説明

放射線検出器および放射線画像撮影装置

【課題】放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化を抑制しつつ、得られる放射線画像の品質を向上させることのできる放射線検出器および放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線検出器20において、吸収する放射線のエネルギーがシンチレータ8Bに比較して低エネルギーとされており、放射線の累積照射量に応じたシンチレータの感度の劣化がシンチレータ8Bより激しいシンチレータ8Aをシンチレータ8Bより放射線の照射方向に対する下流側に設けると共に、主としてシンチレータ8Bによって発生された光に応じた電荷を取得するTFT基板30B、および主としてシンチレータ8Aによって発生された光に応じた電荷を取得するTFT基板30Aの2つの基板を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器および放射線画像撮影装置に関し、特に、照射された放射線を検出する放射線検出器、および当該放射線検出器により検出された放射線により示される放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線等の放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線画像撮影装置は、従来のX線フイルムやイメージングプレートを用いた放射線画像撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光をフォトダイオードなどのセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。放射線画像撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号をアンプで増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
ところで、被検者(患者)に対する被曝量を低減させることを目的として、従来から、比較的感度の高い柱状結晶を含む蛍光体層(シンチレータ)を有する放射線検出器があった。
【0005】
この技術において、柱状結晶による放射線の吸収量を多くするためには、一例として特開2008−51793号公報の図11からも明らかなように、シンチレータ層の膜厚を相当厚くする必要がある。しかしながら、シンチレータ層の膜厚を厚くすることには、コストが上昇してしまうといった問題の他、膜厚を厚くすればするほど、柱状結晶の初期部(根元の部分)における空隙率を高くする必要があり、この結果として、当該初期部での発光量が低下してしまう、という問題もあった。
【0006】
すなわち、柱状結晶の蒸着中に柱径は所定のゆらぎを持って変化するため、膜厚が厚くなるほど、上記ゆらぎの最大値が発生する確率が高くなる結果、柱状部同士が接触する可能性が高くなる。そして、柱状部同士が一旦接触すると融着してしまう可能性が高く、これが画像のぼけにつながってしまう。このため、上記融着を防止するためにシンチレータ層の膜厚を厚くする場合には、前もって柱状結晶の充填率を低く(初期部の空隙率を高く)しておく必要があるのである。例えば、国際特許公開WO2010/007807号明細書には、柱状結晶のシンチレータ層の膜厚が100〜500μm以上である場合に、柱状結晶の充填率を75%〜90%とするシンチレータが開示されている。また、特開2006−58099号公報には、柱状結晶のシンチレータ層の膜厚が500μm以上である場合に、柱状結晶の充填率を70%〜85%とするシンチレータが開示されている。
【0007】
以上の問題を解決するために適用できる技術として、特許文献1には、鮮鋭度に優れ、検出効率の高い放射線デジタル画像撮影装置を提供することを目的として、蛍光体粒子とバインダー樹脂とからなる蛍光体層を有する放射線デジタル画像撮影装置において、前記蛍光体層を平板からなる第1蛍光体層と、前記第1蛍光体層に接するように設けられ、かつ各画素に対応して設けられた概略柱状の第2蛍光体層とから構成したことを特徴とする放射線デジタル画像撮影装置が開示されている。
【0008】
なお、特許文献1には、放射線が照射される側から順に概略柱状の第2蛍光体層、平板状の第1蛍光体層、および光電変換素子が設けられた基板が積層された構成が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、光変換効率を向上させると共に、高画質な画像を取得することができる放射線画像検出器を提供することを目的として、放射線の照射を受けて該放射線をより長波長の光に変換する蛍光体を含む波長変換層と、該波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する検出器とが積層された放射線画像検出器であって、前記波長変換層が、少なくとも第1の蛍光体層と第2の蛍光体層との2つの層が積層されたものであり、前記検出器側から、前記第2の蛍光体層および前記第1の蛍光体層がこの順に配置されており、前記第1の蛍光体層が、該第1の蛍光体層により変換された光を吸収する吸収剤を含むものであることを特徴とする放射線画像検出器が開示されている。
【0010】
なお、特許文献2には、放射線が照射される側から順に、光電変換素子が設けられた基板、GOSからなる平板状の第2の蛍光体層、およびCsIからなる柱状の第1の蛍光体層が積層された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−181941号公報
【特許文献2】特開2010−121997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、柱状結晶により構成された第2蛍光体層が、放射線が入射される側の最上層に設けられているため、第2蛍光体層の感度の劣化が進みやすい、という問題点があった。
【0013】
図19には、放射線の累積照射量と、柱状結晶であるCsIの感度との関係の一例を示すグラフが示されている。同図に示すように、柱状結晶は、放射線の累積照射量に応じて感度が低減することが知られており、上記特許文献1に開示されている技術では、第2蛍光体層の感度の劣化が進みやすい。
【0014】
一方、上記特許文献2に開示されている技術では、放射線が照射される側から順に、光電変換素子が設けられた基板、GOSからなる平板状の第2の蛍光体層、およびCsIからなる柱状の第1の蛍光体層が積層されているため、第1の蛍光体層に対する感度の劣化は抑制されるものの、第2の蛍光体層に比較して高画質が得られる第1の蛍光体層が第2の蛍光体層を挟んでセンサ基板に積層されているため、第1の蛍光体層による高画質の効果が得られ難い、という問題点があった。
【0015】
なお、これらの問題点は、柱状結晶により構成された蛍光体層のみならず、吸収する放射線のエネルギーが低くなるほど顕著に現れる問題点である。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化を抑制しつつ、得られる放射線画像の品質を向上させることのできる放射線検出器および放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1記載の放射線検出器は、照射された放射線に応じた光を発生する第1蛍光体層と、前記第1蛍光体層に積層され、照射された光に応じた電荷を発生する光電変換素子、および前記光電変換素子により発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を有する第1基板と、前記第1蛍光体層の前記放射線の照射方向に対する下流側に設けられ、前記第1蛍光体層を介して照射された放射線に応じた光を発生すると共に、吸収する放射線のエネルギーが前記第1蛍光体層に比較して低エネルギーとされた第2蛍光体層と、前記第2蛍光体層に積層され、照射された光に応じた電荷を発生する光電変換素子、および前記光電変換素子により発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を有する第2基板と、を備えている。
【0018】
請求項1に記載の放射線検出器によれば、照射された放射線に応じた光を発生する第1蛍光体層に積層された第1基板により、照射された光に応じた電荷が光電変換素子によって発生され、前記光電変換素子により発生された電荷がスイッチング素子によって読み出される。
【0019】
また、本発明では、前記第1蛍光体層の前記放射線の照射方向に対する下流側に設けられ、前記第1蛍光体層を介して照射された放射線に応じた光を発生すると共に、吸収する放射線のエネルギーが前記第1蛍光体層に比較して低エネルギーとされた第2蛍光体層に積層された第2基板により、照射された光に応じた電荷が光電変換素子によって発生され、前記光電変換素子により発生された電荷がスイッチング素子によって読み出される。
【0020】
すなわち、本発明では、吸収する放射線のエネルギーが第1蛍光体層に比較して低エネルギーとされており、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化が第1蛍光体層より激しい第2蛍光体層を第1蛍光体層より前記放射線の照射方向に対する下流側に設けており、これによって第2蛍光体層に対する上記劣化を抑制するようにしている。
【0021】
また、本発明では、主として第1蛍光体層によって発生された光に応じた電荷を取得する第1基板、および主として第2蛍光体層によって発生された光に応じた電荷を取得する第2基板の2つの基板が設けられているので、当該2つの基板によって取得された電荷を利用することにより、放射線検出器全体としての感度を向上させることができ、この結果として、得られる放射線画像の品質を向上させることができる。
【0022】
このように、請求項1に記載の放射線検出器によれば、吸収する放射線のエネルギーが第1蛍光体層に比較して低エネルギーとされており、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化が第1蛍光体層より激しい第2蛍光体層を第1蛍光体層より放射線の照射方向に対する下流側に設けると共に、主として第1蛍光体層によって発生された光に応じた電荷を取得する第1基板、および主として第2蛍光体層によって発生された光に応じた電荷を取得する第2基板の2つの基板を設けているので、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化を抑制しつつ、得られる放射線画像の品質を向上させることができる。
【0023】
なお、請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記第1基板、前記第1蛍光体層、前記第2蛍光体層、および前記第2基板が、この順に積層されていてもよく、請求項3に記載の発明のように、前記第1基板、前記第1蛍光体層、前記第2基板、および前記第2蛍光体層が、この順に積層されていてもよい。
【0024】
特に、請求項3に記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記第2蛍光体層が、前記第2基板に積層される面とは反対側の面に反射層が設けられていてもよい。これにより、第2蛍光体層によって発生された光を効率よく第2基板側に集光することができる。
【0025】
また、請求項1に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記第1蛍光体層、前記第1基板、前記第2蛍光体層、および前記第2基板が、この順に積層されていてもよく、特に、請求項5に記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記第1蛍光体層が、前記第1基板に積層される面とは反対側の面に反射層が設けられていてもよい。これにより、第1蛍光体層によって発生された光を効率よく第1基板側に集光することができる。
【0026】
また、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記第1蛍光体層が、構成する元素の原子番号が前記第2蛍光体層より大きい材料を含んで構成されていてもよい。
【0027】
また、請求項1から請求項7の何れか1項に記載の発明は、請求項8に記載の発明のように、前記第2蛍光体層が、照射された放射線に応じた光を発生する柱状結晶を含んで構成されていてもよい。これにより、第2蛍光体層として柱状結晶を含まないものを適用する場合に比較して、得られる放射線画像の品質を、より向上させることができる。
【0028】
特に、請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明のように、前記第2蛍光体層が、前記第2基板に積層される面に非柱状結晶が形成されていてもよい。これにより、第2基板と第2蛍光体層との密着性を向上させることができる。
【0029】
また、請求項8または請求項9に記載の発明は、請求項10に記載の発明のように、前記第2蛍光体層が、CsIの柱状結晶を含んで構成されていてもよく、請求項8から請求項10の何れか1項に記載の発明は、請求項11に記載の発明のように、前記第2蛍光体層が、前記柱状結晶の先端部が平坦となるように形成されていてもよい。これにより、第2蛍光体層における柱状結晶の先端部と当該先端部に積層される部位との密着性を向上させることができる。
【0030】
また、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の発明は、請求項12に記載の発明のように、前記第1蛍光体層が、GOSを含んで構成されていてもよく、さらに、請求項1から請求項12の何れか1項に記載の発明は、請求項13に記載の発明のように、前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方が、フレキシブル基板であるものとしてもよい。これにより、当該フレキシブル基板と、これに積層される部位との密着性を向上させることができる。
【0031】
一方、上記目的を達成するために、請求項14記載の放射線画像撮影装置は、請求項1から請求項13の何れか1項記載の放射線検出器と、前記放射線検出器の前記第1基板および前記第2基板から読み出された電荷により示される画像情報を生成する生成手段と、を備えている。
【0032】
請求項14に記載の放射線画像撮影装置によれば、生成手段により、本発明の放射線検出器の第1基板および第2基板から読み出された電荷により示される画像情報が生成される。
【0033】
このように、請求項14に記載の放射線画像撮影装置によれば、本発明の放射線検出器が備えられているので、当該放射線検出器と同様に、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化を抑制しつつ、得られる放射線画像の品質を向上させることができる
なお、請求項14に記載の発明は、請求項15に記載の発明のように、前記生成手段が、前記第1基板および前記第2基板から読み出された電荷により示される画像情報を対応する画素毎に加算することにより新たな画像情報を作成してもよい。これにより、放射線検出器全体としての感度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、放射線の累積照射量に応じた蛍光体層の感度の劣化を抑制しつつ、得られる放射線画像の品質を向上させることができる、という効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線検出器の3画素部分の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】実施の形態に係るシンチレータの結晶構成の一例を模式的に示す概略図である。
【図3】各種材料のX線の吸収特性を示すグラフである。
【図4】実施の形態に係る放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面図である。
【図5】実施の形態に係るTFT基板の構成を示す平面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す斜視図である。
【図7】第1の実施の形態に係る電子カセッテの構成を示す断面図である。
【図8】第1の実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態に係る画像情報送信処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す断面図である。
【図11】第1の実施の形態に係る放射線検出器の動画撮影時における作用の説明に供する断面図である。
【図12】第1の実施の形態に係る放射線検出器の静止画撮影時における作用の説明に供する断面図である。
【図13】第2の実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す断面図である。
【図14】第3の実施の形態に係る放射線検出器の構成を示す断面図である。
【図15】他の形態に係る放射線検出器の構成を示す断面図である。
【図16】他の形態に係る放射線検出器の構成を示す断面図である。
【図17】各種材料の感度特性の一例を示すグラフである。
【図18】各種材料の感度特性の一例を示すグラフである。
【図19】放射線の累積照射量と柱状結晶であるCsIの感度との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0037】
[第1の実施の形態]
まず、最初に本実施の形態に係る間接変換方式の放射線検出器20の構成について説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態である放射線検出器20の3つの画素部分の構成を概略的に示す断面模式図である。
【0039】
この放射線検出器20は、絶縁性の基板1上に、信号出力部14、センサ部13、および透明絶縁膜7を順に形成することにより構成されたTFT基板30Aと、シンチレータ8Aと、ベース22と、シンチレータ8Bと、TFT基板30Aと同様の構成とされたTFT基板30Bと、がこの順に積層しており、TFT基板30AおよびTFT基板30Bの信号出力部14、センサ部13により画素部が構成されている。画素部は、基板1上に複数配列されており、各画素部における信号出力部14とセンサ部13とが重なりを有するように構成されている。
【0040】
シンチレータ8Aは、センサ部13上に透明絶縁膜7を介して柱状結晶により形成されており、上方(TFT基板30B側)から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ8Aを設けることで、被写体およびシンチレータ8Bを透過した放射線を吸収して発光することになる。
【0041】
シンチレータ8Aが発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器20によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0042】
シンチレータ8Aに用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが、例えば、420nm〜700nmにあるCsI:Tlを用いることが特に好ましい。なお、CsI:Tlの可視光域における発光ピーク波長は565nmである。
【0043】
また、本実施の形態では、一例として図2に示すように、シンチレータ8Aを、放射線入射側(TFT基板30B側)に柱状結晶71Aからなる柱状部が形成され、シンチレータ8Aの放射線入射側とは反対側に非柱状結晶71Bからなる非柱状部が形成された構成としており、シンチレータ8AとしてCsIを含む材料を用い、当該材料をTFT基板30Aに直接蒸着させることで、柱状部および非柱状部が形成されたシンチレータ8Aを得ている。なお、本実施の形態に係るシンチレータ8Aは、柱状結晶71Aの平均径が柱状結晶71Aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。
【0044】
上記のように、シンチレータ8Aを柱状部が形成された構成にすることで、シンチレータ8Aで発生された光は柱状結晶71A内を進行し、非柱状結晶71Bを介してTFT基板30Aへ射出され、TFT基板30A側へ射出される光の拡散が抑制されることで、結果的に得られる放射線画像の鮮鋭度の低下が抑制される。また、シンチレータ8Aの柱状結晶71Aの先端部側に進行した光は、シンチレータ8Bを介してTFT基板30Bに射出され、TFT基板30Bによる受光量の増加に寄与する。
【0045】
なお、非柱状部の空隙率を0(零)に近づけることにより、当該非柱状部による光の反射を抑制することができ、好ましい。また、非柱状部はできるだけ薄く(10μm程度)することが好ましい。
【0046】
一方、シンチレータ8Bは、シンチレータ8Aとは吸収する放射線のエネルギー特性が異なるものとして形成されており、上方(TFT基板30B側)から入射してくる放射線を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。シンチレータ8Bが発する光の波長域も、可視光域であることが好ましい。
【0047】
シンチレータ8Bに用いる蛍光体としては、具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、GOSを含むものが好ましく、GOS:Tbを用いることが特に好ましい。なお、GOS:Tbの可視光域における発光ピーク波長は550nmである。
【0048】
図3には、各種材料のX線の吸収特性が示されている。
【0049】
同図に示すように、GOSは、構成する元素の原子番号がCsIより大きく、例えば、GOS:Prの場合には50[KeV]付近にKエッジがあるため、柱状結晶であるCsIに比較して高エネルギーのX線に対する吸収率が高く、CsIにより吸収できない放射線を効果的に吸収することができる。なお、GOSはドープする材料でKエッジが変わり、例えば、GOS:TbのKエッジは60[KeV]程度である。また、ここでいう原子番号とは、シンチレータの組成比を考慮して計算した実効原子番号のことである。
【0050】
なお、本実施の形態では、シンチレータ8Bの放射線照射面側にTFT基板30Bが配置されているが、シンチレータ8BとTFT基板30Bとをこのような位置関係で配置する方式は「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側にTFT基板を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側とは反対側にTFT基板を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりもTFT基板とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また、TFT基板の受光量が増大することで、結果として放射線画像の感度が向上する。
【0051】
一方、センサ部13は、上部電極6、下部電極2、および該上下の電極間に配置された光電変換膜4を有し、光電変換膜4は、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bが発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0052】
上部電極6は、シンチレータにより生じた光を光電変換膜4に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータの発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。なお、上部電極6としてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大し易いため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極6は、全画素部で共通の一枚構成としてもよく、画素部毎に分割してもよい。
【0053】
光電変換膜4は、有機光電変換材料を含み、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bから発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。このように有機光電変換材料を含む光電変換膜4であれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bによる発光以外の電磁波が光電変換膜4に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜4で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0054】
光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bで発光した光を最も効率よく吸収するために、その吸収ピーク波長が、各シンチレータの発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長と各シンチレータの発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければ各シンチレータから発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、各シンチレータの放射線に対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0055】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物およびフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ8Aの材料としてCsI:Tlを用い、シンチレータ8Bの材料としてGOSを用いれば、上記ピーク波長の差を10nm以内にすることが可能となり、光電変換膜4で発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0056】
次に、本実施の形態に係る放射線検出器20に適用可能な光電変換膜4について具体的に説明する。
【0057】
本実施の形態に係る放射線検出器20における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極2,6と、該電極2,6間に挟まれた有機光電変換膜4を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、および層間接触改良部位等の積み重ねもしくは混合により形成することができる。
【0058】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0059】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0060】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。
【0061】
この有機p型半導体および有機n型半導体として適用可能な材料、および光電変換膜4の構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0062】
光電変換膜4の厚みは、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bからの光を吸収する点では膜厚は大きいほど好ましいが、ある程度以上厚くなると光電変換膜4の両端から印加されるバイアス電圧により光電変換膜4に発生する電界の強度が低下して電荷が収集できなくなるため、30nm以上300nm以下が好ましく、より好ましくは、50nm以上250nm以下、特に好ましくは80nm以上200nm以下である。
【0063】
なお、図1に示す放射線検出器20では、光電変換膜4は、全画素部で共通の一枚構成であるが、画素部毎に分割してもよい。
【0064】
下部電極2は、画素部毎に分割された薄膜とする。下部電極2は、透明又は不透明の導電性材料で構成することができ、アルミニウム、銀等を好適に用いることができる。
【0065】
下部電極2の厚みは、例えば、30nm以上300nm以下とすることができる。
【0066】
センサ部13では、上部電極6と下部電極2の間に所定のバイアス電圧を印加することで、光電変換膜4で発生した電荷(正孔、電子)のうちの一方を上部電極6に移動させ、他方を下部電極2に移動させることができる。本実施の形態の放射線検出器20では、上部電極6に配線が接続され、この配線を介してバイアス電圧が上部電極6に印加されるものとする。また、バイアス電圧は、光電変換膜4で発生した電子が上部電極6に移動し、正孔が下部電極2に移動するように極性が決められているものとするが、この極性は逆であってもよい。
【0067】
各画素部を構成するセンサ部13は、少なくとも下部電極2、光電変換膜4、および上部電極6を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜3および正孔ブロッキング膜5の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0068】
電子ブロッキング膜3は、下部電極2と光電変換膜4との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極2から光電変換膜4に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0069】
電子ブロッキング膜3には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0070】
実際に電子ブロッキング膜3に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIpもしくはそれより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換膜4は、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0071】
電子ブロッキング膜3の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0072】
正孔ブロッキング膜5は、光電変換膜4と上部電極6との間に設けることができ、下部電極2と上部電極6間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極6から光電変換膜4に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0073】
正孔ブロッキング膜5には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0074】
正孔ブロッキング膜5の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させるとともに、センサ部13の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0075】
実際に正孔ブロッキング膜5に用いる材料は、隣接する電極の材料および隣接する光電変換膜4の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜4の材料の電子親和力(Ea)と同等のEaもしくはそれより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0076】
なお、光電変換膜4で発生した電荷のうち、正孔が上部電極6に移動し、電子が下部電極2に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜3と正孔ブロッキング膜5は両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0077】
各画素部の下部電極2下方の基板1の表面には信号出力部14が形成されている。
【0078】
図4には、信号出力部14の構成が概略的に示されている。
【0079】
下部電極2に対応して、下部電極2に移動した電荷を蓄積するコンデンサ9と、コンデンサ9に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に「薄膜トランジスタ」という。)10が形成されている。コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域は、平面視において下部電極2と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における信号出力部14とセンサ部13とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器20(画素部)の平面積を最小にするために、コンデンサ9および薄膜トランジスタ10の形成された領域が下部電極2によって完全に覆われていることが望ましい。
【0080】
コンデンサ9は、基板1と下部電極2との間に設けられた絶縁膜11を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極2と電気的に接続されている。これにより、下部電極2で捕集された電荷をコンデンサ9に移動させることができる。
【0081】
薄膜トランジスタ10は、ゲート電極15、ゲート絶縁膜16、および活性層(チャネル層)17が積層され、さらに、活性層17上にソース電極18とドレイン電極19が所定の間隔を開けて形成されている。
【0082】
活性層17は、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層17を構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0083】
活性層17を構成可能な非晶質酸化物としては、In、GaおよびZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、GaおよびZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、GaおよびZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層17を構成可能な非晶質酸化物は、これらに限定されるものではない。
【0084】
活性層17を構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0085】
薄膜トランジスタ10の活性層17を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部14におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0086】
また、活性層17をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ10のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低い薄膜トランジスタ10を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層17を形成する場合、活性層17に極微量の金属性不純物が混入するだけで、薄膜トランジスタ10の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0087】
ここで、上述した非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板1としては、半導体基板、石英基板、およびガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0088】
また、基板1には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0089】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために,透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して基板1を形成してもよい。
【0090】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板1を形成できる。
【0091】
なお、TFT基板30Bの構成は、TFT基板30Aと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0092】
ところで、前述したように、本実施の形態に係る放射線検出器20では、シンチレータ8AをTFT基板30A上に直接蒸着により形成しているが、これに限らず、放射線検出器20の製造は種々の方法により行うことができる。表1には、放射線検出器20の製造方法の4種類の例が示されている。
【0093】
【表1】

【0094】
パターン1による製造方法では、TFT基板30A上に直接蒸着によりシンチレータ8Aを形成する一方、ポリエチレンテレフタレート等からなるベース22上にシンチレータ8Bを塗布により形成した後、シンチレータ8Bのベース22側とは反対側の面とTFT基板30Bとを、接着等により貼り合わせる。そして、シンチレータ8AのTFT基板30A側とは反対側(柱状結晶の先端側)と、シンチレータ8BのTFT基板30B側とは反対側の面とを、接着等により貼り合わせる。
【0095】
また、パターン2による製造方法では、パターン1と同様にTFT基板30A上に直接蒸着によりシンチレータ8Aを形成する一方、ポリエチレンテレフタレート等からなるベース22上にシンチレータ8Bを塗布により形成した後、シンチレータ8Bのベース22側とは反対側の面とTFT基板30Bとを、接着等により貼り合わせる。そして、シンチレータ8AのTFT基板30A側とは反対側(柱状結晶の先端側)と、シンチレータ8BのTFT基板30B側とは反対側の面とを互いに押し当てた状態で放射線検出器20全体をパウチ加工(ラミネート加工)する。
【0096】
一方、パターン3による製造方法では、不図示の蒸着基板に蒸着によりシンチレータ8Aを形成する一方、パターン1,2と同様にポリエチレンテレフタレート等からなるベース22上にシンチレータ8Bを塗布により形成した後、シンチレータ8Bのベース22側とは反対側の面とTFT基板30Bとを、接着等により貼り合わせる。そして、シンチレータ8Aの蒸着基板側とは反対側(柱状結晶の先端側)をTFT基板30Aに接着等により貼り合わせ、シンチレータ8Aから上記蒸着基板を剥離する一方、シンチレータ8AのTFT基板30A側とは反対側の面と、シンチレータ8BのTFT基板30B側とは反対側の面とを接着等により貼り合わせるか、または互いに押し当てた状態とする。このパターン3では、非柱状部がTFT基板30A側ではなく、シンチレータ8B側に形成されることになる。
【0097】
さらに、パターン4による製造方法では、パターン1〜3と同様にポリエチレンテレフタレート等からなるベース22上にシンチレータ8Bを塗布により形成した後、シンチレータ8Bのベース22側とは反対側の面とTFT基板30Bとを、接着等により貼り合わせる。そして、シンチレータ8B上に蒸着によりシンチレータ8Aを形成し、シンチレータ8Aのシンチレータ8B側とは反対側(柱状結晶の先端側)をTFT基板30Aに接着等により貼り合わせる。このパターン4でも、非柱状部がTFT基板30A側ではなく、シンチレータ8B側に形成されることになる。
【0098】
なお、本実施の形態に係る放射線検出器20では、シンチレータ8Aの各柱状部の先端部は、できるだけ平坦になるように制御することが好ましい。具体的には、蒸着終了時の被蒸着基板の温度を制御することで実現できる。例えば、蒸着終了時の被蒸着基板の温度を110℃とすれば先端角度がおよそ170度となり、蒸着終了時の被蒸着基板の温度を140℃とすれば先端角度がおよそ60度となり、蒸着終了時の被蒸着基板の温度を200℃とすれば先端角度がおよそ70度となり、蒸着終了時の被蒸着基板の温度を260℃とすれば先端角度がおよそ120度となる。なお、この制御については、特開2010−25620号公報において詳細に説明されているため、これ以上の説明を省略する。
【0099】
また、以上のパターン1〜パターン4では、シンチレータ8BのTFT基板30B側とは反対側の面にベース22を残したままとしているが、シンチレータ8Aとシンチレータ8Bとを張り合わせるに先立って、ベース22を剥離するようにしてもよい。
【0100】
一方、TFT基板30AおよびTFT基板30Bには、図5に示すように、上述のセンサ部13、コンデンサ9、薄膜トランジスタ10を含んで構成される画素32が一定方向(図5の行方向)および当該一定方向に対する交差方向(図5の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0101】
また、放射線検出器20には、上記一定方向(行方向)に延設され、各薄膜トランジスタ10をオン・オフさせるための複数本のゲート配線34と、上記交差方向(列方向)に延設され、オン状態の薄膜トランジスタ10を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線36と、が各々TFT基板30AおよびTFT基板30Bに対応して2組分設けられている。
【0102】
放射線検出器20は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には矩形状に形成されている。
【0103】
次に、この放射線検出器20を内蔵し、放射線画像を撮影する可搬型の放射線画像撮影装置(以下、「電子カセッテ」という。)40の構成について説明する。図6には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成を示す斜視図が示されている。
【0104】
同図に示すように、この電子カセッテ40は、放射線を透過させる材料からなる平板状の筐体41を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。筐体41の内部には、放射線Xが照射される筐体41の照射面側から、被写体を透過した放射線Xを検出する放射線検出器20、および放射線Xのバック散乱線を吸収する鉛板43が順に配設される。筐体41は、平板状の一方の面の放射線検出器20の配設位置に対応する領域が放射線を検出可能な四辺形状の撮影領域41Aとされている。放射線検出器20は、図7に示すように、TFT基板30Bが撮影領域41A側となるように配置されており、撮影領域41Aを構成する筐体41内側に貼り付けられている。
【0105】
また、筐体41の内部の一端側には、放射線検出器20と重ならない位置(撮影領域41Aの範囲外)に、後述するカセッテ制御部58や電源部70を収容するケース42が配置されている。
【0106】
図8には、本実施の形態に係る電子カセッテ40の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0107】
TFT基板30A、30Bは、それぞれ隣り合う2辺の一辺側にゲート線ドライバ52が配置され、他辺側に信号処理部54が配置されている。以下、2つのTFT基板30A、30Bに対応して設けられたゲート線ドライバ52および信号処理部54を区別する場合、TFT基板30Aに対応するゲート線ドライバ52および信号処理部54に符号Aを付し、TFT基板30Bに対応するゲート線ドライバ52および信号処理部54に符号Bを付して説明する。
【0108】
TFT基板30Aの個々のゲート配線34はゲート線ドライバ52Aに接続され、TFT基板30Aの個々のデータ配線36は信号処理部54Aに接続されており、TFT基板30Bの個々のゲート配線34はゲート線ドライバ52Bに接続されており、TFT基板30Bの個々のデータ配線36は信号処理部54Bに接続されている。
【0109】
また、筐体41の内部には、画像メモリ56と、カセッテ制御部58と、無線通信部60とを備えている。
【0110】
TFT基板30A、30Bの各薄膜トランジスタ10は、ゲート線ドライバ52A、52Bからゲート配線34を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、オン状態とされた薄膜トランジスタ10によって読み出された電荷は、電気信号としてデータ配線36を伝送されて信号処理部54A、54Bに入力される。これにより、電荷は行単位で順に読み出され、二次元状の放射線画像が取得可能となる。
【0111】
図示は省略するが、信号処理部54A、54Bは、個々のデータ配線36毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路およびサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線36を伝送された電気信号は増幅回路で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0112】
信号処理部54A、54Bには画像メモリ56が接続されており、信号処理部54A、54BのA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ56に順に記憶される。画像メモリ56は所定枚分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ56に順次記憶される。
【0113】
画像メモリ56はカセッテ制御部58と接続されている。カセッテ制御部58はマイクロコンピュータによって構成され、CPU(中央処理装置)58A、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を含むメモリ58B、フラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部58Cを備えており、電子カセッテ40全体の動作を制御する。
【0114】
また、カセッテ制御部58には無線通信部60が接続されている。無線通信部60は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部58は、無線通信部60を介して、放射線撮影全体を制御するコンソールなどの外部装置と無線通信が可能とされており、コンソールとの間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0115】
また、電子カセッテ40には、電源部70が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ52A、52B、信号処理部54A、54B、画像メモリ56、無線通信部60やカセッテ制御部58として機能するマイクロコンピュータ)は、電源部70から供給された電力によって作動する。電源部70は、電子カセッテ40の可搬性を損なわないように、バッテリ(充電可能な二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種回路・素子へ電力を供給する。なお、図8では、電源部70と各種回路や各素子を接続する配線を省略している。
【0116】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ40の作用について説明する。
【0117】
本実施の形態に係る電子カセッテ40は、放射線画像の撮影を行う場合、撮影領域41Aを上とし、図7に示すように、放射線を発生する放射線発生装置80と間隔を空けて配置され、撮影領域上に患者の撮影対象部位Bが配置される。放射線発生装置80は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線Xを射出する。放射線発生装置80から射出された放射線Xは、撮影対象部位Bを透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ40に照射される。
【0118】
放射線発生装置80から照射された放射線Xは、撮影対象部位Bを透過した後に電子カセッテ40に到達する。これにより、電子カセッテ40に内蔵された放射線検出器20の各センサ部13には照射された放射線Xの線量に応じた電荷が発生し、コンデンサ9にはセンサ部13で発生した電荷が蓄積される。
【0119】
カセッテ制御部58は、放射線Xの照射終了後に、ゲート線ドライバ52A、52Bを制御し、ゲート線ドライバ52A、52BからTFT基板30A、30Bの各ゲート配線34に1ラインずつ順にオン信号を出力させて画像情報の読み出しを行う。放射線検出器20から読み出された画像情報は、画像メモリ56に記憶される。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、TFT基板30Aから読み出された画像情報(以下、「第1画像情報」という。)と、TFT基板30Bから読み出された画像情報(以下、「第2画像情報」という。)と、を各々画像メモリ56の異なる記憶領域に記憶するものとされている。
【0120】
ところで、本実施の形態に係る電子カセッテ40では、放射線発生装置80および電子カセッテ40を統括的に制御するコンソール等の外部装置から第1画像情報と第2画像情報とを対応する画素毎に加算して送信する動作モード(以下、「加算撮影モード」という。)、および当該加算を行うことなく、第1画像情報のみを送信する動作モード(以下、「通常撮影モード」という。)の何れの動作モードを適用するのかを示す動作モード指示情報を、無線通信部60を介して受信する。そして、カセッテ制御部58は、放射線Xの照射終了後に、予め受信した動作モード指示情報により示される動作モードに応じて画像情報の送信を行う画像情報送信処理を実行する。
【0121】
以下、図9を参照して、上記画像情報送信処理を実行する際の電子カセッテ40の作用を説明する。なお、図9は、この際に電子カセッテ40のカセッテ制御部58におけるCPU58Aにより実行される画像情報送信処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ58Bに予め記憶されている。
【0122】
同図のステップ100では、受信した動作モード指示情報により示される動作モードが加算撮影モードであるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ102に移行し、第1画像情報および第2画像情報の双方が画像メモリ56に記憶されるまで待機する。
【0123】
次のステップ104では、画像メモリ56に記憶された第1画像情報に第2画像情報を対応する画素毎に加算し、その後にステップ108に移行する。
【0124】
一方、上記ステップ100において否定判定となった場合は、受信した動作モード指示情報により示される動作モードが通常撮影モードであったものと見なしてステップ106に移行し、第1画像情報が画像メモリ56に記憶されるまで待機した後、ステップ108に移行する。
【0125】
ステップ108では、第1画像情報を、無線通信部60を介して上記外部装置に送信し、その後に本画像情報送信処理プログラムを終了する。
【0126】
ところで、本実施の形態に係る放射線検出器20では、図10に示すように、吸収する放射線のエネルギーがシンチレータ8Bに比較して低エネルギーとされており、放射線の累積照射量に応じたシンチレータの感度の劣化がシンチレータ8Bより激しいシンチレータ8Aをシンチレータ8Bより放射線Xの照射方向に対する下流側に設けており、これによってシンチレータ8Aに対する上記劣化を抑制するようにしている。
【0127】
また、本実施の形態に係る放射線検出器20では、主としてシンチレータ8Bによって発生された光に応じた電荷を取得するTFT基板30B、および主としてシンチレータ8Aによって発生された光に応じた電荷を取得するTFT基板30Aの2つの基板が設けられているので、当該2つの基板によって取得された電荷を利用することにより、放射線検出器全体としての感度を向上させることができ、この結果として、得られる放射線画像の品質を向上させることができる。
【0128】
表2には、電子カセッテにより動画撮影を行う場合と静止画撮影を行う場合の各々の放射線発生装置80により照射される放射線の線量、および放射線発生装置80の管球に印加する管電圧の一例が示されている。
【0129】
【表2】

【0130】
表2に示すように、電子カセッテにより放射線画像の撮影を行う場合、動画撮影を行う場合は静止画撮影を行う場合に比較して放射線の線量が100分の1〜1000分の1程度となり、管電圧も低電圧となる場合が多い。
【0131】
従って、電子カセッテ40により動画撮影を行う場合は、シンチレータ8Aに対する放射線の累積照射量を抑制することができるため、シンチレータ8Aの放射線の累積照射量に応じた感度の劣化を抑制することができる。また、この場合、一例として図11に模式的に示すように、シンチレータ8A自身の発光よりシンチレータ8Bによる発光光のTFT基板30Aへの導光が主な役割となるため、この点においてもシンチレータ8Aの感度の劣化を抑制することができる。
【0132】
これに対し、電子カセッテ40により静止画撮影を行う場合は、動画撮影時におけるシンチレータ8Aの感度の劣化を抑制しているので、一例として図12に模式的に示すように、シンチレータ8Aによる高感度を維持した状態で静止画撮影を行うことができるため、高品質な放射線画像を得ることができる。
【0133】
また、本実施の形態に係る放射線検出器20では、シンチレータ8Aにより発生された光の一部がTFT基板30Aにおいて受光され、これによってTFT基板30Aにより得られた画像情報を用いることができるため、当該画像情報とTFT基板30Bによって得られた画像情報とを対応する画素毎に加算して用いることにより、放射線検出器20全体としての感度を高めることができる。この結果、放射線画像の撮影時に放射線発生装置80から照射される放射線Xの線量を低減することができ、患者に対する被曝量を低減することができる。
【0134】
また、本実施の形態に係る放射線検出器20では、シンチレータ8Aに非柱状部を設けているため、TFT基板30Aとの密着性を高くすることができる。但し、非柱状部は必須ではなく、非柱状部を設けない形態としてもよい。
【0135】
また、本実施の形態に係る放射線検出器20は、光電変換膜4を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜4で放射線がほとんど吸収されない。このため、本実施の形態に係る放射線検出器20は、ISSの構成により放射線XがTFT基板30Bを透過するが、当該TFT基板30Bの光電変換膜4による放射線の吸収量が少ないため、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。ISSでは、放射線XがTFT基板30Bを透過してシンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bに到達するが、このように、TFT基板30Bの光電変換膜4を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜4での放射線の吸収が殆どなく放射線Xの減衰を少なく抑えることができるため、ISSに適している。
【0136】
また、薄膜トランジスタ10の活性層17を構成する非晶質酸化物や光電変換膜4を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板1を放射線の吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板1は放射線の吸収量が少ないため、ISSにより放射線がTFT基板30Bを透過する場合でも、放射線Xに対する感度の低下を抑えることができる。
【0137】
また、本実施の形態によれば、図7に示すように、放射線検出器20をTFT基板30Bが撮影領域41A側となるように筐体41内の撮影領域41A部分に貼り付けているが、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体の剛性が高いため、筐体41の撮影領域41A部分を薄く形成することができる。また、基板1を剛性の高いプラスチック樹脂やアラミド、バイオナノファイバで形成した場合、放射線検出器20自体が可撓性を有するため、撮影領域41Aに衝撃が加わった場合でも放射線検出器20が破損しづらい。
【0138】
なお、本実施の形態では、TFT基板30Aとシンチレータ8Aとの間、およびTFT基板30Bとシンチレータ8Bとの間に透明絶縁膜7を設けた場合について説明したが、これに限らず、透明絶縁膜7を設けることなく各TFT基板の上面に各シンチレータを直接形成する形態としてもよい。
【0139】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0140】
まず、図13を参照して、本第2の実施の形態に係る間接変換方式の放射線検出器20Bの構成について説明する。なお、同図における上記第1の実施の形態と同一の構成要素には、上記第1の実施の形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0141】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線検出器20Bは、放射線Xが照射される側とは反対側から、ベース22A、反射層12,シンチレータ8A、粘着層23、TFT基板30A、ベース22B、シンチレータ8B、およびTFT基板30Bが、この順に積層されて構成されている。
【0142】
ここで、反射層12は、可視光を反射するものであり、この反射層12を形成することにより、シンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bにおいて発生した光をより効率的にTFT基板30Aへ導けるため、感度が向上する。この反射層12を設ける方法は、スパッタ法、蒸着法、塗布法のいずれでもよい。反射層12としては、Au,Ag,Cu,Al,Ni,Tiなど、使用するシンチレータ8Aおよびシンチレータ8Bの発光波長領域での反射の高い物質が好ましい。例えば、シンチレータ8BがGOS:Tbの場合、波長は400〜600nmにおいて反射率の高いAg,Al,Cuなどがよく、厚さは、0.01μm未満では反射率が得られず、3μmを超えても反射率の向上で更なる効果が得られないため、0.01〜3μmが好ましい。
【0143】
この放射線検出器20Bの製造方法としては種々の方法を採用することができるが、例えば、次の方法を例示することができる。
【0144】
まず、ポリエチレンテレフタレート等からなるベース22A上に反射層12を形成した後、当該反射層12上に蒸着によりシンチレータ8Aを形成した後、シンチレータ8Aの反射層12とは反対側(柱状結晶の先端側)とTFT基板30Aとを粘着層23を介して貼り合わせる。また、ポリエチレンテレフタレート等からなるベース22B上にシンチレータ8Bを塗布により形成した後、シンチレータ8Bのベース22B側とは反対側の面とTFT基板30Bとを接着等により貼り合わせる。そして、TFT基板30Aのシンチレータ8Aとは反対側の面にベース22Bを接着等により貼り合わせる。
【0145】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成や作用は、上記第1の実施の形態に係る電子カセッテ40と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0146】
本実施の形態に係る放射線検出器20Bにおいても、上記第1の実施の形態に係る放射線検出器20と同様の効果を奏することができる。
【0147】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0148】
まず、図14を参照して、本第3の実施の形態に係る間接変換方式の放射線検出器20Cの構成について説明する。なお、同図における上記第2の実施の形態と同一の構成要素には、上記第2の実施の形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0149】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線検出器20Cは、放射線Xが照射される側とは反対側から、TFT基板30A、シンチレータ8A、粘着層23、TFT基板30B、シンチレータ8B、反射層12、およびベース22Bが、この順に積層されて構成されている。
【0150】
この放射線検出器20Cの製造方法としては種々の方法を採用することができるが、例えば、次の方法を例示することができる。
【0151】
まず、TFT基板30A上に直接蒸着によりシンチレータ8Aを形成する。一方、ベース22に反射層12を形成した後、反射層12上にシンチレータ8Bを塗布により形成すると共に、シンチレータ8Bの反射層12とは反対側の面にTFT基板30Bを接着等により貼り合わせる。そして、シンチレータ8AのTFT基板30Aとは反対側(柱状結晶の先端側)と、TFT基板30Bとを、粘着層23を介して貼り合わせる。
【0152】
なお、本実施の形態に係る電子カセッテ40の構成や作用も、上記第1の実施の形態に係る電子カセッテ40と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0153】
本実施の形態に係る放射線検出器20Cにおいても、上記第1の実施の形態に係る放射線検出器20と同様の効果を奏することができる。
【0154】
以上、本発明を各実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0155】
また、上記の各実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また各実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0156】
たとえば、上記各実施の形態では、可搬型の放射線画像撮影装置である電子カセッテ40に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線画像撮影装置に適用してもよい。
【0157】
また、上記各実施の形態では、本発明の第1蛍光体層としてGOSを含んで構成されたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、BaFBr等の第1蛍光体層とは吸収する放射線のエネルギー特性が異なる他の蛍光体を適用する形態としてもよい。
【0158】
また、上記各実施の形態では、本発明の第2蛍光体層としてCsIを含んで構成されたものを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、CsBr等の他の柱状結晶を含むものを適用する形態としてもよい。
【0159】
また、上記各実施の形態では、電子カセッテ40の筐体41の内部にカセッテ制御部58や電源部70をケース42と放射線検出器とを重ならないように配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、放射線検出器とカセッテ制御部58や電源部70を重なるように配置してもよい。
【0160】
また、上記各実施の形態では特に言及しなかったが、TFT基板30AおよびTFT基板30Bの少なくとも一方がフレキシブル基板であることが好ましい。これにより、シンチレータ8Aの柱状結晶の先端部の位置が揃っていない場合でも、シンチレータ8Aと、当該シンチレータ8Aに積層されるTFT基板との密着性を向上させることができる。なお、この場合、適用するフレキシブル基板として、近年開発されたフロート法による超薄板ガラスを基材として用いたものを適用することが、放射線の透過率を向上させるうえで好ましい。なお、この際に適用できる超薄板ガラスについては、例えば、「旭硝子株式会社、“フロート法による世界最薄0.1ミリ厚の超薄板ガラスの開発に成功”、[online]、[平成23年8月20日検索]、インターネット<URL:http://www.agc.com/news/2011/0516.pdf>」に開示されている。
【0161】
また、上記第2の実施の形態ではTFT基板30Aを対象とし、上記第3の実施の形態ではTFT基板30Bを対象として、センサ部13の光電変換膜4を有機光電変換材料により構成すると共に、薄膜トランジスタ10の活性層17をIGZOにより構成する場合、図15に模式的に示すように、光電変換膜4が薄膜トランジスタ10に対してシンチレータ8A側にあってもよいし、図16に模式的に示すように、光電変換膜4が薄膜トランジスタ10に対してシンチレータ8B側にあってもよい。また、光電変換膜4が薄膜トランジスタ10に対してシンチレータ8B側にある場合には、IGZOの感度範囲は460nm以下であり、GOSによる発光波長に感度を有しないため、GOSによる発光がスイッチング・ノイズとなることがなく、好ましい。
【0162】
また、放射線検出器20、20B、20Cのセンサ部13として、光電変換膜4を、有機光電変換材料を含む材料で構成した有機CMOSセンサを用いてもよく、放射線検出器20、20B、20CのTFT基板30A、30Bとして、薄膜トランジスタ10としての有機材料を含む有機トランジスタを、可撓性を有するシート上にアレイ状に配列した有機TFTアレイ・シートを用いてもよい。上記の有機CMOSセンサは、例えば、特開2009−212377号公報に開示されている。また、上記の有機TFTアレイ・シートは、例えば「日本経済新聞、“東京大学、「ウルトラフレキシブル」な有機トランジスタを開発”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.nikkei.com/tech/trend/article/g=96958A9C93819499E2EAE2E0E48DE2EAE3E3E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E0E7E2E6E0E2E3E2E2E0E2E0>」に開示されている。
【0163】
各放射線検出器のセンサ部13としてCMOSセンサを用いる場合、高速に光電変換を行うことができる利点や、基板を薄くすることができる結果、ISS方式を採用した場合に放射線の吸収を抑制することができると共に、マンモグラフィによる撮影にも好適に適用することができる利点がある。
【0164】
これに対し、各放射線検出器のセンサ部13としてCMOSセンサを用いる場合の欠点として、結晶シリコン基板を用いた場合において放射線に対する耐性が低いことが挙げられる。このため、従来は、センサ部とTFT基板との間にFOP(ファイバ光学プレート)を設ける等といった対策を行う技術もあった。
【0165】
この欠点を踏まえて、放射線に対する耐性の高い半導体基板として、SiC(炭化ケイ素)基板を用いる技術が適用できる。SiC基板を用いることにより、ISS方式として用いることができる利点や、SiCはSiと比較して内部抵抗が小さく、発熱量が少ないため、動画撮影を行う際の発熱量の抑制、CsIの温度上昇に伴う感度低下を抑制することができる利点がある。
【0166】
このように、SiC基板等の放射線に対する耐性が高い基板は一般にワイドキャップ(〜3eV程度)なので、一例として図17に示すように、吸収端が青領域に対応する440nm程度である。よって、この場合は、緑領域で発光するCsI:Tlや、GOS等のシンチレータを用いることができない。なお、図17は、有機光電変換材料としてキナクリドンを用いた場合の各種材料のスペクトルである。
【0167】
これに対し、アモルファスシリコンの感度特性から、これらの緑領域で発光するシンチレータの研究が盛んに行われてきたため、当該シンチレータを用いることの要望が高い。このため、光電変換膜4を緑領域での発光を吸収する有機光電変換材料を含む材料で構成することにより、緑領域で発光するシンチレータを用いることができる。
【0168】
光電変換膜4を、有機光電変換材料を含む材料により構成し、薄膜トランジスタ10を、SiC基板を用いて構成した場合、光電変換膜4と薄膜トランジスタ10との感度波長領域が異なるので、シンチレータによる発光が薄膜トランジスタ10のノイズとならない。
【0169】
また、光電変換膜4として、SiCと有機光電変換材料を含む材料とを積層させれば、CsI:Naのような、主として青領域の発光を受光することに加えて、緑領域の発光も受光することができる結果、感度の向上に繋がる。また、有機光電変換材料は放射線の吸収が殆どないため、ISS方式に好適に用いることができる。
【0170】
なお、SiCが放射線に対する耐性が高いのは、放射線が当たっても原子核が弾き飛ばされにくいためであり、この点は、例えば、「日本原子力研究所、“宇宙や原子力分野などの高放射線環境下で長く使える半導体素子を開発”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.jaea.go.jp/jari/jpn/publish/01/ff/ff36/sic.html>」に開示されている。
【0171】
また、SiC以外の放射線に対する耐性が高い半導体材料として、C(ダイヤモンド)、BN、GaN、AlN、ZnO等が挙げられる。これらの軽元素半導体材料が耐放射線性が高いのは、主としてワイドギャップ半導体であるがために電離(電子−正孔対形成)に要するエネルギーが高く、反応断面積が小さいことや、原子間のボンディングが強く、原子変位生成が起こりにくいことに起因する。なお、この点については、例えば、「電子技術総合研究所、“原子力エレクトロニクスの新展開”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.aist.go.jp/ETL/jp/results/bulletin/pdf/62-10to11/kobayashi150.pdf>」や、「“酸化亜鉛系電子デバイスの耐放射線特性に関する研究”、平成21年度(財)若狭湾エネルギー研究センター 公募型共同研究 報告書,平成22年3月」等に開示されている。また、GaNの耐放射線性については、例えば、「東北大学、“窒化ガリウム素子の放射線耐性評価”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://cycgw1.cyric.tohoku.ac.jp/~sakemi/ws2007/ws/pdf/narita.pdf>」に開示されている。
【0172】
なお、GaNは青色LED以外の用途として熱伝導性がよいことと、絶縁耐性が高いことから、パワー系の分野でIC化が研究されている。また、ZnOは、主に青〜紫外線領域で発光するLEDが研究されている。
【0173】
ところで、SiCを用いる場合、バンドギャップEgがSiの約1.1eVから約2.8eVとなるため、光の吸収波長λが短波長側にシフトする。具体的には、波長λ=1.24/Eg×1000であるので、440nm程度までの波長に感度が変化する。よって、SiCを用いる場合、一例として図18に示すように、シンチレータも緑領域で発光するCsI:Tl(ピーク波長:約565nm)よりも青領域で発光するCsI:Na(ピーク波長:約420nm)の方が発光波長として適していることになる。蛍光体としては青発光がよいので、CsI:Na(ピーク波長:約420nm)、BaFX:Eu(XはBr,I等のハロゲン、ピーク波長:約380nm)、CaWO(ピーク波長:約425nm)、ZnS:Ag(ピーク波長:約450nm)、LaOBr:Tb、YS:Tb等が適している。特に、CsI:NaとCRカセッテ等で用いられているBaFX:Eu、スクリーンやフイルム等で用いられているCaWOが好適に用いられる。
【0174】
一方、放射線に対する耐性が高いCMOSセンサとして、SOI(Silicon On Insulator)によりSi基板/厚膜SiO/有機光電変換材料の構成を用いてCMOSセンサを構成してもよい。
【0175】
なお、この構成に適用可能な技術としては、例えば、「宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所、“民生用最先端SOI技術と宇宙用耐放射線技術の融合により耐放射線性を持つ高機能論理集積回路の開発基盤を世界で初めて構築”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.jaxa.jp/press/2010/11/20101122_soi_j.html>」が挙げられる。
【0176】
なお、SOIにおいては膜厚SOIの放射線耐性が高いため、高放射線耐久性素子としては、完全分離型厚膜SOI、部分分離型厚膜SOI等が例示される。なお、これらのSOIについては、例えば、「特許庁、“SOI(Silicon On Insulator)技術に関する特許出願技術動向調査報告”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/pdf/gidou-houkoku/soi.pdf>」に開示されている。
【0177】
また、放射線検出器20の薄膜トランジスタ10等が光透過性を有しない構成(例えば、アモルファスシリコン等の光透過性を有しない材料で活性層17を形成した構成)であっても、この薄膜トランジスタ10等を、光透過性を有する基板1(例えば合成樹脂製の可撓性基板)上に配置し、基板1のうち薄膜トランジスタ10等が形成されていない部分は光が透過するように構成することで、光透過性を有する放射線検出器20を得ることは可能である。光透過性を有しない構成の薄膜トランジスタ10等を、光透過性を有する基板1上に配置することは、第1の基板上に作製した微小デバイスブロックを第1の基板から切り離して第2の基板上に配置する技術、具体的には、例えばFSA(Fluidic Self-Assembly)を適用することで実現できる。上記のFSAは、例えば「富山大学、“微少半導体ブロックの自己整合配置技術の研究”、[online]、[平成23年5月8日検索]、インターネット<URL:http://www3.u-toyama.ac.jp/maezawa/Research/FSA.html>」に開示されている。
【符号の説明】
【0178】
8A シンチレータ(第2蛍光体層)
8B シンチレータ(第1蛍光体層)
10 薄膜トランジスタ
12 反射層
13 センサ部
14 信号出力部
20、20B、20C 放射線検出器
22 ベース
30A TFT基板(第2基板)
30B TFT基板(第1基板)
40 電子カセッテ
41 筐体
54A、54B 信号処理部(生成手段)
58A CPU(加算手段)
71A 柱状結晶
71B 非柱状結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線に応じた光を発生する第1蛍光体層と、
前記第1蛍光体層に積層され、照射された光に応じた電荷を発生する光電変換素子、および前記光電変換素子により発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を有する第1基板と、
前記第1蛍光体層の前記放射線の照射方向に対する下流側に設けられ、前記第1蛍光体層を介して照射された放射線に応じた光を発生すると共に、吸収する放射線のエネルギーが前記第1蛍光体層に比較して低エネルギーとされた第2蛍光体層と、
前記第2蛍光体層に積層され、照射された光に応じた電荷を発生する光電変換素子、および前記光電変換素子により発生された電荷を読み出すためのスイッチング素子を有する第2基板と、
を備えた放射線検出器。
【請求項2】
前記第1基板、前記第1蛍光体層、前記第2蛍光体層、および前記第2基板が、この順に積層されている
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記第1基板、前記第1蛍光体層、前記第2基板、および前記第2蛍光体層が、この順に積層されている
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記第2蛍光体層は、前記第2基板に積層される面とは反対側の面に反射層が設けられている
請求項3記載の放射線検出器。
【請求項5】
前記第1蛍光体層、前記第1基板、前記第2蛍光体層、および前記第2基板が、この順に積層されている
請求項1記載の放射線検出器。
【請求項6】
前記第1蛍光体層は、前記第1基板に積層される面とは反対側の面に反射層が設けられている
請求項5記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記第1蛍光体層は、構成する元素の原子番号が前記第2蛍光体層より大きい材料を含んで構成されている
請求項1から請求項6の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記第2蛍光体層は、照射された放射線に応じた光を発生する柱状結晶を含んで構成されている
請求項1から請求項7の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記第2蛍光体層は、前記第2基板に積層される面に非柱状結晶が形成されている
請求項8記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記第2蛍光体層は、CsIの柱状結晶を含んで構成されている
請求項8または請求項9記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記第2蛍光体層は、前記柱状結晶の先端部が平坦となるように形成されている
請求項8から請求項10のいずれか1項記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記第1蛍光体層は、GOSを含んで構成されている
請求項1から請求項11の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項13】
前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方は、フレキシブル基板である
請求項1から請求項12の何れか1項記載の放射線検出器。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項記載の放射線検出器と、
前記放射線検出器の前記第1基板および前記第2基板から読み出された電荷により示される画像情報を生成する生成手段と、
を備えた放射線画像撮影装置。
【請求項15】
前記生成手段は、前記第1基板および前記第2基板から読み出された電荷により示される画像情報を対応する画素毎に加算することにより新たな画像情報を作成する
請求項14記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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