説明

放射線像貯蔵パネルの製造方法

【課題】
頻繁に再使用されるとき全寿命にわたってほぼ一定のスピードを有する蒸着された放射線像貯蔵燐光体パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】
放射線像貯蔵燐光体プレート又はパネルの製造方法であって、前記プレート又はパネルが貯蔵燐光体層を含み、放射線像貯蔵又は光刺激性燐光体が主成分としてのアルカリ金属ハロゲン化物塩及びドーパントとしてのランタノイドを有する燐光体である方法において、その製造後で顧客によって使用される前に、前記パネルが1〜10Gyの範囲の吸収されたX線量を得るためにその全表面積にわたってX線で均一に露光されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顧客に引き渡される準備の整った放射線像貯蔵パネルの製造方法に関し、前記パネルはランタノイドドープされたアルカリ金属ハロゲン化物型燐光体の結合剤のない蒸着された貯蔵燐光体層を与えられる。
【背景技術】
【0002】
燐光体の良く知られた用途はX線像の生成にある。従来の放射線写真システムでは、X線放射線写真は、X線を対象物に像に従って透過させ、それをいわゆる増感スクリーン(X線変換スクリーン)における対応する強度の光に変換することによって得られ、前記スクリーンでは、燐光体粒子は透過されたX線を吸収し、それらを可視光及び/又は紫外線に変換する。写真フィルムはX線の直接衝撃に対してより可視光及び/又は紫外線に対して敏感である。
【0003】
例えばUS−A 3859527に開示されているようなX線パターンを記録及び再生する別の方法によれば、パネルに混入される光刺激性燐光体として知られる特別なタイプの燐光体が使用され、それは入射パターンに従って変調されたX線ビームに露光され、その結果としてX線放射線パターンに含まれるエネルギーを一時的に貯蔵する。露光後、ある間隔で、可視又は赤外光のビームはパネルを走査して貯蔵されたエネルギーの光としての放出を刺激し、その光を検出して逐次電気信号に変換し、それを処理して可視像を生成することができる。この目的のため、燐光体は入射X線エネルギーをできるだけ多く貯蔵するべきであり、走査ビームによって刺激されるまで貯蔵されたエネルギーをできるだけ少なく放出するべきである。この像形成技術は「デジタル放射線写真」又は「コンピュータ放射線写真」と称される。
【0004】
二価EuをドープされたCsBrは針状結晶の形で生長されることができる特に有望なX線貯蔵燐光体である。基本特許US−A 6802991では、例えばEuBr,EuBr及びEuOBrからなる群から選択されたユウロピウム化合物とCsBrの混合物を450℃以上の温度に加熱し、物理蒸着、化学蒸着又は噴霧化技術からなる群から選択された方法によって支持体上に前記燐光体を蒸着することによる蒸着装置における蒸着によってかかる燐光体を製造するための方法が提供される。US−A 6730243では、CsBr:Eu燐光体を製造するための方法は、EuBr,EuBr及びEuOBrからなる群から選択されるユウロピウム化合物の10−3mol%〜5mol%とCsBrを混合し、その混合物を支持体上に蒸着し、結合剤のない燐光体スクリーンを形成し、前記燐光体スクリーンを室温に冷却し、前記燐光体スクリーンを80〜220℃の温度にもたらし、それをその温度で10分〜15時間維持する(アニール工程は燐光体スピードをさらに修正するために加えられる)工程を含む。EP−A 1443525に教示されているように、少なくとも10mJ/mmのエネルギーで150nm〜300nmの範囲の短い紫外線放射線を放出する放射線源からのエネルギーによる製造工程の少なくとも一つの間又はその後の放射線露光処理によってさらなる修正がなされることができる。
【0005】
スピード増加を最適化するためのスピードの修正は、US−A 6852357に教示されているように、気相中で支持体上に斜方晶系ユウロピウム活性化臭化セシウム燐光体結晶層を蒸着し、不活性ガス雰囲気又は少量の酸素もしくは水素を含有する不活性ガス雰囲気において1〜8時間、50℃以上、300℃未満の温度で結晶層を加熱することによってさらに提供される。US−A 2005/040340では、熱処理と称されるアニール工程は80℃〜300℃の温度で実施される。
【0006】
患者に与えられる有害なX線露光の減少のためにできるだけ低い線量を可能にするプレートを顧客に与えるためにできるだけ高いスピードを得ようとする試みが常にある。しかしながら、かかる貯蔵燐光体プレートが頻繁に再使用されている間、スピードの変化がその全表面積にわたるスピードの均一性及び時間の関数として見出されることが確立されている。例えばほとんど吸収しない患者の体が位置される境界のような、高い量のX線が捕獲される前記表面積の部位はスピードの大きな変化を受けるが、プレートの中央ではプレートの中央に位置する部位の吸収する患者の体の存在のおかげでスピードの変化は少なかった。それにもかかわらず、ユーザ時間に伴うスピード変化のそれらの差の結果として、プレートの表面積にわたるスピードの均一性も強く変化した。
【0007】
全体として均一に又は均等に露光されたプレートに対してであっても、スピードの顕著な変化は時間と累積露光線量の関数として実験的に観察された。かかる状況は顧客、即ち放射線医による頻繁な使用によってプレート又はパネルの寿命の関数としての状況を表すので、パネル上の部位ごとのスピードの変化及び前記パネルの表面積にわたるスピードの均一性を減らすためにさらなる研究が要求された。
【0008】
読み出し貯蔵燐光体プレート又はパネルのスピードを最適化するために利用可能な多くの技術にかかわらず、同じプレートがその寿命にわたって放射線写真用途で頻繁に再使用されるとき、時間の関数としてほぼ一定のスピード及び一定の不均一性を有するプレートを顧客に引き渡す永続的に続く要求がある。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は頻繁に再使用されるとき全寿命にわたってほぼ一定のスピードを有する蒸着された放射線像貯蔵燐光体パネルの製造方法を提供することであり、かかる一定のスピードは個々にとったパネルの表面積上の部位のほとんど全てにおいて期待されるだけでなく、全体としてとったパネルの表面積にわたっても期待され、それによって貯蔵燐光体パネルの全表面積にわたって再現可能なスピード均一性を表す。
【0010】
上述の有利な効果は請求項1に述べられているようにプレートを顧客に引き渡す前に製造中に特別な工程を適用することによって放射線像貯蔵燐光体パネルを製造するための方法を提供することによって実現される。本発明の好ましい実施態様の特別な特徴は従属請求項に述べられている。
【0011】
主成分としてのアルカリ金属ハロゲン化物塩及びドーパントとしてのランタノイドを有するタイプの貯蔵燐光体を燐光体層に含む放射線像貯蔵燐光体プレートの製造方法において、頻繁な再使用中にプレート又はパネルの全表面積にわたってスピードの変化及びスピード均一性の変化を「修正」するために、プレートは製造後に均一に露光されるべきであり、即ち一定の強度でかつその全表面積にわたって均一なエネルギー分布で、より好ましくは1〜10Gyの範囲のプレートによって吸収されるX線量で露光されるべきであることを予期せぬことに見出した。放射線像貯蔵燐光体プレート又はパネルの製造方法であって、前記プレート又はパネルが貯蔵燐光体層を含み、放射線像貯蔵又は光刺激性燐光体が主成分としてのアルカリ金属ハロゲン化物塩及びドーパントとしてのランタノイドを有する燐光体である方法は、その製造後及び顧客によって使用される前に、前記パネルが1〜10Gyの範囲の吸収されたX線量を得るためにその全表面積にわたってX線で均一に露光されることを特徴とする。
【0012】
本発明による燐光体パネルの製造方法における特別な実施態様は以下の通りである:
− 前記吸収された線量は2〜6Gyの範囲、さらにより好ましくは2〜3Gyの範囲にあるべきであり、X線はRQA5に従うビーム質を有する;
− 前記放射線像貯蔵燐光体は主成分としてのアルカリ金属ハロゲン化物塩及びドーパントとしてのランタノイドを有する燐光体であり、特に放射線像貯蔵燐光体はCsBr:Eu燐光体であり、その製造方法は以下に記載される。
【0013】
本発明のさらなる利点及び特別な実施態様は以下の記載から明らかであるが、本発明はそれらに限定されない。
【0014】
用語「フラットフィールド(flat field)」は、「均一に露光される」、即ち「ファントム」を避けるために均一なエネルギー分布でかつ一定の強度で露光される、こととして理解されるべきである。標準的な手順では、RQA5(International Electrotechnical Commission−IEC61267:1994)ビーム質がそのために使用される。
【0015】
図1A及びBはそれぞれ、プレートによって吸収される累積X線量(前記線量はkR(キロレントゲン)で与えられる)(図1A参照)及びGy(1J/kgと等価な吸収された線量の単位として知られる「グレイ」)(図1B参照)の関数として正規化された感度(百分率で与えられる)を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によれば、放射線像貯蔵燐光体プレートの製造方法が提供され、そこでは前記プレートを顧客に引き渡す前の最後の製造工程において、プレートは均一に露光され、即ち一定の強度でかつその全表面積にわたって均一なエネルギー分布で、前記燐光体プレートによって吸収されるような1〜10Gyの範囲のX線量で露光される。
【0017】
本発明の方法の特別は実施態様では、実際に適用されるような吸収される線量は2〜6Gyの範囲であり、さらに好ましくは前記線量は2〜3Gyの範囲であり、X線はRQAに従うビーム質を有する。
【0018】
特に、本発明の方法によれば、前記X線量は、参照としてここに組み入れられるInternational Electrotechnical Commission−IEC61267:1994のRQA5に従うビーム質を有する。
【0019】
続く露光の結果として特にCsBr:Eu燐光体プレートに与えられた蓄積線量はスピードの変化を生じる傾向を有すること、約5Gyの全線量まで、特に600レントゲン又は5.2Gyの累積線量までのスピードの増加を得る傾向があること、その後同じプレートが増大するX線量をさらに得るにつれてスピードが減少することが実験的に確立されている。前記スピード増加は約13%の範囲である。
【0020】
顧客としての放射線医が約1000レントゲンの全累積線量を吸収するまで(即ち、約8Gyの全吸収線量まで)かかるプレートを使用することを考慮すると、最後の工程として「スピード修正工程」を与えることによって製造中に貯蔵燐光体プレート又はパネルを作ることが正当化され、「フラットフィールド(flat field)」露光は1〜10Gyの範囲のX線量で与えられる。
【0021】
「フラットフィールド」露光が約300レントゲン、即ち2.6GyのX線量で与えられる特定の場合において、1300レントゲンの累積線量までの全寿命サイクルが期待されることができ、そこでは有利な効果として5%未満のスピードの変化が前記全寿命サイクルにわたって観察される。もし製造の終わりのかかる「予備処理露光」(有効な使用前の放射線露光処理)がプレート又はパネルに与えられないなら、5%より大きいスピードの変化、以下の実施例から明らかなように少なくとも13%の変化が予想されることができる。
【0022】
放射線像燐光体又はシンチレータパネルはマトリックス成分及び活性化剤から構成される蒸着針状燐光体結晶を含む燐光体層を有することが有利である。前記マトリックス化合物は下記式(I)によって最も一般的に表される:
X.aMX′.bMX′′ (I)
式中、MはLi,Na,K,Rb及びCsからなる群から選択されるアルカリ金属を表し、
はBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiからなる群から選択される二価金属を表し、
はSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInからなる群から選択される三価金属を表し、
X,X′及びX′′は各々、F,Cl,Br,及びIからなる群から選択されるハロゲンを表し、a及びbは各々、0≦a<0.5及び0≦b<0.5を表す。
【0023】
マトリックス成分として使用するために好適な原材料は好ましくはアルカリハロゲン化物塩マトリックス成分であり、より好ましくは前記アルカリハロゲン化物塩はCsXであり、XはCl,Br,I又はそれらの組み合わせを表す。
【0024】
活性化剤成分はEu,Tb,Bi,In,Ga,Cs,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu及びMgからなる群から選択される元素を活性化剤要素として有する成分であることが好ましい。
【0025】
その特別な実施態様では、前記蒸着針状燐光体は例えばUS−A 6802991(それは参考としてここに組み入れられる)に記載されたような光刺激性CsBr:Eu燐光体である。
【0026】
本発明による方法では、前記CsBr:Eu燐光体はアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrとランタノイドドーパント塩としてのEuX,EuX,EuOX又はEuX(但し、2<z<3,XはBr,Cl又はそれらの組み合わせの一つである)とを混合することによって製造されることが有利である。
【0027】
本発明による別の実施態様では、前記CsBr:Eu燐光体はアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrとEuX,EuX,EuOX又はEuX(但し、2<z<3,XはBr,Cl又はそれらの組み合わせの一つである)からなる群から選択されるユウロピウム化合物の10−3〜5mol%とを混合し、その混合物を450℃以上の温度で燃焼し、前記混合物を冷却し、CsBr:Eu燐光体を回収することによって製造されることが有利である。
【0028】
本発明によるさらに別の実施態様によれば、前記CsBr:Eu燐光体はアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrと、式CsEuX′x+αy(但し、x/y>0.25,α≧2,X′はCl,Br及びI及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるハロゲン化物である)によるランタノイドドーパント塩とアルカリ金属ハロゲン化物塩の組み合わせとを混合することによって製造されることが有利である。
【0029】
本発明の方法によれば、前記CsBr:Eu燐光体スクリーンは物理蒸着、熱蒸着、化学蒸着、高周波蒸着及びパルス化レーザ蒸着からなる群から選択される方法によって支持体上に前記燐光体を適用することによって得られる。
【0030】
結合剤のない層に配置された針状燐光体は蒸着法によって製造される。蒸着法の例として、物理蒸着法(PVD)、スパッタリング法、化学蒸着法(CVD)、及びイオンプレーティング法のような蒸着技術及び電子線蒸着のような噴霧化技術が特に良く知られている。放射線像貯蔵パネルを製造する方法では、前記燐光体層は物理蒸着、化学蒸着及び噴霧化技術からなる群から選択された技術によって支持体上に被覆される。噴霧化技術として、例えばUS−A 6740897及び6875990、及びUS出願2002/050570,2004/075062及び2004/149931(それらは参考としてここに組み入れられる)に記載されているような電子線蒸着が使用されることができる。電子線蒸着技術では、電子銃によって生成された電子線は蒸発源上に適用され、電子線の加速電圧は1.5kV〜5.0kVの範囲である。電子線技術を適用することによって、マトリックス成分及び活性化剤要素からなる蒸発源は加熱、蒸発されて支持体上に付着される。抵抗加熱、スパッタリング及びRF誘導技術の如き物理蒸着技術は本発明の燐光体層における結合剤のない針状結晶の蒸着に使用するために特に好適である。抵抗加熱蒸着は例えばUS−A 6720026,6730243及び6802991及びUS出願2001/007352(それらは参考としてここに組み入れられる)に記載されているように適用されることが有利でありうる。この技術は本発明によるパネルのために針状の結合剤のない貯蔵燐光体を蒸着するための方法として推奨される。抵抗加熱蒸着では、蒸発源は電気エネルギーを抵抗加熱手段、好ましくは耐火材料から構成されたるつぼ又はボート構成に供給することによって加熱される。蒸着装置では、蒸着燐光体材料の均一な蒸着を実際に実現するために、例えばUS出願2005/000411,2005/000447及び2005/217567(それらは参考としてここに組み入れられる)に開示されたように適用されてもよい。
【0031】
高温での燐光体層の蒸着は好ましくは60%〜90%の範囲の高い燐光体充填密度を与える方法として実施される。前記蒸着法は選択された原材料を加熱することによって低い圧力下で蒸着室で実施されることが有利である。US−A 6802991に記載されているように支持体上のユウロピウムドープされたハロゲン化セシウム燐光体の蒸着は物理蒸着、化学蒸着又は噴霧化技術、例えば電子線蒸着又はプラズマ化学蒸着からなる群から選択される方法によって実施される。蒸気圧(例えばUS−A 2005/0077478のように0.05〜10Paの範囲の中程度の真空下で又は例えばUS−A 2004/149929のようにアルゴン又は窒素のような不活性ガスの存在下で0.3〜3Paの範囲の圧力で又はUS−A 6802991のように0.01Pa未満の圧力で)を制御し、そしてUS−A 6802991のように、さらに蒸気流が支持体上への蒸発燐光体の付着を起こす前に支持体が冷却されるUS−A 6720026に述べられているように支持体温度を制御することに加えて、蒸発源はUS−A 2003/113580に述べられているように、0.5重量%以下の含水量を有することが推奨される。本発明のような蒸着装置における蒸着は予め決められた程度の真空度の調整を必要とする。本発明によるパネルにおける結合剤のない針状貯蔵燐光体層に対して、高い真空下での前記燐光体の形成が望ましい。1×10−5〜5Paの真空度、特に1×10−2〜2Paの真空度が望ましく、そこではAr又はNe貴ガスの如き不活性ガス、あるいは窒素ガスの如き不活性ガスが真空蒸着装置中に導入されてもよい。1×10−5〜1×10−2Paのさらに低い内部圧力を与えるための排気が電子線蒸着のために好ましい。酸素又は水素ガスの導入は特に反応性を高めるため及び/又は例えばアニール工程で実施されることが有利でありうる。さらに、不活性ガスの導入はUS−A 6720026(それは参考としてここに組み入れられる)に開示されているように燐光体蒸発原材料が蒸着される支持体及び/又はチタン(合金)支持体上への蒸着前に蒸気流を冷却するために実施されることができる。あるいは、支持体の一方の側は加熱されてもよいが、他方の側はUS−A 7029836(それは参考としてここに組み入れられる)に開示されているように蒸着を実施しながら冷却されてもよい。
【0032】
蒸着手順が完了した後、蒸着された層は熱処理又はアニール手順を受けることが好ましく、それは少量の酸素ガス又は水素ガスを含有しうる不活性ガス雰囲気下で一般に100〜300℃の温度で0.5〜3時間、好ましくは150〜250℃の温度で0.5〜2時間実施される。アニール手順はUS−A 6730243,6815692及び6852357又はUS出願2004/0131767,2004/0188634,2005/0040340及び2005/0077477(それらは参考としてここに組み入れられる)に記載されているように適用されてもよい。
【0033】
本発明によるスクリーン又はパネルでは前記燐光体はCR技術に適用されるような光刺激性燐光体である。光刺激性スクリーン又はパネルはいわゆる「NIP」スクリーンとも称される「針状結晶像燐光体」プレート(好ましくはCsBr:Eu針状結晶を蒸着によって被覆される)として被覆される。結合剤のない層に存在する前記針状結晶は、蒸着が適用された支持体から剥離されてもよく、所望により針状結晶の長さ(通常、100〜1000μmの範囲)を減らすために微粉砕され、結合剤に分散された後に被覆され、「疑似PIP」スクリーン(即ち、結合剤に前記(微粉砕された)燐光体を分散することによって結合剤のない燐光体から作られた粉末像燐光体プレート)を形成してもよい。
【0034】
本発明による層形成配合物を硬化する方法では、硬化は紫外線によって又は電子線硬化によって行う。
【0035】
さらに、本発明による方法では、硬化は紫外線によって又は電子線硬化によって行う。特に、硬化は支持体上に存在する燐光体層又はシンチレータ層上に保護被覆として前記層形成配合物を被覆した後に乾燥して行う。
【0036】
本発明による方法では、前記被覆はドクターブレードコーティング又はバーコーティングによって実施される。
【0037】
燐光体又はシンチレータスクリーン、プレート又はパネルの層配置のための実施態様は以下から選択される。
【0038】
一つの側面では、スクリーン又はパネルの層配置は通常、支持体層上に被覆されるとき、支持体と燐光体層の間に中間層があり(例えばUS−A 2004/0051441及びUS−A 2004/0051438に開示されているようなパリレン又は別の例えばUS−A 6927404のような染料含有層)、かかるパリレン層はUS−A 6822243に記載されているように又はUS−A 6710356のように燐光体層と最外保護層又はトップコートの間に存在させてもよい。二つの保護層の間の良好な接着はUS−A 2005/0067584に開示されているように燐酸エステル化合物を使用するとき有利に提供される。上述のパリレン層は環境の湿度に極めて敏感であるものとして知られるアルカリ金属ハロゲン化物シンチレータ又は燐光体を使用するとき十分に認識されるように、燐光体又はシンチレータを湿分から保護する層として適用されることが特に推奨される。このパラグラフで引用された文献の全ては参考としてここに組み入れられる。
【0039】
支持体は公知のいかなる支持体であることもできる。支持体は有機又は無機の性質のいかなる固体も使用することもでき、それはいかなる幾何学的形状、例えば箔、繊維(例えば炭素繊維補強樹脂(複数)、特に炭素繊維補強樹脂シートにおける炭素繊維の方向が互いに異なるように耐熱性樹脂を含浸されかつ一方向に配置された炭素繊維をそれぞれが含むシート(複数))をとることができ、粒子を使用することができる。無機非金属支持体として化学的に補強されたガラス又は結晶化ガラスを使用することができる。使用のために好適な無機金属支持体は例えばアルミニウム、チタン、鉛、鉄、銅、鋼、モリブデン、ベリリウムからなる金属支持体、アルミニウム、チタン、鉛、銅、ベリリウム、マンガン、タングステン、バナジウム及びシリコン酸化物からなる金属及び非金属酸化物の支持体である。有機支持体としてポリイミドシート、異なる組成のエポキシ化合物並びに熱可塑性及び熱硬化性化合物、ポリエーテル、ポリエステル及びポリカーボネート組成物を使用してもよいが、それらに限定されない。上述のような保護層ユニット又は配置を適用する前に洗浄及び脱脂に関するクリーニング手順に支持体を供することが推奨される。
【0040】
EP出願No.06118157及び06118158(ともに2006年7月31日に出願され、参考としてここに組み入れられる)のように機械的損傷及び有機クリーニング溶液に対する感受性を低下させたトップコートを適用することが有利でありうる。従って、ポリマー又はコポリマー及び(メタ)アクリレート型モノマーを含み、モノマー分子あたり一つより多い(メタ)アクリレート基及び前記モノマー中の(メタ)アクリレート基あたり少なくとも一つのエチレンオキシ基を有する光又は電子線硬化組成物は、支持体、貯蔵燐光体層及びセルロースエステルポリマーを含む最外トップコートを含む光刺激性燐光体スクリーンのトップコート層に使用するために特に好適である。あるいは、ポリマー又はコポリマー及び(メタ)アクリレート型モノマーを含み、モノマー分子あたり一つより多い(メタ)アクリレート基及び前記モノマー中の(メタ)アクリレート基あたり二つより多いエチレンオキシ基を有する光硬化性組成物もまた、貯蔵燐光体スクリーン又はパネルのためのトップコート層として使用するために特に好適である。トップコート層を有する貯蔵燐光体スクリーンが突き出るビーズを持つとき、ビーズがスキャナの機械的部品に接触しないこと、及び貯蔵パネルがスキャナにおける移動時に幾らかのよろめきを示すときであってもこの通りであることが重要である。それゆえビーズは本発明の貯蔵燐光体スクリーンにおいてスペーシング粒子として使用されるとき、0.5μm≦d50≦25μmのメジアン体積直径d50及び0.1≦d50/d50≦1.20のメジアン数直径d50を有することが好ましい。さらに、ビーズは前記ポリマービーズが0.25≦dv50/t≦4.0のメジアン体積直径dv50を有するように本発明の貯蔵パネル上の層Bの厚さtに適応されることが好ましい。
【0041】
本発明の燐光体パネルは自己支持パネル並びに支持体を含むパネルであることができる。この支持体は公知のいかなる支持体であることもできるが、スクリーンの所望の高い耐湿性に照らして、極めて低い水蒸気透過性を有する支持体が使用されることが好ましい。好ましい支持体はUS−A 6815095及びUS出願2003/0134087(それらは参考としてここに組み入れられる)に開示されているような支持体及び陽極酸化アルミニウムの支持体である。
【0042】
本発明の特別な実施態様では燐光体層の表面は燐光体層が支持体の縁に到達しないように支持体の表面より小さくてもよい。従って、燐光体層の主表面より大きい表面を持ち、従って燐光体層が支持体の一部分を自由にさせた支持体を有するパネルであって、層A及びトップコート層Bを含む保護層が燐光体層によって自由にさせた支持体の部分を少なくとも部分的に覆うパネルは、前に既に開示されているように本発明の特別な実施態様を表す。かかる構造の利点は、燐光体層の縁が装置の機械的部品に接触せず、従ってパネルの使用時、特にスキャナにおける移動時に容易に損傷されることが少ないことにある。この構成の別の利点は特別な縁補強が全く必要ないことである(但し、もし望むなら、さらなる縁補強も適用できる)。燐光体層の表面が支持体の表面より小さく、従って燐光体層が支持体の縁に到達しない燐光体パネルの構成は、本発明の特別な実施態様を表すが、かかる構成は公知の保護層で覆われた燐光体パネルの製造のために有益でありうる。
【0043】
支持体材料と燐光体層の間にパリレン層が存在する場合には、覆われた支持体の表面粗さは表面粗さの減少(好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下)につれて良好な滑らかさを示し、それはUS−A 2004/0051438に記載されているように小さな直径を有する針状結晶又は柱状結晶を蒸着するためであってもよく、それによって蒸着された光刺激性燐光体層の表面積の平方単位あたりの前記針状結晶の改良された充填密度及びUS−A 6967339(それは参考としてここに組み入れられる)に開示されているような柱状、針状又は円柱状燐光体で得られるような改良されたシャープネス又は解像度に導く。
【0044】
特別な実施態様では、前記燐光体が熱蒸着又は電子線蒸着による蒸着システムにおいて支持体上に蒸着されるとき、前記燐光体は結合剤のない燐光体であり、前記結合剤のない燐光体はCsX:Eu刺激性燐光体であり、XはBr及びClからなる群から選択されたハロゲン化物を表す。これらは例えばUS−A 6802991に開示されている。マトリックス化合物としてのCsX及びドーパントとしてのEuに加えて、不純物及びさらなる元素(不純物であるかどうかにかかわらず)を、US−A 2006/0076525に記載されるように燐光体組成物に存在させてもよい。かかる結合剤のないCsX:Eu刺激性燐光体層は針状燐光体結晶内の光学的な反射及び良好な吸収性のためシャープネスに特に有利である。前記針状結晶間に間隙が存在し、それはUS−A 6800362及びUS出願2003/0168611に述べたように規定された程度まで充填されてもよい。さらに、像シャープネスのために前記燐光体粒子はUS−A 6977385に記載されているようにナノ結晶色素で着色されてもよい。
【0045】
間隙によって分離された針状燐光体結晶を有するかかる燐光体層上に、極めて低い水透過性を有する層Aが付着されるとき、この層Aが化学蒸着されたパリレン層であることが好ましく、かかる層は針状結晶の表面を覆うだけでなく、針状結晶間の間隙も覆い、従って燐光体針状結晶の縁を湿度に対して完全に保護する。本発明の燐光体パネルはまた、例えばUS−A 5334842及びUS−A 5340661(ともに参考としてここに組み入れられる)に記載されたもののように縁補強を含んでもよい。
【実施例】
【0046】
本発明をその好ましい実施態様と関連して以下の実施例に記載するが、本発明をそれらの実施態様に限定することを意図しないことは理解されるだろう。
【0047】
原材料としてCsBrとEuOBrの混合物を出発材料として有するるつぼの抵抗加熱によって、真空室において可撓性のクロム封止された陽極酸化アルミニウムプレート上に蒸着工程によってCsBr:Eu光刺激性燐光体スクリーンを製造した。前記可撓性の陽極酸化アルミニウム支持体上への前記蒸着工程は、前記支持体が蒸気流上で回転するような方法で実施された。
【0048】
電気加熱されたオーブン及び二つの耐火トレー又はボート(一方は左側に置かれ、他方は右側に置かれる)が使用され、そこでは330gのCsBrとEuOBrの混合物(CsBr/EuOBr重量%比=99.5%/0.5%)を蒸着のために前記るつぼの各々に原材料として存在させた。
【0049】
るつぼとして100mmの長さを有する細長いボートを使用し、それは0.5mmの厚さを有する「タンタル」から構成された35mmの幅及び50mmの側壁高さを有し、三つの集積部品:るつぼ容器、スリット及び小さな開口を有する「第二」プレート及びスリット出口を有するカバーから構成された。長手方向部分は漏れを克服するために一つの連続タンタルベースプレートから折り曲げられ、頭部分が溶接された。前記第二プレートは45mmの前記側壁高さの2/3より小さい最外カバープレートからの距離でるつぼの内部に装着された。真空室へのアルゴンガスの連続注入によって維持された真空圧力(2×10−3mbarに等価な2×10−1Paの圧力)下で、かつ蒸気源(760℃)の十分に高い温度で、得られた蒸気は、移動するシート支持体の方に向けられ、前記支持体が蒸気流の上で回転するにつれて連続的にその上に付着された。蒸気源の前記温度は、外側に存在しかつ前記るつぼの底の下で圧縮された熱電対によって及びるつぼに存在するタンタル保護された熱電対によって測定された。蒸着装置において蒸発を開始する前、ボート又はるつぼにおいて原材料を加熱して、それらを蒸発のために準備しているとき、シャッターはボート、トレー又はるつぼを覆っている。
【0050】
800μmの厚さ、18cmの幅及び24cmの長さを有するクロム封止された陽極酸化アルミニウム支持体は、燐光体が蒸着される側をパリレンCプレコートで覆われ、支持体とるつぼ蒸気出口スリットの間の(垂直に測定した)距離が22cmになるように位置された。
【0051】
プレートはほぼ等しい厚さの燐光体層を有する燐光体プレートに導く同じ蒸着時間を実施した後に蒸着装置から取り出された。
【0052】
針状結晶像プレートは感度の変化を決定するために吸収される一連の高いX線量で露光された。プレートは番号CB74222の下で前述のようにAgfa−Gevaert,Mortsel,ベルギーによって製造され、1cmあたり189.2mgの燐光体の被覆量を有していた。
【0053】
プレートは一組の穴を含む鉛のプレートで覆われた。一組の穴は五つの領域に分割され、領域ごとに異なるX線量で露光された。適用されたX線量は125R,250R,500R,1.5kR及び12kRであり、ビーム質RQA5を有していた。
【0054】
プレートを前記X線量で露光した後、プレートはUVランプ(高圧水銀)、ナトリウムランプ(1000ワット)、及びハロゲンランプ(3000ワット)を有する通常の消去ユニットで強く消去された。
【0055】
消去後、残っているエネルギーがプレートにあるかどうかを見るためにプレートをX線に露光せずに、品質制御目的のために、Agfa−Gevaert,Mortsel,ベルギーの社内で作られたNOLO_IIと称しかつCsBr:Euのために最適化されたスキャナで像を作った。12kR(即ち、最高吸収X線量)で露光された穴だけがわずかに目で見ることができた。信号はかなり低い(即ち、<0.1%)ことが確立されたので、それを無視することができる。
【0056】
前述のような露光処理の後、20μGyの線量(ビーム質RQA5)でフラットフィールド露光した。
【0057】
125レントゲンから1500レントゲンの範囲の吸収線量で感度の増加が観察され、12000レントゲンの線量に対して感度の減少が観察されることが明らかになった。
【0058】
異なる吸収X線量についての感度の相対的変化を決定するとき、以下の表1にまとめられた下記のデータが利用可能であった。
【0059】
百分率値として表現するために(累積線量を有する感度/累積線量を有さない感度)×100の式から「正規化された感度」を計算し、それらの数字をダイヤグラムに記載すると、正規化された感度の最大値が約500レントゲン又は4.3GyのX線での予備処理露光で達成されることが明らかになった。

【0060】
1.1〜13.0Gyの範囲に相当する125〜1500レントゲンの範囲の吸収X線量内では、5%の帯域内で感度の変化がある。しかしながら、X線露光線量が高いほど感度の低下が急になり、従って放射線医は高いX線量で患者の望ましくない露光を要求するだろう。
【0061】
本発明の有利な効果として、明細書及び図面において上述したように、放射線医によって頻繁に再使用されるときであっても、寿命サイクル中のプレート又はパネルのより再現可能なスピード及びスピード分布が見出されること、スピードの変化が5%未満の許容可能な範囲内に制限されることが確立された。
【0062】
本発明は放射線像貯蔵燐光体プレートを提供し、それは前述の方法に従って製造されるとき、考えられるような所望の特性を与える。
【0063】
本発明の好ましい実施態様を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲に規定された本発明の範囲から逸脱せずに多数の変更をその中でなしうることが当業者に明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1Aは、プレートによって吸収された累積X線量(kR)の関数として正規化された感度(%)を表す。図1Bは、プレートによって吸収された累積X線量(Gy)の関数として正規化された感度(%)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線像貯蔵燐光体プレート又はパネルの製造方法であって、前記プレート又はパネルが貯蔵燐光体層を含み、放射線像貯蔵又は光刺激性燐光体が主成分としてのアルカリ金属ハロゲン化物塩及びドーパントとしてのランタノイドを有する燐光体である方法において、その製造後で顧客によって使用される前に、前記パネルが1〜10Gyの範囲の吸収されたX線量を得るためにその全表面積にわたってX線で均一に露光されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記放射線像貯蔵燐光体がCsBr:Eu燐光体である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CsBr:Eu燐光体がアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrとランタノイドドーパント塩としてのEuX,EuX,EuOX、又はEuX(但し2<z<3,XはBr,Cl又はそれらの組み合わせの一つである)とを混合することによって作られる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記CsBr:Eu燐光体がアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrとEuX,EuX,EuOX、及びEuX(但し2<z<3,XはBr,Cl又はそれらの組み合わせの一つである)からなる群から選択されるユウロピウム化合物の10−3〜5mol%とを混合し、その混合物を450℃以上の温度で燃焼し、前記混合物を冷却し、CsX:Eu燐光体を回収することによって作られる請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記CsBr:Eu燐光体がアルカリ金属ハロゲン化物塩としてのCsBrと、アルカリ金属ハロゲン化物塩とランタノイドドーパント塩の組み合わせとしての式CsEuX′x+αy(但し、x/y>0.25,α≧2,X′はCl,Br及びI及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)とを混合することによって作られる請求項2に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−46122(P2008−46122A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207627(P2007−207627)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(307010203)アグファ・ヘルスケア・エヌヴィ (10)
【Fターム(参考)】