放射線治療システム
【課題】治療用放射線の線量をより高精度に制御すること。
【解決手段】高周波源5から加速管64に高周波を伝送する導波路を形成する導波管8と、導波管8を冷却する冷却器とを備えている。加速管64は、高周波を用いて治療用放射線23を生成するための荷電粒子57を加速する。導波管8は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。本発明による放射線治療システムは、導波管8を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、本発明による放射線治療システムは、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【解決手段】高周波源5から加速管64に高周波を伝送する導波路を形成する導波管8と、導波管8を冷却する冷却器とを備えている。加速管64は、高周波を用いて治療用放射線23を生成するための荷電粒子57を加速する。導波管8は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。本発明による放射線治療システムは、導波管8を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、本発明による放射線治療システムは、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療システムに関し、特に、患部に放射線を照射することにより患者を治療するときに利用される放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患部(腫瘍)に治療用放射線を照射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その治療用放射線としては、制動放射により生成される放射線が例示される。その放射線治療は、治療効果が高いことが望まれ、その放射線は、患部の細胞に照射される線量に比較して、正常な細胞に照射される線量がより小さいことが望まれている。その患部の位置を追尾し、その位置に治療用放射線を照射する放射線治療装置が知られている。治療用放射線の線量をより高精度に制御することが望まれている。
【0003】
特開2005−033463号公報には、機械的精度が要求されるチョーク構造を不要とし、それにより、円形導波管内での電磁波の減衰を抑制するとともに、円形導波管からの放電の虞も低減できるようにした導波管ロータリージョイントが開示されている。その導波管ロータリージョイントは、回転結合部を有し両端部が軸心線周りに相対回転可能な円形導波管の各端部に方形導波管が接合された導波管ロータリージョイントにおいて、入力側方形導波管内をTE10モードで伝送される電磁波を上記入力側方形導波管と上記円形導波管との接合部でTE01モードに変換して上記円形導波管内を伝送し、上記円形導波管と出力側方形導波管との接合部で上記電磁波を再びTE01モードからTE10モードに変換して上記出力側方形導波管に出力することを特徴としている。
【0004】
特許3746744号公報には、優れた治療性能を有する放射線治療装置が開示されている。その放射線治療装置は、電子銃、線形加速器及びターゲットからなる治療用放射線発生部と同治療用放射線発生部を首振りさせるジンバル機構を有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波を発生する、静止位置に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部とを具備する放射線治療装置において、前記ジンバル機構に搭載される前記導波管部の導波管と、前記マイクロ波発振器からの前記導波管部の導波管とを、フレキシブル導波管により連結したことを特徴としている。
【0005】
特開昭62−206798号公報には、加速器本体に超小型、軽量の加速管を搭載し、マイクロ波源とを自在導波管で接合する等ことにより、小型で安価な精度の高い線形加速装置が開示されている。その線形加速器は、線形加速器本体とそのマイクロ波源とを伸縮折曲げ自在な導波管で回転及び上下自由に接合したことを特徴としている。
【0006】
特公昭51−7389号公報には、接続器全体の構成を小型化し、軸心合せを容易ならしめると共に更に回転角度範囲の増大を可能ならしめる回転型導波管接続器が開示されている。その回転型導波管接続器は、固定側円板とこれに重なる回転側円板との互に対向する面に回転軸心と同心に互に対向する複数個の環状凹溝を設けて複数個の環状導波管路を形成し、両円板の各環状凹溝の一部に電磁波の出入する導波管接続口を設けると共に各環状凹溝の前記導波管接続口に隣接する壁面に当該導波管路を遮断する仕切りを突設して該管路内の電磁波進行方向を規制することを特徴としている。
【0007】
実開昭52−18073号公報には、コバルト60などのラジオアイソトープの線源容器を患者のまわりに回転させながら治療を行う回転形放射線治療装置が開示されている。その回転形放射線治療装置は、線源容器を患者のまわりに回転させる機構とこの回転中心軸と平行な軸上において前記容器を前後左右に回転させる機構ならびに照射野の回転機構を有する放射線治療装置において、前記容器の各運動に対する回転体とそれに対する静止体のいずれか一方に回転体が特定の定常位置にあるかどうかを感知するカムを、他方にこれにより作動される2個のスイッチを設け、このスイッチを前記各機構駆動用電動機Mの制御回路に付加すると共にこれら各制御回路は前記両スイッチの作動状態に応じて前記各回転体の復帰時の回転方向を規制すると共に各回転体がそれぞれの定常位置まで復帰回転したとき自動的にこの位置で停止するように構成してなる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−033463号公報
【特許文献2】特許3746744号公報
【特許文献3】特開昭62−206798号公報
【特許文献4】特公昭51−7389号公報
【特許文献5】実開昭52−18073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、治療用放射線の線量をより高精度に制御する放射線治療システムを提供することにある。
本発明の他の課題は、治療用放射線の生成に用いられる高周波を伝送する導波管がロータリージョイントを含むときに、その治療用放射線の線量をより高精度に制御する放射線治療システムを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、高周波を伝送する伝送効率の変動を低減するロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明による放射線治療システムは、高周波源(5)から加速管(64)に高周波を伝送する導波路を形成する導波管(8)と、導波管(8)を冷却する冷却器とを備えている。加速管(64)は、高周波を用いて治療用放射線(23)を生成するための荷電粒子(57)を加速する。導波管(8)は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。放射線治療システムは、導波管(8)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0012】
導波管(8)は、一端に対して他端が回転可能であるロータリージョイント(75)を含んでいる。冷却器は、ロータリージョイント(75)を冷却する。ロータリージョイント(75)は、変形しない固定導波管(72、73)に比較して、伝送効率が変形に対してより大きく変動する。放射線治療システムは、ロータリージョイント(75)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0013】
導波管(8)は、ロータリージョイント(75)に隣接する固定導波管(72、73)をさらに含んでいる。冷却器は、固定導波管(72、73)をさらに冷却することが好ましい。
【0014】
本発明による放射線治療システムは、導波路のうちのロータリージョイント(75)と加速管(64)との間に介設される非可逆回路素子(77)をさらに備えている。ロータリージョイント(75)は、固定導波管(72、73)に比較して、その高周波を反射する程度が大きい。放射線治療システムは、非可逆回路素子(77)が導波路を高周波源(5)から加速管(64)に向かって進行する高周波進行分に比較して導波路を加速管(64)から高周波源(5)に向かって進行する高周波反射分を減衰させるときに、その高周波の打ち消しあいおよび波形歪みの発生を防止し、伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0015】
本発明による放射線治療システムは、導波路の状態を出力する装置(2、6)と、高周波を用いて加速管(64)に所定電力が供給されるように、その状態に基づいて高周波源(5)を制御する制御装置(7)とをさらに備えている。放射線治療システムは、導波路の状態により導波管(8)が高周波を伝送する伝送効率が変化するときに、加速管(64)により生成される荷電粒子(58)のエネルギーのばらつきを小さくすることができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)のばらつきを小さくすることができる。その結果、放射線治療システムは、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0016】
本発明によるロータリージョイント(75)は、高周波を伝送する導波路を形成し、その導波路の一端に対してその導波路の他端が回転可能であるロータリージョイント本体(91、92)と、ロータリージョイント本体(91、92)を冷却する冷却器とを備えている。ロータリージョイント(75)は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。このようなロータリージョイント(75)は、ロータリージョイント本体(91、92)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による放射線治療システムは、導波管を伝送する高周波を用いて治療用放射線が生成されるときに、その治療用放射線の線量をより高精度に制御することができる。本発明によるロータリージョイントは、高周波を伝送する伝送効率の変動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明による放射線治療システムの実施の形態を記載する。その放射線治療システム1は、図1に示されているように、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3とクライストロン5とセンサ6と制御装置7とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように放射線治療装置3に接続されている。クライストロン5は、制御装置7により発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流が制御されて所定の電力の高周波を生成し、導波管8を介してその高周波を放射線治療装置3に出力する。なお、制御対象は前記3項目全てを対象とする必要はなく、そのうちの一部のみでも構わない。以下、記載の各制御対象についても特に記載しない限り同様である。センサ6は、導波管8の状態を計測する装置から形成されている。その装置は、旋回角センサ6−1と走行角センサ6−2とパン角センサ6−3とチルト角センサ6−4と伝送効率センサ6−5とを含んでいる。制御装置7は、センサ6により計測された状態に基づいて、クライストロン5を制御する。
【0019】
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させ、土台に対するOリング12の旋回角を出力する。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させ、Oリング12に対する走行ガントリ14の走行角を出力する。
【0020】
首振り機構15は、走行ガントリ14のリングの内側に固定され、治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14の内側に配置されるように、治療用放射線照射装置16を走行ガントリ14に支持している。首振り機構15は、パン軸21およびチルト軸22を有している。チルト軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。パン軸21は、パン軸21に直交している。首振り機構15は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、パン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、チルト軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。
【0021】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線23は、パン軸21とチルト軸22とが交差する交点を通る直線に概ね沿って放射される。治療用放射線23は、一様強度分布を持つように形成されている。治療用放射線23は、さらに、一部が遮蔽されて治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状が制御されている。
【0022】
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、首振り機構15で治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように一旦調整されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0023】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0024】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0025】
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
【0026】
放射線治療装置3は、さらに、センサアレイ31を備えている。センサアレイ31は、センサアレイ31と治療用放射線照射装置16とを結ぶ線分がアイソセンタ19を通るように配置されて、走行ガントリ14のリングの内側に固定されている。センサアレイ31は、治療用放射線照射装置16により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した治療用放射線23を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ31としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0027】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
【0028】
図3は、治療用放射線照射装置16を示している。治療用放射線照射装置16は、電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と線量計61と2次コリメータ55とマルチリーフコリメータ56とを備えている。電子ビーム加速装置51は、電子を加速して生成される電子ビーム57をX線ターゲット52に照射する。X線ターゲット52は、高原子番号材(タングステン、タングステン合金等)から形成され、電子ビーム57が照射された際の制動放射により生成される放射線59を放出する。放射線59は、X線ターゲット52が内部に有する点である仮想的点線源58を通る直線に概ね沿って放射される。1次コリメータ53は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、所望の部位以外に放射線59が照射されないように放射線59を遮蔽する。フラットニングフィルタ54は、アルミニウム等から形成され、概ね円錐形の突起が形成される板に形成されている。フラットニングフィルタ54は、その突起がX線ターゲット側に面するように配置される。フラットニングフィルタ形状は、本フラットニングフィルタを通過した後に、その放射方向に垂直である平面の所定領域における線量が概ね一様に分布するように形成される。2次コリメータ55は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、放射線60が所望の部位以外に照射されないように放射線60を遮蔽する。このようにして形成された一様強度分布を持つ放射線60は、放射線治療装置制御装置2により制御を受けたマルチリーフコリメータ56により、一部が遮蔽されて、別途構築した治療計画に基づく性状である治療用放射線23を生成することになる。すなわち、マルチリーフコリメータ56は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、放射線60の一部を遮蔽して治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を制御する。
【0029】
線量計61は、透過する放射線の強度を測定する透過型電離箱であり、放射線60が透過するように、1次コリメータ53と2次コリメータ55との間に配置されている。線量計61は、透過する放射線60の線量を測定し、その強度を放射線治療装置制御装置2に出力する。このような線量計61は、非破壊的検証可能である点で好ましい。なお、線量計61は、透過型電離箱と異なる他のX線強度検出器を適用することもできる。そのX線強度検出器としては、半導体検出器、シンチレーション検出器が例示される。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、透過型電離箱のように放射線軌道上に代替設置することが困難であるためにその軌道外に配置することが好ましく、たとえば、アイソセンタ19を隔てて治療用放射線照射装置16に対向する位置に配置されるように走行ガントリ14に固定される。電離箱は、一般に、時定数が数秒程度であり、応答性が悪い。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、軌道外に配置されるときに電離箱より信号強度が低いという欠点があるが、電離箱より応答性がよくなり、好ましい。
【0030】
電子ビーム加速装置51は、電子線発生部63と加速管64とを備えている。電子線発生部63は、カソード66とグリッド67とを備えている。加速管64は、円筒形に形成され、その円筒の内部に適切な間隔で並ぶ複数の電極68を備えている。放射線治療装置3は、さらに、カソード電源70とグリッド電源69とクライストロン5とを備えている。カソード電源70は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、カソード66が加熱されてカソード66から所定の量の電子が放出されるように(すなわち、カソード66が所定の温度で維持されるように)、カソード66に電力を供給する。グリッド電源69は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、電子線発生部63から所定の量の電子だけが放出されるように、グリッド67とカソード66との間に所定の電圧を印加する。クライストロン5は、導波管8を介して加速管64に接続されている。クライストロン5は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、加速管64が電子線発生部63から放出される電子を所定のエネルギーを有するまで加速するように、導波管8を介して加速管64にマイクロ波を入射する。なお、クライストロン5は、他の高周波源に置換することができる。その高周波源としては、マグネトロン、多極管が例示される。
【0031】
クライストロン5は、図4に示されているように、放射線治療装置3が支持される土台に支持されている。導波管8は、クライストロン5により生成される高周波が伝播する導波路を形成している。導波管8は、固定導波管71、72、73とフレキシブル導波管74とロータリージョイント75とを備えている。固定導波管71は、変形しない導波路を形成し、その土台に支持されている。固定導波管72は、変形しない導波路を形成し、回転台76に支持されている。回転台76は、旋回駆動装置11により、回転軸17を中心に回転可能に支持され、Oリング12と同体に回転軸17を中心に回転される。このため、固定導波管72は、Oリング12と同体に回転軸17を中心に回転する。固定導波管73は、変形しない導波路を形成し、走行ガントリ14に支持され、走行ガントリ14と同体に運動する。
【0032】
フレキシブル導波管74は、蛇腹構造(べローズ)に形成され、屈曲および伸縮が可能である導波路を形成している。フレキシブル導波管74は、一端が固定導波管71に接続され、他端が固定導波管72に接続されている。フレキシブル導波管74は、土台に対してOリング12が回転することにより変形し、フレキシブル導波管74の形状は、土台に対するOリング12の旋回角に概ね対応している。すなわち、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角は、フレキシブル導波管74の変形が可能な範囲により制限されている。
【0033】
ロータリージョイント75は、変形可能である導波路を形成し、回転軸18に重なるように配置されている。ロータリージョイント75は、一端が固定導波管72に接続され、他端が固定導波管73に接続されている。
【0034】
固定導波管73は、図5に示されているように、ロータリージョイント75に接続されている端の反対側の端が首振り機構15の近傍に配置されている。導波管8は、さらに、図5に示されているように、サーキュレータ77を備えている。サーキュレータ77は、固定導波管73の途中に配置されている。サーキュレータ77は、固定導波管73をクライストロン5から加速管64に向かって進行する高周波に比較して、加速管64からクライストロン5に向かって進行する反射波を減衰させる。加速管64に入射したマイクロ波の一部は、反射する。この反射率は、加速管の共振度により一定である。また、ロータリージョイント75などの自由導波管ではマイクロ波の一部は、反射する。このため加速管64からの反射波の一部は、自由導波管で再度反射された後に加速管64に向かう。しかし、サーキュレータ77を配したことで、加速管からの反射波を系外に配することが可能となるため、結果的にクライストロン5から供給したマイクロ波が、前記反射マイクロ波と重畳することによる打消し・歪みを抑制することが可能となる。
【0035】
図6は、首振り機構15を示している。首振り機構15は、照射装置支持体81と中間体82とを備えている。照射装置支持体81は、走行ガントリ14に支持され、走行ガントリ14と同体に運動する。チルト軸22は、照射装置支持体81に対して固定されている。中間体82は、チルト軸22を中心に回転可能に照射装置支持体81に支持されている。中間体82は、チルト軸22を中心に回転可能に照射装置支持体81に支持されている。中間体82は、さらに、チルト軸22を中心に回転するときに、照射装置支持体81の一部に接触して、回転することができる範囲が制限されている。パン軸21は、中間体82に対して固定されている。治療用放射線照射装置16は、パン軸21を中心に回転可能に中間体82に支持されている。治療用放射線照射装置16は、さらに、パン軸21を中心に回転するときに、中間体82の一部に接触して、回転することができる範囲が制限されている。このような制限は、首振り機構15により治療用放射線照射装置16が移動する範囲を旋回駆動装置11と走行駆動装置とにより治療用放射線照射装置16が移動する範囲より小さくしている。
【0036】
首振り機構15は、さらに、図示されていないパン軸駆動装置とチルト軸駆動装置とを備えている。そのパン軸駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されてパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。そのチルト軸駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されてチルト軸22を中心に中間体82を回転させる。
【0037】
導波管8は、さらに、固定導波管84と固定導波管85とフレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87とを備えている。固定導波管84は、変形しない導波路を形成し、中間体82に支持され、中間体82と同体に運動する。固定導波管85は、変形しない導波路を形成し、治療用放射線照射装置16に支持され、治療用放射線照射装置16と同体に運動する。固定導波管85は、一端が加速管64に接続されている。フレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87とは、蛇腹構造(べローズ)に形成され、屈曲および伸縮が可能である導波路を形成している。フレキシブル導波管86は、長手方向がチルト軸22に垂直になるように、かつ、チルト軸22に重なるように配置されている。フレキシブル導波管86は、一端が固定導波管73に接続され、他端が固定導波管84に接続されている。フレキシブル導波管86は、中間体82に対して治療用放射線照射装置16が回転することにより変形し、フレキシブル導波管86の形状は、中間体82に対する治療用放射線照射装置16のチルト角に概ね対応している。フレキシブル導波管87は、長手方向がパン軸21に垂直になるように、かつ、パン軸21に重なるように配置されている。フレキシブル導波管87は、一端が固定導波管84に接続され、他端が治療用放射線照射装置16の加速管64に接続されている。フレキシブル導波管87は、照射装置支持体81に対して中間体82が回転することにより変形し、フレキシブル導波管87の形状は、照射装置支持体81に対する中間体82のパン角に概ね対応している。このような配置は、フレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87との撓み吸収性を活用する点で好ましい。
【0038】
図7は、ロータリージョイント75を示している。ロータリージョイント75は、第1筒部分91と第2筒部分92とを備えている。第1筒部分91は、回転軸93を中心とする筒状に形成されている。第2筒部分92は、回転軸93を中心とする筒状に形成され、回転軸93を中心に回転可能に第1筒部分91に支持されている。第1筒部分91は、その筒の側面の一部が固定導波管72の一端に接続されている。第2筒部分92は、その筒の側面の一部が固定導波管73の一端に接続されている。ロータリージョイント75は、回転軸93が回転軸18に重なるように、放射線治療装置3に配置されている。すなわち、ロータリージョイント75は、Oリング12に対して走行ガントリ14が回転することにより、第1筒部分91に対して第2筒部分92が回転する。このとき、第1筒部分91に対する第2筒部分92の角度は、Oリング12に対する走行ガントリ14の走行角に対応している。
【0039】
ロータリージョイント75は、固定導波管72と固定導波管73とを回転可能に連結し、固定導波管72と固定導波管73との間を高周波が伝送可能に連結している。このようなロータリージョイント75は、周知であり、たとえば、特開2005−033463号公報に開示されている。
【0040】
ロータリージョイント75は、図8に示されているように、軸受け94を備えている。軸受け94は、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間99に配置されている。軸受け94は、回転軸93を中心に回転可能に第2筒部分92を第1筒部分91に支持している。
【0041】
ロータリージョイント75は、さらに、水冷管95、96、97を備えている。水冷管95、96、97は、それぞれ、図示されていない管を内部に備えている。水冷管95は、固定導波管72のロータリージョイント75に接続される側の端に熱伝導可能に接触している。水冷管95は、内部の管に冷水が流されることにより、固定導波管72のロータリージョイント75に接続される側の端を冷却する。水冷管96は、固定導波管73のロータリージョイント75に接続される側の端に熱伝導可能に接触している。水冷管96は、内部の管に冷水が流されることにより、固定導波管73のロータリージョイント75に接続される側の端を冷却する。水冷管97は、第1筒部分91に熱伝導可能に接触している。水冷管96は、内部の管に冷水が流されることにより、ロータリージョイント75を冷却する。なお、水冷管95、96、97は、他の冷却器に置換することもできる。その冷却器としては、水と異なる他の冷媒を用いる冷却器、ペルチェ素子を用いる電子冷却器が例示される。
【0042】
ロータリージョイント75は、各構成要素の加工・組立精度、外力の影響に加えて、周辺温度、隙間99からの漏洩分を含む高周波伝送に伴う発熱等の温度変化により、変形を生じる。このような変形は、隙間99の大きさを増減させ、ロータリージョイント75が高周波を伝送する伝送効率を変動させる。このため、ロータリジョイント75を冷却手段により一定温度に保持することで、温度変化に伴う伝送効率の変動を抑制することができる。
【0043】
ここで、旋回角センサ6−1は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。走行角センサ6−2は、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。パン角センサ6−3は、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。チルト角センサ6−4は、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。伝送効率センサ6−5は、導波管8のうちの加速管64に近い部分(たとえば、固定導波管85の途中)に配置され、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを計測し、導波管8が高周波を伝送する伝送効率を生成する。このような伝送効率センサ6−5は、周知であり、たとえば、方向性結合器を用いたものが例示される。
なお、加速管の共振度が一定と見做せる場合には、伝送効率センサ6−5は、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力のみを計測することで、導波管8が高周波を伝送する伝送効率に相当する物理量の間接評価も可能である。
また、一般にフレキシブル導波管は、ロータリジョイントと比較して、状態に対する反射率の変化が小さく、また、可撓・伸縮範囲、即ち状態変化可能範囲が小さい。このため、フレキシブル導波管に使用条件における反射率の状態依存性が無視しえる場合には、計測対象はロータリジョイント部のみでも構わない。本実施例では以下はフレキシブル導波管部も状態を計測する場合で記載する。
【0044】
図9は、制御装置7を示している。制御装置7は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、制御装置7にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、そのCPUにより生成された画面を表示するディスプレイが例示される。そのインターフェースは、制御装置7に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、クライストロン5とセンサ6とを含んでいる。
【0045】
制御装置7は、コンピュータプログラムである制御データベース101と状態収集部102と制御部103とを備えている。
【0046】
制御データベース101は、センサ6により計測される計測値とクライストロン5を制御する制御値との関係を示す制御テーブルを他のコンピュータプログラムにより検索可能に記憶装置に記録している。
【0047】
状態収集部102は、センサ6により計測される計測値をセンサ6から収集する。すなわち、状態収集部102は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を旋回角センサ6−1から収集する。状態収集部102は、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を走行角センサ6−2から収集する。状態収集部102は、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角をパン角センサ6−3から収集する。状態収集部102は、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角をチルト角センサ6−4から収集する。状態収集部102は、さらに、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを伝送効率センサ6−5から収集する。
【0048】
制御部103は、制御データベース101により記録される制御テーブルを参照して、状態収集部102により収集された計測値に基づいてクライストロン5を制御する。
【0049】
図10は、制御データベース101により記録される制御テーブルを示している。その制御テーブル104は、旋回角105と走行角106とパン角107とチルト角108とを制御量109に対応付けている。すなわち、旋回角105のうちの任意の要素と走行角106のうちの任意の要素とパン角107のうちの任意の要素とチルト角108のうちの任意の要素との組み合わせは、制御量109のうちの1つの要素に対応している。旋回角105は、フレキシブル導波管74の形状を示し、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する回転角を示している。走行角106は、ロータリージョイント75の形状を示し、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する回転角を示している。パン角107は、フレキシブル導波管87の形状を示し、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転する回転角を示している。チルト角108は、フレキシブル導波管86の形状を示し、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転する回転角を示している。制御量109は、センサ6により旋回角と走行角とパン角とチルト角とが計測された時に、クライストロン5を制御するときに用いられる制御量を示し、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流を示している。
【0050】
このとき、制御部103は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。制御部103は、さらに、状態収集部102により収集される高周波の進行分の電力と反射分の電力とに基づいて、加速管64に所定の電力が供給されるように、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流をフィードバック制御する。
【0051】
すなわち、制御テーブル104は、制御装置7が状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量に基づいてクライストロン5を制御するときに、加速管64に一定の電力が供給されるように、作成される。
【0052】
放射線治療システム1を用いた放射線治療では、ユーザが、まず、放射線治療装置制御装置2を用いて治療計画を作成する。その治療計画は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線23の線量および性状とを示している。放射線治療装置制御装置2は、追尾動作と照射動作とを繰り返して実行する。その追尾動作では、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された画像に基づいて患部位置を算出する。その患部位置算出は、患部と異なるランドマークの位置に基づくものでもよい。そのランドマークとしては、その患部と連動して運動する臓器、物体が例示される。その臓器としては、骨(肋骨)、横隔膜、膀胱が例示される。その物体は、イメージャシステムにより検出される材料から形成され、その患部と連動して運動するようにその患者の体内に埋め込まれる。その物体としては、金から形成される球である金マーカが例示される。放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線23がその患部位置を透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を移動させる。その照射動作では、放射線治療装置制御装置2は、その追尾動作により治療用放射線照射装置16が移動した直後に治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23をその患部に照射する。
【0053】
制御装置7は、その照射動作と並行して動作する。制御装置7は、まず、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を旋回角センサ6−1から収集する。制御装置7は、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を走行角センサ6−2から収集する。制御装置7は、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角をパン角センサ6−3から収集する。制御装置7は、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角をチルト角センサ6−4から収集する。制御装置7は、さらに、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを伝送効率センサ6−5から収集する。
【0054】
制御装置7は、制御テーブル104を参照して、センサ6により計測された旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出する。制御装置7は、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。制御装置7は、さらに、伝送効率センサ6−5により計測された高周波の進行分の電力と反射分の電力とに基づいて、加速管64に所定の電力が供給されるように、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流をフィードバック制御する。制御装置7は、このような動作を定期的に繰り返し実行する。
【0055】
導波管8は、一般に、高周波を伝送することにより発熱して変形し、その高周波を伝送する伝送効率が変動する。特に、ロータリージョイント75は、その変形により隙間99の大きさが増減し、固定導波管71、72、73、84、85に比較して、その伝送効率がより大きく変動する。また、周辺温度の変化によっても導波管8は変形を生じる。本発明による放射線治療システム1は、ロータリージョイント75と固定導波管72、73とを冷却することにより、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動を低減し、その変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、本発明による放射線治療システム1は、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【0056】
なお、ロータリージョイント75は、水冷管95、96、97から選択されるいくつかの水冷管だけを備えることもできる。このときも、本発明による放射線治療システム1は、同様にして、ロータリージョイント75の温度の変動を低減し、その変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。本発明による放射線治療システム1は、さらに、他の水冷管を備えることもできる。その水冷管は、固定導波管71、72、73、84、85とフレキシブル導波管74、86、87とから選択されるいくつかの導波管に熱伝導可能に接触している。このとき、本発明による放射線治療システム1は、さらに、導波管8の温度の変動をより低減し、導波管8の変形をより低減させて、導波管8の伝送効率の変動をより低減させることができる。
【0057】
図11は、ロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その関係111は、任意の整数nを用いて、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示している。すなわち、関係111は、ロータリージョイント75の第1筒部分91と第2筒部分92とが回転することにより、伝送効率が変化することを示している。また、本変動量の絶対値は逆位相でも同一とは限らず、一般にΔaとΔbは異なる。このような伝送効率の変化は、理論的に起こり得ないが、構成要素の機械的精度及び組立精度のため、その回転によりロータリージョイント75の一部(たとえば、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間の程度)が変化すること、両筒部分の間の結合係数が変化すること等により発生する。なお、前述のように当該変化はロータリージョイント75の温度変化により更に増加する。
【0058】
なお、フレキシブル導波管74、86、87に関してもロータリージョイント75と同様にして、その変形に伴って伝送効率が変化する。すなわち、フレキシブル導波管74は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、その旋回角に対応している。フレキシブル導波管86は、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、そのチルト角に対応している。フレキシブル導波管87は、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、そのパン角に対応している。
【0059】
図12は、導波管8がサーキュレータ77を備えていないときのロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その伝送効率は、導波管8のうちの自由導波管(フレキシブル導波管74、86、87、ロータリージョイント75)より加速管64に近い部分(たとえば、固定導波管85の途中)で計測される。その関係121は、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示している。すなわち、関係121は、ロータリージョイント75の第1筒部分91と第2筒部分92とが回転することにより、伝送効率が変化することを示している。このような伝送効率の変化は、理論的に起こり得ないが、構成要素の機械的精度及び組立精度のため、その回転により、ロータリージョイント75の一部(たとえば、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間の程度)が変化すること、両筒部分の間の結合係数が変化すること等により発生する。
【0060】
図12は、さらに、導波管8がサーキュレータ77を備えているときのロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その関係122は、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示し、さらに、伝送効率の変動の大きさが関係121により示される伝送効率の大きさより小さいことを示している。すなわち、図12は、導波管8がサーキュレータ77を備えることにより、導波管8により伝送される高周波の伝送効率の変動の大きさを低減することができることを示している。本来ならロータリージョイント75の温度変化による伝送効率の変動に対する補正も更に加えることも要するが、本発明ではロータリージョイント75に冷却手段を具備することにより当該変化の影響を抑制しているため、より簡単且つ安定して変動の大きさを低減できることになる。
【0061】
図13は、制御装置7がセンサ6の計測値に基づいてクライストロン5を制御しないときのロータリージョイント75の回転角とクライストロン5から出力される高周波の電力との関係を示している。その関係112は、その高周波の電力がその回転角に独立であることを示し、その高周波の電力が一定であることを示している。図13は、さらに、フレキシブル導波管74、86、87が変形しない場合で制御装置7がセンサ6の計測値に基づいてクライストロン5を制御するときのロータリージョイント75の回転角とクライストロン5から出力される高周波の電力との関係を示している。その関係113は、その高周波の電力がその回転角に対応していることを示し、回転角度θに対応する高周波の電力が、回転角度θ+2πnに対応する高周波の電力に等しいことを示している。すなわち、制御装置7は、その高周波の電力がその回転角に対応し、回転角度θに対応する高周波の電力が回転角度θ+2πnに対応するように、クライストロン5を制御する。
【0062】
図14は、クライストロン5が関係112に示されるように高周波を出力するときのロータリージョイント75の回転角と加速管64に入力される電力との関係を示している。その関係114は、回転角度θに対応する電力が回転角度θ+2πnに対応する電力に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する電力と異なる場合があることを示している。図12は、さらに、クライストロン5が関係113に示されるように高周波を出力するときのロータリージョイント75の回転角と加速管64に入力される電力との関係を示している。その関係115は、その電力がその回転角に独立であることを示し、その電力が一定であることを示している。
【0063】
本発明による放射線治療システム1は、さらに、加速管64がクライストロン5に対して移動する場合であっても、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。すなわち、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、より必要であり、伝送効率の変動をより低減することに有用である。その結果、本発明による放射線治療システム1は、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【0064】
本発明による放射線治療システムの実施の他の形態は、既述の実施の形態における制御部103が他の制御部に置換されている。その制御部は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。
【0065】
このとき、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、導波管8の伝送効率の変動をより低減することに有用である。このような放射線治療システムは、放射線治療システム1と同様にして、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。このような放射線治療システムは、さらに、伝送効率センサ6−5を備える必要がなく、より安価に製造することができる。
【0066】
本発明による放射線治療システムの実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態における状態収集部102が他の状態収集部に置換され、制御部103が他の制御部に置換されている。その状態収集部は、放射線治療装置制御装置2から旋回駆動装置11と走行駆動装置とパン軸駆動装置とチルト軸駆動装置とに伝達される状態制御信号を放射線治療装置制御装置2から収集し、その制御信号に基づいて導波管8の状態を算出する。すなわち、その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角を算出する。その制御部は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により算出される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。
【0067】
このとき、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、より必要であり、導波管8の伝送効率の変動をより低減することに有用である。このような放射線治療システムは、放射線治療システム1と同様にして、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。このような放射線治療システムは、さらに、旋回角センサ6−1と走行角センサ6−2とパン角センサ6−3とチルト角センサ6−4と伝送効率センサ6−5とを備える必要がなく、より安価に製造することができる。
【0068】
なお、クライストロン5は、他の高周波源に置換することができる。その高周波源としては、マグネトロン、多極管が例示される。そのマグネトロンは、マグネトロン電流が制御されて所定の電力の高周波を生成する。このとき、制御装置7は、そのマグネトロン電流を制御することにより、電子ビーム57のエネルギーの変動を低減し、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができる。その多極管は、発振RF強度または多極管加速電圧または多極管電流が制御されて所定の電力の高周波を生成する。このとき、制御装置7は、発振RF強度または多極管加速電圧または多極管電流を制御することにより、電子ビーム57のエネルギーの変動を低減し、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができる。
【0069】
なお、制御テーブル104は、導波管8による導波路の形状と異なる他の状態の集合を制御量109にさらに対応付けることができる。その状態としては、導波管8の各部分の温度が例示される。このとき、制御装置7は、その導波路の形状とその状態に基づいてクライストロン5を制御することにより、放射線治療システム1より増して、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。
【0070】
なお、制御テーブル104は、フレキシブル導波管74、86、87の変形に独立して、ロータリージョイント75の回転角の集合だけを制御量109にさらに対応付けることができる。フレキシブル導波管は、一般に、ロータリージョイントに比較して、変形による伝送効率の変動が十分に小さい。このため、制御装置7は、その導波路の形状に基づいてクライストロン5を制御することにより、放射線治療システム1に比較して性能が少し劣るが、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。
【0071】
本発明による放射線治療システムの実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態における制御装置7を備えていない。このような放射線治療システムは、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が十分に小さく、導波管8を冷却することにより伝送効率の変動の程度が十分に低減されるときに、好適である。
【0072】
なお、サーキュレータ77は、導波管8をクライストロン5から加速管64に向かって進行する高周波進行分に比較して導波路を加速管64からクライストロン5に向かって進行する高周波反射分を減衰させる他の非可逆回路素子に置換することができる。その非可逆回路素子としては、アイソレータが例示される。そのアイソレータは、サーキュレータと同様にして、伝送効率の変動の程度を低減することができる。サーキュレータは、そのアイソレータに比較して熱除去能力が大きいために、本発明による放射線治療システム1に適用されることがアイソレータより好ましい。
【0073】
ロータリージョイント75は、放射線治療システム1と異なる装置に適用することもできる。その装置としては、放射光を放射する放射光設備、非破壊検査装置、滅菌装置、半導体基板や液晶基板等の基板の表面をプラズマで処理するプラズマ処理装置が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明による放射線治療システムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、治療用放射線照射装置を示す断面図である。
【図4】図4は、導波管を示す側面図である
【図5】図5は、導波管を示す正面図である
【図6】図6は、首振り機構を示し、導波管を示す斜視図である。
【図7】図7は、ロータリージョイントを示す斜視図である。
【図8】図8は、ロータリージョイントを示す断面図である。
【図9】図9は、制御装置を示すブロック図である。
【図10】図10は、制御テーブルを示す図である。
【図11】図11は、ロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、導波管がサーキュレータを備えていないときのロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示し、導波管がサーキュレータを備えているときのロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、ロータリージョイントの回転角とクライストロンから出力される高周波の電力との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、ロータリージョイントの回転角と加速管に入力される電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 :放射線治療システム
2 :放射線治療装置制御装置
3 :放射線治療装置
5 :クライストロン
6 :センサ
6−1:旋回角センサ
6−2:走行角センサ
6−3:パン角センサ
6−4:チルト角センサ
6−5:伝送効率センサ
7 :制御装置
8 :導波管
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
15:首振り機構
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
21:パン軸
22:チルト軸
23:治療用放射線
24:診断用X線源
25:診断用X線源
31:センサアレイ
32:センサアレイ
33:センサアレイ
35:診断用X線
36:診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
51:電子ビーム加速装置
52:X線ターゲット
53:1次コリメータ
54:フラットニングフィルタ
55:2次コリメータ
56:マルチリーフコリメータ
57:電子ビーム
58:が内部に有する点である仮想的点線源
59:放射線
60:放射線
61:線量計
63:電子線発生部
64:加速管
66:カソード
67:グリッド
68:複数の電極
69:グリッド電源
70:カソード電源
71:固定導波管
72:固定導波管
73:固定導波管
74:フレキシブル導波管
75:ロータリージョイント
76:回転台
77:サーキュレータ
81:照射装置支持体
82:中間体
84:固定導波管
85:固定導波管
86:フレキシブル導波管
87:フレキシブル導波管
91:第1筒部分
92:第2筒部分
93:回転軸
95:水冷管
96:水冷管
97:水冷管
99:隙間
101:制御データベース
102:状態収集部
103:制御部
104:制御テーブル
105:旋回角
106:走行角
107:パン角
108:チルト角
109:制御量
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療システムに関し、特に、患部に放射線を照射することにより患者を治療するときに利用される放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患部(腫瘍)に治療用放射線を照射することにより患者を治療する放射線治療が知られている。その治療用放射線としては、制動放射により生成される放射線が例示される。その放射線治療は、治療効果が高いことが望まれ、その放射線は、患部の細胞に照射される線量に比較して、正常な細胞に照射される線量がより小さいことが望まれている。その患部の位置を追尾し、その位置に治療用放射線を照射する放射線治療装置が知られている。治療用放射線の線量をより高精度に制御することが望まれている。
【0003】
特開2005−033463号公報には、機械的精度が要求されるチョーク構造を不要とし、それにより、円形導波管内での電磁波の減衰を抑制するとともに、円形導波管からの放電の虞も低減できるようにした導波管ロータリージョイントが開示されている。その導波管ロータリージョイントは、回転結合部を有し両端部が軸心線周りに相対回転可能な円形導波管の各端部に方形導波管が接合された導波管ロータリージョイントにおいて、入力側方形導波管内をTE10モードで伝送される電磁波を上記入力側方形導波管と上記円形導波管との接合部でTE01モードに変換して上記円形導波管内を伝送し、上記円形導波管と出力側方形導波管との接合部で上記電磁波を再びTE01モードからTE10モードに変換して上記出力側方形導波管に出力することを特徴としている。
【0004】
特許3746744号公報には、優れた治療性能を有する放射線治療装置が開示されている。その放射線治療装置は、電子銃、線形加速器及びターゲットからなる治療用放射線発生部と同治療用放射線発生部を首振りさせるジンバル機構を有する照射ヘッドと、この照射ヘッドを予め定めた球面座標上で支持し且つ移動させる支持移動機構と、前記照射ヘッドに供給すべきマイクロ波を発生する、静止位置に配置されるマイクロ波発振器と、一端部が前記マイクロ波発振器に電磁気的に接続され、他端部が前記線形加速器に電磁気的に接続される導波管部とを具備する放射線治療装置において、前記ジンバル機構に搭載される前記導波管部の導波管と、前記マイクロ波発振器からの前記導波管部の導波管とを、フレキシブル導波管により連結したことを特徴としている。
【0005】
特開昭62−206798号公報には、加速器本体に超小型、軽量の加速管を搭載し、マイクロ波源とを自在導波管で接合する等ことにより、小型で安価な精度の高い線形加速装置が開示されている。その線形加速器は、線形加速器本体とそのマイクロ波源とを伸縮折曲げ自在な導波管で回転及び上下自由に接合したことを特徴としている。
【0006】
特公昭51−7389号公報には、接続器全体の構成を小型化し、軸心合せを容易ならしめると共に更に回転角度範囲の増大を可能ならしめる回転型導波管接続器が開示されている。その回転型導波管接続器は、固定側円板とこれに重なる回転側円板との互に対向する面に回転軸心と同心に互に対向する複数個の環状凹溝を設けて複数個の環状導波管路を形成し、両円板の各環状凹溝の一部に電磁波の出入する導波管接続口を設けると共に各環状凹溝の前記導波管接続口に隣接する壁面に当該導波管路を遮断する仕切りを突設して該管路内の電磁波進行方向を規制することを特徴としている。
【0007】
実開昭52−18073号公報には、コバルト60などのラジオアイソトープの線源容器を患者のまわりに回転させながら治療を行う回転形放射線治療装置が開示されている。その回転形放射線治療装置は、線源容器を患者のまわりに回転させる機構とこの回転中心軸と平行な軸上において前記容器を前後左右に回転させる機構ならびに照射野の回転機構を有する放射線治療装置において、前記容器の各運動に対する回転体とそれに対する静止体のいずれか一方に回転体が特定の定常位置にあるかどうかを感知するカムを、他方にこれにより作動される2個のスイッチを設け、このスイッチを前記各機構駆動用電動機Mの制御回路に付加すると共にこれら各制御回路は前記両スイッチの作動状態に応じて前記各回転体の復帰時の回転方向を規制すると共に各回転体がそれぞれの定常位置まで復帰回転したとき自動的にこの位置で停止するように構成してなる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−033463号公報
【特許文献2】特許3746744号公報
【特許文献3】特開昭62−206798号公報
【特許文献4】特公昭51−7389号公報
【特許文献5】実開昭52−18073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、治療用放射線の線量をより高精度に制御する放射線治療システムを提供することにある。
本発明の他の課題は、治療用放射線の生成に用いられる高周波を伝送する導波管がロータリージョイントを含むときに、その治療用放射線の線量をより高精度に制御する放射線治療システムを提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、高周波を伝送する伝送効率の変動を低減するロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための最良の形態・実施例で使用される符号を括弧付きで用いて、課題を解決するための手段を記載する。この符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための最良の形態・実施例の記載との対応を明らかにするために付加されたものであり、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明による放射線治療システムは、高周波源(5)から加速管(64)に高周波を伝送する導波路を形成する導波管(8)と、導波管(8)を冷却する冷却器とを備えている。加速管(64)は、高周波を用いて治療用放射線(23)を生成するための荷電粒子(57)を加速する。導波管(8)は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。放射線治療システムは、導波管(8)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0012】
導波管(8)は、一端に対して他端が回転可能であるロータリージョイント(75)を含んでいる。冷却器は、ロータリージョイント(75)を冷却する。ロータリージョイント(75)は、変形しない固定導波管(72、73)に比較して、伝送効率が変形に対してより大きく変動する。放射線治療システムは、ロータリージョイント(75)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0013】
導波管(8)は、ロータリージョイント(75)に隣接する固定導波管(72、73)をさらに含んでいる。冷却器は、固定導波管(72、73)をさらに冷却することが好ましい。
【0014】
本発明による放射線治療システムは、導波路のうちのロータリージョイント(75)と加速管(64)との間に介設される非可逆回路素子(77)をさらに備えている。ロータリージョイント(75)は、固定導波管(72、73)に比較して、その高周波を反射する程度が大きい。放射線治療システムは、非可逆回路素子(77)が導波路を高周波源(5)から加速管(64)に向かって進行する高周波進行分に比較して導波路を加速管(64)から高周波源(5)に向かって進行する高周波反射分を減衰させるときに、その高周波の打ち消しあいおよび波形歪みの発生を防止し、伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、放射線治療システムは、加速管(64)により生成される荷電粒子(57)のエネルギーの変動を低減することができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0015】
本発明による放射線治療システムは、導波路の状態を出力する装置(2、6)と、高周波を用いて加速管(64)に所定電力が供給されるように、その状態に基づいて高周波源(5)を制御する制御装置(7)とをさらに備えている。放射線治療システムは、導波路の状態により導波管(8)が高周波を伝送する伝送効率が変化するときに、加速管(64)により生成される荷電粒子(58)のエネルギーのばらつきを小さくすることができ、治療用放射線(23)のエネルギー(エネルギー分布)のばらつきを小さくすることができる。その結果、放射線治療システムは、治療用放射線(23)の線量をより高精度に制御することができる。
【0016】
本発明によるロータリージョイント(75)は、高周波を伝送する導波路を形成し、その導波路の一端に対してその導波路の他端が回転可能であるロータリージョイント本体(91、92)と、ロータリージョイント本体(91、92)を冷却する冷却器とを備えている。ロータリージョイント(75)は、高周波を伝送するときに、発熱して変形し、伝送効率を変動させることがある。このようなロータリージョイント(75)は、ロータリージョイント本体(91、92)を冷却することによりその変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による放射線治療システムは、導波管を伝送する高周波を用いて治療用放射線が生成されるときに、その治療用放射線の線量をより高精度に制御することができる。本発明によるロータリージョイントは、高周波を伝送する伝送効率の変動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明による放射線治療システムの実施の形態を記載する。その放射線治療システム1は、図1に示されているように、放射線治療装置制御装置2と放射線治療装置3とクライストロン5とセンサ6と制御装置7とを備えている。放射線治療装置制御装置2は、パーソナルコンピュータに例示されるコンピュータである。放射線治療装置制御装置2は、双方向に情報を伝送することができるように放射線治療装置3に接続されている。クライストロン5は、制御装置7により発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流が制御されて所定の電力の高周波を生成し、導波管8を介してその高周波を放射線治療装置3に出力する。なお、制御対象は前記3項目全てを対象とする必要はなく、そのうちの一部のみでも構わない。以下、記載の各制御対象についても特に記載しない限り同様である。センサ6は、導波管8の状態を計測する装置から形成されている。その装置は、旋回角センサ6−1と走行角センサ6−2とパン角センサ6−3とチルト角センサ6−4と伝送効率センサ6−5とを含んでいる。制御装置7は、センサ6により計測された状態に基づいて、クライストロン5を制御する。
【0019】
図2は、放射線治療装置3を示している。放射線治療装置3は、旋回駆動装置11とOリング12と走行ガントリ14と首振り機構15と治療用放射線照射装置16とを備えている。旋回駆動装置11は、回転軸17を中心に回転可能にOリング12を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸17を中心にOリング12を回転させ、土台に対するOリング12の旋回角を出力する。回転軸17は、鉛直方向に平行である。Oリング12は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、回転軸18を中心に回転可能に走行ガントリ14を支持している。回転軸18は、鉛直方向に垂直であり、回転軸17に含まれるアイソセンタ19を通る。回転軸18は、さらに、Oリング12に対して固定され、すなわち、Oリング12とともに回転軸17を中心に回転する。走行ガントリ14は、回転軸18を中心とするリング状に形成され、Oリング12のリングと同心円になるように配置されている。放射線治療装置3は、さらに、図示されていない走行駆動装置を備えている。その走行駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されて回転軸18を中心に走行ガントリ14を回転させ、Oリング12に対する走行ガントリ14の走行角を出力する。
【0020】
首振り機構15は、走行ガントリ14のリングの内側に固定され、治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14の内側に配置されるように、治療用放射線照射装置16を走行ガントリ14に支持している。首振り機構15は、パン軸21およびチルト軸22を有している。チルト軸22は、走行ガントリ14に対して固定され、回転軸18に交差しないで回転軸18に平行である。パン軸21は、パン軸21に直交している。首振り機構15は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、パン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させ、チルト軸22を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。
【0021】
治療用放射線照射装置16は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、治療用放射線23を放射する。治療用放射線23は、パン軸21とチルト軸22とが交差する交点を通る直線に概ね沿って放射される。治療用放射線23は、一様強度分布を持つように形成されている。治療用放射線23は、さらに、一部が遮蔽されて治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状が制御されている。
【0022】
治療用放射線23は、このように治療用放射線照射装置16が走行ガントリ14に支持されることにより、首振り機構15で治療用放射線照射装置16がアイソセンタ19に向かうように一旦調整されると、旋回駆動装置11によりOリング12が回転し、または、その走行駆動装置により走行ガントリ14が回転しても、常に概ねアイソセンタ19を通る。即ち、走行・旋回を行うことで任意方向からアイソセンタ19に向けて治療用放射線23の照射が可能になる。
【0023】
放射線治療装置3は、さらに、複数のイメージャシステムを備えている。すなわち、放射線治療装置3は、診断用X線源24、25とセンサアレイ32、33とを備えている。診断用X線源24は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源24は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源24を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源24は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線35を放射する。診断用X線35は、診断用X線源24が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。診断用X線源25は、走行ガントリ14に支持されている。診断用X線源25は、走行ガントリ14のリングの内側に配置され、アイソセンタ19から診断用X線源25を結ぶ線分とアイソセンタ19から治療用放射線照射装置16を結ぶ線分とがなす角が鋭角になるような位置に配置されている。診断用X線源25は、放射線治療装置制御装置2により制御されてアイソセンタ19に向けて診断用X線36を放射する。診断用X線36は、診断用X線源25が有する1点から放射され、その1点を頂点とする円錐状のコーンビームである。
【0024】
センサアレイ32は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ32は、診断用X線源24により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線35を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ33は、走行ガントリ14に支持されている。センサアレイ33は、診断用X線源25により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した診断用X線36を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ32、33としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0025】
このようなイメージャシステムによれば、センサアレイ32、33により得た画像信号に基づき、アイソセンタ19を中心とする透過画像を生成することができる。
【0026】
放射線治療装置3は、さらに、センサアレイ31を備えている。センサアレイ31は、センサアレイ31と治療用放射線照射装置16とを結ぶ線分がアイソセンタ19を通るように配置されて、走行ガントリ14のリングの内側に固定されている。センサアレイ31は、治療用放射線照射装置16により放射されてアイソセンタ19の周辺の被写体を透過した治療用放射線23を受光して、その被写体の透過画像を生成する。センサアレイ31としては、FPD(Flat Panel Detector)、X線II(Image Intensifier)が例示される。
【0027】
放射線治療装置3は、さらに、カウチ41とカウチ駆動装置42とを備えている。カウチ41は、放射線治療システム1により治療される患者43が横臥することに利用される。カウチ41は、図示されていない固定具を備えている。その固定具は、その患者が動かないように、その患者をカウチ41に固定する。カウチ駆動装置42は、カウチ41を土台に支持し、放射線治療装置制御装置2により制御されてカウチ41を移動させる。
【0028】
図3は、治療用放射線照射装置16を示している。治療用放射線照射装置16は、電子ビーム加速装置51とX線ターゲット52と1次コリメータ53とフラットニングフィルタ54と線量計61と2次コリメータ55とマルチリーフコリメータ56とを備えている。電子ビーム加速装置51は、電子を加速して生成される電子ビーム57をX線ターゲット52に照射する。X線ターゲット52は、高原子番号材(タングステン、タングステン合金等)から形成され、電子ビーム57が照射された際の制動放射により生成される放射線59を放出する。放射線59は、X線ターゲット52が内部に有する点である仮想的点線源58を通る直線に概ね沿って放射される。1次コリメータ53は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、所望の部位以外に放射線59が照射されないように放射線59を遮蔽する。フラットニングフィルタ54は、アルミニウム等から形成され、概ね円錐形の突起が形成される板に形成されている。フラットニングフィルタ54は、その突起がX線ターゲット側に面するように配置される。フラットニングフィルタ形状は、本フラットニングフィルタを通過した後に、その放射方向に垂直である平面の所定領域における線量が概ね一様に分布するように形成される。2次コリメータ55は、高原子番号材(鉛、タングステン等)から形成され、放射線60が所望の部位以外に照射されないように放射線60を遮蔽する。このようにして形成された一様強度分布を持つ放射線60は、放射線治療装置制御装置2により制御を受けたマルチリーフコリメータ56により、一部が遮蔽されて、別途構築した治療計画に基づく性状である治療用放射線23を生成することになる。すなわち、マルチリーフコリメータ56は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、放射線60の一部を遮蔽して治療用放射線23が患者に照射されるときの照射野の形状を制御する。
【0029】
線量計61は、透過する放射線の強度を測定する透過型電離箱であり、放射線60が透過するように、1次コリメータ53と2次コリメータ55との間に配置されている。線量計61は、透過する放射線60の線量を測定し、その強度を放射線治療装置制御装置2に出力する。このような線量計61は、非破壊的検証可能である点で好ましい。なお、線量計61は、透過型電離箱と異なる他のX線強度検出器を適用することもできる。そのX線強度検出器としては、半導体検出器、シンチレーション検出器が例示される。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、透過型電離箱のように放射線軌道上に代替設置することが困難であるためにその軌道外に配置することが好ましく、たとえば、アイソセンタ19を隔てて治療用放射線照射装置16に対向する位置に配置されるように走行ガントリ14に固定される。電離箱は、一般に、時定数が数秒程度であり、応答性が悪い。半導体検出器またはシンチレーション検出器は、軌道外に配置されるときに電離箱より信号強度が低いという欠点があるが、電離箱より応答性がよくなり、好ましい。
【0030】
電子ビーム加速装置51は、電子線発生部63と加速管64とを備えている。電子線発生部63は、カソード66とグリッド67とを備えている。加速管64は、円筒形に形成され、その円筒の内部に適切な間隔で並ぶ複数の電極68を備えている。放射線治療装置3は、さらに、カソード電源70とグリッド電源69とクライストロン5とを備えている。カソード電源70は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、カソード66が加熱されてカソード66から所定の量の電子が放出されるように(すなわち、カソード66が所定の温度で維持されるように)、カソード66に電力を供給する。グリッド電源69は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、電子線発生部63から所定の量の電子だけが放出されるように、グリッド67とカソード66との間に所定の電圧を印加する。クライストロン5は、導波管8を介して加速管64に接続されている。クライストロン5は、放射線治療装置制御装置2により制御されて、加速管64が電子線発生部63から放出される電子を所定のエネルギーを有するまで加速するように、導波管8を介して加速管64にマイクロ波を入射する。なお、クライストロン5は、他の高周波源に置換することができる。その高周波源としては、マグネトロン、多極管が例示される。
【0031】
クライストロン5は、図4に示されているように、放射線治療装置3が支持される土台に支持されている。導波管8は、クライストロン5により生成される高周波が伝播する導波路を形成している。導波管8は、固定導波管71、72、73とフレキシブル導波管74とロータリージョイント75とを備えている。固定導波管71は、変形しない導波路を形成し、その土台に支持されている。固定導波管72は、変形しない導波路を形成し、回転台76に支持されている。回転台76は、旋回駆動装置11により、回転軸17を中心に回転可能に支持され、Oリング12と同体に回転軸17を中心に回転される。このため、固定導波管72は、Oリング12と同体に回転軸17を中心に回転する。固定導波管73は、変形しない導波路を形成し、走行ガントリ14に支持され、走行ガントリ14と同体に運動する。
【0032】
フレキシブル導波管74は、蛇腹構造(べローズ)に形成され、屈曲および伸縮が可能である導波路を形成している。フレキシブル導波管74は、一端が固定導波管71に接続され、他端が固定導波管72に接続されている。フレキシブル導波管74は、土台に対してOリング12が回転することにより変形し、フレキシブル導波管74の形状は、土台に対するOリング12の旋回角に概ね対応している。すなわち、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角は、フレキシブル導波管74の変形が可能な範囲により制限されている。
【0033】
ロータリージョイント75は、変形可能である導波路を形成し、回転軸18に重なるように配置されている。ロータリージョイント75は、一端が固定導波管72に接続され、他端が固定導波管73に接続されている。
【0034】
固定導波管73は、図5に示されているように、ロータリージョイント75に接続されている端の反対側の端が首振り機構15の近傍に配置されている。導波管8は、さらに、図5に示されているように、サーキュレータ77を備えている。サーキュレータ77は、固定導波管73の途中に配置されている。サーキュレータ77は、固定導波管73をクライストロン5から加速管64に向かって進行する高周波に比較して、加速管64からクライストロン5に向かって進行する反射波を減衰させる。加速管64に入射したマイクロ波の一部は、反射する。この反射率は、加速管の共振度により一定である。また、ロータリージョイント75などの自由導波管ではマイクロ波の一部は、反射する。このため加速管64からの反射波の一部は、自由導波管で再度反射された後に加速管64に向かう。しかし、サーキュレータ77を配したことで、加速管からの反射波を系外に配することが可能となるため、結果的にクライストロン5から供給したマイクロ波が、前記反射マイクロ波と重畳することによる打消し・歪みを抑制することが可能となる。
【0035】
図6は、首振り機構15を示している。首振り機構15は、照射装置支持体81と中間体82とを備えている。照射装置支持体81は、走行ガントリ14に支持され、走行ガントリ14と同体に運動する。チルト軸22は、照射装置支持体81に対して固定されている。中間体82は、チルト軸22を中心に回転可能に照射装置支持体81に支持されている。中間体82は、チルト軸22を中心に回転可能に照射装置支持体81に支持されている。中間体82は、さらに、チルト軸22を中心に回転するときに、照射装置支持体81の一部に接触して、回転することができる範囲が制限されている。パン軸21は、中間体82に対して固定されている。治療用放射線照射装置16は、パン軸21を中心に回転可能に中間体82に支持されている。治療用放射線照射装置16は、さらに、パン軸21を中心に回転するときに、中間体82の一部に接触して、回転することができる範囲が制限されている。このような制限は、首振り機構15により治療用放射線照射装置16が移動する範囲を旋回駆動装置11と走行駆動装置とにより治療用放射線照射装置16が移動する範囲より小さくしている。
【0036】
首振り機構15は、さらに、図示されていないパン軸駆動装置とチルト軸駆動装置とを備えている。そのパン軸駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されてパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16を回転させる。そのチルト軸駆動装置は、放射線治療装置制御装置2により制御されてチルト軸22を中心に中間体82を回転させる。
【0037】
導波管8は、さらに、固定導波管84と固定導波管85とフレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87とを備えている。固定導波管84は、変形しない導波路を形成し、中間体82に支持され、中間体82と同体に運動する。固定導波管85は、変形しない導波路を形成し、治療用放射線照射装置16に支持され、治療用放射線照射装置16と同体に運動する。固定導波管85は、一端が加速管64に接続されている。フレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87とは、蛇腹構造(べローズ)に形成され、屈曲および伸縮が可能である導波路を形成している。フレキシブル導波管86は、長手方向がチルト軸22に垂直になるように、かつ、チルト軸22に重なるように配置されている。フレキシブル導波管86は、一端が固定導波管73に接続され、他端が固定導波管84に接続されている。フレキシブル導波管86は、中間体82に対して治療用放射線照射装置16が回転することにより変形し、フレキシブル導波管86の形状は、中間体82に対する治療用放射線照射装置16のチルト角に概ね対応している。フレキシブル導波管87は、長手方向がパン軸21に垂直になるように、かつ、パン軸21に重なるように配置されている。フレキシブル導波管87は、一端が固定導波管84に接続され、他端が治療用放射線照射装置16の加速管64に接続されている。フレキシブル導波管87は、照射装置支持体81に対して中間体82が回転することにより変形し、フレキシブル導波管87の形状は、照射装置支持体81に対する中間体82のパン角に概ね対応している。このような配置は、フレキシブル導波管86とフレキシブル導波管87との撓み吸収性を活用する点で好ましい。
【0038】
図7は、ロータリージョイント75を示している。ロータリージョイント75は、第1筒部分91と第2筒部分92とを備えている。第1筒部分91は、回転軸93を中心とする筒状に形成されている。第2筒部分92は、回転軸93を中心とする筒状に形成され、回転軸93を中心に回転可能に第1筒部分91に支持されている。第1筒部分91は、その筒の側面の一部が固定導波管72の一端に接続されている。第2筒部分92は、その筒の側面の一部が固定導波管73の一端に接続されている。ロータリージョイント75は、回転軸93が回転軸18に重なるように、放射線治療装置3に配置されている。すなわち、ロータリージョイント75は、Oリング12に対して走行ガントリ14が回転することにより、第1筒部分91に対して第2筒部分92が回転する。このとき、第1筒部分91に対する第2筒部分92の角度は、Oリング12に対する走行ガントリ14の走行角に対応している。
【0039】
ロータリージョイント75は、固定導波管72と固定導波管73とを回転可能に連結し、固定導波管72と固定導波管73との間を高周波が伝送可能に連結している。このようなロータリージョイント75は、周知であり、たとえば、特開2005−033463号公報に開示されている。
【0040】
ロータリージョイント75は、図8に示されているように、軸受け94を備えている。軸受け94は、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間99に配置されている。軸受け94は、回転軸93を中心に回転可能に第2筒部分92を第1筒部分91に支持している。
【0041】
ロータリージョイント75は、さらに、水冷管95、96、97を備えている。水冷管95、96、97は、それぞれ、図示されていない管を内部に備えている。水冷管95は、固定導波管72のロータリージョイント75に接続される側の端に熱伝導可能に接触している。水冷管95は、内部の管に冷水が流されることにより、固定導波管72のロータリージョイント75に接続される側の端を冷却する。水冷管96は、固定導波管73のロータリージョイント75に接続される側の端に熱伝導可能に接触している。水冷管96は、内部の管に冷水が流されることにより、固定導波管73のロータリージョイント75に接続される側の端を冷却する。水冷管97は、第1筒部分91に熱伝導可能に接触している。水冷管96は、内部の管に冷水が流されることにより、ロータリージョイント75を冷却する。なお、水冷管95、96、97は、他の冷却器に置換することもできる。その冷却器としては、水と異なる他の冷媒を用いる冷却器、ペルチェ素子を用いる電子冷却器が例示される。
【0042】
ロータリージョイント75は、各構成要素の加工・組立精度、外力の影響に加えて、周辺温度、隙間99からの漏洩分を含む高周波伝送に伴う発熱等の温度変化により、変形を生じる。このような変形は、隙間99の大きさを増減させ、ロータリージョイント75が高周波を伝送する伝送効率を変動させる。このため、ロータリジョイント75を冷却手段により一定温度に保持することで、温度変化に伴う伝送効率の変動を抑制することができる。
【0043】
ここで、旋回角センサ6−1は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。走行角センサ6−2は、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。パン角センサ6−3は、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。チルト角センサ6−4は、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転する回転角を計測し、その回転角を制御装置7に出力する。伝送効率センサ6−5は、導波管8のうちの加速管64に近い部分(たとえば、固定導波管85の途中)に配置され、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを計測し、導波管8が高周波を伝送する伝送効率を生成する。このような伝送効率センサ6−5は、周知であり、たとえば、方向性結合器を用いたものが例示される。
なお、加速管の共振度が一定と見做せる場合には、伝送効率センサ6−5は、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力のみを計測することで、導波管8が高周波を伝送する伝送効率に相当する物理量の間接評価も可能である。
また、一般にフレキシブル導波管は、ロータリジョイントと比較して、状態に対する反射率の変化が小さく、また、可撓・伸縮範囲、即ち状態変化可能範囲が小さい。このため、フレキシブル導波管に使用条件における反射率の状態依存性が無視しえる場合には、計測対象はロータリジョイント部のみでも構わない。本実施例では以下はフレキシブル導波管部も状態を計測する場合で記載する。
【0044】
図9は、制御装置7を示している。制御装置7は、コンピュータであり、図示されていないCPUと記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを備えている。そのCPUは、制御装置7にインストールされるコンピュータプログラムを実行して、その記憶装置と入力装置と出力装置とインターフェースとを制御する。その記憶装置は、そのコンピュータプログラムを記録し、そのCPUに利用される情報を記録し、そのCPUにより生成される情報を記録する。その入力装置は、ユーザに操作されることにより生成される情報をそのCPUに出力する。その入力装置としては、キーボード、マウスが例示される。その出力装置は、そのCPUにより生成された情報をユーザに認識可能に出力する。その出力装置としては、そのCPUにより生成された画面を表示するディスプレイが例示される。そのインターフェースは、制御装置7に接続される外部機器により生成される情報をそのCPUに出力し、そのCPUにより生成された情報をその外部機器に出力する。その外部機器は、クライストロン5とセンサ6とを含んでいる。
【0045】
制御装置7は、コンピュータプログラムである制御データベース101と状態収集部102と制御部103とを備えている。
【0046】
制御データベース101は、センサ6により計測される計測値とクライストロン5を制御する制御値との関係を示す制御テーブルを他のコンピュータプログラムにより検索可能に記憶装置に記録している。
【0047】
状態収集部102は、センサ6により計測される計測値をセンサ6から収集する。すなわち、状態収集部102は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を旋回角センサ6−1から収集する。状態収集部102は、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を走行角センサ6−2から収集する。状態収集部102は、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角をパン角センサ6−3から収集する。状態収集部102は、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角をチルト角センサ6−4から収集する。状態収集部102は、さらに、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを伝送効率センサ6−5から収集する。
【0048】
制御部103は、制御データベース101により記録される制御テーブルを参照して、状態収集部102により収集された計測値に基づいてクライストロン5を制御する。
【0049】
図10は、制御データベース101により記録される制御テーブルを示している。その制御テーブル104は、旋回角105と走行角106とパン角107とチルト角108とを制御量109に対応付けている。すなわち、旋回角105のうちの任意の要素と走行角106のうちの任意の要素とパン角107のうちの任意の要素とチルト角108のうちの任意の要素との組み合わせは、制御量109のうちの1つの要素に対応している。旋回角105は、フレキシブル導波管74の形状を示し、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する回転角を示している。走行角106は、ロータリージョイント75の形状を示し、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する回転角を示している。パン角107は、フレキシブル導波管87の形状を示し、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転する回転角を示している。チルト角108は、フレキシブル導波管86の形状を示し、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転する回転角を示している。制御量109は、センサ6により旋回角と走行角とパン角とチルト角とが計測された時に、クライストロン5を制御するときに用いられる制御量を示し、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流を示している。
【0050】
このとき、制御部103は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。制御部103は、さらに、状態収集部102により収集される高周波の進行分の電力と反射分の電力とに基づいて、加速管64に所定の電力が供給されるように、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流をフィードバック制御する。
【0051】
すなわち、制御テーブル104は、制御装置7が状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量に基づいてクライストロン5を制御するときに、加速管64に一定の電力が供給されるように、作成される。
【0052】
放射線治療システム1を用いた放射線治療では、ユーザが、まず、放射線治療装置制御装置2を用いて治療計画を作成する。その治療計画は、患者43の患部に治療用放射線23を照射する照射角度と、その各照射角度から照射する治療用放射線23の線量および性状とを示している。放射線治療装置制御装置2は、追尾動作と照射動作とを繰り返して実行する。その追尾動作では、放射線治療装置制御装置2は、放射線治療装置3のイメージャシステムにより撮像された画像に基づいて患部位置を算出する。その患部位置算出は、患部と異なるランドマークの位置に基づくものでもよい。そのランドマークとしては、その患部と連動して運動する臓器、物体が例示される。その臓器としては、骨(肋骨)、横隔膜、膀胱が例示される。その物体は、イメージャシステムにより検出される材料から形成され、その患部と連動して運動するようにその患者の体内に埋め込まれる。その物体としては、金から形成される球である金マーカが例示される。放射線治療装置制御装置2は、治療用放射線23がその患部位置を透過するように、首振り機構15を用いて治療用放射線照射装置16を移動させる。その照射動作では、放射線治療装置制御装置2は、その追尾動作により治療用放射線照射装置16が移動した直後に治療用放射線照射装置16を用いて治療用放射線23をその患部に照射する。
【0053】
制御装置7は、その照射動作と並行して動作する。制御装置7は、まず、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を旋回角センサ6−1から収集する。制御装置7は、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を走行角センサ6−2から収集する。制御装置7は、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角をパン角センサ6−3から収集する。制御装置7は、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角をチルト角センサ6−4から収集する。制御装置7は、さらに、導波管8により伝送される高周波の進行分の電力と反射分の電力とを伝送効率センサ6−5から収集する。
【0054】
制御装置7は、制御テーブル104を参照して、センサ6により計測された旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出する。制御装置7は、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。制御装置7は、さらに、伝送効率センサ6−5により計測された高周波の進行分の電力と反射分の電力とに基づいて、加速管64に所定の電力が供給されるように、発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流をフィードバック制御する。制御装置7は、このような動作を定期的に繰り返し実行する。
【0055】
導波管8は、一般に、高周波を伝送することにより発熱して変形し、その高周波を伝送する伝送効率が変動する。特に、ロータリージョイント75は、その変形により隙間99の大きさが増減し、固定導波管71、72、73、84、85に比較して、その伝送効率がより大きく変動する。また、周辺温度の変化によっても導波管8は変形を生じる。本発明による放射線治療システム1は、ロータリージョイント75と固定導波管72、73とを冷却することにより、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動を低減し、その変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。その結果、本発明による放射線治療システム1は、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができ、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【0056】
なお、ロータリージョイント75は、水冷管95、96、97から選択されるいくつかの水冷管だけを備えることもできる。このときも、本発明による放射線治療システム1は、同様にして、ロータリージョイント75の温度の変動を低減し、その変形を低減させて、その伝送効率の変動を低減させることができる。本発明による放射線治療システム1は、さらに、他の水冷管を備えることもできる。その水冷管は、固定導波管71、72、73、84、85とフレキシブル導波管74、86、87とから選択されるいくつかの導波管に熱伝導可能に接触している。このとき、本発明による放射線治療システム1は、さらに、導波管8の温度の変動をより低減し、導波管8の変形をより低減させて、導波管8の伝送効率の変動をより低減させることができる。
【0057】
図11は、ロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その関係111は、任意の整数nを用いて、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示している。すなわち、関係111は、ロータリージョイント75の第1筒部分91と第2筒部分92とが回転することにより、伝送効率が変化することを示している。また、本変動量の絶対値は逆位相でも同一とは限らず、一般にΔaとΔbは異なる。このような伝送効率の変化は、理論的に起こり得ないが、構成要素の機械的精度及び組立精度のため、その回転によりロータリージョイント75の一部(たとえば、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間の程度)が変化すること、両筒部分の間の結合係数が変化すること等により発生する。なお、前述のように当該変化はロータリージョイント75の温度変化により更に増加する。
【0058】
なお、フレキシブル導波管74、86、87に関してもロータリージョイント75と同様にして、その変形に伴って伝送効率が変化する。すなわち、フレキシブル導波管74は、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、その旋回角に対応している。フレキシブル導波管86は、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、そのチルト角に対応している。フレキシブル導波管87は、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転することにより伝送効率が変化し、その伝送効率は、そのパン角に対応している。
【0059】
図12は、導波管8がサーキュレータ77を備えていないときのロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その伝送効率は、導波管8のうちの自由導波管(フレキシブル導波管74、86、87、ロータリージョイント75)より加速管64に近い部分(たとえば、固定導波管85の途中)で計測される。その関係121は、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示している。すなわち、関係121は、ロータリージョイント75の第1筒部分91と第2筒部分92とが回転することにより、伝送効率が変化することを示している。このような伝送効率の変化は、理論的に起こり得ないが、構成要素の機械的精度及び組立精度のため、その回転により、ロータリージョイント75の一部(たとえば、第1筒部分91と第2筒部分92との隙間の程度)が変化すること、両筒部分の間の結合係数が変化すること等により発生する。
【0060】
図12は、さらに、導波管8がサーキュレータ77を備えているときのロータリージョイント75の第1筒部分91に対する第2筒部分92の回転角と高周波の伝送効率との関係を示している。その関係122は、回転角度θに対応する伝送効率が、回転角度θ+2πnに対応する伝送効率に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する伝送効率と異なる場合があることを示し、さらに、伝送効率の変動の大きさが関係121により示される伝送効率の大きさより小さいことを示している。すなわち、図12は、導波管8がサーキュレータ77を備えることにより、導波管8により伝送される高周波の伝送効率の変動の大きさを低減することができることを示している。本来ならロータリージョイント75の温度変化による伝送効率の変動に対する補正も更に加えることも要するが、本発明ではロータリージョイント75に冷却手段を具備することにより当該変化の影響を抑制しているため、より簡単且つ安定して変動の大きさを低減できることになる。
【0061】
図13は、制御装置7がセンサ6の計測値に基づいてクライストロン5を制御しないときのロータリージョイント75の回転角とクライストロン5から出力される高周波の電力との関係を示している。その関係112は、その高周波の電力がその回転角に独立であることを示し、その高周波の電力が一定であることを示している。図13は、さらに、フレキシブル導波管74、86、87が変形しない場合で制御装置7がセンサ6の計測値に基づいてクライストロン5を制御するときのロータリージョイント75の回転角とクライストロン5から出力される高周波の電力との関係を示している。その関係113は、その高周波の電力がその回転角に対応していることを示し、回転角度θに対応する高周波の電力が、回転角度θ+2πnに対応する高周波の電力に等しいことを示している。すなわち、制御装置7は、その高周波の電力がその回転角に対応し、回転角度θに対応する高周波の電力が回転角度θ+2πnに対応するように、クライストロン5を制御する。
【0062】
図14は、クライストロン5が関係112に示されるように高周波を出力するときのロータリージョイント75の回転角と加速管64に入力される電力との関係を示している。その関係114は、回転角度θに対応する電力が回転角度θ+2πnに対応する電力に等しいことを示し、異なる他の回転角度θ´(θ´≠θ+2πn)に対応する電力と異なる場合があることを示している。図12は、さらに、クライストロン5が関係113に示されるように高周波を出力するときのロータリージョイント75の回転角と加速管64に入力される電力との関係を示している。その関係115は、その電力がその回転角に独立であることを示し、その電力が一定であることを示している。
【0063】
本発明による放射線治療システム1は、さらに、加速管64がクライストロン5に対して移動する場合であっても、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。すなわち、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、より必要であり、伝送効率の変動をより低減することに有用である。その結果、本発明による放射線治療システム1は、治療用放射線23の線量をより高精度に制御することができる。
【0064】
本発明による放射線治療システムの実施の他の形態は、既述の実施の形態における制御部103が他の制御部に置換されている。その制御部は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により収集される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。
【0065】
このとき、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、導波管8の伝送効率の変動をより低減することに有用である。このような放射線治療システムは、放射線治療システム1と同様にして、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。このような放射線治療システムは、さらに、伝送効率センサ6−5を備える必要がなく、より安価に製造することができる。
【0066】
本発明による放射線治療システムの実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態における状態収集部102が他の状態収集部に置換され、制御部103が他の制御部に置換されている。その状態収集部は、放射線治療装置制御装置2から旋回駆動装置11と走行駆動装置とパン軸駆動装置とチルト軸駆動装置とに伝達される状態制御信号を放射線治療装置制御装置2から収集し、その制御信号に基づいて導波管8の状態を算出する。すなわち、その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、土台に対して回転軸17を中心にOリング12が回転する旋回角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、第1筒部分91に対して回転軸93を中心に第2筒部分92が回転する走行角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、中間体82に対してパン軸21を中心に治療用放射線照射装置16が回転するパン角を算出する。その状態収集部は、その状態制御信号に基づいて、さらに、照射装置支持体81に対してチルト軸22を中心に中間体82が回転するチルト角を算出する。その制御部は、制御テーブル104を参照して、状態収集部102により算出される旋回角と走行角とパン角とチルト角との組み合わせに対応する制御量を算出し、クライストロン5の発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流がその制御量が示す発振RF強度またはクライストロン加速電圧またはクライストロン電流にそれぞれ一致するように、クライストロン5を制御する。
【0067】
このとき、制御装置7の動作は、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が、導波管8(特に、ロータリージョイント75)の温度の変動による伝送効率の変動より大きいときに、より必要であり、導波管8の伝送効率の変動をより低減することに有用である。このような放射線治療システムは、放射線治療システム1と同様にして、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。このような放射線治療システムは、さらに、旋回角センサ6−1と走行角センサ6−2とパン角センサ6−3とチルト角センサ6−4と伝送効率センサ6−5とを備える必要がなく、より安価に製造することができる。
【0068】
なお、クライストロン5は、他の高周波源に置換することができる。その高周波源としては、マグネトロン、多極管が例示される。そのマグネトロンは、マグネトロン電流が制御されて所定の電力の高周波を生成する。このとき、制御装置7は、そのマグネトロン電流を制御することにより、電子ビーム57のエネルギーの変動を低減し、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができる。その多極管は、発振RF強度または多極管加速電圧または多極管電流が制御されて所定の電力の高周波を生成する。このとき、制御装置7は、発振RF強度または多極管加速電圧または多極管電流を制御することにより、電子ビーム57のエネルギーの変動を低減し、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を低減することができる。
【0069】
なお、制御テーブル104は、導波管8による導波路の形状と異なる他の状態の集合を制御量109にさらに対応付けることができる。その状態としては、導波管8の各部分の温度が例示される。このとき、制御装置7は、その導波路の形状とその状態に基づいてクライストロン5を制御することにより、放射線治療システム1より増して、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。
【0070】
なお、制御テーブル104は、フレキシブル導波管74、86、87の変形に独立して、ロータリージョイント75の回転角の集合だけを制御量109にさらに対応付けることができる。フレキシブル導波管は、一般に、ロータリージョイントに比較して、変形による伝送効率の変動が十分に小さい。このため、制御装置7は、その導波路の形状に基づいてクライストロン5を制御することにより、放射線治療システム1に比較して性能が少し劣るが、電力の変動が小さい高周波を加速管64に供給することができ、加速管64により生成される電子ビーム57のエネルギーの変動を小さくすることができ、治療用放射線23のエネルギー(エネルギー分布)の変動を小さくすることができる。
【0071】
本発明による放射線治療システムの実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態における制御装置7を備えていない。このような放射線治療システムは、治療用放射線照射装置16が移動することによる伝送効率の変動が十分に小さく、導波管8を冷却することにより伝送効率の変動の程度が十分に低減されるときに、好適である。
【0072】
なお、サーキュレータ77は、導波管8をクライストロン5から加速管64に向かって進行する高周波進行分に比較して導波路を加速管64からクライストロン5に向かって進行する高周波反射分を減衰させる他の非可逆回路素子に置換することができる。その非可逆回路素子としては、アイソレータが例示される。そのアイソレータは、サーキュレータと同様にして、伝送効率の変動の程度を低減することができる。サーキュレータは、そのアイソレータに比較して熱除去能力が大きいために、本発明による放射線治療システム1に適用されることがアイソレータより好ましい。
【0073】
ロータリージョイント75は、放射線治療システム1と異なる装置に適用することもできる。その装置としては、放射光を放射する放射光設備、非破壊検査装置、滅菌装置、半導体基板や液晶基板等の基板の表面をプラズマで処理するプラズマ処理装置が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明による放射線治療システムの実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は、放射線治療装置を示す斜視図である。
【図3】図3は、治療用放射線照射装置を示す断面図である。
【図4】図4は、導波管を示す側面図である
【図5】図5は、導波管を示す正面図である
【図6】図6は、首振り機構を示し、導波管を示す斜視図である。
【図7】図7は、ロータリージョイントを示す斜視図である。
【図8】図8は、ロータリージョイントを示す断面図である。
【図9】図9は、制御装置を示すブロック図である。
【図10】図10は、制御テーブルを示す図である。
【図11】図11は、ロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、導波管がサーキュレータを備えていないときのロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示し、導波管がサーキュレータを備えているときのロータリージョイントの回転角と高周波の伝送効率との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、ロータリージョイントの回転角とクライストロンから出力される高周波の電力との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、ロータリージョイントの回転角と加速管に入力される電力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 :放射線治療システム
2 :放射線治療装置制御装置
3 :放射線治療装置
5 :クライストロン
6 :センサ
6−1:旋回角センサ
6−2:走行角センサ
6−3:パン角センサ
6−4:チルト角センサ
6−5:伝送効率センサ
7 :制御装置
8 :導波管
11:旋回駆動装置
12:Oリング
14:走行ガントリ
15:首振り機構
16:治療用放射線照射装置
17:回転軸
18:回転軸
19:アイソセンタ
21:パン軸
22:チルト軸
23:治療用放射線
24:診断用X線源
25:診断用X線源
31:センサアレイ
32:センサアレイ
33:センサアレイ
35:診断用X線
36:診断用X線
41:カウチ
42:カウチ駆動装置
43:患者
51:電子ビーム加速装置
52:X線ターゲット
53:1次コリメータ
54:フラットニングフィルタ
55:2次コリメータ
56:マルチリーフコリメータ
57:電子ビーム
58:が内部に有する点である仮想的点線源
59:放射線
60:放射線
61:線量計
63:電子線発生部
64:加速管
66:カソード
67:グリッド
68:複数の電極
69:グリッド電源
70:カソード電源
71:固定導波管
72:固定導波管
73:固定導波管
74:フレキシブル導波管
75:ロータリージョイント
76:回転台
77:サーキュレータ
81:照射装置支持体
82:中間体
84:固定導波管
85:固定導波管
86:フレキシブル導波管
87:フレキシブル導波管
91:第1筒部分
92:第2筒部分
93:回転軸
95:水冷管
96:水冷管
97:水冷管
99:隙間
101:制御データベース
102:状態収集部
103:制御部
104:制御テーブル
105:旋回角
106:走行角
107:パン角
108:チルト角
109:制御量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波源から加速管に高周波を伝送する導波路を形成する導波管と、
前記導波管を冷却する冷却器とを具備し、
前記加速管は、前記高周波を用いて治療用放射線を生成するための荷電粒子を加速する
放射線治療システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記導波管は、一端に対して他端が回転可能であるロータリージョイントを含み、
前記冷却器は、前記ロータリージョイントを冷却する
放射線治療システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記導波管は、前記ロータリージョイントに隣接する固定導波管を更に含み、
前記冷却器は、前記固定導波管を更に冷却する
放射線治療システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれかにおいて、
前記導波路のうちの前記ロータリージョイントと前記加速管との間に介設される非可逆回路素子
を更に具備する放射線治療システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記導波路の状態を出力する装置と、
前記高周波を用いて前記加速管に所定電力が供給されるように、前記状態に基づいて前記高周波源を制御する制御装置
とを更に具備する放射線治療システム。
【請求項6】
高周波を伝送する導波路を形成し、前記導波路の一端に対して前記導波路の他端が回転可能であるロータリージョイント本体と、
前記ロータリージョイント本体を冷却する冷却器
とを具備するロータリージョイント。
【請求項1】
高周波源から加速管に高周波を伝送する導波路を形成する導波管と、
前記導波管を冷却する冷却器とを具備し、
前記加速管は、前記高周波を用いて治療用放射線を生成するための荷電粒子を加速する
放射線治療システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記導波管は、一端に対して他端が回転可能であるロータリージョイントを含み、
前記冷却器は、前記ロータリージョイントを冷却する
放射線治療システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記導波管は、前記ロータリージョイントに隣接する固定導波管を更に含み、
前記冷却器は、前記固定導波管を更に冷却する
放射線治療システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれかにおいて、
前記導波路のうちの前記ロータリージョイントと前記加速管との間に介設される非可逆回路素子
を更に具備する放射線治療システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記導波路の状態を出力する装置と、
前記高周波を用いて前記加速管に所定電力が供給されるように、前記状態に基づいて前記高周波源を制御する制御装置
とを更に具備する放射線治療システム。
【請求項6】
高周波を伝送する導波路を形成し、前記導波路の一端に対して前記導波路の他端が回転可能であるロータリージョイント本体と、
前記ロータリージョイント本体を冷却する冷却器
とを具備するロータリージョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−173185(P2008−173185A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7343(P2007−7343)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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