に記載されているLnOX:xA(ただし、LnはLa,Y,Gd、およびLuのうちの少なくとも一種、XはClおよびBrのうちの少なくとも一種、AはCeおよびTbのうちの少なくとも一種、そして、xは、0<x<0.1である)、
【0027】
特開昭55−12145号公報に記載されている(Ba1-X,M2+X)FX:yA(ただし、MはMg,Ca,Sr,Zn、およびCdのうちの少なくとも一種、XはCl,BrおよびIのうちの少なくとも一種、AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,YbおよびErのうちの少なくとも一種、そしてxは0≦x≦0.6、yは0≦y≦0.2である)、
【0028】
特開昭55−160078号公報に記載されているMIIFX・xA:yLn(ただし、MIIはBa,Ca,Sr,Mg,ZnおよびCdのうちの少なくとも一種、AはBeO,MgO,CaO,SrO,BaO,ZnO,Al23,Y23,La23,In23,SiO2,TiO2,ZrO2,GeO2,SnO2,Nb25,Ta25およびThO2のうちの少なくとも一種、LnはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,SmおよびGdのうちの少なくとも一種、XはCl,BrおよびIのうちの少なくとも一種であり、xおよびyはそれぞれ5×10-5≦x≦0.5、および0<y≦0.2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0029】
特開昭56−116777号公報に記載されている(Ba1-x,MIIx)F2・aBaX2:yEu,zA(ただし、MIIはベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,亜鉛およびカドミウムのうちの少なくとも一種、Xは塩素,臭素およびヨウ素のうちの少なくとも一種、Aはジルコニウムおよびスカンジウムのうちの少なくとも一種であり、a、x、y、およびzはそれぞれ0.5≦a≦1.25、0≦x≦1、10-6≦y≦2×10-1、および0<z≦10-2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0030】
特開昭57−23673号公報に記載されている(Ba1-x,MIIx)F2・aBaX2:yEu,zB(ただし、MIIはベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,亜鉛およびカドミウムのうちの少なくとも一種、Xは塩素,臭素およびヨウ素のうちの少なくとも一種であり、a、x、y、およびzはそれぞれ0.5≦a≦1.25、0≦x≦1、10-6≦y≦2×10-1、および0<z≦10-2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0031】
特開昭57−23675号公報に記載されている(Ba1-x,MIIx)F2・aBaX2:yEu,zA(ただし、MIIはベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,亜鉛およびカドミウムのうちの少なくとも一種、Xは塩素,臭素およびヨウ素のうちの少なくとも一種、Aは砒素および硅素のうちの少なくとも一種であり、a、x、y、およびzはそれぞれ0.5≦a≦1.25、0≦x≦1、10-6≦y≦2×10-1、および0<z≦5×10-1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0032】
特開昭58−69281号公報に記載されているMIIIOX:xCe(ただし、MIIIはPr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、XはClおよびBrのうちのいずれか一方あるいはその両方であり、xは0<x<0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0033】
特開昭58−206678号公報に記載されているBa1-XX/2X/2X:yEu2+(ただし、MはLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表わし;Lは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属を表わし;Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表わし;そして、xは10-2≦x≦0.5、yは0<y≦0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0034】
特開昭59−27980号公報に記載のBaFX・xA:yEu2+(ただし、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;Aはテトラフルオロホウ酸化合物の焼成物であり;そして、xは10-6≦x≦0.1、yは0<y≦0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0035】
特開昭59−47289号公報に記載されているBaFX・xA:yEu2+(ただし、Xは、Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;Aは、ヘキサフルオロケイ酸,ヘキサフルオロチタン酸およびヘキサフルオロジルコニウム酸の一価もしくは二価金属の塩からなるヘキサフルオロ化合物群より選ばれる少なくとも一種の化合物の焼成物であり;そして、xは10-6≦x≦0.1、yは0<y≦0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0036】
特開昭59−56479号公報に記載されているBaFX・xNaX’:aEu2+(ただし、XおよびX’は、それぞれCl、Br、およびIのうちの少なくとも一種であり、xおよびaはそれぞれ0<x≦2、および0<a≦0.2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0037】
特開昭59−56480号公報に記載されているMIIFX・xNaX’:yEu2+:zA(ただし、MIIは、Ba,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX’は、それぞれCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;Aは、V,Cr,Mn,Fe,CoおよびNiより選ばれる少なくとも一種の遷移金属であり;そして、xは0<x≦2、yは0<y≦0.2、およびzは0<z≦10-2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0038】
特開昭59−75200号公報に記載されているMIIFX・aMIX’・bM’IIX’’2・cMIII3・xA:yEu2+(ただし、MIIはBa,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;MIはLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;M’IIはBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり;MIIIはAl,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;Aは金属酸化物であり;XはCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;X’,X’’およびXは、F,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そして、aは0≦a≦2、bは0≦b≦10-2、cは0≦c≦10-2、かつa+b+c≧10-6であり;xは0<x≦0.5、yは0<y≦0.2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0039】
特開昭60−84381号公報に記載されているMII2・aMIIX’2:xEu2+(ただし、MIIはBa,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;XおよびX’はCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであって、かつX≠X’であり;そしてaは0.1≦a≦10.0、xは0<x≦0.2である)の組成式で表わされる輝尽性蛍光体、
【0040】
特開昭60−101173号公報に記載されているMIIFX・aMIX’:xEu2+(ただし、MIIはBa,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;MIはRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;X’はF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてaおよびxはそれぞれ0≦a≦4.0および0<x≦0.2である)の組成式で表わされる輝尽性蛍光体、
【0041】
特開昭62−25189号公報に記載されているMIX:xBi(ただし、MIはRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;XはCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そしてxは0<x≦0.2の範囲の数値である)の組成式で表わされる輝尽性蛍光体、
【0042】
特開平2−229882号公報に記載のLnOX:xCe(但し、LnはLa,Y,GdおよびLuのうちの少なくとも一つ、XはCl,BrおよびIのうちの少なくとも一つ、xは0<x≦0.2であり、LnとXとの比率が原子比で0.500<X/Ln≦0.998であり、かつ輝尽性励起スペクトルの極大波長λが550nm<λ<700nm)で表わされるセリウム賦活希土類オキシハロゲン化物蛍光体、
などをあげることができる。
【0043】
また、上記特開昭60−84381号公報に記載されているMII2・aMIIX’2:xEu2+輝尽性蛍光体には、以下に示すような添加物が含まれていてもよい。
【0044】
すなわち、特開昭60−166379号公報に記載されているbMIX’’(ただし、MIはRbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、X’’はF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、そしてbは0<b≦10.0である);特開昭60−221483号公報に記載されているbKX’’・cMgX2・dMIIIX’3(ただし、MIIIはSc,Y,La,GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X’’、XおよびX’はいずれもF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、そしてb、cおよびdはそれぞれ、0≦b≦2.0、0≦c≦2.0、0≦d≦2.0であって、かつ2×10-5≦b+c+dである);特開昭60−228592号公報に記載されているyB(ただし、yは2×10-4≦y≦2×10-1である);特開昭60−228593号公報に記載されているbA(ただし、AはSiO2およびP25からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物であり、そしてbは10-4≦b≦2×10-1である);特開昭61−120883号公報に記載されているbSiO(ただし、bは0<b≦3×10-2である);特開昭61−120885号公報に記載されているbSnX’’2(ただし、X’’はF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、そしてbは0<b≦10-3である);特開昭61−235486号公報に記載されているbCsX’’・cSnX2(ただし、X’’およびXはそれぞれF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、そしてbおよびcはそれぞれ、0<b≦10.0および10-6≦c≦2×10-2である);および特開昭61−235487号公報に記載されているbCsX’’・yLn3+(ただし、X’’はF,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、LnはSc,Y,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素であり、そしてbおよびyはそれぞれ、0<b≦10.0および10-6≦y≦1.8×10-1である)。
【0045】
上記の輝尽性蛍光体のうちで、二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体(例えばBaFI:Eu)ユーロピウム賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体(例えばCsBr:Eu)、ヨウ素を含有する二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、ヨウ素を含有する希土類元素賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体、およびヨウ素を含有するビスマス賦活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示すことから好ましく用いることができる。
【0046】
(保護層および裏面層)
蛍光体層の上に形成される保護層は、セルロース誘導体やポリメチルメタクリレートなどのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、ポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に作製して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したもの、などが用いられる。
【0047】
また、有機溶媒可溶性のフッ素系樹脂の塗布膜により形成され、パーフルオロオレフィン樹脂粉末もしくはシリコーン樹脂粉末等の微粒子を分散、含有させた保護層であってもよい。
【0048】
蛍光体層が形成される側とは反対側の支持体上には、物理的、化学的耐久性、搬送性付与を目的として、裏面層が形成されることがある。裏面層の材料としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、金属(箔または粒子)、紙等が挙げられ、ラミネート、圧着、熱融着、塗布、蒸着等により形成することができる。
【0049】
(中間層)
中間層は、蛍光体層と支持体との密着性を良好のする接着層の役割を果たす層であり、適宜設けられる層である。中間層は、例えば、酢酸セルロース、ニトロセルロースなどのセルロース誘導体;あるいはポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル、ポリパラキシリレン、PET、塩酸ゴム、塩化ビニリデン共重合体等の合成高分子物質のような透明な高分子物質を用いることができる。中間層を形成するこれらの合成高分子物質はポリマーとして用いても、モノマーとして用いてもかまわないが、熱、可視光、UV光、電子線などの照射によって架橋するものであることが好ましい。
【0050】
中間層を支持体上に設ける場合、密着性を向上させるためにシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤等のカップリング剤を添加することが好ましい。さらに、中間層組成物の塗布性および硬化後の薄膜の物性の改善や、塗膜に対する感光性の付与等を目的として、例えば水酸基を有する種々のポリマーやモノマー、顔料または染料等の着色剤、黄変防止剤、老化防止剤や紫外線吸収剤等の安定化剤、熱酸発生剤、感光性酸発生剤、界面活性剤、溶剤、架橋剤、硬膜剤、重合禁止剤等の各種の添加剤を目的に応じて含有させることができる。
【0051】
また、中間層には、耐久性の向上、ニジムラを防止するため、有機または無機の粉末が含まれていてもよい。含有させる場合は、中間層重量当り0.5〜60重量%程度であることがより好ましい。粉末は特定の帯域に吸収を有するもの、例えば群青等や、概して300〜900nmの波長域で特異な吸収を示さない白色粉末が好ましい。これら粉末の体積平均粒径は0.01〜10μm程度が好ましく、0.3〜3μm程度がより好ましい。一般に、これら粒子の粒子サイズには分布があるが、分布が狭い方が好ましい。
【0052】
[放射線像変換パネルの製造方法]
本発明の放射線像変換パネルの製造方法は、前記蛍光体層の非積層面側に金属を含有する金属含有層を、CVD法により形成するCVD工程を少なくとも含む。本発明の放射線像変換パネルの製造方法は、上記CVD工程を含むものであれば特に限定されない。
【0053】
本発明の放射線像変換パネルの製造方法としては、例えば、支持体上に中間層を形成する中間層形成工程(当該工程は任意)と、仮支持体上に蛍光体材料を塗布し仮支持体から剥離することで蛍光体材料を含有する蛍光体シートを作製する蛍光体シート作製工程と、蛍光体シートを中間層上に貼り合わせて蛍光体層を形成する蛍光体層形成工程と、所望の大きさに裁断する裁断工程等を含む。そして、上記CVD工程は蛍光体層の非積層面側に金属含有層を設ける工程であるため、上記蛍光体シート作製工程、蛍光体層形成工程、または、裁断工程の後に設けられることが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0054】
(CVD工程)
CVD工程は、既述のように蛍光体層の非積層面側にCVD法により金属含有層を設ける工程である。CVD法は、塗布法やスパッタリング法に比べ、分子レベルの粒子が堆積されることによる層形成がなされるため、緻密な膜を形成することができる。CVD法としては、基板(支持体)の温度を上げて推積させる熱CVD法;化学反応や熱分解を促進させるために光を照射する光CVD法;ガスをプラズマ状態に励起するプラズマCVD法;等があるが、クラックやマイクロポアをより少なくしより緻密な膜を形成できるプラズマCVD法を適用することが好ましい。
【0055】
熱CVDにより金属含有層を形成する場合、その条件としては、下記の通りとすることが好ましい。すなわち、原料ガスの装置内への流入速度を10〜10000ml/min程度とし、装置内の圧力を1〜106Pa程度とすることが好ましい。原料ガスとしては、形成しようとする金属含有層の材料によるが、シラン、ジシラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、窒素、酸素等が挙げられる。装置内の支持体の温度は、50〜200℃とすることが好ましい。
【0056】
また、プラズマCVDにより金属含有層を形成する場合、その条件としては、下記の通りとすることが好ましい。すなわち、原料ガスの装置内への流入速度を10〜10000ml/min程度とし、装置内の圧力を1〜106Pa程度とすることが好ましい。原料ガスとしては、形成しようとする金属含有層の材料によるが、シラン、ジシラン、アンモニア、トリメチルアルミニウム、窒素、酸素等が挙げられる。装置内の支持体の温度は、0〜200℃とすることが好ましい。プラズマを発生させるには、周波数10-4〜10MHzの高周波電力を放電電極に投入することが好ましい。
【0057】
以上のようなCVD工程を経て形成された金属含有層は、ヒビ、ワレ、点状の欠陥が少なく、緻密な膜となっているため、防水性に非常に優れている。
【0058】
なお、金属含有層を形成する前に、少なくとも金属含有層を形成しようとする領域に樹脂層を形成することが好ましい。樹脂層の材料としては、既述の通りである。形成方法としては、ディップ法や刷毛およびスプレーなどを使用した塗布法など種々の方法を適用することができる。また、金属含有層を形成する場合、および、樹脂層を形成する場合は、適宜マスキングを行って、所望の領域のみに選択的に当該層を形成することができる。さらに、生産性を考慮すると、当該CVD工程においては、前記非積層面側全体に前記金属含有層を同時に形成することが好ましい。
【0059】
(中間層形成工程)
中間層形成工程は、支持体と蛍光体層との密着性を高めるために、支持体上に中間層を形成する工程である。形成方法としては、まず、支持体上に、中間層を形成するための中間層形成用分散液をドクターブレード、ナイフコーター、バーコーター法等の方法により塗布する。次に、50〜200℃で乾燥して、中間層を形成する。当該中間層の厚みは、1〜200μmであることが好ましい。
【0060】
中間層形成用分散液は、結合剤、可塑剤等を溶剤に溶解して調製することができる。結合剤としては、既述の高分子物質を用いることができる。可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリエステル可塑剤等が挙げられる。また、溶剤としては、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
【0061】
(蛍光体シート作製工程)
当該工程は、仮支持体上に輝尽性蛍光体材料からなる層を形成し仮支持体から剥離することで蛍光体材料を含有する蛍光体シートを作製する工程である。
【0062】
蛍光体層は、蒸着法、スパッタ法、塗布法など公知の方法により仮支持体上に形成することができる。
【0063】
蒸着法においては、まず仮支持体を蒸着装置内に設置した後、装置内を排気して10-4Pa程度の真空度とする。次いで、輝尽性蛍光体の少なくとも一つを抵抗加熱法、エレクトロンビーム法等の方法で加熱蒸発させて仮支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに堆積させる。蒸着工程を複数回に分けて蛍光体層を形成することも可能である。また、蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、仮支持体上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に蛍光体層を形成することもできる。蒸着終了後、蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0064】
スパッタ法においては、蒸着法と同様に仮支持体をスパッタ装置内に設置した後装置内を一旦排気して10-4Pa程度の真空度とし、次いでスパッタ用のガスとしてAr,Ne等の不活性ガスをスパッタ装置内に導入して10-1Pa程度のガス圧とする。次に、輝尽性蛍光体をターゲットとして、スパッタリングすることにより、仮支持体表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに堆積させる。スパッタ工程においても蒸着法と同様に、複数回に分けて蛍光体層を形成することも可能であるし、また、それぞれ異なった輝尽性蛍光体からなる複数のターゲットを用いて、同時あるいは順次、ターゲットをスパッタリングして蛍光体層を形成することも可能である。また、スパッタ法においては、必要に応じてO2、H2やハロゲン等のガスを導入して反応性スパッタを行ってもよい。スパッタ終了後、蛍光体層を加熱処理してもよい。
【0065】
塗布法においては、蛍光体を溶剤とともに充分に混合して結合剤溶液中に輝尽性蛍光体が均一に分散した塗布液を調製し、この塗布液を支持体の表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、たとえば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いることにより行うことができる。
【0066】
塗布法にて蛍光体層を形成する場合、当該蛍光体層には、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とを含有する。その他、蛍光体層中には着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。当該蛍光体層は、次のような公知の方法により仮支持体上に形成することができる。
【0067】
まず、輝尽性蛍光体と結合剤とを溶剤に加え、これを充分に混合して、結合剤溶液中に輝尽性蛍光体が均一に分散した塗布液を調製する。塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類などによって異なるが、一般には結合剤と輝尽性蛍光体との混合比(質量比)は、1:1〜1:100の範囲から選ばれ、特に1:8〜1:40の範囲から選ぶことが好ましい。
【0068】
なお、結合剤としては、ゼラチン等のたんぱく質;アラビアゴム等の天然高分子化合物;ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等の合成高分子物質;を挙げることができる。
【0069】
塗布液調製用の溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル;これら2以上の混合物;を挙げることができる。なお、必要に応じて、公知の分散剤、可塑剤、黄変防止剤等を含有させてもよい。
【0070】
蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なり、20μm〜1mm程度とするのが一般的であるが、50μm〜500μmとすることがより好ましい。なお、仮支持体としては、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等が少なくとも片面に付与された離型性を有するフイルム等を使用することができる。
【0071】
(蛍光体層形成工程)
当該工程は、蛍光体シートを中間層上に貼り合わせて蛍光体層を形成する工程である。貼り合わせの際には、圧力付与処理を施すことが好ましい。圧力を付与しながら貼り合わせることで、放射線像変換パネルの表面をより硬くすることが可能となる。圧力付与処理を伴う貼り合わせ方法としては、カレンダ処理による貼り合わせを適用することが好ましい。
【0072】
カレンダ処理を行う場合、圧力は、1〜100MPaとすることが好ましい。1〜100MPaとすることで、特性劣化を抑えながら密着強度を上げることができる。また、ロールの温度は、25〜200℃とすることが好ましい。25〜200℃とすることで、各層の変質を抑制しつつ密着強度を上げることができる。さらに、ロールの送り速度は、0.1〜100m/minであることが好ましい。0.1〜100m/minであることで、生産性と均一性を両立することができる。
【0073】
(裁断工程)
当該工程は、オス刃、メス刃により、打ち抜き処理を施して放射線像変換パネルの所望の形状にする工程である。
【0074】
以上のような工程のほかに、保護層を形成する工程など種々の工程を適宜設けることができる。また、支持体上への蛍光体層や保護層の形成方法としては、既述のような態様のほかに、順次層を形成する方法を適用してもよい。この場合、CVD工程は蛍光体層が形成された後に設けられることになる。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
(中間層形成工程)
結合剤として軟質アクリル樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、クリスコートP−1018GS(21%トルエン溶液))3400gと、可塑剤としてフタル酸エステル(大八化学(株)製、#10)120gと、をメチルエチルケトン3600g中に加えて混合し、ディスパーを用いて分散、溶解して、中間層形成用分散液(粘度0.6Pa・s(20℃))を調製した。
【0076】
この中間層形成用分散液を、支持体(カーボン練りこみポリエチレンテレフタレート(東レ(株)製 X−30、厚さ:188μm))上に均一に塗布して塗膜を形成し乾燥した。このようにして、層厚が20μmの中間層を形成した。
【0077】
(蛍光体シート作製工程)
蛍光体層となる蛍光体シートを下記のようにして作製した。まず、蛍光体シート形成用塗布液として、蛍光体(BaFBr0.850.15:Eu2+、メジアン径3.5μm)1000gと、結合剤であるポリウレタンエラストマー(大日本インキ化学工業(株)製、パンデックスT5265H(固形))36gと、架橋剤であるポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートHX(固形分100%))4gと、黄変防止剤であるエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)、#1001エピコート(固形))10gと、着色剤である群青(第一化成工業(株)、SM−1)2gと、をメチルエチルケトンと酢酸ブチルとの混合溶剤120g(メチルエチルケトン/酢酸ブチル(質量比)=6/4)に加え、ディスパーを用いて羽根回転速度2500rpmで1時間分散させて、粘度4.0Pa・s(25℃)の塗布液を調製した。なお、着色剤は予め樹脂が添加された溶媒中、ボールミルで分散されたものを使用した。
【0078】
この塗布液を仮支持体(シリコーン系離型材が塗布されたポリエチレンテレフタレート、厚み:180μm)上に均一に塗布し、乾燥した後、仮支持体から剥離して蛍光体シート(厚み150μm)を作製した。
【0079】
(蛍光体層形成工程)
続いて、蛍光体シートの仮支持体剥離面を中間層上にカレンダーロールを用いて圧力60MPa、ロール温度50℃、送り速度1.0m/minで連続的に圧縮操作を行い重ね合わせた。この加熱圧縮により、蛍光体シートは支持体上に中間層を介して完全に密着した状態となり、支持体上に蛍光体層が形成された。
【0080】
(裁断工程)
不飽和ポリエステル樹脂溶液(東洋紡績(株)製、パイロン30SS)を塗布し、乾燥して接着層(接着剤塗布量3g/m2)を形成した厚み25μmの延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「PPフィルム」という)を作製した。支持体の蛍光体層が形成されていない側の面と、PPフィルムの接着層とが接するように重ね合わせ、ラミネートロールを用いて両者を接着し裏面層を形成したシートを作製した。
【0081】
続いて、このシートを打抜刃(オス刃、メス刃)により適切なサイズ(3cm×3cmの正方形)に打抜いた。
【0082】
(CVD工程)
裁断後のシートの蛍光体層の非積層面(支持体と接触していない面)にコーティング層としての樹脂層をディップ法により形成した。樹脂層の形成に使用した樹脂はポリエステル樹脂で、層の平均厚みは3μmであった。次に、樹脂層表面に熱CVD法によりコーティング層としての金属含有層(SiON層、平均厚み0.2μm)を形成した。熱CVD法の処理条件は、下記の通りである。
【0083】
(1)原料ガスおよび流速・・・SiH4:100cc/min、NH3:600cc/min、酸素ガス微量
(2)装置内の圧力・・・105Pa
(3)温度・・・50℃
【0084】
以上のような工程を経て、実施例1に係る放射線像変換パネルを作製した。
【0085】
[実施例2]
実施例1と同様にして蛍光体層形成工程を経た後、下記のようにして蛍光体層上に保護層を形成した。すなわち、不飽和ポリエステル樹脂溶液(東洋紡績(株)製、パイロン30SS)を塗布し乾燥して接着層(接着剤塗布量2g/m2)を形成した厚み6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という)と、上記蛍光体層が形成された支持体と、を支持体の蛍光体層およびPETフィルムの接着層とが接するように重ね合わせ、ラミネートロールを用いて両者を接着し、さらにエンボスロールで処理することにより保護層を形成した。
【0086】
保護層を形成した後、実施例1と同様にして、裁断工程を経てシートを作製した。蛍光体層の非積層面(側面)に実施例1と同様にして樹脂層(但し、厚みは2μm)を形成した。その後、下記処理条件にて、誘導結合プラズマ装置によりプラズマを発生させながら、樹脂層上にプラズマCVD法で金属含有層(SiON層、平均厚み0.15μm)を形成した。
【0087】
(1)原料ガスおよび流速・・・SiH4:100cc/min、NH3:600cc/min、酸素ガス微量
(2)装置内の圧力・・・105Pa
(3)温度・・・50℃
【0088】
以上のような工程を経て、実施例2に係る放射線像変換パネルを作製した。
【0089】
[実施例3]
金属含有層上に、さらに、SiNからなる金属含有層(平均厚み0.2μm)をプラズマCVD法により形成した以外は、実施例2と同様にして放射線像変換パネルを作製した。なお、SiNからなる金属含有層の形成条件は、下記の通りである。
【0090】
(1)原料ガスおよび流速・・・SiH4:100cc/min、NH3:600cc/min
(2)装置内の圧力・・・105Pa
(3)温度・・・50℃
【0091】
[実施例4]
金属含有層上に、さらに、シリコーン樹脂からなる樹脂層(平均厚み μm)をディップ法により形成した以外は、実施例2と同様にして放射線像変換パネルを作製した。
【0092】
[実施例5]
実施例2と同様にして、保護層を形成した後、裁断工程を経てシートを作製した。その後、縁部から1mmの領域を残した保護層上に再剥離可能な粘着フィルムを貼り付けてマスキングを行った。この状態で、シートを真空蒸着装置(日本真空技術(株)社製)に装着した。当該装置を使ってDCマグネトロンスパッタリングによりコーティング層としての金属含有層(SiO2層、平均厚み100nm)を形成した。その後、マスキングのための粘着フィルムを剥がして放射線像変換パネルを作製した。
【0093】
[比較例1]
実施例1と同様にして、裁断工程を経てシートを作製した。蛍光体層の非積層面(支持体と接触していない面)にポリエステル樹脂をディップ法によりコーティングし平均厚さ3μmのポリエステル樹脂層を形成して放射線像変換パネルを作製した。
【0094】
[耐水テスト]
蒸留水を含んだろ紙(3.5cm×3.5cmの正方形)を、放射線像変換パネル表面を覆うように接触させた状態で袋に入れ密封した。30℃24時間放置後、放射線像変換パネル表面の水分を拭き取って乾燥させた後、10mRのX線を曝射した。放射線像変換パネル読取スキャナで曝射後の画像を読み取り、濃度1.2でフィルム出力した。フィルム出力後に、放射線像変換パネルの縁周囲に減感(ムラ)がまったく見られないものを「◎」とし、減感がごく僅かに見られるが実用上まったく問題ないものを「○」とし、減感が見られ実用上問題のあるものを「×」として評価した。結果を下記表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
表1より、比較例1では耐水性が低かったのに対し、実施例1〜5の放射線像変換パネルはいずれも耐水性が良好であった。すなわち、水滴付着等に対する耐久性に優れていることが確認できた。また、CVD法によりコーティング層を形成した実施例1〜4は、特に緻密な膜(具体的には、ヒビ、ワレ、点欠陥がすくない)が形成されていたため、実施例5の放射線像変換パネルよりも良好な防水性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の放射線像変換パネルの層構成を例示する部分断面図である。
【符号の説明】
【0098】
10・・・支持体
12・・・蛍光体層
14・・・保護層
20・・・コーティング層
20A・・・樹脂層
20B・・・金属含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルであって、
少なくとも前記蛍光体層の非積層面側に、金属を含有する金属含有層を少なくとも1層含むコーティング層が形成されていることを特徴とする放射線像変換パネル。
【請求項2】
前記金属含有層が、金属酸化物および金属窒化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の放射線像変換パネル。
【請求項3】
前記金属含有層が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素および酸化アルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項2に記載の放射線像変換パネル。
【請求項4】
前記コーティング層が前記金属含有層と樹脂層とを含み、前記非積層面側から前記樹脂層と前記金属含有層とが順次形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線像変換パネル。
【請求項5】
前記金属含有層が、CVD法により形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線像変換パネル。
【請求項6】
前記CVD法が、プラズマCVD法であることを特徴とする請求項5に記載の放射線像変換パネル。
【請求項7】
支持体上に少なくとも蛍光体層が積層された放射線像変換パネルの製造方法であって、
前記蛍光体層の非積層面側に金属を含有する金属含有層をCVD法により形成するCVD工程を、少なくとも含むことを特徴とする放射線像変換パネルの製造方法。
【請求項8】
前記非積層面側全体に前記金属含有層を同時に形成することを特徴とする請求項7に記載の放射線像変換パネルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−85797(P2007−85797A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272829(P2005−272829)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】